ほんとは邦楽編同様、「レーベルくくり」とか「カバー曲くくり」とか、「オリコンにチャートインした洋楽曲くくり」など考えていたのだけど、結局うまくまとまらず、非常にザックリしたくくりとなってしまった。
 なので、ディープなくくりはまた次回。

Aerosmith 「Dude (Looks Like a Lady)」

Aerosmith+-+Dude+-+5-+CD+SINGLE-34918 1987年リリース、9枚目のオリジナル・アルバム『Permanent Vacation』からの先行シングル・カット。US14位UK45位。
 80年代に入ってからは、度重なるドラッグ渦に加え、過密スケジュールによるストレスからメンバー間の不仲が深刻化していたAerosmith。80年代の前半を仲違いしたまま各自好き勝手にやっていたため、バンドのコンディション的にもセールス的にも、完全に負のスパイラルに陥っていた。特に主要メンバーであるSteven TylorとJoe Perryとの確執が丸く収まるまでに時間を要した。
 どっちにしろ、時代はすっかりLAメタルと産業ハード・ロックの二本柱が隆盛であり、もし彼らが70年代のスタイルのまま活動を継続していたとしても、居場所はなかっただろう。彼らの代名詞であった「Sex, Drug & Rock'n' Roll」は、すでに古典芸能と化していたのだ。彼らが現役シーンに再浮上するには、これまでとは違うバンド運営が必要だった。
 
 そんな矢先、Run D.M.C.によるカバー「Walk This Way」が、US最高4位の大ヒットを記録する。ほぼワンコードで押し切ってしまう力業のハードロック・ナンバーは、サンプリングやカットアップの技はほとんど使用されず、MCによるライムとスクラッチはほぼ添え物、逆にゲスト参加したStevenとJoeの強烈なキャラクターが改めて脚光を浴びた。日本で言えば、コロッケのモノマネで再浮上のきっかけを掴んだ美川憲一のようなものである。美川もそうだったけど、そこで変にアーティスティックな態度を取らず、エンタテインメントとして開き直りのスタンスで彼らに協力したことが、その後の成功に繋がったのだと思う。主役を喰ってしまう設定のPVも傑作だったしね。

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 そんな経緯もあってなのか、Geffin移籍後は、従来のバンド・メンバーのみの楽曲制作にこだわるのではなく、積極的な外部ライターの起用も行なうようになる。これは当時、泡沫LAメタル・バンドのひとつに過ぎなかったBon Joviを大ヒットに導いたプロデューサーBruce Fairbairnの意向が大きかったのだけど、そういったアドバイスも素直に聴けるようになったのが、ここからである。
 俺にとってのAerosmithとは、「普及型Stones」とか「B級バンドの最高峰」といった位置付けなので、キャッチーなメロディと明快なキャラクターが売りのバンドだと思っている。なので、シリアスなアルバム・アーティストというより、ベタなシングル・ヒットでこそ持ち味が発揮されるバンドなのだ。なので、その後のアルマゲドン主題歌も俺は昔から大好きである。ていうか映画が好きすぎるので、曲のタイトルがすぐ出てこないくらい。あ、「Miss a Thing」か。
 このアルバムから彼らの復活劇が始まり、他にも大ヒットしたバラード「Angel」というキラー・チューンも収録されているけど、俺世代にとってAerosmithとのファースト・コンタクトとなったのが、この曲のPV。ちょっとパチモン臭さの漂う廉価版Stonesとしての佇まいが、逆に開き直ることによってのポピュラリティーを強調している。
 見た目もサウンドもわかりやすい、これ以上はないというくらい「ルーズなロックンロール」のプロトタイプ。チャラい若造がやったらグダグダになりそうなところを、ベテランの力技、そしてきちんとセッティングされたプロダクションによって、緻密に構成されている。どんな仕事でもそうだけど、段取りをきちんとしておかないと、結果がついてこないのだ。
 ダルなブルース・タッチのハード・ロックと、70年代ブラス・ロックとのハイブリッドは絶品。こういうのってやっぱ、プロデューサーの手腕が出るな。




Permanent Vacation
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Aerosmith
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Eurythmics 「I Need a Man」

Eurythmics+I+Need+A+Man+82610 1987年リリース、6枚目のアルバム『Savage』から3枚目のシングル・カット。UK26位US46位を記録している。のちにDave StewartはMick Jaggerと豪華バンド「SuperHeavy」を結成することになるのだけど、ここではそのStones的エッセンス、ディストーションをバリバリ効かせたギター・ロックに仕上げている。
 悪魔が憑依したMarilyn Monroeのようなビッチな出で立ちのAnnie Lennox、それまでは性的要素を限りなく排除した中性的なルックスだったのが一転、既存イメージに捉われないビジュアルを展開している。ファースト・シングル「Beethoven」では、ソファで編み物してる普通の主婦を演じてるし。
 ちなみにこの2曲は連作PVとなっており、強迫観念によって次第に追い込まれ、壊れてしまった主婦Annieはビッチ化、この曲で主役となる。さらにおまけがあって、次のシングル「You Have Placed A Chill In My Heart」ではこの2人に加え、通常ヴァージョンのAnnieがメインとなり、三者三様の共演となる。
 UK1位を記録した85年のシングル「There Must Be an Angel」で一気にメジャー化した彼ら。それまでは「中性的な女とヒゲ面男によるダークなテクノ・ポップ・デュオ」といったイメージが強く、お茶の間ウケするタイプのアーティストではなかったけれど、この辺から日本でも紹介されることが多くなった。

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 普通のアーティストなら、ここからさらなるメジャー展開を図って、二番煎じ・三番煎じの楽曲で畳みかけるか、それか逆にひねくれたアングラ・マイナー路線へ移行してしまうかどっちかなのだけど、彼らはどちらの道も選ばず、潔くメジャー・シーンに踏みとどまりながら、イメージの固定化を嫌った独自路線を貫いた。こういったアプローチは、70年代のBowieと通ずるところが多い。
 Dave が丹念に創り上げた無機質テクノポップ・サウンドに、ユニセックスなルックスとマッチした、ドスの効いたAnnieのソウルフルなヴォーカルを載せるのが初期のスタイルだったのだけど、キャリアを積むに従ってAnnieのアーティスト・エゴが増大、それに引っ張られるかのように、シンセを中心に構築されたDaveのサウンドもまた、次第にテクノ要素が減衰、生音比率も高くなってゆく。YazooもPSY・Sもそうだけど、男女のテクノポップ・コンビは大抵、女性が強くなった末に発展的解消となるのが常である。




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Fleetwood Mac 「Big Love」

fleetwood-mac-big-love 1987年リリース、Fleetwood Macにとって15枚目のアルバム『Tango in the Night』からの先行シングル。UK9位US5位は、久々の現場復帰のスタートしては、上々の滑り出しとなった。
 ほとんど解散状態だった彼らにとって5年ぶりとなったこのアルバム、実質は、音楽的リーダーLindsey Buckinghamがソロ・アルバム制作中のマテリアルをモチーフとしたもので、そこにそれぞれソロ・キャリアを築いていたStevie Nicks と Christine McVie が曲を持ち寄った形となっている。当然、彼女たちがまともにプレイするはずもなく、サウンド・メイキングはLindsey に丸投げ、彼女らはほぼ自曲のメイン・ヴォーカルとちょっとしたコーラスのみの参加となっている。
 元祖レコーディング・オタクのLindsey であるからして、こういった彼女らのオファーを受けることは、願ったりかなったりである。どうせ他のプロデューサーにやらせたとして、あれこれ口を出してしまうだろうし、それならいっそ全部自分でやった方がいい、というところに落ち着いてしまう。彼がやったらやったで、女性2人からの注文があぁだこうだとうるさいけど、彼にとってはそういったオファーにいちいち応えることも、充実感のひとつなのだ。まぁプレイの一環だな。
 当然、バンド名の由来となったMick Fleetwood と John McVie 。相変わらず、彼らの貢献度は薄い。ていうか、ほぼ何もしていないに等しい。一応、リズム・セクションでクレジットされてはいるけど、それだって怪しいものである。あのLindsey なら、取り敢えずレコーディングだけさせておいて、後で総差し替えしそうだし。

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 このアルバムのリリース時点で、彼らはすでにオールド・ウェイブに属しており、現に代表作『Rumours』『Tusk』はMOR~AORの名盤として評価が確定していた。「ライトでメロウな大人のロック」という位置づけだったはずだし、マーケットもまた、そういったオーソドックスな路線を望んでいたはず。はずなのだけど、このアルバムで脱退を決めていたLindseyのやりたい放題が爆発しているのが、この『Tango in the Night』である。
 特にこの曲は、レコーディング・オタクの趣味・嗜好がダイレクトに反映された、変態ポップの極致。マリアッチを想わせるギターは、偏執的なミュートとコンプとが入り混じった人工的な音像を創り出している。密室的でありながら浮遊感あふれる、スタジオで加工しまくりました的なサウンドだ。
 熱くエモーショナルで、それでいて過剰なLindseyのヴォーカルは、特に高音パートは神経質的に空間を響かせる。PVでの彼の顔は、必死に堪えているけど、泣き出しそうな不安定さを抱えている。ネックをやたら立て、ストラップを長くしたギターの構えも変だし。
 そして彼とヴォーカルを分けるのは、デビュー当時から妖女と謳われ、そして今もまだギリギリ、ごく一部では謳われているStevie Nicks 。ヴォーカルと言っても、そんなきちんとしたものではなく、要するに「喘ぎ声」。彼女の最もセクシーなヴォイスをサンプリング処理して、疑似的なデュエットして仕上げることに精を挙げるLindsey。どっちもやっぱり変だ。


 
 社内恋愛の元相手と職場を共にする気分は、一体いかがなものなのだろうか。彼らほど長いキャリアになると、もうそんなことも気にならなくなるのかな。まぁこのバンドの男女関係はもうほんとグッチャグチャなので、この程度は単なる羞恥プレイの一環だったのかもしれない。本題とずれるので、その辺はwikiで調べてみて。いやほんと、昼ドラ顔負けだから。
 そう、彼こそ「遅れてきたポップ馬鹿」の称号に相応しいアーティストだ。この時点で、地位も名誉も名声もすでに築いていたはずなのに、ここに来て密室ポップの才能が爆発、メジャー・シーンの中で大きく攻めるサウンドを提示してきた。


Tango In The Night
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Chris Rea 「Driving Home For Christmas」

Chris-Rea-Driving-Home-For-Christmas 当初は、いまだCMでも耳にする機会が多い「On the Beach」で書こうと思っていたのだけど、彼について調べてるうち、「あぁこの曲はChris Reaだったんだな」と知って、やっぱりこっちにした。言われてみればあのしゃがれ声、確かに彼だ。
 もともとシングルのみのリリースでいわゆる企画モノ、1988年の初リリース時にはUK53位程度だったけど、徐々にクリスマスの定番ナンバーとして定着し、UKにとどまらず世界中で知られたナンバーになっている。
 もしかしたら俺だけかもしれないけど、これがChris Reaの曲だったとは知らず、これまで来た次第。ていうか、「On the Beach」だって誰が歌ってるのか、知らずに聴いてる人も多いと思われる。
 アーティスト自体は存在感が薄いけど、名曲はしっかり後世に受け継がれている。こういうのって、ある意味、ソングライターとしては理想なのかな。時代を超えて残る歌をひとつでも残すことができれば、ある意味、幸福なのかもしれない。
 彼の曲全般に言えることだけど、決してサービス満載の楽曲ではない。酒とニコチンで焼かれたようなスモーキー・ヴォイスに加え、サウンドは至ってシンプルだ。特別、凝ったコードやメロディでもない。むしろ、バックボーンとなっているのは古いブルースであり、そこから由来する無愛想なサウンドは、甘いポップ・ヒットに辟易した大人の耳を惹きつける。

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 AOR的な販売戦略のもと、彼の80年代は主にシャレオツ感を漂わせる孤高のアーティストとしてメディアに露出していた。根っからのブルース・ロック・マスターである彼の作風は何ら変わらなかったのだけど、そのぶっきらぼうな所作と作風が、アーバンかつトレンディな時代にたまたまマッチした。中身は何も変わってないのに。
 Gary Moore もそうだったけど、あまりに過剰なヒット・システムに組み込まれてしまうと、その反動なのか、突然、地味なブルース回帰を行なうのが、UKブルース・マンの特徴である。これまでのビジョンとかけ離れたポジションに居心地が悪くなってしまったのか、この後、Reaは急激なブルース回帰を行ない、大作『Blue Guitars』をリリース後、しばらく沈黙期間に入る。その大作というのが、何とCD11枚組。Princeのブート並みに膨大な物量である。やっぱ英国人って変わってるよな。ていうか、それで普通なのか。
 そんな偏屈さも頑固さも一旦脇に置いて、聖なる夜を家族で過ごすため、早く家へ帰ろうよ、と素直に語りかけるのが、このナンバー。
 仏頂面はいつもと変わらないけど、どこか楽しそう。カクテル・ピアノとストリングスの調べに乗せて、珍しくリズムに体を揺らせているのが想像できる。
 クリスマス・シーズンに公開されるアメリカ映画のハッピーエンド。
 何となく、そんなシーンを連想してしまう。
 ファニーでロマンティックで、それでいて誰もがついついホッコリしてしまう曲。
 皮肉屋ばっかりの英国人も、クリスマスがテーマとなると、素直にいい曲を書く。




The Very Best of
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Grace Jones 「La Vie en Rose」

Gracejoneslavieenrose 80年代というくくりで書いてきたけど、「Free Soul」シリーズのコンピに入ってたこれをたった今聴いてて、グッと持っていかれたので、ここで紹介。調べてみると、1977年リリースだった。
 俺にとってのGrace Jones とは、やたら前衛的なファッションで世間を騒がせた、今で言うLady Gagaのルーツ的な人という位置づけで、正直、まともに音源を耳にしたことがなかった。特に俺が10代の頃の彼女は『007』や『コナン・ザ・グレート』での個性派女優といったイメージが強く、はっきり言っちゃうとイロモノ的なポジションだった。
 そんな絶頂期にリリースされたアルバム『Slave to the Rhythm』のジャケットは、俺の中の先入観をさらに増幅させた。この時期の彼女はミュージシャンというよりもパフォーマー的なスタンスでの活動が多く、コンセプチュアル・アート的な作品が多かった。この時期の作品をYoutubeでチラッと聴いてみたけど、まぁ時代の産物かな、といった印象。改めて聴き直す気は正直ない。
 フランスの国民的シャンソン・シンガー Edith Piaf によって世に出たスタンダード・ナンバー、ってそのくらいはわかるよね。日本では越路吹雪ヴァージョンが有名だし、近年では山下達郎がア・カペラ・スタイルでカバーしていた。調べてみると、モー娘。の飯田圭織もカバーしてるらしい。聴いたことないけど。

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 そんな幅広いジャンルのシンガーがカバーしているので、様々なスタイル、それぞれの「La Vie en Rose」が存在する。正直、古臭いスタンダード・ナンバーと思っていたので、俺自身、この曲に思い入れはほとんどない。
 そういったフラットな状態で耳にして、引き込まれちゃったのが、このヴァージョンだった。
 Grace Jones と聴いて想像するような、アブストラクトで挑発的なサウンドではない。むしろ限りなくオーソドックス、真っ当なカバーとなっている。フィリー・ソウル・サウンドの中枢だったシグマ・スタジオで、モデル上がりのジャマイカ娘に、有名シャン総・ナンバーをカバーさせるという、こうして書いてみるとキワモノめいた組み合わせなのに、それらがすべて奇跡的にピッタリと噛み合い、普遍性を放つ傑作が誕生している。
 これが偶然の産物なのか、はたまた巧妙に仕組まれた戦略だったのか。まぁ多分前者だろうけど、それを実行に移した当時のレーベルIslandの慧眼ぶりと言ったら。デビュー作でこれほどの貫録を見せつけてしまったのだから、普通ならこの路線を突き詰めてゆくところだけど、そこに収まらず破壊する方向を選ぶGraceもまた大したもの。

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 何しろ67歳を過ぎてるのに、公衆の面前でこんなパフォーマンスを行なってしまうくらいだから、その前衛性は計り知れない。
他のアルバムも聴いてみなくちゃな。
彼女に限らず、聴いてない音楽はいっぱいあることに気づかされた。




Portfolio (Reis)
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Grace Jones
Ume Imports (2006-08-01)
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 邦楽編同様、こちらも長文になった。後半5曲はまた次回。