folder ちょっと長いけど、ビートルズの話から。
 今を遡ること35年くらい前、俺がまだ北海道の中途半端な田舎の高校生だった頃、ビートルズのアルバムの最高傑作は、『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』とされていた。「クラシックにも匹敵する完成度」だとかなんとか、他のアルバムとは別格の扱いとされていた。
 彼らのアルバムが初CD化されるにあたり、音楽メディア以外の一般誌でも結構大きな扱いだったことが記憶にある。特に大きな期待が寄せられていたのが、その『Sgt. Pepper's』だった。
 他のアルバムが汎用のプラケースのみだったのに対し、『Sgt. Pepper's』はひときわ豪華なスリップ・ケースとブックレットが添付され、別格扱いだった。ビートルズだけじゃなく、ロック全般における名盤中の名盤として、プロモーションの扱いも違っていた。
 そんな前評判に強く影響されて、当時は何となくありがたみを感じて聴いてはいたけど、それから35年ほど経ったいま、『Sgt. Pepper's』を聴くことはほとんどない。リアルタイムで聴いてたんだったらともかく、80年代サウンドで培われた耳にとっては、「うまくまとまったイージーリスニング・ポップ」程度にしか聴こえない。
 「一応」絶賛はしているけど、そんな風に肩すかしな気分にあった人は、俺以外に結構いるんじゃないかと思われる。

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 それから少し経って、村上春樹のベストセラー『ノルウェイの森』の影響もあって、ほぼ日本限定で『Rubber Soul』が大きくクローズアップされることになる。直裁的なラブ・ソング一辺倒から一歩進んで、内省的なアコースティック・ベースのサウンドは、バンド・アンサンブルの成長とソングライティングの多様性を示唆している。ガチのハルキストまでは行かないけど、村上春樹に思い入れの深い俺なので、個人的に『Rubber Soul』は不動の第1位である。
 さらにそこから数年経って、世界的な傾向でオルタナがロックの主流となる。ラフでジャンクでアバンギャルドで時々ポップな音楽性を無理やり詰め込んだコンセプトが、当時の若手アーティストとシンクロしていたこともあって、今度は『White Album』へのリスペクトが強まってくる。
 きっちり作り込んだ『Sgt. Pepper's』から一転、やりっ放し・録りっぱなし・やりたい放題のごちゃ混ぜ感は、90年代オルタナ世代のユーザーにもスムーズに受け入れられた。俺的には『White Album』、2枚組で長いので、聴き通すのはちょっとダルいんだけど、そんなツッコミどころの多さや脇の甘さも含めて、割と好きなアルバムである。
 その後も『Revolver』の評価が上がったり、リリース50周年で再び『Sgt. Pepper's』や『Abbey Road』が注目されたりしているけど、21世紀に入ってからは、アップルやメディアによる仕込みや仕掛けが多いので、ファンの純粋な総意とは言い難い。視聴スタイルの変化や嗜好の多様化もあって、多数決が通用しづらくなっているのは、いいことなのか悪いことのか。
 ―キン肉マンとテリーマン、またはガンダムとマジンガーZ、ガチで戦ったらどっちが強いのか。全然不毛だけど、男ってこういう話題になると、変なテンションになって白熱しちゃうんだよな。「最強は誰だ」ってところにこだわるのは、男の性である。

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 ここまでが前置きで、やっとサザン。要は、活動歴が長い、またアルバム数が多くなると、趣味嗜好は分かれるし、世代によっても違ってくることを言いたかったのだ。
 キャリアの長いサザンもまた、時代状況や年代によって、どのアルバムが最高傑作なのか、昔から議論されている。解散してしまったビートルズと違って、現役活動中で新たなアイテムもリリースされているため、趨勢は日々アップデートされている。
 デビューからほぼリアルタイムでサザンを見てきた俺の時系列で追ってみると、中高生の頃はまず、『Nude Man』が初期の傑作として、広く認知されていた。アマチュア・コミック・バンドとしてしか認知されていなかった彼らが、プロの洗礼を浴びて経験値を積み上げ、学生サークルの臭いを断ち切った、アルバム・アーティストの地位を確立した作品だった。シングル・ヒットとなった「チャコの海岸物語」を敢えて収録せず、あくまでアルバム独自の世界観を追及したことから、グループの本気度が窺える。
 この辺から、洋楽リスペクトを主軸としていた桑田佳祐のソングライティングが独自の変化を見せ始める。青年期に吸収したロックよりさらに前、幼少時から聴き馴染んできた歌謡曲のエッセンスや、同時代性を強く意識したMIDIサウンドの導入、またそれに伴う外部ミュージシャンの積極起用によって、80年代サザンは先進性と大衆ポップのミクスチャーを具象化してゆく。

 ポスト・パンクやテクノ、エスニック・リズムも貪欲に吸収し、ひとつの到達点となったのが、2枚組の意欲作「KAMAKURA」だった。初期サザンのグルーヴを決定づけた松田弘のリズム・アプローチ、盤石のリズム・キープの関口ムクちゃん、アレンジのアイディアの宝庫だったギター大森、よくわからんけどムード・メーカーの野沢毛ガニ、実は最も器用なメロディ・メーカーの原ボー。桑田だけじゃなく、メンバーそれぞれのキャラクターがくっきり色分けされ、絶妙のバランスで融合されたのが、この『KAMAKURA』だった。
 産休によって原ボーの参加は限られていたけど、逆にそれが残りのメンバーの結束を強めたこともあって、アンサンブルは強固となった。桑田が描く、今はもう失われてしまった「かつての鎌倉」と、新世代クリエイターらのアイディアやセンスで磨かれた「新たなKAMAKURA」とが共存した、初期サザンの集大成となる名盤である。
 バンド・メンバーとの喧々諤々によって構成されたアンサンブルが前面に出ているのはここまでで、その後のサザンは、ソロ活動に伴う活動休止を経て、新たな局面へと向かう。フロントマン桑田の存在感は大きくなり、バンド運営にも深く関与することになる。
 バンド名をそのままタイトルとした『Southern All Stars』では、桑田ソロで存在感をあらわしたクリエイター:小林武史が、スタジオワークの多くを取り仕切った。これもコンテンポラリー・ポップの名盤であるけれど、サザンとしてのバンド・アイデンティティは見えづらくなってゆく。
 その後は、関連するスタッフも多くなったことで、バンドは巨大化し、90年代CDバブルのタイミングも重なって、サザンはメガセールスを目標としたプロジェクトに変貌してゆく。タイアップ前提のシングル制作ごとにプロジェクトを組み、それがいくつか貯まる頃合いでアルバム制作に入るのが、その後のサザンのルーティンとなっている。シングルを主軸としたアルバム構成ゆえ、アルバム単位で最高傑作がどうこうは、ちょっと論じづらいんじゃないだろうか。
 と、思っていたのだけど。

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 そんな風に思っていたのは旧世代、または俺だけだったのか、ミリオン連発の90年代を経て、21世紀に入ってからのアルバムも、幅広い世代に受け入れられている。「サザン 最高傑作 アルバム」と検索して、いろいろ覗いてみたところ、どうやら最大セールスを記録した『Young Love』の評判が高いらしい。そうだったのか。
 で、その次に人気が高いのが、『海のYeah!!』。これはベスト・アルバムなので、ちょっと置いとくとして、実質、桑田とコバタケ中心に作られた『世に万葉の花が咲くなり』や、比較的新しめの『キラーストリート』の人気が高かったり、特定のアルバムに集中している風ではなさそうである。
 ちなみに、山下達郎が不動のトップで、サザンと鈴木雅之も好きな俺の息子に聴いてみたところ、「キラーストリートが一番好き」という答えが返ってきた。「知ってる好きな曲がいっぱい入っているから」という、まことにシンプルな理由。

 で、そんな俺が初めて自分で買ったアルバムが、『ステレオ太陽族』だった。やっとたどり着いたよ。
 しかも、レコードじゃなくてミュージック・カセット。なんでレコードにしなかったのかは、ちょっと覚えてない。
 ちなみに同時期に買ったのが、中島みゆきの『寒水魚』。これもなぜかカセットだったな。なんでだろ。
 ちなみに、このアルバムのレビューの評判は、決して高い方ではない。1981年にリリースされて、オリコン1位は獲得しているけど、年間チャートでは13位と、その後のミリオンセラーと比べれば、なんとも地味な実績である。

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 当時のサザンの評価は、「そこそこ演奏もできるコミック・バンド」程度としか思われてなく、プロフェッショナルな視点で見られることは、ほぼなかった。当初から名曲扱いだった「勝手にシンドバッド」と「いとしのエリー」のおかげで、音楽活動を続けられてはいたけど、続く代表作がなかなか生まれず、中途半端なポジションにあったのが、ちょうどこの頃だった。
 フロントマンである桑田のキャラクターが強烈なため、サザン=桑田のワンマン・バンドと思われがちだけど、初期のサザンは、そこまで桑田色が強くなかったのも事実である。メインのソングライターであり、ヴォーカルだった桑田が目立ってはいたけれど、デビュー前からセミプロとして活動していた野沢毛ガニや松田弘らが、サウンド面のイニシアチブを握っていた。
 影響を受けたクラプトンやリトル・フィート、歌謡曲からインスパイアされて書かれた桑田のメロディを元に、メンバー全員で寄ってたかってアレンジや構成を練り、メンバーそれぞれのアイディアもあれこれ盛り込んだ上で、初期サザンの楽曲は作られていた。当時のロック・バンドは、みんなそんな感じだった。
 アルバム1枚か2枚なら、それでなんとかなる。その後だって、メンバー6人もいるんだから、みんなで知恵を寄せ集めれば、どうにか乗り切れるだろう。そんな軽い感じで考えていたんだろうけど、そんな方針に行き詰まりが見え始めてたのが、消化不良で終わった『タイニイ・バブルス』のレコーディングだった。
 セールス的にはまぁ及第点だったけど、芸能活動との掛け持ちでのバンド活動は、そろそろ限界を迎える頃合いだった。スケジュール的にもバンド内の人間関係においても。それほど長期的な展望を考えていたとは思えないけど、それがちょうどこのタイミングだった、と言える。
 ていうか、学生バンドのノリのまま、あれよあれよとプロになっちゃった面もあるので、長く続けることなんて、考えていなかったんじゃないかと思われる。まさか3枚目以降があるだなんて、初期の段階では思ってもいなかっただろうし。

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 とはいえサザン、いわゆるカッコ付きの「ロック」とは一線を置いた/置かされたポジションのまま、人気もそれほど落ちずに続いてしまった。こうなると、周りもそうだけど、自分たちも今さら「や~めたっ」ってわけにもいかない。
 毀誉褒貶の激しい芸能活動に軸足を置いたままでは、自分たちの望むバンド像からどんどん離れてゆく。当初はリトル・フィートみたいにやりたかったはずなのに、テレビ・バラエテイで重宝されている現状に最も危機感を感じていたのが、最も芸能界の水に馴染んでいた桑田だった。
 それまでのやんちゃな学生サークル上がりのバンド・イメージから一転、『ステレオ太陽族』はしっかり作り込んだAORサウンドでまとめられている。過密スケジュールの合間を縫ってスタジオにこもり、メンバー間でゴチャゴチャいじってうちに締め切り直前に間に合いました的なスタイルをやめ、スタジオ作業に専念する時間を大きく取って、メンバーより年長の外部アレンジャー:八木正生の助力が、成熟度に大きく影響している。
 ただ、キャッチ―で明快なヒット曲に惹かれたライト・ユーザーが、そのかしこまった感を素直に受け入れなかったことも、また事実。この時期のサザンは、テレビ露出を控えたことも影響してか、シングル・セールスは低迷し、急速に忘れられた存在になっていた。
 目立ったヒット曲は入ってないけど、深く聴き込むほど、味わい深い。
 初期のサザンのアルバムには、そんな隠れ名曲がいっぱいあった。みんなが知ってるシングル・ヒットではなく、アルバムの真ん中あたりにコッソリ入ってる、ちゃんと聴き通さなければ気づかない、そんなアルバムの楽曲たち。
 ―俺だけの、サザン。
 『ステレオ太陽族』とは、そんな時代のアルバムである。


ステレオ太陽族
ステレオ太陽族
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サザンオールスターズ
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1. Hello My Love
 流麗なストリングスと端正なホーン・セクション。ロック以外のボキャブラリーが少ないサザンのアレンジ力に大きな弾みをつけた曲。これまでもジャズやブルースの要素の強いメロディを書くことはあった桑田だったけど、その活かし方がわからず、消化不良に終わったり稚拙なパロディでお茶を濁してしまっていたのが、ガラッと洗練させちゃったのが、八木正生の大きな功績。
 ただこの曲、そういったサウンド面ばかり注目されがちだけど、ここまでバタ臭いサウンド・メロディに、「気もそぞろ」「もっとそばにおいでませ」など、ロックの文脈ではあり得なかった言葉をさり気なく載せてしまう桑田の言語センスを、もっと評価してほしい。

2. MY FOREPLAY MUSIC
 ライブの序盤でいまだ取り上げられることも多い、初期としては珍しく正統派のロック・ナンバー。当時、かなり意識していたビリー・ジョエルのピアノ連打もそうだけど、この時期、サウンド面で大きな貢献度があったギター大森によるリフも、シンプルながら印象深い。脱退してしまったので忘れてしまいがちだけど、初期楽曲の多くのギター・パートは、いまだライブでもフレーズ改変されず、オリジナルのまま演奏されていることから、完成度の高いアイディアを提供していた。ほんと、大森がいなけりゃ成立しなかったナンバー。

3. 素顔で踊らせて
 AORサザンとして、バンド・メンバーのみでのアンサンブルとしては完成度も高く、それでいてきちんとメンバーそれぞれの見せ場もある、「シャ・ラ・ラ」と同じ構造のロッカバラード。1回目の復活以降だと、こういった曲は桑田ソロ色が強くなるので、バンド・サウンドの妙を味わうには、この時代が最適。
 「2月26日」が桑田の誕生日だった、というのはwikiを見て知ったけど、それを知らなくても充分すてきな曲。こういう曲の原ボーのユニゾンって、すごく映える。

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4. 夜風のオン・ザ・ビーチ
 ピアノがリードするサザンの楽曲は、原ボーがイニシアチブを握っているのだけど、案外男らしいフレーズやタッチは、ザ・バンドからの影響が強いんじゃないか、といつも聴いてて思う。この曲も、ギター大森の間奏ソロ、短いけどインパクト強いんだよな。
 桑田のヴォーカルもいいんだけど、この曲に関してはバッキングがすごく主張が強い。「海といえばサザン」というパブリック・イメージとは逆のベクトルの、真夜中の海の妖しさを描いた歌詞世界も、新たなステージに立つ予兆を感じさせる。

5. 恋の女のストーリー
 女性ジャズ・シンガーによるカバーも多い、しっとりしたバラード。ただ、ちょっとAORなジャジーなアーバンなテイストが続きすぎるかね、レコードでいえばA面。アルバム構成的に言えば、3~4曲目あたりでアッパーなノリが欲しかった。
 もともとは映画のサウンドトラック用に書かれた曲らしく、確かにビジュアル映えするんだろうけど、まぁよくできてるわ以上の印象はない。いや、「ジャズ・シンガーにも認められるレベルの楽曲を書けるようになった」ってことなんだろうけど、そんな既存の権威的なモノへのアンチとして、例えば「フォーマルにキメながら下半身裸」とか、そんなパロディ視点が限りなく薄くなっちゃってるのが、この曲の居心地の悪さなんじゃないか、と。って、思ってるのは俺だけかね。

6. 我らパープー仲間
 そんな窮屈さを感じ取っていたのか、ここに来てジャズをうまく吸収・咀嚼してできあがったのが、このパープー。アレンジの多くは八木正生に丸投げ、肩の力も抜きつつ、慎重に言葉を選んだ上、きちんと段取りも備えつつ、スタジオに入っちゃえばノリ一発でできちゃった、てなナンバー。『Blues Brothers』のキャブ・キャロウェイから丸っといただいたコール&レスポンスも堂に入っている。
 音楽のボキャブラリーが少なかった頃だからできた曲であり、いろいろ知識もついて学習もしてきた今なら作れない、すてきなスウィング・チューン。

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7. ラッパとおじさん (Dear M.Y's Boogie) 
 レコードB面は初の英詞曲からスタート。ウルフマン・ジャックがサザン・ロックをやったらこんな感じになったんじゃないだろうか、と。タイトルが示すように八木正生リスペクトの曲だけど、敢えて影響を受けたジャズ・テイストではなく、そのアレンジ・センスを吸収して、自分のフィールドであるロック・サウンドで敬意を表したところが、桑田の気概を感じさせる。
 せっかくだったら、ちょうど同時期に活動していた小林克也&ザ・ナンバーワン・バンドにカバーしてもらっても良かったんじゃないか、と今にして思う。

8. Let's Take a Chance
 ホントの初期は、レゲエと言ってもクラプトン経由の泥臭いレゲエ・ナンバーが多かったサザンだけど、この辺からサザンのサウンドを通して自分流にアレンジしたサウンドが多くなる。ルーツ・レゲエっていまだに俺もクセが強すぎてあんまり聴けないのだけど、こうやってクロスオーバー的にアレンジされたものだったら、違和感なく聴ける。ただ。このアルバムの中ではインパクト弱い方だけどね。

9. ステレオ太陽族
 アルバム構成上、ブリッジとして作られたのか、収録候補曲としてレコーディングしてみたけど、これ以上発展しなかったのか。経緯は不明だけど、雰囲気アーバン・ソウルとしては良曲。まぁこのサイズでスパッと切っちゃったからこそのクオリティかね。無限ループで聴いても苦にならない曲。実際にやらんけど。

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10. ムクが泣く
 関口ムクちゃんによるフォーク・ロック。ポール・サイモンあたりを意識したのか、ソフトでまったりした、人柄をそのまま移し替えたような和み曲。これも短く2分台でまとめている。

11. 朝方ムーンライト
 サザンの初期の正統バラードの中では、個人的に最も想い入れの強いバラード。一時、この曲を無限ループで聴きまくっていた時期があったのだけど、なんか疲れてたのかね、知らんけど。
 歌詞は結構ウェットだし、そういえば演奏もメロウで桑田のヴォーカルもちょっと雑なんだけど、その未整理なところが、俺の感性の弱いところを鷲づかみしたのだろう。今も時々聴きたくなるし、プレイリストからはほぼ不動。

12. Big Star Blues (ビッグスターの悲劇)
 サザン史上、最も売れなかったシングルという、不名誉な記録を持つナンバー。映画『モーニング・ムーンは粗雑に』主題歌として書かれたものであり、まぁ映像コンセプトに合わせて作られたものなので、オファーには合っているんだろうけど、サザンのクオリティとしては、ちょっと劣る。
 既存の日本語ロックへのアンチとしての姿勢として考えるなら、これはこれで正しいけど。かなり時代性の強い歌詞なので普遍性はないけど、時代風俗としてのトピカル・ソングという見方なら…、なんかめんどくさいこと書いてるな、俺。

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13. 栞のテーマ
 で、そんなめんどくささを全部ひっくり返すような、いまだ名曲の誉れ高い絶品ロッカバラード。シングルカットされているんだけど、オリコン最高44位だって。発売当時はあまり話題にならなかったけど、後になって名曲扱いされることは、サザンではよくあること。これからも出てくるんだろうな。

 彼女が髪を指で分けただけ
 それがシビれるしぐさ
 心にいつもあなただけを 映しているの

 書いてしまえばなんてことはない、よくあるラブ・ストーリー。でも、よく練れたバンド・アンサンブル、絶頂期の桑田のヴォーカルで演奏されると、言葉は彩を変える。
 カラオケで何度歌っても、あの切なさは表現しきれない。ピッチやリズム、トーンだけでは再現しきれないモノ。それが、バンド・マジックだ。



バラッド '77~'82
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