folder 2005年に発売された、前作からは8年ぶりのオリジナル・アルバム。通算で行くと…-、ちょっとわかんない。
 以前、Stevie Wonder『Hotter Than July』のレビューでも書いたのだけど、音楽業界が黎明期だった1960年代デビューのアーティストは、どれもきちんとした出版管理が為されていなかった。とにかくあらゆる組み合わせで、各国独自編集のアルバムが乱発されていたため、ディスコグラフィーというのがあまり意味を成さないのだ。
 Rolling Stonesレーベルが設立された70年代に入ってからは、そういったリリース・ラッシュも落ち着いたけど、逆にビジネスマンMickの独裁的マネジメントが裏目に出て、アイテム数が絞られ、怪しげなコンピレーションが一掃されてしまったのは、それはそれでちょっと淋しい。
 ところが近年になってから、頑固なMickの方針が変わったのか、ネット限定ではあるけれど、過去のライブ・アーカイブを惜しげもなく、結構なハイ・ペースでリリースしている。
 この心境の変化が何なのか、そろそろ年齢を自覚して、キャリアの総決算モードに入ったのか、それとも金融資産の目減りが著しい、特に最近何かと踏んだり蹴ったりのRon Woodへの救済措置なのか。
 勘繰る事はいろいろあるけど、何かと話題の尽きない人たちである。

 ドラム・ループや派手な外部コーラスを導入した90年代を経て、新世紀に入ってからリリースしたベスト・アルバム『40 Licks』に収録された新曲群では、ほぼメンバーのみのシンプルなナンバーを披露したStones、そのセッションで手応えを掴んだのか、続くこのアルバムでは、原点回帰的なストレートなロック・サウンド一本で押し通している。
 前作『Bridges to Babylon』 がMickの仕切りによって、時代に則したテクノロジー機材を導入、まぁそれなりには売れたのだけど、はっきり言って「これじゃない感」を持ったStonesファンは多かったはず。彼らの活動状況はファンだけでなく、世界中のオールド・ロック・ファン、日本ならレココレ購読者も注目する一大イベントだったため、その消化不良な出来栄えは微妙な賛否両論を巻き起こした。

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 ここまで書いてきてなんだけど、正直な話、彼らくらいのキャリアにまでなっちゃうと、今さらニュー・アルバムのコンセプトがどうしたサウンドがどうしたなど、そんなのはもう瑣末なことであり、重要ではなくなっている。もはや存続すること自体が目的化しており、とりあえずメンバー4人が揃っていれば元気でやってくれていればそれで満足、という状態になっている。
 外部から見れば、いつも安定した品質、いつまで経っても変化のないゴキゲンなロックンロールをやってくれれば満足なのだろうけど、バンド運営の視点で見れば、そういうわけにもいかないのだろう。単なる懐メロ・バンドのレッテルを貼られぬよう、その辺は経営者であるMickが率先して、旬のミュージック・シーンとの接点作りに尽力している。
 かといって、彼もほんとに好きでTaylor Swiftなんかとコラボしているとは思えず、ミュージック・シーンへの話題提供としてのパフォーマンスというのが見え見えである。昔から時代のトレンドを追うことが好きな人ではあったけど、さすがに御年70も過ぎれば、無理やり感は拭えない。まぁその辺も重々理解の上、図々しさ丸出しでないと、ここまで長いことエンタメ・シーンで生き残れてるはずもないのだけど。

 90年代のアルバム2枚はどちらもMick主導、これまでのルーティンだった、延々と続くジャム・セッションから産み出される偶然の産物ではなく、きっちりプロデュースされブラッシュ・アップされたサウンドだった。トップ40ヒットと比較しても見劣りしない、重厚でエンタメ感もプラスしたモダン・サウンドは、すっかりスタジアム公演が定番となった彼らのスケールにフィットしたものだった。
 だったのだけどしかし、ファンの誰も、そういった進歩は求めていないのだった。バンド名のごとく、生きている限りは転がり続けることもまた、バンドの宿命ではあるけれど、ここまでのキャリアになってしまうと、革新的なサウンドを求めるのは酷だろうし、第一バンドの成り立ちからして、変幻自在なキャラクターではない。
 もはやとどまり続けること、老害だと何と言われようと、定番の味を出し続けることこそが、最も期待されていることなのだ。

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 そういった空気を悟ったのか、このアルバムでは久し振りにKeithが制作サイドに復帰、彼のカラーが強く出た作品に仕上がっている。
 前回レビューした『Dirty Work』もそうだったけど、Keithが出しゃばってきた場合は、ベーシックなロックンロールが中心となり、ファンや評論家の受けも良くなる傾向にある。特にこの時期は、Ron Woodがアル中やら何やらの体調不良で使い物にならず、MickとKeithが膝を突き合わせて作り込んだ曲も多い。それが結果的に一体感が生まれ、Keith望むところのゴキゲンなロックンロール作に仕上がっている。
 今どき古色蒼然としたロックンロールなんて真っ平ゴメンだぜ、という発言の多いMickもまた、最初は嫌々ながらも、結局は同じ穴のムジナ、Keithの迫力に押し切られたのか、自分の声質にフィットした、ブルース色の濃いナンバーを書き下ろしている。

 来年には久し振りにレコーディングを始めるらしく、新作に向けて各メンバーの動きが慌ただしくなってきている。こちらも久し振りのKeith新作、Ronnie参加のFaces再結成など、まぁ話題には事欠かない。
 あとは誰も欠けることないよう、ただ祈るばかり。
 多くは望まないよ、やっててさえいてくれたら。


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1. Rough Justice
 普通にカッコいい。ただそれだけ。ていうか、それ以上の賛辞が思いつかない。誰もが思い浮かぶようなStonesソングの完成形。直球ド真ん中のハイパー・ロックンロール。Charlie Wattsのドラムが全然衰えを感じない。こういったアップ・テンポ・ナンバーを聴いてると、やはりバンドの要は彼なのだな、ということに気づかされる。



2. Let Me Down Slow
 Stones風カントリー・ロックの、こちらも完成形。70年代のスワンプ・ロックはもっと泥臭くかったけど、リズムが立つことによってモッサリ感がなくなり、21世紀でも十分鑑賞に堪えうるクオリティ。

3. It Won't Take Long
 テンポを少し落としたミディアム・ナンバー。
プロデューサーのDon Wasの腕もあるのだろうけど、ヴォーカルとギターの聴かせ方がほんとうまい。音がダンゴになることなく、それでいてかっちり分離してるのでもなく、ミックス加減が絶妙。特にこのアルバム、近作と違って音数は少ないため、一つ一つの音を太くミックスしないとスカスカになってしまうところを、うまくまとめている。

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4. Rain Fall Down
 こうしたファンク風味はやはりMickの真骨頂。これがKeith主導になると、レイド・バックし過ぎてこの味が出ない。やはり2人でひとつなのだな、このコンビは。
 地味なナンバーだけど、なぜかシングル・カットされており、UK33位US21位にランク・イン。

5. Streets Of Love
 すっごいベタなバラードだけど、俺的にはStonesのバラードの3本の指に入るほどのお気に入り。ここでの主役は何といっても、めっちゃソウルフルなヴォーカルのMick。ここまで熱いパフォーマンスは久し振りなんじゃないかと思われる。ここ数年は特に、もっとクレバーなイメージだったので。
 キャリアも最終コーナーに入っていることを意識しているのか、ここでここまでわかりやすくエモーショナルなナンバーを出してきたことに、彼らの気概が感じられる。もっと評価されてもいい。



6. Back Of My Hand
 ゴリゴリのブルース・ナンバー。Mickは滅多にやってくれないけど、ブルース・ハープを持たせたら、多分世界で1,2を争う名手であることは案外知られていない。ブルース・シンガーと呼ばれるのを嫌ってる人なので、なかなか見せてはくれないけど、やればできる人なのだ。やっぱKeithがケツを叩いてくれないと。
 とはいっても俺、ブルース・ソングはあまり興味なし。なかなか聴かせるナンバーなんだけどね。

7. She Saw Me Coming
 譜割りで追うと、”Start Me Up”を連想してしまう、こちらもサビ一発のナンバー。歌詞もそれほど内容はないけど、Stonesに意味を求めちゃいけない。あくまで歌詞なんて付け足しだから。

8. Biggest Mistake
 カントリー・ロック・テイストのミディアム・ナンバー。ちょうどMickがJerry Hallとうまく行かなくなっていた頃で、それに合わせてリリースされたことで話題になったはず。まぁこういったMistakeも逆手にとってプロモーションに使ってしまうのは、彼らの思惑通りなのだけど。

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9. This Place Is Empty
 アルバムで1、2曲は定番のKeithヴォーカル・ナンバー。Keithが歌ってるのだから、ほとんどKeithが作っているのだけれど、この渋い声質は誰にも真似できない。相変わらず地味なナンバーなのだけど、薄くフィドルを絡めているのが、やはりKeithの味。

10. Oh No, Not You Again
 まったりしたテンポがしばらく続いた後、久し振りにアップ・テンポ・ナンバー。やっぱりこういうのが好きなんだろうな、この人たち。Mickはもっとダンスサブルなものが好きだと公言してるけど、やっぱり横ノリよりも縦ノリの方が良く似合ってる。わかってはいるんだろうけど、Keithへの手前、認めたくないんだろうな、きっと。



11. Dangerous Beauty
 貫禄十分のスタジアム・ロック。広い会場が似合いそうなナンバー。基本、リフだけで作られたようなナンバーなので、Mickがやりたい放題。カッチリしたビートよりも、こうした人力ハイパー・リズムが良く似合ってる。
 変にプロデュースし過ぎちゃうと、この勢いが消されてしまうのは、近作で思い知ったはずなので、どの音もあまりいじられていない。その辺、Don Wasもわかってる。まぁMickがいつも横やりを入れて、台無しにしてしまうのだろうけど。

12. Laugh, I Nearly Died
 今どきのバンドなら、もっとドラマティックで浮遊感あふれるサウンドに仕上げてしまいがちだけど、ここはさすが大御所、ギミックは最小限に抑え、Mickの歌を最大限に活かす音作りに徹している。
 Mickのヴォーカルがうまくなったと思うのは、俺だけだろうか?

13. Sweet Neo Con
 このアルバム最大の話題作。ブッシュ政権への強烈な皮肉と批判という論調で語られがちだけど、時事ネタを取り上げるのは、この人たちは昔からよくあること。湾岸戦争の時もそれで騒がれたしね。
 サウンド的にはラウドなブルース・ナンバー。サビはどことなくアジアン・テイストなので、日本人にとっては覚えやすくなじみやすいメロディ・ラインになっている。

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14. Look What The Cat Dragged In
 このアルバムの中では最もモダン・サウンドに近づいたナンバー。多分、Mick主導。まぁKeithにはこんな曲、逆立ちしたって無理だな。でも、こういった二面性がバンドのフロントマン2人で分かち合ってることによって、バンドのサウンドが一枚岩でなく、バラエティ感が出る。そういったことも、バンドが生き永らえる秘訣なのだ。

15. Driving Too Fast
 Mickのヴォーカルがちょっとフラット気味。キーが高いのかな?ここはリズム・キープに徹した演奏陣の力が強く働いており、なぜかしら調子の悪いMickには分が悪い。なので、80年代Stonesをなぞったようなサウンド。まぁ往年のファンなら安心する音作りだけど。

16. Infamy
 ラストはやはりMick主導、と思ったらKeithだった。ドラム・ループを使うKeithはちょっと予想の範囲外だった。彼としては実験的な要素が強いのだけど、これでアルバム1枚作られたら、ちょっとキツイ。アルバムのラストを飾るのには、ちょっと地味だけど、まぁ続きは次のアルバムで、ということなのだろうか。




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