folder 2009年リリース、地元オーストラリアを拠点に活動するジャズ・ファンク・バンドされたCookin' On 3 Burners 2枚目のアルバム。今年に入ってから久しぶりに3枚目のアルバムがリリースされており、地道にコンスタントな活動を続けているのだけど、多くのジャズ・ファンク・バンド同様、哀しいことに日本ではごく限られた情報しか入ってこない。
 
 一言で『ジャズ・ファンク』と言っても、広義の意味で捉えると、古くはHerbie HancockやJimmy Smithまで括りに入れなければならないのだけど、山崎ハコをJポップと称するくらい無理があるので、一般的には大ざっぱに年代で区切って、『現代ジャズ・ファンク』と定義されているようである。
 「音楽にジャンル分けなんて必要ない」という意見は昔からあるけど、それこそ情報が限られていた昔の話であり、現代、特にネット以前と以後では流通する情報量がまるで違う。大量の小麦の中から最良の一粒を選ぶには、やはりある程度のふるい分けは必要なのだ。
 
 現代の細分化されたジャンルの中でも、この現代ジャズ・ファンクというジャンルはファン層の薄さもあって、なかなか一般的に浸透しづらい類の音楽である。
 すっごく大きな括りでいけば「クラブ系」にも一応入るのだけど、スタンダード・ジャズやジャム・バンド的な要素の強いバンドも少なくないため、すべてがすべて、単純に踊れる曲をやってるわけではない。もう少しジャズ成分を弱めてイージー・リスニング成分を強くすれば「スムース・ジャズ」、ポップ/ソウル成分が強くなれば「アシッド・ジャズ」にもなる、結構あいまいな、はっきり言ってアバウトなジャンルでもある。Incognitoくらいまで開き直ってしまえば、売れるバンドももっと多くなるのだろうけど、あいにく大方のバンドはプレイヤー至上主義、昔のフュージョン・アーティスト的な頑固さをバンド、ファン双方にあり、従って武骨なイメージが強い。

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 ジャズのテクニックとタイム感を持ったミュージシャンが、James Brownのリズムを使い、電化Milesのコンセプトで演奏したらどうなるか?と言うのが、ものすごく乱暴にまとめたコンセプトである。大抵のジャズ・ファンク・バンドは、多かれ少なかれ、この要素を持っている。なので、インスト・トラックを聴いていると、どのバンドも大きな違いは見られない。
 オルガンを前面に出したバンド、ブラス・セクションがメインのバンドなど、それぞれ趣向を変えてはいるけど、そもそものリスペクト元が同じなので、どうしても似通った感じになってしまう。だからこそ、どのバンドもアルバムに最低1~2曲、多い時は半分くらいのトラックにゲスト・ヴォーカルを入れてバラエティを持たせている。どのようなシンガーを起用するのかによって、そのバンドの個性がわかるようになっている。
 
 もともとはBamboosというバンドのギタリスト、Lance Fergusonによるサイド・プロジェクト、3ピース・バンド(ギター、オルガン、ドラム)である。このBamboosもまた、日本では馴染みの薄いディープ・ファンクというジャンルにカテゴライズされているのだけど、このBamboos、地味ではあるけど一応日本発売もされており、去年出たアルバムはディープ・ファンクの枠組みを飛び越えて、かなりコンテンポラリー寄りのポップ作品になっている。
 日増しに洗練されてゆくBamboosサウンドとのバランスを取るため、プレイヤビリティを優先して、ジャズ・ファンク要素を強めたのが、このCookin' On 3 Burnersというプロジェクトである。


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Cookin' On 3 Burners
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1. Push It Up (featuring Kylie Auldist)
 そのBamboosの女性シンガーがヴォーカルを取る1曲目。本家ではもう少しムーディーなソウルっぽい歌い方だけど、ここではバンドに煽られて、ファンク・ディーヴァならではのフェイクも聴かせている。あっという間、疾風怒濤のように駆け巡る3分間。
 アルバム、そしてバンド・コンセプトの紹介としては最高のリード・トラック。PVも一応制作されているのだけれど、画質もアングルも悪く、ほんとホーム・ビデオ並み、記録として一応撮っておきました感が強い。歌も演奏も確かによいのだけれど、なんでこんな、ホーム・パーティーのガレージ裏みたいなところで録ったモノを、わざわざ全世界に公開しているのだろう。DIY感を狙っているとすれば、どこかズレていると思う。

 
 
2. Four N Twenty

3. Tokyo Saucer
 
4. Dog Wash
 
5. This Girl (featuring Kylie Auldist)
 こちらは本家Bamboosを思わせる、ちょっと懐かしめのソウル・ナンバー。アトランティック期のAretha Franklinのアルバム中の1曲といった趣き。1.ではバンドとヴォーカルとの一騎打ちバトルが展開されていたけど、ここではムードが一転、Kylieのヴォーカルに寄り添うようなバッキングとなっている。
 オーストラリアのジャズ・ファンク周辺では、かなりの有名人であるKylie。彼らだけでなく、その歌声を求めてゲストに招くバンドは多い。あらゆるジャンルに瞬時にかつ適切に対応できる人なので、それだけ需要が多いのだろう。
 そんな多忙にもかかわらずコンスタントにソロ・アルバムもリリースしているので、興味のある人は是非。ファンクを抑えてトップ40を意識したようなサウンドは、80年代のAlison Moyetを連想させる。

 
 
6. Hole in My Pocket (featuring Fallon Williams)
 こちらもディープ・ファンク・スタイルのナンバー。Metersあたりをモチーフとした泥臭いナンバー。ダミ声のヴォーカルがクセになるのだけど、この人がどんな経歴なのかを検索してみても、ヒットして来なかった。有名なのか無名なのかもよくわからないけど、それなりの実力の人なのだろう。やっぱりオーストラリアはよくわからん。
 
7. Cars
 
8. Goose It Up
 
9. Piranha

bwcotb

10. Seen Through Your Disguise (featuring Fallon Williams)
 アメリカのディープ・サウスっぽいナンバー。3ピース・オルガン・トリオの弱点として、ベースの不在による低音部の足腰の弱さが普通挙げられるけど、そこはさすがに手練れのバンド、どの曲もリズムのボトムがしっかりしており、脆弱さは感じられない。もう少しホーンを目立たせても良かったんじゃね?と思うのは、贅沢な要望か。
 
11. Soul Messin
 インストのタイトル・ナンバー。オルガンのJake Masonの真骨頂が発揮されている。このJakeも様々なプロジェクトに顔を出している人であり。プロデューサーなどで結構多忙なため、Cookin' On 3 Burnersに専念する時間がなかなか取れないこともまた、イマイチブレイクできない要因となっている。ま、多分息抜きのプロジェクトなので、そこまで深刻には思ってはいないと思うけど。
 
12. The Proving Grounds



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