1988年発表、USチャート11位、UKチャートでは1位を記録したアルバム。
このアルバムが取り上げられる際、必ず持ち出される話題というのが、ほぼ決まって、その「個性的かつ露悪的な全裸ジャケット」。よほどのナルシストか、病的な露出癖でもない限り、なかなか思いつかないデザインである。やる方もやる方だけど、これを許可したワーナーもまた、なかなかの漢っぷり。まぁどうせ言ったって聞きやしないだろうから、というのが実情なのだろうけど。
ただ、基本真面目な性格なのか、なんかいじりづらい雰囲気を漂わせているのが惜しいところ。例えば、レッチリがシングルでやった、通称「チンポカバー」ジャケットみたいに笑えるわけでもない、非常に大真面目な顔でポーズをとっている。やましい視点を抜きに見れば、どこか決意表明的な凛々しさすら感じさせる。
ただ、基本真面目な性格なのか、なんかいじりづらい雰囲気を漂わせているのが惜しいところ。例えば、レッチリがシングルでやった、通称「チンポカバー」ジャケットみたいに笑えるわけでもない、非常に大真面目な顔でポーズをとっている。やましい視点を抜きに見れば、どこか決意表明的な凛々しさすら感じさせる。
キリスト教文化圏の影響下にあるアメリカでは、日本人が思っている以上に性的表現・モラルに関する規制が恐ろしく厳しい。地上波でのヌード・シーンなどもっての外だし、無修正のポルノグラフィーなどは、一応合法ではあるのだけれど、大方の典型的なWASPの目には届きづらいよう、メインの売り場からは巧妙に隠されている。
そのような事情もあってか、本国アメリカにおいてこのアルバムのチャート・アクションが低いのは、店頭にディスプレイすることを拒否した店舗が数多くあった、という事情がある。
そのような事情もあってか、本国アメリカにおいてこのアルバムのチャート・アクションが低いのは、店頭にディスプレイすることを拒否した店舗が数多くあった、という事情がある。
「作詞作曲演奏プロデュースのすべてをこなす、R&B界のマルチプレイヤー」として、これまで小ヒットはいくつかありつつも、あくまでR&Bのフィールド内で活動していた初期のPrinceだったのだけど、2枚組アルバム『1999』がUS総合チャートで健闘し、そこからロック・ファンの注目を集めることとなる。
主演映画と合わせて大ヒットを記録した次作『Purple Rain』にて、スターダムへの階段へ一歩足を踏み入れたPrince、その後、『Around The World In A Day』『Parade』『Sign "o" The Times』と才気溢れる作品を、ほぼ1年に1枚のハイ・ペースでリリースしている。どの作品もクオリティが高く、並みのアーティストなら一生に1枚作り出せるかどうか、といったレベルの作品を、この時期は一気にまとめて量産している。
しかもこの間に、一糸乱れぬ完璧なバンド・アンサンブルを見せる、極上のエンタテイメント・ライブ(James Brownを範としていたらしい)を数多く行ない、そのついでにもう一本、主演映画(『Under the Cherry Moon』)を撮っている。自前のスタジオ(Paisley Park)を構えることによって、少しでも時間があれば、スタジオに籠ってレコーディングを続けていたらしく、500以上の未発表曲があり、それがいつでもリリースできるクオリティにパッケージングされている、という伝説が流布されたのも、この頃(唯一女性には目がなかったらしく、来日公演時には、アフター・ステージ後、目をつけたグルーピー達をピックアップしてホテルに連れ込むことを繰り返していたらしいけど)。
主演映画と合わせて大ヒットを記録した次作『Purple Rain』にて、スターダムへの階段へ一歩足を踏み入れたPrince、その後、『Around The World In A Day』『Parade』『Sign "o" The Times』と才気溢れる作品を、ほぼ1年に1枚のハイ・ペースでリリースしている。どの作品もクオリティが高く、並みのアーティストなら一生に1枚作り出せるかどうか、といったレベルの作品を、この時期は一気にまとめて量産している。
しかもこの間に、一糸乱れぬ完璧なバンド・アンサンブルを見せる、極上のエンタテイメント・ライブ(James Brownを範としていたらしい)を数多く行ない、そのついでにもう一本、主演映画(『Under the Cherry Moon』)を撮っている。自前のスタジオ(Paisley Park)を構えることによって、少しでも時間があれば、スタジオに籠ってレコーディングを続けていたらしく、500以上の未発表曲があり、それがいつでもリリースできるクオリティにパッケージングされている、という伝説が流布されたのも、この頃(唯一女性には目がなかったらしく、来日公演時には、アフター・ステージ後、目をつけたグルーピー達をピックアップしてホテルに連れ込むことを繰り返していたらしいけど)。
作品としてのクオリティは、常にとんでもない水準を維持してはいたのだけど、実のところ、セールス的には次第に下降の一途を辿っており、決して順風満帆だったわけではない。
バック・バンドRevolution解散後、独りでスタジオに籠って2枚組『Sign "o" The Times』を製作、その後、色々なしがらみに嫌気がさしたのか、突如Princeというネーム・バリューを捨てる行動に出る(この後、この人はもう一度、改名騒動を起こす。結局また戻すのだけど)。
純粋に音楽性だけで勝負しようとしたのか、完全な匿名性を実現するため、タイトルもクレジットもジャケットもすべて真っ黒、通称『Black Album』をリリースしようと計画する。
しかし、テスト・プレスもラジオ局に配られ、本プレスも佳境に差し掛かった頃、突然の発売中止がアナウンスされる。Princeのクレジット無しでは大きなセールスが見込めない、と判断したレコード会社の圧力なのか、それともPrince自身、ギリギリのところでチキンになったのか。
当時も様々な憶測が流れたのだけど、言い分としてはどっちもどっちの様相を呈しているので、真偽のほどは定かでない。
結局、テスト盤も回収され(当然すべてが回収できるはずもなく、これをベースとした様々な形態のブートが、地下で流出した)、その騒動の2か月後にリリースされたのが、このアルバムである。
バック・バンドRevolution解散後、独りでスタジオに籠って2枚組『Sign "o" The Times』を製作、その後、色々なしがらみに嫌気がさしたのか、突如Princeというネーム・バリューを捨てる行動に出る(この後、この人はもう一度、改名騒動を起こす。結局また戻すのだけど)。
純粋に音楽性だけで勝負しようとしたのか、完全な匿名性を実現するため、タイトルもクレジットもジャケットもすべて真っ黒、通称『Black Album』をリリースしようと計画する。
しかし、テスト・プレスもラジオ局に配られ、本プレスも佳境に差し掛かった頃、突然の発売中止がアナウンスされる。Princeのクレジット無しでは大きなセールスが見込めない、と判断したレコード会社の圧力なのか、それともPrince自身、ギリギリのところでチキンになったのか。
当時も様々な憶測が流れたのだけど、言い分としてはどっちもどっちの様相を呈しているので、真偽のほどは定かでない。
結局、テスト盤も回収され(当然すべてが回収できるはずもなく、これをベースとした様々な形態のブートが、地下で流出した)、その騒動の2か月後にリリースされたのが、このアルバムである。
俺が初めて買ったPrinceのCDが、この『Lovesexy』だった。
まだケツの青い十代後半の男が、ナルシスティックなポーズで遠い彼方を見ている、ヒゲヅラの黒人が写っているジャケットを持って、札幌のタワー・レコードのレジへ向かうには、相当な勇気が要った。
-と言えば、話の流れ的にはいいのだけれど、実はそんなに記憶がない。
日本の、少なくとも札幌では普通にトップ・コーナーでディスプレイされており、センセーショナルなジャケットとして話題を呼び、それなりに売れていた記憶がある。
日本の、少なくとも札幌では普通にトップ・コーナーでディスプレイされており、センセーショナルなジャケットとして話題を呼び、それなりに売れていた記憶がある。
プリンス
ワーナーミュージック・ジャパン (2005-05-25)
売り上げランキング: 124,849
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1. Eye No
Ingrid Chavezのささやくようなダイアローグ、Princeのシャウトからスタート。低音を抜いた人工的なドラムの音色と、気の抜けたホーンセクションが続く。
極限まで音を抜いてグルーヴを保つスタイルは『Parade』でも実験済みだけど、もう少しポップ寄りとなっている。『Black Album』の反動だろうか?
極限まで音を抜いてグルーヴを保つスタイルは『Parade』でも実験済みだけど、もう少しポップ寄りとなっている。『Black Album』の反動だろうか?
2. Alphabet St.
シングル・カット1弾。US最高8位、UK最高9位。
リズム・カッティングをメインとした、Princeのギターが堪能できる曲。
ドラムはあくまでも軽く、様々なエフェクト音が絡み、たまにシャウトもしているのだけど、熱くなり切ってはいない。
Cat Gloverによる間奏のラップが聴きどころ。
リズム・カッティングをメインとした、Princeのギターが堪能できる曲。
ドラムはあくまでも軽く、様々なエフェクト音が絡み、たまにシャウトもしているのだけど、熱くなり切ってはいない。
Cat Gloverによる間奏のラップが聴きどころ。
3. Glam Slam
シングル・カット2弾。US R&Bチャート44位、UK29位。
当時のチャート・アクションは地味だったけど、リリース当初から隠れた名曲扱いされており、後年になってから更に評価が高まった。
抑えたヴォーカルにオブリガードたっぷりのPrinceのギターが良い。『最も過小評価されているギタリスト』の称号を持つだけあって、聞かせどころがホントうまい。
結構手クセの多いPrince、ギター・ソロなどを聴いていると、それほど引き出しがあるわけではないのだけど、曲調に合った的確なフレーズを瞬時に弾けるというのは、それだけトータルのサウンドの捉え方、動体神経が優れているのだろう。
終わりのシンセの適当弾きも結構好き。
当時のチャート・アクションは地味だったけど、リリース当初から隠れた名曲扱いされており、後年になってから更に評価が高まった。
抑えたヴォーカルにオブリガードたっぷりのPrinceのギターが良い。『最も過小評価されているギタリスト』の称号を持つだけあって、聞かせどころがホントうまい。
結構手クセの多いPrince、ギター・ソロなどを聴いていると、それほど引き出しがあるわけではないのだけど、曲調に合った的確なフレーズを瞬時に弾けるというのは、それだけトータルのサウンドの捉え方、動体神経が優れているのだろう。
終わりのシンセの適当弾きも結構好き。
4. Anna Stesia
ちょっとファンキーなジャジー・ラップといえばわかりやすい。Sheila.E含む女性コーラス3名を従えて、ピアノ・ソロとギター・ソロとが交差する。重い。でも良い。
ちょっとファンキーなジャジー・ラップといえばわかりやすい。Sheila.E含む女性コーラス3名を従えて、ピアノ・ソロとギター・ソロとが交差する。重い。でも良い。
5. Dance On
ここからが、レコードで言うB面。スタイルとして、オーソドックスなファンクのフォーマットを使用。
ペシャペシャ軽いドラム、重いベースと、好き放題なギター・ソロ。
やはり普通のファンクには終わらない。
サビの”Dance On !!”がクセになる。
6. Lovesexy
タイトル曲なのだけど、いつ聴いても印象に残らず、俺的には地味な曲。
いや、もちろんレベルは高いのだけど、俺だけに限らず、多分誰が聴いても、あまり印象に残らないと思う。
とっ散らかった曲なので、部分部分だけ聴いてみるのも良いかもしれない。
いや、もちろんレベルは高いのだけど、俺だけに限らず、多分誰が聴いても、あまり印象に残らないと思う。
とっ散らかった曲なので、部分部分だけ聴いてみるのも良いかもしれない。
7. When 2 R in Love
リリース当時から、「ドロドロのどファンク・アルバム」とプレス・リリースされていた、あの『Black Album』収録曲で、おかげであらぬ注目を受けてしまった、ちょっと可哀そうな立場の曲。。
幻のアルバムの中から選りすぐった曲が、遂にその姿を現した…、と盛り上がったはずなのだけれど、あれ?と思ったのは俺だけではないはず。あの『Black Album』の曲がこれ?という、なんとも肩すかしな印象だった。
少なくとも、一般的なファンクではなく、Everything But The Girlあたりが歌っても違和感のないくらい、それほどシンプルなスロー・ナンバー。寄りによって、何でこれ?この辺がPrince流の、いわば「スカし技」なのだろう。
少なくとも、一般的なファンクではなく、Everything But The Girlあたりが歌っても違和感のないくらい、それほどシンプルなスロー・ナンバー。寄りによって、何でこれ?この辺がPrince流の、いわば「スカし技」なのだろう。
8. Wish U Heaven
シングル・カット3弾。US R&B18位、UK24位。
いかにも80年代っぽい、ロック・テイストをまぶしたポップ・ソング。
シングル・カットも3枚目となると、あまり話題にもならないものだ。
シングル・カット3弾。US R&B18位、UK24位。
いかにも80年代っぽい、ロック・テイストをまぶしたポップ・ソング。
シングル・カットも3枚目となると、あまり話題にもならないものだ。
9. Positivity
ちょっとワールド・ミュージックっぽいシンセ・ドラムのリズムに乗って、語りかけるようなPrinceのヴォーカル、それに女性ヴォーカル2人と、やはりソロ・ギターがねちっこく絡む。
ラストにこの曲を持ってきたことによって、Princeの決意表明が感じられる。
後半にラップが導入されているけど、よく言われるように、Princeのラップはそんなにうまくない。
ラップだけ取り出して聴けば、そりゃ素人に毛の生えたレベルだけれど、これにPrinceによるバック・トラックが絡むと、普通に良い。
トータルとしてのサウンドのまとめ方を重視しているのだろう。
ラストにこの曲を持ってきたことによって、Princeの決意表明が感じられる。
後半にラップが導入されているけど、よく言われるように、Princeのラップはそんなにうまくない。
ラップだけ取り出して聴けば、そりゃ素人に毛の生えたレベルだけれど、これにPrinceによるバック・トラックが絡むと、普通に良い。
トータルとしてのサウンドのまとめ方を重視しているのだろう。
ちょっとオフ気味のPrinceのヴォーカル、これまでにないくらい弾きまくるギター、低音を抜いた、あえてチャチに仕上げたドラム音。ほとんどこれだけでサウンドの骨格が成立している。
にもかかわらず、曲調はバラエティに富んでいる。
曲間なしノンストップで、まるまるアルバム一枚を一つの組曲として扱うことによって、その限定された条件が逆に功を奏し、キャリア中で最高のファンク・アルバムを作り上げた。
この限定されたパーツの順列組合せだけで、どこまでバラエティを持たせた作品ができるのか。
ある意味、Princeの実験精神が才気煥発した、ほぼ最後の作品である。
にもかかわらず、曲調はバラエティに富んでいる。
曲間なしノンストップで、まるまるアルバム一枚を一つの組曲として扱うことによって、その限定された条件が逆に功を奏し、キャリア中で最高のファンク・アルバムを作り上げた。
この限定されたパーツの順列組合せだけで、どこまでバラエティを持たせた作品ができるのか。
ある意味、Princeの実験精神が才気煥発した、ほぼ最後の作品である。
このアルバムから見事にセールスが急落し、このままフェード・アウトするかと思いきや、『Batman』サントラの大ヒットによってやや復活、にもかかわらず、この数年後、あの有名な改名騒動が持ち上がり、レコード会社と泥仕合の末、どうにかこうにかして独立、「これからはネット配信の時代だ!」といち早くサイト立ち上げ、配信限定アイテムを連発するも、すぐに飽きてやめてしまう。
やっとまともにCDを制作したと思ったら、通常の販売ルートには乗せず、新聞や雑誌のおまけにしてしまうアマノジャク振り。
最近では、若い娘たちとバンド結成、時たま思い出したようにシングルをリリースしているが、やはり全盛期の面影は見当たらない。
今度、『Purple Rain』30周年をきっかけに、20年振りにWarner復帰、バック・カタログのリマスター&ニュー・ アルバム・リリースが進行中のようだけど、どうせまた気まぐれで、それもどうなることか。
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今度、『Purple Rain』30周年をきっかけに、20年振りにWarner復帰、バック・カタログのリマスター&ニュー・ アルバム・リリースが進行中のようだけど、どうせまた気まぐれで、それもどうなることか。
それでも、我々は信じるのだ。
また近い将来、Princeは必ず復活するだろう、と。
そう信じながら、我々Princeファンは、今日も生きている。
Hits & B-Sides
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