91位 Bruce Springsteen 『Darkness on the Edge of Town』 (150位→150位→91位)

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 『Born to Run』の大ヒットで一躍スターダムに祭り上げられたスプリングスティーンは、相変わらず鬼のようなライブ本数をこなしつつ、ニュー・アルバムの製作準備も並行して行なうはずだった。70年代当時のリリース・ペースだったら普通、熱の冷めないうちに1年足らずで発売するところだけど、プロデュース権のゴタゴタが裁判沙汰にまで発展したことによって、3年のブランクを余儀なくされる。
 ただそんな逆境が創作意欲に火をつけたのか、スプリングスティーンは怒涛の勢いで楽曲を作り、アルバムに収めきれない大量の未発表テイクを生み出すことになる。のちに発表されたボックス・セットでは、プリンスにも匹敵する2枚組未発表曲集が収録されている。
 -と、ここまで書いて気づいたのだけどスプリングスティーン、なにもこの時期だけじゃなく、キャリア通して多作の人だったことを思い出した。単なる別テイクやミックス違いだけじゃなく、まっさらの曲を惜しげもなくお蔵入りさせるのは、この人にとって日常茶飯時である。
 1998年にリリースした5枚組未発表曲集『Tracks』を皮切りに、翌年に追加でもう1枚、2003年リリースの3枚組ベストでは、1枚丸ごと未発表曲集となっている。2015年リリースの『The River』ボックスも、テイク違いを含めた未発表曲集が2枚収録されている。一体、どれだけあるんだよ。
 まだブートでしか聴けない曲も山ほどあるだろうし、ましてやライブ・アーカイヴにまで手を出した日にゃ、それこそ人生を棒に振ってしまう。安易な思いつきでスプリングスティーン沼にハマろうとする人に言っておきたい。
 -今ならまだ間に合うぞ。悪いこと言わないから、引き返せ。
 そんな経緯で制作された『闇に吠える街』、厳選に厳選を重ねたテイクが揃っているため、悪いわけがない。『Born to Run』と『The River』といったキャラの強いアルバムに挟まれて、目立ったポジションではないけど、ソングライターとしてのスプリングスティーンは、ここが最初の到達点だったんじゃないか、と今にしては思う。
 前回91位はElton John 『Goodbye Yellow Brick Road』。今回は112位。





92位 The Jimi Hendrix Experience 『Axis: Bold as Love』 (83位→83位→92位)

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 インド思想にモロ影響を受けたアートワークによって、聴く前から好き嫌いがハッキリ分かれる、ジミヘン2枚目のスタジオ・アルバム。これでジミヘン、生前に残したオリジナル3枚は、すべてトップ100入り。多くの大御所アーティストが軒並みランクダウン、もしくは圏外に追いやられている中、磐石の安定感。
 「Purple Haze」や「Hey Joe」など、有名シングル・ヒットが多く収録された『Are You Experienced』と、初期キャリアの集大成となった2枚組大作『Electric Ladyland』に挟まれているため、ジミヘン史的には過渡期として位置付けられているアルバムである。正直、明快なウリがないのでキャラも薄く、オリジナル3枚の中では語られることも少ない。サイケな宗教画みたいなジャケットは、当時はこれがヒップだったんだろうけど、『Electric Ladyland』のエロジャケと比べると、インパクトはちょっと弱い。
 ただちゃんと聴いてみると、思っていた以上に発見の多いアルバムでもある。右も左もわからず、ただスタッフに言われるがままにレコーディングされたデビュー・アルバムと比べ、ここでのジミヘンは単なるギター・ヒーロー以上の才能の芽生えを見せている。
 誤解を恐れずに言えば、それまで既知のブルース/R&Bの延長線上に過ぎなかったギター・プレイやヴォーカルが、ここでは多彩なスタジオ・テクニックやエフェクターをとことん使いまくり、コンポーザーとしての側面が強く打ち出されている。シングル・ヒットを狙い過ぎてクリエイティヴィティをすり減らしてゆくアーティストが多い中、ジミヘンはすでに2枚目から、セオリーからの脱却を目指している。
 代表曲しか聴いたことがなかったり、2枚組がダルくて眠いと思ってる人にとっては、『Axis: Bold as Love』は聴きやすいんじゃないかと思うのだ。デビュー作よりアレンジの幅も広がっており、曲調も多彩なので、聴いててそんなに飽きない。
 前回92位はBuddy Holly 『20 Golden Greats』。今回は166位。
 そういえば思い出した「パープル・ヘイズ」。1991年に結成された、細野さんと清志郎、そしてなぜか坂本冬美が一同に会した異色ユニットHIS唯一のスタジオ・アルバム『日本の人』で、なぜか音頭にアレンジされている。当然、あのギター・ソロも三味線で忠実に再現されている。
 旋律は同じなんだけど、「音色が違うだけでこんなに印象変わっちゃうんだな」っていうのと同時に、どんな楽曲も同じ土俵に引っ張り込んで同じ色に染め上げてしまう、そんな音頭の懐の深さに感慨を覚えたりもする。







93位 Missy Elliott 『Supa Dupa Fly』 (初登場93位)

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 1997年というリリースから察するに、ローリン・ヒルあたりと同じネオ・ソウル系の人だと思っていたのだけど、どちらかと言えばヒップホップ寄り、ラッパーらしい。読んでわかるように、当然聴くのは初めて。
 80年代にもラップをメインにやっていた女性はいたかもしれないけど、メジャーで活躍している人はあんまりいなかった。アンダーグラウンドではそこそこいたのかもしれないけど、ラップに明るくない俺が知る限り、メジャーではクイーン・ラティファくらいしかいなかったんじゃないかと思われる。
 まだR&Bとヒップホップとの間に深い溝があった時代、ラップをやるにも今のような多様性はまだなく、過剰にオラついたり肩肘張って男女同権を叫ばなければならなかった。みんながみんな、ヒップホップのアーティストが怒りに打ち震えていたわけではない。怒りの感情しか表現できなかった黎明期のヒップホップは、女性にとってハードルが高かった。
 グラウンド・ビートやニュー・ジャック・スウィングが流行ったあたりから、様相が変わってきた。アシッド・ジャズなんかもそうだけど、これまでだったらブラコン方面一択だった女性シンガーの選択肢が広がった。
 彼女くらいの世代になると、ラップもヒップホップもR&Bも同列で、ジャンルにこだわる方がむしろダサいと見られてしまう。当時はこれがクールだったんだろうけど、四半世紀経ったいまになって聴いてみると、案外普通だな。それだけフォーマットとして定着したということなんだけど。
 前回93位はPrince 『Sign o the Times』。今回45位。





94位 The Stooges 『Fun House』 (189位→191位→94位)

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 俺世代が知ってるイギー・ポップは80年代以降、ボウイの悪友、または盟友というイメージ。特別鍛えているとは思えないライフ・スタイルのわりに、タイトに引き締まった筋肉を見せびらかすように、いつも上半身裸だった。
 考えてみれば、「服を着たイギー」のイメージが思い浮かばない。ここまで書いて、江頭2:50との共通項が多いことに気づいてしまった。ある意味2人ともトリックスターだし。
 で、名前だけは聴いたことがある伝説のバンドのため、いつも通り聴くのは初めて。月並みな表現だけど、「こんなサウンドを1970年にやっていたんだ」という驚き。次に、「こんな劇薬みたいなサウンド、当時受け入れられなかったのは仕方ないよな」と。
 下手な小細工は抜きにして、とにかく思うがまま、アンプのヴォリュームをMAXにして、とにかくデカい音、インパクトの強いサウンドを求めてゆくと、こんな感じになる。もう少し知恵があると、エンジニアの手を借りて機械的にブーストさせたり、効果的な方法を探ったりするのだけど、当時の彼らにそんな知恵はなく、また助言してくれるスタッフがいなかったことも、バンドが短命に終わった要因だったんじゃないかと思われる。
 年月を経て、特別何かアニバーサリー的なモノがあったわけでもないのに、30年ぶりに再結成したストゥージーズ。リユニオンだからといってアルバムが売れるご時勢でもなく、バンドの性格上、それほど大きなキャパでのライブができるわけでもない。
 特別気負ったわけでもなく、ましてや金のためとも思えない。放っておいたら大御所に祭り上げられ、ロートル扱いされることに対する危機感が、彼らのセンシティブな感性を煽っているんじゃないかと。
 ちなみに他のランクインは、3枚目『Raw Power』127位→128位→圏外、デビュー作『Stooges』 183位→185位→488位。イギーのソロはまったく入ってない。せめてボウイと制作した『The Idiot』と『Lust for Life』くらいは入ってても良かったんじゃないかと思うのだけど。
 「Rolling Stone」ユーザーの悪いくせだ。結局、60〜70年代を至高と思ってるんだから。
 前回94位はHank Williams 『40 Greatest Hits』。今回は132位
 スターリンをはじめ、ハード・コア/パンク系でイギーorストゥージーズは結構カバーされているのだけど、それじゃあんまり面白くないので、ここは曽我部恵一の「No Fun」。ラウドさやバイオレンスとはほぼ無縁の、緩やかなフォーク・ソング。思っていたより流麗に作られていたメロディの繊細さに気づかされたりする。







95位 Drake 『Take Care』 (初登場95位)

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 画像を検索すると、前髪パッツンのあごひげ濃いめ・ややマッチョが並んでいる。これがドレイクか。でも顔は優しそう。悪い人ではなさそうだ。
 カナダでの連ドラ出演によってデビューのチャンスをつかんだらしいので、日本で言えば福山雅治のポジションなのかな、よく知らんけど。リアーナとくっついたり離れたり、ジェニファー・ロペスと付き合ってたりニッキー・ミナージュとも関係があったりなかったり。なかなかやるなドレイク。
 何でこんなに周辺ゴシップばっかり書いてるのか。何となく察してもらえると思うけど、どうも響かなかったから。結構何回も聴いてみたんだけど、どうにも引っ掛かりを感じない。
 俺の感性が古いのはとっくの昔に自覚してはいるけど、どうしてこんなにヌルく感じてしまうのか。無理に言葉を重ねても嘘くさいので、ここは潔くスルー。
 とはいえドレイク、このランキングに入ってくるくらいだから、うるさ方にもそこそこ人気があるのだろう。ミックス・テープとしてリリースされた『If You’re Reading This It’s Too Lat』が 初登場367位にランクインしている。この種のランキングで従来のアルバム・フォーマット以外のアイテムが入ってくるのは、かなりの異例である。そう言った時代であるのだろうし、また、それだけコンポーザーとしてのポテンシャルがハンパない証でもある。
 前回95位はMiles Davis 『Bitches Brew』。今回は87位。





96位 R.E.M. 『Automatic for the People』 (244位→249位→96位)

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 もともとR.E.M.は、サウンド的にもバンド・コンセプト的にも、エンタメとは対極の存在だった。地元アセンズを中心としたライブ活動とカレッジ・ラジオを軸に、そこそこの人気とそこそこの売り上げで収まるべきバンドだったのだ。
 大ヒットした「Losing My Religion」だけが、たまたまキャッチーなメロディ・ラインを持っているだけで、ほかの曲はどれも覚えにくく、愛想がいいわけではない。アメリカ郊外の典型的な大学生がそのまま成長した、モラトリアムに浸かったままの垢抜けない見栄えといい、ロック・スターとはまったく逆のベクトルを辿っている。
 そんな普段着の男たちによる、ファン・サービスのかけらもないライブ・パフォーマンス、そして楽曲たち。きらびやかなスターダムとはまったく無縁だけど、みんながみんな、音楽にそれを求めているわけではない。ヒット・チャートのセオリーからこぼれ落ちた者たちの受け皿となっていたCMJチャートの常連として、彼らは狭いコミュニティの中でのみ光り輝くはずだった。
 「Losing My Religion」収録の『Out of Time』が世界的にもバカ売れしたことで、もう誰も「インディーの雄」とは誰も見なくなった。本人たちがどう思おうと、彼らは紛れもないロック・スターとなっていた。
 その反動もあってか、『Automatic for the People』は徹底的にネガティブなムードに包まれている。
 売れたことをすべて否定するのではない。売れたことで実現できたこと、得られるモノもあったはず。
 むしろ、デメリットの方が少ないのかもしれない。でも、マイケル・スタイプは疲弊した自分たちを、包み隠さずサウンドに反映させた。ヒットの定石とは大きくはずれたエモーションを吐き出したはずだったけど、思いのほか、同調してくれる者は多かった。
 もし彼らに少しの野心が芽生えていたなら、今ごろU2くらいのポジションに収まっていたのかもしれない。でも、彼らはむしろ、静かな生活を好んだ。
 ツアーの過酷さに耐えきれず、まずビル・ペリーがステージを降りた。ほんとなら、その時点で皆がそれに続くべきだった。
 -まだやり残していることがあるかもしれない。他3人はその後も活動を続けた。
 「継続すること」だけをモチベーションにしていた、とまでは言わないけど、3人体制になってからのR.E.M.は、クオリティの追求を拠り所に活動を続けた。続けたけど、それが近いうちに終わることは、ファンならずとも多くの音楽リスナーが感づいていた。
 納得ゆく落としどころを見つけたところで、彼らは友好的に別れ、ステージを降りた。再び彼らが戻ってくることは、多分、もうない。ないけど、待っていたいバンドのひとつだ。
 他のランクインを見ると、ビル・ペリー脱退後の彼らのアルバムは入っていない。俺もそれほど積極的に聴くことはない。そういうことだ。
 『Murmur』が195位→197位→165位。『Document』が462位→462位→圏外。
 「虚無感の爆発」とも「反動」とも取れた『Monster』が入ってないのは、ちょっと残念。あと、個人的に好きだった『New Adventures in Hi-Fi』。あれはちょっと地味すぎるか。
 前回96位はThe Who 『Tommy』。今回は190位。





97位 Metallica 『Master of Puppets』 (166位→167位→97位)

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 メタルをほぼ素通りしてきた人生だったため、これが初メタリカ。邦題が『メタル・マスター』、次作は『メタル・ガレージ』。1986年だから、その辺は安直だ。
 メタルの中でもバイオレンスに特化したジャンルとされているスラッシュも、その後に出たデス・メタルと比べれば、ずっと正統派に聴こえてしまう。バイオレンスとピーク・レベルを追求し過ぎたあまり、次第にノイジーになってしまうのは、ある意味、当然の帰結なのか。
 80年代メタルの代表格といえば、俺が知ってる限りではモトリー・クルーやクワイエット・ライオット、アイアン・メイデンやラットあたり。彼らのセオリーというかドレス・コードとして、やたら派手なメイクやコスチュームが定番とされていた。エフェクトとして、口から血を流したり火を噴いたり、そういったディデールへのこだわりが、個々の差別化とされていた。
 アルバム・ジャケットのデザインは、おどろおどろしく猟奇的、またはよりグロテスクなものが定番だった。悪魔や地獄礼賛的な歌詞やタイトル、高速速弾きギター・ソロと超絶ハイトーン・ヴォーカルがセットになっているのが、ヘヴィ・メタルの一般イメージだった。今もそんなに変わらないけど。
 メタリカも「ヘヴィ・メタル」にカテゴライズされるため、基本のセオリーを押さえてはいるのだけれど、彼らのアプローチは本流とちょっとズレたモノが多い。ライブ動画やPVを見ると、もちろんステージ・セットや演出にコストをかけているのはわかるのだけど、変にエンタメに寄せた媚びは感じられない。あくまで純音楽主義を貫くため、シンプルな意匠はストイックであり、その様はミュージシャンというより、むしろアスリートのそれに近い。
 彼らの他のアルバムに比べて『Master of Puppets』がどれだけ秀でているのか、コレしか聴いてないのでわからないけど、安易にメロディアスに頼らない硬派な姿勢が支持を集めたのだな、と思う。可能な限り、音楽とは直接関係ない雑味を削ぎ落とし、ハード・エッジのエッセンスを濃縮還元すると、メタリカになる。
 他のランキングを見ると、『Black Album』249位→255位→235位。ワンパターンなサウンドなのかどうか、それがわかるのは、また次回だな。
 前回97位はBob Dylan 『The Freewheelin’』。今回は255位。





98位 Lucinda Williams 『Car Wheels on a Gravel Road』 (300位→305位→98位)

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 メタリカのすぐ後に聴いたせいもあって、すごくホッとして馴染んでしまう、オルタナ・カントリーの名作。「名作」って言ってるけど、これも初めて聴いた。初めてだけど、聴いた瞬間から「あぁイイなぁ」と思ってしまった。
 テイストや方向性はアラニス・モリセットと近いのだけど、ルシンダの方がより土着的なサウンド・プロダクション、地に足のついたオーソドックスなロック・コンボ・スタイルとなっている。なので、90年代USロック全般・オルタナ系が好きな人だったら、脊髄反射で気に入るんじゃないかと思われる。
 日本では半世紀前のロカビリー・ブームが人気のピークで、それ以降はほぼ顧みられることもなくなったカントリーだけど、本国アメリカでは確立されたジャンルとして、連綿と生き残っている。さらに、現在ではめちゃめちゃ細分化され、派生ジャンルも多く出現している。
 特に90年代以降はジャム・バンド・ブームの流れから、オルタナ・シーンとの交流も積極的に行なうアーティストもあらわれる。若い世代の流入も低迷期だった80年代をすっ飛ばして、70年代のカントリー・ロックをそのままアップデートした、旧世代ロックの本流に近いオルタナ・カントリーは、ヒット・チャートに疲れた耳を癒すオアシスであるのかもしれない。
 みんながみんな、リアーナやウィークエンドを聴いてるわけではないのだ。カントリーのシェアが大きいアメリカだと、彼女のような音楽もまた、広義のコンテンポラリーであるわけだし。
 他のランクインを見てみると、再デビュー作『Lucinda Williams』初登場426位。これ以前はオーソドックスなカントリー&ウエスタンを歌っていたらしい。
 前回98位はElvis Costello 『This Year’s Model』。今回は121位。





99位 Taylor Swift 『Red』 (初登場99位)

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 もちろん名前くらいは知ってるよ、でもちゃんと聴くのはもちろん初めてテイラー・スウィフト。まずはいつも通り、運転しながらAmazonミュージックで聴いていて「あ、これ知ってる」とディスプレイを見たら、ちょっとビビった。
 「私たちは絶対に絶対にヨリを戻したりしない」。
 原題「We Are Never Ever Getting Back Together」。こんなタイトルだったんだ。
 意訳として間違ってはいないんだろうけど、でもインパクト強いな。まるでラノベのタイトルみたい。多分、その辺の年齢層がターゲットなんだろうね。
 で、その「私たちはナンタラ」くらいしか予備知識を持たずに聴いて、当初、コンテンポラリー寄りのダンス・ポップと思っていたのだけど、他の曲では、ところどころバンジョーやフィドルが入ってたり、カントリー風味が添加されている。
 調べてみると、ルシンダ・ウィリアムズ同様、彼女も根っこはカントリーだった。こんなワールドワイドなところにも入り込んでるんだな。めっちゃ裾野が広いなカントリー。
 で、続けてWikiを読んでみると、家族のバックアップも含め、なかなか上昇志向が強いらしく、したたかな人という印象。アメリカのエンタメ界をサヴァイヴしてゆくためには、それくらいじゃないとやってゆけないのだろう。
 「ラジオでオンエアしてもらうため、全米DJのプレゼント用に手作りクッキーを焼きまくった」というクダリを読んだ時は、思わず笑ってしまった。ホントのところ、どこまで徹底してやったのか、追求するのはヤボだけど、そのあざとカワイイ所作や言動を、シレッとやってのけるところが彼女の魅力であり、また音楽性にも反映しているのだろう。
 前回99位はSly & The Family Stone 『There's a Riot Goin' On』。今回は82位。
 「私たちはどーたら」の日本語カバーがYouTubeでバズったことでメジャー・デビューのきっかけを掴んだのが、函館出身のシンガー・ソングライター:maco 。当然、知らなかった。道産子ひいきで言うわけじゃないけど、しっとりバラード系にアレンジされており、これが結構イイ。








100位 The Band 『Music from Big Pink』 (34位→34位→100位)

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 古い音楽である。もうとっくの昔に見捨てられた音楽。
 「古き好きアメリカの光景」なんて見たこともないのに、なぜかリアルに思い浮かべることができる。
 -ゴールド・ラッシュに沸いた、アメリカの鉱山町の一景。
 朝陽が昇り夕陽が沈むまで、彼らは働き続ける。最も近い町でも、馬車で何日もかかる。荒涼とした岩山に囲まれて、男たちは無言で岩を崩し、瓦礫を選り分ける。
 焚き火の爆ぜる音だけが響く満月の夜、仕事を終え、夕飯を詰め込んだ男たちは、火を囲むように集う。楽器やら食器やら、何がしか音が鳴るものを手に、ささやかな宴が催される。
 まず、最も年嵩の男が、呻きとも囀りとも言えぬ節をつけて歌う。うまくはないけれど耳を惹く彼の歌に続いて、皆が調子を合わせる。続けて歌う者、手を叩く者、楽器を手にする者。
 皆がほろ酔いになった時分になってから、彼らは演奏を始める。年嵩の男同様、上手いとは言えないけど、独特の雰囲気を醸し出す男が歌い出す。寄り添うように、ボロボロのギターを爪弾く者、木箱を叩く者。普段は目立たず控えめな彼らだけど、ここでは皆の羨望の的なのだ。
 誰かに媚びる旋律や言葉はない。ただ単に、いま置かれた現状を包み隠さず、ただ思いのまま歌うだけ。余計な雑味のない演奏は、それでいて共感を、郷愁を誘う。
 熾火を残して火は消され、宴は幕を閉じる。男たちは寝床につくため、背を丸めて小屋に帰る。
 明日の朝も、また早い。次の新月まで、彼らは終わりの見えぬ労働で身を擦り減らす―。
 ディランが書いた「怒りの涙」は、そんな情景を想起させる。それだけでもう、このアルバムは十分に人の心を打つ。
 前回100位はZombies 『Odessey and Oracle』。今回は243位。
 「The Weight」のカバーは日本でもいくつかあるのだけど、ザ・バンドのアルバムはこれ以降ランクインしていないので、ここは「Stage Flight」のカバーを。
 結構最近までオリジナルと勘違いしていた、高橋幸宏+鈴木慶一=ビートニクスのヴァージョン。フォーク・ロックをテーマとした、彼らのディスコグラフィの中では異色のアプローチのアルバム『Exitentialist a Go Goビートで行こう』に収録。
 だいぶ前にレビューしているけど、彼らのこのアルバムは、ホント大好きだ。