好きなアルバムを自分勝手にダラダラ語る、そんなユルいコンセプトのブログです。

XTC

にっちもさっちもどうにもノンサッチ - XTC 『Nonsuch』

XTC-Nonsuch 1992年にリリースされ、『Oranges & Lemons』に続いてUK28位、ビルボード総合チャートでも28位にランク・イン、セールス的には彼ら最大のヒット作となったアルバム。特にここ日本においては、レコード会社主導で雑誌メディアを巻き込んだ「XTC来て来てキャンペーン」が大々的に実施され、大いに盛り上がった。
 あまりの日本のファンの熱心さに、皮肉屋Andyもさすがに心を動かされたのか、遂には単独来日を果たすに至る。至ったのだけど、文字通り単独での来日のため、ライブは行なわれず、ちょっとしたトーク・ショーとサイン会が催されただけで、複雑な心境のファンも多かったはず。
 そんな中途半端だったら最初っから来んなっ、と胸中をくすぶらせたファンも多かったんじゃないかと思われるのだけれど、そこをグッと呑み込んで口に出さないのが日本人の特性である。黒船襲来のご時世から、異国の人間に対しては、取り敢えずへり下ってしまうことが、DNAレベルで刷り込まれてしまっている。
 そんな日本人の真意を汲み取ってくれればよかったのだけれど、侘び寂びなんて感情とは無縁の英国人、「こんなマイペースな僕でも受け入れてくれるんだ♡」とポジティヴに受け止めてしまうのが、まためんどくさい男である。

 長い間まともにライブを行なわず、特別キャラの立ったメンバーがいるわけでもない。だけど変態ポップ・センスに魅かれるニッチなファンたちに支えられて、まぁ次のレコーディング契約が継続できる程度には収益をもたらしていたXTC。にもかかわらず、当時の所属レーベルVirginとの関係は、日に日に悪化していった。
 そしてこのアルバムのレコーディング〜プロモーション期間中、両者の決裂はもはや修復不可能となり、結局メジャーとしてはこれが最後のオリジナル・アルバムとなってしまった。

0-100602-01

 離合集散が頻繁なニュー・ウェイブ系のバンドが多い中、XTCは、細かなメンバー・チェンジはあれど主力メンバーはほぼ一定しており、よって歴代のアルバムの完成度も安定していた。ヒット・チャートの常連ではなかったけど、日本やEU諸国においては、そこそこの知名度を保っていた。
 アメリカ進出が遅れたおかげで総合チャートのアクションは地味だったけど、ラジオが中心となるカレッジ・チャートでは、”Dear God”のヒットが引き金となって、以来そこそこの実績を維持していた。
 なのに、Virginにおける彼らのポジションはいまだ不安定なものであり、キャリアや実績に見合うほどの待遇を受けることはできなかった。
 
 Andy曰く、アーティスト契約がバンドにとって、めちゃめちゃ不利なものだった、悪徳マネージャーによって搾取されまくった、とのこと。『Skylarking』のレビューでも書いたのだけど、歴代プロデューサーとの衝突も多く、Todd Rundgrenとの衝突は今でも語り草になっており、あまりに互いが互いを罵倒しまくった挙句、今では2人とも定番の持ちネタとして、何かにつけエピソードを披露しまくる事態となっている。インタビューの度にいつもネタ振りされるので、近年では、そのトークに一層磨きがかかっている。

 実際『Nonsuch』においても、大御所プロデューサーGus Dudgeonと衝突を起こしている。ミックス・ダウン作業のイニシアチブをどちらが握るかについて意見が分かれ、最終的には完パケ寸前にGus 解雇という、なんとも後味の悪い結末に終わっている。
 Gusとしてはレーベルの意向に沿って、売れ線重視のコンテンポラリーな仕上がりをシミュレートしていたのだろうけど、あくまで自分の感性にこだわるAndyとしては、最終段階で他人の手によって、手塩にかけた作品が自分の意に沿わない方向へ歪められるのを、黙って見ているわけにはいかなかったのだろう。 まぁ自意識の強いアーティストなら、当然なのだろうけど。

0-100602-03

 以前からの疑問、XTC、まぁ主にAndyなのだけど、彼とVirginとはなかなか方向性が合わず、契約解消まで終始平行線だった、という見解になっている。ただしピックアップされているのは、ほぼAndyサイドの発言ばかり、Virginの言い分はほぼ聞いたことがない。概ねAndyの主張通りなのか、それともVirgin側の「金持ちケンカせず」の余裕っぷりなのか―。
 どちらにしろ、互いの意見を聞いてみない限りは、一方の主張ばかりに肩入れするのも、大人としてはなんだかね、という気になってしまう。

 じゃあ、他のVirgin所属アーティストはどうだったのかといえば、Andyほど過剰に反応する者は、あまり聞いたことがない。XTCを除いたすべてのアーティストの契約条件が良かったのかといえば、それも考えづらいし、他のアーティストが「資本主義の犬」としてすっごく従順だったり、またはアーティスト契約条項にもの凄く秀でたビジネス・パーソンばかりだったのかといえば、それももっと考えづらい。
 典型的な英国病を患っているAndyの場合、その都度、仮想敵という存在を設定しておかないと、表現意欲の維持がままならなかった面もある。そんなとばっちりを受け入れたのが、一アーティストのいちゃもん程度では揺るぐことのない、磐石とした会社組織Virginである、という対立構造。
 適度なストレスは人を成長させる。ある意味、そんなネガティヴなパワーが彼らの創作意欲を掻き立てていた側面もあるんじゃないかと思われ。
 
13612-16

 そして現在、自主レーベル運営によって、悠々自適とまではいかないまでも、マイペースな活動ぶりのAndy。かつての盟友DaveもColinも去ってしまって今は独り、メンバーやレコード会社との衝突からも解放され、ストレスとは無縁の生活を送っているのだけれど、それに比例した作品のつまらなさと言ったら、そりゃあもう。いつまでもアーカイブものばっかやってんじゃねぇよ、とまで言いたくなってしまう。

 『Nonsuch』まとめ作業に伴うライナー・ノーツやインタビューにおいて、いまだAndyはブツクサ言っているようだけど、ライブ演奏を前提としない、密室空間で練り上げられたポップ・ソング集にしては、バンドとしての躍動感がある。曲順構成もしっかりしており、後に小出しに勿体ぶってリリースされた『Apple Venus』シリーズよりも、ずっと高い完成度で仕上がっている。
 多分Andyは絶対認めたがらないだろうけど、手練れのプロデューサーGusによる初期段階の仕切り、アイディア提供やコンセプト設定の賜物だろう。ただ好きなようにダラダラ作詞・作曲して、ただ思いのまま独りよがりにレコーディングして、他人の忠告に耳を貸さずにミックス・ダウンしているだけでは、こういった出来栄えにはならない。
 商品として売ってゆくためには、明確なユーザー像とニーズを想定しておかないと、ただの自己満足でしかないのだ。


Nonsuch
Nonsuch
posted with amazlet at 16.02.06
XTC
Ape (2014-07-15)
売り上げランキング: 234,673




1. The Ballad of Peter Pumpkinhead
「まぬけなピーターのバラッド」。直訳したタイトルからは想像もつかない、この頃のXTCとしてはソリッドでストレートなロック。相変わらず歌詞は暗喩や言葉遊びを交えた多重構造なので、いちいち解釈を加えると、はっきり言ってめんどくさい。Peterというのが誰なのか、昔の宗教家なのか政治家なのか、いろいろな受け取り方はあるけど、どちらにしろ大した意味はない。
 一流のポップ職人として、緻密なガラス細工のような小品ばかりを量産していたAndyだったけど、ここではノリ一発のロックン・ロールをシミュレートして、完璧なパワー・ポップ・ソングを作り出した。やればできるじゃん。
 Stonesのようなギター・リフのオープニング、本人曰く、Mick Jaggerを揶揄したようなハープなど、聴きどころは満載だけど、XTCだけあって小技もいろいろ効かせており、俺的にお気に入りなのは、ほんと終盤のBeach Boysのようなコーラス。
 セカンド・シングルとしてカットされ、UKでは最高71位だったけど、アメリカのModern Rock Tracksチャートでは、なんと1位を獲得。一聴すると普通のスタジアム・ロックに聴こえるけど、普通のアメリカ人はスタジアム・ロックの要素をわざわざXTCに求めたりはしない。アメリカにもなかなかめんどくさい奴が多かったらしく、「あのXTCが普通のスタジアム・ロックをやった」ということで興味を示したのだろう。当時のアメリカ人にもサブカルかぶれ、中二病的な者も多かったと思われる。



2. My Bird Performs
 Colin担当のトラック。比較的オーソドックスなポップス。少なくともロックの文脈で語れるようなメロディや歌詞ではない。昔のA&M的ソフト・ロック・サウンドを目指しているのだろうけど、それをXTCに求めるのは、何か違うんじゃないかと思う。ただソフトに流れ過ぎてしまうサウンドを、ちょっと武骨な響きのギターがうまく全体を締めている。

3. Dear Madam Barnum
 メロディとコーラスがちょっとサイケっぽくなっている、ポップ寄りのロックはAndy作。『Skylarking』に入っててもしっくり来そうだけど、ここではもう少しリズムが立って、疾走感が出ている。

4. Humble Daisy
 Beach Boys、ていうか『Pet Sounds』期のBryan Wilsonのデモ・テープを発掘して現代風に蘇らせたような印象。ちょっとミスマッチなドゥー・ワップ風のコーラスなども、ちょっとアバンギャルド。趣味的な小品だけど、俺は昔から結構気に入っている。
 
XTC-Nonsuch-490569


5. The Smartest Monkeys
 Colin作、ちょっと怪しげな雰囲気の漂うゴシック・ロック。それにしても不思議なのは彼のメロディ・ライン。普通の定番コード進行とは外れたところで音が構成されているため、何というかメロディの「揺れ」のようなものが感じられる。ふわふわして揺れ動き、音符の終着点が凄く曖昧なままに終わる印象が強い。
 そこが独特の浮遊感を演出しており、なので地味だけどColinのファンも多い。純粋なポップ・ソングの作り手としては、Andyよりも勝る部分も多い。

6. The Disappointed
 すごくモダンなサウンド、キャッチーなアレンジ、かなり気を使って録られたAndyのヴォーカル。なのに、歌詞は「失望」について。これぞまさしく英国人、してやったりである。
 一応、アルバムのリードとして最初にシングル・カットされてるけど、UK最高33位。Stephen LillywhiteがBeach Boysをプロデュースしたようなサウンドは、英国人にはイマイチ受けなかった。



7. Holly Up on Poppy
 “Dear God”をもう少しメジャー・コードに展開したようなフォーク・ロック。Andyの弾くアコギはなかなかいい響きなので、地味だけど味わいのある一品。でもこれって、やっぱGusのアイディアなのかな、きっと。

8. Crocodile
 XTC流パワー・ポップのお手本的作品。軽快なエレキのアルペジオ、いい感じに軽快に響くバスドラ、ロック・サウンドなのに統率のとれたコーラス。でも、テーマは鰐。
 このタイプの曲がもう2,3曲入っていれば、もう少しVirginとしても力を入れやすかったろうし、アルバムのフックとして、まとまった力になっていただろう。でも、それをしないのがXTCでもある。

9. Rook
 タイトルに反して、彼らとしてはこれも珍しくドラマティックなバラード。荘厳としたストリングスはAndyのアレンジ。アルバムのバラエティを考えると、こういった曲もあって良かったんじゃないかと思えるけど、この後に控えている『Apple Venus』シリーズの前哨戦的サウンドとして捉えると、ちょっと複雑。これを全編でやられてもちょっと、って感じだし、第一誰もXTCにはそれ求めてないし。

10. Omnibus
 よく聴くとリズムがラテン。まさかXTCでラテンなんて、と思ってしまうけど、まぁこれもアルバムの一曲として、アリッちゃアリ。どちらかといえばリズム主体の曲なので、Andyの曲なのに、ついつい耳が行ってしまうのはColinのベース・ライン。やはりソングライターの弾くベースだけあって、メロディアスかつリズムのリードもしっかりしている。

GP92-2

11. That Wave
 ちょっとダウナーなゴシック・ポップといった趣き。この曲もAndy作なのに、ベースがうまい感じで重心の低さを演出している。こういったテイストの曲はギターの歪みが目立つものなのに、あいにくAndyもDaveも音が軽く性急な運指によって、重厚さがしっかり出ていない。
 やはりこのバンド、Colinの存在は大きかったことがわかる。曲は軽いのに、ベースは重いという、珍しいタイプのプレイヤーである。

12. Then She Appeared
 ややカントリー・タッチの、やはり”Dear God”タイプのフォーク・ロック。あそこまで重苦しくないのは、Beach Boys風のコーラスがうまく中和してることによる作用。

13. War Dance
 久しぶりにColin作が登場。オープニングが怪しげなスパイ映画のような、木管楽器の音色から始まる。
 ブリティッシュの風味が漂う曲、というのが俺の印象。午後の芝生の上でお茶を楽しみながら、社交界の動向や噂話に興じる紳士たち。低く垂れこめる雨雲は黒く、今にも振り出してきそうな気配だ。

14. Wrapped in Grey
 一度はシングル・カット候補になりかけたけど、Virginの独断によってそれがボツとなり、契約解消の導火線となった曲。基本Beach Boysサウンドの踏襲なのだけど、色々な暗喩やダブル・ミーニングを内包した歌詞世界は、ちょっと抽象的かつAndyの人生哲学も孕んでいるため、ちょっと高尚なイメージが強い。
 ただサウンドだけに耳を傾ければ、良質のポップ・ソングであることは間違いない。



15. The Ugly Underneath
 AメロとBメロとでまるでムードが違うため、”A Day in the Life”的に何曲かをくっつけ合わせたかのような、一曲で何度も楽しめる曲。そんなに長い曲でもないのに、わざわざ違う曲調を一つにまとめてしまった意図がよくわからないのだけど、なんかスタジオでいじくり回してるうち、できあがっちゃったのだろう。

16. Bungalow
 久しぶりにColinメイン。『Nonsuch』では4曲しか採用されていないのだけど、それとも提供を出し渋ったのか、それは不明。モッサリした声質のColinのヴォーカルは好き嫌いが分かれるところだけど、まぁ俺的にはあんまり興味がないので、どっちでもいい。

17. Books Are Burning 
 ラストは(多分)第2次世界大戦時のナチスが行なった焚書からインスパイアされた、強大な力を持った権力に対し、屈することなく立ち向かってゆく、Andyの強力な意思表明が描かれている。強大な権力がVirgin なのかと邪推するのは、子供じみた詮索なので、ここでは保留。
 ある意味、これがXTCとしてのSwan Songともいうべき出来となっており、そのすべての音が美しく、強い意志を持って響いている。アウトロでフェード・アウトしてゆく、DaveとAndyのギター・ソロも、これまでにないストレートなインプロビゼーションとなっている。
 海外ファン・サイトでは、比較的人気の高い曲でもある。






 『Nonsuch』リリース当時、ここ日本では初回限定の特典で、中世の視力表を模したミニ・タペストリーを貰ったのは、もう昔の思い出。
 また、これは輸入盤のみだったけど、CDのプラケースにジャケットと同じ宮殿のイラストが金色に直接プリントされていたことも、かつてのファンなら鮮明に覚えているはず。


Fossil Fuel
Fossil Fuel
posted with amazlet at 16.02.19
XTC
Ape (2014-07-22)
売り上げランキング: 248,661
A Coat Of Many Cupboards
A Coat Of Many Cupboards
posted with amazlet at 16.02.19
Virgin UK (2010-07-19)
売り上げランキング: 16,177

息をするように皮肉が飛び出す生粋の英国人集団 - XTC 『Oranges & Lemons』

folder 英米のみならず、ここ日本においても飛躍的に知名度を上げたヒット作『Skylarking』リリース後のXTC、にもかかわらず、リーダーAndy Partridgeのステージ・フライト(恐怖症)は回復の見込みがなかったためライブができず、苦肉の策として行なわれたラジオ局回りや日本でのサイン会という、極めて中途半端、ロー・リスク、ロー・リターンなユルい仕事しかしていないのだった。

 本人いわく、ラジオ出演時にスタジオ・ライブは時たま行なったらしいけど、そのほとんどはラジオ収録のついでに行なわれたアコギの弾き語りセッションばかりで、普通の神経ならとてもライブやってますっ、と言える代物ではない。それでもそこを臆面もなく言い張る英国気質こそが、まぁAndyなのだけど。

 進んでしまった時は、もう元に戻せない。
 歴史に”if”は付きものだが、もしあの頃、『Skylarking』~『Nonsuch』までの間にAndyが一念発起して、せめて小ホール・クラスでもいいから、また短期でもいいからツアーを行なっていたとしたら?大ヒットまでは行かないまでも、日英米のセールスは上向いただろうし、ファン層ももう少し広がったはず。
 他のメンバー2人Colin MouldingとDave Gregoryはといえば、彼らはむしろライブ活動に前向きであったため、やはり問題はAndyである。
 確かにフロントマンとしての重圧はそれなりにあったろうし、体調的な問題も結局は本人次第なのだけど、それでも一度くらいはまともなライブをやって欲しかった、というのがファン共通の思いである。

People8905-XTC

 ファンの多くは知っていることだけど、Andyというのは非常にめんどくさい男である。前作『Skylarking』でタッグを組んだプロデューサーTodd Rundgrenとは、レコーディング中に何かと行き違いすれ違いが多く、最終的にはケンカ別れとなった。なので、今回は同じ轍を踏まぬよう備えたのか、もう少し若い世代のエンジニア系プロデューサーPaul Foxを起用している。
 これだけあらゆるプロデューサーとぶつかり合いながら、なぜセルフ・プロデュースを行なわないのか、というのも、主にファン・サイトで長らく議論されている。すべての作業が終わってから、雑誌インタビューなどを通じてプロデューサーを散々こき下ろす事が、一種の恒例行事になっている。大抵は「自分の理想とするサウンドを滅茶苦茶にされた」と、皮肉な冷笑を添えて語ることが多い。

 すべての作業を自分の管理下に置けば、不満も少なくなるのではないか、と思ってしまうのだけど、そう簡単なものではないのが、Andyのまためんどくさい点である。一応自己分析能力はあるのか、プロデュースの才能がない事を自覚してるフシがある。サウンド・プロデュースもそうだけど、もう少しシステム的な問題、期限とバジェットを決めたレコーディングというのが苦手なようである。もし時間が許すのなら延々とレコーディングばかりやっている男なので、いつまでも作業が遅々として進まず、完成できたものが何一つない、グタグタな状態になる事を承知しているのだろう。
 自分の描くビジョン通りに事が運ぶのが理想だけど、人に委ねることによって、そう簡単にはいかず、だからといってスムーズに事が運んでもプライドが傷つけられ、やはり不満は生じる。
 もともと生粋の英国人、息をするように皮肉が飛び出すお国柄である。


Oranges & Lemons
Oranges & Lemons
posted with amazlet at 16.02.06
Virgin UK (2004-04-01)
売り上げランキング: 22,255




1. Garden of Earthly Delights
  インド音楽調のイントロから一転、カラフルなパワー・ポップの洪水。『Skylarking』で得たポップ・サウンドをさらに金と手間をかけて磨き上げた、アバンギャルド性と大衆性との融合。気合の入り方が、これまでとはまるで違う。何しろ音の厚みがこれまでとは段違いになっている。それでいて、個々の音がきちんと聴こえる、というのは録音にもこだわったのだろう。
 


2. The Mayor of Simpleton
 こちらも軽快なギター・ポップ。XTCとしては珍しくUSチャートでも健闘したシングルで、Mainstream Rock Tracksという専門チャートでは15位、Modern Rock Tracksでは、何と1位を獲得している。まぁニッチなチャートではあるけれど、”Dear God”に続く快挙である。
 こういうヒット・ソングを引っ提げてのツアーに出ていれば、今後の状況も変わってたかもしれないけど、まぁ出なかったよね。このサウンド・フォーマットでもう2、3作続けていれば、とは思ってしまうけど、まぁ今さらか。
 


3. King for a Day
 1.2.がAndy作曲で、これはColin作曲。性急なビートと転調がAndyの特徴に対し、彼の場合比較的オーソドックスなメロディを基調としている。スタンダードなポップ・ソングが彼の持ち味なので、驚きや刺激は少ないけど、Andyとの対比によって、アルバム全体としてはうまくバランスが取れている。
 今のところColinのソロ・プロジェクトは聴いたことがないのだけど、多分これ一色だと甘ったるいんだろうな、きっと。Andyだって通して聴いてると、薬味だけ食ってるみたいだろうし。
 1.同様、Mainstream Rock Tracks15位、Modern Rock Tracks38位と、スマッシュ・ヒットを記録している。

4. Here Comes President Kill Again
 再び大統領を殺したい、という不穏な内容を、ダウナーっぽいポップ・ロックに乗せて気怠く歌うという、まぁいつものAndyお得意、皮肉を交えた時事ソング。甘いケーキの後には、こういったシナモン・ティーの刺激を欲するのが、やはり英国流である。

5. The Loving
 スタジアム・ロックっぽいイントロから始まる、でもやはりいつものXTC。『Skylarking』では大人しめだったAndyのギターが、この『Oranges & Lemons』では爆発しているのだけれど、ギター・サウンドならこの曲がオススメ。ベタにポップなリフから、間奏でちょこっと聴けるギター・ソロまで、普通にギター・ロック好きな人なら気に入ると思う。ほんと、やりゃできるのに、どうしていつも執拗にサウンドを捏ねくり回してしまうのか。
 まぁそれが英国人集団XTCの持ち味でもあるのだけれど。

8297b

6. Poor Skeleton Steps Out
 アフリカン・ビートをベースとした変則リズムこそ、変態POPバンドXTCの真骨頂である。かつての彼らなら、もっとダウナーでエキセントリックなサウンドにしてしまうところを、プロデューサーPaulの判断なのか、それともXTCの変節なのかは不明だけど、聴きやすくコンテンポラリーな形に仕上げている。やはり行き過ぎは良くないのだ。

7. One of the Millions
 再びColin作。前作は比較的Colin作が多く取り上げられていたが、今回のメインはAndy、Colin名義は3曲である。これが冷遇されているのかというと、どうもそういったわけではなさそうである。これ以降、急激に二人の仲が悪くなったわけでもなさそうなので、そこは音楽的クオリティーを重視して、互いに譲り合っているのか。まぁよくわからん関係ではある。
 こちらもオーソドックスなアコースティック・サウンドでまとめられており、アルバム構成的にはバラエティに富んで正解。
 特にこの『Oranges & Lemons』、これまでのアルバムと比べて収録曲数も多く、レコードでは2枚組だったため、かなりの長尺である。CD1枚の限界まで目いっぱい詰め込んだボリュームで、Andy一色に染めてしまうと、ちょっと胸焼けしてしまう。ちょうどいいバランスを判断できる、第三者的なプロデューサーがいないと難しいのだ、このXTCというバンドは。

8. Scarecrow People
 よーく聴けばカントリー・タッチでもあるのだけれど、オルタナ・フォーク?ギターのサウンドが面白く、これぞXTCならでは、という楽曲。ただ単純なポップ・ソングではなく、ひと捻りもふた捻りもしてねじ曲がった変態ポップ。
 歌詞は『オズの魔法使い』をモチーフにして作った、ということだけど、まぁ俺も含め日本人なら理解しづらいので、サウンドを堪能してほしい。
 


9. Merely a Man
 ストレートなパワー・ポップ。Huey Lewisあたりがカバーしててもまったく違和感がない、それくらい王道のポップ・ソング。こういう曲も作れるはずなのに、何かにつけ余計にひと手間ふた手間かけてしまうのが、この人。
 まぁそれはしょうがないとして、こういったサウンドに負けないくらい、Andyは堂々と歌っている。ちょっと神経質ながら、十分通る声質を持ち合わせているのだ。これでも少し図太ければ、チャートの常連も夢ではなかったのに。

10. Cynical Days
 三たびColin作。曲数は少ないながらも、バリエーションに富んだ曲を提供しており、今度はメランコリックなスロー・テンポで、どこかサイケデリック。実はこの曲、ドラムがかなり健闘している曲であり、逆に言えばドラム抜きのトラックだと、何とも間の抜けた、甘ったるいだけのバラードになってしまうところを、Andyも顔負けの変則ビートが曲を支配している。
 今回のアルバムはほぼ全曲、Pat Mastelottoが担当している。10代からスタジオ・ミュージシャンとして数々のセッションに参加、Mr. Misterでメジャー・デビュー後、並行してセッション・ミュージシャンとしての活動も継続、後にあのRobert Frippに見初められてKing Crimsonに加入してしまう、何とも波乱万丈なスケールの男である。 
 下手すると、XTCよりもミュージシャンとしてのスキルは上であり、曲によってはこのようにメインを食ってしまうこともままある男である。
 この曲については、そんな捻くれ者同士のよじれ切った才気が、良い方向に融合した好例。

11. Across This Antheap
 珍しいスタンダード・ジャズ調のしっとりしたオープニングから一転、いつものパワー・ポップなXTC。エフェクトの使い方などが、ちょっと前のXTC、どことなく『Black Sea』あたりを連想させる。
 今回のプロデューサーであるPaul、バンドにはいつも通り結構好き勝手にやらせていながら(ていうか特にAndy)、仕上がりはこれがなかなか、XTCビギナーでもすんなり抵抗感なく聴けるようになっている。意外と策士でバンドを上手く手なずけていたと思うのだけれど、結局いつものAndyのボヤキによって、今作だけのコラボになってしまったのは残念。

olprotopic1

12. Hold Me My Daddy
 典型的なXTC型パワー・ポップ。このようなアッパー系のナンバーが多いのも、このアルバムの特徴。バラード、スロー・テンポの曲は数えるほどしかないことから、当時のAndyの躁状態がうかがえる。

13. Pink Thing
 というわけで、パワー・ポップが続く。アコギをメインとして使っているため、これまでよりはやや大人し眼め。全15曲というボリュームのため、こういった曲も入れてメリハリをつけないと、全部アッパー系では胸焼けしてしまうのだ。
 この辺の曲は普通にシングル・カットしてもそこそこのチャート成績を収めそうなのに、切ったシングルは2曲のみ。この辺りにアメリカ進出戦略の甘さが窺える。ただ良い曲を書いていれば、それでいいわけじゃないのだ。

three20wise20men

14. Miniature Sun
 最初Colinのナンバーだと思っていたのだけど、クレジットを確認してみたら、Andy作だった。アレンジがそれっぽかったのだけど、やはり同じバンドにいると、どこか曲調も似てくるのだろうか。マイナー調のメロディに時折入るシンセ・ブラスが印象的。

15. Chalkhills and Children
 遂にBryan Wilsonの境地にまで達した、とリリース当時から各方面より絶賛された、Andyのソングライター歴の中でも、最も透徹とした美しい曲。Chalkhillsとは、彼らの故郷Swindon 近郊、『English Settlement』のジャケットにも書かれている象形画Uffington White Horseで有名な所らしい。
 ここまではハイ・テンションのパワー・ポップ一辺倒だったにもかかわらず、ラストでここまで美しい曲を出してくるとは、Andyやるじゃん、と言いたくなる。ていうか、もうこれ反則の域である。感情を押し殺したヴォーカルとコーラス、薄くヴェールのように全体を覆う柔らかなシンセ・サウンド、遠い霞の向こうから響くドラム。全てが調和が取れた完璧を志向した世界。
 この曲を聴くたび思い出すのが、ヘッセの『ガラス玉演戯』という小説。美しい世界の美しい音楽、それにまつわる人々の愛憎。関連性はまったくないはずなのだけど、読めば何となく共感できるはず。






 UK28位US44位という、『Skylarking』に続くアルバムとしてはまずまずの成功を収めたXTC、チャート的には上昇傾向にあり、さらなる密室ポップの追求として、最も外部に開かれたアルバム『Nonsuch』をリリースすることになる。メジャー・サウンドを意識しながらも、あくまで基本は作品至上主義だった。
 それは良いのだけれど、問題はやはりAndy。Stage Flight振りは相変わらずだった。
 それはまた次回で。


Fossil Fuel
Fossil Fuel
posted with amazlet at 16.02.19
XTC
Ape (2014-07-22)
売り上げランキング: 248,661
A Coat Of Many Cupboards
A Coat Of Many Cupboards
posted with amazlet at 16.02.19
Virgin UK (2010-07-19)
売り上げランキング: 16,177

東西二大ポップ馬鹿の融合と確執 - XTC『Skylarking』

skylarking 1 1986年リリース、バンドとしては通算8枚目のアルバム。後期の代表作として知られているこの作品、当時のUKチャート最高90位はちょっと低すぎるんじゃないかと思うけど、USでは最高70位と、彼らにしては珍しく、本国よりアメリカでの評価が高い。やはりシングル"Dear God"がカレッジ・ラジオ・チャートにランクイ・ンしたことが大きかったのだろう。いくらインディー・チャートとはいえ、イギリスや日本と比べてセールスの規模が圧倒的に違うため、影響力はハンパない。
 さすがに総合チャートへは届かず、一般リスナーにまで浸透したわけではないけど、Donovanを意識した、ちょっぴりフォーキーでネオ・アコっぽいサウンドは、R.E.M.ファンに代表される、ちょっとダサめの大学生らの支持を受け、カレッジ・ラジオではそこそこヘビロテされていた。
 ここ日本においても、これまでロック~ニュー・ウェイヴの文脈で語られていたXTC、このアルバムから「密室ポップ」を強調したプロモーションが展開されたことによって、新たなファン層を獲得し、その後のBig in Japanの流れの源流になる。
 
 XTCとしても転換点となったアルバムであり、その後、連綿と続く箱庭ポップ路線の礎となっている。これまでよりかなりポップス寄りに傾いたサウンド・メイキングはもちろんだけど、それ以上に、完成までに至る制作過程が何かと取沙汰されているアルバムでもある。

130614xtcw

 プロデューサーのTodd Rundgrenは、当時、長年所属していたBearsvilleレーベルと契約終了(解除?)、自身のバンドUtopiaもセールス不振で解散、ソロ活動もパッとしてなかったため、アーティストとしては開店休業中の状態だった。ただ印税生活で食っていけるほどのセールス実績もなく、取り敢えず長年音楽業界に携わっていたおかげで無闇に顔だけは広かったので、他人のプロデュース依頼はしょっちゅうあり、それが本業となりつつあった。Todd自身はチャートを賑わせたことはないけど、The BandやGrand Funkなど、アメリカでもメジャーどころのアーティストをプロデュースしており、業界内での評価は高かった。
 それまでのプロデュース実績から言って、なぜイギリスの偏屈バンドのオファーを請け負ったのか、今となっては定かではないけど、まぁ大方は金のためなんじゃないかと思われる。それか業界内で顔が広いのが災いして、いろいろな義理やしがらみなんかがあったのかもしれないし。
 
 片やAndyの方も、立場は違えど事情は差し迫っていた。Steve Lillywhiteによる革新的なドラム・サウンドの導入、ニュー・ウェイヴ版Lennon & McCartneyとも形容された、Colin Mouldingとの相互作用による楽曲レベルの向上など、音楽的・業界内評価は上がっていたのだけど、やはりモノを言うのはセールスである。ましてやステージ・フライト発症のため、ライブ活動からは引退、レコーディングと作曲活動を優先したため、プロモーションも満足に行なわれず、活動は次第に地味になっていた。
 で、タチが悪いことに、それをまたレーベルのせいにする被害妄想を広言するものだから、目も当てられない。確かにCulture Clubばかりに力を入れていたVirginにも非はあるけど、堅実なレーベル運営としてはそれが当然だし、何かとイチャモンをつけてロクに働こうともしないアーティストを飼い殺しにするのも、わからないではない。
 双方険悪の状態が続き、意思疎通もままならぬまま、業務連絡的にVirginがプロデューサーを指名、契約に縛られたバンドは受け入れざるを得なかった、という次第。

up-xtc

 そんなこんなで、アメリカとイギリスを代表するへそ曲がり二人が、それぞれの事情を抱えて仕方なくタッグを組むのだから、まぁ一つや二つ、衝突が起こっても不思議ではない。
 もちろん双方、才能とスキルを充分に持ったミュージシャンなので、共同作業のうち、お互いに顔を見合わせ、ニンマリ笑う瞬間だってあったと思う。ブースを隔ててアイ・コンタクトを取り合う、理想的なプロデューサーとミュージシャンとの構図も、わざわざ言うのは恥ずかしいけど、何度かあったんじゃないかと察する。
 リリース直後は、2人の衝突具合がクローズ・アップされ、お互い、メディアを通して罵り合いを続けていたのだけど、お互い年を取ったせいなのか、近年では回顧ネタの定番として、使い回しの鉄板エピソードをそれぞれ披露しあっている。
 
 パンク/ニュー・ウェイヴのフォーマットを使って、変拍子使いまくりのギター・ポップ・サウンドでデビューした後、当時はまだほとんど注目されていなかったダヴ・サウンドで丸ごと一枚アルバムを作ってしまい、それにも飽き足らず、せっかくの初ソロ・アルバムなのに、またまたダヴでもう一枚作ってしまう男、Andy Partridge。
 歴代のプロデューサーとことごとくケンカ別れしてきた男であり、レコーディング後はいつも出来映えに不満タラタラなので、二度と同じプロデューサーと仕事をすることはないけど、だからと言ってセルフ・プロデュースはできない男でもある。偏執狂的な完璧主義と優柔不断とが相まって、レコーディング作業を終わらせることができないことを一番よく知っているのは、Andy本人である。

XTC-Skylarking-promo-pic

 アメリカ人Toddがプロデューサーとして送り込まれたということは、当然、アメリカ市場も視野に入れたVirginの戦略であり、バンド側としては不本意な面も多々あっただろうけど、結果として出来上がったサウンドは、Virginのほぼ思惑通りに仕上がった。
 コードとは無関係に流れるメロディ、リバーヴをかけたドラム・サウンドなど、マニアックなギミック中心だった今までのXTC像と違って、このアルバムはインドア志向、ライブ感の薄い室内型ポップにまとめられている。マニアックな音像は変わらないけど、メロディを引き立たせた曲が多いため、これまでよりファン層を広げるきっかけ作りができたのは、やはりToddの功績が大きい。当時のAndyは認めてなかったけど。
 大きく分けて、耳に馴染みやすいキャッチーなA面曲と、地味な室内四重奏を思わせるB面曲に大別されるのだけど、しばらく意識的に聴き込んでいけば、次第に大英帝国特有の、ペーソスやら皮肉やら嫌味やら揶揄やら中二病やらが、ジクジクとかさぶたの下から滲み出てくるはずだ。


Skylarking
Skylarking
posted with amazlet at 16.02.06
XTC
Ape (2014-07-15)
売り上げランキング: 186,598



1. Summer's Cauldron
 どこからともなく聴こえてくる、虫の鳴き声、緩やかなピアニカの調べ。朗々と歌い上げるAndyのヴォーカル。薄くバックに流れる、不安げなシンセの和音。夏の夜長、怪しげな楽団がアコースティックな響きを奏でる。
 時代だけに、ドラムの音だけが騒々しく浮いているが、これはこれで良い。
 
2. Grass
 前曲からシームレスに続くメドレー。この繋ぎだけでも、Toddの今回のベスト・ワークに数えられる。
 ちょっぴりチャイナ風のオープニングから、オーガニックな響きのアコギのストロークが気持ちいい。実際、PVもイギリスの田舎の農場を舞台に作られている。イギリス英語に詳しい人ならご存知だと思うが、いわゆる「ハッパ」の隠語である。
 ラストのコーダで再び、前曲の不安げなシンセ和音と虫の鳴き声で終わる。

 

3. Meeting Place
 2.に引き続き、Colin作。良い意味であまり捻らないポップ・ソング。
 Andyよりもわかりやすく、シングル向けの曲を書く人でもある。
 
4. That's Really Super, Supergirl
 おもちゃみたいなビート・ボックスのオープニングから始まる、Andyらしい凝った作りのポップ・ソング。このアルバムではアコギに専念することが多く、間奏のギターソロもColinによるもの。豆知識だけど、たまたまスタジオにEric Claptonから譲られたのギブソンが置いてあり、それを使用した、とのこと。
 XTCとしてはポップで可愛らしい、シングル向きの曲であり、実際バンド側もシングル・カットを主張したのだけど、Toddは却下した、とのこと。よくわからん。



5. Ballet for a Rainy Day
 Andy作による、珍しくストレートにムーディーな曲。次のアルバム・タイトルである、『Oranges & Lemons』が歌詞冒頭に出てくる。一見ロマンチックな曲だけど、ドラムはゲート・エコーを使用しており、XTCっぽさを主張している。
 
6. 1000 Umbrellas
 前曲と繋がり、弦楽四重奏をバックに、Andyが本アルバムでのベスト・ヴォーカルを聴かせる逸品。
 サウンドが注目を浴びるあまり、取り上げられる機会は少ないが、よく響くAndyのヴォーカルは結構表現力もあり、ライブ映えするはずである(もう多分しないだろうけど)。特に低音域の通る声は、サウンドをも凌駕する。後年制作される、『Apple Venus』シリーズの前哨戦といった趣き。
 でも、この頃の方が若さがあって良い。
 
7. Season Cycle
 レコードでは、ここまでがA面。
 2部構成となっているが、仰々しくなく仕上がっているのは、プロデューサーのまとめ方が良かったのだろう。
 数少ない共通項である、Beatlesライクな小品。

XTC+-+Dear+God+-+12-+RECORD-MAXI+SINGLE-69045

8. Earn Enough for Us
 前曲より更にビート・ポップ成分を強調した曲。
 パワー・ポップ系の若手がカバーすると、意外とイイ線いけるんじゃないかと思う。
 
9. Big Day
 サイケ調のポップ・ソング。このアルバム・リリースの前後に、モロサイケ・サウンドのシングルを変名で制作(The Dukes of Stratosphear『25 O' Clock』)、その流れに続く、趣味全開のサウンド。
 
10. Another Satellite
 同じく、サイケ・サウンドが続く。ドヨ~ンとしたエフェクトを利かせたギターがサウンドを支配、気だるいアフロ・ビートのパーカッションがリズムを切る、よく聴けばやっぱり変な曲。
 
11. Mermaid Smiled
  基本、アコギのストロークで歌われているのだけれど、微かに聴こえるアフロ・パーカッションのうねり。ピッコロ・トランペットの響きとのマッチングは、やっぱりTodd。こんなシンプルな曲でこんな組み合わせ、どっか変。
 
12. Man Who Sailed Around His Soul
 スパイ映画のテーマ曲みたいなオープニング。この曲だけちょっと毛色が違い、70年代ジャズ・ファンクっぽいサウンド・アレンジが展開されている。もっとファンクっぽくやっても面白かったんじゃないかと思う。ライブやってればねぇ…。
 
xtc-grass-virgin

13. Dying

  再びColin登場。アメリカのフォーク寄りのシンガー・ソングライター的なナンバー。でもやっぱり英国人、コード進行はどこか変。
 
14. Sacrificial Bonfire
  初回ヴァージョンはこの曲でラスト。ここまでシンプルなフォーク・ナンバーを複数収録しているアルバムは、これまでのXTCではなかったこと。この辺から既にAndyとColinとの方向性の違いが明確になってきている。
 
15. Dear God
 華やかなA面と比べ、B面は比較的地味な曲が並ぶのだけれど、この曲は別格。XTCの曲なのに、冒頭ワン・コーラスまるまる、変声期前の少年にリードを取らせること自体、XTCとしてはかなりの異例だった。
 サイケ時代のアシッド・フォークを模したサウンド、タイトル通り、神への不信感、というよりは、現実の前にはあまりに無力な宗教への疑心を歌った歌詞など、宗教観に疑問を持ち始めるアメリカの若者にとっては受け入れやすいものだった。
 オリジナル・リリースではアルバム未収録(やはりToddの横槍が入った)、シングルのみのリリースの予定が、突然のスマッシュ・ヒットによって、急遽アルバムに収録された、という事情があるため、リリース時期や国によって、曲順に結構違いがある。

 




 アメリカでそこそこのセールス実績を残せたため、密室ポップ・サウンドへの方向性に手応えをつかんだXTC(特にAndy)、大英帝国テイストのパワー・ポップ路線をさらに強め、『Oranges & Lemons』、『Nonsuch』とメジャー・サウンドを意識したアルバムを立て続けにリリースする。2作とも、Toddとのレコーディング時に得たノウハウを巧みに吸収し、シングル候補となる曲も多い、ポップ小品集ではある。
 あくまで「小品集」である。『Abbey Road』張りに片面すべてを組曲風に繋げ、トータルでの作品のパワーの相乗効果を持たせた『Skylarking』との最大の違いが、ここ。
 
  このアルバムのレコーディング当時、バンドがセッションを済ませた後、Toddはかなりの時間、スタジオに残ってコンソールを操っていたらしい。結果、XTCを素材とした、Todd色の濃いアルバムが出来上がった次第。バンドが良い顔をしないのも、まぁ当然である。

xtc-1

 この後、ライブ活動を再開しなかったことが、バンドの崩壊・自然消滅にも繋がる。
 ステージで容易に再現できるようなサウンドではなかったのだけど、やはりバンドの求心力を考えると、短期でもツアーに出れば、状況はまた違ったんじゃないだろうか。
 多少の危機感とレコード会社からの要請だと思うけど、この時期、ラジオ局でのスタジオ・ライブを頻繁に行なっており、その音源も正規・非正規ともリリースされているのだけど…、
 
 そうじゃないんだよっ! 
 バンドは生き物なんだから、動き続けなきゃダメなんだよ、 
 人前に出ないで演奏しなくちゃ、 
 バンドも楽曲も、 
 そしてメンバーたちのやる気も死んじゃうんだよっ。 
 
 『Apple Venus』以降、XTCとしての活動は次第にフェードアウトしてゆき、Andy監修による大量のデモ・テープ集、初期のライブ・アーカイヴなど、まるでRobert Frippのように、過去の遺産で食いつなぐ商売をダラダラと続けている。最近になって、『Skylarking』のニュー・バージョン(レコーディング段階でToddが機材の繋ぎ方を間違えてしまい、バンド側意向として、正しい極性でミックスし直された)がリリースされたのだけど、「なんだそれ?」である。
 もうそんなものに興味はない。あの時代の輝きは、あの時代だけのものだ。


Fossil Fuel
Fossil Fuel
posted with amazlet at 16.02.19
XTC
Ape (2014-07-22)
売り上げランキング: 248,661
A Coat Of Many Cupboards
A Coat Of Many Cupboards
posted with amazlet at 16.02.19
Virgin UK (2010-07-19)
売り上げランキング: 16,177

カテゴリ
北海道の中途半端な田舎に住む、そろそろアラフィフ男。ほぼ週1のペースで音楽ブログ更新中。節操ない聴き方と思われてるけど、自分の中では一貫してるつもり。 最近は蔵書の整理がてら、古い本を再読中。ジョン・アーヴィングから始まって、フィッツジェラルドやゾラ、モームなど、いわゆる古典の復習中。いつになったら終わることやら。新刊読めねぇや。
QRコード
QRコード
最新コメント

音楽 ブログランキングへ


にほんブログ村 音楽ブログへ
にほんブログ村




アクセス
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計: