XTC

好きなアルバムを自分勝手にダラダラ語る、そういったゆるいコンセプトのブログです。

英国ポップ馬鹿80年代の軌跡 - XTC 『Rag and Bone Buffet』

folder 1992年リリース、英国が生んだポップ馬鹿Andy Partridge 率いる屈折ポップ・バンドXTCのコンピレーション・アルバム。よくあるヒット曲集ではなく、これまであちこちのオムニバスや限定シングルにカップリングされていた曲を集めたものなので、いわゆるベスト盤とは主旨が微妙に違っている。
 配給先が変わるたびに編集盤がリリースされるのは、彼らに限らずベテラン中堅どころならよくあることだけど、このバンド、ていうかAndyは新曲制作よりむしろアーカイブ発掘にかける時間の方が多い。未発表ライブだのラジオ音源だの、その後ろ向きな情熱のカロリーに比類するのは、同じく英国の偏屈親父Robert Frippくらいだろう。
 ファンクラブ向けのカセット音源までかき集めた壮大なデモ音源集『Fuzzy Warbles』シリーズは全8枚、さらにおまけでもう1枚と、考えてみれば全オリジナル・アルバムよりも枚数を重ねている。それとはまた別に、同じ主旨の4枚組『Coat of Many Cupboards』、さらに最後の作品となった『Apple Venus』シリーズ2枚、それぞれのデモ・アルバムがオフィシャルでリリースされている。
 「一旦レコーディングしてしまった物は、とにかく片っぱしから市場に出してゆく」という極端な「取って出し」方針は、印税トラブルによってきちんとした対価が得られなかったヴァージン時代の反動なんじゃないかと思われる。何しろメジャー・アーティストのくせに、「銀行口座にほとんど残高がないんだよ」とインタビュアーに半分自嘲半分本気で嘆いていたくらいだから。
 そういった事情をマニアもまた理解していて、そういった半完成品的なアイテムも律儀に買っちゃうものだから始末が悪い。そりゃ真面目に作らなくなっちゃうよね。そういった事情を含んで考えればこのコンピレーション、個々のトラックは大量に流通してたわけではないけれど、一応オフィシャル音源をまとめたものなので、まだちゃんと作られた方である。

 最近のXTC、ていうかAndyの近況はといえば、
 ① 再結成Monkeysのシングル曲を書き下ろし提供
 ② 一連のオリジナル・アルバムの5.1chミックスの監修
 ③ 『Fuzzy warbles』新装リリース
 …まぁ見事に後ろ向きな企画ばかり。コアなマニア向けのニッチなアーティストとして生きてゆくことを覚悟した活動ぶりである。
 かつてJeff Lynneが、Beatlesへのオマージュに溢れたプロデュース・ワークによってGeorge Harrisonを復活に導いたように、AndyとMonkeysだって、やり方次第ではとんでもない化学反応が起こるかもしれないのに、やってる事はただの楽曲提供だけ。まぁレーベル側がAndyにそこまでの仕事を求めてなかっただけなのだけれど、要はその程度のポジションでしかなかった、という見方もできる。
 まぁそれでもAndyのささやかなネーム・バリューによって、買っちゃうんだろうなマニアだったら。コアなファン層とは言っても、その点在する範囲は世界レベルなので、チリも積もれば的に結構な数になる。マーケティングの観点から見れば、変に売れ線に走らず、それでいてちょっぴりフック・ラインの効いた曲も書けるAndyは都合の良いポジションなのだろう。要は便利屋的扱い、メインには決してなり得ない。

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 じゃあもう1人の便利屋、XTCの「普通の人」担当であるColin Mouldingは今どうしているのか。
 『Apple Venus』以降、具体的なアクションを起こそうとしないAndyと軋轢が生じた末に脱退、いろいろなしがらみから解放されて、持ち前のメロウな作風を深化させつつマイペースな活動ぶりなんだろうかと思いきや、YesのBilly Sherwoodの昨年リリースされたソロ・シングルにヴォーカルで参加したのが最後。ていうか、それ以前も特筆するような活動は行なっていない。「XTCが終わってお前ら何やってんだっ」と、膝を突き合わせて問い質したくなってしまう。
 彼らの立場から見ると、何しろ2人ユニットでどちらもソングライター、セールス云々は別にして、それぞれソロでやっていけるスキルはあるのだから、「別にグループでいる必要ないんじゃね?」という考えになってしまってもおかしくはない。特にColin、キャリアを重ねるにつれて、XTCの特徴である「エキセントリックかつアバンギャルド性を内包したギター・ポップ」という音楽性から乖離するようになったため、「XTC」というブランドが逆にジャマになってきた部分もある。
 まぁそんなこんながあってXTCの活動は次第にフェード・アウト、はっきりした解散宣言を行なうこともなく、次第にソロ・ワーク、外部コラボ活動が多くなってゆくわけだけど、これがまた2人とも、出来上がった作品がつまらない。俺自身、「多分つまんねぇんだろうなぁ」と先入観を持って聴いてしまっているので、さらにつまらなさが増すというのもあるのだけど、ほんと期待通りのつまらなさである。
 多分本人たちも、今さらメジャー・ヒットを求めてる風でもないので、趣味の延長線上みたいな作品ばっかりである。
 まぁ今までだって、趣味っぽかったけどね。

 XTCが最後にニュー・アイテムを発表したのがいつだったのか、そんなに興味はないけど一応調べてみた。こういう時手っ取り早いのは、有名なファンサイトChalkhills。世界中のXTCマニアがあぁだこうだと書き込んでいるので、情報は早いし一番正確。
 ディスコグラフィーのページを見ると、2005年のiTunes限定シングル”Where Did The Ordinary People Go?”が最後になっている。Youtubeにもあったので試しに聴いてみると、Colinヴォーカルによる軽快なロック・ビートを効果的に使ったポップ・ソングだった。キャッチーなナンバーなので、これを軸にしてAndyとの二面性をうまく組み合わせればミニ・アルバムくらいはできたと思うのだけど、これ以降活動が終息してしまったのはちょっと残念。
 ていうかもうちょっと調べてみると、この後にリリースされる13枚組(!)7インチ・シングル・ボックス『Apple Vinyls』のおまけテイクだった。ちょっと褒めて損したな。
 で、『Apple Venus』と並行してリリースしていた『Fuzzy Warbles』シリーズも完結してやる事がなくなったAndy、前述した5.1chミックスの監修やら、「初回ミックス時にエンジニアがプラグの左右を間違えたので、最初の構想通り、正しい極性につないでミックスをやり直した」という、「今さらなに言ってんの」的な理由で制作された『Skylarking』ニュー・ミックスなど、完全に墓守り人モードに入っている。なので、今はすっかり長い余生を過ごしている、といった塩梅、時々、友人知人のセッションに参加したりコラボしたりなど、悠々自適な身分である。
 セールス状況から察すると、それほど身入りがいいとは思えないのだけど、Andy言うところの「奴隷契約」だったヴァージン時代と比べれば、今のプライベート・レーベルの方が取り分はずっと多いだろうし、第一、すでに減価償却の終わったアイテムにちょこっと手を加えているだけなのだから、経費も相当抑えられる。『Fuzzy Warbles』の一連のジャケットなんて見ると、「金かけてませんよ」感アリアリだし。
 
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 かと言ってプレッシャーのない状況、ノン・ストレスな状態が続くのも考えものである。どんな仕事でも言えることだけど、多少の負荷やストレスがかかってる方がチームの結束力も強くなるし、クオリティが高い結果になることが多い。人間、楽ばっかりしてちゃダメなのだ。
 印税トラブルやライブに伴う神経症など、あらゆる災難が立ちはだかってきたことによって、思い通りの活動ができなかったヴァージン時代。本人たちからすれば環境的に満足ゆくものではなかったけど、限られた条件下で知恵を絞り工夫を凝らしていくことで、どうにか目先のミッションを乗り越え、結果的に後世に残る作品を作り出してきた。
 勇み足ではあるけれど強いパッション、多くのリスナーに聴いてもらいたいという強い欲求と意志とが、そのサウンドには刻まれている。ギターのカッティングひとつ、ちょっとしたドラムのオカズひとつにしたって、それらの有無次第で、伝わる響きはまるで違ってくる。
 今の彼らにそんなものはない。あるのはどこまでも緩やかな自己満足、そして「理解できないなら聴くな」という選民意識。しかもそこに、音楽へ向かう必然性、真摯な姿勢が見られないことに腹が立つのだ。
 …どうしてXTCにこんなに熱くなってんだ、俺。


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1. Extrovert
 1986年シングル”Grass”のB面曲。初期ギター・ポップのポップ成分強めの進化形。

2. Ten Feet Tall
 もともとは『Drums and Wires』収録。アメリカ限定でシングル・カットする予定だったのだけど、諸般の事情で発売中止になったところを、ここで初出。まだTerry Chambersがいた頃なので、バンド・サウンド主体の音作り。この頃はまだ密室性が薄い。

3. Mermaid Smiled
 『Skylarking』収録曲。アレンジもほとんどいじっておらず、そのまんま入れたんじゃないかと思われる。どこか違うのかな?

4. Too Many Cooks In The Kitchen
 1980年リリース、Colinの変名ソロ・プロジェクトThe Colonelによるシングル。能天気なスカ・ビートながらどこか陰鬱さが漂ってしまうのは、正統な英国紳士のたしなみによるもの。

5. Respectable Street
 1980年リリース、『Black Sea』からのシングル・ヴァージョン。2.同様、きちんとバンドの音だけで構成された音なので、勢いに任せた部分もあるけど、一体感はハンパない。この時期のXTCの評価が高いのも納得。久しぶりに聴いたけど、フヌケたポップスよりは全然いいや。



6. Looking For Footprints
 1982年リリース、雑誌『Flexipop!』のおまけソノシートに収録。もともとは『Go 2』時にレコーディングされたまま未発表となっていたのだけど、『Flexipop!』サイドからの持ち込み企画として、選ばれたのがこれ。まだポスト・パンク色が強かった頃の作品で、アクの強い楽曲のため、どこにもはめ込むことができなかったんじゃないかと思われる。

7. Over Rusty Water
 1982年リリース、シングル” No Thugs In Our House”のB面で初登場。1分程度の短いインスト曲、しかも起伏のないアンビエント的な展開の楽曲のため、コメントに困ってしまう。好きか嫌いか聴かれれば、どっちでもいいと答える人が多いはず。

8. Heaven Is Paved With Broken Glass
 『English Settlement』制作時にレコーディングされ、シングル・カットされた” Ball and Chain”のB面としてリリース。ここに収録されているのは別ミックス。ギター・ロックとポップ・センスとのバランスが絶妙。これ以降はポップ風味が強くなり過ぎる感もある。

9. The World Is Full Of Angry Young Men
 こういったメロウ・タッチはもちろんMoulding作なのだけど、もともとは『Mummer』セッション時に生まれた曲。それが巡り巡ってオフィシャル・リリースされたのが1989年、シングル”The Loving”のB面としてだった。充分寝かされて満を持しての登場だったのか、それとも単なるネタ切れだったのかはわかりかねるけど、時期的にロック色を抑えたアレンジは大正解だったと思う。

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10. Punch And Judy
 変則リズムが印象的、Andyの饒舌なヴォーカルが目立つラグタイム風ギター・ロックは8.同様、”Ball and Chain”のB面としてリリース。こんなソリッドなチューンも漏れてしまうくらい、この時期の彼らの才気煥発振りが窺える。だって『English Settlement』って、もともと2枚組だよ?

11. Thanks For Christmas
 またまた変名ユニットThe Three Wise Menによる、1983年にリリースされたクリスマス・シングル。時期的には『Mummer』制作後まもなくで、体調的にはどん底だったはずなのに、出来上がったのは一点の曇りもない清廉潔白なポップ・チューン。XTCに関係なく、これは知る人ぞ知るクリスマス・ソングとしておススメ。XTCのくせに聴いた後にホッコリした気分になってしまうのはこの曲くらい。
 日本でも好評だったらしく、CDシングルがリリースされている。



12. Tissue Tigers (The Arguers)
 『English Settlement』セッションは名曲の宝庫で、スカっぽいリズムも混じるソリッドなガレージ・ポップのこれも、アルバムからは選外。UK最高10位まで上昇したシングル”Senses Working Overtime”のB面としてリリース。初期のポスト・パンクの風味を残した佳曲。

13. I Need Protection
 4.のB面としてリリース。Andyっぽいコーラスとエフェクトなのだけど、れっきとしたMouldingの作品。彼の暗黒面を映し出している?

14. Another Satellite
 BBCのラジオ番組内のスタジオ・ライブ・ヴァージョン。もちろん原曲は『Skylarking』より。シングル”Dear God”の12インチ・シングルのB面としてリリース。簡素なリズム・ボックスとシンセのエフェクト、ディストーション・ギターとのシンプルな編成だけど、オリジナルの雰囲気を忠実に再現している。人に見られなきゃできるんだな、この男。

15. Strange Tales, Strange Tails
 1981年リリースのシングル” Respectable Street”のB面としてリリース。ニュー・ウェイブの残り香がプンプンしてくる、俺的には普通のロック・バンドの楽曲。間奏のテープ逆回転ギター・ソロだけオッと思わせるけど、ただそれだけ。この時期はまだちょっと斜め上のバンドでしかない。

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16. Officer Blue
 しかしこのアルバム、Moulding率が高い。Andy主導のユニットなので、フロントマンの楽曲が優先されるのは仕方ないとして、隠れた名曲率が高いのが実は彼だということに改めて気づかされる。この曲のリリースは1981年のシングル”Respectable Street”のB面としてだけど、実際にレコーディングされたのはその1年くらい前。シャッフル気味の変則レゲエ・ビートの包装をはがすと、残るのは親しみやすいメロディ・ライン。

17. Scissor Man
 有名なBBCのラジオ・プログラム「John Peel Session」で演奏された『Drums and Wires』収録のオルタネイト・ヴァージョン。2枚組限定シングル”Towers of London”のB面曲としてリリース。ここでのプレイは即興性も重視して間奏で結構遊びのフレーズも入れまくりで楽しそう。

18. Cockpit Dance Mixture
 1982年シングル”Ball and Chan”のB面曲。タイトルにあるようにかなりミックスをいじくったダブ的なサウンドを展開している。オリジナルはオーソドックスなロックだったように思われるけど、テープ編集とリズムの妙でこれだけダンサブルになっちゃうなんて、当時の彼らがどれだけエキセントリックな存在だったかを知らしめる逸品。後付けで挿入されているベース・ラインなんて、当時のニュー・ウェイブ系バンドには出せない感触。

19. Pulsing Pulsing
 1979年のシングル” Making Plans for Nigel”、邦題「がんばれナイジェル」のB面としてリリース。ほとんどワンコードで作られたシンプルなトラックなのだけど、この時期からエンジニアとしてSteve LillywhiteとHugh Padghamが参加するようになり、サウンドのパーツのひとつひとつが丁寧にひと捻りされていて、下手すると不協和音になってしまいそうなところを、調和のとれたミックスで楽曲として成立させている。絵に描いたようなニュー・ウェイブ。

20. Happy Families
 原曲は『Mummer』の時に書かれたもので、しばらく未完成のまま放っておいたのを、鈴木さえ子『Studio Romantic』セッション時に「これは使える」と思い立ってリライトし、「き、君のために作った新曲だょ…」とか何とか言って提供した経緯を持つ、Andy流屈折ポップが良い方向へ転じたファニーでポップで、それでいてちょっぴり毒味を添加したナンバー。
プレイしてみて自分でもイケると思ったのか、XTCとしてレコーディングしたところ、映画プロデューサーに気に入られて、日本でもスマッシュ・ヒットした『スリーメン・アンド・ベイビー』挿入歌として使われることに。好評だったため、さらにシングル” King For a Day”のB面としてもリリースされた。



21. Countdown To Christmas Party Time
 11.のB面としてリリース。ホッコリするA面とは対照的に、ここでは本来のギター・ポップ・バンドとしての面目躍如、ソリッドかつコンパクトながら、きちんとインパクトの強いサウンドに仕上げている。クリスマス感は薄いけど、パーティ・ソングとしての雰囲気は充分出ている。

22. Blame The Weather
 1982年のシングル” Senses Working Overtime”のB面としてリリース。ロック色を薄めたPaul McCartneyみたいなメロディ・ラインで歌うMoulding、やはりこの人は適性がポップ寄りのため、こういったメロディ主体のナンバーはうまい。でも単体だと甘すぎちゃうので、やっぱりAndyとのコンビがバランスが取れてよい。Andyにも同じことが言えるけどね。

23. Take This Town
 ここでやっと出てきた『Black Sea』セッション。1980年に公開された映画『Times Square』に提供したトラックということだけど、その映画自体、俺は見たことないので詳しいところはわかりかねる。制作にRSOが絡んでいるため、音楽を中心にした映画らしいけど。
 これぞニュー・ウェイブといった感じのロック・テイストの強いナンバー。

24. History Of Rock 'N' Roll
 Morgan Fisher制作による、1分前後のコンパクトな楽曲ばかりを50曲も集めたアルバム『Miniatures』への提供曲。Andy以外にも、David CunninghamやRobert Frippなどなかなか錚々たるメンツが顔を揃えており、ジョーク交じりの音楽を大真面目にやっているところがミソ。
 ここでのAndyはタイトル通り、50’s・60’s・70’s、そして80’sを様々なギター・エフェクトで表現している。その間、約20秒。そこに凝縮されたロックの歴史。






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にっちもさっちもどうにもノンサッチ - XTC 『Nonsuch』

XTC-Nonsuch 1992年にリリースされ、『Oranges & Lemons』に続いてUK28位、ビルボード総合チャートでも28位にランク・イン、セールス的には彼ら最大のヒット作となったアルバム。特にここ日本においては、レコード会社主導で雑誌メディアを巻き込んだ「XTC来て来てキャンペーン」が大々的に実施され、大いに盛り上がった。
 あまりの日本のファンの熱心さに、皮肉屋Andyもさすがに心を動かされたのか、遂には単独来日を果たすに至る。至ったのだけど、文字通り単独での来日のため、ライブは行なわれず、ちょっとしたトーク・ショーとサイン会が催されただけで、複雑な心境のファンも多かったはず。
 そんな中途半端だったら最初っから来んなっ、と胸中をくすぶらせたファンも多かったんじゃないかと思われるのだけれど、そこをグッと呑み込んで口に出さないのが日本人の特性である。黒船襲来のご時世から、異国の人間に対しては、取り敢えずへり下ってしまうことが、DNAレベルで刷り込まれてしまっている。
 そんな日本人の真意を汲み取ってくれればよかったのだけれど、侘び寂びなんて感情とは無縁の英国人、「こんなマイペースな僕でも受け入れてくれるんだ♡」とポジティヴに受け止めてしまうのが、まためんどくさい男である。

 長い間まともにライブを行なわず、特別キャラの立ったメンバーがいるわけでもない。だけど変態ポップ・センスに魅かれるニッチなファンたちに支えられて、まぁ次のレコーディング契約が継続できる程度には収益をもたらしていたXTC。にもかかわらず、当時の所属レーベルVirginとの関係は、日に日に悪化していった。
 そしてこのアルバムのレコーディング〜プロモーション期間中、両者の決裂はもはや修復不可能となり、結局メジャーとしてはこれが最後のオリジナル・アルバムとなってしまった。

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 離合集散が頻繁なニュー・ウェイブ系のバンドが多い中、XTCは、細かなメンバー・チェンジはあれど主力メンバーはほぼ一定しており、よって歴代のアルバムの完成度も安定していた。ヒット・チャートの常連ではなかったけど、日本やEU諸国においては、そこそこの知名度を保っていた。
 アメリカ進出が遅れたおかげで総合チャートのアクションは地味だったけど、ラジオが中心となるカレッジ・チャートでは、”Dear God”のヒットが引き金となって、以来そこそこの実績を維持していた。
 なのに、Virginにおける彼らのポジションはいまだ不安定なものであり、キャリアや実績に見合うほどの待遇を受けることはできなかった。
 
 Andy曰く、アーティスト契約がバンドにとって、めちゃめちゃ不利なものだった、悪徳マネージャーによって搾取されまくった、とのこと。『Skylarking』のレビューでも書いたのだけど、歴代プロデューサーとの衝突も多く、Todd Rundgrenとの衝突は今でも語り草になっており、あまりに互いが互いを罵倒しまくった挙句、今では2人とも定番の持ちネタとして、何かにつけエピソードを披露しまくる事態となっている。インタビューの度にいつもネタ振りされるので、近年では、そのトークに一層磨きがかかっている。

 実際『Nonsuch』においても、大御所プロデューサーGus Dudgeonと衝突を起こしている。ミックス・ダウン作業のイニシアチブをどちらが握るかについて意見が分かれ、最終的には完パケ寸前にGus 解雇という、なんとも後味の悪い結末に終わっている。
 Gusとしてはレーベルの意向に沿って、売れ線重視のコンテンポラリーな仕上がりをシミュレートしていたのだろうけど、あくまで自分の感性にこだわるAndyとしては、最終段階で他人の手によって、手塩にかけた作品が自分の意に沿わない方向へ歪められるのを、黙って見ているわけにはいかなかったのだろう。 まぁ自意識の強いアーティストなら、当然なのだろうけど。

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 以前からの疑問、XTC、まぁ主にAndyなのだけど、彼とVirginとはなかなか方向性が合わず、契約解消まで終始平行線だった、という見解になっている。ただしピックアップされているのは、ほぼAndyサイドの発言ばかり、Virginの言い分はほぼ聞いたことがない。概ねAndyの主張通りなのか、それともVirgin側の「金持ちケンカせず」の余裕っぷりなのか―。
 どちらにしろ、互いの意見を聞いてみない限りは、一方の主張ばかりに肩入れするのも、大人としてはなんだかね、という気になってしまう。

 じゃあ、他のVirgin所属アーティストはどうだったのかといえば、Andyほど過剰に反応する者は、あまり聞いたことがない。XTCを除いたすべてのアーティストの契約条件が良かったのかといえば、それも考えづらいし、他のアーティストが「資本主義の犬」としてすっごく従順だったり、またはアーティスト契約条項にもの凄く秀でたビジネス・パーソンばかりだったのかといえば、それももっと考えづらい。
 典型的な英国病を患っているAndyの場合、その都度、仮想敵という存在を設定しておかないと、表現意欲の維持がままならなかった面もある。そんなとばっちりを受け入れたのが、一アーティストのいちゃもん程度では揺るぐことのない、磐石とした会社組織Virginである、という対立構造。
 適度なストレスは人を成長させる。ある意味、そんなネガティヴなパワーが彼らの創作意欲を掻き立てていた側面もあるんじゃないかと思われ。
 
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 そして現在、自主レーベル運営によって、悠々自適とまではいかないまでも、マイペースな活動ぶりのAndy。かつての盟友DaveもColinも去ってしまって今は独り、メンバーやレコード会社との衝突からも解放され、ストレスとは無縁の生活を送っているのだけれど、それに比例した作品のつまらなさと言ったら、そりゃあもう。いつまでもアーカイブものばっかやってんじゃねぇよ、とまで言いたくなってしまう。

 『Nonsuch』まとめ作業に伴うライナー・ノーツやインタビューにおいて、いまだAndyはブツクサ言っているようだけど、ライブ演奏を前提としない、密室空間で練り上げられたポップ・ソング集にしては、バンドとしての躍動感がある。曲順構成もしっかりしており、後に小出しに勿体ぶってリリースされた『Apple Venus』シリーズよりも、ずっと高い完成度で仕上がっている。
 多分Andyは絶対認めたがらないだろうけど、手練れのプロデューサーGusによる初期段階の仕切り、アイディア提供やコンセプト設定の賜物だろう。ただ好きなようにダラダラ作詞・作曲して、ただ思いのまま独りよがりにレコーディングして、他人の忠告に耳を貸さずにミックス・ダウンしているだけでは、こういった出来栄えにはならない。
 商品として売ってゆくためには、明確なユーザー像とニーズを想定しておかないと、ただの自己満足でしかないのだ。


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1. The Ballad of Peter Pumpkinhead
「まぬけなピーターのバラッド」。直訳したタイトルからは想像もつかない、この頃のXTCとしてはソリッドでストレートなロック。相変わらず歌詞は暗喩や言葉遊びを交えた多重構造なので、いちいち解釈を加えると、はっきり言ってめんどくさい。Peterというのが誰なのか、昔の宗教家なのか政治家なのか、いろいろな受け取り方はあるけど、どちらにしろ大した意味はない。
 一流のポップ職人として、緻密なガラス細工のような小品ばかりを量産していたAndyだったけど、ここではノリ一発のロックン・ロールをシミュレートして、完璧なパワー・ポップ・ソングを作り出した。やればできるじゃん。
 Stonesのようなギター・リフのオープニング、本人曰く、Mick Jaggerを揶揄したようなハープなど、聴きどころは満載だけど、XTCだけあって小技もいろいろ効かせており、俺的にお気に入りなのは、ほんと終盤のBeach Boysのようなコーラス。
 セカンド・シングルとしてカットされ、UKでは最高71位だったけど、アメリカのModern Rock Tracksチャートでは、なんと1位を獲得。一聴すると普通のスタジアム・ロックに聴こえるけど、普通のアメリカ人はスタジアム・ロックの要素をわざわざXTCに求めたりはしない。アメリカにもなかなかめんどくさい奴が多かったらしく、「あのXTCが普通のスタジアム・ロックをやった」ということで興味を示したのだろう。当時のアメリカ人にもサブカルかぶれ、中二病的な者も多かったと思われる。



2. My Bird Performs
 Colin担当のトラック。比較的オーソドックスなポップス。少なくともロックの文脈で語れるようなメロディや歌詞ではない。昔のA&M的ソフト・ロック・サウンドを目指しているのだろうけど、それをXTCに求めるのは、何か違うんじゃないかと思う。ただソフトに流れ過ぎてしまうサウンドを、ちょっと武骨な響きのギターがうまく全体を締めている。

3. Dear Madam Barnum
 メロディとコーラスがちょっとサイケっぽくなっている、ポップ寄りのロックはAndy作。『Skylarking』に入っててもしっくり来そうだけど、ここではもう少しリズムが立って、疾走感が出ている。

4. Humble Daisy
 Beach Boys、ていうか『Pet Sounds』期のBryan Wilsonのデモ・テープを発掘して現代風に蘇らせたような印象。ちょっとミスマッチなドゥー・ワップ風のコーラスなども、ちょっとアバンギャルド。趣味的な小品だけど、俺は昔から結構気に入っている。
 
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5. The Smartest Monkeys
 Colin作、ちょっと怪しげな雰囲気の漂うゴシック・ロック。それにしても不思議なのは彼のメロディ・ライン。普通の定番コード進行とは外れたところで音が構成されているため、何というかメロディの「揺れ」のようなものが感じられる。ふわふわして揺れ動き、音符の終着点が凄く曖昧なままに終わる印象が強い。
 そこが独特の浮遊感を演出しており、なので地味だけどColinのファンも多い。純粋なポップ・ソングの作り手としては、Andyよりも勝る部分も多い。

6. The Disappointed
 すごくモダンなサウンド、キャッチーなアレンジ、かなり気を使って録られたAndyのヴォーカル。なのに、歌詞は「失望」について。これぞまさしく英国人、してやったりである。
 一応、アルバムのリードとして最初にシングル・カットされてるけど、UK最高33位。Stephen LillywhiteがBeach Boysをプロデュースしたようなサウンドは、英国人にはイマイチ受けなかった。



7. Holly Up on Poppy
 “Dear God”をもう少しメジャー・コードに展開したようなフォーク・ロック。Andyの弾くアコギはなかなかいい響きなので、地味だけど味わいのある一品。でもこれって、やっぱGusのアイディアなのかな、きっと。

8. Crocodile
 XTC流パワー・ポップのお手本的作品。軽快なエレキのアルペジオ、いい感じに軽快に響くバスドラ、ロック・サウンドなのに統率のとれたコーラス。でも、テーマは鰐。
 このタイプの曲がもう2,3曲入っていれば、もう少しVirginとしても力を入れやすかったろうし、アルバムのフックとして、まとまった力になっていただろう。でも、それをしないのがXTCでもある。

9. Rook
 タイトルに反して、彼らとしてはこれも珍しくドラマティックなバラード。荘厳としたストリングスはAndyのアレンジ。アルバムのバラエティを考えると、こういった曲もあって良かったんじゃないかと思えるけど、この後に控えている『Apple Venus』シリーズの前哨戦的サウンドとして捉えると、ちょっと複雑。これを全編でやられてもちょっと、って感じだし、第一誰もXTCにはそれ求めてないし。

10. Omnibus
 よく聴くとリズムがラテン。まさかXTCでラテンなんて、と思ってしまうけど、まぁこれもアルバムの一曲として、アリッちゃアリ。どちらかといえばリズム主体の曲なので、Andyの曲なのに、ついつい耳が行ってしまうのはColinのベース・ライン。やはりソングライターの弾くベースだけあって、メロディアスかつリズムのリードもしっかりしている。

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11. That Wave
 ちょっとダウナーなゴシック・ポップといった趣き。この曲もAndy作なのに、ベースがうまい感じで重心の低さを演出している。こういったテイストの曲はギターの歪みが目立つものなのに、あいにくAndyもDaveも音が軽く性急な運指によって、重厚さがしっかり出ていない。
 やはりこのバンド、Colinの存在は大きかったことがわかる。曲は軽いのに、ベースは重いという、珍しいタイプのプレイヤーである。

12. Then She Appeared
 ややカントリー・タッチの、やはり”Dear God”タイプのフォーク・ロック。あそこまで重苦しくないのは、Beach Boys風のコーラスがうまく中和してることによる作用。

13. War Dance
 久しぶりにColin作が登場。オープニングが怪しげなスパイ映画のような、木管楽器の音色から始まる。
 ブリティッシュの風味が漂う曲、というのが俺の印象。午後の芝生の上でお茶を楽しみながら、社交界の動向や噂話に興じる紳士たち。低く垂れこめる雨雲は黒く、今にも振り出してきそうな気配だ。

14. Wrapped in Grey
 一度はシングル・カット候補になりかけたけど、Virginの独断によってそれがボツとなり、契約解消の導火線となった曲。基本Beach Boysサウンドの踏襲なのだけど、色々な暗喩やダブル・ミーニングを内包した歌詞世界は、ちょっと抽象的かつAndyの人生哲学も孕んでいるため、ちょっと高尚なイメージが強い。
 ただサウンドだけに耳を傾ければ、良質のポップ・ソングであることは間違いない。



15. The Ugly Underneath
 AメロとBメロとでまるでムードが違うため、”A Day in the Life”的に何曲かをくっつけ合わせたかのような、一曲で何度も楽しめる曲。そんなに長い曲でもないのに、わざわざ違う曲調を一つにまとめてしまった意図がよくわからないのだけど、なんかスタジオでいじくり回してるうち、できあがっちゃったのだろう。

16. Bungalow
 久しぶりにColinメイン。『Nonsuch』では4曲しか採用されていないのだけど、それとも提供を出し渋ったのか、それは不明。モッサリした声質のColinのヴォーカルは好き嫌いが分かれるところだけど、まぁ俺的にはあんまり興味がないので、どっちでもいい。

17. Books Are Burning 
 ラストは(多分)第2次世界大戦時のナチスが行なった焚書からインスパイアされた、強大な力を持った権力に対し、屈することなく立ち向かってゆく、Andyの強力な意思表明が描かれている。強大な権力がVirgin なのかと邪推するのは、子供じみた詮索なので、ここでは保留。
 ある意味、これがXTCとしてのSwan Songともいうべき出来となっており、そのすべての音が美しく、強い意志を持って響いている。アウトロでフェード・アウトしてゆく、DaveとAndyのギター・ソロも、これまでにないストレートなインプロビゼーションとなっている。
 海外ファン・サイトでは、比較的人気の高い曲でもある。






 『Nonsuch』リリース当時、ここ日本では初回限定の特典で、中世の視力表を模したミニ・タペストリーを貰ったのは、もう昔の思い出。
 また、これは輸入盤のみだったけど、CDのプラケースにジャケットと同じ宮殿のイラストが金色に直接プリントされていたことも、かつてのファンなら鮮明に覚えているはず。


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息をするように皮肉が飛び出す生粋の英国人集団 - XTC 『Oranges & Lemons』

folder 英米のみならず、ここ日本においても飛躍的に知名度を上げたヒット作『Skylarking』リリース後のXTC、にもかかわらず、リーダーAndy Partridgeのステージ・フライト(恐怖症)は回復の見込みがなかったためライブができず、苦肉の策として行なわれたラジオ局回りや日本でのサイン会という、極めて中途半端、ロー・リスク、ロー・リターンなユルい仕事しかしていないのだった。

 本人いわく、ラジオ出演時にスタジオ・ライブは時たま行なったらしいけど、そのほとんどはラジオ収録のついでに行なわれたアコギの弾き語りセッションばかりで、普通の神経ならとてもライブやってますっ、と言える代物ではない。それでもそこを臆面もなく言い張る英国気質こそが、まぁAndyなのだけど。

 進んでしまった時は、もう元に戻せない。
 歴史に”if”は付きものだが、もしあの頃、『Skylarking』~『Nonsuch』までの間にAndyが一念発起して、せめて小ホール・クラスでもいいから、また短期でもいいからツアーを行なっていたとしたら?大ヒットまでは行かないまでも、日英米のセールスは上向いただろうし、ファン層ももう少し広がったはず。
 他のメンバー2人Colin MouldingとDave Gregoryはといえば、彼らはむしろライブ活動に前向きであったため、やはり問題はAndyである。
 確かにフロントマンとしての重圧はそれなりにあったろうし、体調的な問題も結局は本人次第なのだけど、それでも一度くらいはまともなライブをやって欲しかった、というのがファン共通の思いである。

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 ファンの多くは知っていることだけど、Andyというのは非常にめんどくさい男である。前作『Skylarking』でタッグを組んだプロデューサーTodd Rundgrenとは、レコーディング中に何かと行き違いすれ違いが多く、最終的にはケンカ別れとなった。なので、今回は同じ轍を踏まぬよう備えたのか、もう少し若い世代のエンジニア系プロデューサーPaul Foxを起用している。
 これだけあらゆるプロデューサーとぶつかり合いながら、なぜセルフ・プロデュースを行なわないのか、というのも、主にファン・サイトで長らく議論されている。すべての作業が終わってから、雑誌インタビューなどを通じてプロデューサーを散々こき下ろす事が、一種の恒例行事になっている。大抵は「自分の理想とするサウンドを滅茶苦茶にされた」と、皮肉な冷笑を添えて語ることが多い。

 すべての作業を自分の管理下に置けば、不満も少なくなるのではないか、と思ってしまうのだけど、そう簡単なものではないのが、Andyのまためんどくさい点である。一応自己分析能力はあるのか、プロデュースの才能がない事を自覚してるフシがある。サウンド・プロデュースもそうだけど、もう少しシステム的な問題、期限とバジェットを決めたレコーディングというのが苦手なようである。もし時間が許すのなら延々とレコーディングばかりやっている男なので、いつまでも作業が遅々として進まず、完成できたものが何一つない、グタグタな状態になる事を承知しているのだろう。
 自分の描くビジョン通りに事が運ぶのが理想だけど、人に委ねることによって、そう簡単にはいかず、だからといってスムーズに事が運んでもプライドが傷つけられ、やはり不満は生じる。
 もともと生粋の英国人、息をするように皮肉が飛び出すお国柄である。


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1. Garden of Earthly Delights
  インド音楽調のイントロから一転、カラフルなパワー・ポップの洪水。『Skylarking』で得たポップ・サウンドをさらに金と手間をかけて磨き上げた、アバンギャルド性と大衆性との融合。気合の入り方が、これまでとはまるで違う。何しろ音の厚みがこれまでとは段違いになっている。それでいて、個々の音がきちんと聴こえる、というのは録音にもこだわったのだろう。
 


2. The Mayor of Simpleton
 こちらも軽快なギター・ポップ。XTCとしては珍しくUSチャートでも健闘したシングルで、Mainstream Rock Tracksという専門チャートでは15位、Modern Rock Tracksでは、何と1位を獲得している。まぁニッチなチャートではあるけれど、”Dear God”に続く快挙である。
 こういうヒット・ソングを引っ提げてのツアーに出ていれば、今後の状況も変わってたかもしれないけど、まぁ出なかったよね。このサウンド・フォーマットでもう2、3作続けていれば、とは思ってしまうけど、まぁ今さらか。
 


3. King for a Day
 1.2.がAndy作曲で、これはColin作曲。性急なビートと転調がAndyの特徴に対し、彼の場合比較的オーソドックスなメロディを基調としている。スタンダードなポップ・ソングが彼の持ち味なので、驚きや刺激は少ないけど、Andyとの対比によって、アルバム全体としてはうまくバランスが取れている。
 今のところColinのソロ・プロジェクトは聴いたことがないのだけど、多分これ一色だと甘ったるいんだろうな、きっと。Andyだって通して聴いてると、薬味だけ食ってるみたいだろうし。
 1.同様、Mainstream Rock Tracks15位、Modern Rock Tracks38位と、スマッシュ・ヒットを記録している。

4. Here Comes President Kill Again
 再び大統領を殺したい、という不穏な内容を、ダウナーっぽいポップ・ロックに乗せて気怠く歌うという、まぁいつものAndyお得意、皮肉を交えた時事ソング。甘いケーキの後には、こういったシナモン・ティーの刺激を欲するのが、やはり英国流である。

5. The Loving
 スタジアム・ロックっぽいイントロから始まる、でもやはりいつものXTC。『Skylarking』では大人しめだったAndyのギターが、この『Oranges & Lemons』では爆発しているのだけれど、ギター・サウンドならこの曲がオススメ。ベタにポップなリフから、間奏でちょこっと聴けるギター・ソロまで、普通にギター・ロック好きな人なら気に入ると思う。ほんと、やりゃできるのに、どうしていつも執拗にサウンドを捏ねくり回してしまうのか。
 まぁそれが英国人集団XTCの持ち味でもあるのだけれど。

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6. Poor Skeleton Steps Out
 アフリカン・ビートをベースとした変則リズムこそ、変態POPバンドXTCの真骨頂である。かつての彼らなら、もっとダウナーでエキセントリックなサウンドにしてしまうところを、プロデューサーPaulの判断なのか、それともXTCの変節なのかは不明だけど、聴きやすくコンテンポラリーな形に仕上げている。やはり行き過ぎは良くないのだ。

7. One of the Millions
 再びColin作。前作は比較的Colin作が多く取り上げられていたが、今回のメインはAndy、Colin名義は3曲である。これが冷遇されているのかというと、どうもそういったわけではなさそうである。これ以降、急激に二人の仲が悪くなったわけでもなさそうなので、そこは音楽的クオリティーを重視して、互いに譲り合っているのか。まぁよくわからん関係ではある。
 こちらもオーソドックスなアコースティック・サウンドでまとめられており、アルバム構成的にはバラエティに富んで正解。
 特にこの『Oranges & Lemons』、これまでのアルバムと比べて収録曲数も多く、レコードでは2枚組だったため、かなりの長尺である。CD1枚の限界まで目いっぱい詰め込んだボリュームで、Andy一色に染めてしまうと、ちょっと胸焼けしてしまう。ちょうどいいバランスを判断できる、第三者的なプロデューサーがいないと難しいのだ、このXTCというバンドは。

8. Scarecrow People
 よーく聴けばカントリー・タッチでもあるのだけれど、オルタナ・フォーク?ギターのサウンドが面白く、これぞXTCならでは、という楽曲。ただ単純なポップ・ソングではなく、ひと捻りもふた捻りもしてねじ曲がった変態ポップ。
 歌詞は『オズの魔法使い』をモチーフにして作った、ということだけど、まぁ俺も含め日本人なら理解しづらいので、サウンドを堪能してほしい。
 


9. Merely a Man
 ストレートなパワー・ポップ。Huey Lewisあたりがカバーしててもまったく違和感がない、それくらい王道のポップ・ソング。こういう曲も作れるはずなのに、何かにつけ余計にひと手間ふた手間かけてしまうのが、この人。
 まぁそれはしょうがないとして、こういったサウンドに負けないくらい、Andyは堂々と歌っている。ちょっと神経質ながら、十分通る声質を持ち合わせているのだ。これでも少し図太ければ、チャートの常連も夢ではなかったのに。

10. Cynical Days
 三たびColin作。曲数は少ないながらも、バリエーションに富んだ曲を提供しており、今度はメランコリックなスロー・テンポで、どこかサイケデリック。実はこの曲、ドラムがかなり健闘している曲であり、逆に言えばドラム抜きのトラックだと、何とも間の抜けた、甘ったるいだけのバラードになってしまうところを、Andyも顔負けの変則ビートが曲を支配している。
 今回のアルバムはほぼ全曲、Pat Mastelottoが担当している。10代からスタジオ・ミュージシャンとして数々のセッションに参加、Mr. Misterでメジャー・デビュー後、並行してセッション・ミュージシャンとしての活動も継続、後にあのRobert Frippに見初められてKing Crimsonに加入してしまう、何とも波乱万丈なスケールの男である。 
 下手すると、XTCよりもミュージシャンとしてのスキルは上であり、曲によってはこのようにメインを食ってしまうこともままある男である。
 この曲については、そんな捻くれ者同士のよじれ切った才気が、良い方向に融合した好例。

11. Across This Antheap
 珍しいスタンダード・ジャズ調のしっとりしたオープニングから一転、いつものパワー・ポップなXTC。エフェクトの使い方などが、ちょっと前のXTC、どことなく『Black Sea』あたりを連想させる。
 今回のプロデューサーであるPaul、バンドにはいつも通り結構好き勝手にやらせていながら(ていうか特にAndy)、仕上がりはこれがなかなか、XTCビギナーでもすんなり抵抗感なく聴けるようになっている。意外と策士でバンドを上手く手なずけていたと思うのだけれど、結局いつものAndyのボヤキによって、今作だけのコラボになってしまったのは残念。

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12. Hold Me My Daddy
 典型的なXTC型パワー・ポップ。このようなアッパー系のナンバーが多いのも、このアルバムの特徴。バラード、スロー・テンポの曲は数えるほどしかないことから、当時のAndyの躁状態がうかがえる。

13. Pink Thing
 というわけで、パワー・ポップが続く。アコギをメインとして使っているため、これまでよりはやや大人し眼め。全15曲というボリュームのため、こういった曲も入れてメリハリをつけないと、全部アッパー系では胸焼けしてしまうのだ。
 この辺の曲は普通にシングル・カットしてもそこそこのチャート成績を収めそうなのに、切ったシングルは2曲のみ。この辺りにアメリカ進出戦略の甘さが窺える。ただ良い曲を書いていれば、それでいいわけじゃないのだ。

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14. Miniature Sun
 最初Colinのナンバーだと思っていたのだけど、クレジットを確認してみたら、Andy作だった。アレンジがそれっぽかったのだけど、やはり同じバンドにいると、どこか曲調も似てくるのだろうか。マイナー調のメロディに時折入るシンセ・ブラスが印象的。

15. Chalkhills and Children
 遂にBryan Wilsonの境地にまで達した、とリリース当時から各方面より絶賛された、Andyのソングライター歴の中でも、最も透徹とした美しい曲。Chalkhillsとは、彼らの故郷Swindon 近郊、『English Settlement』のジャケットにも書かれている象形画Uffington White Horseで有名な所らしい。
 ここまではハイ・テンションのパワー・ポップ一辺倒だったにもかかわらず、ラストでここまで美しい曲を出してくるとは、Andyやるじゃん、と言いたくなる。ていうか、もうこれ反則の域である。感情を押し殺したヴォーカルとコーラス、薄くヴェールのように全体を覆う柔らかなシンセ・サウンド、遠い霞の向こうから響くドラム。全てが調和が取れた完璧を志向した世界。
 この曲を聴くたび思い出すのが、ヘッセの『ガラス玉演戯』という小説。美しい世界の美しい音楽、それにまつわる人々の愛憎。関連性はまったくないはずなのだけど、読めば何となく共感できるはず。






 UK28位US44位という、『Skylarking』に続くアルバムとしてはまずまずの成功を収めたXTC、チャート的には上昇傾向にあり、さらなる密室ポップの追求として、最も外部に開かれたアルバム『Nonsuch』をリリースすることになる。メジャー・サウンドを意識しながらも、あくまで基本は作品至上主義だった。
 それは良いのだけれど、問題はやはりAndy。Stage Flight振りは相変わらずだった。
 それはまた次回で。


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北海道の中途半端な田舎に住む、そろそろアラフィフ男。ほぼ週1のペースで音楽ブログ更新中。節操ない聴き方と思われてるけど、自分の中では一貫してるつもり。 最近は蔵書の整理がてら、古い本を再読中。ジョン・アーヴィングから始まって、フィッツジェラルドやゾラ、モームなど、いわゆる古典の復習中。いつになったら終わることやら。新刊読めねぇや。
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