来日記念のベスト・アルバムまで出ていたというのに知らなかったってことは、俺の注意不足だったのか、それとも来日自体、あんまり盛り上がらなかったってこと?
だって、札幌来ねぇんだもん。
だって、札幌来ねぇんだもん。
ネット社会に発達によって、国境や言語などの壁が低くなり、最低限の通信環境さえ整っていれば、どんな辺境でだって世界中の音楽が入手できるようになった。ラジオや雑誌くらいしか情報収集の手段がなかった昔から見れば、それはもう便利な世の中にはなったのだけれど、逆に情報量が膨大になったおかげで、すべての情報を把握することはほぼ不可能、常にアンテナを張り巡らせておかないと、迷宮の中を永遠に彷徨わなければならない。
特定の音楽だけなら小まめなチェックも可能だけど、俺のように日々新しい音・興味のある音を探し求めている者にとっては、どうしてもこぼれてしまう部分が出てくる。チャンスの神様は前髪しかない。通り過ぎてしまうと、後ろはハゲているため、掴むことができないのだ。
で、Lefties 、オランダ国内の評判は良く知らないけど、まぁこういったバンドの特性上、チャートの常連というわけでもなさそう。オランダ発のバンドということで、オランダの地域性・風土性が音楽性に表れているのかといえば、多分そんなことはないはず。そりゃそうだ、日本のバンドで雅楽を嗜んでいるのがどれだけいるのかと言えば、ほとんど皆無に等しいはずだし。
ちなみにオランダ出身のアーティストで有名なのが誰なのか、まったく思いつかなかったためググってみたのだけど、ゴシック・メタル系のWithin Temptationがオランダ出身だということ。うん、名前くらいは聴いたことがある。でも、その程度だ。
メンバーはOnno Smit (G)、Pieter Bakker (B)、Cody Vogel (Dr)の基本リズム・セクションに、Alviz (Hammond Organ)がリード楽器として入り、曲によってヴォーカルが必要な場合はサブ・メンバーとしてMichelle David (Vo)という女性が入るといった布陣。特別オランダだからというわけでなく、基本フォーマット通りのジャズ・ファンク・バンド・スタイルである。
ちなみにバンド名の由来は、結成当時のメンバー4名のうち、3名が左利きだったから、という、なんかどうでもいい理由。まぁ何となくゴロも良かったから、取りあえずこれでいいんじゃね?といった軽い感じで命名して、また何となく活動を続けてたら、改名する機会も失ってしまった、とのこと。あまりにもどうでもいい理由なので、まぁそれがほんとなのかどうか知る由もない。インタビューで適当に答えてしまったことが、いつの間にか既成事実となってしまったのかもしれないし。
特別大きなセールス・ポイントもない、悪く言えばステレオ・タイプのバンドなのだけれど、実はこれ、Leftiesに限らず、どのジャズ・ファンク・バンドにも言えること。この手のバンドは基本、どれも同じようなコンセプト・同じメンバー編成のため、大きく差別化を図るのが難しい。ざっくり言えばLefties、Metersをルーツとするファンク寄りのサウンド志向なのだけど、まぁこういったバンドも世界中にいっぱいいる。しかも、ほとんどのバンドがインスト主体のため、どれも同じように聴こえてしまい、大きく差別化を図るのが難しい。
なので、何曲かはゲスト・ヴォーカルを入れて曲調にヴァリエーションを持たせる、というのが多くのバンドでは一般的である。こういったバンドの場合、大体どれも演奏スキルが高いので、結果サウンドの音圧が強くなり、そのためバンドのパワーに負けない声量を持ったヴォーカリストが必要になる。すると、どうしてもソウルフルなシャウター型のヴォーカリストが起用されることが多くなり、結局テイストが似通ってしまう。どうしたものか。
で、「人と同じで何が悪い?」というのが、実は本題である。
どの時代にも最先端を走る音楽というのがあり、ちょっとしたアイディアや発想の転換などが、業界全体をリードしてきたのだけど、この「ちょっと」というのが重要であり、この加減を間違えてしまうと、マスに受け入れられない場合が多い。あまりにも突出してしまうと、万人の人知を超えて理解不能の域にまで達してしまい、ほんとごく少数の好事家の間で語られるのみとなってしまう。
で、巷に溢れかえる世界中のジャズ・ファンク・バンド、いやそれに拘らなくてもいいや、まだ音楽のみで食っていくには微妙なラインの、ライブ活動中心のバンドにとっては、とにかく演奏出来る機会があること、そういった場があることだけで満足なのだ。わざわざ勝手の違う地域を廻って延々続くツアーを行なうより、地元周辺のクラブで馴染み客中心のオーディエンス相手に、定期的にプレイできれば、それで万々歳、わざわざ高いリスクを払ってまで、CDリリースや海外公演を行なうことは、今の時代、あまりにリターンが少なすぎる。
今回のLeftiesのライブ・ツアーにMichelleは参加しなかった。ヴォーカルなしのインスト・バンドだけでは、ライブハウスとはいえ、言葉の通じないオーディエンスを引き付けるのは至難の業だったことだろう。サイド・ワークである演劇の仕事が入っていたことも来日できなかった理由のひとつだけど、多分予算の都合も含まれていたと思われる。
それにLefties、まだまだバンド全員が音楽一本で食っていけるほどの状況ではない。本来なら、来日ツアーだって青天の霹靂みたいなものだったろうと察する。
それにLefties、まだまだバンド全員が音楽一本で食っていけるほどの状況ではない。本来なら、来日ツアーだって青天の霹靂みたいなものだったろうと察する。
それでも彼らは、そこにステージが、オーディエンスがいれば、楽器を担いでステージに赴き、日々演奏に励むのだ。少数ではあるが、彼らの音を求める聴衆のために、そして自分たちの楽しみのために。
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1. Shake It Up, Burn It Loose Ft. Michelle David
いきなりアッパー系のファンキーなナンバーからスタート。1分前後の唐突なブレイクで一旦クール・ダウン。そしてまた一気に急展開。ジャズっぽさは欠片もなく、Meters直系のアメリカン臭プンプンとしたナンバー。Micheleがグルーヴを産み出し、バンドが引きずられてる印象。ほんと、バンドとヴォーカルとの一騎打ち。
2. She's Not Answering Ft. Michelle David
まるでスパイ映画のサウンドトラックっぽい仕上がり、007、しかもゴールドフィンガーっぽい。実際、映像を感じさせるスリリングな演奏。叩きつけるようなMichelleのヴォーカルも、抑えながらもファンキーさは絶品。1.とセットで、「静と動」「陰と陽」といった印象。
3. Code 99
同じく60年代スパイ映画のサウンドトラックっぽいインスト・ナンバー。やはりハモンドがこれだけ軽快に鳴っていると、一気に時代が逆行した印象。まぁそれを狙っているのだろうけど。
4. The Hump
続いて、怪しげなベース・ラインから始まるスパイ映画第3章。これだけ続くと、ほんとにこういったのが好きなのか、それともオランダのライブ・シーンではこれがメッチャ受けてるのか、さぁどっちだろう?
ただ、これだけ同じ曲調の物が続くと、ちょっと飽きてきてしまうのも事実。
5. U Got Me Ft. Michelle David
で、ここら辺でちょっと曲調を変えている。リズムが思いっきりセカンド・ラインで立っており、ここはセッション・バンドの意地を見せる。ハモンドが大活躍。アルバムの中でも土臭さは一番。もともと俺的にはアメリカっぽさ、特にブルース臭が苦手なのだけれど、これは結構好き。
6. Have Love Will Travel Ft. Flo Mega
さらに土臭さ男くささが全開。二人目のゲスト・ヴォーカリストは男性。ググって写真を見たら、ややゴツ目の普通の白人だった。まぁオランダだから当たり前か。テクニックはそれほどないが、押しの強さがバンドと拮抗している。
7. Cover My Eyes Ft. Corrina Greyson
オールド・スタイルのスロウなソウル・ナンバー。Otisあたりが歌ってもしっくり、何の違和感もなさそう。コード進行のせいなのか、Leon Russellっぽい瞬間も時々ある。サザン・ソウルが好きな人なら聴いて間違いない。
8. You Don't Know Ft. Corrina Greyson
7.に続いてヴォーカリスト3人目。New Mastersoundsでもゲスト・ヴォーカルで参加しており、この周辺のバンドには重宝がられているのか?
シングル・カットされただけあって、ファンキーでポップ、それでいて覚えやすいナンバー。ちょっと泥臭いモータウン・ナンバーといった風情。本場モータウンよりリズムが立っているのが、この曲のポイントか。
9. Rimfire
サーフ・ロックとサイケデリック・ファンクの合体みたいなインスト。こういった引き出しもあるのかと、懐の深さに感心。VenturesとJefferson Airplaneが交互に演奏しているかのような、そこはもう60年代。
10. Buckaloose
レコードで言えばA面を「スパイ映画サントラ風」、B面を「60年代サイケ・ファンク」といった風に分けているのか、ここも時代はサイケデリック。2分辺りのブレイク、その後のギター・ソロがカッコイイ。
本人たちとしてはどっちもやりたいのか、それともウケる方も戦略的に半分行なっているのか。まぁいろいろやりたいんだろうな。
11. Ridin' On Candy
あまりファンクっぽさを感じさせない、どちらかといえばロック寄りのナンバー。ユルいセッションの中で生まれたような、リラックスしたムードで行なわれたかのような、それぞれのソロをフィーチャーしつつ、大きなグルーヴに発展する、プレイしている側も楽しいナンバー。
12. One Punch Pete
タイトル・ナンバーもインスト。ややサザン・ロック調。アメリカのジャム・バンドあたりをイメージしてもらえば分かりやすい。疾走感があり、これまでのどのトラックよりもロック寄りになっているため、馴染みのない人でも聴きやすいと思う。あ、だからタイトル・ナンバーなのか。
13. Baby Come Back Ft. Michelle David
最後を締めるのはやはりMichelle。ちょっとドラマティックなスウィート・ソウル。泣きのメロディ、泣きのギターが揃い、ステージ映えするんだろうな、きっと。Michelleのヴォーカルもこのアルバムでは一番の情感がこもっており、それでいて終始クレヴァーにプレイするバンド・メンバー。こういった曲はどっちも熱くなると、まとまりがなくなりがちなので、このくらいのバランスの方がうまくいく。
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