好きなアルバムを自分勝手にダラダラ語る、そんなユルいコンセプトのブログです。

#Various

「Rolling Stone Magazine 500 Greatest Album Of All Time」全アルバム・レビュー:491-500位


 491位 Harry Styles 『Fine Line』
(初登場)

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 元ワン・ダイレクションという前置きも必要なくなったビッグネーム:ハリー・スタイルズ2枚目のアルバムが初登場。去年リリースの『Harry’s House』が「細野晴臣『Hosono House』にインスパイアを得て制作した」という小ネタを知って「おぉっ」と一瞬思ったけど、考えてみればワン・ダイレクションもハリーも、ましてや細野さんも代表曲以外、ちゃんと聴いたことがなかったのだった。
 「聴いてたつもりで実はちゃんと聴いてないアルバム」って、まだいっぱいあるんだよな。はっぴいえんども、通して聴いたのは1枚もない。今さらどう向き合っていいのか、熟年夫婦みたいな気持ちになってしまう。
 俺世代の洋楽ボーイズグループといえば、ニュー・キッズ・オン・ザ・ブロックやテイク・ザットなど、主に欧米勢中心だったのだけど、そっち方面はいまKポップだもんな。ますますついていけそうにない。
 緻密なマーケティングとプロデュースに沿った、耳障りよく心地よい、ハズレの少ない万人向け。当たり前だけど、ひねくれた洋楽好きにはヒットしないサウンドで統一されている。大規模なプロジェクトチームによって入念に段取りされた、破綻の少ない音。
 このアルバムがファーストインプレッションだったら、また違う人生もあったんだろうけど、あいにく世代が違いすぎるし、そもそも、こんなめんどくさい文章書く連中は相手にしていないのだハリー・スタイルズ。
 前回491位はAlbert King 『Born Under a Bad Sign』。今回は圏外。




492位 Bonnie Raitt 『Nick of Time』
(225位 → 230位 → 492位)

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 つい声に出して読みたくなるけど、日本ではそれほどの人気ではない「ボニー・レイット」、89年のヒット作が大きくランクダウン。主に70年代に活躍して、80年代はほぼまるまるスランプ期、これがカムバック作だったのだけど、リアタイでは聴いてないはず。
 ロック名盤ガイドに載るほどの代表作はないけど、名前だけは知ってたボニー・レイット。なんとなくスージー・クアトロと同じくくりかと思っていたのだけど、このアルバムではMOR寄り、スターシップやハートを聴いている層への親和性が高い。
 方向性に行き詰まった中堅・ベテランがレーベル主導のマーケティングに乗っかって、外部ライター導入・シンセ多めのサウンドに手をつけると、おおむね従来ファンにガン無視されるのが常だけど、彼女の場合、そこまでポリシーを曲げた風は見られない。クレジットを見ると、プロデューサーはあのドン・ウォズ。あぁそれで納得。あまりゴテゴテ飾る手法の人じゃないし。
 しかし80年代後半から90年代全般に至るまで、落ち着いた中堅ベテラン系のギターロックは、どれもクラプトンっぽく聴こえてしまうのは俺だけだろうか。そのクラプトン本人は今ランキングではまったくカスってもいない。時代のあだ花って言い方はしたくないけど、トレンドの先端は枯れるのも早い。
 他のランキングは、『Give It Up』が496位→495位ときて、今回は圏外。
 前回492位はEurythmics 『Touch』。今回は圏外。




493位 Marvin Gaye 『Here, My Dear』
(454位→456位→493位)

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 問答無用の名作『What’s Going On』『Let’s Get It On』の二大巨頭の影にかすみ、20世紀中は駄作もしくは黒歴史扱いされていた邦題『離婚伝説』。一応、要約的に間違ってはいないんだけど、キワモノ的な邦題が災いして、まともな評価がされていなかった『Here, My Dear』。今世紀に入ってから少し見直されてきてはいるけど、2枚組をまともに聴き通すのは、正直ちょっとツラい。
 スティーヴィー・ワンダー同様、「愛と平和の人」というキャッチフレーズが独り歩きして、長らく誤解を受けていたマーヴィン、このアルバムを受け入れるか否か、ひとつの踏み絵となる作品でもある。言ってしまえばベトナム戦争もセックスも離婚も、彼にとってはすべて歌の素材、歌詞や言葉はそれほど重要ではなかったわけであって。
 丹念に重ねられた自声コーラスと、アタック音を抑えたコンガ/パーカッションのリズム、ほぼリード楽器と化しているマーヴィンのウィスパーヴォイス。『What’s Going On』から始まったサウンドの探究はここでピークを迎えている。
 高潔な反戦歌から下世話なメイク・ラブ、元妻への贖罪まで、テーマなんて何でもいい。そんな決意が垣間見えるのだけど、そこまで強い人じゃなかった。この後も彼の迷走は続く。




 このアルバムについては以前、レビューしているので、もう少し深いところはこちらで。




 シンディ・ローパーもオフコースもカバーしている「What’s Going On」、今回は浜田省吾。カバー専門の別プロジェクト:The J.S. Inspirations名義、実質ツアーバンドによるリラックスしたセッション。新たな切り口を求めるものではないけど、大人の余裕から醸し出されるアンサンブルは、いつもの浜省より前のめりにならずに聞くことができる。
 前回493位はWilco 『Yankee Hotel Foxtrot』。今回は225位。




494位 The Ronettes 『Presenting the Fabulous Ronettes』
(419位→422位→494位)

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 フィル・スペクター『Back to Mono』に続き、60年代ガールズグループ唯一のアルバムが崖っぷちでランクイン。こっちはどうにか踏みとどまったけど、代表作とされている『A Christmas Gift for You from Phil Spector』は今回は圏外。
 みんな定番はずして投票したら、こんな結果になったのかね。もともと投票の絶対数は少ないので、その煽り食ったんじゃないかと思われる。
 昔のアルバム定番の全12曲、レイ・チャールズ『What'd I Say』のカバーを除き、ほぼスペクター作の楽曲が並んでいるけど、乱暴に言っちゃえばどれも「Be My Baby」のバリエーション。二番煎じ三番煎じというより、手持ちの作風が少ない人だったんだろうな、と改めて思う。またはそれだけ「Be My Baby」の完成度が突出していたというか。
 モータウンっぽいポップソウルも入っているけど、これってどっちが本家なんだろ。おそらく相互に影響され合ったか同時多発的なサウンドだったのか。まぁモノラルで大編成コンボで音圧上げると、どうしてもこんな音に辿り着いちゃうっていうか。
 ちなみに当時のビルボードランキングを見てみると、最高96位とかなりショボい。まだアルバムが「シングルの寄せ集め」という時代を象徴する事実である。




 古今東西多種多様のカバーが存在する「Be My Baby」、「せっかく」というのはちょっと違うけど、マーヴィン・ゲイに続き、こっちも浜省ヴァージョンで。イントロは一応ウォール・オブ・サウンドを指向しているけど、歌に入るといつもの浜省。
 前回494位はMGMT 『Oracular Spectacular』。今回は圏外。




495位 Boyz II Men 『II 』
(初登場)

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 ボビー・ブラウンやキース・スウェットと並んで、80年代末〜90年代初頭のニュージャックスウィング・ムーヴメントを牽引したボーイズⅡメンの2枚目が初登場。現代まで連綿と続くオラオラ系/パリピのルーツとなるボビ男がヒップホップ成分多めだったのに対し、彼らはもう少しソフトにアーバンに、ブラコン/R&B系のアプローチで、一般女性層にも幅広い人気があった。
 バブル期の一時的なブームとして、あまり顧みられることの少なかった90年代ブラックミュージックも、四半世紀を経てようやく再評価の機運が高まっているっぽい。20世紀では、メアリー・J. ブライジもこういうランキングに入ることはなかったし、シフトチェンジは確実に進んでいる。
 日本に例えればビーイング周辺が該当するのだけど、懐メロ的な切り口が多く、深く突っ込んだ分析する視点は、今のところなさそうである。80年代シティポップもあらかた掘り尽くされた感もあるし、あと10年後くらいかね。その前にやっとこうか俺が。まずは中古CD集めからスタートだ。
 リアタイではちゃんと聴いたことなかったけど、新譜が出るとあちこちのメディアでパワープレイされていたため、記憶にある曲も多い。おそらく日本においては、彼らの時代くらいまでが「洋楽」として、お茶の間にもそこそこ認知されていたんじゃないだろうか。あくまで私見だけど、日本のライトな洋楽ユーザーにとっては、このくらいベタでメロディアスなブラコンがちょうどいい。
 前回495位はBonnie Raitt 『Give It Up』。今回は圏外。




496位 Shakira 『Dónde Están los Ladrones』
(初登場)

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 『Rolling Stone』という雑誌の性格上、ロック系の名盤が上位ランクインしているのはまぁわかるとして、順位が下るにつれて混沌としてジャンルレスな並びになっていたりする。特にカントリーやラテンポップ勢の初登場率が多く、ヒップホップにも肉薄、2000年代以降のロックなんて影も薄い。
 正直、次回ランキングに入るのはちょっと微妙なメンツが多いのも事実だけど、旧来ロックのポジションは今後も地滑り的な凋落をまぬがれない。こじつけて言えば、これも多様性なのだろうけど、個人的に普段聴くものは、やっぱり80年代に落ち着いてしまう。人それぞれっていうのも、また多様性だし。
 で、そんなラテンポップの女性シンガー:シャキーラが初登場。現代アメリカにおけるヒスパニック系の勢力は日に日に増しており、エンタメ界に限らず、政治経済面においても強い影響力を持ちつつある。
 ダンスポップありシェリル・クロウみたいなロックチューンあり、かと思えばバタくさいカントリーロックもありで、世界進出を視野に入れたコンテンポラリー仕様のサウンド構成になっている。一聴するとクセ強なスペイン語ナンバーも、情熱的な歌唱スタイルとの相性が良く、インド映画のサントラみたいな錯覚を覚えたりもする。
 前回496位はBoz Scaggs 『Boz Scaggs』。今回は圏外。




497位 Various Artists 『The Indestructible Beat of Soweto』
(圏外 → 388位 → 497位)

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 1985年にリリースされた、南アフリカアーティストのコンピレーション。大きくランクダウンしたけど、どうにか踏みとどまった。
 当時、南アフリカに駐在していた白人2人によって、国内でヒットしている楽曲を集めたものなので、アフリカ音楽=呪術的なアフロビートを想像すると肩透かしを食う。ある程度、70〜80年代の西洋ロック/ポップスを通過してきた世代が中心なので、465位キング・サニー・アデよりずっと聴きやすい。
 変にドロっとしておらず、パーティーソングみたいなお気楽さが漂ってはいるけど、当時はまだアパルトヘイト真っ只中、純粋な音楽性への興味は前提としてあるけど、未開の地のキッチュな物珍しさ的な視点もあって、編纂されたんじゃないかと思われる。90年代に韓国のポンチャックが小ブームになったけど、それと同様の視点だったんじゃないか、と。
 ほぼタイミングでポール・サイモン『Graceland』がリリースされ、西欧の文化搾取だのパクりだの散々叩かれていた記憶があるけど、悪気はなかったものと信じたい。土着的と思われていたアフリカ音楽を、世界仕様のコンテンポラリー/西欧的な解釈で作っちゃうと、誰がやってもあんな風になってしまう。「コンドルは飛んでいく」の方がどストレートなフォルクローレだし、こっちの方がよっぽど正直なアプローチだ。
 前回497位はWhite Stripes 『White Blood Cells』。今回は圏外。




498位 Suicide 『Suicide』
(438位 → 441位 → 498位)

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 インパクト強いジャケットデザインが印象的で聴いたつもりになってたけど、実は一度も聴いたことなかったスーサイドのデビュー作がランクダウン。77年リリースなので、時系列的にはニューヨークパンクのカテゴリなのだけど、60年代サイケの風味もあればインダストリアルっぽい破壊衝動もあったりして、分類のしづらいサウンド。
 一番わかりやすい例えとして、ジャーマンプログレの要素もあるよな、と思ったけど、そんなの知ってる人の方が少ないので、全然例えになっていない。ギターレスの裸のラリーズ?ゴス成分濃い目のエレポップ?ダメだ、適当な言葉が見つからない。
 斜め上の思考と頭でっかちな模索が一巡した結果、静かな破滅の予感と狂気。無機質なリズムボックスとシンセの響きは、強迫観念と被害妄想を湧き立たせる。10分に及ぶ大作「Frankie Teardrop」は、「Sister Ray」に対する彼らなりのアンサーソングだったのか。ヴェルヴェッツ風味も感じるし。
 特筆すべきは彼ら、壮大な大風呂敷となるこのデビュー作で終わらず、その後も断続的に活動し続けたという事実。こういうのって一発の衝撃がでかいから、続けるのは難しいはずなんだけどな。ただ、そういったグダグダさもまた伝説の一部として機能するわけであって。
 前回498位はThe Stone Roses 『The Stone Roses』。今回は319位。




499位 Rufus & Chaka Khan 『Ask Rufus』
(初登場)

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 代表作とされているソロ初期作はカスリもせず、ルーファスでのランクインとなったチャカ・カーン、ラス前にやっと登場。俺的には、ウケ狙いとしか思えない「チャカカーン」サンプリングをイントロに使った「I Feel For You」の印象が強すぎて、リアタイではちゃんと聴いてなかったけど、ソウル・ディーヴァ系を遡っていくと、どうまわり道したって彼女にたどり着く。
 ファンキーなフィメール・ヴォーカルというイメージの強いチャカだけど、ここではほぼクルセイダーズ「Street Life」みたいなジャジー・チューン「Close the Door」を筆頭に、それほど汗をかかないスタイルの楽曲も多い。この頃はすでにソロ活動も並行して始めていたため、かぶらないように棲み分けしていたのかもしれない。
 今年『Rolling Stone』が発表した「これまでで最も優れたシンガー200人ランキング」にて、チャカは29位に入っているのだけど、自分より上位に入っている女性シンガーを痛烈にこき下ろしている。5位マライア・キャリーには「ワイロで買収している」、22位アデルの22位には「もういい、私はやめる」。25位メアリー・J・ブライジはもうメタクソ。長くなるので詳しいところはこちらで。




 ホイットニー・ヒューストンのカバーがきっかけで広く知られることになった「I'm Every Woman」だったら、日本でも誰かやってんじゃね?と思って調べてみたのだけれど、そこにたどり着く前に、ソロデビュー作収録の「A Woman In a Man's World」をしばたはつみが手がけていることを知ってしまった。しかも、日本語歌詞で邦題「はずみで抱いて」と来たら、もうこっちにするしかない。オリジナルに劣らぬファンキーなヴォーカルもそうだけど、演奏もまた秀逸。和モノチューンとして再評価されているのもうなずける。




 前回499位はB.B. King 『Live in Cook County Jail』。今回は圏外。




500位 Arcade Fire 『Funeral』
(圏外 → 151位 → 500位)

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 大トリ500位は、現代アメリカではすっかりマイノリティかつ貴重な存在になってしまった、正統ロックバンド:アーケイド・ファイアのデビュー作。前回ランキングから大きくランクダウン、他のアルバムは影も形もない。
 現在進行形のロックって、アメリカではほんと廃れちゃってるんだな。変にメインストリームに媚びたりせず、生真面目で良質なサウンドなんだけど、はみ出したりおイタする部分がないので、行儀良く収まっちゃってる。
 「良質な物を作り続けていれば、きっと誰かが評価してくれる」というロック性善説に基づいて作られたサウンドは、イヤいいんだけどさ下世話さが足りないのか。基本はU2フォロワー的なギターロックな彼ら、『Achtung Baby』に近づくことはできても、「Discothèque」や「Vertigo」にはリスペクトもなさそう。
 でも、そんな力技も時には必要なのだ、ロックという音楽は。
 前回500位はOutKast 『Aquemini』。今回は49位。







「Rolling Stone Magazine 500 Greatest Album Of All Time」全アルバム・レビュー:481-490位


 481位 Belle and Sebastian 『If You're Feeling Sinister』
(初登場)

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 通称ベルセバ、90年代ロキノンでもよくフィーチャーされていたベル・アンド・セバスチャンの実質デビュー作が初登場。音の雰囲気から何となく、メロコア以降のアメリカインディーの人たちと勝手に思っていたのだけど、スコットランド出身だった。
 ちゃんと通して聴いてみると、どの曲もそんなに盛り上がらずオチもない、わかりやすいサビメロもない80年代ネオアコの進化系。ピッチフォークで持ち上げられそうなセンス先行の音は、どこに行き着きようもない浮遊感を漂わせ、いつの間にか何となく終わる。
 所属レーベル:ラフトレードつながりで、スミスの影響が見え隠れする瞬間もあるけど、ジョニー・マー的ポジションのメンバーがいないせいもあって、アルバムの流れ的に起伏は少ない。引き出しが少なく手持ちの技も少ないけど、そういうのを求めるバンドではないのだろう。
 変にうがった見方をせず、朝のFMだったら抵抗なく受け入れられる、そんな音である。もしかすると歌詞が「深い」のかもしれないと思って調べてみたけど、そんなウリでもないらしい。
 あんまり難しく考えないでいい、それでいてちょっと引っかかりのある音。もしかしてそんな思惑で鳴らしているのかもしれない。
 前回481位はD'Angelo 『Voodoo』。今回は28位。




482位 The Pharcyde 『Bizarre Ride II The Pharcyde』
(初登場)

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 これまでまったく存在を知らなかった、主に90年代中心に活動していた西海岸ラップグループのアルバムが初登場。日本版wikiもないくらい知名度はないし、このアルバムもリリース当時はUS最高75位と中途半端なポジションだったけど、なぜか地味に売れ続けて4年後にゴールド認定という、まるで演歌みたいな売れ方をしている。
 2004年以降、アルバムは制作されておらず、時々シングル単体のリリース以外は各自のソロ活動中心。かと思えば、時々思いつきみたいにライブで再集結したりして、フラフラ行き当たりばったりの活動状況らしい。
 グループ活動にそんなにこだわりがないのか、メンバーも脱退したり再加入したり、いろいろ落ち着かない。どこかのタイミングでブレイクの兆しはあったはずなので、そこでもうちょっと本腰入れてたら、状況は違っていたはずなのに、その辺がちょっと残念。
 いろいろツッコミどころの多いグループではあるけど、個人的に音はすごく気に入っている。それほどヒップホップには食いつかない俺だけど、ジャジーなトラックからはデ・ラ・ソウルっぽさ、それを打ち消すようなアッパーなバカっぽいチューンとのコントラストがバラエティに富んでて飽きずに最後まで聴ける。
 一応、来日実績もあるみたいだけど、全盛期を過ぎてからだったため、そんなに話題にもならず、世界を股にかけたドサ回り感が否めない。こういう音にもっと早めに出逢っていたら、ヒップホップへの向き合い方も、も少し違っていたのかもしれないなー、と黄昏れる53歳の秋。
 前回482位はSteve Earle 『Guitar Town』。今回は圏外。




483位 Muddy Waters 『The Anthology』
(38位 → 38位 → 483位)

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 少しでもロックを聴きかじっているなら、誰でも名前くらいは知っているけど、ほぼ聴かれる機会の少ないシカゴブルースの大御所マディ・ウォーターズの2枚組ベストが、前回から大きくランクダウン。「オールタイムベスト」というランキングの性質上、「こういった古典もひとつくらい入れとかなくちゃ」と意識的にチョイスした人も多かったのだろうけど、もうそんな忖度する世代も少なくなったということか。
 ほぼ考古学のフィールドに入ってしまった古典ブルース、「ひょっこりひょうたん島」や「シャボン玉ホリデー」同様、かなり強引にレトロバイアスでもかけない限り、まっ正面から向き合うのは至難の業だ。これはリスナー側だけではなく、黒人アーティスト全般でも言えることで、若手のブルースマンはほぼ白人ロック側の出自が多いのが現状。
 現在、メジャーの黒人ブルースプレイヤーで思い浮かぶのは―、誰かいたっけ?もしいるのならそれは俺の勉強不足だけど、多くがヒップホップに流れているのも事実である。それでもしぶといごく少数の原理主義者に支えられ、次回ランキングでもギリギリ踏みとどまる可能性は、あるにはある。手厚い保護が必要なジャンルなのだ古典ブルースって。
 そんなネガティヴな見方を一旦抜きにして、フラットな気持ちで聴いてみるとー、イヤやっぱ古い。80年代から洋楽に興味を持った俺世代からすると、ほぼワンパターンなリフからスタートするジャンプブルースは、馴染みのあるものではない。
 おそらく本国アメリカでも「おじいちゃんが聴く音楽」なので、どこを褒めればいいのかちょっと悩む。あ、でも問答無用の圧は強い。リアタイで聴いてたら、強いインパクトを受けることだろう。
 他のランキングは、『Folk Singer』が277位→282位ときて、今回は圏外。『Muddy Waters at Newport 1960』が344位→348位ときて、今回は圏外。
 前回483位はGang of Four 『Entertainment!』。今回は273位。




484位 Lady Gaga 『Born This Way』
(初登場)

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 先日、ストーンズの新作リリースライブにゲスト参加、すっかり大御所感漂っていたけど、実はまだ37歳のレディー・ガガ2枚目の出世作が初登場。ホイットニーやマドンナもそうだったけど、「デビュー作だと思ってたのが実は2枚目だった」というパターンが、女性アーティストでは多い。
 今どき2流のハードコアメタルでも見かけないキワものアルバムジャケットや、過剰な承認欲求をあらわにした色モノファッションコーディネートなど、お騒がせ芸能ニュースネタの反面、収録されているトラックはどれも丁寧に作られている。大人のスタッフと精鋭のブレーンによって、きめ細かく大胆に、マーケティングに則ったサウンドで埋められている。こういう時、アメリカのエンタメ界は時間も予算も潤沢にかける。
 メイン曲以外も全力投球、全曲シングル候補で埋め尽くされているため、通して聴くと力の抜きどころがない。ただ、このアルバムがリリースされた2011年といえば、iTunesが勢力拡大していた頃、アルバム単位から単曲でのダウンロードへ移行する過渡期だったことを思い出す。
 コンセプトアルバムという概念が形骸化した現代を先取りした、シャッフル再生に適した構成なのかもしれない。なので、適当に気に入ったトラックだけシャッフルするのが正解なのだろうな、と言いごちて53歳の秋は過ぎゆく。


 土屋アンナが自身のYouTubeチャンネルで「Born This Way」をカバー。意表を突いたジャズバラード・アレンジは、ネイティブな発語と抜群の表現力との相性が良い。33位エイミー・ワインハウスの時にもちょっと触れたけど、案外洋楽カバーにも積極的で、バラエティ主演時とはまた違う側面とのギャップが面白い。
 前回484位はMott the Hoople 『All the Young Dudes』。今回は圏外。




485位 Richard and Linda Thompson 『I Want to See the Bright Lights Tonight』
(471位 → 471位 → 485位)

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 レディー・ガガから大きな落差、家でゆったり聴きたいリチャード・トンプソンの初期代表作がランクイン。程よく音に隙間があって聴きやすいし、トータル40分弱のサイズ感もちょうどいい。
 ブリティッシュフォークの老舗バンド:フェアポート・コンベンション出身のリチャード・トンプソン、どちらもロック名盤ガイドには欠かせない名前だけど、ちゃんと聴いたことはなかった。ヴァン・モリソンやジョニ・ミッチェル同様、どちらも日本ではほぼ知名度の少ない人たちなので、聴く機会がなかなかない。
 そんなミュージシャンズ・ミュージシャン、俗に言う通好みの人だけど、実際聴いてみると、やっぱり地味。基本、トラッドフォークがベースなので、キャッチーなサビメロや口ずさみたくなるフレーズもない。サービスなんて度外視した老舗食堂の如く、朗々とした演奏が展開される。
 ただ彼の弾くギター、わかりやすい速弾きやトリッキーなプレイもないけど、一音一音の重さと深さは感じ取れる。ベース音を強調したアルペジオや歪みなく細やかなストロークは、まどろみの中に緊張感を生み出している。
 安直なブルーススケールやチョーキングに頼らず、とことん基本を追求した末に奏でられた音は、強い確信に支えられている。愛想はないけどめちゃめちゃうまいチャーハン作る食堂のオヤジみたいなものだな。
 他のランキングは、『Shoot Out the Lights』が329位→332位ときて、今回は圏外。
 前回485位はPearl Jam 『Vitalogy』。今回は圏外。




486位 John Mayer 『Continuum』
(初登場)

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 年末来日予定のジョン・メイヤー3枚目のアルバムが初登場。今回の来日公演は最安値シートで4万以上という高騰ぶりが話題になったけど、ステージ前最高クラスでも5万円なので、ブルーノート東京という会場を加味すれば、そこまで非常識な価格でもない。
 これでB席1万・アリーナ10万くらい開きがあれば、それこそ鬼畜の所業と突っ込まれても仕方ないけど、400人程度のキャパなため、むしろ公平で良心的な価格設定じゃないかとも思う。でもやっぱ高いけどね。
 デビュー時は「ブルースの新星・救世主」と持ち上げられていたのもいまは昔、女性が絡んだゴシップネタが先行していたけど、実際に聴いてみると、90年代ワーナー期クラプトンをモチーフとした、モダンブルースが展開されている。CDでのリスニングを想定した、大きくはみ出さずカッチリまとまったサウンド。
 ルーツのひとつであるマディ・ウォーターズと比べると、当たり前だけど音質もいいしアレンジ・構成もきちんと練り上げられている。ここを入り口として遡ってゆくならいいけど、無理して古い音源ありがたがらなくたっていいんだよ。こっちの方が技術も表現力も上なんだから。
 ただ数十年後にジョン・メイヤーが50年代レジェンドらと肩を並べているかといえば、それはちょっと疑問。おそらく本人的にもそんなところは目指していないと思うけど、フォロワーよりファウンダーの方が支持を得るのは自然の摂理。
 もうちょっとはみ出したプレイしてもいいと思うんだけど、スタジオテイクはどうしてもこんな風に強力脱臭しまうのかな。それこそライブならもっとくだけてアグレッシブなのかもしれない。
 前回486位はEarth, Wind & Fire 『That's the Way of the World』。今回は420位。




487位 Black Flag 『Damaged』
(336位 → 340位 → 487位)

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 アメリカンハードコア・パンクの祖:ブラック・フラッグのデビュー作が大きくランクダウン。ニューヨーク周辺、東海岸発祥の初期パンクムーブメントが、アート寄りで知的な印象だったのに対し、彼ら西海岸勢は頭より躰、飛んで叫んでナンボでしょ的な勢い優先、スピリットはロンドンパンクに通ずるところが多い。
 この辺のサウンドって偏見だけど、アメリカ映画でよくある「隠キャのナードが部屋に引きこもって爆音で聴いている」イメージがあり、でもそんなに間違ってないと思う。発育途上のティーンエイジャーが好む、一般的には通過儀礼的な音楽なのだけど、CD/レコードに詰め込まれた熱量はハンパないため、ほかのジャンルでは代替不能、なので分別ある年齢になっても聴き続ける熱狂的なファンに支えられている。
 彼らや元祖Xなど、のちの90年代グランジとも地続きなこのジャンルは、時代を問わず一定の需要があり、いまも形を変えてシーン形成している。日本の東京ロッカーズ周辺もそうだけど、いまだ現役で活動しているミュージシャンも多く、それなりのニーズがあるということなのだろう。
 ファンもアーティストもそろそろお互い、後期高齢者に差し掛かっているはず。なので、ヘッドバンキングやモッシュは控えようね。日常的に節制している割合は少ないはずなので、ケガするとシャレにならないから。
 前回487位はCyndi Lauper 『She's So Unusual』。今回は184位。




488位 The Stooges 『The Stooges』
(185位→185位→488位)

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 3枚目『Raw Power』が惜しくも圏外になってしまったけど、初期3枚中2枚が今ランキングにチャートインしているストゥージーズのデビュー作。堂々94位にランクインしていた『Fun House』と比べて大きく順位を落としているけど、正直、どっちを聴いても明らかな差はない。
 普通、こういうのってデビュー作こそ至高って原理主義者多いはずなんだけど、みんな定番はずして裏を攻めたら、こんな風になっちゃったのかね。2枚シャッフルして聴いたら、どっちがどっちだか、わかる人は相当ディープなマニアだ。
 何しろ半世紀以上前の作品なので、ピークバランスやダイナミックレンジなんてお構いなし、とにかく他人と違って目立つための爆音サウンドは、時空を超えて人の胸ぐらを掴んで揺さぶりまくる。平穏無事に健やかに育っていたティーンエイジャーは暴力衝動に煽られ、チープなレコードプレーヤーをボリュームMAXでガンガン鳴らす。
 ヘンリー・ロリンズも彼らにそそのかされて、ブラック・フラッグを結成した。時代は巡る。
 前回488位はHusker Du 『New Day Rising』。今回は428位。




489位 Phil Spector & Various Artists 『Back to Mono (1958-1969)』
(64位 → 65位 → 489位)

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 ストゥージーズ同様、こちらも前回から大きくランクダウン、2021年に獄死を遂げたフィル・スペクターの4枚組ボックスセット。文字通りの波瀾万丈の人生を体現した人であり、後半生は自ら作り上げた虚像と過剰な被害妄想に苛まれた。  
 晩節は汚しまくったけど、音楽は残る。マディ・ウォーターズ同様、顧みられることも少なくなったけど、大きな足跡を残したフロンティアであることに変わりはない。
 日本では主に80年代以降、大滝詠一によるスペクター/ウォール・オブ・サウンドの布教によって、マニア以外にも名前はそこそこ知られていたように思う。『Be My Baby』以外の曲はほぼ知らないし、そこまで突っ込んで知る気はなかったけど、「君は天然色」のようにミッチリ詰まった音の塊とポップなメロディであることは、何となく知られていた。
 レコードの針が飛ぶギリギリまでヴォリュームを上げ、ギュウギュウ詰め込まれた音の塊は、大量のカロリーを内包している。誰かが間違えたらやり直し、編集の効かない一発録りセッションは途方もなく長く、しかもずっと緊張が絶えない。
 笑顔で歌わなければならないロネッツの表情は引きつり、ちょっとのミスも許されないミュージシャンらは冷や汗のかきっぱなし。音響を優先したゴールドスタースタジオは狭いし息苦しいし、蒸された壁からは水滴がしたたり落ちる。
 最適な音のバランスを考えた楽器の配置やマイクセッティング、コンソールを操る指先のマジックによって、続々夢のサウンドは生み出された。でもその全盛期は短く、ヒットメイカーの座から凋落したスペクターはその後、本業何やってるんだかわからない業界人ゴロに成り果ててしまう。
 わかりやすいくらいの栄枯盛衰。身に余る栄光は人を狂わせる。
 スペクターといえば「Be My Baby」、「Be My Baby」といえばロネッツ、俺の私見として、大滝詠一が布教するまでは日本ではまったく無名と思い込んでいたのだけど、wikiで見るとオリジナルリリース間もなく広田美枝子や伊東ゆかりがカバーしている。その後、70年代にも郷ひろみや林寛子しており、おそらく確認されている以外にも、洋楽カバーの定番としてそこそこ知られていたっぽい。フィル・スペクターとかウォール・オブ・サウンドというブランドはすっ飛ばされて、日本では「心地よいオールディーズ」として、大量のカバーが残されている。


 そんな数多あるバージョンの中で、オリジナルのコンセプトに最も忠実なんじゃんないかと思えたのが、Mi-Ke。ゆるいメロディに適当な日本語詞で油断してしまいそうだけど、そこは90年代J-POPシーンを席巻したビーイング軍団のパロディ部門担当のトップ、手練のブレーンとスタッフによって緻密に構築されたトラックと、盤石のヴォーカル&コーラスワークは、バブルの功罪をほのかに回顧させる。
 他のランキングは、『A Christmas Gift for You From Phil Spector』が142位→142位と来て、今回は圏外。
 前回489位はKISS 『Destroyer』。今回は圏外。




490位 Linda Ronstadt 『Heart Like a Wheel』
(163位 → 圏外 → 490位)

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 初回ランキングから2回目で圏外→今回再浮上という、あまり見られないチャートアクションを見せるリンダ・ロンシュタットの初期代表作。最近名前聞かないなと思ってたら、ずいぶん前からパーキンソン病を患い、ほぼ引退状態とのこと。ミック・ジャガーが異常なだけで、普通の77歳だったらよくあるエピソードなんだよな。
 自ら曲を書くことはないけど、抜群の歌唱力とパフォーマンスは、同世代の才能を引き寄せる魅力を放っていた。恋多き女としてのフェロモンと併せ、多くの男性ファンを魅了してスターダムを駆け上がっていった。
 のちのイーグルスのメンバーやアンドリュー・ゴールド、J.D.サウザーなど、今カレ元カレが入り乱れ、普通ならまとまるはずのないメンツを束ねるのは、聖母の慈愛なのか妖女の囁きなのか。要はみんなリンダにイイとこ見せたいのか、楽曲も演奏にもガッツがハンパない。
 正直な話、実際に聴く前はもっと素直なカントリーロックと思っていたのだけど、ロックだったりソウルっぽかったり、曲調に応じて最適なスタイルをナチュラルに選択できるのは、これはもう感性の為せるワザ。後天的に身につくものではない。
 他のランキングは、『The Very Best of Linda Ronstadt』が320位→164位ときて、今回は圏外。
 前回490位はZZ Top 『Tres Hombres』。今回は圏外。





「Rolling Stone Magazine 500 Greatest Album Of All Time」全アルバム・レビュー:471-480位


 471位 Jefferson Airplane 『Surrealistic Pillow』
(146位 → 146位 → 471位)

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 ロック名盤ガイドではほぼ常連、老舗バンド:ジェファーソン・エアプレインの初期代表作が大きくランクダウン。リアタイで聴いてた人はおそらく70オーバー、この頃からずっと追っかけてるファンって、日本ではちょっと考えづらい。むしろ80年代のスターシップを覚えている人の方が、圧倒的に多いと思われる。
 でスターシップ、一応、前身バンドの主要メンバーが関わっているため、系図的につながってはいるのだけど、もう「どうしちゃったんだ」と呆れてしまうくらい、まったくの別バンド。老舗バンドのブランディングに乗っかって、ひと儲け企んだレーベルの操り人形と化したグレイス・スリック一同は、生気のない眼を取り繕う貼りつけた笑顔で、「シスコはロックシティ」を歌っていたのだった。日本でも大ヒットした彼らだけど、長い目で見れば失ったものの方が多かったはず。
 そんな黒歴史は置いといて、彼らについて俺が知ってたのは、懐かしのロック番組で聴いた「White Rabbit」くらいで、あとはほぼ無知。「ドアーズと同じ頃のサイケデリック・ロック」という大ざっぱな予備知識だけで聴いてみた。
 そんな先入観とはだいぶ違い、曲によってヴェルヴェッツのようなアシッドフォーク風味だったり、サイケなファズギター先行のロックもあったりして、ひとことで言い表わせるサウンドではない。むしろ、意識的にひとつのカテゴリーに捉われないようにしている、とっ散らかった音楽。変に奇声を上げたり斜め上な不協和音もなく、楽曲それぞれのアプローチは極めて常道にもかかわらず、サラッと聴き流すことを許さない、そんな音楽。
 誰とも似ていないオンリーワンの音楽であり、彼らの存在自体をひとつのジャンルとして確立しようとする、そんな気迫が感じられる。人と違っていることを恥と感じず、むしろ個性的であることが賞賛された、そんな60年代の音楽。
 他のランキングは、『Volunteers』が366位→373位ときて、今回は圏外。




 ちょっと意外だったけど、YOASOBI幾田りらが、ショート動画で「あなただけを」をカバー。もともと歌唱力はしっかりしてる人なので、オリジナルの不穏さは微塵もないけど、良質のポップソングとして聴ける。仰々しい60年代サイケで紛れてしまっているけど、このメロディを活かすには、こんな風に素直にファニーなアプローチが、むしろ正解だったんじゃないか、とも思う。
 ちなみに幾田りら、このYouTubeチャンネルでは様々なジャンルにトライしており、ジャーニー「Separate Ways」はまだわかるとして、ディープ・パープル「Burn」、クラッシュ「London Calling」までカバーしている。他にもマイク・オールドフィールドからRun-D.M.C.まで、まぁ守備範囲広い。
 前回471位はRichard & Linda Thompson 『I Want to See the Bright Lights Tonight』。今回は485位。





472位 SZA 『Ctrl』
(初登場)

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 これで「シザ」と読む、2020年代アメリカR&Bシーンのトップを爆走する女性シンガーSZAデビュー作が初登場。2018年、タレント渡辺直美がアメリカのアパレルCMで彼女とコラボしたのが話題になったらしいけど、ゴメン全然覚えてない。
 ガチで今どきのメインストリームなので、「どうせありがちな量産型トラップじゃね?」と勝手な先入観で聴いてみたのだけど、いい意味でちょっと違ってた。ヴォーカルは思ってたより粗くワイルドで、時々エイミー・ワインハウスみたいに聴こえる時もある。
 ワールドワイドなマスを想定しているため、基本は時流に合わせたコンテンポラリー仕様なのだけど、記名性の強い声質が予定調和をほんの少し崩し、それがアクのある個性として確立している。近年の傾向である豪華ゲストとのコラボ、ここでもケンドリック・ラマーが顔出ししているのだけど、正直そんなに面白くない。むしろ完全ソロ曲の方が、いろいろ遊びもあったりクセもあったりして楽しめる。
 この例に漏れず、ほぼ互助会化している豪華ゲストのコラボって、ガチでやるとエゴのぶつかり合いになって収拾つかないので、無難なトラップ/スムース・ヒップホップに落ち着いてしまうことが多い。まぁゲスト羅列した方がプロモーションもしやすいんだろうけど、作品クオリティとは直結しないのもまた事実。
 思ってるほど相乗効果も宣伝効果もないので、そろそろやめた方がいいんじゃね?とこのアルバムを聴いて思った次第。ソロで聴いた方が全然イイし彼女。
 前回472位はGeorge Michael 『Faith』。今回は151位。




473位 Daddy Yankee 『Barrio Fino』
(初登場)

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 447位バッド・バニーと並び、世界中にレゲトン・ブームを広めた立役者ダディー・ヤンキー4枚目のアルバムが初登場。今年、WBCに出場した大谷翔平との2ショットをインスタに上げたことが大きいニュースになったのは、記憶に新しい。
 あんなガチガチのセキュリティを難なくクリアしただけでもすごい事なのに、その上、大谷自身もウェルカム状態って、何者なんだ?って思ってたのだけど、彼だったんだね。イヤ大物だったんだなダディー。
 昔から多民族国家であったアメリカだけど、エンタメ界で猛威を振るっているのがラテン系で、中でもプエルトリカンのラテン・トラップは大きなシェアを有している。テンション勝負・アゲアゲ感優先の音楽は、特に多くのプロスポーツ界において、番組BGMやら登場テーマやらで使用頻度が高い。特に野球選手にファンが多く、結構な割合で2大巨頭の出番は多い。
 ただこのダディー、数年前から引退するだのしないだの、フワフワした態度でいるらしい。もうプレイヤーとして大抵のことは成し遂げただろうし、あとはプロデューサー/ファウンダー的なポジションに落ち着くんだろうか。ある意味、フォーマットとして確立した感のあるレゲトンというジャンル、今後は自分のクローンみたいなのいっぱいこしらえておけば、多分10年くらいは安泰だろう。
 前回473位はThe Smiths 『The Smiths』。今回は圏外。




474位 Big Star 『#1 Record』
(430位 → 434位 → 474位)

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 現役活動時は成功に恵まれなかったけど、解散してから現在に至るまで、若いバンドからのリスペクトが絶えないビッグ・スターのデビュー作。考えてみると尊大なのか大風呂敷なのか、どっちにしろ盛大に名前負けしちゃったバンドだったよな。そんな雑なところが逆に愛おしいっていうか。
 前回よりややランクダウンしてはいるけど、そんなのは誤差誤差。現役時にリリースされた3枚のアルバムすべてが今ランキングに入っており、これはなかなかの快挙。快挙なはずだけど、それが騒がれないのもまた彼ららしい。
 ゴリゴリのロックのつもりでもポップなメロディが立ってしまい、演奏テクニックもそこそこだしルックスも垢抜けてなく冴えない。ロックスターであろうと背伸びしてるけど、オーラはそんなに感じられない。
 ロックの王道を歩もうとデビューしたけど、所属したレーベルがソウル専門のスタックスだったことが、彼らの不幸だった。ロックを売り出すノウハウを持たないスタッフに翻弄され、このデビュー作はシーンに黙殺された。
 ロックバンドというフォーマットが残る限り、彼らへのリスペクトが絶えることはない。R.E.M.にも通ずるファンとの信頼関係は、後進へ連綿と語り継がれる。
 前回474位はManu Chao 『Proxima estacion: Esperanza』。今回は圏外。




475位 Sheryl Crow 『Sheryl Crow』
(初登場)

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 そういえば最近、名前聞かないな。調べてみると最後のアルバムが2019年、以降はほぼセミリタイアして表舞台に立っていないことを、いま知った。90年代、日本でも大きな人気を得たシェリル・クロウの実質デビュー作が初登場。
 R&B/ヒップホップのブラックミュージック勢にシェアを奪われ、お手軽なダンスポップ以外の選択肢がなかった90年代女性シンガー界において、新たな切り口をこじ開けたのが、彼女とアラニス・モリセットだった。オーソドックスなバンドサウンドの復権を謳いながら、ワイルドネスとフェミニンを共存させた2人の歌は、広範なライトユーザーを獲得した。カーCDで流しても恥ずかしくない、ちょうどよい熱量のロックサウンドは、グランジ/オルタナについていけない中流層にも受け入れられた。
 ここ日本ではFMのパワープレイでさんざんオンエアされていたこともあって、アルバムは持ってなかったけど、どの曲も印象に残っている。っていうかFMでしか聴かなかったな。
 「FMでお腹いっぱいでCD買ってない」という意味では、インコグニートと同じ匂いがする。悪い意味じゃないよ。あくまで余談。




 コブクロがカバーアルバム『ALL COVERS BEST』で「If It Makes You Happy」をカバー。そんなに小技を駆使するタイプの人たちではないため、至って素直なアプローチ。ソリッドな切れ味はないけど、穏やかなフォークロックに仕上げている。
 前回475位はElvis Costello 『Armed Forces』。今回は圏外。




476位 Sparks 『Kimono My House』
(初登場)

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 ロック名盤ガイドでは長らくキッチュな泡沫バンド扱いされていたけど、21世紀に入ってからリスペクト熱が高まり、遂にドキュメンタリー映画まで公開されてしまったスパークスの初期代表作が初登場。後世に残る作品にする気がまったくないジャケットアートワークから察せられるように、とことんロックの王道から一歩も二歩も引いたスタイルは、サウンドにも反映されている。
 なんとなくイメージからして、「10cc+クイーン」みたいな音なのかと思っていたのだけど、実際に聴いてみると、ほぼその通りだった。期待を裏切らない胡散臭さっていうか。
 70年代ギターロックをベースに、オペラやクラシックや映画音楽やジャズやら、思いついたアイディアをごちゃ混ぜにしており、カオスはカオスなんだけど、基本は思ってたより真っ当なロックンロールになっている。ハッタリや飛び道具に紛れて巧妙に隠されてはいるけど、従来のロックを俯瞰で見ることで得られる批評的な視点、ポストモダンの立場で描いたロックの再構築というコンセプトが見えてくる。
 末期のBOOWY〜布袋がモロに影響を受けた、フェイクな輝きを放つサウンドデザインは、日本の80年代サブカル層にも波及している。こういったアンチ/ポストロック的なアプローチは、昔から屈折した英国人のジョンブル魂が由来するものだったのだけど、彼らアメリカ出身だった。それにしてもイギリスっぽい音だよな。
 前回476位はNotorious B.I.G. 『Life After Death』。今回は179位。




477位 Howlin' Wolf 『Moanin' in the Moonlight』
(153位 → 154位 → 477位)

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 シカゴ・ブルースの第一人者ハウリン・ウルフのデビュー作が大きくランクダウン。前回ランキングまでは、まだロック中心史観によって、こういったルーツミュージックも上位だったけど、「もうそういう時代じゃない」ってことなんだろうな。
 教科書に載る伝統芸能として、次回も下位ギリギリでランクインはするだろうけど、そのうちB.B.キングあたりとオムニバスでまとめられちゃう時代が来るかもしれない。かつてはギター少年の通過儀礼として、履修としての需要はあったけど、ギター自体がオワコンまっしぐらだし。
 とはいえ、初期ストーンズがほぼ彼のパクリだったことから、間接的にこの辺のサウンドに馴染みがある世代が多いことも、また事実。年期の入ったブルース通の前では言いづらいけど、正直ロバート・ジョンソンより全然聴きやすい。
 個人的にはこういったブルース、部屋の中で聴くよりカーステで聴いた方がしっくりくるし、世界観にハマりやすい。アメリカ映画のオープニングのように荒れた道をかっ飛ばせば、気分はすっかりディープサウス。
 他のランキングは、『Howlin' Wolf』が233位→238位ときて、今回は圏外。
 前回477位はMerle Haggard 『Down Every Road』。今回は284位。




478位 The Kinks 『Something Else by the Kinks』
(285位 → 289位 → 478位)

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 歴史ある英国の老舗バンドであるにもかかわらず、日本ではなかなかブレイクしきれないままフェードアウトしてしまった、そんなキンクスの初期代表作がランクダウン。英米では手堅い人気を得ていたはずだけど、兄弟ケンカ以外のネタだけで引っ張るのはもう限界か。そのポジションはギャラガー兄弟に取って代わられちゃったし。
 それに加えて、英語圏ではもはや口に出すことも憚られるバンド名のため、いまのご時勢では何かとフィーチャーしづらい。今さらスマイルアップみたいに改名するわけにもいかないしな。
 シンプルなパワーコードでガンガン押す、ハードロックのルーツとしてリスペクトされまくっている初期から一転、駅で出逢った一組のカップルを叙情的に描写した「Waterloo Sunset」収録のこのアルバム、通して聴くと「地味」以外の形容が見当たらない。普通にビートグループとしてやってく方がキャリア的に良かったんじゃないかと思うけど、考えてみれば彼ら、おそらくストーンズやビートルズ、フーと同じ土俵に立ってもキャラが薄いため、淘汰されるのを肌で感じてたんじゃないか、とも思う。
 とはいえオープニングを飾る「David Watts」は、脱力してやる気のないオリジナルヴァージョンより、モッズ視点のソリッドな8ビートの方がふさわしかったんじゃなかろうか。後年、ポール・ウェラー率いるジャムが、それを証明してくれた。




 意外なところで矢野顕子、2012年のライブアルバム『荒野の呼び声 -東京録音-』で「You Really Got Me」をカバー。オリジナルのラウド感はまったくなく、矢野顕子通常営業のピアノ&ヴォーカルパフォーマンスだけど、大ベテラン:ウィル・リー&クリス・パーカーによるリズムワークは豪快かつ繊細。原曲はもはやきっかけでしかない矢野ワールド。
 前回478位はLoretta Lynn 『All Time Greatest Hits』。今回は圏外。




479位 Selena 『Amor Prohibido』
(初登場)

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 「セレーナ」と読む、80〜90年代に活躍したメキシコ出身ラテンポップ女性シンガーのアルバムが初登場。当時、日本盤も発売されていたらしいけど、全然知らなかった。当時のメインストリームロックとは対極の音楽なので、俺が知らなくても無理はない。
 なんでいま、このタイミングでランクインしてきたのかは不明だけど、ますますカオス化しつつあるアメリカ人種問題の最中、エンタメ界においてもチカーノ系アーティストが、着実にポジションを確立しつつある。473位ダディー・ヤンキー同様、ロックがオワコン化しヒップホップがスターシステム化することによって、宙に浮いたシェアはラテン系もしくはカントリーに流れている。このランキングもまた、特に初登場組においてはそんな状況を反映させている。
 ちなみにセレーナ、活動していたのは95年まで。不正な着服容疑で解雇された、彼女のファンクラブ元会長の逆恨みを受け、無慈悲にも銃殺された。
 享年23歳。酷すぎる。
 前回479位はFunkadelic 『Maggot Brain』。今回は136位。




480位 Miranda Lambert 『Weight of These Wings』
(初登場)

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 活動範囲はほぼ北米限定、日本ではほぼ知られていないけど、本国では盤石の人気を誇るミランダ・ランバートの6枚目が初登場。ジャケットのイメージから想像つくように、カントリーど真ん中の人。
 とはいえ本流トラディショナル100%ではなく、ややロック寄りのオルタナカントリーのため、ルシンダ・ウィリアムスと同じ括りに属する。オーソドックスなバンドサウンドをベースとしているため、テイラー・スウィフトに通ずるダンスポップ風味はカケラもない。
 テレビオーディション出身という出自は、日本の目線からすると二流っぽく感じられるけど、そこは層の厚いエンタメ大国アメリカ、企画モノ臭は見られない。これをもっとロックテイストを強くして、ギターにファズをかけるとシェリル・クロウみたいになるのだけど、そっち方面へ行かなくてもそこそこ安泰なのも、アメリカの幅の広さ深さ。
 前回480位はRaekwon 『Only Built 4 Cuban Linx』。今回は219位。







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北海道の中途半端な田舎に住むアラフィフ男。不定期で音楽ブログ『俺の好きなアルバムたち』更新中。今年は久しぶりに古本屋めぐりにハマってるところ。
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