米米クラブ

好きなアルバムを自分勝手にダラダラ語る、そういったゆるいコンセプトのブログです。

「くっだらねぇ」のその先は。 - 米米クラブ 『Go Funk』

Folder 米米クラブというユニットは、実質フロントマンであるカールスモーキー石井のインパクトが強いせいもあって、一般的に彼のワンマン・バンドに見られがちである。実際のところ彼はリーダーではなく、単に表立っためんどくさい事柄を一手に引き受けているだけである。こいつなら、ちょっとおだててやれば汚れ仕事も引き受けてくれるだろう、といった体で。

 出自こそ今でいうパリピ=パーティ・バンド的なモノの発展形が米米結成のベースとなっているのだけど、ライブで頭角を現してきたこともあって演奏チームのスキルが高いことは、昔から語り継がれている。ディレクターやレコード会社からの介入や要請は多かったけれど、デビュー・アルバムはほぼ演奏差し替えもなく、それは解散するまで一貫して自分たちでサウンド・メイキングを行なっていた。ポッと出の新人で、しかも当時のソニーにおいてでは、なかなかなし得ないことである。
 もともと進駐軍相手のジャズ・バンドが母体だったクレイジー・キャッツからの例に漏れず、パロディやリズムネタをレパートリーとするコミック・バンドというスタイルは、もともとの音楽的素養がなければ成立しないものだ。有象無象と魑魅魍魎が織りなす80年代初頭の混迷したライブハウス・シーンという現場で培った、どんな有事でも動じない鉄壁のアンサンブルは、基盤のサウンドをしっかり構築し、おかげでヴォーカル陣を奔放に遊ばせることができる空間を提供した。
 あくまで「笑わせる」というスタンスであり、「笑われる」立場ではない。まともな演奏ができずに笑いを取るだけじゃ、客にボコボコにもされかねない時代だったのだ。

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 時は流れ、「じゃあ逆にぃ、演奏するフリだけやって、笑われるだけでもいいんじゃね?」というコペルニクス的発想の転換を実践したのが、金爆というバンドである。ある意味、彼らのコンセプトは潔い。でも、バンドなのかな?まぁ既存スタイルのアンチという見解だと、彼らの姿勢はパンクだな。

 職人気質的にグルーヴ感あふれるインスト・パートをベースに、伝統的なJBスタイルのステージングを披露するジェームス小野田と、典型的な昭和の二の線、バブルそのものといった軽薄ジゴロ的な狂言回しの石井、ステージに華を添えるどころか自ら幕間コントにも参加して積極的に前に出てゆくシュークリームシュの三つ巴が、ステージ上で展開されていた。文章で読んでも伝わってしまうくらい、異様な空間である。いや実際に見たらもっとエグいんだから。
 ドロドロのファンクとレトロ歌謡とムード・コーラスとニューロマ・ディスコが波状攻撃のようにステージを飲み込み、そんなグルーヴィーな空間を引き裂くかのように延々行なわれる「くっだたねぇ寸劇」との猛烈なギャップは、先物買いを求めて暗躍する各レコード会社ディレクターらの注目を集めた。
 アングラ・シーンでの流動的な活動を経てソニーと契約、特にヴォーカル・パートのキャラの強さはビジュアル的にも映え、それが当時のソニー戦略ともシンクロして大々的にプッシュされることになる。なるのだけれど。

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 解散前の米米は、初期の段階からライブとレコーディングとで、制作プロセスをきっちり分けていた。芸術肌の石井がパフォーマンス・アーティストとしての側面を見せていたのに倣って、ライブ活動に重点を置いていた。「ライブを演るために曲を作り、記録としてレコーディングする」というスタイルは、当時でも今でも日本ではあまり見当たらないスタイルである。強いて挙げれば「夜会」を続けている中島みゆきくらいか。
 ライブでは、舞台美術やコスチュームに潤沢な予算をかけ、同時代では抜きん出たエンタテインメント・ショウを構築した。対してレコードでは、ソニー戦略に則った「お行儀の良い」ライトなシティ・ポップを多めに収録する、というのが長らく彼らのダブル・スタンダードだった。初期のニューロマ・シティ・ポップ路線は耳触りも良くてラジオでもオンエアされやすく、実際、この時期の彼らを懐かしむファンも多い。

 本来なら、レコードでは最大公約数的にファン獲得率の多いポップ路線で収益を支え、その利潤をライブ制作に投資する、というのが理想のスタイルだったのだろうけど、そうはうまくいかないものである。
 石井と小野田のインパクトの強さによって、知名度こそ上がってはいたけれど、セールス的には大きなブレイクもなく、微妙な中堅どころに甘んずる期間が長かった。80年代ソニーの方針に則って、イヤイヤながらも売れ線スタイルに合わせているはずなのに、ファンのニーズはどうもそこにはなさそうである。
 ていうか、バンドとソニー双方のベクトルが合わず、それぞれあさっての方を向いていたことが、彼らの本格的なブレイクを遅らせた要因である。

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 1987年にシングル・リリースされた初期シティ・ポップ期の代表曲のひとつ「paradise」は、大ブレイク時にリリースされたリメイク・ベスト・アルバム『K2C』に収録された際、アレンジも歌詞も大幅に改変が加えられている。初回シングルでは、「元気で明るくてオシャレな」80年代ソニーのポリシーに則った、ライトなラブ・ソング的なシーン設定だったのが、『K2C』ヴァージョンでは、シャレオツ感こそグレードアップしているけど、石井演ずる主人公は女ったらしのジゴロ、世界を股にかけて縦横無尽に女のケツを追いかけ回す軽薄野郎に豹変している。
 シンセ中心に組み立てられた前者と比べ、ホーン・セクションを前面に出したバンド・アンサンブルはゴージャス化しており、口八丁手八丁の石井のチャラさが引き立っている。あ、これって地か。

 本来のコンセプトとして、爽やかでポップなメロディとライトなサウンドに乗せて、サウンドこそ既成のシティ・ポップだけど、そこにくっだらねぇ歌詞を乗せて自己陶酔しながら歌い上げる、というのが初期米米の真骨頂だった。ステージにおいて、そういったスタイルはほぼ一貫して変わらなかったのだけど、ディレクター側のジャッジによって、サウンドと調和した無難な歌詞に改変せざるを得なかった、というのが当時の彼らの置かれた状況である。で、できあがったのは、単なる無難なシティ・ポップ。これならオメガトライブと変わんないし。

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 セールス的にはまだ発展途上だった初期米米、ヒット・シングルを出すために、耳触りの良い万人向けのシティ・ポップ楽曲を優先的にフィーチャーしてゆくという戦略は、ある意味間違いではない。しかし、そういったライト路線というのは、あくまで彼らの様々な側面のほんの一部でしかなく、大勢を占めるのは盤石のバンド・アンサンブルに支えられたおバカな世界だ。
 軽めのニューロマ風味ポップやミディアム・バラードを絡めてこそ、ライブにおいても落差としてのおちゃらけナンバーも活きてくるし、セットリスト的にも構成のメリハリがつく。どっちかひとつには絞れないバンドなのだ。
 そのバランス均衡の配分、方向性の迷いこそが、彼らが長らく中途半端なメジャー、永遠の6番打者に甘んじていた要因でもある。

 「Paradise」「sûre danse」に代表されるメロディ・タイプの楽曲の対極として、「ホテルくちびる」や「東京 Bay Side Club」などのノベルティ・タイプ楽曲が位置するわけだけど、その後者タイプの曲のみを集めたアルバムも存在する。主にライブのみでプレイされていた楽曲を中心としてしており、コアなファンにとっては待望の音源化!!といったところなのだけど、まぁ正直、何度も聴き返すようなモノではない。
 本人たちも半ば冗談で、「君がいるだけで」がバカ売れしてしまったため、その勢いでリリースしたようなものであって、売る気なんてサラサラないのがミエミエだった。ライト・ユーザーにとっては拷問のようなアルバムである。内輪受けのジョークや音遊びがアルバム1枚延々と続くんだから。ただ、そんなコンセプトのアルバムを2枚(『米米CLUB』『SORRY MUSIC ENTERTAINMENT』)もリリースできてしまうのが、当時の彼らのセールスの勢いであり、またユニットとしてのレパートリーの広さでもある。

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 ほぼメロディ・タイプでまとめた小品集的な3枚目のアルバム『Komeguny』が中途半端なセールスで終わったため、米米クラブは大幅な路線変更を敢行する。
 ブレイクを見込んでソニー側の意向に沿って、ライトなシティ・ポップてんこ盛りで売れ線を目指したはずなのに、従来セールスと大して変わらなかったんだから、バンド側としては方向性が見えなくなってしまう。まぁ既定のソニー路線フォーマットには収まる器ではなかった、というところなのだけど。
 -もともとライブで地力をつけ、奇矯なパフォーマンスでネームバリューを上げてきたのだから、ライブの進行通り、テッペイちゃんばっかりフィーチャーするんじゃなくて、ジェームスやシュークリ-ムシュ、演奏陣にも大きくスポットを当てた方がいいんじゃね?
 「石井+バンド」じゃなくって、全部飲み込んでこその「米米クラブ」なんだし。

 そんなライブの方法論をそのまんまレコーディングにスライドして、さらにコラージュしてヴァージョン・アップしてできあがったのが、「KOME KOME WAR」である。どうでもいい単語の羅列で構成された歌詞は、ほんと適当。でも、そんな言葉がチャラさ全開のテッペイちゃんから発せられると、スケコマシの戯言的な説得力を生む。
 バブルの象徴とも称されるダボダボなソフトスーツでキメ、汗だくになりながらスタイリッシュを演じるテッペイちゃん。P-Funkの亜流後継者として、奇矯なメイクとコスチュームで狂言回し的に、でもここぞという時には、ファンク・マナーに則ったグルーヴィーなヴォーカルを披露するジェームス。単なるステージの華に収まらず、積極的にコントに寸劇に、ついでにコーラスも聴かせるシュークリームシュ。そして、そんなバラバラのベクトルを持つ三者三様をひとつにまとめてしまう、リーダー兼バンマスBonによって支えられた、多ジャンルから寄り集まったバンド・アンサンブル。

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 これはライブ、これはレコーディングとキッチリ分けるのではなく、ライブのセットリストを想定して、それぞれのキャラを引き立てた曲を書き、ステージの流れ的に並べてみたらアラ不思議、これまでにないくらい生き生きした「米米クラブ」というオリジナリティが確立されちゃった、という次第。
 最初から、答えは彼らの手のうちにあった。でも、それを具現化できるほどのスキルが足りなかったこと、ソニー主導の方針を覆すほどの根拠を説明しきれなかったことが、彼らのブレイクを遅らせた要因である。


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1. Introduction
 
2. 美熱少年
 JBのソウル・レビューのようなオープニング。ライブ演出と同じく、石井によるMCのあとに登場するのは、もちろんGrand Funk Master ジェームス小野田。ここでの主役は、小野田とホーン・セクションのビッグ・ホーンズ・ビー。スカパラが登場するまでは、日本のポップ・シーンにおけるホーン・セクションの代表は彼が担っていた。
 この頃はほぼ日本では紹介されてなかったけど、この猥雑さ・ゴチャマゼ感はまさしくParliament/Funkadelic。
 ちなみにタイトルは、アルバム・リリースの少し前に発刊された、作詞家松本隆の半自叙伝小説『微熱少年』からインスパイアされたもの。でも、松本の歌詞世界に漂う儚さとか繊細さは微塵もなく、単にゴロが良いから採用したようなもの。松本ファンが勘違いしてこれを聴くと、かなり失望すると思われる。

3. KOME KOME WAR
 アルバムより先行リリースされた、彼らにとって7枚目のシングルであり、オリコン最高5位にチャートイン、この時点では過去最高の売り上げと共に爆発的な知名度を広げるきっかけとなった、彼らにとってのターニング・ポイント。
 隠れ名曲として「浪漫飛行」が一部で取り上げられたり、ディスコで「Shake Hip!」がヘビロテされたりなど、10~20代への認知はすでに広まっていた彼らだったけど、お茶の間レベルにまで顔が知られるようになったのは、やはりあのインパクトの強いPVがきっかけである。恐ろしく細切れのカットアップはサウンドとシンクロするよう、緻密に計算されており、思いっきり手間ヒマかけて一生懸命、くっだらねぇことをやっている。

 オー グーテンダーク アトランダムショー
 ロック インデリジェンス アメーバ
 War ビューティフォー

 …ダメだ、あんまりにくだらな過ぎて、書き起こす気にもなれん。しかし、このくだらなさがPVとセットでうまくマッチングして、サブリミナル的な中毒性を引き起こす。ある意味、80年代ソニーの生ぬるい空気を粉砕するほどの破壊力を持つ楽曲でもある。



4. SEXY POWER
 一転して、初期シティポップ路線の楽曲なのだけど、これまでよりサビメロが引き立っているのはリズム面の強化から来るもの。シーケンスに丸投げしない手作りバンド・サウンドは、チャラさ全開で腰の定まらないテッペイちゃんをしっかり繋ぎとめ、ボトムの効いたナンバーに仕上げている。

5. BEE BE BEAT
 ここでのリードはバンド主導で、ヴォーカルはほとんど添え物。スカをベースにちょっぴりテンポの速いカリプソ、一瞬ヨーデルも飛び出したりなど、ライブ仕様の楽曲。これまでならこういったタイプは真っ先にオミットされていたのだけど、変にスタジオ・ヴァージョンにはせず、ほぼライブ・アレンジそのまんまでやり切っちゃうのは、バンドとしての自信だろう。

6. あ! あぶない!
 ギター・カッティングとホーン・セクションがメインのため、純正ファンクと思われがちだけど、ドラムは案外8ビートをもとに叩いており、その辺のフェイク加減こそが、米米が唯一無二のおちゃらけファンク・バンドとして君臨する所以だろう。まんまJBフォロワーの小野田のヴォーカル、太鼓持ちの如くカウンターをぶち込んでくるテッペイちゃんとの掛け合いは、笑いを超えた真剣勝負である。

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7. OH! 米 GOD!
 引き続き、ほぼ笑いもフェイクもない、純正凝縮インスト・ファンク。あまりにも濃縮されすぎてしまったため、ほんのわずか30秒程度の間にエッセンスが凝縮されている。

8. TIME STOP
 『Go Funk』リリース後、わずかひと月でシングル・カットされた、彼らのバラードの中でも確実にベスト3にはランクインするキラー・チューン。3.がリリースされたのがこの2か月前なので、よほどこの曲が突然変異的に強く受け入れられたことがわかる。
 メロディ・タイプの中でも、ここまでスタンダード・ナンバー的にベッタベタな楽曲はなかったため、長らくライブでも重要な位置を占めるに至った。ドロドロ・ファンクをベースとしながら、こういったウェットなメロディも料理してしまうバンド・メンバーも脂が乗り切っている。
 冒頭のBon(b)のグリッサンドから心を持ってかれ、ムード歌謡の如く切ない響きのビッグ・ホーンズ・ビー、幅広い素養を持つジョプリン得能(g)によるジャジーなソロ。メンバーの英知を結集して、ある意味スタンダードのパロディ的なモノを狙ったところ、案外出来が良くなりそうだったので、ついついみんなあらゆる引き出しを開けちゃった、といった仕上がり。まぁ結果オーライといったところで。



9. なんですか これは
 ニューウェイブ・テイストがかなり濃い、ミニマルなビートに社会風刺がちょっぴり。ライブで見るとハマりそうなノリの良さは後半ブリッジで急激にアフロが入り、再びスカ。リズムだけで出来上がったような曲なので、深く考えることはなし。踊れや踊れ。

10. FLANKIE, GET AWAY!
 彼らにしては珍しい、まっとうなロック・タイプの楽曲。「Honky Tonk Woman」をニューウェイヴ風にカバーしようと試行錯誤してたら、いつの間にかこんな風になってしまった、といった感じの仕上がり。シュークのコーラスがカワイイ。それが一番印象に残る。一生懸命ダルな感じを出してるけど、やっぱテッペイちゃんにロックは似合わない。もっとインチキな、ロック「っぽい」方が彼には合ってる。

11. 僕らのスーパーヒーロー
 なので、同じロック・ナンバーでも、ワイルドさを薄めたポップ・ロックの方が彼には合ってる。ドラムの音は完全にロックなので、逆にシンセの割合を増やした方が曲調には合っていそうなものだけど。

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12. いつのまにか
 で、どれだけおちゃらけようとロマンチストであるのがテッペイちゃんの本質であり、それはメンバー全員に共通することである。ていうか80年代を通過してきたアーティストというのは、ほぼ全員メロウな感性を持っているものである。歌謡曲で培ったドメスティックなウェット感は消せないのだ。
 メロディ・タイプの楽曲としては、キャリアの中でも1,2を争うクオリティを有している。このギャップの大きさこそが米米最大の魅力であり、それを最も素直に二面性を演出できていたのが、この時期である。

 あの日見ていた夢は 今もこの胸にあるけれど
 大人たちが言う 「見せちゃいけない」と

 時々、こういったフレーズをサラッと書けてしまうから、俺はテッペイちゃんを信じてしまうのだ。

13. 宴(MOONLIGHT MARCH)
 で、シリアスに振れ過ぎてしまったところでバランスを取るため、こういったふざけたブリッジを入れてしまうのも、彼らの美意識のあらわれ。後にアルバム全編、二の線で通してしまうようになってしまうけれど、それは大人の事情やらテッペイちゃんの勘違いやらによって脱線してしまっただけで、基本、バンドマンはナイーブな人が多い。
 スカしたポーズばっかりじゃ、それはそれでカッコ悪いじゃん。そんなのはたまに見せるだけでいいんだよ。
 それが大人の態度だよ。


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80年代ソニー・アーティスト列伝 その6 - 米米クラブ 『K2C』

a7ce5a9bbcd2f8d023e0c49baf847fa94aa94762_l ある意味、ソニーというレーベル・カラーを一番象徴したアーティストが、この米米なんじゃないかと、最近になって気づいた。

 基本、おちゃらけたパーティ・バンドとしての側面が強く、特にメガ・ヒットした『君がいるだけで』以前においては、エキセントリックなパフォーマンスやステージ演出が取り上げられることが多く、肝心の音楽面はあまり触れられずじまいである。
 もちろん、そういった総体もろもろを含めて評価されなければならないバンドであり、音楽だけ単体で評価するのはちょっと違ってくるのだけれど、強引にそこだけ切り離してみると、純日本的なメロディ・ラインを自在に操るカールスモーキー石井の作曲センスは、同世代のアーティストと比べて断然抜きん出ている。なにしろ生まれて初めて作った曲が”Shake Hip!”だし、また”浪漫飛行”が作られたのも、デビュー間もない頃である。
 一般的なロック・バンドのヴォーカルとは明らかに違う、類い稀に恵まれた声質とヴォーカル・テクニックを併せ持つ石井、正規の音楽教育を受けているわけではないので、彼の作る曲は、既存のロック・フォーマットのコード進行に捉われないものになっている。言ってしまえば、単に自分の歌いやすいキーとリズムで歌っているだけなのだけど、それがすべてドンピシャにはまる世界観を形成しているのは、プロフェッショナルな演奏陣の力量に依るものが大きい。

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 もともとは内輪受けの宴会芸バンドからスタートした米米クラブ、当初はウケ狙いのパロディ要素が強いステージを展開していた。それが次第に場数を踏むに連れて、現代アートの世界で活躍していたフロントマン石井の芸術センスや、前衛演劇からインスパイアされたハプニング性も取り込んでゆき、デビュー前はおふざけとアバンギャルドの交叉した、何だかよくわからないけどわからないままで終わってしまって、結局意味不明の熱気だけが残るライブが地味に好評を呼んでいた。
 メジャー・デビューするにあたっては米米、一般ユーザー向けに間口を広げるため、その辺の方針をちょっとわかりやすいスタイルに組み替えている。典型的な二枚目である石井がメロディアス担当、全身をキャンバスに見立てて演劇要素を前面に押し出したジェームス小野田がファンキー担当、かなり高度な演奏スキルによって構築されたバンド・サウンドをバックにして、その2人が縦横無尽におちゃらけるという、他のバンドではあまり類を見ないスタイルだった。
 前例がないイコール差別化が図れるということで、この方向性は間違ってはいなかったのだけど、その「おちゃらけ」という面ばかりが取り沙汰されたため、肝心の音楽面においてはどうにも中途半端さは否めなかった。

 当時のインタビューでは、「ステージとレコーディングとは別物として、スタイルをはっきり使い分ける戦略を取っている」と発言しているのだけど、まぁセールス面ではなかなか大きくブレイクできなかったことに対する自虐的発言とも取れる。ステージでのハチャメチャなグルーヴ感をレコードで再現することは、結構どのバンドでも共通の課題なのだけれど、特に米米の場合、バンドの性格上、そこら辺の擦り合わせで苦労している。
 なので、デビューしてしばらくは、そういった開き直りとも取れる発言が頻発している。のちにその方向性が正しかったことは歴史が証明しているのだけど、試行錯誤が如実に表われてセールス的にも不安定なのが、この時期である。

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 ディスコ・ファンク・バンドとしてのグルーヴ感を前面に押し出した”Shake Hip!”と、ある意味石井の本質である二の線を強調した”浪漫飛行”タイプの曲との双頭体制と言えば聞こえは良いけど、どこかフォーカスがボヤけていた点は否定できない。ファンの全部が全部、ライブに足を運べるわけではないのだ。
 ステージに足を運んでもらえれば、たちまち誰もを虜にできるくらいのパワーはある。でも、そのためにはきっかけとして、もっと求心力のあるパッケージが必要になる。

 で、ステージでのエンタメ性・カリスマ性を強く打ち出すため、ファンクを柱としたサウンド作りを行なったのが”Kome Kome War”であり”Funk Fujiyama”だったのだけど、当時としては衝撃的な構成だったPVばかりが話題となって、肝心の音楽的評価はチョット弱かった記憶がある。音楽雑誌では大絶賛に近く、実際セールス的にも確実にステップ・アップはしたのだけど、どこかオーバー・プロデュース気味で窮屈な印象があったことは否めない。

 で、石井の別の一面であるメロディ路線の方だけど、こちらは年を経るごとに磨きがかかっており、数々の美メロを輩出している。「カールスモーキー」という別人格を演ずることに吹っ切れたのか、ムーディでありながら時にエロい、ジゴロ顔負けの一面を披露している。
 でも、それだけじゃダメなのだ。その対極であるはずの「おちゃらけ」ナンバー、ファンクやら歌謡曲やらシャンソンやら音頭やらをグッチャグチャに混ぜてごった煮にした、米米言うところの「ウンコ曲」が精彩を欠いている。ていうか存在感がない。カールスモーキー石井の二の線は、最後の壮大なオチのためのネタ振り、長く引っ張った伏線であって、ここをきちんと押さえておかないと、ただのナルシストになってしまう。大きなカタルシスを得るためには、きちんとした舞台設定が必要なのだ。
 ステージではシアトリカルな構成の妙によって、その辺が違和感なくキレイに収まるのだけど、パッケージにまとめてしまうと、どうにもチグハグな形になってしまう。
 さて、どうしたものか。

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 その辺を踏まえて開き直ったのか、彼らの特色である二面性を、無理やりひとつにまとめるのではなく、だったら2枚に分けちゃえばいいんじゃね?という発想の転換の結果が、このアルバム。ほぼ同時期に『米米クラブ』という、「おちゃらけ」ソングばかりを集めたアルバムをリリースすることによって、うまく折り合いをつけた。ステージの流れを中途半端に再現するのではなく、レコードはレコードとキッパリ割り切ったことが上手く作用して、アルバムとしての統一感が出た。

 このアルバムには、彼ら初期の代表作である”浪漫飛行”も”Shake Hip!”も収録されていない。この時点においても既に独り立ちしてしまった曲なので、はめ込むのが難しかったのだろう。
 ダンサブルな曲とメロディアスな曲とがランダムに配置されているのだけれど、それらがほとんど違和感なく、統一したテイストにコーディネートされている。
 以前のように強引にまとめるのではなく、レコーディングで映える曲をセレクトしたおかげでビギナーでもスンナリ聴くことができる。

 ここでオミットされているのは、ステージ向けのナンバー、「おちゃらけ」要素が強く、享楽的で内容のない、まぁ適当な曲が多い。時代に埋もれてしまうような時事ネタを取り扱ったモノも多く、その大部分は一度聴いたらサッパリ忘れられてしまうような曲ばかりである。
 それらは彼らにとっての「恥」という感情の裏返し、いわゆる情念やコンプレックスなど、マイナス要素の強いものである。
 マイナスの裏返しはプラスではなく、どこまで行ってもマイナスだ。こういった要素を完全に排除するのではなく、表裏一体であることを表明できるようになったことが、バンドとして、そしてメンバー個々の成長と言えるのだろう。


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1. I・CAN・BE
 デビュー・アルバム『シャリシャリズム』と同時にシングル・カットされた、彼らのデビュー・シングル。久しぶりに聴いてみると、こんなにファンキーなアレンジだったっけ?ということに驚かされる。ホーン・セクションの音色がAORっぽくて好き。間奏のギターソロもかなり攻めたフレーズをぶち込んでいる。
 こういったナンバーを聴いてると、石井というのはあくまでフロントマンというバンドの役割を演じていただけであり、よく言われているような石井のワンマン・バンドじゃないことが窺える。

2. Peeping Tom
 多分、このアルバムが初出、でいいのかな?唯一の新曲で、リード・トラックとして、このPVがやたら流されていた記憶がある。なので、どうしてもビジュアルのイメージと被ってしまうのだけど、純粋に音楽だけ聴いていると、いやこれって、なんかめちゃくちゃ破綻してる。普通のロックやポップスの構造とはかなり違っており、いろいろなサウンドが混在している。すごくポップな感触で作ってるけど、曲調としてはかなりアバンギャルド。
 ちなみにPeeping Tomとは、「のぞき見する男」の意味。そうした妖しげなムードを醸し出す男として、石井は最適だった。



3. FUNKY STAR
 ファンキーと名乗ってはいるけど、それほどファンキーじゃないのは、石井がメインで歌ってるから。バックのサウンドは思いっきり黒いグルーヴ全開なのだけど、どこか歌謡テイストが残ってしまうのは、やはり石井自身が作るメロディのせいなのか。でも、このくらいベタじゃないと、日本という風土には溶け込むのは難しい。

4. En mi Corazon
 「おちゃらけ」モノは排除したはずだったのだけど、プロデューサー判断で、アクセントとして収録したのか、それともバンド側が強硬に押し通したのか。多分両方だと思うけど、まぁどっちだってよい。
 昔のラテン・ムード歌謡をイメージしたホーンでスタートしているのだけど、本編に入ってしまえば、至極真っ当なバラード。リズムは相変わらずのラテン歌謡チックで押し通しているのだけれど、ここは石井の熱演ヴォーカルによって、紙一重のところでシリアスをまとったパッションが爆発している。

5. Troubled Fish
 まぁ言ってしまえば、もろBlow Monkeys 『Digging Your Scene』なのだけど、元ネタを知らなくても充分その世界に堪能できる名曲。もともとはセカンド・アルバム『EBIS』に収録されていた隠れ名曲で、シングル・カットされていないにもかかわらず、結構知られていた曲でもある。俺もリリース当時から何となく知っていて、米米に興味を持ち始めたきっかけになった。
 オリジナルよりリズムを強調したアレンジになっている以外は、あまり変化はない。それだけ完成された曲でもあるので、あまりいじれなかったんじゃないかと思われる。



6. KOME KOME WAR
 ある意味、米米を一躍スターダムに押し上げ、音楽誌以外のメディアでも大絶賛の嵐だった、これもPVが特に印象的だった作品。本場MTVの海外部門で受賞を果たしたことで箔がつき、映像作家カールスモーキー石井の名を轟かせることになった。
 で、肝心の音楽と言えば、これがなんともファンクをベースとした内容のない歌。
 だけど、ここがいい。ファンクにメッセージを求めるのは筋違いであり、「踊る」という機能性を重視した音楽にとって、メッセージはむしろジャマになるだけだ。

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7. Paradise
 4枚目のシングルとしてリリース。オリジナルとはちょっとアレンジと歌詞を変えて、世界を股にかけるジゴロをテーマに改変されてたけど、俺的にはオーソドックスなオリジナル・ヴァージョンの方が好み。PVのテイストといい、バンド的には迷走期、ソニーの言いなりにポップスを演じ切ろうとした挙句、どこかボンヤリした仕上がりに悲哀を感じてしまう。
 オリジナルはオリコン最高19位。そこそこは売れたのだ。

8. Simple Mind
 もともとステージのみで披露されていた曲で、スタジオ・ヴァージョンとしてはここが初収録。米米版MORといったテイストのミドル・テンポのバラード。ライブの中盤あたりでのクール・ダウンに最適だと思うけど、癖の強いこのアルバムの中では、イマイチ印象が薄い。でも、ソニー的にはこういった曲を量産してくれてた方が理想だったんじゃないかと思う。
 まぁどっちにしろ、後期はこの路線に傾倒してゆくわけだけど。

9. Sûre Danse
 5枚目のシングルとしてリリース。”浪漫飛行”と”Shake Hip!”との奇跡的なハイブリッド的融合がこの曲。メロディライクな部分とミドル・ファンクとがバランスよくアレンジされており、ある意味ここが到達点だったんじゃないかと思われる。



10. Transfer
 9.とほぼ同じコード進行で、ファンキー成分を抜いてAORテイストを強めた、ミドル・バラード。米米のすべての音源を網羅したわけではないのだけど、俺が知る限り、米米はこの手のメロディ・ラインの曲が多い。石井のヴォーカルが最も映えるキーがこのラインなので、どうしても似通ってしまうのは仕方ないこと。
 聴いてる方も安心して聴ける、米米流MORサウンドの結晶。

11. STAY
 『EBIS』が初出の、初期米米の名バラード。ベッタベタのコード進行、黄金のメロディ、直球ストレートのナンバー。やればできるのに、ここら辺はあまり照れて出さないのが、この人たちの信用できるところ。もっとゴージャスなアレンジなら映えるのかもしれないけど、サラッとしたジャジーなアレンジが、胃にもたれず軽く聴き流すことができる。

12. Just U
 一応、初期の米米のアルバムはひと通り聴いているのだけれど、ライブを見てるわけではないので、俺はライト・ユーザーに分類されるのだけれど、そんな俺でも、そして年季の入ったへヴィ・ユーザーの間でも人気の高い、多分人気投票を行なえば、確実に5本の指に入るんじゃないかと思われる名作。

 Do You Remember まるで夢のような
 Don’t Forget to do 愛し合った日のすべてを

 ポップスの歌詞としてはすっごくベタでシンプルだけど、これがすごくいいのだ。こうしたストレートな楽曲をストレートにやらず、どこかアレンジやらキャラクターやら小芝居やらでおちゃらけて、何かしらフィルターを通してからでないと真面目な曲を歌えなかった彼らが、ここでは普通の楽曲をほんと普通に、しかもちゃんとしたメッセージとしてファンに届けている。やればできるのだ。
 ここで言うのもなんだけど、この曲はほかのベスト『米~Best of Best~』に収録されているライブ・ヴァージョンの方が良い。解散コンサートのラストに歌われており、感極まった様相の石井が必死に笑顔を取り繕いながら最後のメンバー紹介を行なっている。そのエンディングに至るまでのカタルシスが刻銘に記録されている。






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北海道の中途半端な田舎に住む、そろそろアラフィフ男。ほぼ週1のペースで音楽ブログ更新中。節操ない聴き方と思われてるけど、自分の中では一貫してるつもり。 最近は蔵書の整理がてら、古い本を再読中。ジョン・アーヴィングから始まって、フィッツジェラルドやゾラ、モームなど、いわゆる古典の復習中。いつになったら終わることやら。新刊読めねぇや。
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