folder 1978年にリリースされたPoliceの記念すべきデビュー・アルバム。なんか最近デビュー・アルバムばっかりだな。
 UK6位US23位は妥当なところだけど、オランダで2位、ニュージーランドでは6位にチャート・インしてるところから、当時からすでに全世界的に名が知られていたことがわかる。これは多分、マネージメントを務めていたStewartの兄Miles Copelandの方針で、世界中のステージの大小を問わず、まるで新人演歌歌手のようにしらみ潰しに回ってライブをこなしていった結果による。Costelloの場合もそうだったけど、それに負けず劣らず、かなりの量のライブを行なっていたのが、初期〜中期にかけてのPoliceの特徴である。

 もちろんトータルの累計で考えれば、彼らよりも多くのライブを行なってきたアーティストはたくさんいるのだけれど、Policeの活動期間は実質5年、後期2枚のアルバムでのツアーはアリーナやスタジアム・クラスが多くを占めること、またレコーディング時におけるシンセサイザー導入によって、スタジオ・ワークの時間も長くなったため、必然的に回数は少なくなっている。
 そういった状況を考慮して、実質ライブ活動期間で換算してみると、彼らの精力的な活動ぶりがうかがえる。まともなオフもなく、始終顔を突き合わせているのだから、仲も悪くなるよな、そりゃ。

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「Sex Pistolsに憧れてバンド組みましたっ」的に、当時ワラワラ湧き出ていた有象無象の急造パンク・バンドと違って、当初からある程度の商業的成功を見込んだ上で、相応のキャリアを積んできた者をキャスティングして結成されたバンド、それがPoliceである。なので、他のバンドと違って行き当たりばったりの運営方針ではなく、当初からある程度の戦略に則って行動していた、または将棋のコマとして動かされていた、というのは、ちょっとディープなファンなら誰でも知ってること。

 前衛ジャズ・ファンク・バンドで地道な活動をしていた野心たっぷりのベーシストと、ハード・プログレからベーシックなロックンロールまで弾きこなす器用貧乏なギタリスト、それに同じくプログレ畑ながらアフロ・ビートから変拍子まで楽々とリズムを刻む無骨なドラマーとの間に、どのような接点があったのか。
 Stingのステージを見たStewartが才能を見出して声をかけ、バンド結成のために適当なギタリストを入れたけど、どうもフィーリングが合わないので、デビュー間もなくして彼はクビ、で、穴埋めとしてノンポリな便利屋Andy を入れた、というのが大ざっぱな経緯だけど、要であるStewartにどれだけの具体的なビジョンがあったのだろうか。

 普通に考えて、彼ら3人のミュージシャンとしての共通言語として挙げられるのが、これまでのキャリアにおいて通過点としてあったジャズ・ロックである。この路線を展開・進化させてゆくのが、バンドのサウンド作りの最も近道だったはずなのだけど、安易にそういった方針を選択しなかったことに、Policeの成功のカギがある。

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 手慣れたジャンルにおいて、そこそこ形になる物を作ることは簡単だけれど、プログレ風味のジャズ・ロックなんてのは、既にSoft MachineやCurved Airでやり尽くしており、それ以上の発展は見込めなかった。
 それなら、わざわざ新たにバンドを結成するメリットがない。

 Stingとしては、一応既にメジャー・デビューしていたStewartに注目されて、そりゃ悪い気はしなかっただろうけど、元Curved Airという、あくまでプログレ界でのメジャーどころであって、商業的成功とはほど遠かった彼の経歴を考えると、もしバンドを組んだとしても、将来の展望は楽観できるものではなかったはず。
 Stewartにしたって、今さらこれまでと同じマニアックなジャズ・ロックをやったって、売れないことはわかりきっていたはず。
 Stingの才能は欲しい。
 でも、それを活かすには、これまでの自分の手持ちのスキルだけじゃ、あまりに先が見えすぎている。
 何かほかに、良さげなコンセプトはないだろうか?

 -じゃあ、パンクでいいんじゃね?
 というのが、2人の出した結論。
 双方これまで積み上げてきたキャリアから最も遠いところ、まったく共通しないところからスタートするのが、最も効率の良い手段であるという結論に達した次第。
 どちらにしろパンク・サウンドに関しては二人とも素人のため、スタート・ラインは同じになる。
 ちょうどブームだし、それに載っかちまおう。
 ジャンル的にもトレンドだし、そんなに大げさなセッティングもいらないから、コスパもいいし。
 ギター?誰か適当にひっぱって来ようか。
 
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 で、2人はこれまでの小難しい演奏スキルを封印、複雑だったコード進行もできるだけシンプルにした。リズムも基本的な8ビートに、何曲かでレゲエを取り入れたのは、熟練ミュージシャンとしてのプライドだったけど、可能な限りステレオ・タイプのパンク・スタイルの枠組みをはみ出ないよう、プライドが突出しないよう心がけた。

 ここまでの戦略は、彼らよりはむしろ、マネージメントのMilesの意向が大きかったと思われる。
 パンクを音楽ビジネスの一環として捉え、常に冷静沈着に、客観的な状況判断ができる第三者の存在がなければ、ここまでスムーズに事が運ぶはずがない。
 バンドのテクニカルな部分にはタッチしない事によって、ミュージシャンとしてのプライドを損ねる事を最小限に抑え、随時チェック機能を働かせて臨機応変なコンセプトを設定した事が、Milesの最大の功績とも言える。

 そういった運営方針にうまくはまる事ができなかったのが、初代ギタリストであるHenry Padovaniであり、ある意味ロック・ビジネスという意図を理解して加入したのがAndyだったというわけで、まぁ結果論になるけど、これでうまく丸く収まったという次第。だってPadovani って名前、なんか変だし。

 そんなこんなの経緯で完成したのが、この『Outlandos d'Amour』である。
 今後も永くライブの定番となってゆくキラー・チューンはもちろんのこと、他の曲もバラエテイに富んでおり、ストレートなパンクもあれば、プライドが見え隠れする、ポエトリー・リーディングとパンクを融合させた、ちょっと変わった構成の曲もある。
 この時点ではPoliceとしてのバンド・サウンドがまだ確立されていないので、未整理のとっちらかった印象が強いのだけれど、逆にそこがバンドの発展途上具合が生々しく記録されているため、今でもこれが一番というファンも多い。

 俺的にはこのアルバム、5枚のオリジナル・アルバムのランクづけでは4位となっている。一番思い入れの薄い『Ghost in the Machine』が安定の最下位、『Outlandos d'Amour』を挟んで3位が、完成度・成熟度ではダントツの『Synchronicity』という位置付けが長年続いていたのだけれど、ここ最近レビューを書くにあたって全アルバムをまとめて聴き直してみたところ、30年近く前にヘビロテで聴いていた頃と比べて変化が出てきたのか、3位と4位のランクが入れ替わりそう、ていうか、コッチが3位でもいいんじゃね?という気になってきている。


Outlandos D'Amour (Dig)
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1. Next To You
 敢えてパンクというジャンルを彼らなりに模倣してみたのだけど、出来上がってみたら多くのパンク・バンドを軽く凌駕するクオリティになってしまって、結局は突出してしまう仕上がりとなってしまった曲。
 敢えてシンプルなドコドコ・ビート、シンプルなダウン・ストロークのベース、調子っぱずれのギターのフレーズなど、できるだけパンクのフォーマットを使用してのサウンドになっているのだけれど、後半になるに連れて三者三様のエゴが出始め、特にStewart、そんなにハイハット多用する奴、パンク・バンドにいないって。

2. So Lonely
 で、Stingの才能が当初から規格外だったことを証明する、初期の名曲の一つ。
 Police登場以前に有名だったレゲエ・カバーは多分、Eric Clapton “I Shot The Sheriff””くらいだったと思うのだけれど、その存在が霞んでしまうくらい、しかも自作曲でのレゲエ・ナンバーは相当インパクトがあったんじゃないかと思う。しかもパンク・バンドのくせして無駄に技巧的だし。
 これも疾走感がハンパないキラー・チューン。UK最高6位まで上昇。



3. Roxanne
 とは言っても、いくらStingの才能がケタ外れだったとはいえ、初期のPoliceがStewart主導で動いていたのは事実であり、とくにこの曲なんてリズム・セクションがリードして、Andyの単純なリフは、Stingの独創的なベース・ライン、Stewartのリズム・ワークに埋もれきってしまっている。



4. Hole In My Life
 Beatlesがパンクと変拍子に出会ってたら、多分こんな感じになるんじゃないかと思える。メロディ自体はポップなナンバー。Kinksでもいいかな?伝統的なブリティッシュ・サウンドの系譜をたどっている。

5. Peanuts
 ここで純正パンク・ナンバー。パンクよりになればなるほど、どこかつまんなく聴こえてしまうのも、この人たちの特徴。普通のロックなので、安心して聴けるけど、無難なPoliceに一体、どんな価値があるというのか。
 でもAndyの神経症的な間奏ソロは必聴。

6. Can't Stand Losing You
 UK2位まで上昇した、当時の彼らの中ではもっと成功したシングル。こちらもレゲエ・ビートを導入しているのだけれど、いつの間にかロック・ビートに変わり、そしてまたレゲエに戻るという、なかなかテクニカルな構造の曲である。
 アルバム収録曲の中では、最もフック・ラインがはっきりし、求心力の強いメロディを持っている。でも、ベタにならないんだよな、不思議なことに。



7. Truth Hits Everybody
 お、これはストレートなパンク・ナンバー。今になって聴いてみると、わざと稚拙で単純なプレイなのだけれど、初出時ならこれ、普通にソリッドなロック・なんばーとして人気あったんじゃないだろうか。

8. Born In The 50's
 こちらも8.同様、シンプルで大陸的に大味なリフを持つロック・ナンバー。これもリアルタイムで予備知識なしに聴いてたら、普通にカッコ良かったんじゃないかと思う。
 後半のブレイク、Stingが血管切れそうな勢いでシャウトしまくるという、なかなかお目にかかれない姿を拝むことができる。

9. Be My Girl – Sally
 シンプルなロックン・ロールが3連発。と思ったら、勢いがイイのは冒頭だけ、急に場面はガラリと変わり、戯曲的なナレーションが延々と続く、プログレを引きずったようなナンバー。
 StingとAndyが中心となって作り上げた曲ということなので、まぁお遊びと思えばいいんじゃないかと思う。このトーンでアルバム1枚作られたら、そりゃたまったもんじゃないけど。

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10. Masoko Tanga
 アルバムの中でももちろん異色だけど、それだけでなく、全ディスコグラフィーの中でも異彩を放つナンバー。
 彼らの場合、もともと熟練のミュージシャン集団なだけあって、単純なロックやポップ・ソングをプレイするだけでは飽き足らず、アルバムに必ず1,2曲はミュージシャン・エゴを満たすような、ガス抜き的なマニアックな曲が収録されている。
 この曲もそういった類なのだけど、実験的でありながらもメロディはきちんと立っており、バックのサウンドとの親和性も高い。ただ、演奏はひどくプレイヤビリティに溢れており、それでいて覚えやすく口ずさみやすいという、なかなかに不思議な曲。




 『Synchronicity』から入った俺的にはこのアルバム、当時はベテラン・ミュージシャンが敢えて戦略的に、基本フォーマットのパンク・サウンドを模倣したものだと思って、正直苦手だったのだけど、あれから四半世紀も経つと、当時の時代背景も薄れてフラットなスタンスで聴けるようになった。
 先入観を抜きにして聴いてみると、装飾の多い後期の作品よりもむしろ、ちょっと高度にねじれたストレートなサウンドこそが、Policeサウンドの本質であることがわかるようになる。
 年を取ることも案外悪くない、これも一つの功罪だと、自分では思ってる。


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