431位 Los Lobos 『How Will the Wolf Survive?』
(453位 → 455位 → 431位)

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「代表曲はラ・バンバ」というのもいまは昔、多分、サビくらいは耳にしたことあるんだろうけど、誰が歌ってるかは知らない世代も多くなったロス・ロボス。テックスメックスというワードがすでに日本では通じなくなって、いまはもっぱらアメリカ圏内を拠点としている彼らの出世作がランクイン。
 世界的にはほぼピークアウトな扱いの彼らだけど、自国内ではそこそこ支持されているのか、順位変動はそれほどなし。土着的なカントリー同様、メインストリームに出てくることはないけど、こういうルーツ系のジャンルは根強い需要があるということか。
 ロックユーザーにとっては彼ら、このアルバムよりも90年代以降の『Kiko』~『Colossal Head』、ミッチェル・フルーム&チャド・ブレイク:プロデュース作の認知が高かったのだけど、そこら辺は過去もランクインなし。時流に合わせたオルタナ志向より、まだ粗さの残るマリアッチ/ラテン風味が評価されているらしい。
 このアルバムがリリースされた84年は生音がシンセに侵食されつつあった頃で、こういった泥くさい音楽が受け入れられる時代ではなかった。キラキラしてないしチャラくもないし、どうしてデビューできたんだろうか。
 本人たちも一応、レコードデビューはできたけど、この時点でどこまでメジャーでやれると思っていただろうか。マドンナやスプリングスティーンと比べてコマーシャル性は格段に落ちるし、この時点でブレイクする要素はまるでない。
 この数年後に「ラ・バンバ」が来るだなんて、誰が予想していただろうか。ほんと、人生ってわからない。




  実際にはリッチー・ヴァレンスのカバーである「ラ・バンバ」、誰かぶっ飛んだカバーがないかと調べてみると、意外なところでドラゴンアッシュ。ほぼ意訳の日本語詞でガレージロック風に演奏される「ラ・バンバ」は、オリジネイターのロックンロール風味に則った形で、一周回って熱いリスペクトにあふれている。
 前回431位はPJ Harvey 『Stories From the City, Stories From the Sea』。今回は313位。




432位 Usher 『Confessions』
(初登場)

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 90年代から活動している、芸歴の長いR&Bシンガーの4作目が初登場ランクイン。キャリア的にもブレイクした時期も、ほぼディアンジェロとかぶっているのだけど、あんまりカリスマ性はないっぽい。
 当然、初めて聴いたのだけど、いい意味でクセはない。万人向けの最大公約数的なR&Bは、ほどよいブレイクビートとメロウさとがミックスされて、聴きやすい。引っ掛かりは少ないけど、ジャマにはならない。そんな音。
 皮肉っぽく書いちゃってるけど、俺的にはここにランクインする音楽じゃないんじゃね?って印象。トップ40ヒットメイカーとしては高いアベレージを持つアッシャー、時代を超えて普遍的か?って疑問が残る。
 みんながみんな、尖った音楽をやる必要はなく、万人に受け入れられやすい音楽にも、ちゃんとニーズはある。彼はそっちで評価されるべきアーティストだと思うのだアッシャーって。
 これがめぐり巡って四半世紀くらい経ってたら、また別の価値観で再評価されるのかもしれないけど、今のところは時期尚早。そういうの、他にもいるんだけど。
 前回432位はBrian Eno 『Here Come the Warm Jets』。今回は308位。




433位 LCD Soundsystem 『Sound of Silver』
(- → 395位 → 433位)

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 ネーミングから何となく、先入観でテクノユニットの人たちかと思っていたのだけど、「ダンス・パンク」だって。初めて聞いたわそのジャンル。そんな彼らの2枚目のアルバムが初登場ランクイン。
 実際に聴いてみると1曲目、そんなwiki知識とは全然違うテクノチューン。『BGM』期のYMOがそのまま進化したような、クールなトラックは案外気に入っている。
 もうひとつのワード「エレクトロクラッシュ」=「1980年代の音楽であるニュー・ウェイヴ、ポストパンク、エレクトロ、ディスコ等を、1990年代後半のダンス・ミュージックの概念で解釈・再構築を行ったもの」で捉えた方がスッキリする。子細すぎるジャンル分けは賛否両論あるけど、ある程度の道標があった方が、敷居も低いしわかりやすい。
 でLCD、シンセで作り込んだりガレージパンクっぽさもあったり、楽曲によってアプローチを変えており、これは器用と言うより必然に応じた努力の成果と思いたい。前の発言を覆すわけじゃないけど、ひとつのジャンルに囚われ過ぎてちぐはぐなアレンジになるよりは、むしろそっちの方が自然。
 テクノポップとレイヴの境目を行き来する彼らの音は、ビギナーにもマニアにもリンクする隙間がある。こういうのなら俺も抵抗なく聴ける。
 前回433位はGeorge Harrison 『All Things Must Pass』。今回は368位。




434位 Pavement 『Crooked Rain, Crooked Rain』
(208位 → 212位 → 434位)

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 ちょうどナイスなタイミング、っていうわけじゃないけど、コレ書いてる時にちょうど来日中のペイヴメント。199位『Slanted and Enchanted』、265位『Wowee Zowee』に続いて3枚目がランクイン。
 90年代オルタナバンドの中でも、日本では親しみやすくいまだ支持の熱い彼ら、ここで鳴らされる音は当時のローファイに沿って無愛想で朴訥で、っていうかヘタ。リズムはヨレてるしピッチも曖昧だし、でもそんな生身の人間臭さにシンパシーを感じたファンが、アメリカにも日本にも多かった。
 比較的近いテイストのバンドとして、WeezerやFlaming Lipsがいるのだけど、前者は1枚のみ、後者はランクインすらしていない。別にランクインしてるから上だ下だってわけじゃないけど、3枚も入ってる彼らとは何が違うのか。謎だ。
 前回434位はBig Star 『#1 Record』。今回は474位。




435位 Pet Shop Boys 『Actually』
(初登場)

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 日本にはあまり伝わってないけど、いまだEU圏では根強い人気がペット・ショップ・ボーイズの2作目が初登場。何回も書いてるけどこのランキング、なぜか80年代アルバム/アーティストを冷遇(?)しており、彼らがランクインしているだけでもかなりの快挙。
 特に80年代シンセポップは滅法毛嫌いしているのか、あれだけ売れたTears for FearsもO.M.D.もa-haもHuman Leageも、一切ランクインしておらず、ペットショップ以外は167位デペッシュ・モードくらい。しかも一枚ずつだけだし。せめてYMOくらいは入れとこうよ。YazooやUltravox入れろってゴネてるわけじゃないんだからさ。
 冷静に考えてみると、なんか恥ずかしいネーミングのペットショップ、おそらく自分らも長く続けるつもりなかったからテキトーに名乗っちゃったけど、ブレイクしてしばらくは後悔してたんじゃないかと想像する。改称するつもりがタイミング逃しちゃって、そのうち考えるのもめんどくさくなっちゃって現在に至っちゃったけど、一周回って気に入っちゃってる的な。
 ここにランクインしたのもそうだけど、上に挙げた以外にもウジャウジャいたシンセポップユニットの中で、なんで彼らだけ生き残ってるのか。デペッシュはビジュアル戦略も華やかだしわかるんだけど、この2人って、正直華は薄い。っていうか、ない。
 シンセポップの歴史はハード/ソフトウェアのそれと連動しており、多くのユニットはサウンドコンセプトをシンクロさせていった。多くのユニットが「アレもできるしコレもできる」マシンスペックの魔力に振り回されて、あさっての方に行って戻って来れなくなる死屍累々。
 そこそこのキャリアと基盤を持ちながら、「Go West」なんてベタなカバーやっちゃうペットショップは、そういう意味では地に足がついている。ほどほどの大衆性を残しつつ、新たな方向性を目指しつつも、実はそこまで新しくもない、そんなダサさを象徴しているのが、突き詰めてゆくとユニットネームに由来している。
 やっぱネーミングは大事だな、という結論。
 前回435位はNirvana 『In Utero』。今回は173位。




436位 2Pac 『All Eyez on Me』
(初登場)

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 2Pac4枚目にして最後のオリジナルアルバムが、なぜかこのタイミングで初登場。ジミヘン同様、亡くなった後の方がリリースアイテムも多い彼だけど、ランクインしてるのはこれだけ。
 あんまり知らない俺が言うのもなんだけど、もう何枚か入っててもよかったんじゃないか、と。カニエ・ウエストなんか6枚もランクインしてるんだから、1枚くらい削ったっていいだろうに、と余計なお世話を焼きたくなってしまう。
 すでにキャリア的には末期に差し掛かっていた2パック、この頃、身に覚えはあるけどグレーな疑いで収監されていた。保釈金を立て替えてもらうため、デスロウ・レーベルでアルバム3枚製作するという契約を飲まざるを得なかった。
 その契約消化のためのアルバムがコレなのだけど、まぁ不本意だったこともあって早く終わらせたかったのか、異例の2枚組となっている。普通なら水増し感があってもおかしくないのだけど、基本、どのトラックもちゃんと作られており、俺が聴いても手抜き感はあまり感じられない。
 トータル2時間を超える超大作なため、全部聴くにはそこそこ覚悟が必要だけど、他のギャングスタのアルバムよりも退屈しないところは、やはり芸達者だったのかね。いまだリスペクトされ続けているのも納得できる。
 前回436位はBeck 『Sea Change』。今回は圏外。




437位 Primal Scream 『Screamadelica』
(初登場)

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 ロキノンがしょっちゅうリコメンドしているせいなのか、なぜか日本では根強い人気があるプライマルスクリーム。ってか好かれてるボビー・ギレスピー。
 多分偶然だと思うけど、普段ロキノンを買わない俺が、何かのはずみで買ってしまうと、結構高い確率で彼らの記事が載ってたりリマスター再発されてたり、なぜか来日公演とシンクロしていたりする。去年も『Screamadelica』全曲再現ライブで来日しているタイミングで買ってたりして、何かしらの多発同時性を感じざるを得ない。って大げさだな。
 で、プライマル、個人的には『Screamadelica』より、この後の『Give Out But Don't Give Up』が好きで、何年かに一度聴きたくなる。なんかのCMで「Rocks」が使われててオッと反応したり、実は嫌いではない。っていうかその時代のプライマルが好きなだけで。
 80年代後半~90年代前半のアシッド風味UKダンスロックは、俺世代のロック好きの多くが通ってきた道であり、他に挙げるとハッピー・マンデーズやストーン・ローゼスその他もろもろといったところ。この2バンドは俺も好きだったのだけど、『Screamadelica』には食指が動かなかった。
 私見として、60年代ストーンズリスペクトなロック性と、充分振り切れていないハウス/ダブ的なアプローチとが噛み合わさっていないように感じたのだ。なので、ロック性を強調した『Give Out But Don't Give Up』には食いついたわけで。
 『Vanishing Point』以降のアルバムはほぼ興味なかったため、聴いてないのでなんとも。おそらく逆に振り切ってると信じたい。ボビー・ギレスピー中途半端じゃない方が光る。
 前回437位はLil Wayne 『Tha Carter III』。今回は208位。




438位 Blur 『Parklife』
(初登場)

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 近年はほぼ開店休業中ということもあって、ゴリラズでの活動がメインとなってしまったデーモン・アルバーン。そんな彼の所属するブラーが、このタイミングで初登場だけど、これもゴリラズ効果だよな。
 一応、名義上は存続しているブラーだけど、今さらメンバーと顔合わせる気力さえなさそうだし、かといって解散宣言すると変にプロジェクト化して面倒が増えるし、「やる気はあるよ、みんなとタイミングが合えば」って前向きな姿勢見せつつ、そのままフェードアウトしていくのかと勝手に思ってたら、アララ今夏再結成して、サマソニ出演決定だって。
 今のところ新曲リリースはなく、とりあえずライブの予定しか決まってなさそうだけど、そんな感じでまとめちゃった方がおそらく無難。クオリティ的にもセールス的にも『Parklife』超えは無理なのは、本人たちも周囲もわかってることだし、変に晩節汚さず、ファンサービス的なヒットメドレーに徹した方が、誰も傷つかない。
 このアルバムの前にリリースされた『Modern Life Is Rubbish』は、当初XTC:アンディ・パートリッジが途中までプロデュースしていたのだけど、あまりにXTC臭が強すぎた、っていうか売れそうにない曲ばかり作っていたため、降板させられている。スタジオの魔術師:アンディとのレコーディングは楽しかったことは想像できるけど、周囲で動く金のレベルはどうひいき目に見たってブラー>>>>XTCだったろうから、ビジネス的な判断としては正しかったことは、のちの歴史が証明している。
 なので初期ブラー、いにしえのニューウェイヴ時代から音楽を聴いてる人にとっては普及型XTC(『Skylarking』以前)であり、どこを切ってもほのかなXTC臭を感じ取ってしまう。個人的にはこの時代、ブラー<<オアシスだったため、それほどまともに聴いてきたわけではないのだけれど、四半世紀を経てフラットな立場で聴くと、そんなチマチマした箱庭ポップテイストが気に入ったりもする。
 前回438位はThe Cure 『Boys Don't Cry』。今回は圏外。




439位 James Brown 『S** Machine』
(初登場)

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 54位『Star Time』65位『Live at the Apollo, 1962』に続き3枚目、代表作ゲロッパが、なんと初登場だったんだ。前者がベストで後者がライブ、そしてコレがライブとスタジオ半々。コンセプチュアルなベスト『In the Jungle Groove』が入ってないのが、ホント惜しまれる。
 スタジオではどう頑張っても「威勢のいいR&B」程度にしか仕上げられなかったJBが業を煮やし、自腹を切ってライブ録音を敢行、望み通りのグルーヴが得られたのが『Live at the Apollo, 1962』だったすると、そのグルーヴを自在に操れるようになった成果として産み落とされたのがこのアルバム、っていうか『S** Machine』という曲だった。
 グルーヴとは何ぞや?という問いに対し、リズム隊のコンビネーションやらリズムの緩急やらテーマやらコール&レスポンスやら、あらゆる見方が出てくる。それをシンプルな答えで解決したのが、この瞬間のJBだった。
 「俺が歌えばファンクで、俺が踊ればグルーヴ」。
 ここでJBは、そして人類はファンクを定義づけた―。
 ちなみにブーツィー・コリンズはここで腕を上げ名を上げるのだけど、ほんの一年足らずで脱退、その後はジョージ・クリントンとつるんでファンクの一碧:P-Funkを築き上げてゆく。おそらく音楽的な相違なんて高尚な理由じゃなく、ギャラ含めた労働条件なんじゃないかと思われる(多分)。




 ちょっと探ればいくらでも出てくるだろうとタカをくくってたけど、案外ヒットしないカバー曲。特にこのタイトル曲なんてセンシティヴど真ん中なため、全然出てこない。
 なので、困った時の西城秀樹。やっぱやってた「Try Me」。まだデビュー間もない73年のライブ音源だけど、攻めた選曲だな。さすがにまだ英語は拙いし、人情噺的なモノローグも入っててアイドル路線まっしぐらだけど、やっぱ歌はメチャメチャうまい。これで18歳だもんな。昔ってやっぱ、時間軸狂ってるな。
 前回439位はSam Cooke 『Live at the Harlem Square Club, 1963』。今回は240位。




440位 Loretta Lynn 『Coal Miner's Daughter』
(初登場)

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 おそらく日本で有名な女性カントリーソングと言えば、去年亡くなったオリビア・ニュートン=ジョン歌う「カントリー・ロード」だろうけど、あれって実はオリジナル書いたのは男性のジョン・デンバーで、しかもオリビアはオーストラリア出身。まぁそれだけなんだけど。
 そんな感じで、日本ではほぼ知られてないジャンル:アメリカン・カントリーにおいて、女性ではドリー・パートンと並んでフロンティアとされるロレッタ・リンの代表作が初登場。近年、ジャック・ホワイトとコラボしたのが話題になったので、それがきっかけとなったのかもしれない。
 日本で例えれば、八代亜紀がKing Nuとコラボしたようなものかな。想像しづらいけど。
 で、ロレッタ、60年にレコードデビューしているのだけど、猫も杓子もフラワームーヴメントでラブ&ピースだったにもかかわらず、この時期はガチガチの保守的なルーツカントリーに徹している。で、何があったのか70年代に入ると社会意識に覚醒して、産児制限やベトナム戦争への嘆きやら、ジャンルのセオリーからはみ出したテーマを歌うようになる。
 尖ったテーマを書いてレコーディングはしたけど、リリースは止められていた時期に製作された『Coal Miner's Daughter』は、表向きは「炭鉱夫の娘」など、土着的で大衆の共感を呼びやすい作風となっているけど、抑えきれない衝動が力強い歌声にあらわれている。後進のエミル―・ハリスやリンダ・ロンシュタットほどポップではないけど、彼女が旧態依然のカントリー界を揺さぶった影響はデカい。
 他のランキングは、『All Time Greatest Hits』が477位→478位ときて、今回は圏外。
 前回440位はThe Pogues 『Rum Sodomy & the Lash』。今回は圏外。