lego_040_impellers_1200x1200_300dpi_cmyk 今回はイギリス編。UKファンクはなかなかの激戦区で、様々なバンドがしのぎを削っている。もともとはOmarやLuck of Afroなどの有名どころが所属するジャズ・ファンクの名門レーベルFreestyleからデビューしたのだけど、この2枚目のアルバムからはドイツのレーベルMochamboからのリリース。そう、以前紹介したGizelle SmithやMighty Mocambosらが所属している、世界中の濃いジャズ・ファンク/ソウル関連のアーティストが集結し、なんとも濃い芳香を放っている、あのMochamboである。
 EU圏は特にそうなのだけど、このジャンルのアーティストはほんと出身国にこだわらない、ボーダーレスな活動を行なっているバンドが多い。だからと言ってドイツ中心で活動しているわけでもなく、あくまで活動ベースは出身国であり、遠征がてらEU圏内を回っているのがほとんど。自分の国だけで回すには、バンド運営が難しいのだ。
 MocamboもFreestyleもそうなのだけど、レーベル側もそれほどアーティストに介入・拘束するわけでもない。どのレーベルも小規模なもので、基本、レーベル・カラーに沿った、お気に入りのアーティストなら片っぱしから契約している状況なのだけど、彼らの業務はほぼ配給のみ、ネット以外のプロモーションはほとんどタッチしないスタイルを貫いている。日本のそれと比べると、かなりドライな関係のようにも思えるけど、双方のリスクを最小限に抑えるには、これが最も効率的なビジネス・モデルなのだろう。

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 全世界的にダウンロード販売が主流を占めるようになった昨今、物理メディアであるCDのセールスは右肩下がりが止まらない傾向にある。そのCDの流通もネット通販が主流となってきており、固定店舗への営業はあまり効果的ではなくなってきている。中間卸や固定店舗を重視するよりはむしろ、在庫保有を極力抑えた無店舗形態の方が効率も良い。
 これがひと昔前なら、どのアーティストもデビュー時の洗礼として、レコード会社の仕切りで全国キャンペーンだプロモーションだと、不本意なドサ回りを強いられたものだけど、今じゃどのメーカー・ショップにも、そんな体力はない。あったとしても、恩恵を受けられるのはごく一部のトップ・アーティストだけ、ほとんどのアーティストはデビューしても放置され、販促費も回って来なければ、担当者さえまともに対応してくれない惨状になっている。

 逆に考えれば、レーベルからの余計な横ヤリがほぼ無いに等しいので、従来の発想に捉われないスタイルで行動するアーティストが増えてきている現状である。
 地道なライブ活動は変わらないのだけど、どの国のジャズ・ファンク・バンドもネット媒体を積極的に活用している。通常のオフィシャル・サイトやYouTubeは当たり前で、他にもFacebookやらTwitterやらInstagramまで、そりゃ本当にもう、あらゆるメディアを駆使してセルフ・プロモーションに勤しんでいる。もちろん、バンドによってはすべてをフォローすることはできず、一応開設はしたけど、ほとんど更新できずじまいのメディアもあるのは事実。昔なら手取り足取りマネジメントやレーベルが行なっていたことを自前で行なわなければならないのだから、そこはあまり厳しい目で見ないように。

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 以前紹介したFunkshoneとの比較だけど、彼ら同様、同じくファンク系なのだけど、こちらはもう少しソウル寄りで、ジャズっぽさはちょっと少なめ。ちょっと脂抜きしてサッパリしたJB’sをイメージしてもらえれば、何となく想像はつくはず。
Glenn Fallows - Guitar & Keys
Clair Witcher - Vocals
Ed Breaker - Bass
Barry Lalanne - Guitar
Tom Henderson - Drums
Mark Yexley - Trumpet
Chris Evans-Roberts - Alto Sax
Darren Smith - Tenor Sax
Emma Black - Baritone Sax
Joel Essex - Percussion
 という大所帯は、大抵のジャズ・ファンク・バンドに共通していることなのだけど、やはり個々のスケジュール調整が難しく、小まめな身動きが取りづらいのが現状。メインのバンド一本で食っていける状況では無いので、どうしても外仕事が多くなりがちになる。
 ほんとなら、メインのバンドに専念できる安定した収入とライブ環境が望ましいのだろうけど、反面、生活の糧を別に持つことによって、純粋に音楽に打ち込めるというメリットもある。

 下手にミュージシャンが収益や好感度を気にしてしまうと、目先の観客に受けることばかり考えてたり、はたまた逆に勘違いして過剰にアーティスティックを気取ってしまったりで、ロクなことがない。ましてや損益分岐点や収益性にまで手を付けてしまうと、グッズ販売ばかり力を入れたり目先のコスト・カットに目が行ってしまって、これまたロクでもないことになる。バンドの売りだったはずのホーン・セクションを外部委託にしてスリム化を計ったり、スタジオ経費を安く上げるためレコーディング時間を短縮したり、短期的にはバンド運営も安定するけど、内部の人間関係が崩壊へ向かうデメリットの方が多く、そういったつまらない要因で解散してしまうバンドの多いこと。

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 すべてをセルフで行なうことはキツイけど、隅々まで目が行き届くことによって、逆に状況把握がスムーズに行なうことができる。よって、純粋にクオリティのみを追求することができる。
 まぁそこまで理想的には行かないにしても、自分たちの手の届く範囲のことは自分たちでやる、そういったDIYの感覚が、この手のバンドには多い。基本、機材搬入だって自分たちで行なうし、会場のブッキングからギャラ交渉だって、結局頼りになるのはメンバーを含めた自分だけだ。
 そういった生臭い部分もすべて背負って、どのバンドもどうにかこうにかバンド維持に努めている。彼らに限らず全世界、または日本のバンドだって似たようなものだけどね。


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1. Intro

2. Hear What I Say
 アッパー系のJB’sっぽいオープニング。ナチュラル・トーンのギターが全編でずっと鳴っており、このクールさが逆にファンキーさを演出している。Clairのヴォーカルはこのジャンルでは定番の激情型なのだけれど、ややハスキー気味な分もあって、少しクールさも漂っている。



3. The Knock Knock
 ちょっとジャズ・テイストのドラム・ソロから始まる、泥臭さの漂うナンバー。やはりギターの人がバンド・リーダーの場合、当然だけどギターのオブリガードが全編に漂っているため、どうしてもJB’sっぽくなる。いや、俺は好きだけどね。
 中盤のブレイク、ドラムのみをバックに歌うClairのヴォーカルは圧倒的。ライブならもっと映えるのだけれど。

4. Pon Lo Afuera
 タイトルが示すように、ちょっとラテンの入ったインスト・ナンバー。それぞれに見せ場を作った自己紹介的な一曲になっている。

5. Do What I Wanna Do
 ラテンの空気をそのまま持ってきて、さらにそこにカリプソも投入、ほんとノリの良いダンス・ナンバー。サビでの全員コーラス、ブレイクの後のClairのシャウトも最高。中盤の妖しげなDJによるアオリがまた、無国籍風を演出している。シングル・カットも頷ける。



6. Signs Of Hope & Happiness
 少ししっとりした、マイナー調のナンバー。この辺は日本の昭和40年代頃の歌謡曲との類似点が多く、俺世代以上の日本人なら、案外スンナリ受け入れてしまいそう。ちあきなおみや欧陽菲菲あたりが歌っても、そんなに違和感がない。
 こういったブルース調のソウル・ナンバーは、昭和の日本人の独壇場である。Superflyあたりがやってくんないかな。

7. Politiks Kills People
 かなりソウル寄りの、ライブ映えしそうな曲。もうちょっとアップ・テンポならもっと気持ちいいと思うのだけど、ライブならもっとハイパーなノリだと思われる。

8. Close To Me
 7.同様、こちらもソウルにかなり接近したナンバーなのだけど、こちらはアップ・テンポのため、かなりノリ良く仕上がっている。
 ジャズ・ファンク・バンドの魅力のひとつとしてドラムの生音が挙げられるのだけど、変に加工していない分だけ、ペシャッとしたタムの音なんて、それだけでもゾクゾクしてしまうくらい。

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9. Took Me For A Ride
 ホーン・セクション主導による、Tower of Towerを連想させるナンバー。ギターとホーンがメインのファンク・バンドと言えば、真っ先に思い浮かぶのがAverage White Bandなのだけど、あそこまで洗練されてなく、しかもヴォーカル・パートが多い分だけ、ソウルとの親和性が高い。この曲もそうだけど、やはり4人のホーンがいると、迫力が違う。

10. That's Not My Name
 ここはギターがメイン。ここにきて、めっちゃファンキーなナンバーを持ってきた。シングルにしてもいいくらいだったのに、あまり世に出てなかったのが惜しい。ちなみにギター、リフがCream “Sunshine of Your Love”を高速で弾いた感じ。なので、ちょっとブルース成分も入っている。



11. Belly Savalas
 再びブルース・ギター。ホーン・カルテットは、ここぞとばかりに吹きまくっており、時折”Summertime”っぽいフレーズも聴こえてくる。2分足らずの短いナンバーだけど、もっと聴いてたいね、こんなんだったら。

12. Last Orders (Outro)




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