好きなアルバムを自分勝手にダラダラ語る、そんなユルいコンセプトのブログです。

Wham!

いまも軽く扱われている、最後のオリジナル・アルバム - Wham! 『Music from the Edge of Heaven』

folder 1986年リリース、頂点を極めたUKポップ・デュオWham! 3枚目にして最後のオリジナル・アルバム。ちなみにこのアルバム、正式なオリジナル・アルバムのはずなのに、発売されたのは日本とアメリカのみ、本国イギリスを含む他の国では、2枚組ベスト・アルバム『The Final』がリリースされていた。しかも日本では、ちょっとだけ時期をずらして『The Final』もリリースしてしまうという、まことに意味不明な営業戦略。
 解散が決まっていたこともあって、プロモーションだってもちろん本人不在、本国UKエピックも混乱した無法状態の中、チャート的にはUS10位・オリコン9位。案外そこそこの成績を残している。
 ちなみに『The Final』も、UK2位のほか、世界各国でトップ10に入る売り上げを記録している。さらに日本でも11位と、2枚組にもかかわらず『Music from the Edge of Heaven』(長ぇ)と並ぶ成績。しかもベストだというのに、ボーナスDVDを抱き合わせた25周年記念エディションまでリリースされている。
 それに引き替え『Music from the Edge of Heaven』(長ぇ)、リマスター化もずっと後回しにされ、iTunesに登録されたのも、つい去年の話。最後のオリジナル・アルバムだというのに、何だかえらくぞんざいな扱いである。

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 人気絶頂のアイドル・ユニットによる、唐突な解散宣言の影響は、応援していたファンだけでなく、元凶となったエピックにも大きく波及した。
 せっかくの稼ぎ頭がいなくなって、今年度の営業計画はどうする?ニュー・アルバムだってまだ製作中なのに、ほとんどでき上がっていないみたいだし、リリース計画はどうしよう?
 それまでの段取りやこれからの展望も全部吹っ飛んでしまい、世界中のエピック・レコード支社は、もう上へ下への大騒ぎ。対応に追われるがあまり、指示命令系統はグッチャグチャになった。
 本国UKエピックにお伺いを立てても、国際電話やテレックスだけでは意思疎通もままならず、朝令暮改がハイペースで行なわれる始末。使えねぇよな、こういう時、ホワイトカラーって。

 全8曲中、純粋なアルバム用書き下ろしは3曲のみ、残りは過去のシングルやGeorge のソロ、既発曲「Blue」のライブ・バージョンで構成されている。普通、書き下ろしオリジナルに、ライブなんて収録するか?それって要するに、ボーナス・トラックじゃん。それくらい、タマがなかったのが見え見えである。
 それならそれで、こじつけたようなオリジナルなんか作らずに、『The Final』一本に絞っちゃえばよかったのに、なんで作っちゃったのかね。まぁエピック上層部の思惑やら契約枚数やら、叩けば埃っぽいキナ臭い話があるんだろうけど。大口注文先のアメリカ・エピックが、何としてでもオリジナルを作れ、ってゴリ押ししたんじゃないか、と邪推。
 第一、『Music from the Edge of Heaven』、『The Final』とは、収録曲が相当かぶっている。どうしても「Blue」ライブ・ヴァージョンと「Wham Rap!」ニュー・ヴァージョンが聴きたいというのなら話は別だけど、そんなのは多分ごくごく少数、どうひいき目に見たって、『The Final』の方がお得感が強い。
 エピック・ジャパン的には、英米エピックのパワー・ゲームに挟まれながら、解散騒動のどさくさで手を変え品を変え、複数のアイテムをリリースしてうまく売り逃げた、という結果オーライ。コレクションはなんでもコンプを目指してしまう、日本人の特性とうまくシンクロした。

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 Wham! の解散理由というのが、「エピックの親会社であるソニーが、当時アパルトヘイトを実施していた南アフリカ共和国と貿易を続けていることへの抗議」という説。チャラいポップ・ユニットの発言っぽくないな。
 大抵、バンドの解散といえば、金や女がらみ、もしくは人間関係のゴタゴタと相場が決まっている。なので、Wham! の場合だと、フロントマンGeorge Michaelにとって、相方Andrew Ridgeleyの存在がジャマになっただけなんじゃないの?と単純に思ってしまうけど、一面的な見方だけでそうとは言い切れない。
 1980年代、サッチャー政権下のUKでは、フォークランド紛争と経済政策の失敗が引き起こした不況によって、一般大衆は常に不満は募らせていた。労働者階級出身が多いミュージシャンやアーティストらは、事あるごとに政権や王室への批判を歌い、また発言を繰り返していた。国営であるBBCがモンティ・パイソンを放映しちゃうお国柄である。息を吐くように体制批判を吐露する人種、それが伝統的な英国人である。
 なので、1986年前後の欧米ミュージック・シーンを俯瞰してみると、その公式ステートメントが単なる建前じゃないことが理解できる。

 1980年代は、ポピュラー系のアーティストが、弱者救済に積極的に介入を始めた時代である。欧米を中心としたキリスト教的倫理観のもと、無償の善意を振りかざした、様々なプロジェクトが誕生した。
 エチオピア難民の現状を嘆いたBob Geldof が言い出しっぺとなったバンド・エイドを皮切りに、アフリカ飢餓救済を目的としたUSA for Africa 、アパルトヘイト政策への反対声明としてサン・シティが立ち上がり、多くのユーザーから支持を得た。豪華アーティスト集結による、音源作成や大規模コンサートは一種のブームとなり、その後もチャリティの名のもと、様々なプロジェクトが企画されることとなる。
 「遠いアフリカやアジアの難民を嘆くのも結構だけど、自分たちの身近で苦しんでいる人たちも救おうじゃないか」と、アメリカの零細農民救済で立ち上がったファーム・エイドまで行くと、もうお題目なんて適当につけちゃって、大勢で集まって盛り上がろうぜ的なムードが漂ってくる。それも国難には変わりないけど、なんか方向性違くね?とツッコミたくなってしまう。

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 信仰の度合いの差はあれど、プロテスタントから由来する教条主義の支配下にある大英帝国民、George Michael もまた例外ではなかった。20代ですでにあり余る成功を収めてしまい、望むものは大方手に入れてしまった。となると、目指すのは形あるものではなく、名誉や虚栄心、それらの充足ということになる。
 Boomtown Rutsが失速して、開店休業状態だったBob Geldofは純粋な使命感に基づいての行動だったに違いないけど、その他の参加メンバーといえば、Paul McCartneyを始めとして、Sting、Phil Collins といった錚々たるメンツ。いずれもロック・セレブのハシリの面々である。
 80年代に入ると、それまでレコード会社の言いなりで不遇をかこっていたアーティストらの権利主張が通るようになり、著作権管理や法整備がキチンとなされるようになった。ド派手な高級車や使い放題のドラッグでごまかされていたアーティストらも、税理士の尽力によって正当な印税配分を受けられるようになり、ひとかどの財産を築けるようになった。
 生活の心配がなくなると、心に余裕もできる。周囲の恵まれない者に施しを行なうのは、欧米セレブの義務である。海外のスターが有名になると、やたら寄付やボランティアに精を出すのは、言っちゃえば税金対策の一環でもあるのだけれど、そんな宗教観が根付いているからである。

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 前時代的な人種差別がまかり通っている南アフリカ。何の罪もない弱者が不当な扱いを受け、虐げられている中、白人専用の高級デパートでは、自分たちのレコードが販売されているのだ。不当な差別に無自覚な白人たちがポップ・ミュージックを買い求め、そしてその収益を当然の営業活動の成果として、悦に入る無自覚な経営陣たち。そこから得た金は、虐げられた者たちの血と汗でまみれているかもしれないのに。
 若く清廉潔白なGeorge は、そんな理不尽な状況を打開するため、Wham! の活動終了を決意する。周囲の説得や干渉は強かったけれど、最終的には2人で出した結論だった。
 長く疲弊するツアーの影響もあって、盟友Andrew との関係は、以前ほど親密ではなくなっていた。ビジネスでの関係修復は、もう手遅れの域に達していた。
 でも。
 GeorgeにとってAndrewにとって、2人はお互い、随一無二の友だちだ。
 これ以上、関係をこじらせるわけにはいかない。
 一旦、活動休止してソロ活動するのもアリだったかもしれない。Andrew なら、きっと許してくれるだろう。
 でも。
 これ以上、無自覚な彼らを利するのは、絶対にイヤだ。

 Georgeの勇気ある決断によって、Wham! はレコード会社、そしてマスに消費されることなく、伝説となった。
 そのおかげで、刹那的な流行りものと思われていた歌たちは、いまも多くの人たちに永く愛され続けている。



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1. The Edge of Heaven
 1986年シングル・リリース、UK1位US10位を記録、解散がインフォメーションされていたこともあって、世界各国でベスト10入りを記録した。これまでのモータウン・ポップを基調としながら、ブロウしまくるサックスやハード・ドライビングなギターもフィーチャーされ、従来のお手軽ポップとは一線を画してる。Georgeのヴォーカルも甘さは少なく、ワイルドさが引き立っている。

2. Battlestations
 普通、大物ポップ・アーティストのアルバムだったら、冒頭3曲くらいはノリノリのイケイケな勢い重視のアップテンポが多いはずなのだけど、ここでは一転して地味なチューン。ほぼリズム・ボックスだけのバッキングに、エフェクトをかけてコンプしたヴォーカル。ていうかこれ、デモ・テイクじゃね?と疑ってしまうクオリティ。
 すごく深読みすると、後の「I Want Your Sex」に繋がるデジタル・ファンクへの伏線といった見方もできるけど、ちょっとファンクネスが足りない。

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3. I'm Your Man
 「Freedom」のリズム・トラックだけ抜き出して再利用したような、典型的なモータウン・ポップの80年代版。『Make it Big』期は聴いててワクワクしたものだけど、やっぱり二番煎じや三番煎じともなると、感動も薄くなる。
 多分、それは演者側にも言えることで、こんなポップ・ナンバーならいくらでもできるんだろうけど、もうこういった曲を量産できる場所に、Georgeはいなかった。次のステップはもう見えていたのだ。
 シングル・チャートでは、UKはもちろん1位、USでも3位を獲得。

4. Wham! Rap '86
 1982年のデビュー・シングルのリミックス・ヴァージョン。オリジナルに既発のリミックスが入ること自体が奇妙だし、80年代に流行した12インチ・シングル仕様のダンス・ミックスなので、冗長な部分が多い。ダンスフロアで流す分にはいいけど、リスニング的にはやっぱりオリジナルかな。どうにか尺を稼ごうとしたのがミエミエのトラック。

5. A Different Corner
 最後の世界ツアー後、ユニットとして沈黙していた頃、前触れもなく突如リリースされた、Georgeのソロ・デビュー・シングル。だからWham! 名義のアルバムなのに、なんでソロ名義の曲が入ってるの?もうわかってると思うけど、これがザッツ大人の事情。
 UK1位US7位を記録しながら、曲調はえらい地味なバラード。静かでありながら情熱的、エモーショナルなヴォーカライズはFreddie Mercury を連想させる。のちの追悼公演で話題となったパフォーマンスを予感させる名演。

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6. Blue (live in China) 
 1983年リリース、5枚目のシングル「Club Tropicana」のB面に収録されたのが初出で、アルバムでは初収録。オリジナルは半分デモ・テープみたいなテクノ・ポップで、埋め曲みたいな扱いだったけど、ここではAOR調のコンテンポラリー・ポップとして生まれ変わっている。
 当時は表現力やスキルが追いつかず、消化不良気味だったのを、女性コーラスやホーン・セクションで武装して見事なアンサンブルで組み、ライブの定番バラードとして蘇生させた、といったところ。

7. Where Did Your Heart Go? 
 ここ20年くらいでStonesのプロデューサーとして名を馳せたどころか、いつの間にかブルーノートの社長の座に収まっていたDon Wasが80年代に率いていたバンド、Was (Not Was) が1981年にリリースしたシングルのカバー。
 アレンジはオリジナルに比較的忠実だけど、ヴォーカルのポテンシャル的にGeorgeの方が圧倒的に勝っている。バラードとなると、感情移入マックスで世界観を牛耳っちゃうので、並みのシンガーでは歯も立たない。
 UK1位US10位をマークした、現役活動時最後のシングルとなるけど、日本ではその曲の良さが充分伝わらなかった。だって…、邦題「哀愁のメキシコ」だもの。サンタナじゃあるまいし、なんでこんなイロモノっぽいタイトルつけたんだか。



8. Last Christmas
 ラストは超有名曲。何の説明もいらないよな。重箱の隅もつつきようがない、ファニーでポップで完璧な歌。
 グダグダな経緯でリリースされることになった不幸なアルバムだけど、これが入ってることで、すべてのマイナス要素がチャラになってしまう。そんな名曲。
 







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80年代のお茶の間洋楽第1位 - Wham! 『Make It Big』

31456 80年代に10代を過ごした者なら知らぬ者はない、それ以降の世代でも、数々のスタンダード・ナンバーによって、名前までは知らないけど曲だけは聴いたことがある人も多い、イギリスが生んだポップ・デュオ・グループWham!が1984年にリリースした2枚目のアルバム(レコード会社の宣伝文みたいになっちゃった)。
 
 このアルバムには未収録だけど、30年近く経った今でも、”Last Christmas”はクリスマス・ソングの定番としてヘビロテになってるし、どれだけベタであっても”Careless Whisper”が名曲であるということは周知の事実である。どんなヘビメタ・ユーザーでもアイドルオタクでも、また音楽そのものに興味がない者にとっても、当時のWham!は確実に「みんなの洋楽」的ポジションを独占していた。だって洋楽なのに、オリコン・チャートで1位になっちゃうんだから。

 純粋なCD売上チャートが機能不全を起こしている現在とは状況が違って、80年代のオリコン・チャートは、ほんと老若男女だれでも知ってる曲じゃないとチャート・インできなかった。大人の事情やら組織買いやらでランキングを操作する例もなくはなかったけど、当時のオリコンはその辺は公明正大でまともな集計方法でランキング作成しており、ちょっとやそっとの不正手段ではチャートを揺るがすことはできなかった。
 そうした時代にヒットしたアルバムなので、俺自身、このアルバムを買ったのはずいぶん後の話で、最初は友達から借りてテープにダビングしたのが最初だった。当時は他にCulture ClubやVan Halenが洋楽好きの定番アイテムで、自分では持っていなくても、大抵は誰かが持っていたので、知らず知らずのうちに覚えてしまっていることが多々あった。

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 この頃の英国発ニュー・カマーによるアメリカ・チャートへの浸食具合は「第2次ブリティッシュ・インヴェイジョン」と呼ばれているのだけど、それぞれ個性の強いメンツがそろっていた。
 Duran Duranはなんかチャらくて女々しくてミュージック・ライフ御用達っぽい感じが、男性ファンからは敬遠されていた。その耽美的なファッション・コンセプトは今で言う腐女子向けのイメージが強かったし、その後Bernard EdwardsやRobert Palmerらと結成するPower Stationまでは、圧倒的に楽曲のクオリティが低かった。
 Culture Clubは80年代初頭のファンカラティーナ(ファンク+ラテン)の流れから出てきたことによって、演奏スキルは高かったし、楽曲も粒ぞろいだったのだけれど、何しろリーダーBoy Georgeがアンナだしコンナなので、イロモノ的オーラが抜け切らなかった。ラジオやTVで聴く分にはいいけど、わざわざレコード店にまで足を運んで、白塗りオカマがメインのジャケットを手に取ってレジへ向かうことは、自意識過剰な中高校生にとっては至難の業だったのだ。

 で、ここで登場するのがWham!。当時からAORだムード歌謡だモータウンのパクリだとか散々言われまくってたけど、そういったネガティヴな意見すら押し込めてしまうくらい、楽曲レベルが高かった。祖の楽曲をほぼ独力で制作し、しかもメイン・ヴォーカルを務めていたGeorge Michaelは、そのラテン系の風貌とマッチしたエモーショナルなヴォーカライズによって、世界中の心を鷲掴みにしていた。
 80年代UKポップ・アーティストの例に漏れず、彼らもまたファニー・ポップ的、アイドル的なプロモーション展開が行なわれていたのだけど、他の泡沫バンドと比べて違うのは、変に凝らずにダンスライクで明快に作り込まれたメロディと、George自身が熱狂的にリスペクトを抱いていた60~70年代ソウルやディスコ、ファンクをモチーフとして作られたサウンドに拠るところが大きい。いくらプロのエンジニアらの助力もあったとはいえ、二十歳そこそこの顔の濃い若造がこれらをディレクションしていたのだから、ほんと天才の称号が相応しい。

Wham

 デビュー・アルバム『Fantastic!』において、すでにGeorgeの才能の片鱗は発揮されているのだけど、そこをさらに深く掘り下げ、バラエティに富んだWham!サウンドを確立したのは、このアルバムからである。
 『Fantastic!』レコーディング時は、スタジオ・ワーク自体が初めて尽くしだったし、また充分な時間も予算もなかったのだけど、これがいきなりヒットしてしまったため、状況は好転する。当初はアイドル的泡沫ポップ・デュオとしての扱いであり、レコード会社も対して期待はしてなかったのだけど、ブリティッシュ・インヴェイジョンの追い風に乗るため、先行投資が行なわれた。
 ここにはもう、ロンドンのスラムでクダを巻くソウル好きな2人組の姿はない。ここにいるのは、アメリカを含む世界マーケットをターゲットにした戦略的なアーティスト/アイドルの姿である。


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1. Wake Me Up Before You Go Go
 邦題はご存じ『ウキウキ・ウェイク・ミー・アップ』。いま思えばアホらしくって能天気なネーミングだけど、これだけこの曲の雰囲気を見事に表現したタイトルもない。だって、ほんとウキウキするような曲なんだもん。当時は「笑っていいとも」の全盛期、オープニング・テーマの「ウキウキ・ウォッチング」からインスパイアされたものだと思われる。
 ドゥー・ワップ調のオープニングからモータウン・フォーマットのリズム、コーラスまで、どのパーツもキラキラ眩いくらい。ビルボード1位になったのもうなずける、完璧なポップ・ソウル。
 


2. Everything She Wants
 邦題が『恋のかけひき』。オープニングから一転、マイナー調の地味な曲なのだけれど、これもビルボード1位を獲得しているところから、当時の彼らの人気のほどが窺える。いやほんとすごかったんだから。
 久し振りに聴いてみると、アッパー系のポップだけじゃない、幅広く深い引き出しに驚かされる。この頃、Georgeはまだ若干21歳。どうしてこんな曲が書けたのかは、未だもって謎。特別優秀なブレーンがいたとは思えないので、やはり彼の天性によるものなのだろう。
 ちなみに歌詞は、ハイスペックな女性と付き合ってるダメ男の泣き言がダラダラ続く、タイトルとは裏腹な内容。なんか勢いでつけちゃったのだろう。

3. Heartbeat
 Bruce Springsteen “Hungry Heart”とBilly Joel “Say Good-Bye to Hollywood”をまんま足して2で割ったような曲。いかにも80年代パワー・ポップといったサウンドで、一歩間違えればひどくチープな仕上がりになるところを、Georgeのドラマティックなヴォーカルによって、いい意味でジャンクなポップ・サウンドになっている。

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4. Like A Baby
 邦題『消えゆく思い』。”Careless Whisper”的アルペジオのイントロが1分半くらい延々続いてから、ようやくGeorgeのヴォーカルが入ってくる。ここでは少しいい意味で力を抜いた歌い方になっている。シンプルなアコギと薄くかぶせられたシンセのサウンドとが、守備範囲の広さを感じさせる。

5. Freedom
 チャートを調べてみると、2.がビルボード1位なのに、どうしてこれが3位止まりだったのか、どうにも納得できなかった。俺的にはWham!の楽曲の中では3本の指に入る曲なので。
 マクセルのカセットテープのCMに採用されたくらいだから、ほんと同時代を生きてきた人間なら、ほぼ誰でも知ってるはず。1.と同じくらいウキウキしてしまう、ポジティヴ率100%の純粋なポップ・ソング。とにかく聴いてるうちに踊りたくなってしまう率100%、細かい理屈は抜きにして、問答無用で体を揺らし腰を振らせてしまうパワーが、ここにある。
 


6. If You Were There
 Isley Brothersによる、1973年リリースのヒット曲のカバー。この80年代というご時世に、しかも21歳のポップ・シンガーが選んだとは思えない、比較的シブい選曲。当時のIsleyはメロウ・ソウル路線まっただ中、エロいR&Bで世間を魅了していた頃。比較すると、まったく別のバンドに聴こえてしまう。
 俺的にこのトラック、実はWham!ヴァージョンの方が好み。圧倒的な黒さならIsleyの方がもちろん上なのだけど、Isleyは俺にはちょっと濃厚過ぎるのだ。
 ジミヘンの影響下にあるネチッこいギター・ソロと、同じくネチッこいRonaldのヴォーカルがベタ過ぎるので、Georgeくらいの濃さがちょうどよい。それでも他のヴォーカリストからすれば、充分濃いのだけれど。

7. Credit Card Baby
 歌詞といい安手のモータウンっぽいサウンドといい、なんか穴埋め的な曲。ポップ・ソングとしてはこのくらい軽薄な方が良いのだろうけど、アルバムの他の曲と比べると、もう少し何とかなったんじゃないの?と思えてしまう。ま、余計なお世話か。
 それくらい、捨て曲のないアルバムなのだ、これって。

8. Careless Whisper
 このアルバムの中で唯一George Michael名義でクレジットされている、誰もが認めちゃう80年代ポップ・ソングの金字塔。リリース当時から名曲認定されていた、ビルボード1位はもちろんだけど、年間通しての1位というのは、Georgeの全キャリアを通してもこの曲だけ。
 まるで「金曜ロードショー」のオープニングを思わせるムーディなサックスの咽び、囁くが如く抑えながら、サビ・Bメロで爆発させるGeorgeの激情ヴォーカル、どれも完璧。
 プロ・アマどちらの目線で見ても完璧なロッカ・バラードのため、これまでも様々なアーティストによってカバーされているのだけど、俺的にベストなカバーはラルクのhydeヴァージョン。声はいつものhyde節なのだけど、歌い方はGeorgeが乗り移っているかのよう。








 急激にスターダムの階段を昇り切った21歳の若者2人だったけど、彼らを取り巻く環境はさらに激変し、遂には決裂、そしてお互い別々の途を歩むことになる。
 多分、GeorgeにとってAndrewは精神安定剤的に不可欠な存在だったろうし、いかに実務作業の割合が9:1だったとしても、それを苦には思っていなかったはず。GeorgeにとってAndrewは気を遣うことのない友人であり、それはAndrewにとっても同じだっただろう。周りの悪い大人らに唆されることによって、かけがえのない友は失われていった。
 もし二人が袂を分かつことなく、もう少し長い間、タッグを組んでいたとしたら?
 ヒップホップやグランジが世の中を席巻するのは、もう少し後になったかもしれない。


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北海道の中途半端な田舎に住む、そろそろアラフィフ男。ほぼ週1のペースで音楽ブログ更新中。節操ない聴き方と思われてるけど、自分の中では一貫してるつもり。 最近は蔵書の整理がてら、古い本を再読中。ジョン・アーヴィングから始まって、フィッツジェラルドやゾラ、モームなど、いわゆる古典の復習中。いつになったら終わることやら。新刊読めねぇや。
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