381位 Lynyrd Skynyrd 『(Pronounced 'Lĕh-'nérd 'Skin-'nérd) 』
70年代サザンロックを代表するバンド:レイナード・スキナードのデビュー作が、ほぼ順位変動も少なくランクイン。「Lynyrd」も「Skynyrd」も聞いたことない単語なので、調べてみると何のことはない、メンバーのハイスクール時代の体育教師の名前だって。みうらじゅんが昔やってたバンド「大島渚」みたいなものか。
主要アルバムはカタログに残り続けているので、日本でもレココレ界隈では支持されているのだけど、一線級のドゥービーやオールマンと比べてB級感は否めない。ただ本国では、いまも地道にこつこつライブ周りしているため、根強い人気があるらしい。他のサザンロック・バンドはことごとくランクを落としてるし、ZZトップなんて見る影も形もないのに。謎だ。
広大かつ多民族国家のアメリカのライブシーンは裾野が広いため、ずっと昔にメインストリームを離れた彼らのようなポジションでも、充分食っていけるだけのマーケットが存在する。ジャムバンドのフリーライブ音源をまとめた老舗サイト「Live Music Archive」を見ると、人気が集中しているのは御大グレイトフル・デッドやフィッシュ、スマパンあたりだけど、まだデビューしていない若手アーティストも混じっていたりして、ながら見して視聴するだけでも結構楽しめる。ただインデックスが膨大なので、深入りすると人生棒に振ってしまう。そこだけ注意。
俺がサザンロックというジャンルの存在を知った80年代、どのバンドも活動休止や解散に追い込まれており、全体的に下火だった。なので、名前だけは知ってたけど、代表的なアルバムが思い浮かばない。
そんな俺でも、曲名だけは知ってた「Free Bird」は、リリース当時としても長い、8分を超えるロックチューン。終盤アウトロのトリプルギターバトルは圧倒される。イヤ世代関係なく、コレだけでも聴く価値はある。この順位に残ってるのが納得してしまう。
杉山清貴がライブ・アルバムで「Sweet Home Alabama」をカバー。自身の作風とは違う泥くさい選曲が意外と思ったけど、この辺の世代の人は細かくジャンル分けせず「洋楽」全般を押さえているので、聴いてても不思議はない。
前回381位はThe Beach Boys 『The Smile Sessions』。今回は圏外。
382位 Tame Impala 『Currents』
最近出てきた人かと思ってたら、メジャーになってもう10年以上経ってる、案外長くやってたテーム・インパラ。2020年の『The Slow Rush』チラ聴きして興味を持ち、なんとなく気にはなっていたのだけど、結局そのままほったらかしてたので、これがほぼ初インパラ。
俺の第一印象としては、メロディックなEDM系統かと思っていたのだけど、実際はロック・バンドとしてカテゴライズされているらしい。しかも、サイケデリック。
全然そんな感じしないんだけど、2022年はこれがサイケなロックなのか。知らなかった。
基本EDMなのでトラックメイクはほぼ独り、ライブ用にバッキングをつけるスタイルなので、バンド感はほぼない。こういったスタイルは世界的な傾向で、日本でもVaundyが同じ活動形態を取っている。聴いてて気持ちいいんだけど、そこまで入り込めるほどじゃないんだよな。だったらこの次のマッシヴ・アタック聴くわ。
前回382位はThe Modern Lovers 『The Modern Lovers』。今回は288位。
383位 Massive Attack 『Mezzanine』
241位『Blue Lines』に続き、4枚目の代表作がランクイン。一旦圏外に落ちたけど、今回再浮上したという、このランキングの中では珍しいケース。
シーンやムーヴメントとの協調を拒んだ独自路線によって、近年はメインの音楽活動より、コンセプチュアル・アート方面で注目されることが多い。年を経るごとに、ミュージシャンというよりクリエイター集団というニュアンスが強くなっており、今ではアートワーク/デザインを含めた総合アートの一環として、音楽作品があるという位置づけ。一応、それがコアなんだろうけど。
「渋谷系」で一括りにされた90年代ポップ・アーティストらが、ことごとくそのワードを忌み嫌うように、彼らもまた「トリップホップ」というブランドを拒否し続けた。世に出る取っかかりではあったけど、「それだけじゃないんだ」という意思表示として、ユニット本体を休止してまでサイドプロジェクトに注力したりしている。志が高いことは察せられるけど、意識も高いんだろうな彼らみたいな人たちって。
テクノ/レイヴの要素を取り込んだミニマル・ビートは、時に暴力的に、時に荘厳な空間を満たし、崇高なメロディとのコントラストを紡ぐ。強烈な自我に支えられた美学は、刹那なアンサンブルを形成する。でも、その眩さは時空を超え、聴く者の心臓を鷲掴みにする。
頭悪い文章になっちゃったけど、要は好きなんだよなこういうサウンド。
前回383位はTalking Heads 『More Songs About Buildings and Food』。今回は364位。
384位 The Kinks 『The Kinks Are the Village Green Preservation Society』
もうみんな忘れてるほど長い兄弟ゲンカ状態だった、レイ&デイヴ・デイヴィスだけど、最近になって和解したことがニュースになっている。キンクス再結成に向けて鋭意デモ作成中らしいけど、正直、彼らの新譜を求める層がどれだけいるかって言えば、それはちょっと、って感じになってしまう。
リリースに動くレーベルもそんなになさそうだし、もし契約にこぎ着けても、レコーディングに入る前にまたケンカ別れしそうだし、寄る年並みは2人ともとっくに超えてるし。だからまだ間に合うぞギャラガー兄弟。オアシス再結成なら、良かれ悪かれ盛り上がらざるを得ない。
何年かに一度訪れるモッズ・リバイバルや60年代ビート・グループ再興のタイミングで引っ張り出されるのが、キンクスとスモール・フェイセズと相場が決まっている。90年代はキンクス、未発表テイク満載の2枚組デラックス・エディションが立て続けに企画されていたのだけど、新規ユーザー獲得が捗らなかったのか、いまだパッとしないポジションが続いている。
コアなユーザーに限らず、ロック史的にはこのアルバム、3分間のビート・ロックにアルバム全体を包括するトータル・コンセプトを持ち込んだ作品として、一定の評価を受け続けている。実は駄曲も多い『Sgt.Pepper’s』と比べてストーリー性もあってしっかり作り込まれているのだけど、ビートルズと比べて選びテーマが限定的、ていうか大英帝国イズムが強すぎるため、他国にはアピールしづらい作風がネックとなっている。
ロック系コンセプト・アルバムの多くが、人生の意義やらアイデンティティやら苦悩やらトラウマをテーマに掲げ、それに応じてサウンドも仰々しくドラマティックに演出しているのだけど、ここで描かれているのは古き良き大英帝国の郷愁、そして市井の人々の日々の暮らしぶりであり、同時代のサイケ・ムーブメントの中では地味すぎて苦戦を強いられた。生真面目に作られているのはわかるのだけれど、シンパシーを感じて何回も聴くかといえば、それはちょっと。初期のビート・ロックの方が聴きやすい。
他のランキングは、『The Kink Kronikles』が227位→232位と来て、今回は圏外。『Something Else by The Kinks』が285位→289位と来て、今回はギリギリ残った478位。
キンクスの日本人カバーで真っ先に思い出したのがコレクターズだったけど、せっかくなので変化球でthe brilliant green 「All Day And All Of The Night」。ほぼストレートコピーなバッキングだけど、ヴォーカル川瀬智子のロリータ・ヴォイスがいい方に作用して、良質のガレージ・ポップに仕上がっている。
前回384位はThe Who 『A Quick One』。今回は圏外。
385位 Ramones 『Rocket to Russia』
ラモーンズ2枚目のアルバムが、前回に100位台から大きくランクダウン。支持されなくなったというより、前回までがちょっと分不相応だった印象。
デビュー作同様、ストレートな8ビートのロックンロールで、ていうかちょっとメロがポップになったかな?程度で、ほほ同じ内容と言い切っちゃってもよい。それでも圏外に飛ばされず踏ん張っているのだから、アメリカでは幅広く支持されているのだろう。
シンプルな8ビートと3コード、代わり映えのしないAメロとリフ主体のギター。風体はやさぐれてるけど、出てくる音はまっすぐで正直。ほぼ2行で言い表わせてしまう、単純でシンプルで一途なバンド、それがラモーンズ。
大味なアメリカン・ロックとシンセ・ポップとブラコンが幅を利かせていた80年代は居場所がなく、冷や飯を喰わされていた彼ら、90年代に入ってからはグランジ/オルタナ・シーンのオリジネイターのひとつとして再注目されるようになる。長髪・グラサン・革ジャンの不変3点コーディネートは、一周回ってダサかわ的な支持を受けて、カルチャー雑誌でもフィーチャーされていた。
愚直なワンパターンが評価され始め、取り巻く状況も上向きになってきたのだけど、延々続く世界ツアーで身も心も蝕まれ、ラモーンズは96年に解散してしまう。その後、過酷なロードから解放されてマイペースな余生を送るはずが、それまでの不摂生でソロ活動もままならず、2014年、最後のオリジナルメンバー:トミー・ラモーンの死によって、リユニオンの願いも潰えた。
伝説としては完璧だけど、でもそういった完璧を目指してたバンドではなかった。過去の栄光にすがっててもいいから、どうにか続けて欲しかったバンドのひとつ。
古今東西、あらゆるバンドにカバーされてきた「電撃バップ」だけど、NHKで不定期放送されている子ども番組「ムジカ・ピッコリーノ」のコーナー内でカバーされている。音楽面のディレクションが鈴木慶一人脈で固められていることもあって、クセのある人選や選曲が、ごくごく一部で話題だった。『You』から連なるサブカル志向は、ある意味、NHKの伝統でもある。
前回385位はBob Dylan 『Love and Theft』。今回は411位。
386位 J Dilla 『Donuts』
今年に入って星野源が自身の特番でフィーチャーしたことから、日本のお茶の間にも知られるようになったJ.ディラの遺作が初登場。ヒップホップに詳しくない俺は当然知らなかったけど、どうやらその界隈では、古くから一目どころじゃない存在だったらしい。
根が音楽オタクである星野源の語り口は熱を帯び、自身が受けた影響やシーン全体への功績は充分伝わっってきた。きたのだけど、実質30分程度の番組なので、ショーケース的な細切れな紹介だったため、ちょっと食い足りなさがあった印象。でも、あの尺ではあれくらいが限界だったとも思う。
で、ちゃんと通して聴いてみた。一聴すると何のことはない、よくできたミックステープなのだけど、スッキリ流し聴きできない、「なんか違う」感が残る。
何が違うのか。もう一回、ネットのレビューを調べてから聴いてみると、あぁなるほど、リズム感やミックスのアンバランス感、他のトラックメイカーと切り取り方が違うのがわかる。
素人目線でざっくり言っちゃえば、「ミニマルなビートにカウンターとなるフレーズやサンプリングでメリハリをつける」のが、世間一般で思うところのヒップホップだとすれば、ディラのアプローチはだいぶズレている。カッコよく言えば「揺らぎ」、悪く言うと「ヨレヨレ」だったり音の定位が極端だったり。
彼が確立したフォーマットはすでにスタンダードになっているので、次回ランキングではもっと上に行ってるかもしれない。もしかして、さらに上書きするトラックメイカーが出現するかもしれないけど。
前回386位はSteely Dan 『Pretzel Logic』。今回は圏外。
387位 Radiohead 『In Rainbows』
『OK Computer』を分岐点として、既存のロックの解体→再構築を試みる姿勢が、逆にロック的だったレディオヘッド。作っては壊す、そんなちゃぶ台返しの連鎖を自ら断ち切ったのが、『Hail To The Thief』だった。
ロックという但し書きを拒否する姿勢を進めた『Kid A』『Amnesiac』から一転、表面的には既存フォーマットへの回帰ではあったけど、もう「Creep」の焼き直しができるはずもなかった。わかりやすいアバンギャルドではなく、そこを通過して以降のロック、じゃなくてレディオヘッドの音楽の独自進化を推し進めていった。
普通のバンドなら行き詰まって解散するか、はたまた開き直って、ブリットポップ時代のノスタルジー拡大再生産へ向かうか、あるいは『Amnesiac』の果て、無為無常なアンビエントの彼方を彷徨うか。それらのどれも選択せず、時々ソロ・プロジェクトでリフレッシュしつつ、彼らはレディオヘッドを続けている。もうあれだけやっちゃえば充分なはずなのに、それでも続けるのは、かなり勇気のいることだ。
そんなあらゆる音楽的な実験の果て、ひとつの到着点となったのが、ラストの「Videotape」だったんじゃないか、と個人的には思う。シンプルかつ静寂なバラードを入れた勇気は、並みのポストロック・バンドじゃできないことだ。
前回387位はWu Tang Clan 『Enter the Wu_Tang: 36 Chambers』。今回は27位。
388位 Aretha Franklin 『Young, Gifted and Black』
アレサの全盛期は世間一般的に、おおよそ60年代とされている。ロック名鑑的にはフィルモアのライブをピークに、それ以降はディスコの潮流に乗り遅れ、緩やかなブラコン路線へシフトしていった、という印象だった。
80年代以降にジョージ・マイケルやユーリズミックス、キース・リチャーズとのコラボによって復活、以降は名実ともにクイーン・オブ・ソウルとして君臨、多大なリスペクトに支えられることになる。『Amazing Grace』のリイッシューを機にゴスペル・シンガーとして再評価され、その後、空白だった70年代の作品が注目されるようになったのは、ここ10年くらいの話である。
俺的にアレサ、評価が確立している60年代の作品は、シンプルなバッキングのみで主役はほぼ自分のヴォーカルとピアノで、確かにすごいのはわかる。わかるのだけど、そのエッセンスが濃厚なので、こっちにそれなりの心構えがないと受け止められないことが多い。
なので、このアルバムやカーティスがプロデュースした『Sparkle』など、バッキングやプロダクションのバランスでアレサ味がちょっと薄まってた方が、もう少し聴きやすい。ダニー・ハサウェイもそうだけど、チャック・レイニーとバーナード・パーディとコーネル・デュプリーだよ?「これ以上はない」と言い切っちゃっていいくらい、70年代最高のアンサンブル。もちろんアレサもすごいんだけど、それぞれのプレイを聴くだけでも、鳥肌立ってしまう。
前回388位はVarious Artists 『The Indestructible Beat of Soweto』。今回は497位。
389位 Mariah Carey 『The Emancipation of Mimi』
もともとポッチャリしやすい体質もあって、メディアに出るたび印象の違うマライア・キャリー2005年のアルバムが初登場。もっと初期の作品がランクインしてるかと思ったら、彼女のランクインはこれのみ。セールス的にも知名度的にも、出世作『Emotions』は入ってると勝手に思っていたのだけど、まぁメジャーな作品は入らないか。
日本ではいまも安定的な人気を保っているマライアだけど、21世紀に入ってからは低迷期が続き、音楽的な話題よりゴシップ・スキャンダルでフィーチャーされることが多かった。考えてみれば、プロポーションについてはよく話題になってたけど、楽曲が話題になることはあんまりなかったな、そういえば。
歌はもちろんメチャメチャうまく、周知の通り声域も広くて、さらにエモーショナルな表現力もあるしで、もうお腹いっぱいなスペックだらけのマライアだけど、それだけじゃ生き残っていけないのがアメリカのエンタメ界である。トミー・モトーラとの出逢いから始まるシンデレラ・ストーリーは順風満帆だったけど、それ以降、良いブレーンに恵まれなかったのが、スランプの要因だったんじゃないかと。体型管理もルーズだったしね。
それまでもっぱら、正統ブラコン寄りのサウンド・プロダクションだったのを、どこにでも顔を出してくるスヌープ・ドッグらヒップホップ系クリエイターの助力を得て復活となったのが本作。このままダイアナ・ロス路線を踏襲してフェードアウトしてゆくところで一転、シーンとシンクロしたリズム面の強化が、セールスに直結した。
でもこのアルバム、聴き入ってしまうのはやっぱ「We Belong Together」をはじめ、シンプルなバラードなんだよな。ハッタリかましたオープニングで惹きつける手法は仕方ないんだけど、でもやっぱ歌を聴かせるトラックの方が出来がいい。
前回389位はDon Henley 『The End of the Innocence』。今回は圏外。
390位 Pixies 『Surfer Rosa』
日本でも根強い人気を誇るピクシーズのメジャー・デビュー作が、前回よりランクダウン。RollingStone界隈では支持されてると思ってたんだけど、案外下だった。
ソニック・ユースより下っていうのはどうかと思うし、他の『Doolittle』や 『Bossanova』はセールスも良かったはずだし、ロキノンでも絶賛されてたんだけどな。それとも、ロキノン界隈だけだったのか?あの持ち上げぷりって。
考えてみればピクシーズ、人気のピークで解散してしまったため、実際の音よりフロントマン:ブラック・フランシスのキャラに注目が集まっていた。「凶暴だけどカワイイとこあって憎めないデブ」としてキャラ付けされ、無愛想なサウンドとのコントラストが人気を集めていた。
今でこそグランジのゴッドファーザー的な扱いになっているけど、現役活動中は彼ら、本国アメリカより日英での人気が高かった。グランジ以前のアメリカはメジャー主導のコンテンポラリーサウンドがまだ強く、まだポストパンクの残り香があったイギリスとの相性が良かった。コクトー・ツインズと一緒、4ADデビューだもの。今じゃ違和感だ。
いまだ現役活動中で、年末にはなんと来日までしてしまうピクシーズ、さすがにもう枯れたサウンドなんだろうと思って最新トラックを聴いてみたのだけど、イヤなんも変わってなかった。テンポはちょっと遅くなってるけど、相変わらずグランジ以降のアンチ・メジャーな無愛想ロックは貴重だ。シンセも一切入ってないし。
前回390位はThe White Stripes 『Elephant』。今回は449位。