441位 Britney Spears 『Blackout』
(初登場)

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 今はほぼインスタグラマーとしての活動がメインで、アーティスト活動は開店休業中のブリトニー、これ一枚だけとはいえ、このランキングに入ってくるのは、ある意味快挙。いろいろ紆余曲折があったとはいえ、一時代を築いたその記憶は今後も鮮烈に残る。
 2007年リリースということで、いま聴くとエフェクトの質感やミックス全般に若干の古さを感じるのは仕方ないとして、変にこねくり回していないメロディは親しみやすかったりする。いわゆるメインストリーム仕様のダンスコンテンポラリーではあるんだけど、ヒップホップ色が薄いこともあって、全方位的な売れ方をしたのも、こうやって振り返って聴くと納得できる。
 普通、こういったフィメールダンスポップのアーティストの場合、デビュー作周辺のインパクトが強く、初期の作品に評価が集中するものだけど、この『Blackout』は通算5枚目、もうあらゆるスキャンダルやらゴシップやらの洗礼を受けて以降の作品である。「強靭なメンタルを獲得した女性」というストイックなイメージをまとってからの彼女は、その後立ち止まりつつ戻りつつしながら疾走したのだけど、さすがに疲れちゃったんだろうな。
 そういえば、一時付き合ってたジャスティン・ティンバーレイクって、いま何してるんだろうか。ついでに気になって調べてみたのだけど、イヤただの人たらしだなコイツ。気になる人は自分で調べてみて。




 藤井風が2枚目のオリジナルアルバム『Love All Serve All』の初回限定版特典ボーナスCDで、「Overprotected」をピアノでカバー。どんな曲でも自分のフォールドに引っ張り込んでしまうポテンシャルなだけあって、いつもの藤井風ソングになっているのだけど、原曲へのリスペクトを決して忘れないのが、この人の強さ。ブリちゃんのオリジナルとは真逆のアプローチだけど、これ2人を逆にして聴いてみたい気もする。
 前回441位はSuicide 『Suicide』。今回は498位。




442位 The Weeknd 『Beauty Behind the Madness』
(初登場)

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 昨年、亜蘭知子40年前の作品「MIDNIGHT PRETENDERS」をサンプリングした「Out of Time」がちょっとだけ話題になったけど、そもそも日本では、亜蘭知子もウィークエンドもそんなにメジャーじゃなかったのだった。しかし、よくこんなどマイナーな曲掘ってくるな、海外勢。
 洋楽自体が日本ではすっかりどマイナーなジャンルに落ちぶれてしまい、先日のグラミー賞でも話題になったのは、宅見将典が西城秀樹の甥っ子という芸能ニュース的なトピックだけで、本編についてはほぼ触れられることもないし、また誰も気にしない。海外と日本での知名度ギャップがハンパないウィークエンド、スーパーボウルのハーフタイムショーに出てるくらいだから、かろうじて「アメリカで売れてる人」という認識はあるのだけど、そこで終わってしまっている。
 かつてワールドワイドで活動しているアーティストの多くは、アメリカに次ぐ市場規模だった日本を重要視し、しょっちゅう来日したり日本限定仕様でアルバムリリースしたものだけど、今はそんなことも少なくなった。打っても響かない日本のユーザー相手に、ウィークエンドが本腰入れる望みは薄い。彼らにとって現在の日本は、旨味のあるマーケットではないのだ。
 で、このアルバム、どこにでもホイホイ顔を出すカニエ・ウエストはもちろんのこと、あまりゲスト参加した話を聞かないエド・シーランやラナ・デル・レイまで引っぱり出しており、どの方面のニーズにも応えるべく、もう売る気マンマン。しかしほんと多いよな、トップアーティスト同士でゲスト参加したりされたりするパターン。
 一応、サウンドのベースはR&Bなのだけど、ダブステップやらトラップやらトリップホップやら、売れ線でありながらちょっぴりセンシティブな要素がミックスされて、結構お腹いっぱいになる。もしフレディ・マーキュリーが40年遅く生まれていたら、こんなサウンド・こんなポジションに収まっていたんじゃなかろうか。
 前回442位はDEVO 『Q: Are We Not Men? A: We Are Devo!』。今回は252位。




443位 David Bowie 『Scary Monsters』
(初登場)

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 『Let’s Dance』以前のボウイのアルバム中、最も地味な扱いだったはずなのに、近年になってから評価の高まった『Scary Monsters』が初登場。かつてボウイといえば『Ziggy Stardust』とヨーロッパ3部作に人気が集中しており、このアルバムなんかほぼオマケ扱い、名盤ガイドでも3行程度でしか紹介されてなかったのに。
 アルバムごと・シングルごとにしょっちゅうキャラ変し、独自のスタンスを打ち出していたそれまでと違い、時流に即したニューウェイヴ色サウンドで統一されている。マスへの迎合と言い切るほどコンテンポラリーど真ん中ではなく、盟友トニー・ヴィスコンティのプロデュースワークは幾重にもねじれている。
 いま聴くと安直なアプローチはひとつもなく、エフェクトの使い方やアレンジの奇矯さはむしろヴァージョンアップされているのだけれど、一体なにが気に食わなかったんだろうな当時のメディアって。「グラム時代とイーノとのコラボ作こそ至高」という風潮が刷り込まれたおかげで、俺世代は素直に向き合えるまで、多大な時間を要さねばならなかったのだった。
 ただそういったバイアスを抜きにしても、冒頭の怪しげなカタコト日本語ナレーションは、やはり気持ちが萎えてしまう。誤解されたオリエンタリズムにカブれるのは、意識高いアーティストとして珍しいことではなかった80年代。




 2007年に日本で企画されたボウイのトリビュートアルバムがあって、野宮真貴やダイヤモンド・ユカイ、コレクターズなど、いろいろ「わかってる」メンツが参加しているのだけど、トップを飾っているのがRollyことローリー寺西。直球勝負の「Ziggy Stardust」は安い小技もなく、ただただ熱い愛情とリスペクトに満ちあふれている。
 前回443位はCheap Trick 『In Color』。今回は圏外。




444位 Fiona Apple 『Extraordinary Machine』
(初登場)

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 2020年リリースの『Fetch the Bolt Cutters』を除くと、4枚中3枚がランクインしているフィオナ・アップル。ここまで上位から順に聴き進めてきて、最初の108位『When the Pawn...』ではまだピンと来なかったのだけど、400枚以上もあらゆるジャンルに触れてくると、さすがに見解も変わってきて、むしろその圧倒的な特異性に惹かれてくる。
 トラップ一色となったメインストリームの中、ネガティヴで内向きのベクトルを持つ彼女の編み出す音楽は、最大公約数ヒットとは真逆を指している。クラスの8割がウィークエンドを支持し、残りの1割2割が彼女のような音楽を選んだとしても、市場の大きなアメリカでは、充分大きな力になる。みんながみんな、パーティチューンで浮かれたいわけではないのだ。
 ちなみにこのアルバム、完パケしたマスターをレーベルに納入したのだけど、リリースを拒否されて2年ほど放置されてしまう。そんな扱いに業を煮やした関係者が抗議の意としてネットに音源流出〜本社前での抗議活動デモ、その後も水面下で何やかやあって正規リリースに至る、そんなめんどくさい経緯を持つ。ほんとエピック、ソニー系レーベルってアーティストと揉めるよな昔から。ジョージ・マイケルとの件で学ばなかったのか。
 リアルな心情吐露が浮き出る歌詞やアーティストイメージは、ユーザーとの距離感を詰め、自己投影することで親密度が高まる。パーソナルな相互理解を求めるユーザーの点在も、集約すれば大きな潮流となる。類似性が指摘されていた椎名林檎もまた、そのメソッドは同様である。
 前回444位はWar 『The World Is a Ghetto』。今回は圏外。




445位 Yes 『Close to the Edge』
(初登場)

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 邦題『危機』と言い換えた方が通りが良い、重鎮プログレバンドの代表作が初ランクイン。過去2回、彼らの作品がランクインしたのはこれが初めてで、これまで『こわれもの』も『90125』も、まったく影も形もなし。そこまで熱心なファンではないけど、さすがにジャンルへの偏重が強すぎるんじゃないかと勘ぐってしまう。
 ここまでプログレッシヴロックでランクインしているのは、ピンク・フロイドが4枚。ただ彼らって、プログレの中では異端なポジションのため、ジャンルを代表しているとは言いがたい。
 クラシック寄りのELPや、フィル・コリンズ以前/以後ではまったく別バンドなジェネシス、夫婦漫談がメインとなってしまったクリムゾンが入ってないのはまだわかるとして、「若手」のドリームシアターまで入ってないのは、ちょっと虐げすぎなんじゃないかと同情さえしてしまう。ちょっと邪道だけど、あれだけバカ売れしたエイジアだって、もうちょっと構ってやってもいいんじゃね?とさえ思ってしまう。イヤ個人的には思い入れないんだけど。
 目まぐるしいメンバーチェンジと離合集散を繰り返し、度重なる変遷を経ながら、どうにかこうにか生き永らえてきたイエス。世界各地に偏在する熱烈なプログレ者らの支持のもと、いまも現役活動中である。リリースから半世紀経ち、当時のメンバーはもうスティーヴ・ハウくらいしかいなくなっちゃったけど、シンフォニックな寓話性とロジカルなバカテクアンサンブルとを共存させた音楽性の軸はブレず、それが強力なブランディングとなっている。あと20年くらいは、代替わりしながら続けられるんじゃないかと思われる。
 とにかく長くて重厚で深みがあるように見せることこそ至高とされていた時代の作品であるため、収録されているのは18分・10分・9分の3曲のみ。変拍子と転調が目まぐるしいアンサンブルはスゲェーとは思うけど、聴いてるうちに麻痺してしまうのか、凄さが気にならなくなってしまう。
 正確なピッチとリズムに基づいたアンサンブルだけだと、テクニック至上主義に陥ってしまい、マニアックなフュージョン以上にはならないのだけど、能天気な博愛主義のジョン・アンダーソンが演奏陣を適度に引っ掻き回し、地に足のついたポップ要素を持ち込んでいる。一緒にいたらめんどくさそうな人なんだけど、彼の存在あってこそ、イエスはメジャーになれたのだろう。
 って、ここまで書いてなんだけど、そのジョン・アンダーソンは現在、イエスとは袂を分かっていたのだった。元イエスのメンバーと組んで、かつてのイエス名曲を世界中で歌い継ぎ、そこそこ好評を博しているらしい。本家であるイエスも別のシンガーを入れて、同じように世界各地を回り、オリジナルヴォーカル不在にもかかわらず集客に影響はない。
 いわゆるお家騒動から派生した本家・分家であり、普通なら楽曲使用や名義でもめて裁判沙汰になりそうなものだけど、そんな話も聞かない。仲がいいのか悪いのか、はたまた誰もヤブヘビをつつきたくないのか。まぁみんな大人なんだろうね。
 前回445位はSteve Miller Band 『Fly Like an Eagle』。今回は圏外。




446位 Alice Coltrane 『Journey in Satchidananda』
(初登場)

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 ジョン・コルトレーン夫人アリス70年代のソロ作が初ランクイン。2007年に亡くなって以降、息子ラヴィ主導による発掘プロジェクトが進み、海外では再評価が高まっているらしい。
 問答無用のジャズジャイアントであるジョンは、俺も一時期聴きまくり、そこから派生してマッコイ・タイナーに寄り道したりはあったのだけど、アリスへ向かう気は起きなかった。あくまで偏見だけど、「コルトレーンの嫁」というブランドを活用した、まったくの別物という捉え方だったのだ。
 例えがあってるかどうか自信ないけど、ジョン・レノンは聴くけど、オノ・ヨーコのソロは進んで聴かない。そんな感じだ。
 で、アリス、アバンギャルドジャズでハープ奏者っていうだけですでにキワモノ感が強く、さらに加えて自身が傾倒しているインド音楽もエッセンスに加えているものだから、かなりハードルは高い。おそらくリリース当時から、コルトレーンブランドがなければ、ニーズは少なかったんじゃないかと思われる。
 志なかばで早逝したジョンの遺志を継いだアリスに賛同する流れだったのか、またはインパルスからフォロー要請でもあったのか、末期カルテットの常連組がバックアップを務めている。ファラオ・サンダースのサックスとラシッド・アリのドラムは、正直無難なプレイで印象に残るものではないけど、彼ら抜きだと、ハープとタブラによるニューエイジ系になってしまうため、ジャズとして成立させるためには不可欠だったと思われる。
 この後、インパルスと契約終了したアリスはますますインド思想へのめり込んでゆき、自らヒンドゥー教の学習センターを開設、セミナー受講者向けの脱ジャズ的作品を量産してゆくことになる。スピリチュアル全開でニューエイジなアンビエントな作風は、ちょっと怖いのでまだ聴いてない。軽い気持ちで聴いて沼ったらヤバいので、距離を置いておこう。
 前回446位はMC5 『Back in the USA』。今回は圏外。




447位 Bad Bunny 『X 100pre』
(初登場)

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 プエルトリコ出身のアーティスト:バッドバニーのデビュー作が初登場。レゲエ+ヒップホップ+ラテン音楽=レゲトンの新進気鋭として、南北アメリカでは絶大な人気を誇っている。らしい。もちろん聴くのは初めて。
 もしかして聴いてるかもしれない。と思い出したのが「ベストヒットUSA」。ごくたまにBSで見る、いまも変わらぬDJ小林克也の洋楽番組。
 最近は懐かしのアーティスト特集が多く、メインのトップ40カウントダウンは付け足し程度なのだけど、多分、その中で聴いてるかもしれない。あそこに入ってるの、おおかたこんな感じだもんな。
 長らくアングロサクソン系が優位を誇っていたアメリカも、他人種構成比が飛躍的に進んだ末、特にエンタメ界ではラテン系の躍進がハンパなくなっている。世界中に点在するスペイン語圏から支持されることで、セールスもケタ違いになるのは当たり前の話で、白人中心のロックがマイナージャンルに追いやられたのも自然の摂理であって。
 中国に次いでインドの追い上げが激しい世界人口構成比を鑑みると、さらに世界のトレンドも流動的かつ激変する可能性もあるかもしれない。ラガトンにラーガロックや中華音階を取り入れた未知のジャンルが生まれるかも。
 そうなると近い将来、前述のアリス・コルトレーンも世界的に再評価される日も来るかもしれない。
 ねぇよ、それは。多分…、きっと。
 前回447位はGetz & Gilberto 『Getz & Gilberto』。今回は圏外。




448位 Otis Redding 『Dictionary of Soul』
(248位 → 254位 → 448位)

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 俺が最初に買ったオーティスのアルバムは『Live in Europe』で、まだアナログの時代だった。その次に買ったのが2枚組のCDベストで、おそらくその2つ。
 なんかふざけたジャケットのコレは、企画モノっぽい格下感があって、手を出す気も起こらなかった。墜落死という悲劇的な最期を遂げたオーティスは早いうちから伝説となり、なんかあんまりイジっちゃいけないような雰囲気があった。
 ただこのアルバムリードトラック「Fa-Fa-Fa-Fa-Fa」なんて、ほど良い脱力感の裏に潜む物悲しさが同居していたりして、類型的なソウルシンガー像が改められたりする。そうだ、まんま清志郎じゃないか。
 名演の誉れ高い「Try a Little Tenderness」も「Day Tripper」ももちろんいいんだけど、そういった白熱のパフォーマンスとはまた別の、飄々としたスタイルもまた、オーティスの魅力のひとつだったりする。「Dock of the Bay」も「Shake」も名演だけど、でもそれだけじゃ足りないのだ。
 音楽について大事なことは、知らず知らずのうちに清志郎が教えてくれていた。多分、他にもあるのだろう。俺が生きてるうちに、あといくつ思い起こさせてくれるだろうか。




 日本では「Dock of the Bay」よりもお茶の間認知度の高い「I Can't Turn You Loose」、「ものまね王座決定戦」のジングルって言えば、大抵の人は思い出すはず。俺にとってはブルースブラザーズの出囃子なんだけど。
 今よりもっと声が出てもっとギラギラしていた頃のTUBE前田亘輝が、初ソロアルバムでカバーしている。逆に今、渋いスタイルでリトライするのもいいかもしれない。
 前回448位はThe Police 『Synchronicity』。今回は159位。




449位 The White Stripes 『Elephant』
(386位 → 390位 → 449位)

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 440位台では唯一、まともなロックがランクイン。もう解散しちゃってるけど、ジャック・ホワイトがマイペースで活動できている分だけ、まだ希望が持てる。
 今週に入ってからペイヴメントとレッチリと、スケールは全然違うけど、(笑)ってつける必要のないバンドが相次いで来日している。どちらもライブ動員は好調だしTLも盛り上がってるし、音源売り上げにはどっちみち繋がらないんだろうけど、明るい話題に飢えているロック民的には素直にうれしい。
 頭悪い例えになってしまうけど、ギターがギャンギャン・ドラムがドカドカ、多少リズムがヨレて音がハズレたって、そこに生じるグルーヴの嵐には抗えない。前述のイエスや今度来るディランも盛況で、経済効果はそっちの方がデカいんだろうけど、いつまでもロートルじゃ先細るんだよ。
 そんなロートル、ロックジャイアンツからの覚えもめでたいジャック・ホワイト、今後、どう進んでゆくのか。ほぼ10年単位で興るロックの原点回帰ブーム、そういえばレニー・クラヴィッツって、いま何してるのか。別に彼は気にならないけど、ジャックホワイトは変な方向に行かないでほしい。そう願いたい。
 他のランキングは、『White Blood Cells』が2回目497位初登場したけど、今回は圏外。
 前回449位はBig Star 『Third/Sister Lovers』。今回は285位。




450位 Paul & Linda McCartney 『Ram』
(初登場)

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 こういったランキングにはめっぽう弱い、昔からロック村では軽んじられていたポール。もうジョン・レノンとの対比で語られることも少なくなったけど、本人はあまり意に介していないのか、コンスタントに活動し続けた結果、やいのやいの言ってる連中は皆いなくなってしまった。やっぱ続けるって尊い。
 いい曲や美メロは書くことは誰もが認めているけど、強いメッセージ性や主張を取り入れる人ではないため、このランキングでも軽視されているポール。後述するけど『Band on the Run』は圏外だし、卓録シリーズ『McCatney』も『Tag of War』も触れられたことすらない。個人的にはコステロとコラボした『Flowers in the Dirt』が好きだったんだけど、あれって地味だしな。
 当時の妻リンダを引き入れて、最小限のメンツでレコーディングされたこのアルバム、適当なプライベートフォトによる適当なジャケットと、家内制手工業的な制作プロセスが軽く見られていたのだけど、なぜか近年になって評価が高まっている。ビートルズという枠から解放されて、思うがままジャンルレスで自由な作風が展開されている。
 組曲スタイルやゆるいコンセプト繋がりのアルバムをこれまでリリースしてきたポールだけど、正直、サラッと手クセで書いちゃった「Another Day」みたいな小品の方が出来が良く聴こえてしまう。仰々しいメドレー形式の「アンクル・アルバート」も『Sgt. Pepper’s』や『Abbey Road』同様、ややレベルの落ちるフレーズを組み合わせて体裁よく仕上げているようなものだし。
 なのでポール、どれだけトーンダウンした時期のアルバムでも、必ずひとつくらいは美メロ曲が含まれているので、それらを包括したオールタイムベストを聴くのが一番手っ取り早い。80年代に出てた『All the Best』が手軽で聴きやすかったんだけどな。「No More Lonely Nights」も入ってるし。
 他のランキングは、Paul McCartney & Wings 『Band on the Run』が413位→418位ときて、今回は圏外。




 アニメファンにには「マクロスの人」として、お茶の間では「わくわく動物ランドのテーマ曲の人」という、おおよそごく初期の姿しか知られていない飯島真理が、ウィングスの「Jet」をカバー。オリジナルのようなシャウトは少なめだけど、コケティッシュな声質が独自のポップ要素を加えて、ガールズポップな「Jet」になっている。
 基本、アメリカ在住ということもあってなかなか真価が伝わりづらいけど、コンスタントに作品をリリースし続ける地道な活動ぶりは、もうちょっと評価されてもいいんじゃないかといつも思ったりする。いい曲あるんだよ90年代にもこの人。
 前回450位はJackson Browne 『For Everyman』。今回は圏外。