これまでリリースされた多くのジャズ・アルバムの中でも、王道中の王道。一般紙のディスク・ガイドでも、名盤として高い確率で紹介されており、CMやTVのBGMなどでたまに使用されているので、なnとなく聴いたことがある人は多いと思う。
1961年にリリースされているのだけれど、ジャズの場合、カウントの仕方が結構いい加減なので、何枚目のリーダー・アルバムかはわからない。
Miles Davis『On the Corner』のレビューで書いたのだけど、ジャズのジャム・セッションが一度行なわれると、アウトテイクも含め、優にアルバム2~3枚分のテイクが残される。大抵はレコード会社の意向、または言い出しっぺのバンド・マスターがリーダーとなってアルバムがリリースされるけど、ごく稀に、使用スタジオやレコーディング契約の関係によって、バンド・マスターでありながら、クレジットが出せないケースもある。
その場合、状況にもよるけれど、作曲やアドリブにやや多めに貢献したプレイヤーが、名義上のリーダーとなる。レコード会社イチ押しの期待の新人や、諸事情によって、まとまった金を稼ぎたい(大抵はドラッグの借金)者に花を持たせる場合も同様だ。
レコーディング契約も口約束が多かったり、書面すら取り交わしてない場合も多かった、大らかな時代の話である。
Miles Davis『On the Corner』のレビューで書いたのだけど、ジャズのジャム・セッションが一度行なわれると、アウトテイクも含め、優にアルバム2~3枚分のテイクが残される。大抵はレコード会社の意向、または言い出しっぺのバンド・マスターがリーダーとなってアルバムがリリースされるけど、ごく稀に、使用スタジオやレコーディング契約の関係によって、バンド・マスターでありながら、クレジットが出せないケースもある。
その場合、状況にもよるけれど、作曲やアドリブにやや多めに貢献したプレイヤーが、名義上のリーダーとなる。レコード会社イチ押しの期待の新人や、諸事情によって、まとまった金を稼ぎたい(大抵はドラッグの借金)者に花を持たせる場合も同様だ。
レコーディング契約も口約束が多かったり、書面すら取り交わしてない場合も多かった、大らかな時代の話である。
享年41歳ということもあって、活動期間ははなはだ短く、コンポーザーとして活躍した期間は、実質10年程度のものである。ただ、この人はジミヘンと並んで死後の発掘作業が古くから進んでおり、今でも未発表テイクやライブの音源がブラッシュ・アップされ、リーダー・アルバムは優に200枚を超えている。かつて所属していたレーベル・レコード会社はもちろんのこと、世界中の有志・コレクターによって、テレビやらラジオの放送音源もその対象となっており、公式・非公式ともども、いまこの瞬間にも続々ネットにアップロードされたり、そりゃもう収拾がつかない状態になっているのが現状。よほどのマニアックなファンでも、すべてを追い切れてないのが現状である。
晩年のアバンギャルドな方向性によって、「頭で聴く」小難しいジャズの代表である反面、本作を含むアトランティック期の一連のアルバムは、メロウさとテクニカルな面とが上手く拮抗して、ビギナーにとっても親しみやすいアイテムが多い。取りあえず、「最近Coltrane聴いてるんだよね」と言っておけば、何となく通ぶれる、というのも、日本における人気の高さを支えるひとつでもある。
これがインパルス移籍後になると、末期に近づくにつれ、抹香臭く混沌としてきて、筋金入りのジャズ・ファンでもハードルが高くなってしまうのだけど、このアトランティック期の一連の作品は、普通のジャズ・ビギナーの耳でも、「なんとなく高尚だけど、一般的なジャズっぽいサウンドのイメージに近くって、耳当たりの良い演奏」として、まだ広く受け入れられている。
ちなみに、それ以前のプレステッジ、ブルー・ノート期になると、メロウさが際立っているのと、まだアドリブ・ソロの面での迷いが見られる。
これがインパルス移籍後になると、末期に近づくにつれ、抹香臭く混沌としてきて、筋金入りのジャズ・ファンでもハードルが高くなってしまうのだけど、このアトランティック期の一連の作品は、普通のジャズ・ビギナーの耳でも、「なんとなく高尚だけど、一般的なジャズっぽいサウンドのイメージに近くって、耳当たりの良い演奏」として、まだ広く受け入れられている。
ちなみに、それ以前のプレステッジ、ブルー・ノート期になると、メロウさが際立っているのと、まだアドリブ・ソロの面での迷いが見られる。
Coltraneの代名詞的に語られるのが、『シーツ・オブ・サウンド』という演奏法なのだけど、そこまで突っ込んでジャズを聴いたことがない人だとピンと来ないだろうし、実は俺もそれほど詳しい音楽理論まではわかってるわけではない。
わかってないことを前提に、誤解を恐れず、すっごく簡単に言ってしまえば、「空間をすべて音で埋めてしまう奏法」と思ってもらえればよい。
サックスのロング・トーンを一音で表すのではなく、その間にとてつもなく早いBPMで、細かなフレーズを吹きまくることを、この時期のColtraneは徹底して行なっていた。かつて師事していたMilesによる、空間と余白とのギャップにて奥行きを演出したモード奏法が「静」なら、Coltraneの奏法は陰陽の関係である「動」にあたる。その最初の成果報告が『Giant Steps』であり、そのまた進化形が『My Favorite Things』である。
わかってないことを前提に、誤解を恐れず、すっごく簡単に言ってしまえば、「空間をすべて音で埋めてしまう奏法」と思ってもらえればよい。
サックスのロング・トーンを一音で表すのではなく、その間にとてつもなく早いBPMで、細かなフレーズを吹きまくることを、この時期のColtraneは徹底して行なっていた。かつて師事していたMilesによる、空間と余白とのギャップにて奥行きを演出したモード奏法が「静」なら、Coltraneの奏法は陰陽の関係である「動」にあたる。その最初の成果報告が『Giant Steps』であり、そのまた進化形が『My Favorite Things』である。
俺的に思い出深いのは、確かもう四半世紀も昔、NHK-FMでタモリがジャズの特番を1週間やっており、最後の最後で、自身が一番好きな曲として、このタイトル・ナンバーをオンエアした。管楽器にしては線が細く、それでいて力強さと強引さとをあわせ持ったソロが印象的だった。
意識的にジャズを聴き始めるきっかけとなったのがこの番組であり、そしてソプラノ・サックスという楽器がこの世に存在することを知ったのも、このアルバムを通じてだった。
意識的にジャズを聴き始めるきっかけとなったのがこの番組であり、そしてソプラノ・サックスという楽器がこの世に存在することを知ったのも、このアルバムを通じてだった。
My Favorite Things (With Bonus Tracks)
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John Coltrane
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1. My Favorite Things
映画『Sound of Music』の挿入歌をモチーフとした、Coltraneといえばこれ、と言える代表作。オーディエンスの受けが良かっただけでなく、本人もお気に入りだったらしく、晩年までセット・リストに加えられていた。
ジャズの特徴、特にColtraneの特徴として、様々なヴァージョンの"My Favorite Things"が残されており、晩年のアバンギャルド期に来日した時のヴァージョンなんかは、最初の数フレーズ以外は原形をとどめておらず、11分程度のオリジナル・ヴァージョンが延々1時間に拡大されている。
ジャズの特徴、特にColtraneの特徴として、様々なヴァージョンの"My Favorite Things"が残されており、晩年のアバンギャルド期に来日した時のヴァージョンなんかは、最初の数フレーズ以外は原形をとどめておらず、11分程度のオリジナル・ヴァージョンが延々1時間に拡大されている。
映画版のオリジナル(と流布されてるけど、実はブロードウェイ・ミュージカル版が本当のオリジナル。映画が公開されたのは、このアルバム・リリースの後である)を聴いてもらえればわかるように、名優Julie Andrewsの表情豊かなヴォイシングと、黄金時代のハリウッドをほうふつとさせる、壮大なオーケストレーションが印象的だけど、「それ」が「こんな」風になってしまうのである。今で言えば、"Let It Go"をくるりがカバーするようなものだと思ってもらえればよい(どうも例えが難しい)。
McCoy Tynerが、地味ながら堅実なプレイで活躍している。Coltraneの不穏なソプラノ・サックスの響きは最初の2分ほどで一旦捌け、McCoyが手堅いソロで場を繋ぐ。リズム隊の順繰りのソロが終わった後、再び御大登場、前半よりパワー・アップして、さらにアグレッシヴに吹きまくり、他メンバーも引っ張られるようにさらに熱を帯び、そして強引に幕引き。
2. Everytime We Say Goodbye
5分程度のスロー・バラード。ほんとスタンダードなフォーマットのジャズに仕上がっている。McCoyの中盤ソロも、昔ながらのカクテル・ラウンジやジャズ・バーでいつもかかっているような、安心できる演奏。
3. Summertime
有名なスタンダード・ナンバー。大抵のカバーはもっとスロー・テンポだけど、そのセオリーに反して強引に『シーツ・オブ・サウンド』を展開、アグレッシヴに吹きまくるソロを聴かせている。最初の♪Summertime~のサビの1フレーズ以外は、ほんと自由自在に展開したソロ。ていうか、ほぼ原形をとどめていない。
途中から聴いてみると、まずColtraneのファンでもない限り、"Summertime"とわかる人はいないはず。辛うじて、やはり真っ当な普通人McCoyが、なんとなく"Summertime"らしいブリッジを聴かせている。
途中から聴いてみると、まずColtraneのファンでもない限り、"Summertime"とわかる人はいないはず。辛うじて、やはり真っ当な普通人McCoyが、なんとなく"Summertime"らしいブリッジを聴かせている。
4. But Not For Me
アトランティック初期の傑作『Giant Steps』を思い起こさせる、これも昔ながらのジャズ・クラブっぽい演奏を聴かせる良作。こちらも比較的有名なスタンダード・ナンバー。同じくシーツ・オブ・サウンド・スタイルだけど、もう少し肩の力を抜いたプレイになっている。軽快なアドリブが親しみを感じさせる。バックのリズム・セクションも楽しげで、やはりMcCoyは良い意味で凡庸なソロを聴かせている。
ここまで散々、McCoyは凡庸だと書いているけど、誤解のないように。実際は、凡百のピアニストが束になっても適わないくらい、その演奏のポテンシャルは高い。
ただColtraneが強烈すぎるのである。
前述したように、フリー・ジャズの台頭によって、Coltraneも情勢を無視できなくなり、次第にアバンギャルドなスタイルを志向するようになるのだけど、それはまだ晩年の話。ギリギリ、ジャズのコアなファンじゃなくても、まだ辛うじて理解できる傑作『Love Supreme』の話は、また別の機会に。
Very Best of John Coltrane
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