好きなアルバムを自分勝手にダラダラ語る、そんなユルいコンセプトのブログです。

#Rolling Stone Magazine 500 Greatest Album Of All Time

「Rolling Stone Magazine 500 Greatest Album Of All Time」全アルバム・レビュー:411-420位


411位 Bob Dylan 『Love and Theft』

(459位 → 385位 → 411位)

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 「偶然」というか、別に無理やり関連づける必要もないのだけど2001年、NY同時多発テロの日にリリースされた、21世紀初のディラン新作スタジオアルバム。ここまでディラン、8枚が選出されており、いまだその支持層の厚さぶりが窺える。

 ちなみに今さらだけどこのランキング、335人の音楽関係者に「お気に入りのアルバム50枚」を選出してもらう集計方式を取っており、そうなるとみんな、「ディランとビートルズと『Pet Sounds』、どれか1枚くらい入れないとカッコつかないんじゃね?」と思ってしまうもの。特にディランだと、どうせ60年代に票が集中するのは明らかなので、「ベタなところはちょっと」ってはずしてみた層が、『Love and Theft』に入れたんじゃないかと思われる。

 目に見えて迷走していた80年代の音楽的変遷を酷評され、または冷笑されたりしてよほど懲りたのか、90年代の多くを長い長いロードに明け暮れ、ちっとも新作を発表しなかったディラン。世紀末を経たことで何か吹っ切れたのか、これ以降は比較的コンスタントに新作スタジオアルバムを発表し続けている。

 もともとデビュー時、「反戦フォークが流行ってたから」という単純な理由でプロテスト路線に走った人なので、実はそんなに確固たるポリシーに則って行動している人ではない。同時代のビートルズやストーンズみたいに、女の子にキャーキャー言われたいからロックに転向したり、実は案外ミーハーである。

 そんな感じで流浪の変遷を歩んできた20世紀のディラン、ひとつ時代を跨いだことを意識したのか、ここではポピュラー全史を俯瞰した多様な楽曲を、ネバー・エンディング・ツアーのメンバーと共にレコーディングしている。

 ギターがチャーリー・セクストンだよ。昔は「チャリ坊」って呼ばれたのに。時代も変わったな。

 コロナ禍も落ち着いた西欧を手始めに、ディランは今年もツアーに出る予定。終わりなき旅を続けるブルースマンになぞらえて、彼はどこへ辿り着こうとしているのか。または、ステージ上で息絶えることを、どこかで望んでいるのか。




 紋切り型のフォークスタイル以外のカバーとなると、実はそれほど多くないディラン。ここは洋楽カバーの多い西城秀樹の「I Shall be Released」を。独自の日本語詞による歌唱は、見事にエンタテイメントとして昇華している。
 前回411位はEric Clapton 『461 Ocean Boulevard』。今回は圏外。





412位 Smokey Robinson and The Miracles 『Going to a Go-Go』

(268位 → 273位 → 412位)

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 数年前、アンダーソン・パークとのコラボで健在ぶりを示した、アメリカ芸能界においては間違いなくレジェンド中のレジェンド:スモーキー・ロビンソンの代表作がランクイン。ベストアルバムじゃなくて、このオリジナルがランクインしたのは、数々のヒット曲・代表曲が数多く収録されていることに加え、アルバムジャケットの秀逸なデザインのおかげだろうな。まだ希望に満ち溢れていた、明るく元気なアメリカを象徴しているもの。
 ここ日本でモータウンといえば、圧倒的にダイアナ・ロスとスティーヴィー・ワンダーの知名度が高い。ちょっと下がってマーヴィン・ゲイ、続いてジャクソン5=マイケル・ジャクソンといったところで、ミラクルズの人気は大幅に下がる。
 テンプスやフォー・トップスもそうだけど、モータウンはグループ系となると音楽好きな人はともかく、一般的な認知度が大きく下がる傾向にある。この3組の中では「マイ・ガール」持ってるテンプスが、ちょっとだけ上か。
 ただその「マイ・ガール」も、実はスモーキーの作品である。楽曲制作から振り付けからステージパフォーマンスからトータルコンセプトまで、現在にも通ずるロールモデルとなっているモータウンのフォーマットは、ほぼすべてが社長ベリー・ゴーディとスモーキーの手によって培われたものなのだ。すげぇな昔の人って。

 そんなシステム論やフロンティアスピリットなんてのは抜きにして、ビタースウィートなメロディの「The Tracks of My Tears」、自然と体がリズムを刻むタイトルチューン、ただただ甘くセンチなバラード「Ooh Baby Baby」。この冒頭3曲だけで、おかずもなしでお腹いっぱいになってしまう。




 で、その「Ooh Baby Baby」、俺がこの曲を最初に聴いたのはオリジナルじゃなくてザップのヴァージョン。日本で誰かいるかもと思って調べたら、いたよSkoop On Somebody。オーガニックテイストなアレンジは主張し過ぎず、いい意味でBGMにぴったり。美容室で流れてたら眠ってしまいそう。
 前回412位はWire『Pink Flag』。今回は310位。





413位 Creedence Clearwater Revival 『Cosmo's Factory』

(262位 → - → 413位)

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 なんと実質活動期間がたった4年だったってCCR。そんな短命だった彼らの5枚目のアルバムが復活ランクイン。現役活動時から日本でも人気のあったバンドであり、代表曲「雨を見たかい」「プラウド・メアリー」は今もテレビでラジオで動画で聴くことも多い。
 リーダー:ジョン・フォガティは80年代のほんの一瞬、ソロで成功してたはずだけど、その後はあまり話題も聞かず、他のメンバーなんてほぼ消息不明みたいな扱いだし、解散以降はあまり恵まれてなかったっぽい。メンバーがその気なら再結成も可能なはずだったし、あれだけヒット曲持ってれば、オファーだって引く手あまただったはずなのだけど、そういった噂も聞いたことがない。
 どうやら彼ら、出版権がらみで当時の所属レーベルと長らく揉めていたため、バンド時代の楽曲を自由に扱えず、何をするにしてもそれが足枷となっていた。
 詳しいところは、こっちを参照。ちなみにこの問題、ほんとつい最近、解決に至った。おかげで自由に歌えるようになったのだけど、メンバーの多くはすでに鬼籍に入ってるし、フォガティも御年77歳。体力的な問題もあるけど、それ以前に気力を奮い起こすのが、もう難しいお年頃。訴訟関連で、相当メンタル削られたろうし。
 日本では想像しづらいけど、本国アメリカでは根強い人気を誇るCCR。ランキング初版96位だったベスト『Chronicle: The 20 Greatest Hits』なんて、累計1000万以上売れてるくらい慕われている。
 シリアスなロック史的には彼ら、わかりやすくキャッチーなシングルヒットが多いため、範疇外に置かれることが多い。ピッチフォーク界隈やロキノン界隈では軽く見られがちなのだけど、そこを通過して深く掘り込んで、さらに一周回ってから聴いてみると、いろいろ悟ったり見えてきたりして、逆に心地よい。小難しく考えず、なごんで口ずさんでしまう曲って、やっぱ最高って思えてしまう。
 実は結構洋楽カバーを歌っていたキャンディーズ。この頃のアイドル歌手って、アルバムのリリースペースが3ヶ月単位と超過密だったため楽曲が足りず、カバーで埋めることが多々あった。




 もともとスクールメイツの選抜メンバーだっただけあって、歌も踊りもハイレベルだった彼女ら、激しいライブでも「プラウド・メアリー」を難なく歌いこなしてしまう。このポテンシャルの高さは、もっと評価されるべき。今度、ちゃんと書こうかな。
 前回413位はMinutemen 『Double Nickels on the Dime』。今回は267位。




414位 Chic 『Risqué』
(初登場)

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 俺世代にとってはシック、70年代を代表するディスコ/ファンク・バンドというより、数々の80年代大ヒットアルバムを手がけた売れっ子プロデューサー:ナイル・ロジャース/バーナード・エドワーズを擁したユニットという印象が強い。または「ダフト・パンクの後ろでギター弾いてた人(ロジャース)」。そんな彼らのデビュー作が初登場。
 ほとんどのメンバーが鬼籍に入り、唯一のオリメンはロジャースだけになってしまったけど、それでもまだグループとして存続しているシック。デビュー間もなくから現在に至るまでロジャース、ソロ活動には積極的だけど、自分がメインとなるプロジェクトにはあまり前向きではないっぽい。
 全盛期の80年代にソロアルバムを3枚製作しているのだけど、他アーティストのプロデュース作とは比較にならない売り上げに終わっている。フロントに立つよりサポートや裏方に徹する方が向いていると判断して以降は、自分の作品はシック名義で発表している。
 正直「おしゃれフリーク」以外はちゃんと聴いておらず、どうせ全曲「Good Times」のバリエーションなんじゃね?と勝手に思い込んでいたのだけど、イヤ案外バラエティに富んでいる。バラードからアップテンポまで、多彩に丁寧に作られている。
 この時点でメンバーみんな、二十歳そこそこだったにもかかわらず、まるでベテランのような安定感がある。特にドラム、トニー・トンプソンのアタック音とリズムワークは革命モノ。
 昔の「レッツゴーヤング」あたりで「おしゃれフリーク」カバーしてる映像残ってるんじゃね?とヤマ張って調べてみたら、あらヒットしたわ。しかもつい最近、意外な人で。




 元AKB48の板野友美がシングルでカバーしてた。パリピ向けのEDMバリバリ、ノリと勢い以外は何も残らないサウンドは、ある意味、オリジナルの意図を尊重している。
 前回414位はGo-Gos 『Beauty and the Beat』。今回は400位。




415位 The Meters 『Look-Ka Py Py』
(216位 → 220位 → 415位)

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 「セカンドラインの代表的バンド」、または「ジャズファンクの祖」として、または「ヒップホップのサンプリング元ネタ」として、みんな意識はしてないけど、1フレーズくらいは絶対聴いたことがある、そんなミーターズの2枚目がランクイン。80年代以降はネヴィル・ブラザーズ名義で活動継続していた、なかなかの活動歴を誇るバンドだった。
 当時のアメリカでもそれほど売れてたわけではなかったけど、彼らとドクター・ジョンが広めたセカンドラインというリズムは海を渡り、はるか東洋の好事家な若者の琴線を揺らすことになる。その2人が、細野晴臣と大滝詠一。
 まだ知る人ぞ知る存在だった2人は、同じくまだ広く知られていないリズムをとことん研究し、独自のサウンドを模索していた。その試みは後世になって評価されたけど、当時はそれほど話題にならず、路線変更を余儀なくされる。その後、細野はYMO、大滝はロンバケでブレイクすることになるのだけど、もしリズム路線がもう少し注目されていたら、日本のロック史もまた変わっていたかもしれない―、っていう妄想。
 最近は全然更新してないけど、「世界のジャズ・ファンク・バンド巡り」というシリーズを書いている。ほぼ21世紀以降に限定して、欧米の現役ジャズ・ファンク・バンドをレビューしているのだけど、どのバンドもほぼミーターズ・リスペクト。っていうか、ほぼまんま。
 個人的にはもうちょっとファンク寄り、ホーンと女性ヴォーカルが入ると、もう文句なしの大好物になってしまう。最初は抵抗あるかもしれないけど、聴き続けてるとクセになるよ。
 他のランキングは、『Rejuvenation』が138位→139位と来て、今回は圏外。
 前回415位はVan Halen 『Van Halen』。今回は292位。




416位 The Roots 『Things Fall Apart』
(初登場)

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 日本で紹介される時はおおよそ「生音ヒップホップ」という、なんかよくわからない形容をされることが多い、でもそれ以外、なんて例えたらいいか適当な言葉が見つからず、結局その例えに落ち着いてしまう、そんなルーツの代表作が初登場。少し音楽わかってる人にだったら、「クエストラブがいるグループ」って言った方がいいかもしれない。
 ヒップホップをまるで聴いてなかった俺が彼らのことを知ったのは、エルヴィス・コステロとのコラボアルバムだった。圧の強いギャングスタとは一線を画したスタイルは、比較的抵抗なく受け入れることができたため、そんなガッツリではないけど、新譜が出るたびに一応聴いたりしている。
 で、これはルーツに限らず、ここまで聴いてきた近年のアルバム全般に言えることなのだけど、導入部がダルくて飛ばすか、または挫折してしまうことが多々ある。
 楽曲単体で聴かれることが多い昨今、それでもアルバムという形式にこだわりを持つアーティストは、単なるシングル寄せ集めと差別化を図るため、トータル性やゆるいコンセプトを設けて構成している。オーバーチュアや序章やらコンセプチュアルなオープニングが一曲目のアルバムが多いこと。
 よほど興味あるアーティストならともかく、ほとんどの場合、聴いてる方からするとダルく感じてしまう。イヤやりたいことはわかるんだけど、荘厳なムード演出のストリングスや多重コーラス、意味ありげなモノローグなんてのもいらない。こんな風に思うの、俺だけかもしれないけど。
 なので、1999年にリリースされたこのアルバムも、そういったセオリーに基づいた、怪しげなモノローグの幕開けだけど、そこを我慢して聴き進めてゆくと、ソリッドでコンパクトな、キレのいいトラックが並んでいる。レトロR&B/ファンクとブレイクビート/ラップとの自然な組み合わせは、ビギナーにも受け入れやすい。
 前回416位はTom Waits 『Mule Variations』。今回は圏外。




417位 Ornette Coleman 『The Shape of Jazz to Come』
(243位 → 248位 → 417位)

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 邦題『ジャズ来るべきもの』、フリー/アバンギャルドジャズの記念碑的作品が大きくランクダウン。ただこのジャンルのフロンティア的位置づけの作品なため、おそらく今後もランキング下位には残り続けると予想。
 ここからコルトレーンが覚醒したり「破壊せよ」とアイラーが言ったりサン・ラーが宇宙大統領になったりするのだけど、その辺は今ランキングではガン無視。この辺の人たちはみんな、スピリチュアルに走っちゃったからな。一般人にはなかなか理解しづらいし。
 かつての革新的アイディアやマイルストーンとなった作品の大方がそうであるように、このアルバムもいま聴いてみると、至って普通。「ジャズ界を震撼させた」という惹句を鵜呑みにして聴くと、がっかりしてしまうかもしれない。
 通常のアンサンブルと比べて「ちょっと調子ハズレかな?」程度の破綻ぶりであって、そこまではみ出してはいない。こういうのって先に言ったもん勝ち的なところもあるけど、先に末期コルトレーン に出逢ってしまった俺からすれば、物足りなさが残る。
 そんな先入観を排除して聴いてみると、オーネットのプレイは至極オーソドックスであり、正直、そこまで上手くない。ただ、もう一人の雄ドン・チェリーが入ると、空間に歪みが生じる。敢えて不協和なピッコロトランペットを自在に操って、オーネットを挑発する。
 最小限の進行だけで編まれるアンサンブルはセオリーをはずし、どこに辿り着くのか。それはプレイヤーすら見当がつかない。
 「定石を嫌うことこそ美」と定義づけ、後進がさらにかき混ぜた。収拾を考えない混沌は、破滅的な美を生み出す。
 前回417位はU2 『Boy』。今回は圏外。




418位 Dire Straits 『Brothers in Arms』
(347位 → 352位 → 418位)

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 413位CCR同様、本国UKでは80年代、国民的バンドとして君臨したダイアー・ストレイツの代表作が、今回は大きくランクダウン。もともと70年代から、地道に真面目に贅沢せずにやってきた人たちだけど、何かの拍子で80年代シンセサウンドと遭遇したことが、世界的大ブレイクのきっかけとなった。
 ていうか正直、このアルバムしか知らない。「悲しきサルタン」が代表曲らしいけど、多くの人は「Money for Nothing」しか知らないはず。俺だけかもしれないけど。
 バンドが地味なら、リーダーも輪をかけて地味、バンド運営のほぼすべてを担っていたマーク・ノップラーは、全盛期は頭にバンダナ巻いたりして、あれで精いっぱいビジュアル意識してたんだろうけど、ひ弱なスプリングスティーンみたいで、とても映えてるとは言い難かった。そういえば『Born in the USA』も同じくらいの時期だったよな。シンクロニシティ。
 バカ売れした反動なのか、その後の彼らは地味さに拍車がかかり、活動はフェードアウトしていつの間に解散、他のメンバーは音沙汰さえ聞かない。ノップラーもまた、ありがちな再結成話にも乗らず、気が向いた時に趣味的なソロアルバムをリリースする程度。かなり以前からFIREを実践している。
 シングルヒットをいっぱい持ってるわけではなく、知る人ぞ知るキラーチューンがあるわけでもない。テクニックで売るタイプでもなければ際立ったメッセージ性があるわけでもない。そう考えると、不思議なバンドなんだよなダイアー・ストレイツ。
 根強い固定ファンがいるわけじゃないけど、CDで聴くには程よいロックテイスト。直球ストレートを素直に受け入れない、そんな英国人にも支持されている彼らの魅力は、おそらく日本では伝わりづらい。イヤほんと謎だ。
 前回418位はPaul McCartney & Wings 『Band on the Run』。今回は圏外。




419位 Eric Church 『Chief』
(初登場)

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 アメリカでは超人気だけど、日本ではほぼ無名、男性カントリーポップシンガーのメジャー3枚目が初登場。テイラー・スウィフト同様、申し訳程度にバンジョーやフィドルがイントロで入るくらいで、あとは至って普通のコンテンポラリーロック。
 ここまでランキングを追ってきて気づいたことだけど、総じてカントリー系の女性シンガーは、コンテンポラリー/オルタナ含めてメインストリームとの親和性が高い。ダンス要素との相性も悪くないため、比較的海外展開しやすいんじゃないかと。
 対して男性だけど、世界的に売れたソロシンガーといえば、せいぜいガース・ブルックスくらいしか思い浮かばない。近年は彼のようにロック寄りのアーティストも増えており、アメリカ国内では安定したセールスを叩き出しているのだけど、ほぼ北米に集中しており、それ以上の広がりそうな予兆もない。
 ツアーやセールスのデータを見ても、活動範囲はほぼアメリカとカナダに限定されており、国外へ波及させようという気もないんじゃないかと思われる。いまはカントリー自体が多様化しており、若年層にも間口が広いけど、もともとはトラディショナルなジャンルゆえ、国内重視のマーケティングになるのは当然の帰結っちゃ帰結。
 ロックなカントリーなのか、はたまたカントリーっぽいロックなのか。昔からいたんだよなジョン・メレンキャンプとか。
 あそこまであざとくないけど、はみ出さない程度の軽快なロックサウンドは、アメリカではまだまだ根強い需要がある。これが海外だとロック(笑)って扱いだから、やっぱグローバル展開はちょっとハードルが高いよな。
 前回419位はPortishead 『Dummy』。今回は131位。




420位 Earth, Wind & Fire 『That's the Way of the World』
(485位 → 486位 → 420位)

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 モーリス・ホワイト亡き後、フィリップ・ベイリーがリーダーを引き継ぎ、いまだ存続中のアースの出世作がランクイン。それほど目だった話題もないはずだけど、前回より微妙に順位を上げているのは謎だけど、ディスコ期以前の作品が評価されているのは、個人的に嬉しいところ。
 でもアース、過去2回含めてランクインしているのがこれのみなのは、ちょっと寂しい。個人的には積極的に好きではないけど、アース流ディスコサウンドの完成形である『Raise!』と、初期の総集編的ライブ『Gratitude』くらいは、どこかに入っててほしかった。




 このアルバムについては以前レビューしているので、詳しくはこちらで。414位のシックと聴き比べると、旧世代に属するアースはアフロフューチャリズムなテイストが強く、時にもっさりしてしまうパートもあるのだけど、キラーチューン「Shining Star」は、そんなネガティヴな空気も吹っ飛ばしてしまう。




 渋谷哲平が「宇宙のファンタジー」をカバーしている。もともと歌唱力で注目された人ではなかったし、おそらくあまり気が進まなかったのか、やる気のないヴォーカルが興醒めだけど、オケは案外再現度も高く気合いが入っている。
 この時期の歌謡曲アルバムは、潤沢な予算と時間を割り振られたスタジオミュージシャンのやりたい放題が時に見られるため、いろんな意味で金脈でもある。こじゃれたシティポップ漁るよりも、お宝感がハンパない。
 前回420位はCrickets 『The "Chirping" Crickets』。今回は圏外。









「Rolling Stone Magazine 500 Greatest Album Of All Time」全アルバム・レビュー:401-410位


 401位 Blondie 『Blondie』
(初登場)

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 146位『Parallel Lines』に続き、2枚目にランクインしたのは1976年リリースのデビュー作。ちなみに当時の邦題は『妖女ブロンディ』。当時の女性ロックアーティスト、おおかたそんな売り方ばっかり。
 収録曲も「戦えカンフーガールズ」やら「恐怖のアリ軍団」など、どうせ日本盤の売り上げったってタカが知れてるから、ディレクターが適当な邦題つけたんだろうな、って思って原題を見ると、何のことはない、ストレートな直訳だった。バンドもまたテキトーだったのか。
 そんな一発屋狙いなタイトルに反し、サウンドは案外まとも、きちんとプロデュースされている。ライブハウス上がりのバンドにありがちな、ダビング最小限の一発録りという安直な作りにはなっていない。キャッチーなメロディとざっくりガレージ感漂うアンサンブル、そして案外腰の座ったデボラのヴォーカルとが、うまくブレンドされている。
 初期衝動の捌け口の産物であったUKパンクが、シンプルなリズムとビートに乗せて社会批判や怒りを表現していたのに対し、NYパンクの系譜に属するブロンディは、当初からマスに希求するエンタメ性とポップなメロディを打ち出していた。どちらもロックの原点回帰をルーツとしながら、多少の下世話さはあったにしても、広く伝わりやすい話法を志向していた。遅かれ早かれ、ブレイクするのは必然だったと言える。




 1999年の再結成時にリリースされたシングル「Maria」、日本でもヒットした韓国映画『カンナさん大成功です!』の劇中で、主演のキム・アジュンが韓国語でカバーしていた。日本公開に向けてプロモーション用のシングルが制作されたのだけど、シンガーに抜擢されたのが梨花。そう、あの梨花。
 モデル主体の活動からテレビタレントへシフトチェンジしていた頃の音源だけど、もともと歌手でデビューしていたこともあって、普通にうまい。セックスシンボルとしてのデボラ・ハリーとはまったく重ならない、ガチのヴォーカル・パフォーマンスは必聴。
 前回401位はRed Hot Chili Peppers 『Californication』。今回は286位。




402位 Fela Kuti & Africa 70 『Expensive Shit』
(初登場)

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 1997年に亡くなってから、急に再評価が高まったフェラ・クティの代表作が初登場。今では普通に使われている「アフロビート」という言葉は彼が創造したとされ、その界隈ではいまだ神格化されている。らしい。名前は聞いてたけど、ちゃんと聴くのはこれが初めて。
 建国以来、いつの時代も政情不安だったナイジェリアに生まれたクティ、ロンドン留学時代に受けた人種差別の反動で、アフリカ民族のアイデンティティと政治的メッセージをポリリズミカルに演奏するアフロジャズを発明する。時代的に、公民権運動に由来するブラックパンサーやマルコムXが一種のスターとなっていた頃で、意識高いアフリカンの一部は、そのイデオロギーに共感し、突き動かされた衝動を音楽や暴力で表現していた。
 薬物と未成年淫行の容疑で収監されたクティ、濡れぎぬが晴れてすぐ釈放されたものの、官憲の横暴への怒りは収まらず、自宅を有刺鉄線で囲んで「カラクタ共和国」と命名、勝手に独立宣言してしまう。このアルバムは、そんな国家との対立中に生まれたもので、収監時、執拗に排泄物提出を強要されたことが制作動機とされている。
 その後、カラクタ共和国は1000人を超える軍隊によって破壊され、クティも逮捕される。国際的に注目を浴びていた裁判は非公開で行なわれたのだけど、そこで何がしかの裏取引でもあったのか、「2度とカラクタを名乗らないこと」を条件に、ほぼ無罪放免でクティは釈放される。
 その後間もなく、彼はバンドの女性コーラス27人と合同結婚式を執り行なうのだった。なんだその急展開。
 ここまで音についてまったく触れてこなかったけど、正直、エピソードを追ってく方が面白い人である。沼にハマったら、いろいろ見えてくることもあるかもしれないので、興味のある人は聴いてみて。聴いたあと、どんな感じか俺に教えて。
 前回402位はNAS 『Illmatic』。今回は44位。




403位 Ghostface Killah 『Supreme Clientele』
(初登場)

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 アーティスト名:ゴーストフェイス・キラー。誰かと思ったら、ウータン・クランの人だった。グループ活動が落ち着いた頃にリリースした2枚目のソロが 初登場。
 ギャングスタラップを通過して来なかった人生なので、他のラッパーと比べて差異があるのかどうかもわからないけど、当時は人気があったらしい。こういう機会がないと聴くこともないけど、まぁステレオタイプのギャングスタ。
 ここに至るまで何枚かのギャングスタを経て、
 「じゃあウータンって、何がすごいのか?」
 「単なるクリエイター集団っていう以上に、何か際立った点があるのだろうか?」
 という疑問が生じた。
 もしかして、受け手の俺に問題があって、実はちゃんとした聴きどころやポイントを見失っていたんじゃなかろうか。できるだけ謙虚な姿勢でネット情報を探ってみた。
 Q. ウータン・クランって、何がすごいの?
 A. ウータン・クランはニューヨークのスタッテン・アイランド出身のヒップホップグループです。 メンバーは非常に多く、ラッパーや周りのプロデューサーを合わせれば10名を超えます。
 彼らのすごいところはそれぞれのメンバーがソロでアルバムを発売し、しかもそれがヒットしていることです。
 薄い情報だ。上部の情報だけで肝心なところは何も触れてない。サウンド面には興味ないのだろうか、この回答者。
 「ウータンの特徴は、拍を無視したラップにある」。と書いてる人がいた。なるほど。詳しくはこちらで。




 それを踏まえてもう一度聴いてみた。みたけど、やっぱ印象は変わらない。
 そもそも事前学習してから聴く時点で、体質に合わないのだ。なので、聴く前と同じ結論。
 前回403位はLynyrd Skynyrd 『(pronounced 'leh-'nerd 'skin-'nerd)』。今回は381位。




404位 Anita Baker 『Rapture』
(初登場)

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 80年代ブラコンシーンを席巻したアニタ・ベイカーの2作目が初登場。グロリア・エステファンやメアリー・J. ブライジもそうだけど、この頃の女性R&Bサウンドは長い間、刹那な流行りモノとして低く見られていた。
 ほんとはみんな、アーバンでトレンディなムードに酔いしれていたはずなのに、表立って「こういうのも好き」とは言いづらかったんだよな。人に聞かれた時はスカして「普段聴くのはR.E.M.とスミス」って言ってたけど、日常的に耳にする機会が多かったのは、こういうサウンドだったのだ我々アラフィフ世代は。
 80年代以降はあまり目立った活動はしてなかったアニタ、アメリカを拠点にマイペースで、たまにラスベガスでリサイタルするパターンなのかと思ってたら、どうやら今年いっぱいで引退するらしい。まだ60を少し過ぎたくらいなので、体力的な問題とは言い難い。
 おそらくだけど、音楽だけに打ち込める環境に恵まれなかったのだろう。魑魅魍魎や山師が跋扈するアメリカの芸能界は、タフじゃないと生きていけないし、優秀なエージェントが必要不可欠だ。
 日本でも小洒落たシーンでよく使われていた「Sweet Love」は、みんな耳馴染みあるんじゃないかと思われる。実は人材難だった80年代女性ブラコンシンガーとして、貴重な存在だった彼女の早い引退が惜しまれる。
 前回404位はDr. John 『Dr. John's Gumbo』。今回は圏外。




405位 Various Artists 『Nuggets: Original Artyfacts from the First Psychedelic Era』
(194位 → 196位 → 405位)

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 60年代アメリカのガレージ/サイケデリックロックのシングルコンピレーションが、今回は大きくランクダウン。ビッグ・スターやニューヨーク・ドールズなど、70年代パンク前夜のバンドは今ランキングで高く評価されているのだけど、あまりに定番過ぎてみんな投票しなかったのか、またはある種の役割を終えたのか。どっちだろ。
 ラインナップを見ると、ほぼ聴いたことないバンドの名前が並んでいるのだけど、U2がリスペクトしていたエレクトリック・プルーンズやサイケの代表的バンド:13thフロア・エレベーターズ、トッド・ラングレンがいたナッズなど、知ってる名前もそこそこある。「無名のカルトバンドのレアシングル集」と思っていたのだけど、実際は全曲トップ40に入った中ヒットであり、「そこそこ知ってる楽曲が入ってるオムニバス」という位置づけがほんとのところらしい。
 のちにパティ・スミスのバンドでギタリストとして名を為すレニー・ケイが、エレクトラのオファーを受けてまとめたものであって、もし彼が無名のままだったら、そのまま単なるヒット曲集として歴史に埋もれていたかもしれない。日本で例えれば、ちょっと古いけど『ビート・エキスプレス』みたいなものかな。アレも結構レアなシングルオンリーの曲があったりして、一時、中古屋で探しまくったもの。
 実際、収録されているアーティストの多くはワンヒットワンダーであるため、変に気張って歴史の重要な1ページと思う必要はない。単なるヒット曲集って扱いが本来はふさわしい。
 あ、みんなそれに気づいて票入れなかったのかも。それなら納得。
 前回405位はBig Star 『Radio City』。今回は359位。




406位 The Magnetic Fields 『69 Love Songs』
(- → 465位 → 406位)

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 90年代のアメリカインディーを代表する、日本ではほぼ知られていないマグネティック・フィールズ、3枚組の大作が前回より大幅ランクアップ。タイトル通り69曲のラブソングが収録されているのだけど、どの曲もほぼ3分未満、バラエティ豊かなジャンルの楽曲が収録されている。
 リーダーのステファン・メリットがほとんどの楽器を自分で演奏しているため、良く言えばマルチミュージシャンなのだけど、テクニックにはあまりこだわらない、ていうか、テクニックで聴かせる楽曲があまりないため、その凄さが伝わってこない。トッド・ラングレンみたいだな。
 もともとは「100曲のラブソングを書いてライブ演奏する」っていうのが初期構想で、アルバム制作は後になって決まったことだった。実際、2部構成で7回、全69曲演奏ライブを行なっているのだけど、本人的には100曲やりたかったんだろうな。多分、そのうちやるかもしれないし。
 シンプルな演奏とポップなメロディはゼイ・マイト・ビー・ジャイアンツに通ずる部分も多く、彼らが好きな人なら受け入れやすいんじゃないかと思われる。個人的には、他のアルバムも聴いてみたいと思った人たち。
 前回406位はPJ. Harvey 『Rid of Me』。今回は153位。




407位 Neil Young 『Everybody Knows This Is Nowhere』
(206位 → 210位 → 407位)

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 盟友デヴィッド・クロスビーの訃報を受け、さすがに落ち込んでるんじゃないかと思われる荒馬:ニール・ヤング、クレイジーホースとの初共演作が前回より大きくランクダウン。初顔合わせの肩慣らしというか互いに探り合いというか、ここではまだオーソドックスなカントリーロック。その後のハチャメチャぶりを知ってるだけあって、まだおとなしく聴こえる。
 無指向性でありながら確固たる主張、常に手抜きせず全力投球前のめり。休んでるところなんて見たことない。ほぼ毎年、最低1枚はニューアルバムをリリースするワーカホリックぶり。身内にいたら疲れちゃうタイプの人だな。周囲の人を振り回しまくる俺流主義。
 この時期はクレイジーホースとソロ、そして盟友CSN&Yと、複数のチャンネルを持っていたヤング、ずば抜けた多作の為せる技であり、しかもどれも手を抜いた形跡がない。圧倒的な仕事量と才能の前には、誰もがひれ伏せざるを得ない。
 年を経るごとにギターの音は歪み、リズムも激しさを増してゆくクレイジーホース。まだ旅の途中である2023年の彼らの音は、バイオレンスな轟音と亡くなった友への嘆きで満ちあふれている。
 それらのルーツである『Everybody Knows This Is Nowhere』の音は、まだナイーブで透徹とした響きを奏でている。ずいぶん遠くまで来てしまったんだな。




 クロスビーとほぼ同時期、高橋幸宏もまた天国の住人となった。幸宏については近い将来、きちんと書く。
 「ニール・ヤングという人は、声を聴いているだけでも悲しくなる。果たして彼は、悲しい歌を歌っていたんだろうか、歌おうとしていたんだろうか、という疑問が湧いてくることがあるんです」。
 あまり接点がなさそうだけど、これまで3曲、彼の曲をカバーしている幸宏。彼が歌う「The Loner」は軽やかに響く。声質はまるで違うけど、その歌声はヤング同様、とても切なく悲しくなる。
 前回407位はThe Clash 『Sandinista!』。今回は323位。




408位 Motörhead 『Ace of Spades』
(初登場)

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 UK発スラッシュメタルのゴッドファーザー:モーターヘッドの代表作が初登場。こう書いてるけど、ちゃんと聴いたことはない。バイカーっぽいジャケとレミーのカリスマ性はなんとなく知ってたけど、ヘヴィメタだもの、俺が聴いてるわけがない。
 彼らとジューダス・プリーストとの違いすらわからない俺が初めて聴いてみたわけだけど、これが案外悪くない。ウェット感のまるでない、疾走感とダイナミズムに特化した音は明快で機能的だ。
 世間一般のヘヴィメタルにも、スピード感はあるしラウドな音響はあるのだけど、時々出てくる情緒的なギターソロや類型的なハイトーンヴォイスは、俺の好みとは微妙にズレている。わかりやすいサビや内面を反映したバラードとか、そんなのはいらない。純粋な音響の快感以外は不要なのだ。
 システマティックと言ったら言い過ぎだけど、ファンに媚びるキャッチーなメロや速弾きギターソロなんてのもいらない。余計なファクターをとことん削ぎ落とさなければならないのだ。
 モーターヘッドの音は、そんな当たり前のことを教えてくれる。重くゴリゴリのギターリフとリズム、そして呪詛のようなヴォーカル。多分、他のアルバムも似たようなものなのだろうけど、同じテーマをブレずに追求し、純化させてゆくことが彼らのこだわりなのだ。
 前回408位はSinead O'Connor 『I Do Not Want What I Haven't Got』。今回は457位。




409位 Grateful Dead 『Workingman's Dead』
(259位 → 264位 → 409位)

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 リーダー:ジェリー・ガルシアの死による解散から四半世紀、ほぼ毎日のように発掘される膨大なアーカイブと派生バンドの活躍によって、いまだ根強く支持されているデッド4枚目のスタジオアルバムが、大きくランクダウン。オフィシャルリリースのアイテムがあんまり支持されていないのは昔から。
 当時の西海岸に溢れかえっていた、ヒッピーくずれのジャムバンドに過ぎなかった彼らが、ライブ活動以外にも目を向けて、スタジオレコーディングにも力を入れ始めたのが、この頃とされている。地元以外にもファンが生まれ、関係するスタッフも多くなると、全米もしくは世界を視野に入れた活動へシフトするのは自然の流れだったと言える。まぁ結果的に合わなかったんだけど。
 ライブステージで展開される、延々終わりの見えぬ無限ジャムセッションとは差別化した、ユルいけどコンパクトにまとまったアメリカーナサウンドが展開されている。カッコつけて言っちゃったけど、要は無難なカントリーロック。
 不特定多数のユーザーを相手にするなら、コンパクト路線は正しい選択ではある。何かひとつくらいシングルヒットでも出れば、それが呼び水となって新たな客層をライブに呼び込むこともできるし。
 まだ若かりしガルシアとその仲間たち、当時はそんな野心も多少はあったんじゃないかと思われる。ただメジャーが推す、アルバムリリースに合わせたパッケージツアーは性に合わず、次第にライブ中心の独自路線を追求してゆくことになる。
 前回409位はThe Doors 『Strange Days』。今回は圏外。




410位 The Beach Boys 『Wild Honey』
(初登場)

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 何かと曰くつきの『Smily Smile』の後にリリースされたため、長らく低評価どころか無視され続けていた『Wild Honey』が初登場だって。以前はリイッシュー企画にも上げられず、聴くことすらままならなかったのに。
 ブライアン・ウィルソン渾身の『Smile』は、彼のリタイアによって制作は頓挫、未完の大作として長らく棚上げされることになる。リリーススケジュールを変えることは許されなかったため、残りのメンバーが中途半端な素材をかき集め、どうにか突貫工事でまとめ上げたのが『Smily Smile』、さらにその3ヶ月後にリリースされたのが、このアルバム。
 自発的ではなかったとはいえ、泥縄的にメンバーらが主導権を握り、初期段階からレコーディングに関わり始めたのが、ここからとなる。ブライアンにほぼ丸投げしていたレコーディング作業を、何の準備もなく突然任されたため、手探り感やら無難な手抜き感も伝わってくる。
 ただ、当時はまず完パケさせることが最優先され、やっつけ仕事であっても納期に間に合わせることが善しとされていた60年代。何しろ毎月のように往年の名盤が誕生していた時期なので、踏みとどまることは許されなかったのだ。




 ハイスタの横山剣がソロアルバムで「ココモ」をカバーしている。出だしはゆったりペースだけど、最初のヴァースが終わると、やっぱいつものハイテンションなメロコア。ハワイアンな原曲はどこへやら、ムードもリスペクトもへったくれもない前のめりビートは、別の意味で小気味いい。
 前回410位はBob Dylan 『Time Out of Mind』。今回は圏外。










「Rolling Stone Magazine 500 Greatest Album Of All Time」全アルバム・レビュー:391-400位


 391位 Kelis 『Kaleidoscope』
(初登場)

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 2000年代初頭、やることなすこと全部大当たりの確変状態だったプロデューサー・チーム:ネプチューンズによって見出された歌姫ケリスのデビュー作が初登場。今ならAIでチャチャっとした画像処理で済んでしまう、サイケデリックなボディ・ペインティングをあしらったジャケットはインパクト強い。強すぎたので、曲はちゃんと聴いたことなかったけど。
 このRollingStoneのランキングが始まったのが2003年、このアルバムがリリースされて日が浅かったこともあって、当時はまだ流行りもの程度の評価しか受けていなかった。メアリー・J. ブライジでさえ、今回やっとランクインしたくらいで、当時はまだダンスポップ/R&B系への偏見が強かった。
 もともとRollingStone自体がロック系に強かったため、初回のランキングは往年のロック名盤が上位独占し、それ以外のジャンルは付け足し程度の存在だった。ただこの20年で、音楽業界は結構なパラダイム・シフトを迎えた。それに伴う急激な世代交代があったことが、ランキングを見るとわかる。
 すぐあとに出てくるけど、リリース間もないビリー・アイリッシュがランクインしているくらいだもの。時代は確実に変わっているのだ。日本じゃ実感できないけど。
 で、ケリス。当時はジャンル自体、ほぼ関心なかったけど、近年のメインストリーム・ポップと比べれば、わりと好きな部類の音ではある。粗製濫造の象徴だったオートチューン全盛のサウンドだけど、細かな仕掛けやエフェクトなど、凝った作りになっているのが、振り返ってみるとわかる。
 最近のR&Bやダンス・ポップはおおむね、クリック音と大差ない簡素なリズム・トラックが多いので、あんまり面白くないんだよな。バッキングをシンプルにしてヴォーカルを強調したい意図はわかるんだけど、それだけじゃ聴いてて面白くない。
 前回391位はJakcson Browne 『The Pretender』。今回は圏外。




392位 Ike & Tina Turner 『Proud Mary: The Best of Ike and Tina Turner』
(210位→214位→392位)

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 昨年、ティナ・ターナーがロックの殿堂入りして、キャリア的にもシーンへの影響度的にも「何を今さら」って思っていたのだけど、91年にアイク&ティナで殿堂入りしてた。結構以前に評価はされてたんだな。
 そんな彼らのベストが、大幅にランクを落としはしたけど、辛うじて300位台に踏みとどまった。唯一無二のキャラ強な女性ヴォーカルであることは間違いないんだけど、「今後、再評価されるか」って聞かれると、ちょっと言葉濁しちゃうんだよな、この手の人って。
 ちなみに、ティナ・ターナーでは、過去もランクインなし。現代のディーヴァ系とはリンクしないスタイルなので、リスペクトされずらいのがネックなんじゃないかと思う。
 ゆるやかな時系列に沿って、おおよそのヒット曲がランダムに配置されている構成なのだけど、初期の楽曲は粗々しさが際立っており、正直、ちょっとイタい。南部の田舎から出てきたばかり、獰猛なアバズレのごとく奇声を発するティナに対し、50年代ドゥーワップ的なバッキングはショボく聴こえてしまい、キワモノ的なアンバランスさが際立っている。
 おそらくライブでは盛り上がったんだろうけど、当時のレコーディング技術では、これが限界だったと思われる。金にうるさかったアイクとしては、レコーディングにこだわるより、地方の営業回りを優先していただろうし。
 ただシングル・ヒットが集客に影響することを知ってからは、スタジオ・ワークにもそれなりに力を入れるようになり、ストーンズやビートルズらのロック系、またはスライのカバーや、そのスライのモロパクリみたいなオリジナル曲を経て、クオリティ的にも商業的にもひとつの到達点となったのが「Proud Mary」だったんじゃないかと思う。
 冒頭から聴き進めていって「Come Together」から節目が変わるので、そこから聴く方が俺的には楽しめる。




 最近は森山良子や平原綾香らとで「ミュージック・フェア」出演率の高い新妻聖子。ライブ盤で「River Deep,Mountain High」をカバー。ミュージカル畑の人なので、ソウル/R&Bのアプローチとはまた違うけど、自分のカラーで演じることによって、オリジナルとはまた違う良さを引き出している。だって歌うまいもの。
 前回392位はThe Beatles 『Let It Be』。今回は342位。




393位 Taylor Swift 『1989』
(初登場)

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 ポジション的には誰もが認める大物アーティストであるにもかかわらず、いまだ1〜2年程度のリリース・スパンで活動しているテイラー・スウィフトの代表作が初登場。このRollingStoneのランキングは、多くのダンス・ポップ系アーティストがデビュー作、または代表作1枚程度しかランクインしていないにもかかわらず、テイラーは99位『Red』に続いて2作送り込んでいる。
 そのオリジナル制作だけでも充分忙しいはずなのにテイラー、以前の所属レーベル:ビッグマシーン時代のアルバムの再レコーディングも併行して進めている。過去楽曲の使用をめぐって揉めたことが発端なのだけど、単なるレーベルのあやつり人形ではなく、きちんと自己主張できるひとりの女性であることも、安定した人気に繋がっているんじゃないかと勝手に思ってる。
 そういえば、プリンスもワーナーと揉めた時、同じことやってたな。彼の場合、飽きっぽいから「1999」1曲だけで終わっちゃったけど。
 でテイラー、『Red』までは申し訳程度にバンジョーやフィドル入れたりして、無理やりカントリーにこじつけていたのだけど、本格的なワールドワイド展開となると、アメリカローカル色は長期的にはデメリットとなる。そういったエクスキューズを取っ払ったのが、この『1989』。近年のカントリー・ポップはほぼコンテンポラリー寄りなので、試聴サンプル程度のサイズだとほぼ変わらないのだけど、そこはテイラー本人の心構えなのだろう。
 アルバム通して聴くのは初めてだけど、タイアップやCMで聴き覚えある楽曲も多々あるので、意外と馴染みはある。ちゃんとしたデータを参照したわけではないけど、フジテレビのバラエティ番組で多用されていたような。
 前回393位はM.I.A. 『Kala』。今回は圏外。




394位 Diana Ross 『Diana』
(初登場)

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 60年代から活動しているレジェンドなので、もう悠々自適にリタイアしていると思ってたら、いまだ世界ツアー鋭意継続中のダイアナ・ロス、70年代の代表作が初登場。ストーンズやポール・マッカートニーもそうだけど、もうそんなあくせく働く必要なんてないはずなのに、どれだけシーンに痕跡を残し続けたいのか、はたまた忘れられたくないのか。
 シュープリームスから現在まで、特別意識しなくてもシングル・ヒットは耳に入ってくるので気づかなかったけど、考えてみれば楽曲単位ではなく「ダイアナ・ロスのアルバム」という視点で語られることは、ほぼなかった。俺がリアタイで知ったのは、ライオネル・リッチーとの「Endless Love」、そこから少し飛んで「If We Hold On Together」。それ以降はあんまり目立った印象がない。
 「マホガニーのテーマ」やら「Touch Me In The Morning」やら、浮世離れしたポピュラー歌手路線を歩んでいた70年代中盤までのダイアナだったけど、ここでは同時代性の強いディスコ路線で押し切っている。ハスキーなウィスパー・ヴォイスとファンキー・サウンドとの相性は賛否両論あるけど、バックトラックはヒップで付け焼き刃感もない。
 モータウンの威光でいいブレーン揃えたんだろうなと思ってクレジットを見ると、あのシックが全面参加していた。サウンド・プロデュースがナイル・ロジャース&バーナード・エドワーズだって。そりゃ最強だ。
 他のランキングはDiana Ross & the Supremes 『Anthology』が423位→423位と来て、今回452位。




 アイドル時代の長山洋子が「If We Hold On Together」を、しかも日本語オリジナル歌詞でカバーしている。当時から歌のうまさは定評があった人なので、変に破綻することなくキッチリアーバンなバラードにまとめている。
 ちなみに彼女、これを最後に演歌路線へ転向してしまう。今ならド演歌一本の歌手も少なくなっているので、コンテンポラリー路線への復帰もいいんじゃね?と思うのだけど。
 前回394位はRandy Newman 『Good Old Boys』。今回は圏外。




395位 D'Angelo and the Vanguard 『Black Messiah』
(初登場)

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 「最近なにしてるのか、多分なんか機材いじってるんだろうけど具体的なビジョンはまだ固まってなさそうだし、でも機が熟したらまた動くんじゃね?」ってみんなに思われてる、そんなディアンジェロの最新作が初登場。最新作ったって、もう8年前だけど。
 28位にランクインしてる前作『Voodoo』との間が14年。あと5〜6年は沈黙したまんまなのかね。それともサプライズで、急に明日リリースするとか。みんな情報流出にデリケートになってるから。
 ヒップホップにはほぼ無関心で生きてきた俺でさえ、このアルバムはリアタイで聴いている。それだけ日本でも話題になったし、珍しく「聴いてみたい」と惹きつけられたアーティストでもある俺的に。
 ゴツゴツした無骨なテクスチュアは、通常のヒップホップやR&Bのセオリーから、ことごとく外れている。ヴォーカルはエモーショナルなネオソウル・スタイルではあるけど、不穏かつ不協和音を含む多重コーラスに覆われ、個のニュアンスはかき消されている。
 ロイ・ハーグローヴやピノ・パラディーノなど、まったくバックボーンの違うメンツを揃えたことで、アンサンブルは奇妙かつ奇矯で、それでもギリギリのラインでひとつにまとまっている。ただパーツごとの位相が少しずつズレており、その気持ち悪さが逆に快楽として昇華している。
 後追いで『Voodoo』を聴いて、「よくできたアルバムだよな」とは思ったけど、『Black Messiah』ほど聴き返したことはない。俺的に、次が気になるアーティストのひとりである。そう思えること、だいぶ少なくなっちゃったな。
 前回395位はLCD Soundsystem 『Sound of Silver』。今回は433位。




396位 Todd Rundgren 『Something/Anything? 』
(172位→173位→396位)

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 ほぼ同年代のエイドリアン・ブリューやリック・ニールセンはまだわかるとして、ジャンルも違えば世代も違う、ザ・ルーツやリヴァース・クオモにまでオファーした、全編コラボ尽くしのアルバムを今年リリースしたトッド・ラングレン。各方面から寄せられたデモをもとに、トッドが手を加えてひとまとめにする手法が取られており、業界人としての大御所ぶりと人付き合いの良さが窺える。
 自分の作品ではとことんマニアックな路線のくせに、他人のプロデュースだとコスパも良くてセールスポイントもしっかり押さえる仕事ぶりが好評だったトッド。90年代に入ったあたりから、手間のかかるスタジオ・ワークがめんどくさくなったのか、近年はお手軽なワンショットのユニットや客演が多くなっている。まぁ年取ると集中力も衰えてくるし、事あるごとにXTCとの確執が蒸し返されるし、ストレス溜まってたんだろうな。
 で、そんなトッドの創作意欲がピークだった時代に生み出された、2枚組大作『Something/Anything? 』がランクイン。でも順位は大幅に落としている。何でだ。
 軽い思いつきだった「ほぼ完全独力レコーディング」を始めたら、案外作業が進んでしまって、いつの間にアルバム1枚分を超える素材が仕上がってしまう。削るには中途半端な量だったため、アルバム片面分は適当なミュージシャン集めてスタジオ・セッションで埋めてしまう、そんなアバウトさが根強いファンをつかんで離さない秘訣なのか。
 このアルバムは昔レビューしているので、詳しくはこちらで。




 トッドの日本人カバーといえば高橋幸宏や高野寛が有名だけど、また別のポップ職人がいたよ飯島真理。ファンにはど定番の「Can We Still Be Friends」をストレートにカバー。90年代AORポップなサウンドと彼女のヴォーカルは相性が良い。シティ・ポップにカテゴライズされてるわりに、充分に再評価されていないので要チェックだっ。




 代表作とされている『ラント』も『魔法使いは真実のスター』も『ミンクホロウの世捨て人』も、一切ランクインなしなのが、俺的にちょっと残念。個人的には『ア・カペラ』好きなんだけど、さすがにマニアック過ぎるので、そこまでは求めない。
 前回396位はRoxy Music 『For Your Pleasure』。今回は351位。




397位 Billie Eilish 『When We All Fall Asleep, Where Do We Go? 』
(初登場)

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 一昨年あたりから急速に知名度爆上がりし、つい先日『行列』のドッキリ仕掛け役で、日本のお茶の間にもデビューしたビリー・アイリッシュのデビュー作が初登場。チャートを見ると、世界主要各国で軒並み首位獲得しており、おそらくレディー・ガガ以来、久々のポップ・スター爆誕と言いたいところだけど、でもガガ様みたいに気軽に口ずさんだり踊れる作風じゃないんだよな。
 「ヒップホップに影響を受けた、密室的なDTMサウンド」というのは、80年代のテクノ/レイヴに端を発しており、彼女独自の発明ではもちろんないのだけど、物心ついた時からそういう音楽が身近だった、また自らクリエイティヴできる環境があった、というのが重要だったわけで。そもそもテクノでもエレクトロニカでもハウスでもダブステップでも何でもいいんだけど、従来のリズム/ミュージックというのが「踊れる」といったフィジカルに訴える、いわば機能性を求められる音楽だったのだけど、ビリーが作品を発表し始めたのは、ちょうどコロナ禍に差し掛かった頃。大声を発したり踊れる環境が一気に消滅したエアポケットでは、彼女のダウナーなつぶやきがリアルに刺さった。
 実兄フィニアス・オコネルとの共同作業で作られるトラックは、本来パーソナルなものなのだ。それは2人の間だけで成立し、そして完結する。いや、始まってすらいないのかもしれない。
 前回397位はMassive Attack 『Blue Lines』。今回は241位。




398位 The Raincoats 『The Raincoats』
(初登場)

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 ジョン・ライドンやカート・コバーンが絶賛していたことで、その後のポスト・パンク/グランジ世代も後追いでリスペクト、90年代以降に評価が上がっていったレインコーツのデビュー作が初登場。「有名人が持ち上げてた」とか「誰々さんイチオシ」とか、なんか気持ち悪い選民意識を感じたため、今までまともに聴いてなかったバンドのひとつ。
 元祖「ヘタウマ」という風評は80年代からで、当時からすでにキワモノ扱いだった。今回、先入観抜きで聴いてみたけど、やっぱ思ってた通りヘタウマ、っていうかどヘタだった。
 気を取り直してもう一回聴いてみると、ヘタクソ具合はともかく、テクより想いが先走ってるけど、とにかく人前で演奏したい感は伝わってくる。デモテープとほぼ変わらない初期衝動の稚拙さこそが、ラフトレードの思惑通りだったのかもしれない。
 「ザ・レインコーツは、エックス・レイ・スペックスやパンクに関するすべての書物が実現できなかったような、まったく異なる方法でその音楽を提供したんだ。そこには彼女たちが素晴らしくてオリジナルであること以外に理由はないね」。
 ちょっと長いけど、ジョン・ライドンのレインコーツ評。日本語訳だとニュアンスが違ってるかもしれないけど、でもこれ絶対バカにしてるよな。回りくどい皮肉と自虐と憐憫が大好きな大英帝国民ならではの、秀逸なコメントだと思う。
 前回398位はZZ Top 『Eliminator』。今回は圏外。




399位 Brian Wilson 『Smile』
(初登場)

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 長らく「幻の名盤」ランキングでは断トツのトップだった『Smile』、その新レコーディング/本人公認決定版が初登場。時おり小出しにされる未発表マテリアルやら非合法に流出したブートレグやら、海外の超コアな研究者・マニアによって、おおよその全体像は解明できていたのだけど、本人監修でひとつの作品としてまとめられたことは、結構な話題になった。
 苦節37年、夢の世界の住人であるブライアンは、そんなに感慨もなかったと思うけど、ファンや業界全体は盛り上がった。まさか生きてる間に完成する、いやさせるとは、誰も思ってなかった。
 ちょっと言いづらいけど、でも正直肩透かし、なんか微妙な仕上がりだったのも、また事実。これを機に大々的にビーチボーイズ・キャンペーンもやったけど、ライトユーザー向けじゃないんだよな、このアルバム。
 で、この新録版『Smile』、基本は当時のデモや正規音源を忠実に再現、さらに修正を施すプロットで制作されたのだけど、現在のブライアンがあんな感じだから、どこまで深く関与したのか、ちょっと疑問が残る。正直、未完成のままセッション音源小出しにしていった方が、EMI的にもファン的にも幸せだったかもしれない。
 で、せっかくなのでこのブライアン版に加え、ビーチボーイズ版『Smile Sessions』も併せて聴いてみた。めちゃめちゃ時間かかったわ。
 ほぼ半日かけて聴いて思ったのが、これは「ブライアン・ウィルソンによるブライアン・ウィルソンのためのアルバムである」ということ。または彼が思うところの「理想の少年時代」へ捧げる讃歌である。
 このテーマ、もう少し深掘りしたいので、本編で長く書こうと思う。このサイズではちょっとまとめられない。
 前回399位はTom Waits 『Rain Dogs』。今回は357位。




400位 The Go-Go's 『Beauty and the Beat』
(409位→414位→400位)

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 日本でも知られた「Vacation」カバーの印象しかなかったので、もっとチャラいパーティ・ポップ、日本で言えばゴーバンズみたいなバンドと思っていたのだけど、聴いてみると全然違った。レインコーツのようなヘタウマじゃなく、しっかり練り上げたアンサンブルで仕上がっている。
 解散後に日本でブレイクしたベリンダ・カーライル一枚岩のバンド程度にしか思っていなかったのだけど、聴いてみると普通に優秀なガレージ・バンドである。実際、このランキングでも順位変動が少なく、安定したポジションにあるので、ロック史を代表する名盤までは行かないけど、一定の支持を得ている。
 スージー・クアトロやジョーン・ジェットなど、アメリカのガールズ・ロック黎明期のアーティストの多くは、直裁的なセクシャリティを求められていた。やたら露出が多かったりケバいメイクだったり、明確なセックス・シンボル像を演じることが、デビューだったりヒットするための重要なファクターであったりした。
 そういった性的要素を排除して、「キュートな女の子たちだけど、それを売りにしないポストパンク・バンド」というコンセプトだったのがゴーゴーズだった。演出や切り口がちょっと違うだけで、女性であることを強みにしている点は実は変わらないのだけど、同性からの支持を得やすかったことが、のちのベリンダのソロ成功にも繋がっている。
 前回400位はThe Temptations 『Anthology: The Best of The Temptations』。今回は371位。












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北海道の中途半端な田舎に住むアラフィフ男。不定期で音楽ブログ『俺の好きなアルバムたち』更新中。今年は久しぶりに古本屋めぐりにハマってるところ。
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