好きなアルバムを自分勝手にダラダラ語る、そんなユルいコンセプトのブログです。

#世界のジャズ・ファンク・バンド巡り

世界のジャズ・ファンク・バンド巡り:UK編 - Impellers 『This Is Not A Drill』

lego_040_impellers_1200x1200_300dpi_cmyk 今回はイギリス編。UKファンクはなかなかの激戦区で、様々なバンドがしのぎを削っている。もともとはOmarやLuck of Afroなどの有名どころが所属するジャズ・ファンクの名門レーベルFreestyleからデビューしたのだけど、この2枚目のアルバムからはドイツのレーベルMochamboからのリリース。そう、以前紹介したGizelle SmithやMighty Mocambosらが所属している、世界中の濃いジャズ・ファンク/ソウル関連のアーティストが集結し、なんとも濃い芳香を放っている、あのMochamboである。
 EU圏は特にそうなのだけど、このジャンルのアーティストはほんと出身国にこだわらない、ボーダーレスな活動を行なっているバンドが多い。だからと言ってドイツ中心で活動しているわけでもなく、あくまで活動ベースは出身国であり、遠征がてらEU圏内を回っているのがほとんど。自分の国だけで回すには、バンド運営が難しいのだ。
 MocamboもFreestyleもそうなのだけど、レーベル側もそれほどアーティストに介入・拘束するわけでもない。どのレーベルも小規模なもので、基本、レーベル・カラーに沿った、お気に入りのアーティストなら片っぱしから契約している状況なのだけど、彼らの業務はほぼ配給のみ、ネット以外のプロモーションはほとんどタッチしないスタイルを貫いている。日本のそれと比べると、かなりドライな関係のようにも思えるけど、双方のリスクを最小限に抑えるには、これが最も効率的なビジネス・モデルなのだろう。

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 全世界的にダウンロード販売が主流を占めるようになった昨今、物理メディアであるCDのセールスは右肩下がりが止まらない傾向にある。そのCDの流通もネット通販が主流となってきており、固定店舗への営業はあまり効果的ではなくなってきている。中間卸や固定店舗を重視するよりはむしろ、在庫保有を極力抑えた無店舗形態の方が効率も良い。
 これがひと昔前なら、どのアーティストもデビュー時の洗礼として、レコード会社の仕切りで全国キャンペーンだプロモーションだと、不本意なドサ回りを強いられたものだけど、今じゃどのメーカー・ショップにも、そんな体力はない。あったとしても、恩恵を受けられるのはごく一部のトップ・アーティストだけ、ほとんどのアーティストはデビューしても放置され、販促費も回って来なければ、担当者さえまともに対応してくれない惨状になっている。

 逆に考えれば、レーベルからの余計な横ヤリがほぼ無いに等しいので、従来の発想に捉われないスタイルで行動するアーティストが増えてきている現状である。
 地道なライブ活動は変わらないのだけど、どの国のジャズ・ファンク・バンドもネット媒体を積極的に活用している。通常のオフィシャル・サイトやYouTubeは当たり前で、他にもFacebookやらTwitterやらInstagramまで、そりゃ本当にもう、あらゆるメディアを駆使してセルフ・プロモーションに勤しんでいる。もちろん、バンドによってはすべてをフォローすることはできず、一応開設はしたけど、ほとんど更新できずじまいのメディアもあるのは事実。昔なら手取り足取りマネジメントやレーベルが行なっていたことを自前で行なわなければならないのだから、そこはあまり厳しい目で見ないように。

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 以前紹介したFunkshoneとの比較だけど、彼ら同様、同じくファンク系なのだけど、こちらはもう少しソウル寄りで、ジャズっぽさはちょっと少なめ。ちょっと脂抜きしてサッパリしたJB’sをイメージしてもらえれば、何となく想像はつくはず。
Glenn Fallows - Guitar & Keys
Clair Witcher - Vocals
Ed Breaker - Bass
Barry Lalanne - Guitar
Tom Henderson - Drums
Mark Yexley - Trumpet
Chris Evans-Roberts - Alto Sax
Darren Smith - Tenor Sax
Emma Black - Baritone Sax
Joel Essex - Percussion
 という大所帯は、大抵のジャズ・ファンク・バンドに共通していることなのだけど、やはり個々のスケジュール調整が難しく、小まめな身動きが取りづらいのが現状。メインのバンド一本で食っていける状況では無いので、どうしても外仕事が多くなりがちになる。
 ほんとなら、メインのバンドに専念できる安定した収入とライブ環境が望ましいのだろうけど、反面、生活の糧を別に持つことによって、純粋に音楽に打ち込めるというメリットもある。

 下手にミュージシャンが収益や好感度を気にしてしまうと、目先の観客に受けることばかり考えてたり、はたまた逆に勘違いして過剰にアーティスティックを気取ってしまったりで、ロクなことがない。ましてや損益分岐点や収益性にまで手を付けてしまうと、グッズ販売ばかり力を入れたり目先のコスト・カットに目が行ってしまって、これまたロクでもないことになる。バンドの売りだったはずのホーン・セクションを外部委託にしてスリム化を計ったり、スタジオ経費を安く上げるためレコーディング時間を短縮したり、短期的にはバンド運営も安定するけど、内部の人間関係が崩壊へ向かうデメリットの方が多く、そういったつまらない要因で解散してしまうバンドの多いこと。

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 すべてをセルフで行なうことはキツイけど、隅々まで目が行き届くことによって、逆に状況把握がスムーズに行なうことができる。よって、純粋にクオリティのみを追求することができる。
 まぁそこまで理想的には行かないにしても、自分たちの手の届く範囲のことは自分たちでやる、そういったDIYの感覚が、この手のバンドには多い。基本、機材搬入だって自分たちで行なうし、会場のブッキングからギャラ交渉だって、結局頼りになるのはメンバーを含めた自分だけだ。
 そういった生臭い部分もすべて背負って、どのバンドもどうにかこうにかバンド維持に努めている。彼らに限らず全世界、または日本のバンドだって似たようなものだけどね。


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1. Intro

2. Hear What I Say
 アッパー系のJB’sっぽいオープニング。ナチュラル・トーンのギターが全編でずっと鳴っており、このクールさが逆にファンキーさを演出している。Clairのヴォーカルはこのジャンルでは定番の激情型なのだけれど、ややハスキー気味な分もあって、少しクールさも漂っている。



3. The Knock Knock
 ちょっとジャズ・テイストのドラム・ソロから始まる、泥臭さの漂うナンバー。やはりギターの人がバンド・リーダーの場合、当然だけどギターのオブリガードが全編に漂っているため、どうしてもJB’sっぽくなる。いや、俺は好きだけどね。
 中盤のブレイク、ドラムのみをバックに歌うClairのヴォーカルは圧倒的。ライブならもっと映えるのだけれど。

4. Pon Lo Afuera
 タイトルが示すように、ちょっとラテンの入ったインスト・ナンバー。それぞれに見せ場を作った自己紹介的な一曲になっている。

5. Do What I Wanna Do
 ラテンの空気をそのまま持ってきて、さらにそこにカリプソも投入、ほんとノリの良いダンス・ナンバー。サビでの全員コーラス、ブレイクの後のClairのシャウトも最高。中盤の妖しげなDJによるアオリがまた、無国籍風を演出している。シングル・カットも頷ける。



6. Signs Of Hope & Happiness
 少ししっとりした、マイナー調のナンバー。この辺は日本の昭和40年代頃の歌謡曲との類似点が多く、俺世代以上の日本人なら、案外スンナリ受け入れてしまいそう。ちあきなおみや欧陽菲菲あたりが歌っても、そんなに違和感がない。
 こういったブルース調のソウル・ナンバーは、昭和の日本人の独壇場である。Superflyあたりがやってくんないかな。

7. Politiks Kills People
 かなりソウル寄りの、ライブ映えしそうな曲。もうちょっとアップ・テンポならもっと気持ちいいと思うのだけど、ライブならもっとハイパーなノリだと思われる。

8. Close To Me
 7.同様、こちらもソウルにかなり接近したナンバーなのだけど、こちらはアップ・テンポのため、かなりノリ良く仕上がっている。
 ジャズ・ファンク・バンドの魅力のひとつとしてドラムの生音が挙げられるのだけど、変に加工していない分だけ、ペシャッとしたタムの音なんて、それだけでもゾクゾクしてしまうくらい。

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9. Took Me For A Ride
 ホーン・セクション主導による、Tower of Towerを連想させるナンバー。ギターとホーンがメインのファンク・バンドと言えば、真っ先に思い浮かぶのがAverage White Bandなのだけど、あそこまで洗練されてなく、しかもヴォーカル・パートが多い分だけ、ソウルとの親和性が高い。この曲もそうだけど、やはり4人のホーンがいると、迫力が違う。

10. That's Not My Name
 ここはギターがメイン。ここにきて、めっちゃファンキーなナンバーを持ってきた。シングルにしてもいいくらいだったのに、あまり世に出てなかったのが惜しい。ちなみにギター、リフがCream “Sunshine of Your Love”を高速で弾いた感じ。なので、ちょっとブルース成分も入っている。



11. Belly Savalas
 再びブルース・ギター。ホーン・カルテットは、ここぞとばかりに吹きまくっており、時折”Summertime”っぽいフレーズも聴こえてくる。2分足らずの短いナンバーだけど、もっと聴いてたいね、こんなんだったら。

12. Last Orders (Outro)




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世界のジャズ・ファンク・バンド巡り:UK編 - Funkshone 『2』

1328017110orig 2006年に結成されたUK発のジャズ・ファンク・バンド、これは2012年発売、文字通り2枚目のアルバム。この手のバンド特有で、メンバーは総勢9名という大所帯。基本、生音主体なので、どうしても大人数にならざるを得ない。そうなるとなかなか小回りが利かず、しかもそれぞれ細々と個人活動に勤しんでいるため、これまたなかなか集まることも困難なため、断続的なシングル・リリースくらいしか目立った活動がない。バンド運営というのは難しいものである。
 ちなみにメンバー構成は、
 Mike Bandoni - Drums
 Andy Sedman – Percussion
 Danny Huckridge - Bass
 Nino Auricchio – Keys
 Alexis Kraniou – Guitar
 Patrick Kenny - Trombone
 Alan Whetton - Tenor Sax
 Alex Bezzina - Trumpet
 Sasha Patterson – Vocals
という面々。ちょっとめんどくさかったので、Discogsからのコピペ。
 そのバンド・リーダーのMikeからして、単発のプロジェクトを掛け持ちしている状況が続いている。ヴォーカルのSasha Pattersonも最近ではEarth Wind For HireやThe Getupというバンドの活動がメインとなっており、Funkshone本体での活動は次第にフェード・アウトしつつある。ちょっと調べてみたら、Speedometerのレコーディングにも参加しており、ほんと引く手あまたの引っ張りダコ状態らしい。詳細はつかめなかったけど、どうやら他のメンバー達もいろいろヘルプなりメインなり、本業ミュージシャンとして活動している模様。

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 彼らのようなインストゥルメンタル/ヴォーカル・グループの供給が続いてるのは、これはもう80年代末からのアシッド・ジャズからの流れというのが一般的なのだけど、もうちょっと遡って、Style CouncilやWorking Week、Everything But the Girlなど、シャレオツ系のジャジー・ポップから派生してきた、と受け止めた方がより正確である。対してアメリカでは、ラップ/ヒップホップ隆盛に対するロック・シーンのブルース回帰、そこからGreatful Deadの終焉と入れ替わるように、自然発生的に出現したジャム・バンド・ブームを通過して、現在に至る。
 なので、全世界的にほぼ同時発生しているジャズ・ファンクのカテゴリに於いても、アメリカだけはちょっと特殊、他の国に比べてブルース色が強い傾向にある。他の国は大体、JBやMeters、P-FunkやIsleyの流れを汲んで、ファンク色が強い傾向にあるのに。

 ちなみに日本はといえば、90年代のスカパラの台頭を起点として、この手の音楽が盛り上がりそうな起因もあるにはあったけど、インストにおいては『踊る』系よりむしろ『癒し』系の方が好まれる国民性のため、ニューエイジ・ミュージックやジェット・ストリーム系ほどの盛り上がりは見せず、アシッド・ジャズもジャム・バンドも大きなムーヴメントには成長しなかった。
 なので、基本はアメリカの後追い、メインストリーム・ジャズからの派生という形、全世界的な流れとは別の、ガラパゴス的な発展を遂げている。QuasimodeやPe’zやSOIL&“PIMP”SESSIONSなんかも、もっとダンサブルなバンドでもいいはずなのに、基本、ジャズのカテゴリに入れられちゃっているため、なかなかメジャー展開で苦労している模様。

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 ジャズ・ファンクと一言で言い現わしながら、各国それぞれ微妙に違っているのは、もちろんそれぞれの国民性の違いが大前提としてあるのだけれど、結局のところはブルース性の有無に起因するものだと思う。
 国家の歴史も浅く、また多民族国家の特徴ゆえ平均年齢が若いアメリカにおいては、ロック/ポピュラー・シーンでの行き詰まりを感じていた若手バンドの中でもテクニカルな連中が、インストゥルメンタル主体のジャム・セッションへ移行しつつあった。60~70年代ロックをルーツとする彼らはとても生真面目だったため、さらなるルーツの追求を図る。そうなると結果的に、ブルースをベースとしたサウンドが中心になる。そこにヴォーカルを入れるとなると、ブルースとの親和性が高く、そして演奏に気迫負けしないパワーを持つキャラクターが必要になってくる。なので、ブルースやゴスペルをベーストしたヴォーカリストが自然とチョイスされるようになる。インプロビゼーションが延々と続くジャム・バンドもまた、ブルース・スケールを基本に演奏しているため、濃縮されたブルース成分はソウル・フードのように、クセの強い芳香を放つ。

 で、それ以外の国、特にEU圏となると、ブルースの影響はかなり弱まってゆく。クロスロードだガンボだなんてのも歌の中の話であって、ひとたび大西洋を越えればリアリティは失われてしまう。
 イギリスは大航海時代の名残から、世界中の文化に触れる機会が多かった。その中でも特にソウル/ファンク系の人気が高く、もともとブルース系はちょっと弱かった。60年代中盤から末にかけて、Eric Claptonを始めとするブルース・ロックが一時隆盛を誇ったけど、それも結局パンクの出現によって粉々に打ち砕かれてしまった。その後のイギリスではブルース系は細々と息を繋ぐだけである。

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 で、Funkshone。ブルース成分はほとんどなく、インスト・ファンクの傾向が強く、ちょっぴりジャズ成分が強い。リーダーのMikeがドラム担当のため、必然的にリズム・パートのミックスが大きく聴こえるのは気のせいだけではないはず。よって、サウンドのダイナミズムは他バンドと比べても強いかもしれない。
 ほとんどアシッド・ジャズみたいなメロウ・ナンバーもしっかり取り入れているのが、このバンドの戦略のひとつなのだけど、何しろ全員のスケジュールがなかなか合わず一緒にスタジオに入るまでが、まずはひと苦労。もう少し安定かつコンスタントな活動で、認知度を高めてほしいところ。
 一応、去年久々のシングルがリリースされたのだけど、これまたスケジュールが合わず、Sashaは不参加、インスト・ナンバーという形になった。純粋な演奏だけを好むのならアリなのだけど、やはり彼女のヴォーカルも聴いてみたい。


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1. Heaven Shine
 トロットロに熟成されたヴォーカルとリズム。生楽器主体のため、ただのアシッド・ジャズでは終わらせないぞ的な雰囲気のある、スロウなタイム感のオープニング。

2. Dirty Money
 フルートというのが逆にファンキーに聴こえる、ミディアム・スロウのブラス・ファンク・ナンバー。70年代ディスコっぽいホーンのリフ、バックに薄く流れるストリングスとの絶妙なマッチング。

3. Bushwhacker
 ホーン・セクションは完全にジャズ・テイストなのに、リズムはちゃんとしたファンク。ここでまたフルートが登場。フルートが登場するナンバーというのは、60~70年代スパイ映画のサントラっぽく聴こえてしまうのだけど、それって俺だけ?

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4. After The Storm
 スタンダード・ジャズの王道的なホーンと無機的なリズム・ループとの融合。アンビエントなウィスパー・ヴォイスと、Milesっぽいミュート・トランペットのソロが交互にあらわれ、幻想的な空間を醸し出す。

5. Chase The Dream
 攻撃的なホーン・セクションを主として、時々控えめなストリングスやフルートが絡む、ちょっと不思議なファンク・ナンバー。フロアで踊るというよりは、聴いてて徐々にテンションが上がるタイプの個室ファンク。
 
6. Something Becomes The Other
 ホーンのロング・トーンが連呼されるのがカッコイイ、基本はジャズ・セッション、そこに再び薄くストリングスやSEが被さるジャズ・ファンク。野外フェスで聴いてしまった日には、もう抜け出せない。

7. Do Want You Do
 ソウル・レビューのクライマックスにピッタリなダンス・ナンバー。サビの締めのブレイクがカッコイイ。曲間のDJのイタリア語っぽいアオリが絶品。このアルバムの中では、俺的にベスト・トラック。

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8. Stop Think Work It Out
 Crusadersの”Street Life”っぽいメロディが印象的な、サビ一発のナンバー。いかにもサビから発展させたような曲だけど、シンプルな構造なだけに、逆にバンドの地力がしっかりしていることが証明されている。

9. Gettin' It Together
 ヴォーカルは一旦休憩、幕間のジャム・セッションっぽいファンク・ナンバー。なので、すべてのパートに見せ場がある。シンプルなギター・カッティング、それぞれアドリブを魅せるホーン・セクション、そして屋台骨を支える、Mikeの変幻自在なドラミング。どれをとっても安心して聴いていられる。



10. Persuasion
 エキゾチックなペルシア民謡っぽいオープニングと共に始まる、人力ドラム・ループが心地よい、これまでとはちょっと毛色の違った曲。ちなみにPersuasionの意味は「説得」。う~ん、説得というよりは、字面からして、中近東の民謡っぽく聴こえてしまう。

11. Take Down
 ちょっとヤサグレた感じで始まるスロウ・ファンク。バックでずっとベースが頑張ってる。ホント、今どきのファンク・バンドにしてはストリングスの使い方がうまい。これ見よがしではなく、比較的ポイントでサラッとした入れ方なのだけど、これがまた効果的。



12. Darling Dear
 ご存じJackson 5が放った1970年のナンバー。ヴォーカルの質感からサウンドまで、ほとんど完コピなのだけど、多分ほんとにやりたかったのは、ベース・レジェンドJames Jamersonスタイルのベース・ラインだろう。こちらもほとんどクリソツ。
 



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世界のジャズ・ファンク・バンド巡り:UK編 - Baker Brothers 『Avid Sounds』

folder 恒例となった『世界のジャズ・ファンク・バンド巡り』シリーズのUK編、狭くてニッチでセールス的にも恵まれないジャズ・ファンク界において、New MastersoundsやSpeedometerと並んで知名度もそれなりに高く、セールスも堅調なBaker Brothersのご紹介。
 
 で、このバンド、ジャズ・ファンクというカテゴリーの性質上、ソウル/ジャズっぽいテイストもあるのだけれど、前者2組と比べるとファンク/ダンス臭が強く、現在進行形のクラブ・シーンでも取り上げられる機会が多い。ヴォーカル・ナンバーも多いので、ロック系の耳のユーザーにも充分アピールできるサウンドになっている。ロキノン系など、イキのいいギター・ロックを聴いてきた人なら抵抗なく聴けるので、ここ日本でもファンは多い。
 ちなみにこれはキャリア初のカバー・アルバム、正直マニアックなセレクトのため、俺自身も知らなかった曲の方が多く、今回これを書くため調べてみたところ、初めてカバー集だと知ったくらい。多分、俺以外にもよく知らないで聴いてた人は多いんじゃないかと思う。いや多分そうだ、そういう事にしとこう。

 ごく普通のレビューっぽく書いていくと、まずDanとRichardのBaker兄弟に加え、友人であるChris Pedley (B、Vo)の3人でスタート、2003年にメジャー・デビューを果たすと、コンスタントなライヴ& アルバム・リリースを重ねるにつれ、メンバー間に徐々に音楽性の違いが生じてくる。そんなこんなの入れ替えやら脱退やらが相次いで起こり、2015年現在は前述のchrisをリーダーとして、Geoff Lai (G)、Paul Young (Sax、Vo)、Ted Carrasco (D)、Scott Baylis (Tr、Key)といった布陣になっている。いるのだけれど、ご覧いただいてお分かりのように、バンド名の由来となっているBaker兄弟が2人ともいないくなっており、何とも気持ち悪い状態になっている。
 一応、バンド内で金だ女だの下世話な軋轢があったわけではなく、あくまで音楽性の相違による発展的解消によるものらしいけど、第三者から見れば、なんか奥歯に物が挟まったような経緯のため、なんかいろいろ勘ぐってしまう。甲斐よしひろのいない甲斐バンド、または滝沢秀明のいないタッキー& 翼…、いやなんか違うな例えが。

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 主力メンバーが抜けたバンドのその後として、まったく音楽性が変わってしまうタイプと、まるで何事もなかったかのように、これまでの路線を引き継いで活動するタイプの2種類に分かれる。俺が知る限り、前者の代表格がPink Floyd やJoy Division で、後者がBeach Boysだと思う。
 どのバンドにも共通して言えるのは、メンバーの自殺や精神的なストレスの末、やむを得ない事情によって、というのが多い。Joy Divisionなんてバンド名さえ変わっちゃったし。
 第3のケースとして、全オリジナル・メンバーが脱退してしまったにもかかわらず、事務所やレコード会社の都合上、まだまだ収益が見込めるという判断の上、メンバー総取っ替えして看板だけそのまま使うというパターンもある。Temptationsや日本のWANDSがその例なのだけれど、だんだん本題から遠ざかって行きそうなので、この話題はこれで終わり。

 で、話がずれたけどBaker Brothers、そんな紆余曲折はあれどコンスタントな活動を続けている。性格の悪い英国人の割には非常に親日的で、日本限定のライブ・アルバムもリリースされているくらいである。なので、日本のクラブ・シーンにおいてもそこそこ名前も知られているポジションにあるのだけれど、何しろジャンル自体が非常にニッチなマーケットのため、『ジャズ・ファンク界の大物』といった、どうにも中途半端なポジションで待機中の状況が続いている。
 このジャンルのバンドの常として、数多のポピュラー系バンドとは違って、積極的な拡販策を取ろうとしないのが一般的である。もっと名の売れたヴォーカリストをフィーチャーしたり、世界的な企業とのタイアップなど能動的なアクションを起こせば、もう少し世間の認知も広がるのだろうけど、まぁみんなやろうとしない。大方は地道なライブ活動か、そのライブをyoutubeにアップするくらいが精いっぱいで、独創的なポリシーを持つ者はほとんどいないのが現状である。セールスだけを目的にするのなら、わざわざこのジャンルに留まる意味もないしね。
 
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 ほぼすべてのジャズ・ファンク・バンドとしては、セールスを第一義とするのではなく、大事なのはプレイする音楽そのもの、このまま音楽性を曲げることなくコンスタントな活動を続けていられれば、多くを望んでいないのがほとんどである。しかも、本来ならそんな彼らのケツを叩くはずのレコード会社も小規模ハウス・メーカー的なレーベルがほとんどのため、当然のことながらプロモーション能力はごく僅かなもの。わざわざこの時代にニッチなジャンルを好きで手掛けるているくらいだから、スタッフらも趣味性の強い連中が多いため、バンドを発奮させるなんて芸当はできるはずもない。逆にまかり間違ってJustin Bieber並みに売れてしまったら膨大な周辺業務が発生するため、めんどくさがりそうである。

 ライトユーザーへ向けての入門編「はじめてのじゃず・ふぁんく」として、この『Avid Sounds』をオススメしたいと思ってここまで書いてみたのだけど、考えてみればなかなか難しい部分もある。
 これまでロック/ポップスを聴いてた人がライト・ユーザー向けのこのアルバムを聴いて興味を持ち、そこから派生的に他の作品を聴いたとしても、それ以上深く掘り下げてゆくのは実のところハードルが結構高い。もともとインストが大半を占めるバンドでありジャンルであるので、ジャム・バンドやフュージョン系を通過していない人なら、たちまち退屈してしまう恐れが強い。俺自身、このジャンルの魅力に目覚めるまでは時間がかかったのだけど、やっぱヴォーカルの有る無しは大きい。
 ただ、世界に幅広く点在するジャズ・ファンク・バンド、ジャズ寄り・ファンク寄り・クラブ寄りなどなど個性も特徴も様々なので、その中で自分にしっくり来るサウンドを見つけてもらえれば、紹介してる俺もちょっと嬉しい。


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1. Family Tree 
 レア・グルーヴ~ディスコ系ではかなり知られたナンバーらしいけど、俺が知ったのはこのアルバムから。Youtubeでオリジナルが聴けたのだけど、ほぼまんまのストレートなカバーだった。音圧の違いを除けば構成もまるっきり同じなので、要は現在形にビルド・アップしたものと思ってもらえればよい。いやほんと、そのまんまだから。
 ヴォーカルを取るVanessa Freemanは、ジャズ・ファンク界周辺では盛んにフィーチャリングされている、シャウター・タイプの女性ヴォーカリスト。使い勝手の良さがバンド側には好都合なのだろうけど、便利屋的な扱いは彼女にとってはちょっと不幸。



2. Shack Up
 1976年リリース、B級ディスコ・バンドBlackbusterの、こちらもストレートなカバー。1.同様、基本サウンドはそのまま、発掘音源のマルチ・テープを磨き上げたような仕上がりになっている。なので、多分世界中に数人はいるかと思われるオリジナル・ヴァージョン大大リスペクトなユーザーでも抵抗なく聴けるし、また踊れる。

3. Couldn’t Get It Right
 同じく1976年リリース、Climax Blues Bandのカバー。やはりサウンドの構造はほぼ同じなのだけど、オリジナルはギターの存在感がちょっと強いのがしつこ過ぎるため、俺的には威勢の良いホーンも入ったBakerヴァージョンの方が好み。ブルース・バンドのナンバーにしてはポップな路線なので、これはこれで新しい発見。

4. Space Funk
 1977年リリース、こちらもディスコ・バンドManzelによる幻のナンバー。ということらしいけど、何やかやで耳にしたことがある人は多いはず。オリジナル盤はレアモノだけど、サンプリングによるフレーズ借用で使われることが多い。スペイシーに響くシンセのフレーズは耳に残る。



5. If You Want Me To Stay
 これはさすがに有名、俺でも知ってたSly & The Family Stone『Fresh 』収録曲。濃厚なファンク・ミュージックをさらに煮詰めて濃縮したエッセンスを抽出して密封して熟成させた、とにかくドロッドロのナンバーなのだけど、実は俺、Slyはちょっと苦手。ディープなファンクが嫌いなわけじゃないのだけど、なぜか俺の嗜好とは微妙に合わずにいる。ちゃんと聴いてみようと思ってはいるのだけど、いつもアルバム途中で断念してしまうアーティストの一人である。ただSlyが歌ってなければ全然受け入れられるので、このようにちょっぴりベクトルを変えたカバーなら、普通にヘビロテできる。
 ちなみにいつも断念してしまう他のアーティストが、Isley BrothersとCurtis Mayfield。どちらも充分レジェンド級のファンク・マスターである。あるのだけれど、多分俺は生理的にファルセットが苦手なのだろう。

6. Street Player
 1979年リリース、この頃はまだブラス・ロックで有名だったChicagoのナンバー。ディスコやAOR隆盛の波に押されてセールスも不振、世の流れにつられてソフト&メロウな路線に傾きかけていたけど、これはまだ初期Chicagoとしての良心が窺える名曲。

7. Rock Creek Park
 レジェンド級ジャズ・ミュージシャンDonald Byrdが、自ら教授を務めていたワシントンDCハワード大学の学生数人を集めて結成、ファンク&ディスコ・バンドBlackbyrdsによる1975年のナンバー。この頃のByrdは同じく大学の教え子だったMizel兄弟と組んで、ディスコ/ファンクに大きく接近したジャズ・ファンクを量産していた時期だった。理論派Byrdのオーガナイズによるため、各プレイヤーの基本能力は折り紙付き、オリジナル自体も古びた印象はほとんどない。Bakerヴァージョンはもちろんノリも良くて最高なのだけど、是非オリジナルも聴いてほしいところ。



8. Lady Day And John Coltrane
 ジャズ吟遊詩人として謳われたGil Scott-Heron1971年のナンバー。ちなみにLady Dayとは、伝説のジャズ・シンガーBillie Holiday。「Lady Dayに救いを求め、Coltraneにすべてをぶちまけるんだ」というテーマに強く感情移入して、ファンキーなプレイを繰り広げている。

9. Fly Like An Eagle 
 アメリカのブルース・バンドSteve Miller Band1976年の大ヒット曲ということらしいけど、70年代アメリカン・ロックはほとんど興味がなかった俺にとって、これは未知の楽曲なのだった。もともとブルースも馴染んだことがなく、多分これからも積極的に興味を持つことはないだろうけど、でもこの曲は全然ブルースっぽくないのが良く、オリジナルも浮遊感満載でなかなかクールな仕上がり。

10. Cola Bottle Baby
 Roy Ayersのバンドで長らくキーボードを務めていたEdwin Birdsong1981年のファンク・ナンバーということだけど、むしろ有名なのはDaft Punk 2009年のヒット、”Harder, Better, Faster, Stronger”、邦題『仕事は終わらない』、ていうか松本零士のあのPVで有名な曲の元ネタとしての知名度が一番デカい。オリジナルはファンクながら少しマイルドに、Daft Punkヴァージョンはやっぱりエレクトロ/ダンス・テイストバリバリ、Bakerヴァージョンが一番ゴリゴリのファンク・スタイルでプレイしている。

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11. The Mexican 
 ラストはイギリスのプログレッシヴ・ポップ・バンド(なのに名前がなぜか)Babe Ruth1972年のナンバー。現役当時はバンド自体がマイナーで、プログレ村界隈でしか話題にならなかったのに、80年代に入ってから、この曲のカバー・ヴァージョンがなぜかダンス・シーンで取り上げられるようになり、今ではレア・グルーヴ系のクラシックとして生き延びているらしい、とはwikiで読んだほぼそのまんま。
 マリアッチというのか、俺的にはフラメンコっぽくも聴こえるけど、どちらにせよ肉体の躍動に直接訴えかけるサウンドであり、オリジナルをまんま踏襲しているのも、安易なカバーでは超えることができないことがわかっているからと思われ。
 ところでヴォーカルでフィーチャーされているKatie Holmesって、あの女優の?そこがよくわからん。まさか、ねぇ。




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北海道の中途半端な田舎に住むアラフィフ男。不定期で音楽ブログ『俺の好きなアルバムたち』更新中。今年は久しぶりに古本屋めぐりにハマってるところ。
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