エレクトロ・デラックス

好きなアルバムを自分勝手にダラダラ語る、そういったゆるいコンセプトのブログです。

シャレオツ・フレンチ集団唯一のヤンキー、James Copley - Electro Deluxe 『Circle』

folder 先月、ついに行われたElectro Deluxeの初来日公演。Twitterやブログなどの反応から察するに、ブルーノート東京というハコが、彼らのエンタテインメント性を会場のすみずみにまで行き届かせられるジャストサイズであったため、相性的にはバッチリ。ホーンセクションを最小限に抑えたコンパクト編成も、彼らのダイナミズムを削ぐことなく、オーディエンスは充分満足した「らしい」。そう、これだけ彼らのことを取り上げておきながら、俺は行けなかった。
 しかし、なんで年末なんだよ…。繁忙期に休み取れるわけねぇじゃん。俺が彼らに逢える日は、いつ訪れるのか。

 というわけで、会場に行った人たちは興奮のるつぼだったらしいけど、その来日公演前に彼らの最新アルバムがリリースされた。ベスト・アルバムが発売されたり、ジャズ系のメディアでは来日公演に向けてのインフォメーションもそこそこ行われており、どうにか認知を広めようとした感はあったみたいだけど、ブルーノート自体がそれほど大きなキャパではなく、2日間は埋まったみたいだけど、年末ということもあって追加公演の話は持ち上がらなかった。結局のところ、年が明けると再び通常営業、いつも通りフランス界隈で時々ライブを行なう、いつも通りの彼らである。
 宣材写真やライブ・フォトで見てもらえれば伝わるように、クセは強いけど愛すべきビジュアル(いつの間にかヒゲ面だ!!)のヴォーカルJames Copley、大仰なステージ・アクションはビジュアル映えするので、見せかた次第では大化けするはずなのだけど、まぁ「待望の初来日」と思っていた人がごく少数だったため、メディアの露出もほとんどなかった。いま調べて知ったんだけど、J-Waveでセッション & トークしたんだね。まだYoutubeで見られるよ。
 ほぼ同時期にStingも来日していたけれど、まぁ扱いは全然レベルが違う。「めざましテレビ」や「Mステ」に出るには、ちょっと知名度足りないしね。

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 ただ、今回は顔見せ的、コンパクトな形でのショーケース的なライブだったため、今後の夏フェスあたりでの再来日の可能性は大きくなった。ジャズ・ファンク・バンドの多くが、アルバム・リリースを軸に活動しているわけではなく、ほぼ恒常的にライブを行なうスタイルのため、今回はたまたまニュー・アイテムもあったから日本に呼びやすかったこともあるのだろう。
 ちなみに今回のライブの後援元としてクレジットされているのが、在日フランス大使館とアンスティチュ・フランセ日本(フランス政府公式のフランス語学校・フランス文化センター)。もともと文化事業へのバックアップは惜しまないお国柄ではあるけれど、国家のお墨付きとは彼ら、フランスではかなりのポジションとなっている。

 日本を含む、スイス・ドイツ・ポーランドを回る小規模ワールド・ツアーも無事終わり、年明けからは再びフランスを拠点として活動する彼らだけど、今のところ、本格的にグローバル展開する気はなさそうである。今回の来日公演のように、主要メンバー5名+少数ホーン・セクションならまだしも、総勢18名(いま何人だろう?)を数えるElectro Deluxe Big Band体勢ともなれば、何かと身動きも取りづらいだろうし。
 まだそれほどの回数ではないけれど、世界各地を回って上々の反応は得たのだから、あらゆる場所でのライブも考えてはいるだろうけど、何しろスタッフを含めれば修学旅行クラスの大移動となるし、経費に見合うリターンがあるかと言えば、場所によってはそれもちょっと微妙である。
 フランスで時たまライブを行ない、数年に一度、じっくり練り上げたアルバムをリリースしてゆく、というルーティンをこなしてゆけば、それなりのポジションでマイペースな活動は保証される程度のポジションを築いているElectro Deluxe。
 ただ、そこに安住するのを嫌ったのか、それとも外部の横やりをシャットアウトしようと目論んだのか、この『Circle』からはハンブルグのインディ・レーベルBroken Silenceからの配給となっているのは、ある意味、彼らの積極的な自己防衛手段である。

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 実のところ、今どき彼らクラスのセールス・ポジションでメジャー所属というのは、ほとんどメリットがない。もともとジャズ・ファンクという音楽自体、マス・セールスをターゲットにしたジャンルではないので、売り上げ見込みや初回ロットもかなり低いレベルに設定されている。いくらフランス・ジャズ・ファンク界のスーパースターと言っても、テレビ露出の多いポップスターやアイドルには太刀打ちできないのだ。なので、販促費などは微々たるもの、宣伝もあまりしてもらえない。前回レビューしたように、今年の夏はKungs効果でCookin' On 3 BurnersがEU圏内でバカ売れしたこともあったけど、あれはほんと天文学的確率、棚ボタみたいなもんだし。

 もともとバンド名から由来するように、ベーシックなジャズ・ファンク・バンドのフォーマットに、エレクトロ/ダンス系のエフェクトやBen l'Oncle Soulらをフィーチャーしたジャジー・ラップを有機的にミックスさせたサウンドが、彼らの初期コンセプトだった。フィーチャリング・アーティストやEDM機材の多用は、少人数編成を前提としたものであって、3枚目の『Play』ぐらいまでだったら、もっとフットワークは軽かったことだろう。
 ただ、その『Play』リリース後に、もともとゲスト扱いだったCopley が正式メンバーとして加入した辺りから、バンドの方向性が変わってくる。
 ちなみに、これも今回初めて知ったのだけど、このCopley、なんとオハイオ出身のアメリカ人。そりゃフランス人でJamesなんて名前、聞いたことないよな。しかも純粋なミュージシャンだったわけではなく、本業はオフィス勤めのサラリーマン。たまたまバーでお遊び半分で歌っていたところを店のスタッフがYoutubeにアップ、それが人伝てにバンドに伝わり、加入となった次第。なんだそりゃ。
 それまではEDMのテイストが強く反映されて、テクノ側へのアプローチも多かったElectro Deluxeだけど、ある意味無粋とも大らかとも取れるヤンキー気質がバンド・スタイルに変化をもたらすようになる。ただ気持ちよさそうに歌ってるだけなのに、つい目が釘付けになってしまう独自のエンタメ性は、EDM系が俄然強いフランスにおいても評判を呼ぶようになる。そんなCopleyのキャラクターを前面に押し出すため、バンドは大編成ホーン・セクションを導入して大所帯となり、逆にEDM成分は減少してゆくことになる。
 フル稼働すると総勢18名に及ぶ大所帯ゆえ、メンバーのスケジュール調整も含めて頻繁なステージはこなせない。だけど、ただ気持ちよく歌うだけ、そんなCopleyに引きずられるように笑顔でプレイする演奏陣らによって繰り広げられるライブは、確実にオーディエンスの心を強く揺さぶる。
 こうしている今もライブ動員は増え続け、キャパは次第に拡大している。理想的なライブ・バンドの成長ストーリーである。

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 でも、メジャーではそんなDIY戦略にも制約がかかり、横やりが入る。新人ピッチャーがベテラン・コーチのアドバイスを真に受けてフォームが崩れ、ワンシーズンをフイにしてしまうように、助言やアドバイスなんてのは話半分で聴くものである。それを強要しようとするのなら、何もメジャーでいるメリットは何もない。
 今回の『Circle』も近年に倣い、ほぼスタジオ・ライブ的なレコーディング・スタイルを取っている。Copleyによるライムが多少ある程度で、ヒップホップやEDMのテイストは一掃されている。残ったのは純粋な、純正のElectro Deluxeサウンドである。60~70年代のヴィンテージ機材や楽器をふんだんに使い、メンバー総出で狭いスタジオに顔を突き合わせ、「せーの」で出す音は、とても分厚く強固な音の壁となってリスナーに立ちはだかる。その生音の迫力には、生半可なEDMでは太刀打ちできない。デスクトップ上の切り貼りとは無縁の世界である。

 そんなコンセプトを貫いてゆくため、彼らはメジャーから離脱、インディーズを併用した自主配給の道を選んだ。アーティスト自身によるレーベル運営は、煩雑な事務手続きなど、何かと面倒なことも多いけど、中間搾取を圧縮できる分、逆に利益配分が多くなる事例もある。各メンバーへの還元が多くなる分、課外活動は縮小、本業に専念もしやすくなる。現代ジャズ・ファンク・バンドの多くが選択している道だ。
 手の届く範囲/目の行き届く範囲での活動を生真面目に行なってゆくことを選択したElectro Deluxe。まだまだ彼らの活動からは目を離せない。

 だからお願い。できれば、年末をはずして再来日してね。


CIRCLE
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1. All Alone
 ファンクというよりソウル色が強い、Copleyとコーラス隊とのコール&レスポンスも絶妙。「Gatta,Gatta」のパートがOtisへのオマージュを思わせる。やっぱヤンキーだな、この辺は。



2. Keep My Baby Dancing
 こちらもヴォーカル主体、同じくソウル・チューンだけど、泥臭さが抜けてディスコ寄り。ホーン・アレンジがEarthっぽいので、キラー・チューンとして今後もラインナップに長く残ると思われる。



3. K.O
 来日公演2日間ともオープニングを飾った、タイトル通り挑戦的なファイティング・ポーズを思わせるナンバー。Copleyのヴォーカルも力強く、ちょっとラフな感じ。むしろここでの主役はホーン・セクション。中盤以降の金管楽器の洪水は目もくらむ豪快さと美しさとを併せ持つ。

4. Liar
 ジャジー・ポップといった趣きの、少し軽みのあるライトなナンバー。リズムとホーンばかりがここまでフィーチャーされていたけど、ここではバンドの創始者のひとり、Gael Cadouxによる鍵盤系がアンサンブルをリードしている。Copleyも力の入ったヴォーカルが多かったけど、『Play』くらいまではこういった曲も半々で入っていたのだ。ジャズのテイストはなるべく残してほしいよな。

5. Paramount
 やっぱりフェンダー・ローズとホーンが入ると、ほんと60年代のジャズ・ファンク、ソウル・ジャズっぽくなるよな。Herbie HancockやRamsey Lewisなど、鍵盤系を扱う人がファンクをやると、ほんとカッコいい。

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6. Oh No
 ネオ・ソウルっぽく、イイ感じで肩の力の抜けたライト・チューン。FMのパワー・プレイにでもクローズアップされれば、結構いいところまで行くかもしれない。そうなんだよ、こういったAOR臭いのもできるんだよこの人たち。でも、やりたがんないんだよな、プレイしてても在り来たりになっちゃうしね。

7. Circle Of Life
 ここに来て真っ当なピアノ・バラードをぶっこんできたElectro Deluxe。『こんなこともできますよ』的に、まぁアルバム構成にメリハリをつけるためと割り切ればこういったのもアリなのかな、と納得してしまいそうだけど、でもそうじゃないんだよな。誰もJohn Legendみたいになってほしいわけじゃないし。でも、間奏のホーン・ソロは絶品。それだけで十分満足。

8. Bad Boys On The Run
 ちょっとガレージ・ロックっぽさの漂う、疾走感が増したソウル・ナンバー。中盤のナンバーはどれも、彼らとしては新機軸・未開のジャンルのサウンドが多く収録されている。変に不慣れなジャンルに手を染めることはないと思うけど、あらゆるジャンルの吸収によって、新たな方向性が見いだせるのなら、それはバンドとしては良い方向なのだろう。

9. Cut All Ties
 黒いよなぁ、これは。ほぼすべてのジャズ・ファンク・バンドがリスペクトする、OtisやAl Greenを想定したかのような、メロウでありながら、とても強いパッションを持つナンバー。これってやっぱユーラシア大陸の人間じゃなく、ヤンキー人種だからこそ出せるものだと思う。



10. Majestic
 コッテコテのファンキー・チューン。軽快なギター・カッティングに手慣れたホーン・アンサンブル、よく聴くと高度で複雑なリズムを刻むドラム・ワーク。もちろんジャズ・ファンク・バンドだから、こういったインスト・チューンはお手の物であることは当然だけど、大編成のホーンを自前で持っている分だけ、シンクロ率がまるで違っている。こういうのが大好物な俺、これならいつまでも飽きることなく聴き続ける自信がある。

11. Eye For An Eye
 ソウルだジャズだファンクだとカテゴライズするより、むしろ楽しいパーティ・チューンと見る方がしっくり来る、そんな軽快で踊りだしたくなるアッパー・チューン。サビメロもカノン進行でしっかり作り込まれてるし、演奏陣にも見せ場はタップリ。特に中盤のコール & レスポンス、世界中を探しても、ここまで能天気かつグルーヴィー、それでいてシャレオツなサウンドはなかなか見当たらない。

12. Through My Veins
 今度はブルース・タッチ。こういうのもアリなんだな、このバンドは。今回のアルバムは特に、コーラス陣とのレスポンスが大きくフィーチャーされている。この分だとElectro Deluxe Big Band、次はコーラス部門も増設か?そうなるともう、バンドじゃなくてオーケストラだな。

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13. Fnk Live
 ラス前なのに、なぜかファンファーレっぽいフレーズを奏でるホーン、コッテコテに黒く歪んだギター。全盛期のEarthがもっとジャズっぽかったら、こんな感じだったんじゃないかと想像してしまうインスト。後半のサックス・ソロ、これももう、いつまでも聴いていられるな。あとパーカッション。あんまりこのバンドではフィーチャーされないけど、途端にラテン・テイストが強く出て、これはこれで好き。

14. Heaven Can Wait
 メロディが立っている分だけ、これまでよりAORっぽさが際立っている。これをラストに持ってきたというのは、やはり今後の方向性、グローバルな方面もちょっとは視野に入れているよ、という意思表示なのかもしれない。日本人のメロウな感性にもアピールする泣きのサビは、ソウル臭さが苦手な人にもピッタリ。
 だからCopley、ヒゲ剃れよ。充分イイ男なんだから、そっちで勝負してよ。Sean Conneryになるには、まだ若すぎるよ。



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フレンチ・シャレオツ系ジャズ・ファンク情熱系 - Electro Deluxe 『Play』

folder 地元フランスを中心に活動しているため、いまだ日本ではそれほど話題に上らない、なのに俺的には盛り上がってる現役ジャズ・ファンク+ちょっぴりエレクトロ風味とラップも少しのバンド、Electro Deluxe。今回紹介するのは2010年リリース、3枚目のオリジナル・アルバム。

 どのバンドもそうだけど、デビューから一貫したコンセプトを持って活動していたとしても、ターニング・ポイントが訪れることがある。短命のバンドならともかくとして、それなりにライブの数もこなし、アルバム・リリースも定期的に行なっていたら、メンバーの出入りによって新しい血が導入されたり、また不動のメンバーでも外部活動や嗜好の変化によって、主旨が変わることも多い。
 Electro Deluxeもその例に漏れず、当初はGael Cadoux(key)とThomas Faure(sax)を中心とした、スタンダード・ジャズ+エレクトロorラップというサウンド・コンセプトでスタートした。まだホーン・セクションが正規メンバーじゃなかったため、今ほどファンク臭は少なく、曲によってはまんまアシッド・ジャズっぽくなってしまうという、今とは似つかないスタイルでの活動だったのだ。
 当時はリード楽器がキーボードとサックス1本だったため、サウンドの幅を広げるにも限界があったのと、まだそれほどライブ活動に積極的でなかったため、バラエティを持たせる苦肉の策で、スタジオ・ワークの比重が大きかった。
 
 ただ、それでも地道にコンスタントに活動を継続してゆくと、フランス国内でもそこそこ好評を期すようになり、口コミによってライブ動員も増えてオファーが増えてくる。それに伴って同好の士が集うようになったのか、いつの間にかホーン・セクションが正規メンバーになり、ゲスト・ヴォーカルも増えてきた。あれよあれよと言う暇もなく、いつの間にか大所帯となって、ついには『Electro Deluxe Big Band』と称して、総勢18名でのライブ&アルバム・リリースにまで至った次第。
 無理に背伸びすることなく、地道にバンドの地力をつけてきた結果なのだろう。

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 で、いろいろ乗り越えてきた末にリリースされたこの『Play』では、それまでのアシッド・ジャズ的クラブ・サウンドはすっかり後退し、メインとなるのは重厚なリズム・セクション、それに絡むホーン・セクションの音の壁、そして多彩なゲスト・ヴォーカル陣による、フィジカルなグルーヴである。これまで人員的・予算的に苦肉の策だったエレクトロ風味で間に合わせる必要がなくなり、ほぼ自前の生音で賄えるようになったのだから。

 このころはまだ正式メンバーではなく、あくまでゲスト・ヴォーカルの一人という扱いだったJames Copleyが数曲でプレイしているのだけれど、やはりこの人が一番インパクトが強い、ていうかアクが強い。Ben L'Oncle Soul、Gael Fayeなど、個性的なラッパーを相手取って、また地力の強いバンド・セクションにも一歩も引けを取らず、あの暑苦しい顔・アクションで一際存在感を放っている。
 思えば、このCopleyとの出会いというのが、多分バンドとしてのターニング・ポイントだったのだろう。
 
 アシッド・ジャズのサウンド・フォーマットはもともと、クレヴァーな黒人女性ヴォーカルとの相性が最も良く、Electro Deluxeもデビュー当初はインストor女性ヴォーカル・ナンバーの二本立てをメインとしてやってきたのだけれど、アシッド・ジャズに徹するには、バンドの個性が強すぎたのだろう。女性ヴォーカルを引き立たせるため、演奏陣が必要以上にかしこまってしまったあまり、無難なプレイでお茶を濁してる場面も見受けられる。
 彼らの持ち味はビッグ・バンドでこそ発揮されるものだし、その音の壁に負けないヴォーカルは、シャウト型の女性ではなく、多少テクニック的には難がありながら、熱血バカ的なタイプの方が合うのだろう。狭いスタジオの中でリズム・パターンの打ち込みに精を出したり、ヴォーカルのニュアンスに合わせたトラックの修正など、彼らの性ではない。

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 で、このアルバム、ヴォーカル・ナンバーありラップ・ナンバーありインストありという、2ndまでの流れを引き継いだ構成になっているのだけれど、やはりどうしても注目してしまうのが、Coplayのプレイ&パフォーマンス。
 写真を見てもらえれば一目瞭然だけど、一般的な二枚目ではない。味のある表情といった方がいいかもしれない。で、なんとなく想像できるように、うまく立ち回れるような人ではない。どちらかと言えば胡散臭い感じが漂う、はっきり言って不器用な人である。
 テクニックがないとは言わないけど、そういったテクニカルな面で注目されようとは思っていないはずである。むしろ常にハイパーMAXなテンションで突っ走り、汗だくになり、唾を飛ばし、大ぶりなアクションによって、その膨大なカロリー消費量が観客を魅了してしまう、そういった人である。なぜか知らねど満ち溢れてくる「根拠のない自信」のようなものが、どうにも最初はアクが強くて受け入れづらいのだけれど、いつの間にかクセになってしまって、終いには応援せざるを得なくなってしまう。

 近年のフランスのアーティストとして俺が知ってるのは、せいぜいDaft Punkくらいだけど、多分ほとんどの人は俺と同レベル程度の知識だと思う。フランス出身であるという以外、彼らとの共通点は見いだせないのだけれど、そのフランス繋がりによるものなのか、サウンドからジャケットからフォト・セッションからPVから漂うシャレオツ感はハンパないものがある。やはりフランス人、頑固で排他的な性格だけれど、センスだけは相変わらずキレッキレである。


プレイ
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01.Play 

02.Please Don't Give Up 
 ジャジーでニュー・ソウルの匂いさえ感じさせるメイン・ヴォーカルは、フランスのモータウンからデビューしたBen L'Oncle Soulによるもの。当時はまだデビュー前だったけど、すでに充分な存在感を放っている。
 やはり演奏が最高。ヴォーカルに合わせたジャジー・ヒップホップの流れなのだけれど、シンプルなバンド・セットながら、グルーヴ感が凄い。



03.Black And Bitter 
 ここで我らがCopley登場。ちょっとアイドリング気味なしっとり大人しめのナンバー。この時期のサウンドは、まだジャズ8:エレクトロ2くらいの配分で構成されているため、エフェクトの部分がヴォーカルのダイナミズムをちょっと減じている。いやカッコイイのだけれど、彼にはもっとメチャクチャに歌い上げてほしい。

04.California 

05. Between The Lines 
 このアルバムのハイライト的楽曲。こちらもBen L'Oncle Soul参加だけど、同じくフランスを代表するヒップホップ・バンドHocus Pocus の20syl(ヴァンシールと読むらしい)によるラップが前面に押し出されている。こちらもElectro Deluxe同様、生音でのライブが評判を呼んでおり、互いの共通点は多い。
 ネチッこいBenのヴォーカルは、正統なニュー・ソウルの流れを汲んだスタイルに徹しており、攻撃的なラップとジャズとファンクを絶妙にブレンドしたサウンドとのギャップが心地よい。ライブだとCopleyが歌っているのだけれど、会場が一体となるのがわかる、ほんと盛り上がる曲。



06.Let's Go To Work 
 ラップ・パートはフランスのヒップホップ・バンドMilk Coffee and SugarのGael Fayeという若手。Copleyによるヴォーカル・パートは英語なのだけれど、ラップはフランス語なので、もうさっぱりわからん。でもこの何ともミスマッチ感は、これはこれでいい感じ。
 導入部から中盤まではごく普通の良質なジャズ・ファンクなのだけれど、終盤になるにつれて、どうにもプログレ的な混沌とした展開になるのが、いつもながらスリリング。



07.Mousse 

08.Where Is The Love 
 ちょっとくぐもったスモーキーなヴォーカルを聴かせるBenに合わせて、気だるい感じのネチッこいスロー・ファンクをプレイするバンドがいい仕事。
 しかしこのBen、ほんとこのアルバムでは大活躍しており、曲調に合わせて様々な表情を使い分けている。ソロ作品を動画で見てみたのだけれど、レコード会社のせいなのか、どうにもポップ・ソウル的な売り方なので、ちょっともったいない。こっちの路線の方がずっとクールなのにな。ま、でも売れないけどね。

09.Old Stuff 

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10.Fine 
 後にレコーディングの常連となるNyr Raymondをフィーチャーした、ジャズ寄りのナンバー。どことなく秋のフランスの散歩道を連想させる。とても映画的な情景を喚起させる、地味だけれどイマジネーションの広がりやすい曲である。

11.Talking About Good Love... 
 もはやライブでは定番のアッパー・チューン。疾走感に溢れながらタメがあり、グルーヴ感タップリというのは、ジャズ・ファンク系のナンバーでは貴重。こちらも前曲同様、Nyrをフィーチャー。日本ではほとんど知られてないし、俺も詳しくはほとんど知らないけど、味のあるシンガーである。



12....Talking About Good Love 
 ややSlyっぽさも感じさせる、シンプルなバッキング、凝ったリズムの小品。音がスカスカながらもファンクっぽさを感じさせるのは、どことなくZappを連想させる。タイトルは同じながら、まったく対照的な印象を感じさせる2曲。

13.Chasseur de tetes 

14.Sorry 
 12.の空間を活かしたファンクと、10.のメロウ・ジャズとのいいとこ取りで作られたラスト・ナンバー。ファンクにしてはお行儀よく聴こえてしまうのは、フランス訛りの英語だからと言えるし、ジャズにしてはエモーショナルさがちょっと、と言えるのは、こちらもやはり上品さが漂うため。




 なので、次回作で大きくCopleyをフィーチャーしているのは、そういった理由もあるのだろう。あそこまで豪快でわかりやすいダイナミズムがないと、ライブ映えがしない。
 演奏のニュアンスを聴かせるのではなく、もっと奥底から湧き出る熱い想いをたぎらせて、無様にヨレヨレになりながら歌い踊りプレイする、そんな姿が人の心を動かし、そして笑い涙するのだ。

 オフィシャル・サイトでツアー予定を見ると、4月にチョロっとスイスを廻り、またずぅっとフランスをくまなく廻り、でちょっとドイツに顔を出した後、またフランスのドサ廻り、という相変わらずのマイペース。何しろ19人の大所帯だけあって、そんな遠くへも行けないのだろう。取りあえずバンドは維持できているようなので、存続してるうちは、まだ日本に来てくれる望みもあるものだ。
 いやほんと、そろそろ来ねぇかな。


Home (Deluxe Version)
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プレイ
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フランス人なのに暑苦しい男、James Copley - Electro Deluxe 『Home』

folder ここ一年くらい、俺的には結構盛り上がっているにもかかわらず、日本では知名度も人気的にも悲劇的なくらいイマイチなフランス産ジャズ・ファンク・バンド、またまたElectro Deluxeのご紹介。
 
 フランス国内ではそこそこ盛り上がっているらしく、twitterやfacebookをチェックしていると、月2~3度くらいだけど、ライブの予定が半年先くらいまで開示されており、切れ目なくオファーが続いているのがわかる。
 あだ、その人気がユーロ圏内から飛び越えることが難しいらしく、現状ではライブもほぼフランス国内に限定されており、海外公演は至難の業だという状況が続いている。それでも草の根的に世界中に広がりつつあるファンたちに向けて、また更なる拡大を目指して、彼らもいろいろ策を講じている。

 海外のバンドがライブ・シューティングを行ない、Youtubeで発信してファンの拡大を狙うことは、近年どのバンドも力を入れていることである。彼らもまた例外でなく、特に今年に入ってからは更新の頻度が多くなっており、現在もほぼ月一くらいのペースで動画をアップしている。
 当初は臨場感あふれるスタジオ・セッション中心で、シンプルかつ低予算のハンドメイド、手作り感満載の作りだった。ただ、このアルバムがリリースされた前後になると、どうも予算が増えたのか、本格的なスタジオ・セットを組んで観客を入れてライブを行なったり、郊外の一軒家へロケに出たりと、曲ごとに趣向を凝らした作りになっている。最近ではスタジオ・セットを組んで寸劇仕立て、3人のバック・ダンサーに翻弄されておどけるヴォーカルのJames Copleyが、ちょっぴりカワイイ(とはいっても、愛想の良いMorrissey似のオヤジが蝶ネクタイにタキシード姿で溌剌と動く様をカワイイと思えるかどうかは、あなた次第)。

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 俺はどうしてこんなにこのバンドが好きなのだろう?
 何が魅力的なのか、なぜそれほど俺の心を魅了するのか-、整理するため、ちょっと箇条書きにしてみた。
① ジャズやファンク成分の強い無国籍サウンド
② ロックの影が薄い
③ ファンク要素の強いリズムと、ジャズ・テイストのホーン・セクションとの絶妙な組み合わせ
④ ルックスはそれほど…、というかビジュアル面で勝負してない、一般的なイケメンは数少ない
 以上、いくつか羅列してみると…、なんだ、ただのJoe Jacksonじゃねぇか。
 
 人の趣味嗜好はそれぞれだけど、俺という人間は、この手のサウンドにはほぼ無条件で反応してしまうらしい。これまであまり意識したことはなかったけど、それくらいJoe Jacksonと共通点が多かった。
 これらの条件に当てはまるアーティストとして、他にSteely Danがいる。彼らも基本、個々のキャラクターを前面に押し出したタイプじゃないよな、そういえば。Donald Fagenがソロ・デビュー間もない頃、あの『Nightfly』のジャケットでシブい大人のフェロモンを放出していた時期もあったけど、それももう昔の話、今じゃただの偏屈なオヤジである。片割れのWalter Beckerは相変わらず宮崎駿そっくりだし。
 ④の条件に絞ると、他に大滝詠一やBeautiful Southも該当するのだけど、掘り下げるとキリがないのでやめておこう。

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 バンド名の由来通り、デビューと2枚目くらいまではエレクトロ成分を若干まぶしたビートと、ジャズ・テイストな生音との融合、それにごくわずかのヒップホップ風味も入って、とっ散らかってごちゃ混ぜなサウンドになっており、その未整理加減こそが一部のジャズ・ファンク好きには早くから注目を浴びていたのだけど、あくまで狭いジャズ・ファンク村での内輪の話題であり、それが外部に大きく広がるほどではなかった。
 バンドとしての方針というか、サウンドのコンセプトがイマイチ曖昧だったのだ。多くの大衆に届けるには、もっとわかりやすい言語が必要だ。
 しかし、バンド結成から間もなかったため、何をやり始めるにもすべてが手探りだ。確固としたコンセプトの立案にはまだ時間が必要だったし、もしあったとしても予算も時間も、そしてメンバーそれぞれのスキルも充分でなかったのだろう。
 
 地道な活動を続けるうち、それなりにではあるけど知名度も広がり、それなりにライブのオファーも増え、今までならシンセ機材で出していた音も生音、特にホーン・セクションをレコーディングに使えるようになった、さらに予算が増えるとパートタイムではあるけど、ライブ・メンバーとして常駐できるようになった、最初は予算の関係上、苦肉の策だったループ・ドラムやプリセット音も、わざわざ使う必要がなくなってきた。理想的なバンドとしての成長である。
 ていうか、もともとこんな感じのサウンドを志向していたのか、それとも行き着いた結果なのかはわからないけど、バンドとしてはいい感じで行ってるんじゃないかと思う。


Home
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Electro Deluxe
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1 Devil
 パーティ・バンドっぽいオープニング。ホーン・セクションもベースも躍る感じでプレイしており楽しそう。ビデオは郊外の誰かの一軒家の別荘?っぽい設定。いつものステージ・スタイルではなく、格好も非常にラフ。でもどんな時でもCopleyだけはただ一人、シャツのボタンをキッチリ上まで留めている。

 
 
2 Showdown
 Frank Sinatraっぽいジャズ・テイストの強い曲。歌だけ聴いてるとまったりっぽいが、やはりこのバンドのリズムが跳ねる跳ねる。
 
3 Free Yourself
 
4 Twist Her
 1.と同じ日に収録されたテイクもあるが、小芝居仕立てで作られたビデオ・クリップの方が面白い。フランスの大衆演劇場を模したセットの中で、先ほど挙げたCopleyを始めとするバンド・メンバーの熱演ぶりが微笑ましい。バック・ダンサーの中国雑技団張りの演技も見もの。

 
 
5 The Ring
 ややStax系のリズム&ブルースを思い起こさせる、彼らにしては珍しいタイプの曲。ベタっぽいバラードだが、情感たっぷりに、しかもドライに歌い上げるCopleyがカッコよく見える。あまりべたつかない歌い方はこの人の強みだろう。
 
6 G-Force
 
7 Smoke
 ビデオでは若手ラッパーBeat Beat Assailantとコラボ。アルバム・バージョンではCopleyのソロだが、断然ビデオの方が必見。こちらは大きめのスタジオでのセッションとなっており、よってホーン・セクションもフルで入っており、Electro Deluxe Big Band名義。大人数で盛り上がるCopleyと対照的に終始クールな態度のAssailantとの対比が面白い。
 こういった時、オヤジって盛り上がるんだよな。

 
 
8 Ground
 
9 Turkey
10 Blacktop River
 ちょっとレゲエ調の、これも今までなかったタイプの曲。やはりホーンが常駐するようになるといろいろアイデアが浮かんでくるのか、まぁアルバムにバリエーションを持たせるためには、こういった曲も必要なのだろう。

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11 Rise Up
 ライブでは情感たっぷりに歌い上げるバラードから一転、フル・バンドで盛り上がるパターンだけど、アルバム・ヴァージョンは最初っから飛ばしまくるブラス・ファンク。そんな音の壁にも負けない、暑苦しいまでのCopleyの個性あふれるヴォーカル。
 わかった、日本では彼のようなキャラクターは濃すぎるんだよな、きっと。イギリスじゃ国民的大歌手のTom Jonesだって、日本じゃさっぱりだもの。もう少し薄めればちょうどいいのかもしれないけど、そうなるとバンドの持ち味がかなり失われてしまうことになる。難しいところだ。
 
12 Comin' Home
 Otis Reddingに聴こえる瞬間もあるくらい、珍しく素直なソウル・バラード。
 あまり語られることがないのだけど、ドラム担当のArnaud Renavilleという人、この手のバンドにしてはドラムがズシッと重く響く。ファンク系バンドの多くはノリとリズム感を売りにしているため、ハイハットももっと軽く響く場合が多いのだが、彼の場合、このようなしっとりしたスロー・ナンバーでも重厚感がある。
 ビデオではCopleyが時々変顔で唸ったりもしているが、基本シリアスに真面目に歌っているのが、どことなく滑稽。

 




 何しろ米米クラブにも引けを取らないくらいの大所帯バンドのため、なかなか小回りが利かず、海外公演もそんなにできない現状が続いている。
 どうにか世界的な企業CMなんかで取り上げてくれればいいのだけれど、何しろ他国を平気で見下すフランス人だけあって、それもまた難しいだろう。変な方向で売れてしまってポップになり過ぎるのも、ファンとしては複雑なところ。
 やっぱりこのままマイペースで、時々ビデオ・レターみたいな形で元気な姿を見せてくれるのが一番無難なのでは、という結論に落ち着いてしまう。
 まぁ、元気でやっててくれりゃいいか。



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北海道の中途半端な田舎に住む、そろそろアラフィフ男。ほぼ週1のペースで音楽ブログ更新中。節操ない聴き方と思われてるけど、自分の中では一貫してるつもり。 最近は蔵書の整理がてら、古い本を再読中。ジョン・アーヴィングから始まって、フィッツジェラルドやゾラ、モームなど、いわゆる古典の復習中。いつになったら終わることやら。新刊読めねぇや。
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