folder で、前回のMighty Mocambosとキャラはかぶるのだけど、こちらもどストレートの人力ファンク、「60~70年代にサイケの狭間でひっそりリリースされたまま埋もれてしまったレア・グルーヴの裏名盤」と紹介されたらつい信じちゃいそうな人たち、Sharon Jones & The Dap-Kingsのご紹介。

 この手のジャンル、決して今の時代のメインストリートを歩くサウンドでもないし、実際大きなセールスは見込めないのだけど、細く長く続けてゆくのなら手堅い部分もある。これは日本の演歌と被る点が多いのだけど、いわゆる本来の意味のプログレッシヴを求められる音楽ではない。音楽シーンを揺るがす革新的なサウンドには目もくれず、ワンパターンでありながらひたすら自分たちの音楽フォーマットを崩さずに邁進する、ということが求められる。ボカロやオートチューンなんてもっての外だ。

 ディープ・ファンク/ジャズ・ファンクという、ポピュラー・シーンにおいては比較的ニッチだと思われるこれらのジャンル、CDやレコードなど物理メディア販売においては難しい面もあるけど、あくまで半径100km圏内という生活圏において、ライブハウス中心の活動なら、案外継続は難しいことではない。世界中、どの地域においてもそれなりの需要はあるジャンルなので、高望みさえしなければ、それなりのオファーはある。
 ただ、オファーが切れないのと収益性とでは、また別の問題である。「ファンク・バンドあるある」ばかりになってしまうけど、大抵は大所帯のバンドが多いため、わずかなギャラを均等割りすると、経費だけで足が出てしまう場合が多い。とてもバンド一本だけで食っていけるジャンルではないのだ。
 だからこそ、彼らは大抵の場合、喰っていける本業と掛け持ちか別バンドとの掛け持ちが、他ジャンルと比べてとても多い。大抵の売れないバンドはみなそうなのだけど、特にファンク・バンドはその傾向が強い。あくまで趣味性の強いバンド・コンセプトが多いため、どうしてもサウンドはマニアックになりがちである。だって、別に売れなくたっていいんだもん。
  
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 彼らの所属レーベルDaptone、NYを拠点とした小ぢんまりとしたレコード会社なのだけど、所属アーティストがほぼ年季の入ったジャズ・ファンク・ソウルのどれかの順列組合せみたいなアーティストばかり、昔ながらの伝統芸能的サウンドを供給し続けている。EDM?何それ?といった感じの人たちばかりである。
 多分経営的には楽ではないはずだけど、それでもレーベル・コンセプトが徹底していることから、その手のファンにとっての信頼は厚く、継続的なリリースを維持できるだけの収益は確保している。ニッチなマーケットではあるけれど、全世界を対象としているだけあって、細かな売り上げをかき集めると、案外バカにならないのだろう。

 で、Dap-Kings。
 「ファンク・バンドあるある」として、ライブ活動中心ゆえ音源リリースは少ないことが常なのだけど、彼らの場合、比較的恵まれているのか潜在的支持が高いのか、アルバム→ツアー→アルバムのループがスムーズに回っている。決して派手なサウンドでもないし、Daptoneというインディペンデントなレコード会社ゆえ、特別プロモーションが上手いわけでもない。どうひいき目に見たって、爆発的に売れる要素はない。
 彼らの名前を最も広く知らしめたのが、あのAmy Winehouseとのコラボ。セカンド・アルバム『Back To Black』では、ほぼ半数の曲でバックを務め、しかもその中には、あの大ヒット曲"Rehab" と"You Know I'm No Good"が含まれている。アルバムに伴うツアーにも同行し、おかげでバンドの財政状況は大きく好転した。まさにAmy様々である。

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 そういった経緯もあって、他のバンドと比べて運営は非常にスムーズである。バンドの継続において経済的な問題は欠かせないのだ。
 おかげでサウンドは過剰に売れ線を意識することもなく、ひたすらオールド・スタイルのレディー・ファンクを貫いている。変に大衆に媚びた感じもなく、またDaptoneというレーベルのブランド・イメージの保持にもなっているため、それがまたうるさ型のリスナーを呼び込むという、いい感じの循環構造が出来上がっている。

 一昨年、胆管がんの宣告を受け、結構シャレにならない体調不良に追い込まれたSharon。ニュー・アルバムのリリースはおろか、一時は命まで危ぶまれたが、どうやら持ち直してライブ・シーンに復帰した。何しろ御年58歳、ソウル・シンガーとしてはまだまだ現役だけど、お体は大事にね。


Dap Dippin
Dap Dippin
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Sharon Jones & The Dap-Kings
Daptone (2002-05-14)
売り上げランキング: 188,529




1. Introduction
 Dap-Kingsによるオープニング・インスト。臨場感あふれるソウル・レビューを模したアナウンスがまた、JBっぽさをいい感じでリスペクトしている。

2. Got A Thing On My Mind
 Daptoneレーベルにおいても記念すべき第一弾45回転シングルでもある、この曲が実質アルバムのオープニング。初っ端のドラム・ロールが迫力あって、レーベル・カラーを象徴している。ディープ・ファンクのコンピレーションではもはや定番曲となっており、このまま行けば普通にファンク・クラシックスとして歴史に残るだろう。そんな永遠の名曲。
 


3. What Have You Done For Me Lately?
 こちらもシングル・リリースされたナンバー。ミドル・テンポのドッシリ腰の据わったヴォーカルを聴かせる。一聴すると音がダンゴ状にひとかたまりになって分離が悪いのだけど、これこそがDaptone、モノラルで聴くことを前提にミックスしているので、どうしてもこういった音になる。すべての音が混然一体となった迫力のサウンドを堪能してほしい。

4. The Dap Dip
 ベースがファンキー過ぎる、こちらもミドル・テンポのドロドロ・ファンク。ここまで時代錯誤だと、ほんともうひと回りして新しくさえ感じてしまう。ていうか、時代を超越した音である。30年前もクラブではこういったサウンドに乗って腰を振っていただろうし、多分これから30年後も同じような状況は続くだろう。ほんとDNAにすでに刷り込まれてるんじゃないかとまで思えてしまう、神経に直接反応するファンク・ミュージック。

5. Give Me A Chance
 今度はギターの音がドロッドロ。なんだこれ。ほんとワン・アイディア、ワン・コードで延々続く、シンプルな構造のサウンドなのだけど、考えてみればファンクではこれが結構当たり前である。体に直接作用する音楽なのだから、余計な音はいらない。非常に合理的なサウンドである。しっかし時代読めねぇよな、これ。

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6. Cut That Line
 日本人なら結構な割合で誰でも聴いたことのある、あの”Tighten Up”のオマージュによるオープニング。ていうか、こちらも最初から最後まで、ほぼこのフレーズが続き、そこにSharonがメロディを乗せる、というスタイル。間奏のオルガンがもファンキーそのもの。

7. Got To Be The Way It Is
 こちらもシングル・ナンバー。やっぱりワン・コード・ファンク。これもよくコンピレーションやミックス・テープに収録されているので、雑食系の人なら聴いたことがあるかもしれない。
 


8. Make It Good To Me
 しっとりとした南部系のソウル・バラード。こういった曲調をソウル・シンガーが歌うと、ほとんどすべてがAretha Franklinのフォロワーっぽくなってしまい、非常に分が悪いのだけど、一歩も彼女に引けを取らないSharonがここにいる。

9. Ain't It Hard
 ソリッドなファンク・ナンバー。少しトーンを落としてるところがMarva Whitneyっぽく聴こえる。オーソドックスながら変則的なリズムに、正統ファンク・バンドとしてのこだわりが感じられる。

10. Pick It Up, Lay It In The Cut
 こちらもシングル・カット。アフロ/ラテン・ビートの入ったリズムに乗って、ベースもドラムもギターも、そしてブラスさえも混然一体となったファンク・サウンドの大洪水。しかし主役はやはりSharon、このサウンドに負けないパワーが、バンド全体を圧倒させている。
 


11. Casella Walk
 ラストはDap-Kingsによるインスト・ファンク。ゴリゴリのファンク・ギターなのに、不思議なくらいブルース色を感じさせないのは、ジャズ・テイストも入ったバンドの特色なのだろうけど、そこがアメリカだけに留まらないファン層の拡大に寄与しているのだろう。




 全11曲でトータル・タイム38分。ほんと前時代的にコンパクトにまとめられたアルバム。インプロビゼーションを主体としたバンドならもっと長尺になるのだろうけど、基本はソウル・レビューを前提としたヴォーカル・メインなので、このくらいのサイズが適しているのだろう。


Daptone Gold (Dig)
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Various Artists
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