好きなアルバムを自分勝手にダラダラ語る、そんなユルいコンセプトのブログです。

XTC

ポップ馬鹿、アップル商法に手を染める。 その2 - XTC 『Apple Venus Vol. 2』

folder 前回の続き。
 2000年5月、予告通り『Apple Venus Vol. 2』、サブタイトル『Wasp Star』がリリースされる。もともと大量のデモ・テイクをレコーディングしていたAndy PartridgeとColin Molding、当初は40曲以上の候補があり、そこから厳選して半分に絞り、さらに営業サイドからの助言により、一気に2枚組で出すより、時期を置いて2枚に分けるという条件を飲んだ、という経緯がある。どうせなら、Guns N' Roses方式で2枚同時発売にしてもよかったんじゃないか、と思われるけど、その辺は意味不明。どうせマニアが買い支えるんだから、強気の姿勢でもよかったんじゃない?

 肝心のチャート・アクションはといえば、UK40位US108位と、前作とあんまり変わらない数字。世界中のコアなXTCファンが集結しているここのサイトでも、日本での売り上げは載ってなかった。さすがにVol. 1ほどの売上には届かなかったんだろうけど、一応、次回作が出せる程度には売れてたんじゃないかと思われる。
 考えてみればポニー・キャニオンって、洋楽部門ってあったっけ?代表的なアーティストと言えば中島みゆきやaiko、またはフジサンケイグループつながりの歌手が多いという印象で、海外部門に力を入れていたという印象がまったくない。
(追記:Paul Wellerも一時期ここだった。ご指摘ありがとうございます。)
 業界内ファンのディレクターあたりが、どさくさに紛れて新規で洋楽部門立ち上げたのか?大して売れてるわけじゃないけど、社内に洋楽営業のノウハウを持つ人間がいなかったため、お咎めもなく好き放題に営業展開していたのだろうか。
 謎は尽きないけど、コアなマニアにとっては周知の事実なのかな、これって。広く浅く雑食系の俺には知りえない世界。誰か知ってたら教えて。

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 グランジ系のラフなパワー・コードによるギターから始まる、ダルなムードの「Playground」からスタートする『Wasp Star』もまた、好意的に受け入れられた。ちょっとくたびれた感は否めなかったけど、バンド・シーンへの前線復帰という決意が感じられ、ラジオでもよくオンエアされていた。
 中期Beatlesと『Pet Sounds』~『Smily Smile』期のBeach Boysに強くインスパイアされたVol. 1も良かったけど、でも往年のファンが待ち望んでいたのは、Vol. 2のサウンドだった。大人になって一皮むけて、かしこまっちゃうのは仕方ないけど、過去の自分を完全否定することはできない。どんなに粗削りであろうと、それもまた自分、経験値の積み重ねの連続が人生なのだ。
 敢えて突っ込みどころを言えば、インディーゆえの低予算もあって、トラック数は少ない。ラウドなパワーポップ・サウンドという性質上、パーツはそれほど必要ではないけど、もう少しエンジニアリングに手間をかけて、ボトムとエッジを利かせれば、若手バンドにも十分対抗できたんじゃないかと思われる。ジャンルは全然違うけど、ほぼ同時期にリリースされたレッチリ『Californication』なんて、どのパートもぶっとい音像に仕上がってるし。

 露悪的な見方をすれば、キリがない。7年越しの活動再開だし、そんな細かいことは、どうだってイイじゃん。何はともあれ、XTCとして活動しているんだから、我々はそんな幸福な現状を素直に受け入れるべきだ。
 -俺たち(私たち)が思うところのXTCと現在のXTCとは、ちょっと方向性違ってるかもしれないけど、Andy もいるしColinもいる(この頃、Daveの存在は誰も気にもかけなかった)。オリメン2人そろってるんだし、これは誰が何を言おうとXTCに違いないんだっ。
 ぶっちゃけて言うと、2枚ともパンチの利かない音でまとめられていたため、どこか消化不良気味だったのは、誰もが思っていた事実である。低バジェットのプロジェクトだったため、メジャー在籍時よりサウンドが小粒になったのは致し方ないとして、彼ら特有の英国的な毒やペーソスまで小粒になってしまったのは、予想の範囲外だった。
 インタビューや発言において、過激な毒を発し続けていたAndyだけど、そのエネルギーを創作面に振り向けてもらえれば、サウンドや歌詞にも適度なスパイスが効いたはず。ご意見番として憂さを晴らしちゃったため、『Apple Venus』の楽曲は破綻も少なく、均整が取れている。大人のポップとしては、優秀な部類に入る。
 入るのだけれど、でも。
 手の込んだ精進料理もいいけど、それを求めてるわけじゃない。どちらかといえば俺たち、ケチャップとマスタードの利いたビッグマックが好きなんだ。大きな声じゃ言えないけどね。

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 「Vol. 1同様、シンプルなアレンジだからこそ、メロディの良さが引き立つ」「敢えて隙間の多いサウンドに仕上げたことによって、バンド・サウンド本来のラウド感が演出されている」。
 『Apple Venus』の肩すかし感は声密かに囁かれていたけど、表だって言うことは、何となく憚られた。業界内ファンを自称する音楽ライターたちもまた、奥歯に物が挟まったかのような論調で、一応は賛美していた。
 誰に何を強制されたわけでもない、そんな強迫観念に取り憑かれたかのように、世界中のコアなXTCファンはAndyのコメントに一喜一憂した。特に従順だったのが、ここ日本。矢継ぎ早に発信される最新情報を鵜呑みにして、次々発売される『Apple Venus』アイテムを買い支えた。
 1年後の2001年5月、大方の予想通り、『Wasp Star』のデモ・テイク集『Homegrown』がリリースされる。この頃になると、もう誰も驚かない。「あぁ、やっぱりね」といった声が大多数。
 『Vol. 1』リリース時に激増したにわかXTCファンはすでに離れ、残ったのは古くからの従順なファンだけだった。もはや「嬉しい」とか「またかよ」という問題ではない。リリースされたら、入手しなければならないのだ。「買うか買わないか」で悩むのではない。頭を痛めるのは、度重なる出費に対する言い訳、そしてお小遣いの捻出手段だ。
 意思決定の入る余地もなく、惰性と義務感に急かされた、盲目的な信者の群れ。
 XTCカルトの完成である。

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 企画盤2種を含んでいるとはいえ、2年間で4枚もアルバムをリリースしているのだから、その創作意欲だけは称賛に値するものだ。ごくミニマムではあるけれど、それ相応のニーズもあるわけだし、コアな世界の中ではwin-winの関係が成り立っている。あんまりそこには入りたくはないけど。
 そんな多忙を極めるAndy、『Apple Venus』と並行してさらに2つ、アーカイブ・プロジェクトを進行させている。
 ずっとサボっていたヴァージンとの契約消化にケリをつけるため、2002年3月、アンソロジー・ボックス・セット『Coat of Many Cupboards』がリリースされる。4枚組60曲に及ぶその内容は、41曲がデモ・テイクや未発表ライブ、入手困難なレア・テイクで構成されており、「ヴァージン時代の裏ベスト」と言っても間違いない充実さだった。XTCサイドにとって不利な契約内容だったため、印税取り分は微々たるものだったらしいけど、そこはポップ馬鹿の悲しい性、不必要に張り切り過ぎてしまう。AndyもColinも積極的にお蔵出しテイクを提供するだけであく、ありったけの写真を引っ張り出してきて、60ページに及ぶ豪華ブックレットの作成協力までしちゃう始末。ヴァージンのいいカモじゃん、それって。
 で、もうひとつがAndy単独のプロジェクト『Fuzzy Warbles』。2006年まで続く、足掛け5年の壮大なプロジェクトは、これまでブートで流出していたAndy作の未発表テイクをオフィシャルな形でまとめたもの。年に1回、2枚同時発売のペースで進行し、最終的には全8枚に及んだ。後に、それらをボックス・セットにまとめた『Fuzzy Warbles Collector's Album』がリリース、特典としてつけられたボーナス・ディスクもさらに分売する、といった商魂の逞しさ。その後も『Fuzzy Warbles』プロジェクトは忘れられた頃になると突如復活し、3枚組3セットの仕様で再販されたり、「ベストFuzzy Warblesを出す」という本人コメントがあったりで、ネタ切れの際は何かと重宝されている。
 Andyからすれば、「過去の遺産で食ってる奴なんて、俺以外にもいくらでもいるじゃないか」ってことなんだろうけど、それにしてもあんた、節操なさ過ぎ。

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 話は戻って『Apple Venus』、使えるモノは何だって無駄なく使う、アップル商法は手を変え品を変えてまだ続く。
 2002年10月、リリースされたのは、Vol. 1のインストゥルメンタル・ヴァージョン『Instruvenus』。同趣向のVol.2『Waspstrumental』も同時発売された。
 もともと彼ら、変態コード進行に基づいたメロディ・ラインと、過去のポップ・レジェンドへのオマージュと形容されるサウンド・メイキングに定評があったため、ヴォーカル抜きのトラックにニーズがあったとしてもおかしくはない。ていうか、ニーズのない所にニーズを創り出す、それこそが一流のビジネスマンだ。
 はっきり言っちゃえば、いわゆるカラオケ集であり、それこそボーナス・トラックで出す類のものだけど、それを単独販売しちゃうんだから、彼らの商魂といったらもう、それはそれは。でも、ここまで突き抜けちゃうと、逆に中途半端なファン・サービスだと納得しないんだろうな、マニア側からすれば。
 特に日本のファンには発売前から潜在的な需要があったらしく、本国イギリスでは2003年1月発売なのに、3か月も早く先行発売している。どれだけ従順なんだ日本のXTCマニア。
 ふと振り返ってみると、大滝詠一もまた、ロンバケリリース後まもなく、カラオケ集『Sing ALONG VACATION』をリリースしていた。しかもロンバケと同時発売で、第1期ナイアガラ・レーベルの6枚プラス編集盤オムニバス3枚を加えたボックス・セット『Niagara Vox』まで作ってしまうという、Andyも顔負けのラインナップ。
 そんなわけで、コレクター気質の強い日本人にとって、彼らの所業は責めるものではない。むしろ称賛されるべきものなのだ。潜在ニーズを掘り起こせば掘り起こすほど、コア・ユーザーの購買意欲はさらに高まってゆく。

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 とはいえ、さすがに一部ユーザーやメディアからの批判が高まったのか、はたまたネタ切れしちゃったのか、アップル商法は沈静化を余儀なくされる。せっかくなら大滝詠一に倣って、ストリングス・ヴァージョンでリ・レコーディングするのもアリだったんじゃなかと思われるけど、さすがにやり過ぎちゃったのかな。短いスパンで乱発し過ぎたし。
 ポニー・キャニオンとの契約も更新されず、日本では窓口がなくなってしまったXTCの活動は、この辺からフェードアウトしてゆく。当時、Andyは『Fuzzy Warbles』プロジェクトに没頭していたため、レコーディング・スケジュールは白紙となっていた。
 2005年10月、本編とデモ各2編をまとめた4枚組『Apple Box』発表。英国のみリリースのコレクターズ・アイテムであり、日本では入手困難だった。
 続く2006年12月、7インチ・アナログ・シングル13枚組の『Apple Vinyls』をもって、長きに渡ったアップル商法は終焉を迎えることになる。もちろんこれも、発売はUKのみ。コアなファンなら、個人輸入で手に入れたんだろうけど。



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1. Playground
 Marc Bolanのようなグリッターなリフからスタートする、ボトムの効いたロックンロールからスタート。テンポを落としたブギのリズムは、ラフでありながら神経質に整頓されている。間奏のアホっぽいオールディーズなコーラスには、Andyの実娘Hollyが参加している。さすがハウス・レコーディング。



2. Stupidly Happy
 Stones的にシンプルさを極めた反復リフをベースに、サウンドの主軸はとてもポップ。『English Settlement』期を彷彿させる抑えめのギターポップは、そのワイルドなリズムギターによってビターな味わいを醸し出している。コアな古参ファンにも人気の高い一曲。

3. In Another Life
 Colin作によるフォーキーなロック・チューン。Vol. 1では達観したかのようなポップ仙人ぶりを発揮していたけど、ここではもう少し生気が戻っている。まぁテンポは確かに良いけど、一般的なロック・サウンドからは程遠い仕上がり。やっぱ仙人だわ、これじゃ。

4. My Brown Guitar
 Prairie Prince (dr)によるリズム・アレンジが秀逸。今回のAndyの作風である、グッと腰を落としたダルなロックンロールととなっており、コメント通り、後期Beatlesのエッセンスが強い。ていうか、それに憧れたJeff Lynne = ELO的ロックンロールのテイストに近い。Beatlesマニアって、大体こんな風になっちゃうんだな。

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5. Boarded Up
 再びColin作。深い闇の奥から鳴り響くギターと声。英国ゴシック風味が強く打ち出され、全宝は浮いているため、ブリッジ的な小品と思えば腹も立たない。だから、アルバム・コンセプトと全然違うってば。

6. I'm the Man Who Murdered Love
 「Statue of Liberty」をヴァージン後期の環境でリメイクしたら、こんな風になっちゃいました的な、このアルバムの中でも飛び抜けて出来の良いトラック。かつての神経質に凝りに凝ったリズムから一転、シンプルでボトムがぶっとくなったため、いい感じで肩の力が抜けて大味になって聴きやすくなっている。全編、この感じでやってくれてたら、アルバムの評価も良かったはずなのに。

7. We're All Light
 ほとんど語呂合わせのような言葉の羅列の向こうに見えるのは、純粋なメロディの良さと、歌詞から希求された跳ねるリズムの洪水。そこかしこに思いつきという名のアイディアが散りばめられ、過去の延長線上にありながらも、確実にアップデートしたパワーポップ。

8. Standing in for Joe
 前2曲が珠玉の仕上がりだったため、Colin作になると途端にテンションが下がってしまう。いや悪いわけじゃないんだよ。コンセプトに合わないだけで。ていうかColin、絶対XTCを意識して作曲してないだろ、単なるソロ曲だもの、これじゃ。
 当初、楽曲選定の段階ではこれを収録する予定はなかったのだけど、レコーディングに入ってからColinが強硬に主張して、Vol. 2収録に至った、というエピソードが残っている。いるのだけれど、そこまで力説してまで入れなければならない曲かと言えば、ちょっと疑問。正直、俺的にはそんなに思い入れはない。

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9. Wounded Horse
 Stonesオマージュなサウンド・プロダクトになると、人はどうしてもラフで脱力した歌い方になってしまう。時々、Liam Gallagherみたいに聴こえてしまう瞬間が多々あるけど、まぁ気のせいか。

10. You and the Clouds Will Still be Beautiful
 変則リズムと転調の嵐が飛び交う、往年のニューウェイヴ風味満載のロック・チューン。変にメロディ・ラインに頼らず、力技でたたみかける饒舌さこそが、Andyの真骨頂であることがあらわれている。



11. Church of Women
 XTC久しぶりのレゲエ・チューン。ねじれたStonesの模倣より、実験性を優先していった方が、Andyは面白いものができる。全体的にいいんだけど、スロー・テンポの情緒的なギター・ソロだけはちょっと浮いている。もっとメチャメチャに、簡潔にまとめた方が良かったのに。

12. The Wheel and the Maypole
 ラストはファンのツボを余すところなく押しまくった傑作。初期のラジカルさと中期のサウンド・ディティールへのこだわり、後期の音圧の強さとがうまく絡み合い、XTCオリジナルの空間を形成している。饒舌に歌い飛ばすAndy、ひと手間かけた様々なエフェクト。試しに『Homegrown』収録のデモ・ヴァージョンも聴いてみたのだけど、これはこれでまた良い。やっぱり骨格がしっかりしてると、どんなアレンジでも観賞に耐えうるといった好例。






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ポップ馬鹿アンディ、アップル商法に手を染める。 その1 - XTC 『Apple Venus Vol. 1』

folder 1999年リリース、前作『Nonsuch』から7年ぶりとなった、XTC久しぶりのオリジナル・アルバム。デビューから長らく所属していたヴァージンとは袂を分かち、Andy Partridge 設立の個人レーベルAPEからのリリースということもあって、プロモーション以前にインフォメーションが行き渡らず、本国UKでは最高42位と不発に終わる。せっかく「Dear God」で獲得したカレッジ・チャート層も、ブランクが長かったせいもあって、USでも最高106位と、これまた不発。地道なドサ廻りライブは行なわず、ラジオ局でのラフなスタジオ・ライブでお茶を濁していたこともあって、欧米ではすっかり過去の人になっていた彼ら。よほどの音楽ファンじゃない限り、リリースされたことも知らなかったんじゃないかと思われる。
 そんな長い沈黙が、逆に大御所オーラとして作用したのが、ここ日本。なんと、オリコン最高14位の大ヒットを記録している。欧米の配給元がいずれもインディーだったのに対し、日本ではメジャーのポニー・キャニオンが彼らの発売権を獲得、待ちに待った再始動を盛り上げるため、各メディアを巻き込んだ一大キャンペーンが展開された。

 サブカル系中心の業界人ががっちりスクラムを組み、XTC復活プロジェクトは異様な熱気によって盛り上がりを見せていた。リリースの何ヶ月も前からAndy 自身によるコメントや曲目解説が、ファッション雑誌から情報誌までジャンルを問わず、かなりの広範囲で出稿された。
 「Apple Venusは2部作で構成される」というのも、かなり早い段階からインフォメーションされていた。ヴァージン後期に顕著となる、緻密に作り込んだシンフォニック・ポップを基調としたVol. 1、そして、デビュー当初を彷彿させる、ギター中心のハードなサウンドのVol. 2、これらを短いスパンでリリースする、と。
 もともと7年も沈黙していたのは、所属レーベル・ヴァージンとの契約がもめて拗れたことに端を発する。新譜リリースの展望も見えず、移籍もままならない飼い殺し状態が長く続いていた。
 不本意な開店休業中も、彼らは来たる新譜レコーディングに備え、地道なデモ・テープ制作作業に勤しんでいた。当時、その成果はオフィシャルな形で世に出ることはなかったけど、Andy自身から提供されて会員制ファンジンの付録として流通し、そこから派生して違法ブートレグとして流出したりしている。
 この時期の膨大な音源は、のちに一部が『Fuzzy Warble』シリーズとしてコンパイルされており、そのラインナップを見る限り、彼らの沈黙は決してネタ切れが要因ではなかったことが窺える。

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 現在のように、公式サイトやSNSでつぶやく手段もなかった時代、動向を知る/発信するためには、テレビや雑誌、ラジオなどの既存メディアに頼らなければならなかった。基本、大勢の前に出るのが苦手なAndy、ライブ活動はとっくの昔に廃業しているため、何か物申したい時は、積極的にオファーを受けた。
 考えてみれば、特別表立った活動をしているわけでもないのに、新譜プロモーション以外の依頼が来るのも変な話だけど、雑誌でちょくちょく目にする機会は多かった。沈黙することでポップ界のご意見番に収まっちゃったという、何とも芸能界チックな話。
 当然、新しいネタもないので、お題としては、ヴァージンへのヘイト発言、それと『Skylarking』セッションで勃発したTodd Rundgrenとの確執、主にこの2つが鉄板ネタ。特に後者、年を追うごとに小ネタが追加されて、今じゃ古典名人芸みたいになってるもんな。
 そんな按配が長らく続き、いい加減待ちくたびれた世界中のXTCファンのもとに、降って湧いたような活動再開の知らせが届く。もうそんなに期待していなかったはずだけど、でもやっぱり動き出すとなれば、そりゃあもう大騒ぎ。
 ファンより先に待ちくたびれちゃったDave Gregoryはバンドを去り、いつの間にか2人ユニットになっちゃってたけど、そんなのは過ぎたことだし小さいこと、とにかくXTCの新譜が出るんだから、めでたいじゃないの。

 1999年2月、待望のVol.1がリリースされた。UK以外でもそこそこ売れた『Oranges & Lemons』以降に顕著だった、音圧の強いパワー・ポップは後退し、静謐なバラード中心で構成されている。レコーディングは自宅スタジオを中心に少人数で行なわれたため、トラック数は少ない。録音トラックをすべて埋め尽くすような、カオティックで混み入ったエフェクトは一掃された。シンプルなアコースティック・セットを主軸としたアンサンブルは、風通しが良く、熟成されたメロディの綾を堪能できる作りになっている。
 レコーディングや作曲のプロセスは、リリース前からAndyの口から語られていたため、何となく予想がつく仕上がりではあった。ポップ・ソングというには躍動感に欠けていたし、ザラザラと枯れたテイストが肩すかしではあったけれど、ニュー・アイテムに飢えていたファンにとっては、「7年振り」というバイアスがかかっていたこともあって、おおむね好意的に迎えられた。ポップ界隈の大騒ぎに引き寄せられたビギナー・ファンたちもまた、「レジェンドの新譜」というバイアスのもと、「こういうものか」と自分に言い聞かせた。
 リリース前から、Vol. 1は落ち着いた作風になるというのはわかっていたので、古参ファンは早くもVol. 2に期待を寄せた。雑味を削ぎ落とした熟練の技は、コンポーザーとしての成長と受け止めよう。でもやっぱり、大部分のXTCファンは『English Settlement』以降のゴチャゴチャ詰め込んだサウンドに惹かれたのであって、そういうのも求めてしまう。職人の目で吟味されて作られた十割そばは美味いけど、時々ジャンクフードだって食べたくなる。若くて金がない頃は、それだって充分美味かったのだ。
 そんなわけで、Vol. 2への期待値は上がっていった。いったのだけど、しかし。

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 Vol. 1がリリースされて間もなく、新たなお知らせが届く。
 「Vol.1のデモ・ヴァージョンを、オリジナルの曲順通りに収録したアルバム『Homespan』! 10月発売」。
 え?ちょっと早すぎない?先にインフォメーションされたVol. 2もまだ出てないのに、もうデモ・テイク集出しちゃうの?
 ハウス・レコーディング中心だったVol. 1自体、シンプルなサウンド・プロダクトなので、凝りに凝ったヴァージン時代のアルバムと比べれば、丸ごとデモ・テイクみたいなものである。時間はたっぷりかけられたけど、自主レーベルという特性上、外部のミュージシャンを招聘する金もなければ、助言してくれるプロデューサーもいない。自宅スタジオでは機材スペックの問題もあって、そんなに凝ったサウンド処理もできないし、歴代のプロデューサーたちとはほぼ喧嘩別れだし。
 なので、シンプルを通り越して隙間の多い簡素なアレンジにならざるを得ない。せいぜい、ストリングスのダビング前と後、そのくらいしか違いがない。よほど聴き込んだマニアなら、ピッチやフレーズの細部までわかるんだろうけど、そこまでこだわるのはごくごく少数だろうし。多分、完パケとデモ、シャッフルしちゃうと、どっちがどっちだか、誰も判別できないんじゃないかと思われる。
 初回盤や日本独自仕様のボーナス・トラックで、ライブやアウトテイクを入れることは珍しくなく、ファン・サービスの一環として歓迎すべきことだけど、特典だけまとめて分売するのは、彼らくらいのものだろう。David BowieやBruce Springsteenクラスの大物が、ボックス・セットのみ収録されたトラックを後日分売するケースはあったけど、それだって大昔のアーカイブであって、半年経ってすぐ舞台裏を見せるような真似はしていない。
 とはいえ、そこは7年も耐え忍んだXTCファン。買っちゃうんだよな、これが。極端な話、パッケージに「XTC」って書いてりゃ反応しちゃうんだもの。
 日本盤では、独自規格のボーナス・ディスクが付属しており、そこにはAndy とColin Moulding による楽曲解説のオーディオ音声が収録されている。曲じゃないよ、オッさん2人のしゃべりだよ。これで金取ろうとしてるんだから、どれだけ面の皮厚いんだか。

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 で、そこから半年ほど経った2000年5月、ようやくVol. 2がリリースされる。ご大層に、『Wasp Star』なんて自虐めいたサブタイトルまで付けちゃったりして。
 従順なファンからとことん搾取しまくるアップル商法はまだ続くのだけど、ここまでで結構長くなったので、一旦ここで終わり。続きはまた次回。



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1. River of Orchids
 コンパクトなオーケストレーションをバックに、ノン・エコーで朗々と歌い上げるAndy。構成も録音も緻密に組み立てられ、プログレッシブ・ポップとしての到達点。安易なシンセやシンクラヴィアに頼らず、生音にこだわったのは正解だった。Toddなら、時間も手間もかかるストリングス・アレンジは使わず、チャチャッとシンセ手弾きで済ませちゃっただろうし。

2. I'd Like That
 2枚目のシングル・カット。UK最高121位をマーク。いいんだよ、成績なんて。どうせ大した枚数プレスされていないんだから。
 アコギのストロークを主体とした軽快なリズムは、ヴァージン後期を彷彿させ、きちんとしたプロデューサーに任せてギターポップに仕上げれば、もうちょっと注目されたかと思うのだけど、そこまで手が回らなかったんだな。案外、Andyってテクノロジー弱いみたいだし。



3. Easter Theatre
 トータル・コンセプトを代表させるため、これがリード・シングルとして切られたと思うのだけど、復活の一発目としては、ちょっと地味だよな。アルバムの中の隠れ名曲としてなら、充分「Chalkhlls ~」と比肩するポテンシャルなのだけど。
 『Sgt. Pepper’s』と『Pet Sounds』のミックスアップとしては優秀。ストリングスの使い方も堂に入ってるし。

4. Knights in Shining Karma
 『Pet Sounds』オマージュはさらに続く。メランコリックな大人の子守唄を思わせる小曲。

5. Frivolous Tonight
 『Pest Sounds』かぶれはAndyだけじゃなく、むしろColinの方が顕著だった。Paul McCartneyによるBryanWilsonリスペクト。ちょっぴりケルティック風味も添加され、英国民謡的なテイスト。

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6. Greenman
 なんか気の抜けたような、腰に力の入ってない小手先技が続くなぁ、と思っていたら、やっと真正XTCとも言えるトラックが、これ。彼らのサウンドの特徴として、凝ったリズム・アレンジが語られるけど、その要となるコーラス・ワークがうまく作用している。天空を駈け上がるようなメロディの妙と、アラビック主体のオリエンタルなリズム・エフェクト。ヴァージン時代と比べて、多くの音が入っているわけではないけど、パーツそれぞれにきちんと主張がある。ボトムさえしっかりしていれば、骨格だけでも充分説得力があるというモデル・ケース。

7. Your Dictionary
 前半はほぼAndy弾き語りで、徐々にパートが追加されてゆく、という構成。離婚経験を綴ったパーソナルな歌なので、歌詞については他人がどうこう言うものではない。
Andyはその体験を1曲に凝縮したけど、かつてMarvin Gayeはアルバム2枚組というボリュームで、妻Annaへの想いを切々と訴えかけた。そこがポテンシャルの違いかな。良いとか悪いとかじゃなく。

8. Fruit Nut
 やたら力が入ったAndyに対し、Colinが書き下ろしたのは、5.とこの曲のみ。簡素なホーム・デモっぽさは、オフィシャル・リリースを意識していないかのように、肩の力が抜けまくり。「When I’m 64」にインスパイアされてギターをいじってたら、こんなのできちゃました的なお手軽さ。最後の意味不明なエコーも、遊び心たっぷり。その辺でユニット内バランスが取れてるんだろうな。

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9. I Can't Own Her
 対してAndy、やたら気合いの入ったバラード。力むあまり、歌い出しで誰の声かわからなかった。
 後期XTCの到達点とされる「Chalkhills and Children」をゴージャスなストリングスでアップデートしたような、完成度を極めて高く設定したようなトラック。『Pet Sounds』のイディオムを完全に取り込んだかのような、XTC流シンフォニック・ポップの完成形が、ここにある。揶揄や皮肉も寄せ付けない、まさに問答無用のサウンド。

10. Harvest Festival
 9.から11.までは一大ポップ・シンフォニーとなっており、ここでも同じ世界観が流れている。一歩間違えればElton Johnになってしまいそうなロマンチシズムでありながら、演歌的様式美に陥らないのは、イージー・リスニング一辺倒ではないLondon Sessions Orchestraの助力によるもの。
 問答無用の美しく繊細なメロディ、クセはあるけど力強いパッションを放つAndyのヴォーカル。アルバム全編とは言わなくても、B面全部使って展開すればよかったのに。

11. The Last Balloon
 ラストも正攻法、力強く、それでいて優雅さを失わないポップ・シンフォニー。悲観的な終末観の中、見上げた空に遠く浮かぶ「希望」という名のバルーン。皮肉と自虐で構成された英国人といえども、たまにはポジティブになるのだ。






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英国ポップ馬鹿80年代の軌跡 - XTC 『Rag and Bone Buffet』

folder 1992年リリース、英国が生んだポップ馬鹿Andy Partridge 率いる屈折ポップ・バンドXTCのコンピレーション・アルバム。よくあるヒット曲集ではなく、これまであちこちのオムニバスや限定シングルにカップリングされていた曲を集めたものなので、いわゆるベスト盤とは主旨が微妙に違っている。
 配給先が変わるたびに編集盤がリリースされるのは、彼らに限らずベテラン中堅どころならよくあることだけど、このバンド、ていうかAndyは新曲制作よりむしろアーカイブ発掘にかける時間の方が多い。未発表ライブだのラジオ音源だの、その後ろ向きな情熱のカロリーに比類するのは、同じく英国の偏屈親父Robert Frippくらいだろう。
 ファンクラブ向けのカセット音源までかき集めた壮大なデモ音源集『Fuzzy Warbles』シリーズは全8枚、さらにおまけでもう1枚と、考えてみれば全オリジナル・アルバムよりも枚数を重ねている。それとはまた別に、同じ主旨の4枚組『Coat of Many Cupboards』、さらに最後の作品となった『Apple Venus』シリーズ2枚、それぞれのデモ・アルバムがオフィシャルでリリースされている。
 「一旦レコーディングしてしまった物は、とにかく片っぱしから市場に出してゆく」という極端な「取って出し」方針は、印税トラブルによってきちんとした対価が得られなかったヴァージン時代の反動なんじゃないかと思われる。何しろメジャー・アーティストのくせに、「銀行口座にほとんど残高がないんだよ」とインタビュアーに半分自嘲半分本気で嘆いていたくらいだから。
 そういった事情をマニアもまた理解していて、そういった半完成品的なアイテムも律儀に買っちゃうものだから始末が悪い。そりゃ真面目に作らなくなっちゃうよね。そういった事情を含んで考えればこのコンピレーション、個々のトラックは大量に流通してたわけではないけれど、一応オフィシャル音源をまとめたものなので、まだちゃんと作られた方である。

 最近のXTC、ていうかAndyの近況はといえば、
 ① 再結成Monkeysのシングル曲を書き下ろし提供
 ② 一連のオリジナル・アルバムの5.1chミックスの監修
 ③ 『Fuzzy warbles』新装リリース
 …まぁ見事に後ろ向きな企画ばかり。コアなマニア向けのニッチなアーティストとして生きてゆくことを覚悟した活動ぶりである。
 かつてJeff Lynneが、Beatlesへのオマージュに溢れたプロデュース・ワークによってGeorge Harrisonを復活に導いたように、AndyとMonkeysだって、やり方次第ではとんでもない化学反応が起こるかもしれないのに、やってる事はただの楽曲提供だけ。まぁレーベル側がAndyにそこまでの仕事を求めてなかっただけなのだけれど、要はその程度のポジションでしかなかった、という見方もできる。
 まぁそれでもAndyのささやかなネーム・バリューによって、買っちゃうんだろうなマニアだったら。コアなファン層とは言っても、その点在する範囲は世界レベルなので、チリも積もれば的に結構な数になる。マーケティングの観点から見れば、変に売れ線に走らず、それでいてちょっぴりフック・ラインの効いた曲も書けるAndyは都合の良いポジションなのだろう。要は便利屋的扱い、メインには決してなり得ない。

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 じゃあもう1人の便利屋、XTCの「普通の人」担当であるColin Mouldingは今どうしているのか。
 『Apple Venus』以降、具体的なアクションを起こそうとしないAndyと軋轢が生じた末に脱退、いろいろなしがらみから解放されて、持ち前のメロウな作風を深化させつつマイペースな活動ぶりなんだろうかと思いきや、YesのBilly Sherwoodの昨年リリースされたソロ・シングルにヴォーカルで参加したのが最後。ていうか、それ以前も特筆するような活動は行なっていない。「XTCが終わってお前ら何やってんだっ」と、膝を突き合わせて問い質したくなってしまう。
 彼らの立場から見ると、何しろ2人ユニットでどちらもソングライター、セールス云々は別にして、それぞれソロでやっていけるスキルはあるのだから、「別にグループでいる必要ないんじゃね?」という考えになってしまってもおかしくはない。特にColin、キャリアを重ねるにつれて、XTCの特徴である「エキセントリックかつアバンギャルド性を内包したギター・ポップ」という音楽性から乖離するようになったため、「XTC」というブランドが逆にジャマになってきた部分もある。
 まぁそんなこんながあってXTCの活動は次第にフェード・アウト、はっきりした解散宣言を行なうこともなく、次第にソロ・ワーク、外部コラボ活動が多くなってゆくわけだけど、これがまた2人とも、出来上がった作品がつまらない。俺自身、「多分つまんねぇんだろうなぁ」と先入観を持って聴いてしまっているので、さらにつまらなさが増すというのもあるのだけど、ほんと期待通りのつまらなさである。
 多分本人たちも、今さらメジャー・ヒットを求めてる風でもないので、趣味の延長線上みたいな作品ばっかりである。
 まぁ今までだって、趣味っぽかったけどね。

 XTCが最後にニュー・アイテムを発表したのがいつだったのか、そんなに興味はないけど一応調べてみた。こういう時手っ取り早いのは、有名なファンサイトChalkhills。世界中のXTCマニアがあぁだこうだと書き込んでいるので、情報は早いし一番正確。
 ディスコグラフィーのページを見ると、2005年のiTunes限定シングル”Where Did The Ordinary People Go?”が最後になっている。Youtubeにもあったので試しに聴いてみると、Colinヴォーカルによる軽快なロック・ビートを効果的に使ったポップ・ソングだった。キャッチーなナンバーなので、これを軸にしてAndyとの二面性をうまく組み合わせればミニ・アルバムくらいはできたと思うのだけど、これ以降活動が終息してしまったのはちょっと残念。
 ていうかもうちょっと調べてみると、この後にリリースされる13枚組(!)7インチ・シングル・ボックス『Apple Vinyls』のおまけテイクだった。ちょっと褒めて損したな。
 で、『Apple Venus』と並行してリリースしていた『Fuzzy Warbles』シリーズも完結してやる事がなくなったAndy、前述した5.1chミックスの監修やら、「初回ミックス時にエンジニアがプラグの左右を間違えたので、最初の構想通り、正しい極性につないでミックスをやり直した」という、「今さらなに言ってんの」的な理由で制作された『Skylarking』ニュー・ミックスなど、完全に墓守り人モードに入っている。なので、今はすっかり長い余生を過ごしている、といった塩梅、時々、友人知人のセッションに参加したりコラボしたりなど、悠々自適な身分である。
 セールス状況から察すると、それほど身入りがいいとは思えないのだけど、Andy言うところの「奴隷契約」だったヴァージン時代と比べれば、今のプライベート・レーベルの方が取り分はずっと多いだろうし、第一、すでに減価償却の終わったアイテムにちょこっと手を加えているだけなのだから、経費も相当抑えられる。『Fuzzy Warbles』の一連のジャケットなんて見ると、「金かけてませんよ」感アリアリだし。
 
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 かと言ってプレッシャーのない状況、ノン・ストレスな状態が続くのも考えものである。どんな仕事でも言えることだけど、多少の負荷やストレスがかかってる方がチームの結束力も強くなるし、クオリティが高い結果になることが多い。人間、楽ばっかりしてちゃダメなのだ。
 印税トラブルやライブに伴う神経症など、あらゆる災難が立ちはだかってきたことによって、思い通りの活動ができなかったヴァージン時代。本人たちからすれば環境的に満足ゆくものではなかったけど、限られた条件下で知恵を絞り工夫を凝らしていくことで、どうにか目先のミッションを乗り越え、結果的に後世に残る作品を作り出してきた。
 勇み足ではあるけれど強いパッション、多くのリスナーに聴いてもらいたいという強い欲求と意志とが、そのサウンドには刻まれている。ギターのカッティングひとつ、ちょっとしたドラムのオカズひとつにしたって、それらの有無次第で、伝わる響きはまるで違ってくる。
 今の彼らにそんなものはない。あるのはどこまでも緩やかな自己満足、そして「理解できないなら聴くな」という選民意識。しかもそこに、音楽へ向かう必然性、真摯な姿勢が見られないことに腹が立つのだ。
 …どうしてXTCにこんなに熱くなってんだ、俺。


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1. Extrovert
 1986年シングル”Grass”のB面曲。初期ギター・ポップのポップ成分強めの進化形。

2. Ten Feet Tall
 もともとは『Drums and Wires』収録。アメリカ限定でシングル・カットする予定だったのだけど、諸般の事情で発売中止になったところを、ここで初出。まだTerry Chambersがいた頃なので、バンド・サウンド主体の音作り。この頃はまだ密室性が薄い。

3. Mermaid Smiled
 『Skylarking』収録曲。アレンジもほとんどいじっておらず、そのまんま入れたんじゃないかと思われる。どこか違うのかな?

4. Too Many Cooks In The Kitchen
 1980年リリース、Colinの変名ソロ・プロジェクトThe Colonelによるシングル。能天気なスカ・ビートながらどこか陰鬱さが漂ってしまうのは、正統な英国紳士のたしなみによるもの。

5. Respectable Street
 1980年リリース、『Black Sea』からのシングル・ヴァージョン。2.同様、きちんとバンドの音だけで構成された音なので、勢いに任せた部分もあるけど、一体感はハンパない。この時期のXTCの評価が高いのも納得。久しぶりに聴いたけど、フヌケたポップスよりは全然いいや。



6. Looking For Footprints
 1982年リリース、雑誌『Flexipop!』のおまけソノシートに収録。もともとは『Go 2』時にレコーディングされたまま未発表となっていたのだけど、『Flexipop!』サイドからの持ち込み企画として、選ばれたのがこれ。まだポスト・パンク色が強かった頃の作品で、アクの強い楽曲のため、どこにもはめ込むことができなかったんじゃないかと思われる。

7. Over Rusty Water
 1982年リリース、シングル” No Thugs In Our House”のB面で初登場。1分程度の短いインスト曲、しかも起伏のないアンビエント的な展開の楽曲のため、コメントに困ってしまう。好きか嫌いか聴かれれば、どっちでもいいと答える人が多いはず。

8. Heaven Is Paved With Broken Glass
 『English Settlement』制作時にレコーディングされ、シングル・カットされた” Ball and Chain”のB面としてリリース。ここに収録されているのは別ミックス。ギター・ロックとポップ・センスとのバランスが絶妙。これ以降はポップ風味が強くなり過ぎる感もある。

9. The World Is Full Of Angry Young Men
 こういったメロウ・タッチはもちろんMoulding作なのだけど、もともとは『Mummer』セッション時に生まれた曲。それが巡り巡ってオフィシャル・リリースされたのが1989年、シングル”The Loving”のB面としてだった。充分寝かされて満を持しての登場だったのか、それとも単なるネタ切れだったのかはわかりかねるけど、時期的にロック色を抑えたアレンジは大正解だったと思う。

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10. Punch And Judy
 変則リズムが印象的、Andyの饒舌なヴォーカルが目立つラグタイム風ギター・ロックは8.同様、”Ball and Chain”のB面としてリリース。こんなソリッドなチューンも漏れてしまうくらい、この時期の彼らの才気煥発振りが窺える。だって『English Settlement』って、もともと2枚組だよ?

11. Thanks For Christmas
 またまた変名ユニットThe Three Wise Menによる、1983年にリリースされたクリスマス・シングル。時期的には『Mummer』制作後まもなくで、体調的にはどん底だったはずなのに、出来上がったのは一点の曇りもない清廉潔白なポップ・チューン。XTCに関係なく、これは知る人ぞ知るクリスマス・ソングとしておススメ。XTCのくせに聴いた後にホッコリした気分になってしまうのはこの曲くらい。
 日本でも好評だったらしく、CDシングルがリリースされている。



12. Tissue Tigers (The Arguers)
 『English Settlement』セッションは名曲の宝庫で、スカっぽいリズムも混じるソリッドなガレージ・ポップのこれも、アルバムからは選外。UK最高10位まで上昇したシングル”Senses Working Overtime”のB面としてリリース。初期のポスト・パンクの風味を残した佳曲。

13. I Need Protection
 4.のB面としてリリース。Andyっぽいコーラスとエフェクトなのだけど、れっきとしたMouldingの作品。彼の暗黒面を映し出している?

14. Another Satellite
 BBCのラジオ番組内のスタジオ・ライブ・ヴァージョン。もちろん原曲は『Skylarking』より。シングル”Dear God”の12インチ・シングルのB面としてリリース。簡素なリズム・ボックスとシンセのエフェクト、ディストーション・ギターとのシンプルな編成だけど、オリジナルの雰囲気を忠実に再現している。人に見られなきゃできるんだな、この男。

15. Strange Tales, Strange Tails
 1981年リリースのシングル” Respectable Street”のB面としてリリース。ニュー・ウェイブの残り香がプンプンしてくる、俺的には普通のロック・バンドの楽曲。間奏のテープ逆回転ギター・ソロだけオッと思わせるけど、ただそれだけ。この時期はまだちょっと斜め上のバンドでしかない。

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16. Officer Blue
 しかしこのアルバム、Moulding率が高い。Andy主導のユニットなので、フロントマンの楽曲が優先されるのは仕方ないとして、隠れた名曲率が高いのが実は彼だということに改めて気づかされる。この曲のリリースは1981年のシングル”Respectable Street”のB面としてだけど、実際にレコーディングされたのはその1年くらい前。シャッフル気味の変則レゲエ・ビートの包装をはがすと、残るのは親しみやすいメロディ・ライン。

17. Scissor Man
 有名なBBCのラジオ・プログラム「John Peel Session」で演奏された『Drums and Wires』収録のオルタネイト・ヴァージョン。2枚組限定シングル”Towers of London”のB面曲としてリリース。ここでのプレイは即興性も重視して間奏で結構遊びのフレーズも入れまくりで楽しそう。

18. Cockpit Dance Mixture
 1982年シングル”Ball and Chan”のB面曲。タイトルにあるようにかなりミックスをいじくったダブ的なサウンドを展開している。オリジナルはオーソドックスなロックだったように思われるけど、テープ編集とリズムの妙でこれだけダンサブルになっちゃうなんて、当時の彼らがどれだけエキセントリックな存在だったかを知らしめる逸品。後付けで挿入されているベース・ラインなんて、当時のニュー・ウェイブ系バンドには出せない感触。

19. Pulsing Pulsing
 1979年のシングル” Making Plans for Nigel”、邦題「がんばれナイジェル」のB面としてリリース。ほとんどワンコードで作られたシンプルなトラックなのだけど、この時期からエンジニアとしてSteve LillywhiteとHugh Padghamが参加するようになり、サウンドのパーツのひとつひとつが丁寧にひと捻りされていて、下手すると不協和音になってしまいそうなところを、調和のとれたミックスで楽曲として成立させている。絵に描いたようなニュー・ウェイブ。

20. Happy Families
 原曲は『Mummer』の時に書かれたもので、しばらく未完成のまま放っておいたのを、鈴木さえ子『Studio Romantic』セッション時に「これは使える」と思い立ってリライトし、「き、君のために作った新曲だょ…」とか何とか言って提供した経緯を持つ、Andy流屈折ポップが良い方向へ転じたファニーでポップで、それでいてちょっぴり毒味を添加したナンバー。
プレイしてみて自分でもイケると思ったのか、XTCとしてレコーディングしたところ、映画プロデューサーに気に入られて、日本でもスマッシュ・ヒットした『スリーメン・アンド・ベイビー』挿入歌として使われることに。好評だったため、さらにシングル” King For a Day”のB面としてもリリースされた。



21. Countdown To Christmas Party Time
 11.のB面としてリリース。ホッコリするA面とは対照的に、ここでは本来のギター・ポップ・バンドとしての面目躍如、ソリッドかつコンパクトながら、きちんとインパクトの強いサウンドに仕上げている。クリスマス感は薄いけど、パーティ・ソングとしての雰囲気は充分出ている。

22. Blame The Weather
 1982年のシングル” Senses Working Overtime”のB面としてリリース。ロック色を薄めたPaul McCartneyみたいなメロディ・ラインで歌うMoulding、やはりこの人は適性がポップ寄りのため、こういったメロディ主体のナンバーはうまい。でも単体だと甘すぎちゃうので、やっぱりAndyとのコンビがバランスが取れてよい。Andyにも同じことが言えるけどね。

23. Take This Town
 ここでやっと出てきた『Black Sea』セッション。1980年に公開された映画『Times Square』に提供したトラックということだけど、その映画自体、俺は見たことないので詳しいところはわかりかねる。制作にRSOが絡んでいるため、音楽を中心にした映画らしいけど。
 これぞニュー・ウェイブといった感じのロック・テイストの強いナンバー。

24. History Of Rock 'N' Roll
 Morgan Fisher制作による、1分前後のコンパクトな楽曲ばかりを50曲も集めたアルバム『Miniatures』への提供曲。Andy以外にも、David CunninghamやRobert Frippなどなかなか錚々たるメンツが顔を揃えており、ジョーク交じりの音楽を大真面目にやっているところがミソ。
 ここでのAndyはタイトル通り、50’s・60’s・70’s、そして80’sを様々なギター・エフェクトで表現している。その間、約20秒。そこに凝縮されたロックの歴史。






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北海道の中途半端な田舎に住む、そろそろアラフィフ男。ほぼ週1のペースで音楽ブログ更新中。節操ない聴き方と思われてるけど、自分の中では一貫してるつもり。 最近は蔵書の整理がてら、古い本を再読中。ジョン・アーヴィングから始まって、フィッツジェラルドやゾラ、モームなど、いわゆる古典の復習中。いつになったら終わることやら。新刊読めねぇや。
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