プリファブ・スプラウト

好きなアルバムを自分勝手にダラダラ語る、そういったゆるいコンセプトのブログです。

嗚呼、青き春の日々よ。 - Prefab Sprout 『Swoon』

folder 今年3月に突如YouTubeに新曲「America」をアップ、そのタイミングに合わせたのか、いや制作の噂はずいぶん前から流れていた詳細な評伝『プリファブ・スプラウトの音楽 永遠のポップ・ミュージックを求めて』が出版されたり、何かと周辺が騒がしくなってきたPrefab SproutのPaddy McAloon。
 昨年は映画監督Spike Leeを含む3ショット・フォトがインスタグラムにアップされたことで、両者の関連性の薄さから世界中のファンがちょっとだけ騒然となった。ほとんど生き仙人のような人なので、このような気まぐれ的なエピソードでも「活動再開か?!」とネット上では盛り上がっていたけど、まぁあんまり期待しない方がよい。もともと腰の重い人だし、第一、前作『Crimson/Red』リリースから「まだ」4年しか経っていない。下手に期待すると失望もデカいので、優しく動向を見守ってやった方が精神安定上よろしい、というのが俺の個人的見解。



 トランプ政権の移民締め出し政策に対する抗議声明を織り込んだ歌詞は、簡素なアコギのストロークで彩られている。メロディはシンプルで歌声もソフトで穏やかなので、英語を解しない者にとって、「America」は我々が良く知っているPrefabサウンドに加工される前の原石として映ることだろう。
 少年期をニューキャッスルで過ごしてきたPaddyが長らく憧憬を抱いていた、はるか大西洋の向こうのアメリカ。彼にとってアメリカとは、Elvis PresleyやGershwinらを始めとする、多数のポップ・イコンを産出した「自由と繁栄」の象徴だった。それが時代を経るにつれて動脈硬化を患い、本来トリック・スターであるはずの男を大統領に祭り上げてしまってから、急激に制御不能の迷走状態に陥ってしまう。
 Paddyが政治的な発言・行動を起こしたことは、これまでにない。労働者階級にえらく評判の悪かったサッチャー政権の80年代UKでは、ほぼどのアーティストもサッチャリズムへの不快感をあらわにした楽曲を書き、インタビューで毒づいたりすることが一種のトレンドだったのだけど、Paddyについてはあまりそういった発言があった話は聞かない。もともと頻繁にインタビューを受ける人ではなかったこと、また「King of Rock’n’ Roll」「Cars & Girls」など一部のポップ・ヒットを除き、キャリアの早いうちから時代風俗に左右されない、純音楽主義的なスタンスを貫いてきた点も、彼の浮世離れ化に拍車をかけた。

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 よっぽど腹に据えかねたのか、たまたまひらめきとタイミングとがマッチしちゃったのか、それはともかくとして、Paddyが今の時勢とのコミットを図ろうとしたこと、また前世紀から使い倒していた古臭いマックから、スマホ・ユーザーにランクアップしていたことを、全世界のファンは慶ぶべきことである。ここまでが賞賛。
 ただ、純粋に楽曲レベルで判断すると、「America」はやはりデモ段階のトラックであって、正直、新曲以上の付加価値を云々語れるレベルではないことは確か。映像での余興的なパフォーマンスから窺えるように、このレベルの楽曲なら彼にとっては鼻歌程度、さして産みの苦しみを煩わすこともなく書いてしまう人である。今回はたまたまアップされているけれど、構成がまだ不十分な楽曲・断片的なフレーズは山ほどあることは、昔から結構知られている事実である。何年かに一度、どこがしかで流出音源がネット上で拡散され、各フォーラムは喧々諤々の大騒ぎになるのは恒例行事となっている。
 そういった未整理のマテリアルは多々あって、熱心なファン・フォーラムや非公式サイトでも詳細な未発表アルバム・楽曲のデータ・資料がまとめられている。とにかく思いつきは壮大で、それに見合うほどの材料はたっぷり準備されているはずなのに。

 それなのにPaddy、大風呂敷を広げて畳めないというか、広げた後にまた別の風呂敷に目移りしてしまうというか、まとまった形に仕上げることが大の苦手である。単なる佳曲の寄せ集めではなく、一本筋の通った堅牢なコンセプトを設定してしまうので、何かと自分で縛りを多くしてしまって収拾がつかなくなってしまうパターン。夏休みの計画表作りに全エネルギー使っちゃう、典型的なタイプだよな、この人。
 そんな人なので、今回のように衝動的な単曲アップロードという行動は極めて珍しいことなのだけど、時代は変わってスマホ・ユーザーになったPaddy、思いついたらすぐ世界中に発信できるシステムの存在を知り、様々なタイミングが合っての結果なのだろう。
 アルバムという単位が形骸化しつつあるご時勢、これを機に「思いついたら録って出し」の形でどんどんネットにアップ、最終的にオムニバス的な小品集にまとめてしまうのもアリなんじゃね?と外野は思ってしまうのだけど、まぁ多分しねぇよな。その辺は古い価値観で固まってそうなので、「やはりアルバムとは、云々カンヌン…」といったこだわりがありそうな気がする。
 めんどくさい奴って思っちゃいけないよ。アーティストなんて、大抵めんどくさい人種なんだから。

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 現役のソングライターとしては、前世代に属するBrian WilsonやPaul Simonらとも引けを取らないポップ職人のPaddy McAloon だけど、最初から今のようなコンテンポラリー・ポップ路線を志していたわけではない。むしろデビュー前後はそういったコンテンポラリー路線とは真逆のベクトル、若輩ゆえの荒削りなんてものではなく、もっととんがって屈折したサウンドを奏でていた。
 当時彼らがカテゴライズされていたネオ・アコースティック、略してネオアコというジャンルは、代表的アーティストとされているEverything But the GirlやAztec Camera のサウンドから窺えるように、今の耳で聴けばアコースティック・ポップ、シャレオツな午後のカフェにフィットするソフトな癒し系を思わせる。事実、そんな使われ方は今も変わらない。アップテンポなナンバーも基本、どれもトゲがないように聴こえるし。

 発売から30年以上経過、現代のフラットな視点ではナチュラル志向の強いサウンドとして受け止められているけれど、ムーヴメントの隆盛である80年代初頭にフォーカスを置くと、リアルタイムでしかわかりえない別の側面が表れてくる。
 パンク/ニューウェイヴの波がひと段落し、ポスト・パンクとして「何でもアリ」の爛熟状態だった1978年、Prefab Sproutは結成された。最初期の自主制作シングル「Lions In My Own Garden」はブルースっぽさの薄いハーモニカと単調なギター・ストロークで構成されたフォーク・ロック調ナンバーとなっている。やたらアタックの強いスネアと吐き出すようなPaddyのヴォーカルは、パンクの余波を引きずった、それでいて性急で単調な8ビートを拒否しているかのように映る。そのビートは粗野な響きではなく、あくまで主役になっているのは歌だ。
 ナチュラル・トーンのギターとルート音にこだわらない自由奔放なベース・ライン。ハードコアやシンセ・ポップとも違う、既存ロックの破壊を主目的としたパンクの「その後」であり、建設的なアンチ・スタイルでもある。

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 で、『Swoon』。実は今に至るまで、きちんと馴染めずにいる。いくら聴きこんでも掴みどころのない、それでいて数年に一度、たまに聴いてみたくなる類のアルバムでもある。ジャンルは違うけど、俺的にはTom Waits 『Rain Dogs』と同じ座標上にある、そんなアルバムである。
 若気の至りとか習作的な扱いをされる反面、二度と作れない/誰にも模倣できない、という意味では、80年代UKのロック/ポップ・アルバムの中でも孤高の位置にある。Paddy的にとってもデビュー作ということで、他のアルバムと比べて感慨めいた想いがある反面、どれだけ時間を費やしても到達できない、初期衝動のみによって組み立てられた不器用な完成品が、ここには詰まっている。
 ジャンルは全然違うけれど、King Crimsonが「21st Century Schizoid Man」を、若き日の桑田佳祐が「勝手にシンドバッド」を、もっと若い人にもわかりやすい例でゆずが「夏色」を作ったように、デビュー前の蓄積をベースとした突発的な思いつきが、突然変異的な名作を産み出すことが、ポピュラー史の中ではままある。
 どのアーティストもキャリアを重ねることによって、技巧に長けて数々の名曲を産み出したけれど、逆に最初期の正体不明なエモーショナルは失われてゆく。どれだけ卓越した技術を持ってしても、鮮烈なデビュー曲の前ではすべてが霞んでしまうのだ。

 だからといって『Swoon』がそれらの曲同様、強烈なインパクトを放っているわけではない。UK最高22位はデビューとしては充分アベレージを超えてはいるけれど、当時の80年代音楽シーンに鮮烈な一石を投じた、というほどではない。彼らのキャリアの中では異質なサウンドであり、その後のPaddyの志向はもっとスタンダードに寄り添ったソフト・サウンドへ向いていった。なので、ここで奏でられるサウンドはその後の彼らとは一線を画しており、習作と言えるものではない。あくまで異質の手触りだ。
 今さらPaddyが『Swoon』的なサウンドを作ろうはずもないし、そんな需要もないだろう。ここでのサウンドはあくまで刹那的な、ほんの一瞬のものだ。あくまで蒼い青年時代の初期衝動の産物でしかない。
 ただ、ここからすべてが始まった。こういったわかりやすい「怒り」をラウドなサウンドを使わずに表現することが、Paddyの表現者としてのスタートだったのだ。それだけは言える。

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1. Don't Sing
 性急なビートに載せて、今ではほぼ聴くことのできない27歳のPaddyのシャウト。簡素なバッキングは歌と突っかかったようなギターのフレーズを引き立たせる。アクセントで使われるフェンダー・ローズまがいのシンセと調子っぱずれのハーモニカ。どのパートもメチャメチャな方向を向いているが、奇跡的にひとつの楽曲として成立している。



2. Cue Fanfare
 なので、これもベクトルはバラバラ。ポップ・ソングとして捉えるなら完全に破綻しているのだけど、破綻こそ美であるニューウェイヴの潮流で考えるとわかりやすい。セオリーを外しまくることに重点を置いたがため、楽曲としての整合性を無視したメロディとコード進行は、唯一無二の輝きを放つ。

3. Green Isaac
 ここで少しメロディとしてのまとまりが出てくる。ニューウェイヴ界の天使的存在だったWendy Smithのコーラスが印象的だけど、常にフラットしまくる彼女の歌声はこの頃から。転調を境として前半と後半とでは、色合いがまったく違っている。よくひとつにまとめたよな。

4. Here on the Eerie
 彼らにしては珍しく、ていうかほとんど唯一といってよいファンキー・チューン。正直、イントロだけずっと聴いていたいほどだけど、歌が入ると相変わらず奔放なPrefab節。シャッフルするリズムは性急にPaddyの歌を追い立てる。レアグルーヴ系のコンピに入れたら、案外しっくり来るんじゃないかと思われる。

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5. Cruel
 初期の代表作とされる、ジャジー・テイストを強調した「これぞネオアコ」といった代名詞的なナンバー。スタンダード・ナンバーにも匹敵する構成力は、若干27歳の若者の手によって紡がれたとは思えない完成度を誇る。Costelloがカバーしちゃったのも納得してしまう出来である。でもCostelloが歌っちゃうと、完全に彼の色で染まっちゃうんだよね。それに比べてPaddyのキャラクターってそれほど強いエゴが出てるわけじゃないし。この辺がやはりグローバル展開できるかできないかの違いなのだろう。



6. Couldn't Bear to Be Special
 コーラスのかぶせ方が『Steve McQueen』以降を思わせる、よってこのアルバムの中ではちょっと異質なメロディアスなナンバー。Paddyの青臭いシャウトが『Swoon』的世界観につなぎとめているけど、流暢なメロディはやはり隠しきれない。その後の方向性を暗示させる曲である。

7. I Never Play Basketball Now
 果てしない階段を降りてゆくような不穏なイントロが明けて始まるのは、案外爽やかなポップ・チューンで拍子抜け。このアルバムの中では比較的わかりやすい形にまとめられているので、むしろこれをシングルで切ってもよかったんじゃないかというのは俺の個人的感想。青白い文化系少年Paddyを彷彿とさせる、タイトルがあらわすように帰宅部への憐憫と皮肉が入り混じったナンバー。

8. Ghost Town Blues
 ラグタイムっぽいイントロで始まるヴォードヴィル・ナンバー。タイトル通り歌詞は救いのないくらい内容。だってブルースだもん、と言わんばかりに。でも曲調はどう聴いたってブルースじゃない。もともとPaddy、ブラック・ミュージックの要素は皆無だし。彼なりのブルースなのかしら。

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9. Elegance
 ネオアコ成分の強い、このアルバムの中では比較的聴きやすいナンバー。コード的にはちょっと不安定なところはあるけど、例えばビギナーに『Swoon』のオススメは?と問われて真っ先に浮かぶのはこの曲なんじゃないかと思われる。ただ、長らく聴き込んだファンにとっては平坦なポップ過ぎて、ちょっと物足りなくも感じてしまうのだ。

10. Technique
 なので、すれっからしのPrefabユーザーはこういった曲をむしろ好んでしまう傾向にある。ミニマリズムなカウントの後、吐き捨てるようなPaddyのヴォーカル。1分ほどして転調、その後のファズ・ギター、そしてゆったりしたワルツにつながる展開は先が読めず、ニューウェイヴにおけるセオリーすら軽々と飛び越えてしまう。何でもアリというのがニューウェイヴ以降である、ということを改めて知らされる一曲。

11. Green Isaac II
 3.の続編となるエピローグ。Wendyとの荘厳なデュエットは美しく透徹として、そして唐突に終わる。途切れた音の先はどこへ向かったのか。


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ある意味、プログレよりもプログレッシヴ - Prefab Sprout 『Crimson Red』

folder 2013年リリース、今はPaddy McAloonの独りプロジェクトとしてすっかり定着したPrefab Sprout、4年振りのニュー・アルバム。UK最高15位チャートインは『Andromeda Heights』以来の好成績、なぜかドイツでは92位、スウェーデン21位ノルウェー10位というデータもwikiではアップされている。なんだか中途半端なデータだな。
 4年振りとは言ってもこの人の場合、もう何十年もエンドレスで楽曲制作・レコーディング作業を続けているので、このアルバムのために新たに書き下ろしたマテリアルは少なく、過去のアーカイブを再構成した割合の方が多い。その量が膨大かつ中途半端なデモ・テイクが多くを占めているため、ひとつにまとめる労力たるや、ハンパないエネルギーを必要とする。
 もともと前世紀から寡作で知られるPaddyなので、この4年というインターバルは全然短い方、彼にしてはかなりのハイペースである。今どきメジャー第一線で活動している現役アーティストだってこのくらいのリリース・スケジュールになっているのだから、やっと時代がPaddyに追いついた感じである。いや違うな、きっと。
 リリース・スパンが短くなりつつあるのは、Paddy自身、残された時間が限られていることを意識しているせいもある。なので、これまで中途半端な仕上がりで未整理になっていた作品たちへの落とし前をつけるような、総まとめ的な作風が強くなっている。

 ただ前作『Let's Change the World with Music』リリース前にも『Steve McQueen』のレガシー・エディション・リリースに伴うリマスター+アコースティック・リメイク・ヴァージョンの制作も行なっているので、ここ近年は表に出る仕事が結構多くなっている。
 そりゃMark Ronsonや秋元康の仕事量と比べると微々たるものかもしれないけど、彼らが多くの実動スタッフを擁して流れ作業的にこなしているのに対し、Paddyの場合はほぼ単独、しかも手のかけ方が丁寧かつ細部に至っているので、作業の延べ時間は同等と言ってもいいくらい。表に出た結果と裏方仕事の比率の違いだと思う。
 オフィシャルにリリースされたアイテムが少ないため、世間的には寡作の人と思われがちだけど、制作中にフェード・アウトしてしまった作りかけのアルバムや楽曲が山のようにあることは、ちょっと熱心なファンなら誰でも知っている事実。もともと頻繁にライブやインタビューを受ける人ではないので、無為な隠遁生活を送ってるように思われがちだけど、実際はなかなかのワーカホリックである。

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 このアルバムがリリースされる経緯というのがまたこんがらがっており、そういった意味ではちょっぴり話題を集めたアルバムでもある。
 すごく端折ってまとめると、
 ① 何の前触れもなく、ほぼ完パケ状態のデモ音源集『The Devil Came a-Calling』がネット上に流出。
 ② 出どころ不明のため、ソニーは沈黙。その後、新作製作中のインフォメーション発表。
 ③ 曲順を変えただけ、ほぼそのまんまの形でオフィシャル・リリース、
 といった流れ。
 この流出がアクシデントだったのか、それとも関係者による意図的なものだったのか、その辺はうやむやにされて未だ不明だけど、Prefab Sproutという存在にニーズがあるのかどうかという市場リサーチ、ある種のアドバルーン効果を狙って流出させたものなんじゃないか、とは俺の私見。アーカイブものではない完全未発表ニュー・アイテムがどこまで受け入れられるのかを気に揉んだ末のアクションは、ネット時代を象徴したエピソードである。ファンだったらそんなの、無条件で受け入れるはずなのにね。

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 下世話な話だけど、「どうやって食ってるんだろう?」と思ってしまうくらい、今ではメジャー・シーンの喧騒からは身を引き、世俗的な所から離れて暮らしているPaddy。自宅兼スタジオのあるイギリスの古都ダラムは学生都市でもあるので、さほど生活費はかからないのかもしれないけど、スタジオの維持費だってそれなりにかかるだろうし、正直印税だって潤沢なものではないはず。
 それこそAndy Partridgeのように、デモ音源公開もビジネスとして捉え、しっかり計画立てたアーカイブものをリリースしていけば、財政的にも少しは潤うと思うのだけど、案外その辺が妙に前向きなので、ややこしくなる。自身が納得いくまでトラックに手を入れ、完成品じゃないとリリースしないのは、イギリスが誇るポップ馬鹿たる所以である。

 Paddy McAloonは世界のポピュラー界において稀代のソングライターではあるけれど、自ら行なうことが多いスタジオ・エンジニアリングの技術レベルは、お世辞にも褒められるものではない。レコーディングの使用機材が30年前のレベルで止まってしまっているため、現代の音響技術に追いついていないのが実情である。
 正直、年代物のATARIで製作された打ち込み音源は、今の視聴レベルでは古臭く聴こえてしまう。機材のポテンシャルが追いつかず、ピーク・レベルを超えて音割れしてる箇所だって目立つ。80年代に活躍したシンセポップ・ユニットの未発表アルバムと言われても、つい信じてしまいそうになるサウンドである。なので、現代のメインストリームの音楽には決して成り得ない。
 ほんとならPaddyの作った音源をベースにして、各トラックの音色だけアップ・トゥ・デイトなサウンドにコンバートしてしまえば、もう少しファン層の拡大に寄与すると思ってるのは俺だけじゃないはず。ていうかPaddy以外の誰もが多かれ少なかれ思ってることなのだけど、そうなる気配はひとっつもない。Thomas Dolbyは現場から離れて長いから難しいとして、もう少し現役感のある若手クリエイターにある程度委ねちゃってもいいんじゃないの?と余計な心配までしてしまう。

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 今後のリリース・スケジュールを考えてみると、一時期よりはだいぶ健康状態も回復しているようだけど、年齢的に偏執的な凝り性は進行しそうだし、一から十まですべてをハンドメイドで行なう作業スタイルは変わらないと思われるので、基本的なペースは変わらないと思う。前述したように、今どきのメジャー・アーティスト同様、平気で4〜5年くらいのブランクを空けることは世間的にごく当たり前になっているし、締め切りに追われたケツカッチンの作業をするのは性に合わなさそう。ていうかそういった仕事をPaddyに期待するのはお門違いだし。
 幸い作りかけのマテリアルは山ほどあるし、ネタに困るといったタイプでもないので、そのへんの心配は少ない。直近の2作同様、過去のアーカイブの幾つかを基本として、そこに新たに作ったマテリアルをプラスしてゆく、というスタイルを今後も続けてゆくんじゃないだろうか。
 これまでも「Michael Jacksonの一生」や「20世紀アメリカ文化の総括」など、構想半ばのコンセプト・アルバムが過去インタビューで明らかにされているけど、正直残された時間を考えると、すべてのプロジェクトの完成はちょっと難しい。なので、地球の歴史を長大な組曲として完成させる予定だった『Earth: The Story So Far』が『Let's Change The World With Music』に取り込まれたように、これまでの大がかりなコンセプトを曲単位に凝縮して、小品集的なアルバムとしてまとめるスタイルになると思われる。実際、名言はしていないけど、長大なコンセプトの名残りを残したような作品もここでは見受けられるし。

 今後のPaddyの仕事を円滑に進めるために必要なのが、優秀なコーディネーターの存在。Thomas Dolbyとのコラボ解消後はもっぱらCalam Marcomがテクニカル・パートナーとなっているけど、彼はあくまでエンジニアであり、サウンド面のアドバイスの域を出ることはない。スタジオという閉じられた空間での音楽ファイルのやり取りのみのコミュニケーションだけでは、外に広がっていかないのだ。Paddyの作品傾向やコンセプトを理解した上で、アーティスト・イメージを保持しつつ、新たな展開を真剣に考えてくれるマネジメント、ビジネス・パートナーが必要なのだ。
 いっそオーケストラとの共演アルバムなんかは相性が良いと思うのだけど、そういった動きもない。幼少時から教会音楽に慣れ親しむ機会の多い英国人ゆえ、ストリングスとの親和性は高い。予算や時間、段取りの煩雑さに対してのリターンが少ないせいもあるのだろうけど、これまでの古臭い打ち込み音源よりはずっとマッチするはず。
 こういった新プロジェクトにまつわる交渉ごとにおいては、アーティスト本人の熱意だけでなく、きちんと損益分岐も考えたコーディネイターの存在が必要になるのだ。問題は、その適任者が誰になるのか。Kitchenwareじゃ規模的に無理そうだし、条件的には一番適いそうなソニーもアーカイブ以外には予算を渋りそうなので、これもまた難しい。
 その辺を誰かプレゼンしてくんないかな。


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1. The Best Jewel Thief In The World 
 直訳すると「世界一の宝石泥棒」。なので、イントロに交じってパトカーのサイレンが遠くから鳴り響いているという設定。シングル・カットも一応されているけど、まぁ取り敢えず出してみました、といった感じ。今さらシングル・チャートにこだわってる風でもなさそうだし。
 それでもシングルにしただけあって明快なリフ・フレーズは覚えやすく取っつきやすい。でも正直、ミックスがねぇ。どの音も主張が強すぎて詰め込み過ぎた印象が拭えない。もうちょっとスッキリ整理してほしかった。



2. The List of Impossible Things
 なので、このくらいのサウンドの加減の方が、Paddyのヴォーカルにはしっくり来る。間奏のギター・ソロは郷愁を誘う。ちょっとブルースっぽくもある拙い感じが今の風貌にもマッチする。
 昔のThomas Dolbyのプロダクションだと、こういった曲調の場合、もっと幽玄としたエコーをかけて奥行きを演出していたのだけど、ここではほぼノン・エコーのドライなヴォーカル・トラックに仕上げている。雰囲気重心ではなく、一音一音をしっかり聴いてもらいたいという心境の変化か、それとも技術スキルの問題なのか。

3. Adolescence
 このシンセの音色は今じゃオールド・スタイルなのだけど、やはりPaddyの作る音楽にはしっくり馴染んでいる。今さらやり方を大幅に変えることもできないし、このサウンドを想定しての一連のメロディ、コード進行、そして歌詞なのだろう。
 一節にアルバム・タイトル「Crimson Red」が挿入されている。
“Adolescence Crimson/Red Fireworks Inside Your Head”
 タイトルは「思春期」の意。永遠の思春期をさまよい歩くPaddy、その秘めたる情熱は深紅の炎の如く熱く、そして自らを焼き焦がす、といった意味か。毛髪はすっかり白いけどね。

4. Grief Built The Taj Mahal
 これも直訳すると「深い悲しみがタジ・マハールを建てた」。これまでよりエフェクトも少なく、ほぼナチュラル・トーンのギターの弾き語りスタイル。曲調的には『Andromeda Heights』期のニュアンスに近く、これも壮大なコンセプトの一片と窺える。地味な曲ではあるけれど、Paddyのヴォーカルが最も映えるのはこういったシンプルなスタイル。

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5. Devil Came A Calling
 発売前にさんざん出回った流出ブートレグのアルバム・タイトルとなったトラック。「悪魔が呼び出しに来た」といった不穏なタイトルが象徴するように、サウンドもダークなテイストで統一されている。凝ったコードもそれほど使っておらず、メロディ自体はほとんどワンパターン、それが呪術性を象徴しているのだろう。
 60年代Dylanのベースメント・テープスのアウトテイクから引っ張ってきた、と言われたたら信じてしまいそうな、そんなテイストのアコギかき鳴らしナンバー。

6. Billy
 ここでも出てきた個人名シリーズ、今回はBilly、William氏。ネオアコ・テイストを彷彿とさせる、やや青さも感じさせるミディアム・チューン。バンドとしてのPrefab Sproutを思い出させてくれる曲調で、オールド・ファンには最もウケがいいと思われる。まだこういったこともできるんだなぁ、と改めて感慨に耽ってしまう。
 あぁ、これももっといい音で聴きたかった。

7. The Dreamer
 サウンド的には最もコンテンポラリーで、間口の広いナンバー。今のPrefab Sproutがどんな音楽をやってるのか?と問われた場合、この曲を聴かせればファンになること請け合いだと思う。まぁそんな機会ってまずないんだけど。
 2部構成の組曲となっていて、後半はほんと『Andromeda Heights』サウンドになっちゃってるのだけど、これもデモ自体はその時期に作られたんじゃないかと思われる。「Dreamer」なんて言葉、50近くになってからは滅多に口に出せないしね。



8. The Songs Of Danny Galway
  Danny Galwayは架空の人物。もちろんモデルは実在しており、かつて楽曲提供し、セッションまで行なってしまったPaddy憧れのアーティスト、Jimmy Webb。ここでは恐ろしく持ち上げられているDanny、いやほんとはJimmy。
 ストレートな憧憬を表現するため、ヴォーカルにも熱が入り、シンプルなバンド・セットでのサウンド・メイキングとなっている。やっぱりこうだよな、Prefabって。AORっぽいメロディアスなのもいいけど、時々こうやってアクティヴにやってくれてた方がメリハリがついてグッド。

9. The Old Magician
 老マジシャンを歌った、こちらも60年代末期Dylanをイメージさせるアコギ弾き語りナンバー。歌詞の内容もDylanっぽく老成した内容。ていうかこの人、昔から老成した歌詞ばっかり書いている。後期に入ってからは純粋なラブ・ソングを書き、そして今は年相応のテーマを歌うようになった。
 若い時に敢えて斜に構えて「老い」を歌ったかつての楽曲より、当事者として素直な視点で歌えるようになったことは、成長なのかそれとも老成なのか。まぁどっちもだろう。

10. Mysterious
 ラストは情緒的なハープが全編を彩るミディアム・チューン。アルバム前半の派手な打ち込みサウンドから徐々にアコースティック・テイストに変化してゆき、ここではゆったりした「いつもの」Prefabサウンド。音数も少ないので、変に強調されたミックスになることもなく、安心して聴くことができる。
 そうだよ、別に「進化」なんかしなくっていい。いつものサウンドで充分なんだ。変に今風に合わせなくたって、聴き続けるファンは必ずいるんだから。






 今のところのPaddy、目立った動きはない。今どきFacebookもtwitterもインスタグラムもやらないので、インフォメーションの経路は恐ろしく限られている。世界中のファンサイトが熱心に情報を上げてくれてはいるけれど、そのほとんどはアーカイブの発掘情報ばかりで、リアルタイムの状況が発信されることはほとんどない。
 多分、今もダラムの田舎で規則正しい静かな生活を送りながら、マイペースな創作活動に励んでいるのだろう。それがPaddyの望んだ環境である以上、ファンは彼が腰を上げるのを待つ他にない。
「惚れちゃった弱み」っていうんだろうな、こういうのって。



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イギリスのネオ・アコ・ポップ馬鹿、最初の覚醒 - Prefab Sprout 『Steve McQueen』

folder 1985年にリリースされた2枚目のアルバム。UK最高21位は、22位を記録したデビュー作『Swoon』とあまり変わらないけど、最高25位のスマッシュ・ヒットのシング”When Love Breaks Down”が話題となってロング・セラーになった。
 それほど愛想もないインディー出身のバンドとしては、なかなかのセールスになったため、ほんとは間髪入れずリリースする予定だったアルバム『Protest Songs』がオクラ入りしてしまったのは、うれしい悲鳴であり、ちょっと不本意なアクシデントではあったけど。

 ほぼ同世代のバンドAztec Cameraと同じネオ・アコ・シーンから出てきた人たちだけど、接点があった話は聞いたことがない。ていうかAztecに限らず、他のバンドとの交流はほとんどないバンドである。
 孤高の存在といえば聞こえはいいけど、いま思えばコミュ障をこじらせてる人間ばかり。今じゃすっかり達観した仙人のような風貌のPaddyを始めとして、ベースのMartinは実の弟だし、恋人だか単なるメンバーだか、ずっと微妙な立場に甘んじていたWendy Smithも、結局は煮え切らないPaddyとのパートナーシップ解消と共にバンドを去り、今ではすっかり業界から足を洗っている。唯一のバンドマンであるNeil Contiが早々に見切りをつけてバンドを去ったのは、正しい判断だったと言える。

 Aztec Cameraとの直接的な関係はなかったけど、彼ら同様、Prefabもまた、このメジャー2作目でガラリと作風を変えてきた。『Swoon』がインディー時代の集大成として、粗削りでどこか未完成の可能性を秘めた習作だったのに対し、ここではメジャー販売網を意識したポップ・サウンドになっている。普通の感性ならまず使おうとしないコード進行や不安定なメロディはそのままに、不愛想な4ピースのシンプルなサウンドだった『Swoon』 と比較して、ここではメジャー・ヒット作と遜色ないものに仕上がっている。

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 この変化はPaddy独自のものではなく、その後長らくコラボすることになる盟友Thomas Dolbyの影響が大きい。
 今もミュージシャンとしての活動は行なっているけど、ネット関連のビジネスマン的側面が強いThomas、この頃は最新機材を駆使したシンセ・サウンドが好評を得て、David BowieやJoni Mitchellなど、大物ミュージシャンからも引く手あまたの活躍だったのだけど、それがどうしてバジェットも小さい新人バンドのプロデュースを引き受けたのか。
 多分双方とも、「ぜひ彼とタッグを組みたい」と指名したわけでもなさそうなので、エージェントからの要請がきっかけだと思う。その後も何かと共同作業を行なっているというのは、目指す方向性が同じだったのだろう。

 『Steve McQueen』は今をもっても彼らの代表作と言われており、実際、Paddy自身にとっても大きなターニング・ポイントとなっている作品である。もしThomasに出会えてなかったら、『Swwon』だけの泡沫バンドで終わっていた可能性もあるし、時代の徒花として片づけられていたかもしれない。
 そんなアルバムが、レコード会社の要請によって、レガシー・エディションが発売されることになる。本来は発売20周年に合わせて2005年にリリースされる予定だったのだけど、大幅に制作が遅れに遅れ、実際リリースされたのは2007年、さらに2年が経過してからだった。

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 普通、こうしたデラックス・エディション形式のアルバム制作の場合、アーティスト本人が関与してくることは、ほとんどない。中心となる作業が、収録トラックのリマスタリングやリミックス、または当時のデモ・テープやライブ・トラックの発掘が主たるもので、実作業はディレクターやエンジニア主体である。せいぜい、形ばかりの監修くらい、名義貸しくらいしかやることはないのだけれど、なぜかPaddy、どこで本気を使ってるのか、新緑アコースティック・ヴァージョン8曲を新たにレコーディングしている。しかも、単なるアコギの弾き語りではなく、時間をかけて熟成され、緻密なオーヴァー・ダヴによって新たな命を吹き込まれている。
 80年代を象徴するDX7サウンドのヴェールを剥ぎ取った中から現れたのは、Paddyのピュアで透徹としたヴォーカルと、丁寧に重ねられた明瞭な響きのギター・サウンドだった。その繊細さからは、20年という時間すら忘れてしまう、エヴァーグリーンなテイストが漂っている。


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1. Faron Young
 トップに相応しい軽快なロックンロール・ナンバー。『Swoon』の延長線上で購入したネオ・アコ・ファンなら、きっとその変化に驚いたんじゃないかと思う。オールド・ロックンロールをリスペクトしたギターの音色、DX7のエフェクト、またバンジョーやブルース・ハープを入れる発想は、やはりThomasの貢献が大きい。ていうか新人バンドをテスト・ケースとした、彼の壮大な実験。
 シングルとしてもリリースされ、UK最高74位。2007年ヴァージョンはギターに薄くシンセを被せており、弦の擦る音までクリアに生々しく録音されている。



2. Bonny
 ここからしばらく続く、Prefab人名シリーズの第1弾。彼女であるBonnyと破局、家を出てゆく様をポップ・サウンドにコーティングして、他の曲とのバランスを取っている。2007年ヴァージョンはシンプルなサウンドをバッキングに、朗々と切なさを表現している。
 Paddyの意図としては、詞のストレートな解釈として、悲壮感漂うニュー・ヴァージョンのサウンドにしたのだろうけど、俺的にはオリジナルの方が逆にドライな質感で好み。

3. Appetite
 単純に"Appetite"という語感が好きだったのだけど、後になって「食欲」の意味だと知り、ちょっと拍子抜けしてしまった想い出。まぁそこをラブ・ソングと絡めて世界観を作ってしまうソング・ライティング能力は、同世代ソングライターと比べても段違い。
 こちらもシングル・カットされており、UK最高92位。でもなぜかオーストラリアでは45位にチャート・インしている。メロディ・ライン的には、このアルバムの中ではわかりやすい方なので、もっと売れてもよかったんじゃないかと思うけど。
 


4. When Love Breaks Down
 でも、この曲に比べると、ヒット・ナンバーとしてのキラキラ感が違っていることに気づかされる。ちなみにこのアルバム、総合プロデューサーはThomasなのだけど、この曲だけPhil Thomallyという人が制作を手掛けている。
 あまり聞いたことがない人なので、ちょっと調べてみると、もともとCureに在籍しており、ちょうどこの頃はプロデューサーやソングライターとして活躍していた頃。Bryan AdamsやThompson Twinsらを手掛けていた、いわゆるヒット請負人。Thomasの音作りだと、時にマニアックになり過ぎるところを、ヒット・チャート狙いで作り込みを減らし、ムーディさを強調することで、高級AORっぽいサウンドに仕上げている。
 なので、俺だけじゃないと思うけど、この曲の「これじゃない感」を持つPrefanファンが結構多いはず。

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5. Goodbye Lucille #1
 すでに『Jordan:The Comeback』への萌芽が垣間見える、このアルバムの中でもちょっと異質な、それでいて親しみやすいメロディを持つナンバー。若手バンドらしく、若き日のPaddyのシャウトするヴォーカルも聴くことができる。
 これもシングル・カットされており、UKでは64位なのだけど、アイルランドではその熱さが好評だったのか、最高28位、4.と同じくらいのチャート・アクションを見せている。

6. Hallelujah
 ギターで参加してるKevin Armstrongは、Thomasのお抱えギタリストとも言うべき、今をもって行動を共にしてる人。ちょっとブルースっぽい響きはあるけど、Thomasの創り出すテクノロジー・サウンドとのミスマッチ感が、逆に相性良く聴こえる。
 この曲もメロディのはっきりしない曲なのだけど、Prefabのファンはあまりキャッチーなメロディを求めていないので、逆にこれも人気は高い。『Swoon』サウンドをビルドアップさせたような、モダンなバンド・サウンドは完成形。なので、レガシー・エディションでもこの曲は再演されていない。ていうか、うまく行かなかったのかな?

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7. Moving The River
 LPでいえばB面は浮遊するメロディ、ちょっと凝ったコード進行の曲が多く収録されている。なので、今もってこのアルバムが多くの人を惹きつけるのは、このミステリアスさ他ならない。一聴して虜になってからも、どこかヴェールに包まれた核心の部分はひっそり残されているのだ。
 レガシー・エディションではオーヴァーダヴもなく、ほんとギター一本のみで歌っており、曲の構造が剥き出しになっているのだけど、クリアに明快になったわけではない。

8. Horsin' Around
 『Swoon』のアウトテイク的な、起伏の少ないメロディを持つナンバー。変則的なワルツは後半、ジャジーなテイストに変化する。Prefabの作品の中でも独特な、ちょっと実験色が濃いナンバーなのだけど、実はシングルB面だと、こういった曲はゴロゴロある。ほんと趣味的な色彩が濃いので、よくこれを収録したものだと思う。

9. Desire As
 ここでのゲスト・ミュージシャンは、前述のKevinとMark Lockhartというサックス・プレイヤー。ほぼ雰囲気づくり的なKenny G.テイストの音色なので、それほど目立った感じではない。
 ブリティッシュ・ジャズ系統のミュージシャンで、今もコンスタントに活動しており、特別代表作みたいなものはないのだけど、なぜかRadiohead 『Kid A』にクレジットされている。ちゃんと聴いてなかったけど、ちょっと意外。
 レガシー・エディションでも再演されているけど、まぁテイストはそんなに変わらない。

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10. Blueberry Pies
 こちらも『Swoon』の延長線上的ナンバーで、最小限のエフェクトによって、やや聴きやすくマイルドに仕上げている。2分程度の小品なので、まぁタイトル同様、お手軽で肩慣らし的な曲。

11. When The Angels
 最後を飾るのは、キリスト教原理主義に則ったナンバー。そこへは神への敬意と共に、どこか皮肉も入り混じった複雑な感情が入るのは、生粋の英国人。
 これもメロディ的には、それほどキャッチーなナンバーではないはずなのだけど、Thomas渾身のアレンジメントによって、ラストに相応しい華やかなサウンドに仕上げている。




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北海道の中途半端な田舎に住む、そろそろアラフィフ男。ほぼ週1のペースで音楽ブログ更新中。節操ない聴き方と思われてるけど、自分の中では一貫してるつもり。 最近は蔵書の整理がてら、古い本を再読中。ジョン・アーヴィングから始まって、フィッツジェラルドやゾラ、モームなど、いわゆる古典の復習中。いつになったら終わることやら。新刊読めねぇや。
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