241位 Massive Attack 『Blue Lines』
(391位→397位→241位)

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 今はすっかりコンセプチュアル・アートの方が本業になって、その一環で音楽活動もやってます的な、90年代トリップホップを代表するマッシヴ・アタック、デビュー作が着実にランクアップ。当時、アメリカではほとんど評価されず、主にUKオルタナ/レイヴ界隈での支持がおおかただったのだけど、映画『マトリックス』でフィーチャーされたことで世界的に火がついて、一気にメジャーになった。
 いろいろなレビューに目を通してみると彼ら、トリップホップにカテゴライズされていることから「ヒップホップからの影響が濃い」という風になっている。いるのだけれど、俺の印象だと、どちらかと言えばUKソウル、Soul II Soulらグラウンド・ビートの亜流・発展形なんじゃね?と思っている。90年代という時節柄、ヒップホップ・カルチャーからの影響を排除する方が難しいし、エッセンスを拝借しているのは確かなんだけど、その後の方向性からすれば、もっとアンビエント含めたテクノからの影響の方が強いでしょ。
 ブリストルだエレクトロニカだというのを別にして単純に、ソウルフルな女性ヴォーカルとグルーヴィーなリズム・セクションの組み合わせが俺的にツボなので、この『Blue Lines』は大好物なのだけど、でもこれ以降になると、ここからの解体=アブストラクト要素が多くなって、ちょっと苦手になってくる。テクノじゃなくてR&Bテイストが強くなっていけば、尖った要素も丸くなってマスに受け入れられやすくなったはずなのだけど、それじゃただのアシッドジャズか。
 あれこそ一過性で、急速に衰退していったジャンルだから、そっちに行かなくて正解だったのかも。そういえば懐かしいよなコーデュロイとか。まだやってんのかな。
 他のランクインでは、代表作『Mezzanine』が408位→圏外と来て、今回383位と復活。前代未聞のスタイルでのリイッシューが話題となって、最注目されたんじゃないかと思われる。詳細はその時に。
 前回241位はReplacements 『Let It Be』。今回は156位。




242位 The Velvet Underground 『Loaded』
(110位→110位→242位)

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 ヴェルヴェッツのアルバムを格付けすると、圧倒的にデビュー作のバナナ・ジャケットか、2枚目『White Light White Heat』が8割近く票を集め、残りの2割が3枚目とライブ盤『Max's Kansas City』、4枚目『Loaded』はほぼガン無視、蛇足とされてきた。それまでバンド・コンセプトや楽曲制作の主導権を握っていたジョン・ケイルが抜け、さらにルー・リードがやる気をなくし、普通のロックンロール主体となった本作は、ロック名盤ガイドでも取り上げられることはなく、リイッシューも後回しにされていた。
 残された他メンバーらの立場からすると、バンドの延命策として、脱アバンギャルドというのは至極真っ当な路線であるはずなのだけど、あまりに脈絡のない路線変更は、当時もそれほど受け入れられなかった。のちにパンク/オルタナの祖として祭り上げられることとなるヴェルヴェッツ、そういったストーリーの流れに反して、無難に凡庸にまとめられた『Loaded』、その首謀者とされるダグ・ユールは、長らく戦犯扱いされていた。
 それが時代を経て世紀を跨ぎ、いつの間に『Loaded』の評価が上がっていた。リリース45周年の6枚組エディションまでリリースされているなんて、イヤ世の中も変わった。しかし45周年って、なんでこんな中途半端なんだ。
 で、オリジナルの内容はといえば、ソロ転向後のリードがセルフリメイクした「Sweet Jane」や「Rock & Roll」が収録されており、初心者にも優しい間口の広い作りになっている。ただ「ビギナーにも優しいヴェルヴェッツ」っていうのもおかしな表現で、ここから入ってデビューまで遡っても、思ってたところに着地するとは言い難いので、ビギナー向けというのもちょっと違う。
 ソロ・アーティスト:ルー・リードのルーツを時系列で追うという意味合いで、代表曲が入ってる『Loaded』を聴くのはいいんだろうけど、バナナから順繰りでヴェルヴェッツを聴き進めてゆくと、肩透かしに合っちゃうことになりかねないアルバム、それが『Loaded』である。でも、そんな末期のグダグダ感も含めて「伝説」になっちゃってるのが、ヴェルヴェッツの大物たる所以でもある。
 前回242位はRun D.M.C. 『Run D.M.C.』。今回は378位。




243位 The Zombies 『Odessey and Oracle』
(80位→100位→243位)

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 ビートルズの出現以降、あちこちからウジャウジャ湧いてきた60年代UKビート・バンドの中では、多分、トップ10下位くらいに位置づけられるゾンビーズ、彼らの代表作であり最終作が、前回より大きくポイントを落としてランクイン。60年代後半の「猫も杓子もサイケ」ムーヴメントに便乗して、多彩色でラブ&ピースな世界観を真空パックしたつもりだったけど、大英帝国特有の低く立ち込める曇り空と湿り気も封入しちゃったことから、独特の憂いとぎこちなさがにじみ出ている。
 ジャケットを含めたアートワークこそ、時代を象徴したサイケデリックさが強調されているけど、ビーチ・ボーイズっぽいコーラス・ワーク以外は伝統的な英国ポップスを踏襲しており、ロックのビート感は薄い。それはそれで彼らの個性であり、メロディの秀逸さを証明するものであるのだけれど、こじんまりまとまってしまってる感が先行して、他バンドと比べてインパクトはちょっと弱い。
 代表曲である「ふたりのシーズン」も「She's Not There」も、ロックというより60年代ポップスとしての認知が高いし、多分、本人たちもそこまでロックっぽさを強調しているようにも見えない。無理に渡米せずに英国内での活動に絞り、スタジオワークをメインとした活動にシフトしていれば、10ccやアラン・パーソンズ・プロジェクトみたいになれたんだろうけど、ちょっと出てくる時代が早すぎた。
 もう少し辛抱強く続けていれば、ビート・バンド番付の中位あたり、キンクスと肩を並べる程度にはなれたのかもしれないゾンビーズ。ただ、次第に作家性を強めてバンド体質からかけ離れてゆくコリン・ブランストーンは、どっちにしろ耐えられなかっただろうし。
 なので、結局のところ、ここが潮時だったのだろう。
 CMで使用されたこともあって、オリジナルを耳にしたことも多い「ふたりのシーズン」、日本でもマーチンやアン・ルイスなど、カバーする人も多いのだけど、ここは妖艶なイントロ~導入部をうまく表現した弘田三枝子のカバーを。昔の歌謡曲だけあって、歌唱力が飛び抜けているのは当然なんだけど、当時のスタジオ・ミュージシャンの演奏力並びに解釈のレベルの高さといったら。アウトロのギターソロなんて、時代は感じさせるけど超絶うまいし聴かせるプレイ。




 前回243位はBlack Sabbath 『Black Sabbath』。今回は355位。




244位 Kanye West 『808s & Heartbreak』
(初登場)

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 またカニエかよ。もう何枚入ってんだよ、だんだん訳わかんなくなってきた。数えてみると5枚目。下位にあと1枚控えてる。
 タイトルが示す通り、いまも根強いファンが多い伝説のリズムマシン:TR-808を活用した、内省的でプライベート色の濃いアルバムということらしい。そこまでヒップホップに詳しくない俺的には、どの辺がネガティヴなのかはちょっと判別しづらい。
 ただ最新作『Donda』が求道的でストイックな内容なのは、俺が聴いてもわかるくらいなので、根は真面目な人なのだろう、というのは感じ取れる。なのでカニエ、実は過去の名作より、その都度最新作を聴く方が興味深い、「この人、この先どうなっちゃうんだろう?」と目の離せないアーティストである。
 アルバム・チャートでドレイクに負けただの、トッド・ラングレンが素材提供したけど、果たして使われてるかどうかわかんねーだの、さして興味がなくても勝手に話題が耳に入ってくるカニエ。なんだかんだ言って、みんながカニエを気にしている。
 前回244位はEminem 『The Marshall Mathers』。今回は145位。




245位 Cocteau Twins 『Heaven or Las Vegas』
(初登場)

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 近年、海外のシティポップ・ファンの間で地味に評価の高い、80年代中森明菜のアルバム『不思議』『クリムゾン』に大きな影響を与えたコクトー・ツインズ、彼らの初期代表作が初登場。ていうか、何で今ごろ?大ざっぱなアメリカ人が、アレ聴いてるの?とか何とか勘繰ってしまうけど、CMJ界隈では支持されてるっぽいコクトー・ツインズ。
 多分、南西部の片田舎じゃ存在すら知られていないだろうけど、カレッジ周辺ではそこそこ需要があるので、薄く広く各地に、彼らのファンは存在する。キュアーやスミスもそこそこ上位にランクインしているくらいだし、結構侮れないマーケット・シェアにはなっている。
 シューゲイザーのルーツとも言える、深いモヤに包まれたリヴァーブ、エコーを引き裂くがごとく荒ぶるギター。そして、神経質かつエキセントリックなヴォーカル。そのモヤの先に見えるのは、実は基本に忠実な、UK発のポスト・パンク/ニューウェイヴ・サウンド。
 なので、そのモヤこそが、彼らの本体である。発信する音やメッセージを曖昧にすることで、アーティストの神秘性はさらに引き立つ。
 何となく察してもらえると思うけど、コクトー・ツインズ、ちょっと苦手だったんだよな、80年代サウンドなのに。ゴシック・ロックの耽美性とナルシシズムに入り込めなかったのだ。
 前回245位はJerry Lee Lewis 『All Killer No Filler! The Jerry Lee Lewis Anthology』。今回は325位。




246位 LL Cool J 『Mama Said Knock You Out』
(初登場) 

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 今年、2度目の「ロックの殿堂」入り候補としてノミネートされたけど、惜しくも逃してしまったLL Cool Jの代表作が初登場。次第にロック以外からの人選も多くなって、次第にブランド力の衰えも感じるHall of Fame、多分、今さら本人的もこだわりはないんだろうけど、でも同じノミネートでJay-Zだけ殿堂入りしたっていうのは、外野から見てもちょっと解せない部分はある。
 俺的にはCool J、ラップ/ヒップホップというより、のちのニュー・ジャック・スウィングにつながるラップ・バラードのフロンティアという側面で見ている。90年リリースのこのアルバムに限らず、80年代リリースのバラード/ジャジー・ラップ系のトラックは、近年のコンテンポラリー・ヒップホップと聴き比べても、ほぼ違和感がない。
 あくまでも「ほぼ」であって、まだサンプリングの許諾関係もユルユルだった昔は、マスター音源とチープなビートボックス、あと時々スクラッチで構成されたシンプルなものが多かった。ただ、そんな黎明期のラフな感じ、感性と思いつきによる手作り感が漂っていることもあって、俺的にはこの時代のヒップホップは、割と気に入っていたりする。
 途中、俳優業をメインにした時期があったため、本業のラッパー活動を知らない世代が存在することも、しつこいようだけどJay-Zに出し抜かれちゃった要因かと思われる。でもそれ言うんだったら、あっちはもうほとんどビジネスCEOじゃね?と、いろいろ問い詰めたくなってしまう。まぁいいや。
 そこまで強く擁護するほどの思い入れはないんだけどCool J、チップマンク・スタイルのヴォーカルが新鮮だった「Around the Way Girl」のポップなセンスには、有無を言わせない完成度となっている。
 他のランクインは『Radio』470位→470位、今回は圏外。デビュー作なんだけど、前回もギリギリ崖っぷちだったしな。
 前回246位はMothers of Invention 『Freak Out!』。今回は圏外。案外ザッパ人気は少ないんだな「Rolling Stone」。『Hot Rats』くらいは入ってると思ってたんだけど。




247位 Sade 『Love Deluxe』
(初登場)

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 80年代にリリースされた初期3枚によって、シャーデーのイメージは完全に確立された。その後のスタイルやコンセプトも、おおよそそれらの延長線上に位置し、大幅な変化はない。
 ただ、カフェバーやクラブ文化に属した選民性、シャレオツなムード演出の機能性が先立っていた80年代を経て、欧米にとどまらないワールドワイドな成功を本格的に収めたのは、90年代に入ってからである。彼女が描く、雰囲気重視のハイソなアーバンライフは、多くの大衆にとってはファンタジーであり、リアルな現実とはかけ離れたものだった。
 アルバム・タイトルが象徴するように、明確でわかりやすいLoveを主題とすることで、これまでとはスケールの違うステージに上がることができた。そういう意味では『Love Deluxe』、プロフェッショナルへの決意が窺える作品となっている。
 80年代に隆盛を極めた多くのブラコンが、90年代に入ってからはヒップホップと融合したネオ・ソウルへ流れる中、シャーデーの音楽は不変のまま、いくつものディケイドを乗り越えてきた。当初のジャズ・テイストは薄くなってきたけれど、控えめでありながら記名性の強いリズム・アプローチは、地味に進化していった。
 4作目となる『Love Deluxe』にて、コンテンポラリー化へ舵を切ったシャーデー、当時のパリピの多くは安直なアシッド・ジャズへ流れていったけれど、それ以上に、彼女たちの音を求める多くのライト・ユーザーを獲得した。そういう意味で言えば、彼女たちの存在は大衆的になった。 
 なったのだけれど、手軽ではない。いまだムーディーなBGMとして機能もするけど、安易に聴き流せる音ではない。
 慎重に積み上げられたその音は、彼女たちの強い確信が刻まれている。その刻み目は、とてつもなく薄く、そして深い。
 前回247位はGrateful Dead 『Live/Dead』。今回は圏外。ランクインしてるのスタジオ盤ばっかなんだよな、デッド。彼らの真骨頂はライブなんじゃなかったの?




248位 Green Day 『American Idiot』
(-→225位→248位)

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 魑魅魍魎が渦巻いていた90年代ロックの中、ヒップホップにもテクノにもヘヴィメタからも影響を受けなかったジャンル:メロコアの代表格、グリーン・デイの「バカなアメリカ人」がランクイン。日本では今も初期のヤンチャなバカパンクの印象が強く、他のオルタナバンドと比べてやや安い扱いなのだけど、すでにロックの殿堂入りするくらいキャリアも実績も重ねてきた彼ら、本国アメリカでは堂々としたベテランである。
 初期パンクのDIY精神、「とにかくまず、自分たちでできることをやってみる」、基本、そんな姿勢を崩さずにマイペースな活動を続けているのだから、ある意味、実直真面目なバンドである。普通ならそのうち迷走して、一回くらい殺伐としたガレージパンクに行っちゃったり、基本方針は変わらなくとも、メンバーの1人くらいは脱退したり亡くなったりすることも多々あるはずなのに、そこまで波乱万丈さも見当たらない。
 斜め上なアーティスティックに走らず、メロコア基本のシンプルなコード進行、フックの聞いたサビメロ、覚えやすくテンション上がる演奏にこだわり続ける彼ら、そういう意味ではイギリスのマニックスと共通する点は多い。今ではだいぶ少なくなってしまったけど、昔からロックが好きで、そして今も現在進行形で追い続けているのならはずせないバンドの筆頭なのが、アメリカ代表グリーン・デイ、イギリス代表マニックスということなんじゃないかと。
 日本だったらこのポジション、一体誰になるんだろうか。俺的にはB’zって言いたいところなんだけど、賛否分かれそうだよな。
 他のランクインは出世作『Dookie』が181位→193位→375位。今回、大きく順位を落としていることから、デビュー時のメロコアど真ん中から世代交代していることが読み取れる。
 前回248位はOrnette Coleman 『The Shape of Jazz to Come』。今回は417位。





249位 Whitney Houston 『Whitney Houston』
(251位→257位→249位)

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 80年代ブラコン・シーンにて、颯爽と登場した歌姫ホイットニーのデビュー作が、ほぼ不動の位置でチャートイン。まだヒップホップに侵食されていない、正統派のブラコンが、ここでやっとランク入り。
 考えてみればこのジャンル、あと目立ったところではアニタ・ベイカーかジョディ・ワトリーくらいしか思い浮かばず、新人が育っていない。もう少し後になって、やっとマライア・キャリーが出てくるくらいで、ランキング外でも印象に残るシンガーがいない。
 もちろん新人が皆無だったというわけではないけど、ホイットニーがデビューした頃の女性ブラコン・シンガー枠は、ダイアナ・ロスやパティ・オースティン、さらに大御所ディオンヌ・ワーウィックあたりが幅を利かせており、新規参入のハードルが高かった。男性は思いつくだけでも、ジェフリー・オズボーンやビリー・オーシャンなどそこそこ出てくるんだけど、女性はまるで談合でもしてたかのように、ベテラン勢でデュエットをローテーションしていた印象が強い。
 そうは言ってもホイットニー、もともと有名な音楽一家に生まれ育ったサラブレッドであり、遅かれ早かれデビューするのは、いわば既定路線だった。前述したディオンヌを従姉妹に持つお家柄だから、デビュー作をあのクライヴ・デイヴィスが手掛けたのも、入念に仕込まれたお膳立てのひとつだったわけで。
 で、『そよ風の贈りもの』、現行ジャケットは無難な南国風ドレスのバストショットだけど、日本では白いワンピース水着のホイットニーが、ビーチで颯爽と佇むショットが採用されていた。新人グラビアアイドルと同じ営業戦略は、今だったらちょっと考えづらいけど、確実にインパクトがあったことは事実。これは日本の担当ディレクターが正しかったと今でも思う。
 ヒット請負人ナラダ・マイケル・ウォルデンによる的確なプロデュースによって、多くはアーバンなR&Bサウンドでまとめられているけど、単なるウィスパー系ヴォイスとはまた別の、テンション高めのシャウトが時々あらわれたりする。その辺をもう少し掘り下げていけば、もっと幅広いタイプの楽曲も歌いこなせたはずなのに。
 ディープなジャズ・ファンクをバックに歌う彼女も見てみたかった。
 近年はJujuもカバーしていた「Saving All My Love for You」、ほんとは麻倉未稀ヴァージョンを紹介しようと思って探してみたのだけど見つからず。なので、名前だけは知ってたけど、実はあんまりよく知らない朱里エイコの日本語カバー「すべての愛をあなたに…」。サビはちゃんとした英語だけど、日本語パートは時々ソウルフルになる歌謡曲。でも地力があってか、聴かせてしまう迫力。




 前回249位はR.E.M. 『Automatic for the People』。今回は96位。




250位 Buzzcocks 『Singles Going Steady』
(354位→360位→250位)

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 ポジション的にはUKオリジナル・パンクに属するバズコックス、非常に英国的、あまりに英国的なバンドなので、なんで「Rolling Stone」で支持されているのか、そこがちょっと不思議だった。そんなにわかりやすいヒット曲もないし、俺的な印象としては彼ら、英国限定で人気の高いマッドネスやスペシャルズあたりのポジションかと思っていた。
 なので調べてみると、フロントマンのピート・シェリーが、まだデビュー前のセックス・ピストルズに憧れて地元マンチェスターでのライブを熱望、見事実現させている。まだ無名のアマチュアだったピストルズゆえ、ライブ動員は42名と散々たる結果ではあったけれど、その観客の中には、ニュー・オーダーのメンバー2人やモリッシーなど、錚々たるメンツが含まれていたこともあって、のちに語り継がれる伝説となった。多分、フカしてる部分も多々あるんだろうけど、UKインディー史の一エピソードとしては、そこそこうまくできている。
 で、パンク・ムーヴメントが終息して、何やかやあって解散したけど8年後に再結成、当時のUSツアー中、たまたま知り合ったニルヴァーナと意気投合する。その流れで彼らのツアーと合流、EUツアーのオープニング・アクトを務めることになるのだけれど、カートコバーンの逝去により、それが生前最後のツアーとなり、さらに伝説が上積みされた。
 こうやって書いてみると、本人たちの活動より、いわば関わったバンドとの成り行きで箔がついた感が強い。ここまで言ってしまって今さらだけどバズコックス、勢いやインパクト勝負が多かった初期パンク・バンドとしては、ちゃんと練られたバンド・サウンドを体現している。
 コワモテのガレージ要素はほどほどに、シングル・リリースを重視したパワー・ポップな大衆パンクこそが、彼らの本質なんじゃないかと。そういう意味合いでのマッドネスっぽさ、もうちょっと時代をくだれば、初期オアシスやマニック・ストリート・プリーチャーズなんかに近い親しみやすさを感じさせる。
 前回250位はJay-Z 『Reasonable Doubt』。今回は67位。







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