好きなアルバムを自分勝手にダラダラ語る、そんなユルいコンセプトのブログです。

Talking Heads

代表作以外もちゃんと聴いてみようよ。 - Talking Heads 『Naked』

folder 1988年リリース、ヘッズ最期のオリジナル・アルバム。シンプルで親しみやすいバンド・サウンド2作から一転、250度くらい斜めを向いたエスニック・サウンドは、それまで振り回されながらもしがみついてきた固定ファンを混乱に導いた。俺も混乱した。何じゃこの音、それにジャケット。
 既存のロックやポップのフォーマットとは、装いも中身もあまりに違っていたため、大して売れなかったんじゃね?と思っていたけど、調べてみればUS19位・UK3位と、案外堂々とした成績。西欧ポピュラー音楽が自家中毒にはまっていた80年代後半という時節柄もあって、スノッブなロック・ユーザー中心に評価は高かった。
 当時、スティングやピーター・ガブリエルを代表とするロック・セレブらが、民族音楽専門のレーベルを設立したり、その流れでアフリカ勢のサリフ・ケイタやユッスー・ンドゥールが大きくフィーチャーされたりして、『Naked』が受け入れられる下地は、ある程度整っていた。リーダーのデビッド・バーンからすれば、「いやいや、ボクはもっと前から『Bush of Ghosts』作ってたし」とでも言いそうだけど。

 一般的なロック史観でヘッズが取り上げられる際、紹介されるのは、大抵『Remain in Light』である。当時、非ロックの急先鋒だったプロデューサー、ブライアン・イーノが、精神的な師弟関係にあったバーンをそそのかして創り上げた、頭でっかちで踊りづらいダンス・ビート・アルバムが、これ。
 黒人のサポート・ミュージシャン中心で演奏されたベーシック・トラックを素材に、2人で思いつくままままに、テープを切り貼りしたりエフェクトかけたり、ある意味コンセプト・アートの延長線上で『Remain In Light』は製作された。ポスト・ロック以降の方向性のひとつである、ホワイト・ファンク~ミクスチャーの源流として、今も確固たる地位を築いている。
 いるのだけれど、ほぼ主役と言っちゃってもいいくらい、サポート・ミュージシャンをフィーチャーし過ぎたため、結果的に他メンバー3名の影が薄くなり、バンド内の人間関係は悪化してしまう。「バーンがそういう態度なら、俺たちだって勝手にやるさ」となかばヤケクソな動機でトム・トム・クラブを始めるが、思いのほかこれが大ヒットしてしまう。アカデミックな視点では『Remain in Light』が圧倒的に支持が高いけど、一般的な80年代ヒットとしては、「Once in a Lifetime」より「おしゃべり魔女」の方がよく知られている皮肉。
 バンドとイーノ、どっちを選ぶか岐路に立たされたバーンは、最終的にイーノとのコラボを解消、一旦仕切り直しの意味も含めて、総決算となるライブ・アルバムをリリースする。これが『Stop Making Sense』。バーンのコンセプチュアル・アート趣味が炸裂する映画の方が有名かもしれない。これもロック史では、よく取り上げられている。

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 俺がリアルタイムで知ったヘッズはその後、シンプルなバンド・サウンドに回帰した『Little Creatures』と『True Stories』。このブログでも開設初期にレビューしているくらいなので、個人的な思い入れは深い。実際、いまも年に一度は聴いている。
 頭でっかちなスノッブさが取れ、カジュアルなヘッズのアルバムとして、こちらも根強い人気を保っている。チャート上位に入ったシングル曲も多い時代で、日本での認知度が高いのは、むしろこのあたりなのかもしれない。
 で、これらのアルバムは大方語り尽くされちゃったせいもあるのか、近年はデビュー前後、まだイーノが絡む前の荒削りな時期の評価が高い。アート・スクール出身特有のアイディア一発勝負、頭脳と体とが噛み合ってないアンバランスさによって、唯一無二の奇妙なアンサンブルを生み出している。
 イーノにかどわかされて洗脳される前、コンセプトとテクニックとが整理されていないサウンドは、当時のニューヨーク・シーン、ガレージ・パンクのルーツとして貴重な記録である。本人たちにしてみれば黒歴史だろうけど、実際、この時期のライブは人気が高く、ネットやブートでも大量に転がっている。興味があればぜひ。

 と、だいたいこの辺が、ヘッズの代表的なアルバムとされている。かい摘んで代表作3枚となれば、この5枚から選ばれることが多い。なので、『Naked』が紹介されることは、まずない。ていうか見たことない。
 ポスト・ロックと称するには、ちょっと突き抜けすぎるサウンド・アプローチだった『Naked』。業界内での反応は、まんざらではなかった。中村とうようがどう評価していたかは忘れちゃったけど、この手のサウンドは容認しないといけないんじゃね?的なムードが漂っていたよね、ミュージック・マガジン。
 圧倒的な絶賛もなければ批判もない、周りがどう扱っていいのか困ってしまうアルバム、それが『Naked』である。どんなスタイルであれ、次回作がリリースされていたら、一時の気の迷いだったということで、表立った批判、または擁護する声も出てきたんだろうけど、何しろこれが最終作なので、如何ともしがたい。
 かつて『Remain in Light』リリースの際、あからさまなアフロ・リズムの引用・借用で批判の矢面に立たされたヘッズだったけど、『Naked』では、そんな声もあまり上がらなかった。だって、バンドの実体がもうないんだもの。
 リリース以降、いくつかのインタビューを受けただけで、解散ツアーも行なわれず、ヘッズは自然消滅する。すでにバーンの心は、ソロ・プロジェクトへ向いていた。

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 前回のボウイのレビューでもちょっと書いたけど、いわゆる過去の名盤より、ちょっと完成度は劣るけど、リアルタイムで聴いてきた作品の方にシンパシーを感じることは、ままある。俺の中でのヘッズは、現在進行形で聴いていた『Little Creatures』から『Naked』までであり、それ以前のアルバムは後追いのため、イマイチ愛着は薄い。
 特にイーノ時代だけど、あのあたりは前述のミュージック・マガジン臭、これを認めないと、意識的なロック・ユーザーとは言えない、そんな選民思想がジャマして云々…。
 いや、何度もトライしたのよイーノ時代も。入れ込み具合はどうあれ、どのアルバムも満遍なく聴いてはいる。いるのだけれど、ピンと来ない。来ないから書けない。愛情もないのに書いたって、言葉は上滑りするだけだ。

 非ロックとしてのエッセンス的な使い方ではなく、真っ向から取り組んだアフロ・キューバン/ラテン・サウンドは、当時のバーンの志向が大きく反映された結果である。ワールド・ミュージック専門のレーベル「ルアカ・バップ」を設立するくらい入れ込んでいたバーン主導のもと、『Naked』は多くのゲストミュージシャンを招いてレコーディングされた。
 ポスト・ロック的アプローチと、多くのサポート・ミュージシャンが参加しているという2点において、『Remain in Right』との相似点も多いけど、決して頭でっかちなサウンドにはなっていない。結局のところ、やはりこれはバンドのアルバムである。
 暴力的なバンド・グルーヴが渦巻く『Remain in Right』のコアは、強力なリズム・セクションが生み出すミニマル・ビートだ。サウンドの中心にどっしり構えたビートは、呪術的な求心力でアンサンブルを支配する。
 それに抗うが如く、エキセントリックな奇声を放つバーン。リズムをねじ伏せるため、ヒステリックなパフォーマンスで対抗する。その背中は、冷たい汗でじっとり濡れている。切迫した緊張感は、バンドの基礎体力を日増しに削り取ってゆく。
 『Naked』もサポート・ミュージシャンの割合は多いけど、演奏でのメンバー4人の貢献度は高い。背中を伝う汗も冷えていない。
 職人プロデューサー、スティーブ・リリーホワイトはイーノと違い、バンドの基本グルーヴを尊重した上で、サポート・ミュージシャンのエッセンスを加えていった。単なる思いつきやサウンド偏重に陥らず、レコーディングのプロとして、バランスを重視したサウンドを創り上げた。

David-Byrne

 バンドとは、一回こっきりのプロジェクトではない。完成形を重視するがあまり、近視眼的な独裁ぶりでは、メンバーの相互不信が内部崩壊の引き金を引く結果となる。スティーリー・ダンのスタイルを続けるには、相応の覚悟とスキルが必要なのだ。
 やっぱイーノなんだよな。良し悪しはあれど、センスだけじゃ長くは続かない。


Naked [Explicit]
Naked [Explicit]
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Parlophone UK (2006-02-13)



1. Blind
 CDをセットして、いきなりこのイントロが流れてきた時のことだけは覚えている。「あれ、中身違ってね?」サンバ/ラテンの狂騒的なリズムの洪水は、当時、ロック・オンリーの俺の耳には、強烈な違和感が先立った。ただ聴き続けるたびに違和感は薄れ、次第に馴染んでしまう俺がいた。メロディはよくできてるんだよな、バーンの曲って。
 ビルボードのメインストリーム・ロック・チャートでは39位、UKでも59位とまずまずの成績。まったくカスらなかったわけではない。ロックにこだわらず、コンテンポラリー・ポップとして幅広い支持を得た楽曲。ちなみにPVは、アメリカ大統領選を皮肉った設定のもと、なぜか凶暴なモンキー・レンチがその座を奪おうと暴れ回る、といったまるでモンティ・パイソン的なネタ。エイリアンとターミネーターが憑依した顔つき(?)のモンキー・レンチの演技は必見(?)。



2. Mr. Jones
 リゾート・ホテルのディナー・ショーを連想してしまう、ややゆったり目のラテン、ていうかマンボ。1.同様、バーンのメロディのクセが良い方向に作用して、単なる享楽的なラテンに陥ってはいない。その辺が非ラテン・ミュージシャン的なアプローチであり、スティーリー・ダンと同じテイストを思わせる。

3. Totally Nude
 カリビアン・テイストなスティール・ギターが心地よいナンバー。肩の力の抜けたゆったりしたリズムは、まどろみを誘う。何となく、マラカスを振りながらダラダラ歌うバーンの姿を想像してしまう。

4. Ruby Dear 
 あまりサポート勢も入らず、こじんまりとしたバンド・スタイルでレコーディングされた小品。なので、このアルバムの中では従来ヘッズ・テイストが最も強い。ドラム・パターンこそアフロっぽいけど、借り物のリズムではなく、バンドが訴求したうえでのビートとなっている点が、アンサンブルの充実を示している。この線のサウンドで、もう1枚くらい作って欲しかったよな。

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5. (Nothing But) Flowers
 イントロのベース・ラインが特徴的な、様々なアイディアが詰め込まれてほどほどに整理されたナンバー。フォーマットこそラテンだけど、ヘッズ独自のサウンドとリズムに昇華されている。
 当時、モリッシーと仲違いして課外活動に明け暮れていたジョニー・マーが参加。リズムに囚われず、持ち味であるネオアコ風味の音色で拮抗しているのは、好感が持てる。参加するからには、自分の痕跡を残しておきたいし。



6. The Democratic Circus
 あまりコード感を感じさせない、ゆったり流れるメロディとリズムは、この後のバーンのソロ作でも強く反映されている。思えばヘッズが純粋なロック・バンドであったのはごく初期だけであり、ほとんどの時期は傍流を走っていた。たまたまロックのフィールドに入れられただけであって、バーンの音楽性のコアはあまり変わっていない。
 ここでもドブロをフィーチャーしているけど、ロック的な使い方はされていない。やっぱアートの人なんだよな。

7. The Facts of Life
 と思っていたら、急にロックっぽいビートが。エコーが深く、エフェクト臭が強いドラムの音とシンセ・エフェクトは、ストレートなポスト・ロックを感じさせる。直球ど真ん中の次世代ロックっていうのも、なんか変な例えだな。
 ほぼバンド4人でのセッションのため、むしろ実験的な色彩が強い。ボーナス・トラックの12.みたいに、なんか別のプロジェクトのアウトテイクに聴こえてしまう。曲単体としては好きだけど、アルバム・コンセプトからはちょっと浮き気味。

8. Mommy Daddy You and I
 トラディショナル楽器であるはずのアコーディオンを、こういった使い方でフィーチャーするのは、ヘッズならでは。実験精神こそが本領であることを示したナンバー。『True Stories』に入ってても違和感ない、オーセンティックな味わいのメロディ。そこにバーンのヴォーカルがスパイスとして加わる。他のシンガーなら流麗に歌い流してしまうところを、強いクセとアクセントでもって、一家団欒をひと捻りする。
 

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9. Big Daddy
 ホーン・セクションのメンツから見て、「Blind」と同じセッションでレコーディングされたナンバー。性急なビートでせっつかれる「Blind」より、こっちの方が好きな人も多いはず。リゾート・ホテルっぽさが無駄にゴージャス感を演出しているけど、そのフェイク感こそが、まさしくヘッズ。アフロやラテン・ビートだって、本気で体得しようと思っているわけじゃないし。

10. Bill
 呪術っぽいドラム・パターンが既視感を思わせる。『Remain in Light』のアップグレード版的な。サポートがなくても、ここまでできる。すでにそういったエッセンスは取り込んでしまった。なので、もうやる必要はない。そりゃ解散って選択肢になるわな。
 コーラスとして参加しているカースティ・マッコールだけど、どんな経緯で参加してるのか長年不思議だったけど、考えてみれば当時の彼女、リリーホワイトの奥さんだったことに、さっき気がついた。すごい小さなレベルだけど、点と線とがつながった。

11. Cool Water
 初期ガレージ・パンク期のサウンドをリブートすると、こんな感じになる。レコーディング環境や演奏テクニックが洗練され、先走った勢いが追い付かず、実現できなかったアイディアもじっくり熟成されている。
 基本的なスタンスは変わっていない。ただ見せ方が違うだけで。ただそれも、ヘッズの不定形を象徴しているのかもしれない。バーンのソングライティングを軸に、ヘッズは常に変容してきた。そして、その行為は幕を閉じる。
 
12. Sax and Violins
 初回オリジナルは11.で終わっており、これはいわばボーナス・トラック。初出は1991年、ウィム・ヴェンダース監督による映画『夢の涯てまでも』サウンドトラック。後にベスト・アルバム『Sand in the Vaseline: Popular Favorites』と『Once in a Lifetime』に収録された。
 俺が最初に聴いたのは前者ベストで、ヘッズの新たな局面が見られたことで、当時微かな期待をしたけど、遂に果たされることはなかった。当時の未発表セッション「Lifetime Piling Up」と併せて、一時はヘビロテ状態だった。
「まだできるのに」という反面、無様な末期を見せず、「ここでおしまい」と言い切ってしまう潔さもまた、アーティスト=デヴィッド・バーンのプライドだと思う。





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イーノがいなくたってやっていけるじゃん - Talking Heads 『Speaking in Tongues』

folder 1983年リリース、Talking Headsの5枚目のアルバム。問題作呼ばわりされた『Remain in Light』から2年ぶりに制作されたアルバムのため、ちょっと影は薄い。しかも、この後に今でも名作として語り継がれているライブ・アルバム『Stop Making Sense』があり、そこではオリジナルを凌駕したと評されるダイナミズムあふれるライブ・ヴァージョンが披露されているため、ますます分が悪い。そこで前期のキャリアに一旦区切りをつけてからの『Little Creatures』なので、ほんと存在感は薄い。
 その『Little Creatures』がまたセールスを大きく伸ばしたので、あんまり売れてないんじゃないかと思われがちだけど、チャート的にはUS15位UK21位と、中堅ニュー・ウェイヴ・バンドとしてはまずまずの成績を収めている。
 ここ日本においても、「ミュージック・マガジン」界隈で強くプッシュされていたのが功を奏したのか、オリコン最高72位と微妙にチラッと顔を出している。シャレオツでトレンディなカフェ・バー文化の片棒の端っこくらいは担っていたおかげもある。

 大方のHeadsファンの認識通り、この『Speaking in Tongues』、3作に渡って続けられたプロデューサーBryan Enoとのコラボ解消を経ての作品なので、サウンド的にも過渡期的な位置付けで受け止めてる人が多い。前作で極めつくしたアフロ・ファンクのテイストを残しつつ、メロディに比重を置いたホワイト・ファンクは、彼らのオリジナルなアイディアにあふれているのだけれど、熱心なファンでさえ前作の勢いで売れただけと思ってる人も多い。実際、俺もそんな風に思っていた。
 ニューヨークの文化系ガレージ・バンドからスタートして、歌メロに光るものがあったのにもかかわらず、コンセプチュアル・アートへの憧憬が深いByrneと、イギリスの変態グラム・バンド出身の楽器のできないプロデューサーEnoとの出会いは、当初から強烈な化学反応を起こし、次第にアフロ、ファンク色が強くなり、現代アートの様相すら帯びてくるようになる。次第に基本リズムはカオティックに暴力的になり、サポート・メンバーの方が多くなって、バンドとしてのアイデンティティは霞んでゆくようになる。
 そんな経緯をリアルタイムで見てきた現役世代なら、このアルバムのサウンドは聴きやすいけどどこか物足りなく感じてしまうのも事実。俺のように『Little Creatures』や『Stop Making Sense』から注目し始めた後追い世代的には、『Naked』の前、最後から2番目くらいに聴けばいいんじゃね?的なスタンスのアルバムである。

Heads

 以前『Little Creatures』のレビューで、David Byrneの本質は「どこにでもいる普通の人である」と書いたけど、そこにもうひとつ付け加えて、「傍観者的なスタンスの人」なんじゃないかと思うようになってきた。
 これまでもアフロを始めとしたワールド・ミュージック関連、または現代音楽など様々なジャンルを渡り歩いてきたByrne。どの作品もそれなりに器用に演じているように見える。Heads解散後にコラボしたアーティストは数知れず、そのどれもが評価は高く、そつなくこなしてるように映る。映るのだけど、どこか不定形、どんな色にもすぐ染まるけど、元の色が何なのか、ていうかこの人、自分の主張やらメッセージなんてのは果たしてあるのかどうか―。
 彼としては、自分の異質な部分が他者とのかかわり合いに齟齬をきたし、そういった自分に馴染めずにいる期間が長かった。エキセントリックなパフォーマンスに身を投じたりアーティスティックな活動に専念したりなどして、すべてが好評というわけではなかったけど、そのうちの幾つかは高い評価を得て、坂本龍一と共にアカデミー賞を授賞したりもした。
 それでもどこか違和感は拭えない。完全にアバンギャルドの方面に足を突っ込むのにも抵抗がある。時々はギター1本の弾き語りスタイルでステージに立つのも、その表れだ。

 結局のところこの人、根っこは至って「普通の人」である。ちょっとめんどくさい表現だけど、「アバンギャルドに憧れてる普通の人だけど、そういった面もちょっとは持ってる人」というのがByrneを評するのには正しいんじゃないかと思う。
 実際、Enoを始めとしたその筋の人たちにも評判は良いし、最近ではポップのフィールドであるSt. Vincentとのコラボも記憶に新しい。Byrneとコラボしたがる誰もが、ちょっとエキセントリックなポップ・スターとしてのDavid Byrneをイメージしており、筋金入りの前衛音楽家としてのByrneを求めているわけではない。異質な中の普通の要素、オーソドックスな中の前衛的な部分に惹かれるからこそ、世界中のアーティストがこぞってオファーするのだ。
 見た目からして飄々とした趣きなので、小手先でなんでも器用にできちゃいそうに思われがちだけど、基本どの作品においても共通するのは微かな違和感、ここじゃない感だ。アフロ・ビートにもブラジル・ミュージックにも映画音楽にも現代音楽にも普通に溶け込んでいそうだけど、そのアクの強いヴォーカルは確実にどのサウンドからも浮いており、一聴して「あ、Byrneが歌ってる」とバレてしまう。匿名性とは極めて無縁の人なのだ。
 なので時々、ヴォーカルを入れないインストに走ってしまう時もあるのだけれど、これがまた総じてつまらない。基本は至って「普通の人」なので、記名性が薄いサウンドだと、存在そのものが消えてしまう。「ラスト・エンペラー」だって、騒がれたのはほとんど坂本龍一だったし。

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 そうなると、Byrneにとって一番しっくり馴染むサウンドは何なのかと言えば、今でも時々行なっているギター1本による弾き語りスタイル、またはシンプルな3〜4ピース構成のバンド・スタイルということになる。なんだ、それじゃただのHeadsじゃん、ということになってしまうのだけど、結局はそこに行きついてしまう。できるだけ過剰なアレンジは施さず、楽曲の基本構造をむき出しにし、その特異性のあるヴォーカルを最大限活かせるスタイルが、彼の音楽性を最もダイレクトに伝える手段である。
 旧来のシンガー・ソングライター的に、流麗で整ったメロディ・ラインを書くわけではないけど、今でもレパートリーの定番である”Heaven”はわかりやすい名曲だし、実際このアルバムの中にも、強力なリズム中心のアレンジに隠されてはいるけど、ギター1本で成立する楽曲は含まれている。
 そのアレンジを引っぺがして残るのは、それこそByrne特有のオリジナリティあふれる楽曲たちである。時系列に捉われないライブのセット・リストは新旧様々な配列であれど、ほとんど違和感がない。
 結局のところ、この人は何も変わってない。どれだけ周囲の環境が変化しようとも、確実に変わることのない表現衝動の硬いコアがあるのだ。

 で、このアルバム、これまでとサウンドは似てるけど、Enoの不在ということが大きく影響している。前回同様、サポート・ミュージシャンは多く、特にBernie Worrellなんかは相変わらずドヤ顔で弾きまくってるけど、これまでよりは大きくフィーチャーされておらず、バンドのシンプルな構成がわかりやすいセッティングになっている。
 これまでEnoの仕切りだと、すべてのパートがサウンド構成のパーツとして扱われ、彼主導によるカオティックなミックスによって、大きなグルーブ感を演出していた。そうなるとテクニック的には分が悪いHeadsらのプレイは埋没してしまい、バンドとしてのアイデンティティが希薄になってしまう弊害があった。ここではバンドによるセルフ・プロデュースになっているので、方法論的には一緒だけど、ベクトルは全然違っている。
 これまでは大まかなコード進行だけ決めたジャム・セッションを行ない、延々と回し続けたテープの中からおいしいところをつまんで編集技で仕上げるという手法だったのが、今回はByrneがある程度しっかり楽曲の骨子を作ってからスタジオ入りするやり方に変わっている。まずは基本メンバーのみでベーシック・トラックを作り、そこにサポート・メンバーのエフェクト・プレイを足してゆくプロセスを経ているので、仕上がりが違うのも当然である。

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 呪術的なグルーブ感を想起させるポリリズミックなアフロ・ビートは、特にミニマル傾向の強いEnoにとっては狙い通りのサウンドだったのだけど、それはあまりにアクが強すぎて、ポップ・ミュージックとしては冗長すぎる面があった。なので、そこら辺を改善して、今回はもっとソリッドにコンパクトにまとまったホワイト、ファンクが展開されている。
 ニュー・ウェイヴの流れから生まれたHeadsメンバーのチープな音色と、手練れのセッション・ミュージシャンらによる太く安定したサウンドとのギャップが激しかったのがEno時代だとしたら、ここでのHeadsのメンバー達は地にしっかり足をつけてプレイしている。
 なので、強いリズムに流されない、独自のホワイト・ファンクの発展形がここにはある。Enoでもサポート・メンバーでもなく、ここでしっかりイニシアチブを握っているのはHeads達自身である。

 このセッションでアイデンティティを取り戻したHeads達、Enoと創り上げたフォーマットでの完成形は取り敢えず見えたので、次は新たなフォーマットを独自で見つけ出すこと。極力サポートも入れず、DIY精神に基づいたサウンドの構築。
 そこで生まれたのが『Little Creatures』である。


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1. Burning Down The House
 ビルボード最高9位にランクインしたHeads最高のヒット曲。え、これが一番なの?と思ってしまうけど、データとしてはこれが最高位をマークしている。シングル・ヒットにしては渋すぎる感触。
 ここでシンセで参加してるWally Badarouはイギリスのジャズ・ファンク・ポップ・バンドLevel 42のメンバー。白人でここまでシンセをファンキーに弾きこなす人はなかなかいない。セッション自体はHeads中心の仕切りだったけど、Badarouの参加はかなり刺激になったんじゃないかと思われる。Jerry Harrisonはあんまりいい顔しなかったと思うけど。



2. Making Flippy Floppy
 どこか未来的、フューチャー・ファンクを思わせる、ほとんどワン・コードで押し通すHeads流ホワイト・ファンクの完成形。かつてJBが”Ifeelgood”で提起したファンクの原型は時を経て様々な傍流に枝分かれし、ここにたどり着いた。
 予測不能なジャム・セッションではなく、きちんと隅々までシミュレートして構築された、冷たい汗がほとばしる頭脳型ファンク。間奏のギター・シンセの音色は遠いアフリカの漆黒の夜、猛り狂う猛獣達の雄叫びを連想させる。

3. Girlfriend Is Better
 ここでのTina Weymouthのベース・プレイはもっと評価されてもいいんじゃないかと思う。女性ベースでここまでボトムの太いビートをかませる人はなかなかいない。何しろTom Tom Clubの一翼を担った人なので、独特のリズム感については知られているけど、この曲の重厚感に一役買っているのは、間違いなく彼女。
 後半アウトロの延々続くシンセ・エフェクトも、ドロッとしたグルーブ感の塊が無造作に投げ出されている。



4. Slippery People
 『Remain in Light』のサウンド・フォーマットでありながら、そこからアクの強いサポート陣を抜いた構成のナンバー。その名残りなのか、ミニマル・コーラスに呪術的なアフロ・テイストが残っている。
 強力なサポートを抜いたベーシックなバンド・セッションにおいても、これだけグルーヴィーなスロー・ファンクをプレイできるのだから、当時のバンドの成長が窺えると共に、アマチュアリズム漂うニュー・ウェイヴの香りがすっかり消し飛んでしまっているのも事実。
 彼らはもう、立ち上がった頃よりもずっと遠いところまで来てしまったのだ。

5. I Get Wild/Wild Gravity
 これまでよりもメロディの力がが強くなり、次作『Little Creatures』路線の萌芽が垣間見えてくるナンバー。強靭で揺るがないリズムに紛れてしまっているけど、こういったセンチメンタルな作風もまた、Byrneの別の側面である。マイナー・コードを多用しながらもウェットにならず、ドライな質感を保っているのは、人よりフォーカスがちょっとズレている彼の声質によるもの。
 ベタにならないというのは、それだけでひとつの個性だし、他人が歌ったHeadsのカバーがどれもしっくり来ないのは、やはりオンリーワンの人だから。

6. Swamp
 タイトル通り、泥臭いブルースが基本構造なのだけど、それが全然泥の香りがせず、むしろスタイリッシュに聴こえてしまうのがByrneの持ち味。Chris Frantzのドラムはアタック音が強いけど響きが軽いのが特徴で、コッテコテのファンクやブルースが苦手な人にとっては、そこがいい感じに聴きやすくなっている。
 Byrne自身もまた、もともとソウル成分の少ない人なので、ある程度の完成形をシミュレートして作られたサウンドは非難されることも多いけど、文科系視線での研究成果として、ベタなファンクよりは面白く聴ける。予定調和だけが完成形ではないのだ。

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7. Moon Rocks
 わかりやすいギター・カッティングから始まるライトなファンク・チューン。このアルバムの中では軽いタッチだけど、ミニマルなナチュラル・トーンのギターがファンクの真髄を象徴している。
 後半に進むにつれ、バンドのプレイが熱くなってゆくのがわかる。基本はみんなクレバーだけど。

8. Pull Up The Roots
 ここで再びTinaのベースが全体をリードしている。Chrisのプレイは基本ジャストなリズムなので、こうして聴いてみると、土台のリズムが磐石であるがゆえに、エキセントリックなByrneの奔放なプレイが光るのがわかる。
 素人くささが売りであるニュー・ウェイヴ系バンドが多い中、Headsというのはオーソドックスな部分でも頭ひとつ抜きん出ている。やっぱ売れてるバンドは違うよな。

9. This Must Be The Place (Naive Melody)
 第2弾のシングル・カット。US62位UK51位はまぁこんなところ。次作の予告編とも言える、歌心にあふれたメロディ・ラインとシンプルなバッキングが展開されている。ギター・プレイもファンクというよりはすでにロックのリズムに移行している。
 これまでのディープなリズムに食傷気味になっていたのか、それともシングル向けにキャッチーなラインを考えたのか、ボーナス・トラック的にポップ・チューンに仕上げており、このアルバムのテイストと微妙に違っている。なので、ラストに持ってきたのは正解。






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もっと偉ぶってもいいのに軽く見られちゃう人たち – Talking Heads 『True Stories』

folder 1985年発表のアルバム『Little Creatures』 は、これまでのヴァーチャル・エスノ・ファンク路線から一転、シンプルなポップ・ロック・サウンドに原点回帰することによって、いわゆる意識高い系が多かったファン層が一気に一般ユーザーへと拡大し、チャート的にも健闘、特にアメリカ以外での売り上げが好調だった。
 当時のアメリカ・オルタナ系としては珍しく、シングル・チャートでも存在感をアピールできたTalking Heads、これまでは評論家ウケの良いサウンドや、映像的に高い評価を受けた映画(『Stop Making Sense』)によってスノッブなイメージが先行しており、レビューでの点数は高かったけど、肝心のセールスにはなかなか結びつかなかった。で、ようやく安定したポジションを獲得することができたのが、このアルバムである。

 特に日本では、ミュージック・マガジンを始めとする選民的なメディアでの取り上げ方によって、長い間、『通好みのバンド』として認識されていた。情報源と言えば、雑誌かラジオくらいしか手段のなかった時代である。
 特に話題となったのが『Remain in Light』、あまりにサウンド至上主義にこだわりすぎたあまり、バンドの存在感が希薄となり、これが純粋なバンド・サウンドと言えるのかどうか、今野雄二と渋谷陽一が雑誌上で熱いバトルを繰り広げていた、というのは、後になってから知った話。

 そういうわけでTalking Heads、日本ではそういった評論家たちの机上の空論に振り回されるがあまり、「わかる奴にしかわからない」「で、わかってると思い込んでる奴は、わかってるつもりなだけ」という、にわかな洋楽ファンにとっては敷居の高い存在になってしまっていた。
 80年代ロックの名盤として、ほぼ必ずといっていいほど『Remain in Light』がノミネートされていた時期があり、よって、名が示すような「頭で聴くバンド」としてのイメージが強く残ったことは、バンドとしても不幸だった。ロックを「勉強」「理解」するための必聴アイテムとして取り上げられることは、まぁレーベル側としては宣伝となって良かっただろうけど、そういった聴かれ方はByrneを始め、バンドの誰もが望んでいなかったはず。

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 内向きのムラ社会のみで評価されることから一歩先へ進み、もっと開かれた世界で受け入れられることを望み、それが最も良い形で叶えられた傑作『Little Creatures』で、その路線を推し進めて、更なる大衆性を獲得しようとしたのが、この『True Stories』。
 実はこのアルバム、一般的に思われてるようなサウンドトラックではなく、正確には「監督David Byrneが制作した映画をモチーフとしたオリジナル楽曲集」である。こうしたスタイルのアルバムで代表的なのが、The Who製作による『Tommy』。これも当初製作されたバンド4人でのオリジナル・アルバムが大ヒットを記録、そこから派生した映画なのだけれど、劇中ではWhoの曲を各演者が歌っており、なのでサントラは別にある。
 そういえばPrinceの『Batman』も、厳密な意味ではサントラではない。こちらの経緯はちょっとめんどくさくなるので、こちらのレビューをご参照の上。

 前作『Little Creatures』でメンバー4人の結束力をテーマとした結果、積極的なカントリーの導入など、純粋なアメリカ白人音楽のルーツへと回帰したTalking Heads、今作『True Stories』では、さらにその傾向が強くなっている。
 ごく普通の人々が営む、ごく普通の生活の中のちょっとしたズレ、ささやかなエピソードを丹念に拾い上げて映像化した作品なので、それにはまる音楽というのは必然的に最大公約数、普通のアメリカ人が日常的に聴いているジャンルということになる。みんながみんな、One Directionや Rihannaばかり聴いてるわけではないのだ。
 日本においても、誰もが口ずさめるヒット曲と最新のオリコン・シングル・チャートでは、その様相がまるで違っているように、アメリカの場合も同様である。メインの総合チャート以外にも、カントリー&ウエスタン・チャートもあれば、クリスチャン・ミュージック専用のチャートだってある。特に一般的なWASPが日常的に聴いているのは、こうした人畜無害、脱臭済みの音楽がほとんどなのだ。それは大きな刺激はないけど、日々の癒しや郷愁を掻き立てる要素が詰まっている。

 様々な音楽的変遷を経た末、最終的には自分たちの血肉となっている物から自然に湧き出て来たものを、ストレートに形にしたTalking Heads、特にフロントマンである Byrne にとって、こういった音楽スタイルに帰結したことは、必然のように思える。 
 NYのアート系ガレージ・バンドからスタートして、偉大なる詐欺師Bryan Eno との出会い、そこから始まったアフロ~ファンク・リズムの追求、バンド側の意思とは違うベクトルでの肥大化、もはや誰も制御不能のカオスに陥った末、バンドは空中分解、そこで一旦踏みとどまり、各々ソロ・プロジェクトにてリフレッシュ―。そういった経緯を踏まえてようやく辿り着いたのが、この等身大のサウンドである。
 以前のように、斜め上のロック・ファンをアッと驚かせるような仕掛けはないけど、メンバー4人それぞれが対等の立場のバンドとして、DIY精神に則ったかのように、自分達で賄えることは自分たちで行なっている。極めてオーソドックスなサウンドながらも、初心に戻ることによってガレージ・バンド的な要素がよみがえり、それでいて熟練も加わることによって、ソリッドにまとまった。外部プロデューサーやサポート・ミュージシャンらに丸投げするのではなく、あくまで自分たちで鳴らすことのできる音を素直に出すことによって、冗長気味になりつつあったサウンドはコンパクトになった。音のインパクトは薄れたけど、余計なデコレーションがなくなった分、そのメッセージはダイレクトに、多くのリスナーの耳に、また心に届いた。
 
 と、誰もが思っていたはず。そう、Byrne 以外は。
 
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 せっかくの力作・話題作にもかかわらず、大々的なツアーは行なわれなかった。Byrne の体調的な問題もあったらしいけど、まぁ他にもバンド内での衝突もあったんじゃないかと思われる。せっかくバンドの結束力が高まった頃だったというのに、ほんと惜しい。
 この路線を継続して行なってゆけば、 まぁ音楽性からしてビッグ・セールスは無理にしても、小さくまとまったR.E.M.くらいのポジションまでは行けたんじゃないかと思う。
 でもそれよりもByrne、これ以降も音楽的な変遷は続き、次回は享楽的かつ刹那的なラテンのリズムへ向かうことになる。


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1. Love For Sale
 ポップなガレージ・ロックといった感じの、彼らにしては非常にキャッチーなメロディのナンバー。ある意味、Talking Headというバンドとしての到達点のサウンド。オルタナティヴとポップ・サウンドの奇跡的な融合、とは言い過ぎかな。それくらい、俺的には好きな曲。
 当時はMTVでもヘビロテされており、このPVを見てファンになった人も多いはず。人気投票では必ず上位に入っているというのに、なぜか当時のチャート記録がない。そんなに売れなかったっけ?
 


2. Puzzlin' Evidence
 で、何故か3枚目のシングル・カットとしてリリースされたのが、この曲。USメインストリーム・チャートで19位と、これまた微妙な成績。ここではメロディよりもリズム隊がメイン、つまりはByrneのヴォーカルもサウンドのパーツの一部、リズム・セクションとややゴスペルがかった女性コーラスが際立っている。ホワイト・ゴスペルとでも言えばわかりやすいかもしれない。
 でも、どうしてこれがシングル・カット?

3. Hey Now
 『Little Creatures』に入ってても違和感がない、ポップでリズムが立っててキュートな曲。アフロ・ビートがエッセンスとして使われており、それでいてWASPのテイストが基調なので、これまでのTalking Headsサウンドの進化形とも言える。
 なぜかオーストラリアとニュージーランドでシングル・カットされており、65位・45位と、こちらも微妙なチャート・アクション。

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4. Papa Legba
 同じくアフロ・ビート使用だけど、こちらもはもっとディープに、祝祭的な雰囲気漂う、やや怪しげなムードの曲。中盤でオフ気味で遠くから鳴っているByrneの雄叫びがニュー・ウェーヴ的。こうやって書いていると『Remain in Light』的な楽曲のように思われてしまうけど、一聴してまったくの別物であることは理解できるはず。
 Enoプロデュース時代の暴力的とも言えるリズムが、Byrneにとっては自由奔放すぎて制御不能だったことに対し、ここでのリズムはあくまでByrne主導で統率され、バンド本体の演奏との親和力が強い。強いリズムに振り回されることのない、バンドの強靭な基礎体力こそが成長の証だろう。

5. Wild Wild Life
 ファースト・シングルで、US25位UK43位と大健闘。PVの鮮烈さが最初にインパクトを与え、そして純粋に曲の良さが評価されて後年までファンに愛された、非常に幸せな曲。
 ニュー・ウェイヴ出身者の場合、チャート・アクションが好調だと古株ファンからの不興を買う場合が多いのだけれど、彼らについては何となく許してしまう、微笑ましい雰囲気が漂っている。
 


6. Radio Head
 「あのThom Yorkeに影響を与えた」、ただこの一点だけで広く世に知られている曲。ただ同時に、肝心の曲の内容はあまり知られていないという、逆に不幸な境遇の曲でもある。『Little Creatures』フォーマットを使用した、カントリー風味の強いポップ・ロックだけど、これがどうしてこうしてどうなったらRadioheadのサウンドになるのかは、いまいち不明。
 なぜかUKではシングル・カットされ、最高52位にチャートインしている。

7. Dream Operator
 ピアノとリズムによる、ミニマル要素の非常に強い曲。前奏が長く、なかなか歌が始まらないのだけど、1分20秒ほどすると、いつものようにタイトでエモーショナルなByrneのヴォーカルが入る。
 ややニュー・ウェイヴ要素が強いが、やはり『Little Crearures』効果なのか、カントリー・テイストの強いポップ・ロックに仕上がっている。

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8. People Like Us
 やや”Road to Nowhere”に間奏のギターなどが似ているけど、まぁそれはあまり大きな問題ではない。今作の特徴として、「カントリー&ウェスタンを吸収したニュー・ウェイヴ・サウンド」というのが大きなテーマの一つとなっており、実際『Little Creatures』との親和性が高い曲が多くを占めている。スティール・ギターやフィドルの入ったナンバーなんて、以前の彼らからは想像もつかない。それでも日和ったように聴こえないのが、Byrneのしゃくり上げるようなヴォーカルの力。

9. City Of Dreams
 最後はもう少し80年代ロック・テイストに。ラストに相応しい美しい旋律と堂々と風格のあるサウンドに仕上がっている。これまでよりもリズムが立っているし、Byrneのヴォーカルも程よく抑制されてサウンド、メロディを聴かせるようになっている。






 アルバム・リリース後、やはりByrneが拒否権を発動し、ツアーは行なわれなかった。もちろん他のメンバーらは不満を表明したが、もはや誰もその流れを止めることはできなかった。既にバンド自体が賞味期限を迎え、あとは終焉のタイミングを待つばかり、ということを理解していたのだろう。

 最後まで自らのサウンド追求に熱心だったByrne率いるTalking Heads、次に彼らが飛び立ったのはパリ、そこでなぜか純粋なラテン・ミュージックをテーマとして選び、最後のアルバム『Naked』を制作することになる。


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北海道の中途半端な田舎に住む、そろそろアラフィフ男。不定期で音楽ブログ『俺の好きなアルバムたち』更新中。ただでさえ時間ないのに、また新しい音楽ブログ『80年代の歌謡曲のアルバムをちゃんと聴いてみる』を始めてしまい、どうしようかと思案中。
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