a7ce5a9bbcd2f8d023e0c49baf847fa94aa94762_l ある意味、ソニーというレーベル・カラーを一番象徴したアーティストが、この米米なんじゃないかと、最近になって気づいた。

 基本、おちゃらけたパーティ・バンドとしての側面が強く、特にメガ・ヒットした『君がいるだけで』以前においては、エキセントリックなパフォーマンスやステージ演出が取り上げられることが多く、肝心の音楽面はあまり触れられずじまいである。
 もちろん、そういった総体もろもろを含めて評価されなければならないバンドであり、音楽だけ単体で評価するのはちょっと違ってくるのだけれど、強引にそこだけ切り離してみると、純日本的なメロディ・ラインを自在に操るカールスモーキー石井の作曲センスは、同世代のアーティストと比べて断然抜きん出ている。なにしろ生まれて初めて作った曲が”Shake Hip!”だし、また”浪漫飛行”が作られたのも、デビュー間もない頃である。
 一般的なロック・バンドのヴォーカルとは明らかに違う、類い稀に恵まれた声質とヴォーカル・テクニックを併せ持つ石井、正規の音楽教育を受けているわけではないので、彼の作る曲は、既存のロック・フォーマットのコード進行に捉われないものになっている。言ってしまえば、単に自分の歌いやすいキーとリズムで歌っているだけなのだけど、それがすべてドンピシャにはまる世界観を形成しているのは、プロフェッショナルな演奏陣の力量に依るものが大きい。

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 もともとは内輪受けの宴会芸バンドからスタートした米米クラブ、当初はウケ狙いのパロディ要素が強いステージを展開していた。それが次第に場数を踏むに連れて、現代アートの世界で活躍していたフロントマン石井の芸術センスや、前衛演劇からインスパイアされたハプニング性も取り込んでゆき、デビュー前はおふざけとアバンギャルドの交叉した、何だかよくわからないけどわからないままで終わってしまって、結局意味不明の熱気だけが残るライブが地味に好評を呼んでいた。
 メジャー・デビューするにあたっては米米、一般ユーザー向けに間口を広げるため、その辺の方針をちょっとわかりやすいスタイルに組み替えている。典型的な二枚目である石井がメロディアス担当、全身をキャンバスに見立てて演劇要素を前面に押し出したジェームス小野田がファンキー担当、かなり高度な演奏スキルによって構築されたバンド・サウンドをバックにして、その2人が縦横無尽におちゃらけるという、他のバンドではあまり類を見ないスタイルだった。
 前例がないイコール差別化が図れるということで、この方向性は間違ってはいなかったのだけど、その「おちゃらけ」という面ばかりが取り沙汰されたため、肝心の音楽面においてはどうにも中途半端さは否めなかった。

 当時のインタビューでは、「ステージとレコーディングとは別物として、スタイルをはっきり使い分ける戦略を取っている」と発言しているのだけど、まぁセールス面ではなかなか大きくブレイクできなかったことに対する自虐的発言とも取れる。ステージでのハチャメチャなグルーヴ感をレコードで再現することは、結構どのバンドでも共通の課題なのだけれど、特に米米の場合、バンドの性格上、そこら辺の擦り合わせで苦労している。
 なので、デビューしてしばらくは、そういった開き直りとも取れる発言が頻発している。のちにその方向性が正しかったことは歴史が証明しているのだけど、試行錯誤が如実に表われてセールス的にも不安定なのが、この時期である。

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 ディスコ・ファンク・バンドとしてのグルーヴ感を前面に押し出した”Shake Hip!”と、ある意味石井の本質である二の線を強調した”浪漫飛行”タイプの曲との双頭体制と言えば聞こえは良いけど、どこかフォーカスがボヤけていた点は否定できない。ファンの全部が全部、ライブに足を運べるわけではないのだ。
 ステージに足を運んでもらえれば、たちまち誰もを虜にできるくらいのパワーはある。でも、そのためにはきっかけとして、もっと求心力のあるパッケージが必要になる。

 で、ステージでのエンタメ性・カリスマ性を強く打ち出すため、ファンクを柱としたサウンド作りを行なったのが”Kome Kome War”であり”Funk Fujiyama”だったのだけど、当時としては衝撃的な構成だったPVばかりが話題となって、肝心の音楽的評価はチョット弱かった記憶がある。音楽雑誌では大絶賛に近く、実際セールス的にも確実にステップ・アップはしたのだけど、どこかオーバー・プロデュース気味で窮屈な印象があったことは否めない。

 で、石井の別の一面であるメロディ路線の方だけど、こちらは年を経るごとに磨きがかかっており、数々の美メロを輩出している。「カールスモーキー」という別人格を演ずることに吹っ切れたのか、ムーディでありながら時にエロい、ジゴロ顔負けの一面を披露している。
 でも、それだけじゃダメなのだ。その対極であるはずの「おちゃらけ」ナンバー、ファンクやら歌謡曲やらシャンソンやら音頭やらをグッチャグチャに混ぜてごった煮にした、米米言うところの「ウンコ曲」が精彩を欠いている。ていうか存在感がない。カールスモーキー石井の二の線は、最後の壮大なオチのためのネタ振り、長く引っ張った伏線であって、ここをきちんと押さえておかないと、ただのナルシストになってしまう。大きなカタルシスを得るためには、きちんとした舞台設定が必要なのだ。
 ステージではシアトリカルな構成の妙によって、その辺が違和感なくキレイに収まるのだけど、パッケージにまとめてしまうと、どうにもチグハグな形になってしまう。
 さて、どうしたものか。

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 その辺を踏まえて開き直ったのか、彼らの特色である二面性を、無理やりひとつにまとめるのではなく、だったら2枚に分けちゃえばいいんじゃね?という発想の転換の結果が、このアルバム。ほぼ同時期に『米米クラブ』という、「おちゃらけ」ソングばかりを集めたアルバムをリリースすることによって、うまく折り合いをつけた。ステージの流れを中途半端に再現するのではなく、レコードはレコードとキッパリ割り切ったことが上手く作用して、アルバムとしての統一感が出た。

 このアルバムには、彼ら初期の代表作である”浪漫飛行”も”Shake Hip!”も収録されていない。この時点においても既に独り立ちしてしまった曲なので、はめ込むのが難しかったのだろう。
 ダンサブルな曲とメロディアスな曲とがランダムに配置されているのだけれど、それらがほとんど違和感なく、統一したテイストにコーディネートされている。
 以前のように強引にまとめるのではなく、レコーディングで映える曲をセレクトしたおかげでビギナーでもスンナリ聴くことができる。

 ここでオミットされているのは、ステージ向けのナンバー、「おちゃらけ」要素が強く、享楽的で内容のない、まぁ適当な曲が多い。時代に埋もれてしまうような時事ネタを取り扱ったモノも多く、その大部分は一度聴いたらサッパリ忘れられてしまうような曲ばかりである。
 それらは彼らにとっての「恥」という感情の裏返し、いわゆる情念やコンプレックスなど、マイナス要素の強いものである。
 マイナスの裏返しはプラスではなく、どこまで行ってもマイナスだ。こういった要素を完全に排除するのではなく、表裏一体であることを表明できるようになったことが、バンドとして、そしてメンバー個々の成長と言えるのだろう。


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1. I・CAN・BE
 デビュー・アルバム『シャリシャリズム』と同時にシングル・カットされた、彼らのデビュー・シングル。久しぶりに聴いてみると、こんなにファンキーなアレンジだったっけ?ということに驚かされる。ホーン・セクションの音色がAORっぽくて好き。間奏のギターソロもかなり攻めたフレーズをぶち込んでいる。
 こういったナンバーを聴いてると、石井というのはあくまでフロントマンというバンドの役割を演じていただけであり、よく言われているような石井のワンマン・バンドじゃないことが窺える。

2. Peeping Tom
 多分、このアルバムが初出、でいいのかな?唯一の新曲で、リード・トラックとして、このPVがやたら流されていた記憶がある。なので、どうしてもビジュアルのイメージと被ってしまうのだけど、純粋に音楽だけ聴いていると、いやこれって、なんかめちゃくちゃ破綻してる。普通のロックやポップスの構造とはかなり違っており、いろいろなサウンドが混在している。すごくポップな感触で作ってるけど、曲調としてはかなりアバンギャルド。
 ちなみにPeeping Tomとは、「のぞき見する男」の意味。そうした妖しげなムードを醸し出す男として、石井は最適だった。



3. FUNKY STAR
 ファンキーと名乗ってはいるけど、それほどファンキーじゃないのは、石井がメインで歌ってるから。バックのサウンドは思いっきり黒いグルーヴ全開なのだけど、どこか歌謡テイストが残ってしまうのは、やはり石井自身が作るメロディのせいなのか。でも、このくらいベタじゃないと、日本という風土には溶け込むのは難しい。

4. En mi Corazon
 「おちゃらけ」モノは排除したはずだったのだけど、プロデューサー判断で、アクセントとして収録したのか、それともバンド側が強硬に押し通したのか。多分両方だと思うけど、まぁどっちだってよい。
 昔のラテン・ムード歌謡をイメージしたホーンでスタートしているのだけど、本編に入ってしまえば、至極真っ当なバラード。リズムは相変わらずのラテン歌謡チックで押し通しているのだけれど、ここは石井の熱演ヴォーカルによって、紙一重のところでシリアスをまとったパッションが爆発している。

5. Troubled Fish
 まぁ言ってしまえば、もろBlow Monkeys 『Digging Your Scene』なのだけど、元ネタを知らなくても充分その世界に堪能できる名曲。もともとはセカンド・アルバム『EBIS』に収録されていた隠れ名曲で、シングル・カットされていないにもかかわらず、結構知られていた曲でもある。俺もリリース当時から何となく知っていて、米米に興味を持ち始めたきっかけになった。
 オリジナルよりリズムを強調したアレンジになっている以外は、あまり変化はない。それだけ完成された曲でもあるので、あまりいじれなかったんじゃないかと思われる。



6. KOME KOME WAR
 ある意味、米米を一躍スターダムに押し上げ、音楽誌以外のメディアでも大絶賛の嵐だった、これもPVが特に印象的だった作品。本場MTVの海外部門で受賞を果たしたことで箔がつき、映像作家カールスモーキー石井の名を轟かせることになった。
 で、肝心の音楽と言えば、これがなんともファンクをベースとした内容のない歌。
 だけど、ここがいい。ファンクにメッセージを求めるのは筋違いであり、「踊る」という機能性を重視した音楽にとって、メッセージはむしろジャマになるだけだ。

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7. Paradise
 4枚目のシングルとしてリリース。オリジナルとはちょっとアレンジと歌詞を変えて、世界を股にかけるジゴロをテーマに改変されてたけど、俺的にはオーソドックスなオリジナル・ヴァージョンの方が好み。PVのテイストといい、バンド的には迷走期、ソニーの言いなりにポップスを演じ切ろうとした挙句、どこかボンヤリした仕上がりに悲哀を感じてしまう。
 オリジナルはオリコン最高19位。そこそこは売れたのだ。

8. Simple Mind
 もともとステージのみで披露されていた曲で、スタジオ・ヴァージョンとしてはここが初収録。米米版MORといったテイストのミドル・テンポのバラード。ライブの中盤あたりでのクール・ダウンに最適だと思うけど、癖の強いこのアルバムの中では、イマイチ印象が薄い。でも、ソニー的にはこういった曲を量産してくれてた方が理想だったんじゃないかと思う。
 まぁどっちにしろ、後期はこの路線に傾倒してゆくわけだけど。

9. Sûre Danse
 5枚目のシングルとしてリリース。”浪漫飛行”と”Shake Hip!”との奇跡的なハイブリッド的融合がこの曲。メロディライクな部分とミドル・ファンクとがバランスよくアレンジされており、ある意味ここが到達点だったんじゃないかと思われる。



10. Transfer
 9.とほぼ同じコード進行で、ファンキー成分を抜いてAORテイストを強めた、ミドル・バラード。米米のすべての音源を網羅したわけではないのだけど、俺が知る限り、米米はこの手のメロディ・ラインの曲が多い。石井のヴォーカルが最も映えるキーがこのラインなので、どうしても似通ってしまうのは仕方ないこと。
 聴いてる方も安心して聴ける、米米流MORサウンドの結晶。

11. STAY
 『EBIS』が初出の、初期米米の名バラード。ベッタベタのコード進行、黄金のメロディ、直球ストレートのナンバー。やればできるのに、ここら辺はあまり照れて出さないのが、この人たちの信用できるところ。もっとゴージャスなアレンジなら映えるのかもしれないけど、サラッとしたジャジーなアレンジが、胃にもたれず軽く聴き流すことができる。

12. Just U
 一応、初期の米米のアルバムはひと通り聴いているのだけれど、ライブを見てるわけではないので、俺はライト・ユーザーに分類されるのだけれど、そんな俺でも、そして年季の入ったへヴィ・ユーザーの間でも人気の高い、多分人気投票を行なえば、確実に5本の指に入るんじゃないかと思われる名作。

 Do You Remember まるで夢のような
 Don’t Forget to do 愛し合った日のすべてを

 ポップスの歌詞としてはすっごくベタでシンプルだけど、これがすごくいいのだ。こうしたストレートな楽曲をストレートにやらず、どこかアレンジやらキャラクターやら小芝居やらでおちゃらけて、何かしらフィルターを通してからでないと真面目な曲を歌えなかった彼らが、ここでは普通の楽曲をほんと普通に、しかもちゃんとしたメッセージとしてファンに届けている。やればできるのだ。
 ここで言うのもなんだけど、この曲はほかのベスト『米~Best of Best~』に収録されているライブ・ヴァージョンの方が良い。解散コンサートのラストに歌われており、感極まった様相の石井が必死に笑顔を取り繕いながら最後のメンバー紹介を行なっている。そのエンディングに至るまでのカタルシスが刻銘に記録されている。






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