Elvis_Costello

好きなアルバムを自分勝手にダラダラ語る、そういったゆるいコンセプトのブログです。

Attractionsとの最期 - Elvis Costello 『Brutal Youth』

folder 1994年リリース、12枚目のオリジナル・アルバム。イギリスの弦楽四重奏集団Brodsky Quartetとのコラボレートとなった前作『Juliet Letters』が、セールス的には残念な成績で終わってしまったので、UK2位US34位は通常ペースに戻したと考えてよい。
 ほぼポップ性とは無縁な弦楽四重奏とタッグを組んだコンセプト・アルバムなんて、この時代でもすっかりオールド・ウェイブ扱いだったというのに、思いつきとノリでやってしまうのが、良く言えばフットワークの軽いところ。そんな退屈なアダルト路線から一転、泣く子も黙る現役ロッカーとしてステージに復帰したのだから、90年代Costelloでは人気の高い作品である。

 今も現役アーティストとして、大御所にしては珍しく、ほぼ1、2年間隔と短いスパンで新作をリリースするCostello。他アーティストとのコラボやトリビュート盤参加なども含め、リリース・アイテムがめちゃくちゃ多い人なので、決定的なアーティスト・イメージというのを絞り切れないことが、日本でいまいちブレイクできない要因でもある。
 日本の多くのライト・ユーザーが持つイメージに限定すると、「とくダネ」のオープニングの人か”She”の人、といったところなんじゃないかと思う。この2曲に特化すると、”Veronica”のオールディーズ調パワー・ポップと、”She”のようなベッタベタに情緒溢れまくりラブ・バラードの両面を併せ持ったアーティストという、どうにも両極端な印象になってしまう。全然違うよな、確かに。
 じゃあ他はどんな曲をやってるのか、ともう少し深く掘り込んでいくと、これまた印象が変わってくる。ちょっとロック好きな音楽ファンなら、「70年代パンクを起点としたベテラン・ロッカー」という視点になってくる。ミスチルの”シーソーゲーム”のPVの元ネタの人、と言ったらわかりやすい。
 以前紹介した『My Aim is True』も『This Year’s Model』もUKニュー・ウェイブの名盤として広く知られており、ディスク・ガイドでも紹介率が高い。ちなみにアメリカの雑誌『Rolling Stone』が発表した「500 Greatest Album」では、『This Year’s Model』が98位、『My Aim is True』が 168位にランクインしている。他のアルバムでは『Imperial Bedroom 』が166位、『Armed Forces』 が475位。こうして見ると、世界的にも初期の作品の需要が高いことがよくわかる。『King of America』も『Spike』も入ってないのかよ欧米人ってセンス古いよな、と思ってしまうけど、最大公約数で考えるとこんな風になってしまうのかな。
 
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 で、代表的な初期のアルバムをひと巡りした後、もうちょっといろいろ聴いてみようとなると、その音楽性はさらに混迷を増してくる。以前にも書いたけど、ひとつの音楽性をとことん突き詰めるタイプのアーティストではない。むしろ手当たり次第、その時自分に最も興味があるジャンルを、合う・合わないを考えず、ひとまずやってみる、といった人である。ロジックで動かないのは、一流のアーティストたる所以である。
 正直、純粋なロック・サウンドでアルバム1枚丸ごと作られているモノは少なく、カントリーもあればポップ・ソウルもあり、あからさまにヒット狙いの80年代シンセ・サウンド、前述した『Juliet Letters』などなど。このアルバム・リリース後も、Burt Bacharachと王道カクテル・ポップスをやったり、London Symphony Orchestraと組んで本格的なバレエ音楽に挑戦したりしている。ついこの前はヒップホップ・ユニットThe Rootsとコラボしたりなど、まぁ節操がない。 
 キャリアを重ねてきたミュージシャンがマンネリ防止のため、別ジャンルのテイストを取り入れるのはよくあることだけど、この人の場合はその振れ幅がハンパない。ワーナー移籍後あたりからはギャラの高騰もあって、Paul McCartneyやAllen Toussaintなどのビッグ・ネームと組むことが多くなったけど、昔はもっと気軽に、同世代のSpecialsのアルバム・プロデュースを引き受けたり、新人バンドだったPoguesの面倒を見たりなど、フットワークが軽かった。結果は様々だけど、それだけオファーのやり取りが続いているのだから、やはり同業者にとってCostelloと組むメリットは大きいのだろう。
 様々なジャンルを手当たり次第、縦横無尽に行き来するその姿は、一見根無し草のように思われることが多いけど、ミュージシャンである前に無類の音楽マニアだったCostello、これまで世に出してきた作品はすべて、過去に影響を受けた楽曲への熱いオマージュの賜物である。一見畑違いのような作品も見受けられるけど、彼の中では常に一貫している。興味のない音楽に手をつけた事はない。ないはずだ。そう信じたい。

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 で、こうした大きく揺れる振り子の中心にあったのが、デビュー以来、長らく行動を共にした盟友Attractionsの面々である。運動エネルギーのバランスが崩れると、振り子は乱舞した末、その動きを止めてしまう。Attractionsという確固たる中心があったからこそ、Costelloの音楽的冒険は成立していたんじゃないかと思う。もし彼らの存在がなかったのなら、Costello同様、あらゆるジャンルに手をつけまくって迷走したあげく、一時期業界からフェードアウトしてしまったJoe Jacksonみたいになってしまったのかもしれない。復帰後のJoe、マイペースで俺は好きだけどね。
 そういった絶妙のパワー・バランスに変化が生じたのが『King of America』で、ここでのConfederatesとの共演がCostelloの心境に変化を及ぼすことになるのだけれど、実際はそれ以前から食い違いが生じていたのは事実である。
 後期Beatlesのエンジニアも務めていたGeoff Emerickプロデュースによって制作された『Imperial Bedroom』。前述の「500 Greatest Album」でもランクインしてるように、初期のガレージ・パンクのスピリットを残しつつ、スタジオ・テクニックを駆使した洗練されたサウンドを展開した名作である。『Abbey Road』B面的なメドレー形式を導入することによって、これまでのどのアルバムよりもトータル・コンセプトがしっかりして完成度が高まった。なので、Attractionsとしてのバンド・サウンドは一旦、ここで完成を見ている。4ピース・バンドとしてのサウンドは円熟の極みに達したので、次に彼らが向かったのが実利面、トップ40に常に顔を出すヒットメーカーとしてのミッションである。クオリティ面での充実を図った末、幅広い外部評価を求めるのは自然の理ではある。あるのだけれど。
 『Punch the Clock』『Goodbye Cruel World』という、これまでのバンドのポテンシャルを維持しつつ、思いっきり世間に迎合したアルバムをリリースしたのだけれど、これまでのセールスと大して変わり映えしない成績に終わってしまい、なんとも微妙な心持ちになったCostello。「ヒットの方程式通り作ってみたのに大して変わらないんじゃ、作るんじゃなかった」と意気消沈して向かったのが、彼のバックボーンのひとつである、古き良きアメリカン・カントリーの世界だった。『King of America』自体、もともとAttractionsとConfederates半々でレコーディングするつもりだったのが、案外アメリカ・セッションがノってしまい、結局Attractionsの出番は1曲のみ。新たな可能性を見出したのが契機となった。
 次の『Blood & Chocolate』で仕切り直し、再度Attractionsとのセッションを行なうけど、そりゃあもう険悪なムード満載、演奏にも露骨に出ちゃってる。仲介役として取り成すはずだったNick Loweは相変わらず卓の前で酔っ払ってるし。

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 そんなケンカ別れ的なセッションから数年経って、久し振りに顔を合わせて制作されたのが、この『Brutal Youth』。一旦距離を置いてクールダウンしたおかげもあって、前回ほどの険悪なムードは薄い。ベテラン・バンドとしての円熟味あるバッキングと、全盛期さながらにロック・スタイルのヴォーカルをがなり立てるCostelloとのアンサンブルは、やはり親和性が高い。初期のガムシャラさも前回のヤケクソ感も一緒くたになって、きちんとバンドが一体となったサウンドが生み出されている。
 テクニックの上手い下手ではなく、誰か一人が特別目立っているわけでもない。これまでいろいろあったけど、久し振りに顔を合わせてせーので音を出してみたら、ブランクを感じさせない昔のサウンドができちゃいました、といった感じ。「変わんねぇよなぁお前」「お前もな」とか言いながら。でも、確実にレベルは上がっている。


Brutal Youth
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1. Pony St.
 初っ端からなんだけど、Attractionsではなく、ベースがNick Lowe。難しいフレーズは俺苦手だから、あとはBruce呼べばいいじゃん、という経緯があったのだけど、いやいや充分カッコいいでしょ。ただ単にめんどくさかったんだろうな、全曲やるの。
 オープニングからテンションMAXのストレートなロック・ナンバー。



2. Kinder Murder
 ちょっと時期がずれて、92年のPeteと2人だけのセッション。ベースもCostelloが別録り。さすがに2人だけなので、テンポはミディアムだけど疾走感は充分表現されている。ギターのオブリなんか楽しそうに弾いてるんだろうな、という様子が窺える。あまり評価されてないけど、歌モノのバッキングでのCostelloのギター・プレイはイイ感じでツボを押さえている。引き出しは少ないんだけど、その辺がPrinceと通ずるものがある。

3. 13 Steps Lead Down
 その歌モノと初期パッションとのミクスチュアの結晶がこれ。ここでBruce登場となり、Attractionsが成立する。
 バンドというのは生き物だとよく例えられるけど、そのわかりやすいケース。みんなギアが一段上がったようなプレイが展開されている。それでいて互いの音をきちんと聴いていて、アンサンブルがしっかりしている。
 何度もテイクを重ねたのではない、ちょっとした音合わせだけで完成させてしまう、円熟に達したバンドのポテンシャルが克明に記録されている。
 UK最高59位だけど、まぁそんなもんだよな。



4. This Is Hell
 Attractions、今度はシットリしたバラード。ループ音っぽいドラムの音は、当時Tchad Blakeとのタッグで一風変わった音像を創り出していたMitchell Froomのエンジニアリングによるもの。
 甘いメロディとヴォーカライズで「こりゃ地獄」とささやくCostello、こういった皮肉の効かせ方はやはり英国人なんだなということを再認識させてくれる。

5. Clown Strike
 珍しく4ビートでジャジーな演奏とシカゴ・ブルースっぽいソウルっぽい・テイストの入った、Attractionsではあまりなかったタイプのナンバー。と思ったらNick Loweが入ってた。

6. You Tripped At Every Step
 なんだかすごく安心して聴けてしまうミディアム・スロー。Attractionsによるシンプルな演奏、取り立てて目立つフレーズもない。Costelloも一音一音大切に、しっとり優しいヴォーカライズ。でも、バンドのアンサンブルの妙によって、グイグイ引き込まれてしまう。
 一応、シングルとしてリリースされてはいるけど、ランクインはせず。俺的に、そして年季の入ったファンにとっては、このアルバムの中でも結構上位に位置するのだけれど、まぁ地味だよな、確かに。

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7. Still Too Soon To Know
 またNick Loweかよ。ほとんどソロと言ってもいいような2分程度の小品バラード。アルバム構成的には幕間として、こういった曲も必要だとは思う。もうちょっと長くして『North』あたりに入れてれば…、いやそれでも地味か。

8. 20% Amnesia
 その7.の後なので、こういったパンキッシュなナンバーが映えてくる。なんだこの勢い一発みたいなナンバー。しかもトリオ編成、20%記憶喪失?ギターの音も重い。ドラムはハネまくり、思いつきのような後入れベース。
 でも、ちゃんと楽曲として成立している。これだけメチャクチャな構成なのに、残るのは意味不明な爽快感。「細けぇこたぁいいんだよっ‼」とギター抱えて吠えまくる、汗だくのCostelloの佇まいよ。

9. Sulky Girl
 打ち込みも交えた静かなオープニングから、一体感を増したバンド・サウンドが徐々に展開されてゆく。昔ならもっとアッパー系のポップ・ロックになっていたところを、ここはアダルトなロックで抑え気味。よく聴くと、妙に変な転調があったり構造的にはいびつなのだけど、やはりここがバンドの実力発揮なのか、きちんとドラマティックな変遷を表現している。
 リード・シングルとしてUK22位。

10. London's Brilliant Parade
 こちらもファンの間では人気の高い、この時期にしてはメロウさを強く出したバラード。Costelloもここではヴォーカルに力を入れており、多彩な表現力を披露しているので、ソロと勘違いしそうだけど、やはりAttractionsの鉄壁のリズム・セクションがしっかり土台を支えている。Bruceの歌うようなベース・プレイはビターなテイストがあり、甘くなりがりなところに苦みを効かせている。



11. My Science Fiction Twin
 なので、ここでNick Loweにベース・チェンジしてしまうと、その単調さが目立ってしまう。ストレートなガレージ・ロックなので、あまり小技は必要なさそうなナンバーなのだけど、Pete Thomasが迫真のプレイを見せているだけに、どうにも惜しい。

12. Rocking Horse Road
 Mitchell Froomが切り開いたオルタナ・カントリーのテイストが詰まったバラード。生音を人工的な響きに加工するリズム・セクションは彼の発明ではないけど、それを土着的なアメリカ音楽に導入したのは、彼の功績。
 Costelloのギターも歪みまくって奥に引っ込んだ音像なので、もうちょっと前に出てきてほしいところ。でも、これならNick Loweでもいいな。

13. Just About Glad
 ここでは凡庸なアメリカン・ロック的なアレンジになっているのだけど、この曲に限っては後のライブ・ヴァージョン、バラード・アレンジの方が良い。ていうかCostello、これに限らず自作曲の新解釈として様々なアレンジを試すことが多く、今ではこれもバラードの方が定番となっている。
 ライブで完成形に近づけてゆくのはDylanが行なってる手法であり、シンガー・ソングライターにとって楽曲というのは熟成されてゆくもの。なので、その時点においての完成度というのは、あまり意味を成さない。

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14. All The Rage
 こういったカントリー・タッチになると、まぁNick Loweでいいか、という感じになってくる。彼への要望としては、もっとコーラスに積極的になって、Costelloとのユニゾンを聴かせてほしいところ。”Baby It’s You”聴きたくなっちゃったな。終盤のギャロップ・ギター・ソロがレア。

15. Favourite Hour
 ここまで直球のバラードで締めくくることはないのだけど、何か思うところがあったのだろうか。ほぼSteveのピアノのみ、シンプルなソロ・ヴォーカル。
 懐古的な歌詞は振り返るためじゃなく、前を向くためのものだったはず。はずだったけど、かつての粗暴な若者たちは分別を持ち、相容れぬ一人はバンドを去った。あの時にはもう戻れないのだ。




 ほんとはここでCostello 自身、そしてAttractionsもまた、ここが起点であることを再確認し、互いのソロ・ワークも優先しながら、何年かに一度再結集してアルバム制作に挑むはずだったんじゃないかと思われる。Neil YoungとCrazy Horseのように、長いスパンでの運命共同体的な。
 でも、そううまくはいかないもの。今もInposterとして行動を共にする、キーボードのSteve Nieve、ドラムのPete Thomasとの関係は修復されたものの、ベースのBruce Thomasとの関係は拗れたまま、元に戻ることはなかった。そんなこんなでAttractionsは空中分解、これ以降、彼ら名義での作品はリリースされなくなった。一人欠けてもAttractionsではなくなってしまう-。メンバーみな、そう思ったのだろう。
 なのでCostello 、これ以降、しばらくはロック・スタイルのアルバムをリリースしなくなってしまう。だって、演奏してくれる人がいないんだもん。
 ここではないどこか、帰る場所を求めて再び、Costelloの音楽的冒険が始まることになる。



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Costelloさん、アーバンでトレンディになる - Elvis Costello『Mighty Like a Rose』

51YKeXcJuWL 1991年リリース、Costelloワーナー移籍第2弾のアルバム。メジャーの販売力とCostelloのアーティスト・パワーとの相乗効果によって、US最高55位UK5位という成績は、彼にとってはまぁアベレージはクリアかな?といったところ。
 この頃のCostelloのバック・バンドはRude 5、『King of America』からの付き合いになるJerry ScheffやMarc Ribotらと組むことが多く、アメリカン・トラッドを強く意識したサウンドを志向しており、活動ベースもアメリカを中心としている。
 その辺の影響なのか、当時の写真では結構なモジャヒゲを蓄え、一見するとカントリー・シンガーみたいな風貌となっている。かつてのソリッドで切れ味鋭いパンキッシュなイメージはどこにもない。すっかりメジャー・アーティスト化した大物振りの風格が漂っている。

 ワーナー移籍によってグローバル展開が可能になったほか、この時期Costelloの転機となったのが、Paul McCartneyとのコラボレーションである。
 もともとは2人でコラボ・アルバムを制作する予定で、実際、結構な数の楽曲がレコーディングされたのだけど、大人の事情でもあったのか、それぞれのソロ・アルバムに振り分けられた。まぁPaulと何かやるというのは、本人たちの意思だけではどうにもならないこともあるのだろう。

 そのPaulの影響もあったのか、この時期からCostello、創作技法の変化が作品に表われている。
 これまではぎゅうぎゅう音を詰め込んだ譜割りで饒舌に、英国人特有の皮肉とペーソスを交えた言葉遊び満載の歌詞を量産していたのだけど、ポピュラー界有数のソングライターの創作アプローチを目の当たりにすることによって、心境の変化があったのだろう。小手先の辻褄合わせではなく、真摯に音楽のミューズと対峙しているPaulの姿勢は、これまでにも多くの人々の心をつかみ、そして癒やし、また発奮させてきた。
 その影響下にあったのはCostelloも例外でなく、間近で作業することによって、その影響はさらに顕著になり、彼のスタイルも変化することになる。既存のロックンロールやソウル、またはカントリーなど、これまで手持ちの技法を基本としたソングライティングから、Costello独自の創作スキルを確立した瞬間である。

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 そんなPaulもまた、まだ当時は跳ねっ返りの気性を残していたCostelloに大きく影響を受けている。
 John Lennonを失ってからのPaulは、やる事なす事ケチがつくことが多く、特にCostelloに出会う前の80年代後半になると、もう現役アーティストとしては終わったもの扱いされていた。
 日本で大麻所持により拘留され、ライブ中止になったヤケクソもあって、そろそろ何かと行き詰まっていたWingsを解散、バンド・サウンドの反動なのか、小品集的な地味なソロ・アルバムの目玉として、『Off the Wall』でアゲアゲ状態だったMichael Jacksonとのデュエットを入れてスマッシュ・ヒットしたはいいものの、そのレコーディングの最中に著作権の重要性をMichaelにレクチャーしたことが仇となり、そのMichaelかBeatles時代の楽曲権利を買収されてしまう始末。
 ちょっとルーティンを変えてみようと映画製作に乗り出すものの、かつてのBeatles映画同様の陳腐なプロットが80年代に通用するはずがなく、興行的には失敗。やっぱり音楽しかないんだと思い直し、Johnに匹敵するパートナーとの共同作業を計画するも、Paulと対等にガチでやり合える漢がそんな簡単に見つかるはずもなく、ようやくオファーを取りつけたのが、10ccのGraham Gouldman。それなりのキャリアの持ち主のため、まぁそれなりに滞りなく作業は進行したものの、彼の作風はPaulと似たようなサウンド・アプローチだったため、Johnの時ほどの化学反応は起こらなかった。なので、出来上がったのはこれまで同様、小さくまとまった小粒な小品集、単にこれまでの拡大再生産に終わってしまった。
 80年代の時点ですでにロック・レジェンド扱いされていたPaul、表立って意見できる者などいるわけがない。どうしたって周囲に集まるのはイエスマンばかりになってしまう。

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 そこで登場したのがCostelloである。生粋の英国人らしく辛辣なその物言いは、Paulの方向性に確実に影響を与えた。ちょっと過去の自分の模倣をすれば、すかさず類似点を指摘してくるわ、渾身のメロディが書けたと思って披露すると、「ダサい」の一言で片付けられるわ、これまで久しくダメ出しされた経験を味わってなかったPaulにとって、大きな転機に繋がったんじゃないかと思われる。

 作品自体もそうだけど、CostelloがPaulに対して行なった最大の功績は、ライブでBeatlesナンバーをもっとやってもいいんじゃね?と助言したことに尽きる。
 Wings時代は過去の自分との決別という意味合いで、演奏するのはほんの数曲程度、ファン・サービス的に申し訳程度のものだった。その後は映画のサウンドトラックで大々的にセルフ・カバーしてみたものの、前述したように映画がコケてしまったこともあって、ちょっと自信喪失気味だったんじゃないかと思われる。
 過去に囚われたままだと前には進めない。かといって、それまでの自分がやってきたことが間違いだったのかといえば、そんな事はない。Paulが間違ってるというのなら、ほとんどすべてのアーティストが間違ってるはずだ。
 まぁそこまで熱く語ったわけじゃないけど、取り敢えず軽く背中を押してくれたおかげで、だいぶ楽になったんじゃないかと思う。

 Costelloとの共作も収録されているアルバム『Flower in the Dirt』のツアーでは、ほぼ半分近くがBeatlesナンバーという大盤振る舞い。しかもそれが懐古的な視点ではなく、きちんとアップ・トゥ・デイトなアレンジを施され、これまで失望しまくっていたファンはPaulの前線復帰を喜び、またBeatlesなんて古臭いと思ってた若い層にも好評だった。特にライブ活動から引退していた後期Beatlesナンバー、『Abbey Road』のB面メドレーなんてこれまでライブで聴くことができなかったのだから、Costello様々である。

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 で、今回のCostello、前作『Spike』同様、バラエティに富んだサウンドを展開しているのだけど、あちらが陽とすれば、こちらは陰、少し大人しめのサウンドである。この辺はある程度戦略的なものもあったのだろうけど、2枚で1組と考えたり方がわかりやすいんじゃないかと思う。
 自己紹介的に幅広い手の内を披露した『Spike』に対し、こちらの『Mighty Like a Rose』では、その幅をもう少し掘り下げた、アーティストライクな作りになっている。パンク/ニュー・ウェイヴ特有の初期衝動的な爆発力ではなく、作品のベクトルは熟成された完成度へと向かっている。そのサウンドはMOR的、いわゆる大人のロックだ。
 なので、これまでのロック・ユーザーだけがターゲットではなく、対象はもっと幅広い。レコードではなくCD、コンポーネント・ステレオではなくカー・ステレオで聴くことを想定したサウンドである。Phil CollinsやDire Straitsなど、かつてロックを聴いてたビジネスマンが、昔を思い出して仕事や家族サービスの合い間に聴くような、そんなシチュエーションが想像できるサウンドに、Costelloは挑戦している。

 このまま変に円熟味が増してきちゃって、Rod Stewartのようなロック演歌路線に行ってしまうのかなと、当時はちょっと気に揉んでいた俺。まぁ円熟しきったメンツの揃ったRude 5とのライブでも、Costelloだけは相変わらずツバを飛ばしてがなり立てていたし、しかもこの時期、当時は未発表の『Kojak Variety』セッションでは、デビュー間もない頃を彷彿とさせる、ブチ切れたロックンロールをかましていたのだから、自身の中でバランスを取ってたんじゃないかと思われる。

 Rodもまた、今じゃすっかりアメリカ右翼御用達のバラード・シンガーのイメージが定着してるけど、もともとはRon WoodやJeff Beckと渡り合っていた、根っこはゴリゴリのロックンローラーである。いい意味でCostelloもまた、彼のような二面性を両立させたスタイルを目指してたんじゃないかと思われる。
 それを象徴するエピソードとして、当初はこのアルバム、Attractionsとのセッションも予定に入っていた。ただ、Costelloとメンバー達、特にBruce Thomasとの感情面での折り合いがつかず、彼らが顔をそろえる事はなかった。Costelloにとって、その二面性を表現するために、未だ尖って粗削りな彼らのサウンドが必要だったのだ。
 でも、それにはもう少し時間がかかることになる。


Mighty Like A Rose
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1. The Other Side Of Summer
 Costello版Beach Boys的解釈のナンバーとよく形容されているポップ・ナンバー。シングルとしてUK43位はまぁこんなものとして、US専門チャートでは1位を獲得と、それなりの成果は出ている。



2. Hurry Down Doomsday (The Bugs Are Taking Over)
 なぜかNick Loweがベースで参加。思いっきりセカンド・ラインの泥臭いファンク・リズムのロックなのだけど、どの辺でNickが必要だったのか、よくわからない。ていうか、ファンクよりはカントリー系の人だし、Nickって。
 Jim Keltner(dr)とJames Burton(g)がそろった時点で泥臭くなるのは必須だけど、Marc Ribotによる』変態エフェクトがサウンド全体を引き締め、オーソドックスなスワンプ・ロックからの脱却を果たしている。

3. How To Be Dumb
 『Armed Forces』あたりに入ってても何ら違和感のなさそうな、ポップ要素の強いロック・サウンド。Larry Knechtelのピアノがまた、80年代臭さを彷彿とさせる。
 当初、クレジットを見る前まで、これがPaulとの共作なのかと思ってたのだけど、Costelloの単独作だった。多分、Paulとの共作後に作られたナンバーだと思われる。

4. All Grown Up
 こうしたバラードも、以前はもっと捻ったコード進行で組み立てられていたのだけど、そこをもっと素直な構成で、しかも4分という短さながら、壮大なスケールを感じさせるようになったのは、やはりPaulの影響が大きかったんじゃないかと思われる。
 ギターでこういった曲は作れない。ピアノにしっかり座って作られた曲。

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5. Invasion Hit Parade
 ちょっと演劇がかった、音楽劇の挿入歌的なナンバー。そのせいか、この曲のみCostelloのクレジットがおなじみDeclan Patrick MacManus、本名でのプレイとなっている。

6. Harpies Bizarre
 タイトルを見て思い出すのが、あのA&Mサウンドど直球のソフト・ロック・バンドHarpers Bizarreなのだけど、よく見るとスペルが違っていた。でも、サウンド的にはその辺にインスパイアされたようなソフト・ロック。ハープシコードの響きなんてそのまんま。

7. After The Fall
 ストレートなバラードにスパニッシュなギターを絡めることによって、秘めたる情熱を感じさせる、Costelloファンはピンポイントでやられてしまうキラー・チューン。あまりに他のナンバーのインパクトが強いので埋もれがちだけど、サウンド的にはずっとネガティヴさが漂うのもまた、Costelloの隠された本質である。

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8. Georgie And Her Rival
 こちらも『Armed Forces』っぽいよなぁと思ってしまうポップ・ロック。音を詰め込んだ譜割りに加えて、これでもかと詰め込んだ言葉遊びと語呂優先の歌詞。終盤のコーダがBeatlesっぽい。

9. So Like Candy
 これがPaulとの共作だったことに違和感を覚えたのは、多分俺だけじゃなかったはず。彼とのコラボなら、もっとポップなサウンドをイメージしていたのだけど、こういったバラードは予想外だった。でも何年も経ってから聴いてみると、フックの効いたメロディラインにその痕跡が窺える。
 一応、シングル発売もされているのだけど、目立った実績はなかったらしい。すごくわかりやすくていい曲なのに。



10. Interlude: Couldn't Call It Unexpected No.2

11. Playboy To A Man
 これもPaulとの共作。9.がPaulによるCostello的解釈とすれば、こちらはCostelloがヴァーチャルでBeatlesを演じてみましたよ的なプレイになっている。ただ、そこらのコピー・バンドのような芸のない模倣になるのではなく、きちんとプロのミュージシャン的解釈を入れており、Paulが敬愛するLittle Richardのエッセンスを投入して、独自のハイパー・ロックンロールに仕上げている。
 Paulがいなければできなかったけど、彼抜きでも充分カッコいいと思ってしまうナンバー。

12. Sweet Pear
 ニューオーリンズの老舗ブラス・バンドDirty Dozen Brass Bandとの共演。過度に泥臭くならず、かといってソフィスティケートされ過ぎて骨抜きになるでもなく、ちょうどいい匙加減。この辺がメジャー・サウンドのバランスの絶妙さが窺えるナンバー。マニアック過ぎず、かといってうるさ型も納得させてしまう、俺的にはこのアルバムのベスト・トラック。特に間奏の泣きのギター・ソロは圧巻。
 ほんとならこのスタイルでアルバム1枚残してほしかったけど、当時のCostelloの音楽性はこれだけでは収まらなかった。



13. Broken
 前妻Cait O'Riordanとの共作による、ミステリアスな雰囲気のナンバー。ほぼライブでは演奏されたことがないので、多分Costello自身も忘れちゃってるんじゃないかと思われる。そりゃ前の奥さんと作った曲だもの、あんまりいい感じはしないよな。

14. Couldn't Call It Unexpected No.4
 最後はカントリー・タッチのユルいナンバーでエンディング。『Imperial Bedroom』あたりのテイストに近い、やや後期Beatles的なホーンやチェンバレも入っており、どことなくホッコリしたムードで聴いてしまう。
 Costelloの場合、エンディングはあまり大げさにならず、どこかハッピー・エンド的に締めることが多い。性格だよね、これって。




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最強のバンド、Attractionsとの出会い - Elvis Costello 『This Year's Model』

folder Huey Lewis & The Newsの前身バンドCloverを主に起用してレコーディングされたデビューアルバム『My Aim is True』、完パケした時点でのCostelloには、まだライブを行なうためのバンドがなかったため、ちょっと小休止するヒマもなく、早速バンド編成に動かなければならなかった。
 いま現在もそうだけど、ソロのパンク・ミュージシャンというのは、ごく少数派である。通常ミュージシャンがデビューするにあたっては、ライブ・パフォーマンスが注目されて、口コミ効果からレコード会社が目をつけ、そこからデビューに向かっての話が進むものだけど、Costelloの場合、方々に送りまくったデモ・テープが評価されてStiffレーベルに引っかかった、という経緯なので、ちょっと事情が違ってくる。
 一応デビュー前にFlip Cityというバンドで活動しているのだけど、契約できたのはCostelloのみ。よほど才能が突出していたのか、それとも他のメンバーがよっぽど使い物にならなかったのか。多分両方だと思う。

 で、早速結成されたのが、ご存知Attractions。ヴォーカル兼ギターのCostelloを筆頭として、その後も長く帯同することになるキーボード担当のSteve Nieve、そしてリズム・セクションはBruce Thomas(B)とPete Thomas(D)、ちなみに同じThomas姓だけど、縁戚関係はなし。

 Attractionsが結成された1977 年のライブ日程を見てみると、それはもうメチャメチャな過密スケジュール。7月イギリス国内からスタートして、移動日も含めれば、ほぼ休みなしで、あちこちの小ホールをドサ回りしている。当時のプロモーション手段といえば、ラジオかライブくらいしかなかったので、どの新人アーティストも似たような状況だったのだけど、特に彼らは急ごしらえのバンドだったため、とにかく現場で音を出してサウンドを確立させる必要もあった。
 取り敢えずイギリス国内をひと通り廻りきった後、11月からはアメリカへ渡り、ほぼ年末までこちらもドサ回り、年が明けて帰国してからも、ほぼ同じペースのまま、7月までほぼ100本以上のステージをこなしている。それだけ需要もあったのだから、当時の彼らの勢いが窺える。
 
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 1970年代中盤のパンク・ムーヴメントというのは、今に続くオルタナティヴ系アーティストの礎となった部分もあるけど、反面、時代の徒花的に、一瞬強烈な光を放ったと思ったら、すぐに消滅してしまう連中も多かった。シングル1枚制作できればまだいい方で、多くのバンドはライブハウスに出演できるかできないかの時点で足踏みしてしまうのがほとんどだった。もしアルバム・リリースまで漕ぎ着けたとしても、大抵のバンドはそこでネタ切れしてしまうか、仲違いの末解散してしまうなど、結果的に伝説になってしまうバンドが多かった。
 Sex PistolsだってPop Groupだって、過激なファッションやパフォーマンスを競ったバンドほど、その傾向が強かった。彼らにとって音楽とは、青春時代の初期衝動か、移り気な時代のトレンド的なものでしかなく、継続してゆくものではなかった。

 そのパンク以前、シンプルなロックンロールへの回帰という点において、根っこの部分は相当似ているパブ・ロック時代から活動していたアーティストは、総じて寿命は長い。
 シンプルなロックンロールからスタートしたことは同じながら、持ち前のアカデミックな音楽性によって、ジャンルを超えた活動を展開していったJoe Jackson、いびつな変拍子ギター・ポップでデビューしながらも、徐々に神経症的箱庭ポップに音楽性を変容させていったXTCなど、時代によって形を変えながら、未だに活動している人も多い。
 やはりファッションだけでは、早々にネタが尽きてしまい、それほど長くは続かないのだ。

 で、Costelloの話。
 そんなハード・スケジュールの中、ツアーの合間にレコーディングされたのが、このセカンド・アルバム。リリースが決定したはいいけど、何しろ詰め込むだけ詰め込んだツアー・スケジュールのため、まともにレコーディングできる時間がない。なので、年末年始のツアーの空白期間を利用して、実質10日間くらいで一気に録音された。
 普通のアーティストなら楽曲制作の時間もなく、途方に暮れてしまうところだけど、この頃から多作だったCostello、デビューしてからもほんの空いた時間を利用してのデモ・テープ作りは、もはや生活の一部となっており、素材は山ほどあった。しかもライブでは惜しげもなく未発表曲もレパートリーに入れていたので、ほとんどの曲は既にバンドでアレンジされていた。
 『My Aim is True』のような、スタジオ・ミュージシャン中心によるレコーディングではなく、長い間寝食を共にしたメンツでの作業のため、意思疎通もスムーズ、アンサンブルもしっかり練られた状態である。あとはライブの勢いをそのまま真空パックするように、基本ワンテイク、一気呵成にレコーディングされた。

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 その『My Aim is True』、決して悪い人ではないのだけど、はっきり言って呑んだくれのポップ親父Nick Loweがプロデュースということもあって、比較的メロディアスでキャッチーな、口ずさみやすいナンバーが揃っている。
 それに対し、この『This Year’s Model』、こちらもNickがプロデュースなのだけど、バンドでのヘッド・アレンジが前回よりも捗ったため、更にやることもなく、ブースで呑んだくれていたらしい。なので、Nickというよりはバンドの意向が色濃く反映されている。いわゆるキラー・チューンの割合は下がっているのだけど、甘さは抑えめ、サウンドの一体感が強く、アルバム1枚まるごとが一つのショウのような構成になっている。
 前作ではヴォーカル&インストゥルメンタルといった感じのバンド構成ゆえ、ちょっと遠慮がちだったCostelloも、ここでは思う存分、遠慮なくギターを弾きまくり掻き鳴らしまくり、加えて吠えまくっている。パンク/ニュー・ウェイヴ的サウンドということなら、断然こっちの方がパワーがある。

 デビュー2作目にして、最強のバック・バンドを従えたCostello、チャート的にもかなりの健闘ぶりで、UK最高4位US最高30位という、前作に劣らないセールスを記録した。
 で、このアルバムを引っさげて初来日公演という運びになるのだけど、これがまたお騒がせもの。チケットの売れ行きが悪いことに業を煮やしたCostello、どうにか目立って注目を浴びようと、なぜかメンバー全員、日本の学生服を着て(多分Costelloに強要されて)トラックの荷台に乗り、都内でゲリラ・ライブを行なった、というのが、今でも語り継がれるエピソードである。当然その後、道交法でパクられてしまうのだけど、まぁ三面記事程度には話題になったため、ライブは連日満員、おかげでバンドもノリノリだったらしい。

 結果的にどうにか丸く収まったのだけど、おかげで日本では長い間、Elvis Costelloといえば、「何をしでかすかわからないやつ」というレッテルが貼られることになる。
 そしてそういった扱いは、”She”の大ヒットまで、長らく続くことになる。


This Year's Model (Dig) (Spkg)
Elvis Costello
Hip-O Records (2007-05-01)
売り上げランキング: 66,952




1. No Action
 初っ端から疾走感あふれるナンバー。とにかく勢い一発、あっという間の2分間。出だしの囁くようなCostelloのヴォーカルから始まり、静かなオープニングかと思ったら、すぐにバンドはフル・スロットル、ギターはギャンギャン掻き鳴らしまくり、ドラムはドコドコ。ライブではもうちょっとキーボードが目立っているのだけど、ここでは断然Costelloがリードしている。
 何しろコード3つしか使ってないのに、これだけ表情豊かなサウンド、今のCostelloでは成しえない、シンプルかつキャッチー、永遠のパンク・チューン。



2. This Year's Girl
 少しポップ寄りのミドル・テンポ・チューン。タイトル曲だけあって、親しみやすいメロディなのだけど、Bメロが弱いせいか、地味に聴こえてしまう。ベースがウネウネ動いているのが、単純なパンク・バンドとは一線を画している。この頃のBruceはやる気が漲っている。アウトロのベース・ソロなんて、なかなか凝ってる。

3. The Beat
 初期のライブでは定番だった、Steveの見せ場。ライブでのキーボード・プレイはもっとアクティヴで、ファンキーなものだったけど、ここではロック・テイストの濃い、ミドル・テンポに仕上がっている。

4. Pump It Up
 このアルバムに共通してだけど、アップ・テンポのナンバーはどれも傑作。中でも俺が一番最初に聴いたCostelloの曲がこれ。確かNHK-FMで、氷室京介がゲストDJをやっていて、お気に入りの曲として、これをかけた。その時の衝撃は、今もって忘れずにいるし、なので、どうにも氷室京介に対しては悪い感情を持てない。
 バンドの一体感、生み出すグルーヴというのは、こういったのを指すんじゃないかと、今でも俺の中の基準の一つである。わかりやすくキャッチーでありながら、どす黒い冒頭のリフ、ちょっと上ずったCostelloのヴォーカル、中盤のドラム・ブレイクからCostelloのHey!!の掛け声によって再び始まる演奏…。言いたいことがいっぱいあってたまらないのが、この曲。UK最高24位にチャート・イン。もっと上に行ったっていいと思う。
 Status Quoがカバーしてるのはまだわかるけど、なぜかDeacon Blueまでがライブでカバーを披露していたというのは、ちょっとビックリ。想像つかないよな。



5. Little Triggers
 ちょっと切ないアメリカン・ロックの香り。この辺はもしかして、Nickあたりが強引に入れるようダダをこねたのかもしれない。ライブの緩急をつけるという意味では、こういったセンチメンタルな曲もアリ。俺も昔、この曲は好きだった。でも、いま聴いてみると、これって”Alison”の二番煎じだよな、きっと。

6. You Belong To Me
 これもライブでよく演奏されており、今でも時折セットリストに入っているので、多分お気に入りなんじゃないかと思う。メロディ主体のちょっと甘めのメロディだけど、演奏が硬質なビートを利かせているので、アルバムから浮いてはいない。

7. Hand In Hand
 サイケな逆回転エコーから始まるオープニングが、何やら不穏な空気を感じさせるけど、Costelloのヴォーカルが入れば、それは見事なパワー・ポップのお手本。
 中盤のドラム・パターンを聴けばわかるように、Phil Spectorまではいかないけど、ちょっとレコーディングでのお遊びを試してみた感じ。なので、曲も口ずさみやすく、親しみやすい。でもAttractionsの武骨なバッキングによって、甘さはそれほど感じない。
 
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8. (I Don't Want To Go To) Chelsea
 歯切れが良すぎて三味線のようにも聴こえてしまう、珍しくCostelloのギター・リフから始まるナンバー。ヴォーカル兼務のため、どうしてもストローク中心のプレイになってしまうところを、なんか急に弾きたくなってしまったのだろう。
 この頃から今に至るベテラン期まで、この人の場合、エア・ギターではなく、とにかく弾きたがるというのは、いつも感心してしまう事柄。特にこのナンバー、今でも必殺キラー・チューンとして、時々演奏してるくらいだから、よほど気に入っているのだろう。それとも単にギターを弾きたいだけなのか。UK最高16位まで上昇したシングル。

9. Lip Service
 何だかメロディがタイトル・チューンと似てるような気もするけど、まぁそこはスルーで。ダブル・ヴォーカルも入れてる分だけ音圧があり、アレンジも少し凝っている。
こういったアレンジの幅はやはり、英国王立音楽大学でクラシックを学んでいたSteveの貢献が大きいはず。なまじインテリゆえ、こういった肉体性の強い音楽に憧れを感じてしまうのだろう。

10. Living In Paradise
 ちょっとレゲエも入った、箸休め的なポップ・ナンバー。シングルでも良かったんじゃないかと思うのだけど、本人的にはそれほど思い入れがないのか、ライブでも初期以外はほとんどプレイしていない。

11. Lipstick Vogue
 性急感の強いシャッフル・ビートを難なくこなすPete。ここはとにかくビートを聴いてほしいナンバー。CostelloもBPMの速さに着いてくのが精いっぱい。
 結構難しい曲のはずなのだけど、もはや手馴れてもいるのだろう、レパートリーの中ではライブ・パフォーマンスが多い方に該当する。

12. Night Rally
 初版LPでは、これがラスト・ナンバー。ていうか、インパクトの強い曲に挟まれていたおかげで、存在自体を忘れていた曲でもある。もちろんアベレージは軽くクリアしているのだけど、他の曲が良すぎるのだ。




 で、このアルバムがリリースされた頃にライブ・レコーディングされたのが、『Live At The El Mocambo』。当初は限定盤、そして次に初期アルバム3枚とのBOXセットでリリースされた。俺が最初に買ったのが、このBOXセットで、3枚とも持っていたのに、これだけが欲しくて仕方なく購入したことを覚えている。
『My Aim is True』『This Year’s Model』の2枚からセレクトされた曲で構成されているし、今では普通に単品販売されているので、興味のある人はゼヒ。スタジオ・ヴァージョンとはまた違った、初期Attractionsの無闇なパワーあふれるパフォーマンスが生々しく刻まれている。



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北海道の中途半端な田舎に住む、そろそろアラフィフ男。ほぼ週1のペースで音楽ブログ更新中。節操ない聴き方と思われてるけど、自分の中では一貫してるつもり。 最近は蔵書の整理がてら、古い本を再読中。ジョン・アーヴィングから始まって、フィッツジェラルドやゾラ、モームなど、いわゆる古典の復習中。いつになったら終わることやら。新刊読めねぇや。
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