folder ここ一年くらい、俺的には結構盛り上がっているにもかかわらず、日本では知名度も人気的にも悲劇的なくらいイマイチなフランス産ジャズ・ファンク・バンド、またまたElectro Deluxeのご紹介。
 
 フランス国内ではそこそこ盛り上がっているらしく、twitterやfacebookをチェックしていると、月2~3度くらいだけど、ライブの予定が半年先くらいまで開示されており、切れ目なくオファーが続いているのがわかる。
 あだ、その人気がユーロ圏内から飛び越えることが難しいらしく、現状ではライブもほぼフランス国内に限定されており、海外公演は至難の業だという状況が続いている。それでも草の根的に世界中に広がりつつあるファンたちに向けて、また更なる拡大を目指して、彼らもいろいろ策を講じている。

 海外のバンドがライブ・シューティングを行ない、Youtubeで発信してファンの拡大を狙うことは、近年どのバンドも力を入れていることである。彼らもまた例外でなく、特に今年に入ってからは更新の頻度が多くなっており、現在もほぼ月一くらいのペースで動画をアップしている。
 当初は臨場感あふれるスタジオ・セッション中心で、シンプルかつ低予算のハンドメイド、手作り感満載の作りだった。ただ、このアルバムがリリースされた前後になると、どうも予算が増えたのか、本格的なスタジオ・セットを組んで観客を入れてライブを行なったり、郊外の一軒家へロケに出たりと、曲ごとに趣向を凝らした作りになっている。最近ではスタジオ・セットを組んで寸劇仕立て、3人のバック・ダンサーに翻弄されておどけるヴォーカルのJames Copleyが、ちょっぴりカワイイ(とはいっても、愛想の良いMorrissey似のオヤジが蝶ネクタイにタキシード姿で溌剌と動く様をカワイイと思えるかどうかは、あなた次第)。

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 俺はどうしてこんなにこのバンドが好きなのだろう?
 何が魅力的なのか、なぜそれほど俺の心を魅了するのか-、整理するため、ちょっと箇条書きにしてみた。
① ジャズやファンク成分の強い無国籍サウンド
② ロックの影が薄い
③ ファンク要素の強いリズムと、ジャズ・テイストのホーン・セクションとの絶妙な組み合わせ
④ ルックスはそれほど…、というかビジュアル面で勝負してない、一般的なイケメンは数少ない
 以上、いくつか羅列してみると…、なんだ、ただのJoe Jacksonじゃねぇか。
 
 人の趣味嗜好はそれぞれだけど、俺という人間は、この手のサウンドにはほぼ無条件で反応してしまうらしい。これまであまり意識したことはなかったけど、それくらいJoe Jacksonと共通点が多かった。
 これらの条件に当てはまるアーティストとして、他にSteely Danがいる。彼らも基本、個々のキャラクターを前面に押し出したタイプじゃないよな、そういえば。Donald Fagenがソロ・デビュー間もない頃、あの『Nightfly』のジャケットでシブい大人のフェロモンを放出していた時期もあったけど、それももう昔の話、今じゃただの偏屈なオヤジである。片割れのWalter Beckerは相変わらず宮崎駿そっくりだし。
 ④の条件に絞ると、他に大滝詠一やBeautiful Southも該当するのだけど、掘り下げるとキリがないのでやめておこう。

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 バンド名の由来通り、デビューと2枚目くらいまではエレクトロ成分を若干まぶしたビートと、ジャズ・テイストな生音との融合、それにごくわずかのヒップホップ風味も入って、とっ散らかってごちゃ混ぜなサウンドになっており、その未整理加減こそが一部のジャズ・ファンク好きには早くから注目を浴びていたのだけど、あくまで狭いジャズ・ファンク村での内輪の話題であり、それが外部に大きく広がるほどではなかった。
 バンドとしての方針というか、サウンドのコンセプトがイマイチ曖昧だったのだ。多くの大衆に届けるには、もっとわかりやすい言語が必要だ。
 しかし、バンド結成から間もなかったため、何をやり始めるにもすべてが手探りだ。確固としたコンセプトの立案にはまだ時間が必要だったし、もしあったとしても予算も時間も、そしてメンバーそれぞれのスキルも充分でなかったのだろう。
 
 地道な活動を続けるうち、それなりにではあるけど知名度も広がり、それなりにライブのオファーも増え、今までならシンセ機材で出していた音も生音、特にホーン・セクションをレコーディングに使えるようになった、さらに予算が増えるとパートタイムではあるけど、ライブ・メンバーとして常駐できるようになった、最初は予算の関係上、苦肉の策だったループ・ドラムやプリセット音も、わざわざ使う必要がなくなってきた。理想的なバンドとしての成長である。
 ていうか、もともとこんな感じのサウンドを志向していたのか、それとも行き着いた結果なのかはわからないけど、バンドとしてはいい感じで行ってるんじゃないかと思う。


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Electro Deluxe
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1 Devil
 パーティ・バンドっぽいオープニング。ホーン・セクションもベースも躍る感じでプレイしており楽しそう。ビデオは郊外の誰かの一軒家の別荘?っぽい設定。いつものステージ・スタイルではなく、格好も非常にラフ。でもどんな時でもCopleyだけはただ一人、シャツのボタンをキッチリ上まで留めている。

 
 
2 Showdown
 Frank Sinatraっぽいジャズ・テイストの強い曲。歌だけ聴いてるとまったりっぽいが、やはりこのバンドのリズムが跳ねる跳ねる。
 
3 Free Yourself
 
4 Twist Her
 1.と同じ日に収録されたテイクもあるが、小芝居仕立てで作られたビデオ・クリップの方が面白い。フランスの大衆演劇場を模したセットの中で、先ほど挙げたCopleyを始めとするバンド・メンバーの熱演ぶりが微笑ましい。バック・ダンサーの中国雑技団張りの演技も見もの。

 
 
5 The Ring
 ややStax系のリズム&ブルースを思い起こさせる、彼らにしては珍しいタイプの曲。ベタっぽいバラードだが、情感たっぷりに、しかもドライに歌い上げるCopleyがカッコよく見える。あまりべたつかない歌い方はこの人の強みだろう。
 
6 G-Force
 
7 Smoke
 ビデオでは若手ラッパーBeat Beat Assailantとコラボ。アルバム・バージョンではCopleyのソロだが、断然ビデオの方が必見。こちらは大きめのスタジオでのセッションとなっており、よってホーン・セクションもフルで入っており、Electro Deluxe Big Band名義。大人数で盛り上がるCopleyと対照的に終始クールな態度のAssailantとの対比が面白い。
 こういった時、オヤジって盛り上がるんだよな。

 
 
8 Ground
 
9 Turkey
10 Blacktop River
 ちょっとレゲエ調の、これも今までなかったタイプの曲。やはりホーンが常駐するようになるといろいろアイデアが浮かんでくるのか、まぁアルバムにバリエーションを持たせるためには、こういった曲も必要なのだろう。

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11 Rise Up
 ライブでは情感たっぷりに歌い上げるバラードから一転、フル・バンドで盛り上がるパターンだけど、アルバム・ヴァージョンは最初っから飛ばしまくるブラス・ファンク。そんな音の壁にも負けない、暑苦しいまでのCopleyの個性あふれるヴォーカル。
 わかった、日本では彼のようなキャラクターは濃すぎるんだよな、きっと。イギリスじゃ国民的大歌手のTom Jonesだって、日本じゃさっぱりだもの。もう少し薄めればちょうどいいのかもしれないけど、そうなるとバンドの持ち味がかなり失われてしまうことになる。難しいところだ。
 
12 Comin' Home
 Otis Reddingに聴こえる瞬間もあるくらい、珍しく素直なソウル・バラード。
 あまり語られることがないのだけど、ドラム担当のArnaud Renavilleという人、この手のバンドにしてはドラムがズシッと重く響く。ファンク系バンドの多くはノリとリズム感を売りにしているため、ハイハットももっと軽く響く場合が多いのだが、彼の場合、このようなしっとりしたスロー・ナンバーでも重厚感がある。
 ビデオではCopleyが時々変顔で唸ったりもしているが、基本シリアスに真面目に歌っているのが、どことなく滑稽。

 




 何しろ米米クラブにも引けを取らないくらいの大所帯バンドのため、なかなか小回りが利かず、海外公演もそんなにできない現状が続いている。
 どうにか世界的な企業CMなんかで取り上げてくれればいいのだけれど、何しろ他国を平気で見下すフランス人だけあって、それもまた難しいだろう。変な方向で売れてしまってポップになり過ぎるのも、ファンとしては複雑なところ。
 やっぱりこのままマイペースで、時々ビデオ・レターみたいな形で元気な姿を見せてくれるのが一番無難なのでは、という結論に落ち着いてしまう。
 まぁ、元気でやっててくれりゃいいか。



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