321位 Lana Del Rey 『Norman F***ing Rockwell!』
(初登場)

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 根拠も何もないけど、ラナ・デル・レイという語感や響きから、ゴシックまたはメタル系の女性アーティストと思っていたのだけど、全然違った。ダンス要素はほとんどないコンテンポラリー・ポップで、ややバロック風味も感じられるところから、フィオナ・アップルあたりと同じくくりなのかな?知らんけど。
 見た目はキレイめのお姉さん、でも一皮むくと中身はいろいろこじれてるらしく、あちこち各方面へ向けて毒を吐いている。古き良きアメリカの象徴:ノーマン・ロックウェルを冒涜したタイトルをわざわざ選ぶところなんかは、スケールの大きい厨二病テイスト満載。日本で例えるなら、サザエさんに中指立てるようなものだよな。または、世界レベルの便所の落書きとも。
 ただそんな生き方、やたらめったら四方八方にアンチを唱えてアイデンティを保持し続けるのは、正直賢いとは言えない。否定から始めることが次第に目的化し、ふと立ち止まって冷静になると、その足もとは脆くも崩れ去る。基盤を失ったエゴは自家中毒を起こし、ただでさえ危ういメンタルは、ゼロへ収束してゆく。
 彼女の出世作「Video Games」はフィオナ似のバロック・ポップ、現時点での最新作『Blue Banisters』では、気の抜けたケイト・ブッシュみたいになっている。アルバムごとにコロコロ変わるその作風は、彼女の表現欲求に基づくものなのか、はたまた単なる迷走なのか。今後が気になる人だ。
 前回321位はNick Drake 『Pink Moon』。今回は203位。




322位 Elvis Presley 『From Elvis in Memphis』
(188位→190位→322位)

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 リアルタイムを知らない世代が抱くエルヴィスのイメージは、おおむね初期の「監獄ロック」や「ラブ・ミー・テンダー」を経て、その後は映画スター→激太りしたジャンプスーツ姿の晩年、といったところ。すごくザックリはしょってるけど、ほぼ間違ってないはず。
 ロック史の流れでみるとエルヴィス、50年代はロックンロールのフロンティアの一人として、またそこからずっと飛んで、70年代はカリカチュアされたロックスターとして、ほぼ定義づけられている。よほどのマニアでもない限り、彼の60年代は空白と思っている人が大多数である。
 その時期、彼の活動の中心はハリウッド、ほぼ映画出演で占められていた。一応、レコードは出てはいるのだけど、ほぼ映画のサントラ中心、映画自体の評価も成績も芳しくなかったため、いま現在も軽んじられた扱いとなっている。
 兵役に就くくらいまででピークを迎えて以降、エルヴィスがメインストリームの座に返り咲くことはなかった。前線復帰した頃、音楽シーンの主流はすでにロックに取って代わられていた。ロックンロールはロックへと進化を遂げたけど、かつてあったはずのロールは、重要な要素ではなくなっていた。
 もはや時代をリードする存在ではない。ただ、そんなポジショニングだけでは推し量れないポテンシャルは変わらなかった。映画出演をやめ、音楽界へ復帰したエルヴィスは、時流に合わせて軌道修正しつつ、本格的な復帰へ動きことになる。
 バラードからロカビリー、ソウルフルなナンバーまで変幻自在、とてもブランクがあったとは思えないヴォーカルの巧みさ、そして妖艶ぶり。いやマジでイメージ全然変わる。エルヴィスが死んだって?そんなの嘘だ。彼はいまも、そしていつだってここにいる。
 前回322位はRandy Newman 『Sail Away』。今回は268位。




323位 The Clash 『Sandinista!』
(400位→407位→323位)

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 本ランキング16位・25周年エディションが発売された『London Calling』、間もなく40周年エディションがリリースされる『Combat Rock』に挟まれて、今のところ置いてきぼりにされてる感のある『Sandinista!』。リリース40周年を迎えて、企画されたのは「The Magnificent Seven」の新作PVのみだなんて、もうちょっとアニバーサリー盛り上げろよエピック、とさすがに言いたくなってしまう。
 アナログ3枚組/CD2枚組/トータル2時間半というボリュームは、通して聴くのはなかなかムズイ。厳選してコンパクトに一枚にまとめた方が聴きやすいのだけど、マジでどの曲もクオリティ高いしキャッチーだし、選曲も構成もツッコミどころがないし、それもちょっと至難の業だ。
 ニカラグアの左翼ゲリラ組織を由来としたタイトルや、「Somebody Got Murdered」や「Police on My Back」など、物騒な単語が並ぶ曲名から、硬くシリアスなアルバムと捉えられがちだけど、基本はよく練られた多彩なロックンロール・サウンドである。ダブやラップにレゲエ、ジャズやスウィング、その他もろもろの要素を手当たり次第ぶち込んでごった煮にしている。
 そんなカオスっぷりを強引にまとめ上げてしまったのが、当時のバンドの勢いでありポテンシャルであり、そして絶妙のタイミングだったのだろう、と久しぶりに通して聴いてみて思った次第。イヤ濃いわダレないわ、たっぷり2時間半なのに。
 かつてクラッシュを代表するアルバムといえば、デビュー作と『London Calling』が二代巨頭、アメリカナイズされた王道ロックの『Combat Rock』とされていた。多様なジャンルからのエッセンスをパンク・サウンドに還元した『London Calling』から一歩進んで、「俺たちがプレイすりゃ何でもパンク」と言い切ってしまった『Sandinista!』は、ミクスチャー・ロックの先鞭を切った最初期のアルバムだったのでは、と今にして思う。
 なのでエピック、正当な評価にはまだ至っていない『Sandinista!』をきちんと定義づけしようよ。デモ・テイクや未発表ライブもまだたっぷりあるはずだし。
 前回323位はThe Police 『Ghost in the Machine』。今回は圏外。個人的には、ちょっと悲しいな。ポリス好きなだけに。




324位 Coldplay 『A Rush of Blood to the Head』
(465位→466位→324位)

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 現在進行形のロック・バンドであり、セールス動員も飛び抜けているはずなのに、いまだ小物感の抜けないコールドプレイ。そんな彼ら2枚目のアルバムが大きくランクアップ。
 全世界で1400万枚のセールスを叩き出し、各国でゴールド/プラチナ獲得しているので、アラサー以下には絶大な人気があるのだろうけど、名盤というには格が追いついてない気がする。っていうのは偏見なんだろうな。
 メンバー自身が公言しているように、U2からの影響が色濃いサウンドは、大きくはみ出したり破綻することもなく、丁寧に作られた感はある。おそらくこの人たち、ほんとに初期のU2が大好きで、シンプルにリスペクトしたサウンドを具現化するため、日夜努力したのだろう。
 政治的・社会派メッセージは極力薄め、若きエッジの創り出したサウンド・メイキングのみにフォーカスしたバンド・コンセプトは、21世紀型U2に見切りをつけたロック・ファンからも強い支持を受けた。カーステでもイヤフォンでも対応できる、間口の広い大人のロック。多分、AMやレコードとは相性悪そうだよな、聴いたことないけど。
 つい先日、ボノとエッジは戦時下のウクライナを訪れ、市民の臨時避難所となっているキーウの地下鉄駅でサプライズ・ライブを決行した。遠くで鳴り響きサイレンをバックに歌われた「Sunday Bloody Sunday」、そして「With or Without You」は、その場にいた避難民らを、そして争いを忌避する世界中の人々の琴線を震わせた。
 売名行為と言われるのはわかってる。でも、やらない善よりはやる偽善。彼らはそこへ行き、そして歌を捧げた。そして、多くの民の心を癒すことができた。
 政治的なスタンスを表明していないコールドプレイに、彼らと同じことができるか、と言いたいのではない。ただ2人と同じ丸腰で、打ちひしがれた民衆らの心をつかむ歌を持っているか。そういうことだ。




 最近、高校生の息子に教えられて、やっと読み方を覚えたAimer、エメ。ここ2、3年で出てきた人と思っていたのだけど、経歴はそこそこ長いらしく、10年前、メジャーデビュー前にリリースしたカバー・アルバムがあった。コールドプレイのファンの間では人気の高い、ていうか俺が知らなかっただけの「Viva la Vida」をカバーしている。
 オリジナルを聴いてからAimerヴァージョンを聴いたのだけど、あら彼女のアプローチの方が俺好きだわ。コールドプレイがスケール感あふれる一大ロック・シンフォニーに仕上げているのに対し、脱力したジャズ・ボサノヴァはシャレオツ感を前面に出して対極だけど、こっちの方が曲には合っていそうな気がする。
 案外見直したよAimer。ちょっと他の曲も聴いてみよう。
 前回324位はDavid Bowie 『Station to Station』。今回は52位。




325位 Jerry Lee Lewis 『All Killer No Filler!』
(239位→245位→325位)

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 なんと驚くことに、まだ生きていたジェリー・リー・ルイス。エルヴィスやリトル・リチャードらと肩を並べる、いわば教科書レベルのレジェンドなので、もうずいぶん前に亡くなっていると勝手に思っていた。失礼。
 一昨年くらいまでは、Tボーン・バーネット:プロデュースでニュー・アルバムのレコーディング中とか、85歳を記念してのバースデー・ライブ配信など、そこそこ話題もあったみたいだけど、そろそろ米寿か。そりゃおとなしくもなるか。
 ギターじゃなくてピアノをプレイするロックンローラーというのはイメージしづらいのだけど、前例がなかった分、有利な立場にあったんじゃないかと推察できる。何事も差別化は大事だし、そのおかげもあって後世に語り継がれるレジェンドとして、今も世界中からリスペクトされているのだし。
 彼らが作り上げてきた要素をベースに、ロックンロールは発展し、その過程でロールの部分がなくなった。今どきロックを聴く新規ユーザーは少なくなり、ルーツを遡って聴く者は、さらに希少な存在となった。
 別に揶揄するつもりは一切ないのだけど、誰が聴いてるんだろうか?イヤ学習という意味合いではなく、純粋にこの時代の楽曲に惹かれている層が。
 昭和歌謡が好きな小学生みたいなものか。どちらにせよ、かなりニッチだな。
 前回325位はEric Clapton 『Slowhand』。今回は圏外。前も書いたけど、クラプトンは今回全滅。上の世代のレジェンドはどうにか残っているのに、この差はなんだ?




326位 Prince 『Dirty Mind』
(202位→206位→326位)

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 なぜか前回まで評価が高かったけど、今回は大きくランクを落とした『Dirty Mind』。以前も書いたけど、『Around the World in a Day』も『Black Album』も『Musicology』も入ってないのに、コレが入ってるのが、そもそも不思議でならない。アメリカ人の平均的な好みとは思えないんだけどな。謎だ。
 自他ともに認めていた天才の殿下だったけど、デビュー当初はそれでも少しはメジャーに忖度していたのか、メロウなブラコンっぽい曲もいくつかあった。一応試してみて、やっぱ似合わねぇと思い直したのか、この3枚目ではコンテンポラリーR&Bもクワイエット・ストームもまるで無視した、力技ゴリゴリのファンクで押し切っている。
 普通はディープになればなるほど、アンサンブルも大所帯になって複雑になったり、終わりどころの見えないカオスなインプロビゼーションが延々続いたりするのだけど、ここで殿下が試みているのは真逆の手法である。チープなリズムマシンとキーボード、時々ギター・カッティング。この頃はまだベース入れてたんだな。
 後年、どこからか流出したブート音源なんかと同じ音圧レベルである。まるでデモテープじゃねぇかと見るべきか、完パケ前でもここまで仕上げていたかと見るべきか。
 必要最低限の音のパーツ、シンプルだけど工夫に満ちたリズムアプローチ、そして奇抜なエロティック・ビジュアル。この時点でおおよそ、殿下の基本フォーマットが完成している。そういう意味で言えば『Dirty Mind』、あなどれないアルバムである。
 なんだ、結局持ち上げちゃったな。
 前回326位はThe Cure 『Disintegration』。今回は116位。




327位 The Who 『Live at Leeds』
(169位→170位→327位)

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 ロック名盤ガイドでは長らく必聴とされていたフーのライブ・アルバムだけど、今回は大きくランクダウン。今ランキングでは、往年のロック・ライブ盤がことごとく冷遇されており、ここまで登場したのが105位のオールマン・ブラザーズと279位ニルヴァーナ『MTVアンプラグド』、あと305位キッス。たった3枚。
 昔と違って映像コンテンツの制作が容易になった昨今、わざわざ音源のみのアイテムを買うのはよほど酔狂なファンくらいしかいないし、今後、先細りしてゆくのは避けられない流れである。それこそフーやディラン、ストーンズのように、歴史のあるアーティストの発掘音源はまだ需要はありそうだけど、状態の良い音源はもう、あたかた掘り尽くされちゃっているだろうし。
 ライブバンドとしての彼らのピークを収めた音源ということは知ってて、ちゃんと聴くのは初めてだったのだけど、イヤこりゃ熱量ハンパない。今のようにサポートメンバーなんか入れてなかった60年代、機材スペックも貧弱であったはずなのに、個々のパーツの音圧がケタ違い。
 なんとなくだけどフー、俺の中では「リフ中心で全体をまとめ上げるギター:豪放磊落天真爛漫なドラム」「じゃない方のヴォーカルとベース」という認識だったのだけど、いやいやベースもエキセントリックだわ。隙あらばリードベースみたいなプレイもぶっ込んでいる。ロジャーダルトリーは相変わらず一本調子だけど、でも時々ロバート・プラントばりにシャウトするシーンもあったりする。ハードロック・バンドとしてフーを評する意見があるのもわかる。
 いま俺が聴いてるのは14曲収録ヴァージョンだけど、オリジナルはたった6曲のシングル・アルバムだった。2枚組の方がインパクトあったし、また評価も違ってたと思うのだけど、なんで短縮版にしたんだろうか。謎だ。




 316位『Sell Out』の時、紹介だけして動画貼り付けなかったコレクターズを今度こそ。さらに調べてみると彼ら、同時期のシングル「Pictures of Lily」、邦題「リリーのおもかげ」をカバーしていた。しかもオリジナルの日本語意訳で。
 こっちの方が、よりモッズ愛にあふれてて、しかもちょっぴりキュートでずっといい。前回スルーしといてよかったな。
 前回327位はLiz Phair 『Exile in Guyville』。今回は56位。




328位 Vampire Weekend 『Modern Vampires of the City』
(初登場)

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 名前だけは知ってたヴァンパイア・ウィークエンドの3枚目が初登場。確かデビュー間もない頃、ソニーのCMで聴いたことあるかもしれないけど、勘違いかも。ほぼ初めて聴いたけど、嫌いじゃない。
 「ロック」というよりは、「ロックもできる」パワーポップ・バンドといった印象。ちょっと憂いのあるピアノ・バラードや、ガレージパンクをベースにしたアッパー・チューンもあったりして、いろいろ引き出しは多いけど、根っこはポップ。ジェリーフィッシュが堅気になったら、またベン・フォールズが意欲的になったら、こんな感じで継続していたかもしれない。
 バイオを見ると、2006年デビューでメンバーは全員アラフォー。なので、世代的にはグランジ以降のメロコアやエモの影響下のはずなのだけど、アフロ・ポップを始めとしたワールド・ミュージック系にインスパイアされているらしい。
 ただ実際に聴いてみると、お行儀の良いパワー・ポップで、言うほどの無国籍感は感じられない。ネット環境の進歩によって、アラスカやコートジボアールの音楽も欧米レベルになった現在、これが彼らにとっての無国籍テイストなのだろう。
 俺のようなアラフィフ以上の世代にとってのワールド・ミュージックは、90年代ミュージック・マガジンによって刷り込まれた、もっとドメスティックなフォークロア的な色彩が濃いものだった。セネガルやミクロネシアでもリアルタイムでビヨンセやBTSの新譜を聴けるようになった現在、どの国のチャートもEDMベースのコンテンポラリーR&Bが主流となっている。クラシカルな民族音楽を聴けるのは、おそらくNHK–FMくらいなのだ。
 315位にランクインしたロザリアもまた、スペイン固有のフラメンコを取り込んだR&Bによって、ワールドワイドの成功を手中にしている。物心ついた頃からボーダーレスの環境に馴染んでいる彼ら世代が中心となって、今後は従来の価値観に囚われない音楽を創造するのかもしれない。
 他のランキングは、『Vampire Weekend』が第2版で430位、今回は圏外。
 前回328位はSonic Youth 『Daydream Nation』。今回は171位。




329位 DJ Shadow 『Endtroducing...』
(初登場)

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 1996年リリースということは、四半世紀前か。もうちょっと古いと勝手に思ってた。90年代レイヴ・カルチャー以降の流れにひとつの区切りをつけた、DJシャドウのデビュー作が初登場。
 大量の中古レコードから得た膨大な知識を駆使して、民生品のアカイのサンプラーとターンテーブルだけで作り上げたトラックからは、ガチのレコード・コレクター:Josh Davisの才気煥発ぶりが封じ込められている。適当なJBやレアグルーヴをくっつけて、威勢のいいライムをがなるだけだった、そんな安直なヒップホップを一気に古臭くしてしまう、彼のこだわりと美学が結集している。
 ブラック・ミュージック固有の揺れるグルーヴ/リズムとは真逆の考えで、リズム・マシンが発する単調なミニマリズムを反復させることでトランス状態を誘発するのが、90年台テクノの基本コンセプトだった。そこから一歩進んで、ランダムにカットアップしたリズム・パターンをヒップホップに持ち込んだのがトリップホップであり、それを先導していたのがDJクラッシュだった。
 アッパーなライムやフローさえ雑味と捉え、さらにはヴォーカルもエフェクトの一部として並列に扱った。時に流麗な、時に粗暴なビートで空間を埋め尽くした。
 静寂と混沌とを等価とすることで、シンフォニーとランダムなビートは共存し、互いに侵蝕し合った。本人は否定するかもしれないけど、それはアートの域に達していた。
 その後、多くのトラックメイカーがこれを基点とし、発展させるかまたは壊そうとした。ただ育て方にも壊し方にも、オリジナリティとセンスがいる。クラッシュほどうまく組み上げ破壊できた者は、どれだけいるのだろうか。知らんけど。
 前回329位はJames Brown 『In the Jungle Groove』。今回は圏外。えッ、これがランク外って。そりゃネタ元として使い尽くされた感はあるけど、まだまだ需要はありそうだよ?
 



330位 The Rolling Stones 『Aftermath』
(109位→109位→330位)

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 多くのレパートリーをカバー曲に頼っていたストーンズ、初めて全曲オリジナルで構成した4枚目のスタジオ・アルバム。初期のアルバムの中では人気も高かったはずだけど、今回は200位以上もランクダウン。
 ライブのセットリストでは定番の楽曲も多いし、言っちゃ悪いけど『Bridges to Babylon』より、ファンからの評価も高いはず。ただ冷静に見てみると、正直、出来不出来の落差は激しいよな。
 主にブルースやR&Bのカバー中心で、特別オリジナルを書く必然性を感じていなかったストーンズの面々に対し、「いいから書けとにかく書け」とケツを叩いていたのが、悪名高いマネージャーのアンドリュー・ルーグ・オールダムだった。バンドの成長やらビートルズへの対抗心やらは建前で、単純に印税率への執着心が、結果的に彼らの才能を開花させた形となった。
 ただこの時点ではストーンズに限らず、どのバンドも周囲の大人に搾取されまくり、手元には残るのはほんの日銭程度だった。そんな劣悪な状況から抜け出すため、経済学部出身のミックが頭をひねり、独立レーベル設立に動くことになるのだけど、それはもう少しあとの話。
 おそらく錦鯉やかまいたち以上の過密スケジュールの中で作られているため、ブルース・スタンダードのコード進行をまんまパクったような曲も混じっている。締め切りに追われて適当にまとめたっぽい曲もあるにはあるけど、のぼり調子だった彼らの勢いで強引にまとめられている。
 やっつけ仕事みたいな曲だって、半世紀も経てば古典になる。まさかそこまで残るだなんて、また演じ続けるとは、誰も予想し得なかった。少なくとも、どうにか来週くらいまでは生き残ろうとする、そんな刹那ながむしゃらさは伝わってくる。




 それぞれのバンド解散後、ジュリーとショーケンが手を組んだ伝説のバンドPYG、アルバム1枚のみの短期間で自然消滅してしまったけど、ライブはそこそこ数をこなしていたらしい。
 『FREE with PYG』はほぼ半分、洋楽カバーで占められており、本格派を目指していただけあって演奏は盤石かつ揺るぎない。ここでプレイされている「Sympathy for the Devil」も、ファンキーなオルガンがリードするインプロ・パートが鬼気迫っているけど、ヨタって呂律の回らないショーケンのヴォーカルも、別の意味で鬼気迫っている。
 前回330位はNeil Young 『Tonight's the Night』。今回は302位。