好きなアルバムを自分勝手にダラダラ語る、そんなユルいコンセプトのブログです。

Style Council

シャレオツ感? そんなの関係ねぇっ - Style Council 『Home & Abroad』

folder 1986年リリース、活動中にリリースされた唯一のライブ・アルバム。実質的な活動期間は5年程度だったので、ライブ盤1枚は妥当なところ。敢えて言えば、複数のライブ音源からイイトコ取りでの構成のため、いわゆるダイジェスト版な点だけが、ちょっと惜しい。
 基本、ハイレベルの演奏テクニックやインプロビゼーションを売りにしたユニットではないので、昔から彼らのフルセット音源は少ない。今の時代、ちょっと手間をかければ、ネットのあちこちに音源は転がっているのだけど、その多くはテレビ出演やラジオ番組のエアチェック音源が主体であり、質の良い無修正オーディエンス音源というのは、大して多くない。
 レコーディング/ライブ両面で脂の乗っていた、『Our Favorite Shop』リリース後のライブを中心にまとめたものなので、シングル・ヒットした曲が多く、ある種ベスト・アルバム的な機能も有している。なので、ちょっと極論だけど、これさえ聴いておけば、彼らのおおよその代表曲を押さえることができる。そのくせ「Long Hot Summer」が入ってないのはちょっとどうなのよ、と突っ込みたくはなるけど、まぁそこは置いといて。
 録音なのかスタジオ処理のせいなのか、歓声が不自然に後付けっぽく聴こえるのと、ホール中心のライブの割りには響きが薄く、なんだか擬似ライブっぽい音質なのがちょっと残念。でも、全盛期の記録として、その希少性はいまも変わらない。

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 80年代初頭のネオアコ・ムーヴメントに片足を、そしてもう一方をポスト・パンクに突っ込んでいた彼ら、当時親交のあったEverything But the Girl と近い方向性で、ジャジーだボサノバだソウルだファンクだ、ロック以外のエッセンスを貪欲に取り込んだサウンドを展開していた。
 そもそもポール・ウェラーにとって、「ロックからの逸脱」というテーマは、ジャム後期から地続きのものだった。「既存ロックの価値観打破」がテーマだったパンクも、時代を追うにつれ自家中毒を起こし、紋切り型の似たようなサウンドに収束しつつあった。拳を振りかざす先がみんな同じなんて、そんなのパンクじゃない。
 みんなと同じ、「荒削りな楽曲と拙い演奏」といったステレオタイプのフォーマットは、音楽的な成長著しいミュージシャンにとっては、足かせでしかなかった。常に前しか見ない当時のウェラーからすれば、いつの間に商業パンクの筆頭となり、フォーマット外のアプローチを歓迎されないジャムの看板は、もはや必要ないものだった。
 類型的なロックのスタイルを捨てるため、人気絶頂のジャムを解散したウェラー、その後は180度違ったアプローチで音楽と向き合うことになる。

 ジャムとは対照的なソフト・サウンドとシンクロするように、ウェラーのファッションも大きく変化する。ひとつの不変的なスタイルとして確立したモッズ・スーツを脱ぎ、スタイリストの巧みなコーディネートによって、当時の最先端だったDCブランドに身を包むようになった。ひと昔前の石田純一のようにカーディガンを肩に羽織ったり、カジュアルなサマー・セーターを着るようになったのも、この頃だ。
 ジャム時代の全否定にも映る、そんなウェラーの極端なシフト・チェンジは、古株ファンにはことごとく不評だった。パンクに必須だった疾走感や気迫などが強力脱臭されたデビュー・アルバムは、とても同じ人物の作品とはとても思えなかった。
 でもライブになると血が騒ぐのか、序盤こそ、歯の浮いたソフトなヴォーカルを披露するウェラー、興が乗るにつれ、パフォーマンスは次第に荒くなってゆく。汗が吹き出し、ステージ衣装も乱れてゆく。アクションも大仰になってステージを縦横無尽に歩き回り、シャウトと唾がステージ上に飛び交う。
 なんだ、これまでのジャムと変わんねぇじゃん。ギターを持ってるか持ってないかだけ、いつものハイパー有酸素運動。どう繕ったって、熱くたぎるパンクの血は隠せない。

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 行き詰まりとなった英国政治や社会問題をテーマに掲げ、大衆向けのポップ・サウンドでコーティングして、メッセージを広く流布させるのが、スタカンの基本コンセプトだった。直訳「スタイル評議会」の名のもと、表面的なサウンドにポリシーを持たせることを敢えて捨て、トレンドやテーマによって意匠を変える行為は、膠着状態だったニュー・ウェイブ以降のロックに対するアンチテーゼでもあった。
 『Home & Abroad』に収録されている楽曲の多くは、構造不況に対して何ら効果的な改革を示せないサッチャー政権への憤りから生まれたものである。トップ40チャートでWham!やDuran Duranらポップ・ソング勢と肩を並べながら、歌ってる内容はとことん左寄りか鬱々とした内省吐露といった具合。英国人らしい自虐と鬱憤をストレートに描いた楽曲が、次々とチャート上位にランクインしていた。
 日本だったら、速攻放送禁止か発禁になってしまう内容でも、普通に売れてしまうのが、当時の英国事情を反映している。とはいえ、当時に限ったことじゃなく、英国は政治・社会批判には比較的寛容なお国柄である。平気で王室批判やゴシップが報道されること多々あるし。

 ただ、外部への怒りを発露とした表現にも、限界はある。政治社会への批判を声高に続け、同調者が増える。そして、オピニオン・リーダーは次第に「権威」となってゆく。「力を持つ」ということは、「社会的弱者ではなくなる」ということと同義なのだ。
 労働者救済のため、レッド・ウェッジの立ち上げに尽力したウェラーだったけど、この時すでにヒット・チャートの常連だった彼は、「そちら側」の立場ではなかった。成功者となっていた彼がどれだけ保守政権の打倒を訴えたとしても、明日のパンとスープ代すら捻出できずにいる社会的弱者にとっては、絵空事でしかなかった。
 一貫して政治色の薄いエルヴィス・コステロは、発足時から彼らの活動には批判的だった。すでにロック・セレブとして、多くの社会事業に首を突っ込んでいたスティングでさえも、その左寄りのスタンスゆえ、批判こそしなかったけど、明確に距離を置いていた。
 共産主義色が強すぎたことによって、幅広い支持を得られなかったレッド・ウェッジは、次第に活動も収束化し、内輪もめの末、フェードアウトしてゆくことになる。こういうのって、大抵派閥が分裂して内部崩壊しちゃうよな。それはどこの国も似たようなもので。

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 1987年の英国総選挙は、保守党の勝利で終わる。労働党の健闘も虚しく、サッチャーは引き続き3期目の政権を率いることとなった。
 「歌は世につれるが、世は歌につれない」と、かつて山下達郎は言った。政権批判や労働者救済を訴え続けたとしても、そう簡単に世の中が変わるわけではない。打てば響くのはごく一部であり、広く伝えるには、もっと強い求心力・カリスマ性が必要なのだ。
 そんな徒労感も手伝ってか、この時期からスタカンの活動も活発ではなくなり、セールスも同様に下降線をたどってゆくことになる。
 スタカンのもうひとつの軸である、「多様なジャンルを取り込んだ、変幻自在のサウンドアプローチ」も、次第に「スタカン・サウンド」的なものが固まり、マンネリ化に陥っていた。自家中毒をこじらせていたロックと違うものを指向しながら、キャリアを重ねるにつれ、いつの間にか自分たちがフォーマットをなぞるようになっていた。そんなジレンマが、さらにウェラーを追い込んでいった。
 「これまでと違うものを」といったコンセプトを掲げて、『Pet Sounds』まがいの連作組曲や、不似合いなピアノ・コンチェルトを収録した『Confesstions of A Pop Group』は、セールス的に大コケした。さらに負けじと、時流を先取りして果敢にハウス・サウンドに挑んだ『Modernism: A New Decade』ときたら、レコード会社に発売拒否される始末。
 もはや、スタカンというユニットでできる音楽的挑戦は残されていなかった。どれだけ多ジャンルのエッセンスを取り込んで行ったとしても、演ずる人間は同じなので、限界はある。同じ名義で続けられるのは、せいぜいアルバム1、2枚程度まで、コンセプトの性質上、長く続けられるものではない。

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 いっそボノのように開き直って、「ロックご意見番」的な立場で時事問題をボヤき続けてたら、スタカンの寿命はもう少し長かったんじゃないか、とふと思う。ポップ・スターと頑固親父の2枚看板で、コンスタントにシングル・ヒットを出しながら、インタビューでは毒を吐きまくったりして。ニュー・ウェイブ以降の重鎮として鎮座しながら、若手のリスペクトを受け、新曲と織り交ぜて昔の曲をサービスでやったり。
 ここまで書いて、「アレ、結局いまそんな感じになってるじゃないの」と思い直す。長らく過去曲を封印してきたウェラーだったけど、21世紀に入ってからは、ジャムもスタカンもソロも同列に扱い、ライブでプレイしている。
 前ばかり見てるのではなく、振り返る余裕もできた、ということなのだろう。人はそれを「成長と呼ぶ。
 発表年代を問わずランダムに並べられた近年のセットリストの中で、スタカンの曲もまた違和感なく溶け込んでいる。時事性が強い言葉に秘められた毒は、風化と同時に他曲と融和されている。あの時の刺激は、あの日あの場所じゃないとリアリティがないのだ。


Home & Abroad
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Style Council
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1. The Big Boss Groove
 シングル「You're the Best Thing」のB面としてリリースされ、アルバムには未収録。瞬発力の良さからオープニングに起用されることが多かったため、ファンには広く知られている楽曲。ウェラーの一枚岩ユニットではないことを強調するように、スタジオ・ヴァージョンではDee C. Lee とJayne Williamsonとでヴォーカル・パートを分け合っている。ライブではLeeとのデュエット。
 力を合わせて政権打倒をアジるウェラーのヴォーカルも最初からフル・スロットル、バンドも気合が入っている。

2. My Ever Changing Moods
 6枚目のシングルとしてUK5位、彼ら初期の代表作であり、ウェラーの全キャリア通しても、キャッチ―なメロディ・ラインが突出している。アルバム・ヴァージョンは流麗なピアノ・バラード、シングルでは小気味よいソフト・ファンクと、アレンジによって様々な表情があるけど、骨格がしっかりしているだけあって、どれもカッコ良く仕上がっている。
 ここではホーン・セクションを前面に出し、テンポもちょっと速めに設定され、ライブのグルーヴ感を損なわないアレンジ。俺的に一番馴染みの深いアレンジでもある。
 モヤモヤした鬱屈感でウダウダしてるけど、どうにか立ち直んなくちゃな、でも…、といった若者特有の足踏み感を活写した歌詞は、ヴァージョンによってその表情がまるで違う。この歌詞でバラードだったら引きこもりそうだけど、『Home & Abroad』ヴァージョンだったら外に出たくなる。そう、行動するにはまず外に出なくちゃダメなのだ。

3. The Lodgers
 13枚目のシングル・カットでUK最高13位。俺の中では、スタカン楽曲の中ではトップ3に入る名曲。かしこまってまとまった印象のスタジオ・ヴァージョンとは対照的に、ここではウェラーも含め演奏陣のアドリブも多く、中盤にかけてはジャム・セッション的な様相も呈している。ダンス・チューンとしても秀逸なため、起爆剤的な役割も果たすキラー・チューン。



4. Headstart for Happiness
 シングル「Money-Go-Round」B面ヴァージョンでは簡素なデモ・テイクみたいな音だったけど、『Cafe Bleu』収録時には能天気なミュージカル調デュエットにブラッシュ・アップされた。で、ここではそのアルバム・ヴァージョンに準じたホーン中心のアレンジ。ロックっぽさも薄ければファンクの匂いもない、ある意味、スタカン・オリジナルとでも言うべき楽曲。やっぱりLeeのヴォーカルが入るとポップ感が増す。

5. (When You) Call Me
 シングル「Boy Who Cried Wolf」のB面としてリリース。シングル・ヴァージョンはシンセ・ベースやドラム・マシンを多数駆使した、時代性を感じさせるエレポップとして、独特のキッチュ感があった。ライブでは逆にそのいかがわしさが薄れて普通のミディアム・バラードになっちゃってるのが、ちょっと惜しい。メロディ・ラインはウェラーにしてはクセも少なくスタンダードの香りすら漂っている。

6. The Whole Point of No Return
 スタカンの場合、アルバムとシングルでヴァージョン違いが多く、しかもライブでも全然違う場合がある。この曲も、ライブ用にアレンジされているパターン。基本はシンプルなボサノヴァ・タッチのギター弾き語りで、ラウンジ臭が強い。
 ライブの構成上、ブレイクとして息抜きの曲は必要だろうけど、この時期の彼らの曲は、そんな小休止曲のオンパレード。ウェラーが口角泡を飛ばしていても、簡素なアレンジでは時に空回りしてる場面もある。さすがにこの曲調では、彼もおとなしい。

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7. Our Favourite Shop
 もう一人のメンバーMick Talbotが主役となるインスト・ナンバー。ラテン・ベースのリズムを中軸に、ジャム・セッション風の演奏が展開されている。もともとライブ感のある演奏なので、スタジオ音源とさして違いはない。ないのだけれど、あまりに原曲に忠実過ぎる展開もどうなのか、と。他のライブだったら、もっとアドリブが長かったりLeeのヴォーカルを入れたり、遊ぶ要素はあったのかな。

8. With Everything to Lose
 アンチ・ロックとして結成されたスタカン・サウンドのひとつの到達点。ボサノヴァ・タッチなのに、既存のロック・ユーザーさえ納得させてしまうグルーヴ感を創り出せたのは、才気バリバリだったウェラーでこそ成しえた力ワザ。
 リズム・アレンジ・メロディともほぼ完成の域に達しているため、ライブ/スタジオ・ヴァージョンとも、大きな変化はない。しかしフルートをリードに使うバンドがここまで支持されるとは。ジェスロ・タルが同じくフルート使ってるらしいけど、ゴメン聴いたことないや。

9. Homebreakers
 先の見えない労働者階級の悲惨な現状をリアリティ・タッチで描写したナンバー。重く陰鬱なファンクには、Talbotの声が合っている。『Our Favorite Shop』のオープニングとして知られている曲だけで、考えてみればこんな重々しい曲を初っ端に据えて、よく日本でも売れたものだよな、と今にして思う。

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10. Shout to the Top!
 説明の必要もないくらい、多分日本では最も有名なスタカン・ナンバー。以前のレビューでも書いてるけど、佐野元春への影響はもちろんのこと、あの小柳ルミ子までカバーしていることで一部では有名。
 スタジオ・ヴァージョンはさんざん聴きあきているので、テンポを落としてボトムの効いたライブ・ヴァージョンはなかなか新鮮。

11. Walls Come Tumbling Down!
 UK最高6位をマーク、俺の中のスタカン・ランキングでは常にトップ3に入る大名曲。スタジオ・ヴァージョンもテンション上がりまくりのウェラーだけど、ここではさらにアドレナリン全開、ファンク風味を添加したソリッドなロック・チューンとなっている。
 壁を崩せ!というシンプルなメッセージは、多くの若者に勇気を与え、そしてポピュラリティさえも獲得した恒例。こんな曲がもう2、3あったら、レッド・ウェッジも生き永らえていたのかもしれない。いやないか、あぁいうとこの執行部って、手柄の横取りで内部分裂するのがオチだから。



12. Internationalists
 ラストは『Our Favourite Shop』収録曲、で、このアルバムのもとになったツアーのタイトル・チューンでもある。バラードや緩やかなリズムのヒット曲が多いため、「静」のイメージで捉えられることが多いスタカンだけど、ライブでのグルーヴ・マスターとしてのTalbotの存在を忘れてはならない。
 ウェラーの性急なカッティングと、繊細かつ大胆なSteve Whiteのドラミング、そしてステージ上の空気を一変させるフレーズをバンバン放り込むTalbotのオルガン・プレイ。あまり語られることはないけど、ライブ・バンドとしてのスタカンを最も象徴した楽曲。



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パンク世代のペット・サウンズ - Style Council 『Confessions of a Pop Group』

folder Style Councilは実質5年強という短い活動期間ながら、商業的にもクリエイティブ的にも大きな実績を残している。容易に全貌がつかめぬほど大量のリミックス12インチ・シングルをマーケットに放出、いくつかの名曲はヒットチャートでも優秀なセールスを記録した。反サッチャリズムで盛り上がっていた80年代UKロック・シーンの空気を反映して、痛烈な社会批判や労働問題を取り上げた歌詞は、そのチャラいサウンドとのギャップによって、主に若者層の支持を集めた。
 Jam時代より過激かつ直接的になったメッセージやイデオロギーの羅列は、新規ファンの取り込みに大きく貢献したけれど、表層的な変化を嫌い、本質から目を逸らすかつてのファンは、年を追うごとに離れていった。保守的なんだよな、ガチのパンクスって。

 とは言っても、解散から30年経った現在、彼らの実績がクローズアップされるのは、ほぼ最初の2枚『Cafe Bleu』か『Our Favorite Shop』までであり、その後の活動については触れられることも少ない。
 ヒットメイカーとアジテーターとのダブル・スタンダードを実現した前期と比べ、急速にクラブ・シーンへ傾倒したPall Wellerが、黒人音楽へのコンプレックスを露わにした『The Cost of Loving』以降は迷走、それに連れてセールスもガタ落ちになり、自然消滅となったのが、後期のStyle Council である。ざっくりまとめ過ぎたかな。
 なにしろ最後のアルバム『Modernism』なんて、あまりの変節さゆえ、レコード会社にリリースを拒否されたくらいだもの。音楽性に節操がなかったユニットとはいえ、さすがにディープ・ハウスはイメージとかけ離れ過ぎ。営業かける方も困っちゃうよな。

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 初期パンク〜モッズ・サウンドでスタートしたJamは、Paulのクリエイティブ面での覚醒によって、次第にソウル/ファンクのエッセンスが激増、従来の3ピース・バンドでは表現するのが難しくなったため、人気絶頂の中、解散の途を選ぶ。同じ3人編成でも、Policeのようにならなかったのは、プレイヤーとしてのポテンシャルの違いが大きかったから。あっちはだって、パンクの威をかぶったベテラン揃いだもの。
 そんな経緯を経てPaulが立ち上げたのが、Style Councilである。この時点で保守モッズ・ファンの多くは離れていったけど、Paul的にはそれも織り込み済みだった。ここでPaulは、既存のパンク/モッズからキッパリ足を洗い、片っぱしから未踏のジャンルを吸収して、「何でもアリ」の新たな音楽性を開拓していったのだった。そのためには、夜のクラブ活動にも真剣にならざるを得ないわけで。
 根は生真面目なPaul、そっち方面を突き詰めるにも全力である。

 「スタイル評議会」という名前が象徴するように、あらゆる音楽スタイルを吸収・咀嚼し、メジャー・シーンでも受け入れられる商品に加工して幅広く普及させることが、初期スタカンのコンセプトだった。
 痛烈な政治・社会批判や怒りを、性急なビートとラウドなガレージ・サウンドでもって直截的に表現したJam時代のメソッドと違って、80年代の浮ついたムードの上澄みをうまくすくい取り、ボサノヴァやネオアコといった、パッションとは正反対のサウンドでデコレートしていた。「現地調査」と称した夜のクラブ活動によって、時代のトレンドを先読みしたそのサウンドは、Jam時代よりも耳障りよくキャッチーなナンバーが多かったため、彼らに大きな成功をもたらした。
 ただ、そんなソフト・サウンドとは裏腹に、レッド・ウェッジ支援やサッチャー批判など、歌う内容はJamよりはるかに過激で直接的だったため、時に賛否両論を巻き起こすこともある、何かとお騒がせユニットであったことも確か。なのに、パンクの連中って上っ面だけで判断しちゃうんだよな。

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 結果的に「シャレオツな音楽」の代名詞となってしまったスタカンだったけど、何も自らトレンディ路線を推し進めていたわけではない。前述の夜のクラブ活動に影響を受けて、当時はまだマイナーだった初期ハウスやヒップホップ、レアグルーヴなどの雑多な音楽を好んで聴いていたPaulが、「自分たちでもできるんじゃね?」と思いつきで始めたのがきっかけである。それがたまたま、クラブやカフェバー文化とシンクロしただけで。
 Jam末期〜スタカン結成に至る80年代中期というのは、既存のロックを打ち破る存在だったはずのパンクが疲弊、次第に様式化しつつあった頃である。パンクやニューウェイヴの中でも「型」が定まりつつあり、真にプログレッシブなアーティストにとって、ロックというジャンルは窮屈になっていた。
 そんな状況に置かれていたPaulが選んだのが、ロックからの脱却であり、言ってしまえば「ロック以外なら何でもいい」といった覚悟でもって、同好の士であるMick Talbotに声をかけたのだった。

 ある意味、「売れること」を目的としたユニットだったため、「売れ線に走った」という批判は当たらない。だって、そこ狙ってやってるんだもの。そういったポピュラリティの獲得と並行して、より真摯な主張を楽曲に織り込むことによって、彼らはクールな存在であり続けた。
 映像に残された彼らのライブを見ればわかるはずだけど、ライブ・セットやコスチュームはあか抜けて洗練されたものだけど、彼らのパフォーマンスは原初パンク・スタイルと何ら大差ない。汗まみれで客席にツバを飛ばし、全力でがなり立てるPaulの姿から、優雅さを感じることはできない。そこにいるのは、感情のおもむくまま、激情とパッションのみで突っ走る、単なるひとりのミュージシャンだ。

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 『ポップ・グループの告白』という自虐的なタイトルを掲げ、静謐なピアノ・ソロを中心に構成された、クラシカルな組曲のA面。打ち込み率の高いダンス・チューン中心のB面、という正反対の構造を持つ『Confessions of a Pop Group』。これまでより、かなり挑戦的なコンセプトである。
 ホワイト・ファンクに急接近した『Cost of Loving』まではどうにか着いてこれた既存ファンも、多くはさすがにここで挫折した。実際、俺もそうだったし。この後は、人気もセールスも一気に下降の一途をたどる。
 俺も含めて、大多数のファンがPaul に求めていたのは「強い確信」である。どんなジャンル・どんなサウンドであろうとも、そこには必ず彼独自のスタンスや視点があった。根拠はなくとも強い信念のもと、自信たっぷりに「これでどうだっ」と提示する潔さこそが、彼の魅力だったのだ。
 それがここでのPaul 、正直自信なさげである。そりゃ、自信に満ちあふれた奴が「独白」なんてしないよな。前ならもっと、問答無用で強気で推してたはずなのに。

 リリースされてすぐ購入したけど、何度も聴き返す気になれず、早々と売っぱらってしまった記憶がある『Confessions of a Pop Group』。ちゃんと聴くのは、およそ30年振りである。せっかくなので、極力先入観を持たずに聴いてみた。
 フラットな視点で聴いてみると、多分Paul、A面では80年代の『Pet Sounds』 をやりたかったんじゃないかな、というのが俺の印象。「海だ車だサーフィンだ」の印象しかなかった初期Beach Boysのイメージを覆す、躍動感のかけらもない老成したサウンドは、Brian Wilsonの悲痛な叫びを具現化したものだった。
 当時のPaul がBrianほど追い詰められていたのかは不明だけど、Jam時代からずっと、音楽的には順風満帆だった彼にとって、思っていたほど歓迎されなかったソウル/ファンク路線の不振は、いわば初めての挫折だった。絶対的な確信が揺らいだまま、「こんなのはどうかな?」と恐る恐る吐き出す心情吐露は、『Pet Sounds』ほどの求心力を持たなかった。

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 対してB面、不器用でゴツゴツした仕上がりだけど、現場感覚を持ってクラブ活動に勤しんだ成果があらわれて、こちらの方がずっとリアルな響きである。ボトムの弱いシンセ・ビートは80年代ダンス・サウンドの特徴ゆえ、今となっては低音の物足りなさが目立ってしまうけど、実際のクラブ・シーンにかなり接近した、メジャー発サウンドのひとつである。
 スタカンという先入観によって、逆に損してる部分の方が多いサウンドである。情報を隠して匿名でのリリースだったら、評価は違ってたんじゃないかと思われる。

 もし、B面のコンセプトのみでアルバム全体をまとめていたら、後期の評価はもう少し違ったものになっていたかもしれない。まったく別コンセプトのサウンドを強引にひとつにまとめちゃうから、どっちつかずの評価になってしまったわけで、最初っから2枚に分けるなりすれば、まだマーケットも寛大だったことだろう。Paulのソロとスタカンって棲み分けすれば、「まぁこういったのもアリなんじゃね?」という可能性もあったはず。そういった流れなら、『Modernism』のぞんざいな扱いも回避できたんじゃないかと思われる。
 ただ、A面サウンドでまとめるにも、そこにはPaul 以外の絶対的なコンポーザーの存在が必要になる。要するに、彼のそばにVan Dyke Parksはいなかった。そういうことだ。
 明確なコンセプトを立てられぬまま、単に葛藤する内面をさらけ出してしまっただけのA面は、表層的には流麗であるけれど、そこに確信はない。あるのは、ナルシシズムな迷いだけだ。
 その迷走は、ユニット消滅まで続くことになる。


Confessions of a Pop Group
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「Piano Paintings」
1. It's a Very Deep Sea
 Mickによるピアノ、奥方Dee C. Leeと共に丹念に重ねられたコーラス、そして淡々と丁寧に紡がれるPaulのヴォーカル。はるか遠くから奏でられる、波音とカモメの鳴き声。ほぼハイハットのみ参加のSteve White。ほぼメロディだけで構成されているはずなのに、きちんとリズムが立っているのは、やはりこのメンツだからこそ。
 英国人が歌う海は深く、そして空はどこまでも灰褐色で、そして低い。そう、北の海は重く深い。

2. The Story of Someone's Shoe
 60年代から活動しているフランスの老舗コーラス・グループSwingle Singersをフィーチャーした、クラシカルな味わいも深いアカペラ・チューン。出口のない虚無感と乾いたユーモア。英国人から見た『Pet Sounds』史観が如実にあらわれている。

3. Changing of the Guard
 ピアノのエコー感が増しただけで、初期スタカンっぽさ浮き出てくる。厚みのあるストリングスに合わせてか、Dee C. Leeのヴォーカルもやや抑え気味。こうして聴いてみると、リキが入った時のPaulって、ストリングスとも女性ヴォーカルともフィットしない。やはり彼はバンド・セットの方が声が映える。

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4. The Little Boy in a Castle / A Dove Flew Down From the Elephant 
 Mickのピアノ・ソロによるインタールード。同時代的に、坂本龍一タッチを狙ってるかと思われるけど、フレーズのつぎはぎで終わってしまっているのは、やはり向いてないから。逆に、ブギウギやジャズの感性は教授にはないものなので、そこは向き不向きがあるわけで。

5. The Gardener of Eden (A Three Piece Suite) 
 I) In the Beginning
 II) The Gardener of Eden
 III) Mourning the Passing of Time
 10分に渡る3部作という構成になっており、単調なストリングスの1部と3部はまぁどうでもいいとして、Dee C. Leeメインの2部が秀逸。いい意味でリズムを引っ込めたアシッドジャズといったムードで、後半のジャジーな展開はコンポーザーPaul Wellerの面目躍如。
 1部と3部をもう少し丁寧に作って、2部を5分程度にまとめた方がコンセプトもわかりやすかったんじゃないかと思うのだけど、まぁ拗らせすぎちゃったんだろうな。変に小難しいことやろうとすると、大抵は空回りしちゃうのが世の常であって。

「Confession Of A Pop-Group」
6. Life at a Top People's Health Farm
 シングル・カットされてUK最高28位にランクイン。ほぼ打ち込みで構成されたサウンドはDee C. LeeもMickの存在感もなく、ほぼPaulの独演会。レコードではちょうどB面トップ、A面の鬱屈さ地味さから一転して、威勢のいいサウンドはテンションが上がる。

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7. Why I Went Missing
 地味だ迷走していると、何かと評判の悪い後期スタカンだけど、このアルバムの中でも初期を彷彿とさせるさわやかなミディアム・バラード。うねるように絶好調なベースとDee C. Leeのソウルフルさが加わって、シャレオツ指数はかなりのアベレージ。エモーショナルかつフェイク感あふれるファンクっぽさこそが、彼らの魅力であることを思い起こさせてくれるナンバー。でも、そこにとどまり続ける人じゃなかったんだな。

8. How She Threw It All Away
 なので、「インチキ・ソウル風」な彼らを好むのなら、ツボが押されまくりなポップ・ソウル・チューン。サビがまるっきり「September」という指摘は、まぁその通りだと思う。でもいいじゃん、いい曲だし。『The Cost of Loving』も同じベクトルだけど、こっちの方がポップだし。
 シングルとしてはUK最高41位と不振だったけど、あまりに惜しい。



9. Iwasadoledadstoyboy
 ファンキーにひと綴りになってるけど、わかりやすく書けば「I Was A Dole Dads Toy Boy」。シンセ・ビートとサンプリングに負けじと、Mickのオルガン・ソロがなかなか健闘してるけど、でもただそれだけ。曲自体がほぼサビだけ、ワンフレーズでつくられているので、結局エフェクトに耳を傾けざるを得ないのだけど、そのサウンドがあまり芸がない。まぁこういったのをやりたかったんだよね、とお茶を濁そう。

10. Confessions 1, 2, & 3
 クラシカル・セットに挑戦した「The Gardener of Eden」を、今度は通常バンド・セットで再演すると、こんな感じに仕上がる。安心して聴けるアンサンブル。ビッグバンド・ジャズ的なアレンジは、ディーバDee C. Leeのポテンシャルを最大限に引き出す。やっぱ彼女って、メジャー・タッチは似合わんな。こういった憂いを感ずる楽曲でこそ映える声。でも、歓声のSEはいらなくね?それと、どこからが1で2なのか。それはちょっとヤボか。

11. Confessions of a Pop-Group
 ラストは「It Didn’t Matter」の進化形的なクールなシーケンス・ファンク。中盤のブレイクはいつもドキッとさせられるくらいカッコいいのだけど、やっぱ長いよな、これも。リミックス・ヴァージョンでもないのに9分はサイズデカすぎ。





GREATEST HITS
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80年代ホワイト・ファンクを見つめ直そう - Style Council 『Cost of Loving』

folder 1987年リリース、3枚目のオリジナル・アルバム。日本でも好セールスを記録した前作『Our Favorite Shop』から2年、第1期の総決算的なライブ・アルバム『Home & Abroad』 を挟んでのリリースになっている。UK2位でゴールド・ディスク獲得といった成績はほぼ前作並みだけど、”Shout to the Top”や”Walls Come Tumbling Down”などのわかりやすくキャッチーなシングル・ヒットが収録されていないため、印象としてはちょっと地味である。
 ちなみにUSでは最高122位と低迷しており、ブリティッシュ・インベイジョン真っ只中の80年代中期にしてはちょっと低い数字。ていうかPaul Weller、この作品、またはスタカンに限らず、全キャリアを通してアメリカ市場とのマーケットとの折り合いが悪いことで有名である。あれだけクセの強いCostelloやJoe Jacksonでさえ、ビルボード・チャートの上位に食い込んでいるのに、その無視されっぷりはどうにも謎である。
 その辺が気になったので、ジャム、スタカン、そしてソロのビルボード・チャートを調べてみたところ、まぁひどい扱いだこと。ジャム時代は『Sound Affects』が72位、スタカンでは『Cafe Bleu』の56位、それでやっと最高位である。微妙に音楽性は違うけど、ClashやらTears for Fearsやらがトップでブイブイ言わせてる中、彼らにもチャンスはあったはずなのだけど、頑固な英国気質が災いしたんだろうか。
 それにも増して、ソロ時代に至ってはデビュー以来、チャートインすらしない状況が続いている。すっかり大御所ポジションを確立した本国UKでは、今もアルバムが出ると上位に入るくらい安定しているというのに、この落差は極端過ぎる。まぁ今さら本格的なアメリカ進出しようだなんて、思ってないだろうし。

 これまでの第1期は、固定メンバーがPaulと鍵盤担当のMick Talbotのみ、ライブではサポート・メンバーを導入、レコーディング時は曲ごとにコラボを変えるフレキシブルな構成だった。多彩なジャンルを幅広く取り扱うよろず屋的な体制は、モッズ・パンクのイメージに囚われて息苦しさを感じていたジャム時代の反省から来るものだった。勝手に固定されたアーティスト・イメージをなぞる安定路線よりむしろ、それまで培ったキャリアをかなぐり捨てて新体制で臨むその潔さは、賛否両論を巻き起こした。普通に考えるなら、別プロジェクトや変名を使って異ジャンル交流を図るのが安全策なのだけど、そういった中途半端を許さないのがこの男である。
 とは言っても、多分2人でやれる事はやり尽くしたのか、それともよっぽど新メンバー2人が気に入ったのか、このアルバムからのスタカンはもう少しバンドっぽい4名編成になる。

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 1人はドラマーのSteve White。スタカンが解散して以降もPaulとは長らく行動を共にしており、よほど相性が良かったと思われる。デビュー以来、ほぼずっとPaul関連でしか名前を見なかったのだけど、近年はお互いマンネリ気味なのか、ソロ・ワークも多くなっている。とは言ってもその別バンドにはMickもおり、しかもPaulとの親交も続いているので、三者の関係は程良い距離感を保っている、といったところ。
 で、もう1人がバック・ヴォーカル兼時々メインに立つこともある女性ヴォーカルDee C. Lee。Wham! のバック・コーラスとして名が知られるようになったところをPaulがスカウトし、前作から準メンバー扱いで加入している。スタカンだけでなく、Paulの全キャリア中、1、2を争うクオリティの大名曲”Lodgers”での名演が注目を浴びることになり、正式加入に至った次第。
 そのソウル・ディーヴァの降臨にPaulはたちまち虜になる。あまりに気に入ってしまったため、彼女のために自らソロ・デビューの段取りに奔走すると共に、なし崩しのようにイチャイチャして入籍までしちゃったくらいの惚れ込みよう。まぁ解散後の音楽性の変化もあって、10年後には離婚してしまうのだけど。

 英国ロック・シーンにおいて不動の地位を確立したジャムに自ら終止符を打ったPaul、その後スタカンを結成した理由というのは、どれだけ多様な音楽性を展開しようとも、「The Jam」のクレジットでリリースするアイテムは、すべてモッズ・サウンドにカテゴライズされてしまうことにストレスを感じていたためである。
 Policeもそうだけど、ソウルやファンク、ボサノヴァまで幅広いジャンルをカバーしてゆくのに、トリオ編成ではどうしても無理が生じてくる。第一、メイン・ソングライターのPaulがいくら頑張ったとしても、他の2人はオーソドックスなロック以外への興味が薄いのだ。Policeと違ってリズム隊の2人とも、コンセプトに応じた柔軟なプレイもできそうにないし。
 そういったしがらみや制約の中で新たなサウンドを追求してゆくことに限界を感じ、もっと自由なメンバー構成で、バラエティに富んだ音楽をやってゆくために始めたのが、Style Councilというプロジェクトだった。
 デビュー・アルバム『Cafe Bleu』ではTracy thornがまるまる一曲ヴォーカルを取っていたり、ジャム時代には考えられなかったピアノ・バラードなど、ポスト・パンクの今後、イコール従来のロック・サウンド以外の方向性を示した楽曲が多く収録されていた。どの曲もコンセプトがバラバラでトーンが統一されていないため、一聴するととっ散らかった印象が強いけど、もともと初期はシングル中心のリリース戦略を強く打ち出していたため、ある意味狙い通りである。
 2枚目の『Our Favorite Shop』も基本は同様のコンセプト、それぞれ方向性の違うサウンドを持つシングルを集めたスタイルで構成されている。ここではほぼオリメン2名・新メン2名が中心となって音作りがされており、事実上バンド形態に近いものになっているけど、サウンドは当初のコンセプト通り、バラエティを持たせている。
 彼らが日本で知られるようになったのがこの頃、カフェ・バー文化から派生したシャレオツな音楽がもてはやされた時代である。ていうかPaul Wellerという存在自体、一般ロック・ファンにも認知されるようになったのが、この頃である。日本ではジャムの知名度なんてたかが知れていたし。

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 で、この3枚目、実はリリース当時から、そして今をもって評判は芳しくない。数々のシングル・ヒットが収録された前2作と比べて、キャッチーでわかりやすい曲が少なく、正直言って地味である。これまでのスタカン・サウンドが、色とりどりの多ジャンルなバリエーションを揃えていたのに対し、このアルバムはハードな質感のホワイト・ソウル一色で統一されている。従来のスタカン・ファン、そしてPaulの変節を受け入れられなかったかつてのジャム・ファン、どちらにもコミットしないサウンドである。
 そういった視点で見ると、いまだまともな再評価がされていない、かわいそうなアルバムでもある。

 後期ジャムでもその傾向はあったのだけど、少年期のPaulにとってのアイドルだったCurtis Mayfieldを始めとする、ソウル/ファンク系のアーティストへの溢れんばかりのオマージュを込めた楽曲が多くを占めている。それらを単なるオールド・スタイルで再現するのではなく、当時ダンス・フロアを席捲していたハウス・ビート、特にJam & Lewisからインスパイアされたサウンドが強く打ち出されているのが、大きな特徴。
 これまではトップ40ヒットを軸としたユニット運営だったのが、ここではダンス・シーンへ大きく舵を切っているため、まだ少し残っていたロック的要素がここでは完全に切り捨てられている。こういった潔さはジャム時代から変化がない。思い切ったことを平気でやる人なのだ。
 リリース当時はロック中心のリスナーだった俺、ほんの2、3回流して聴いたくらいで長らく忘れていたけど、あれから四半世紀が流れ音楽的嗜好も変化、レアグルーヴを通過した耳で聴くと、オイシイ所だらけのアルバムである。いま聴くといろいろと気づかされる部分も多い。あんまり聴いてなかった分だけ、新鮮な感覚で聴くことができるのは幸せだ。

 なので俺的にはこのアルバム、80年代のブルー・アイド・ソウル/ホワイト・ファンクの中ではマスターピース的な扱いになっている。
 年を経て、経験を積むことでしか見えてこないものだってある。前評判や世評だけに捉われず、フラットな耳で聴けば、面白い音楽はまだまだいっぱいある。
 あんまり頑なになって、同じ音だけ聴いてても損だよ。
 俺も気づくのは遅かったけど。


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1. It Didn't Matter
 これまでの路線とは色合いの違う、クールなホワイト・ファンクでスタート。一応、日本ではマクセル・カセットテープのCMソングとして起用されて、そこそこ認知度があった。モノクロ・タッチの粗い画質のPV風映像はシャレオツ感満載だった。
 いまになって聴いてみるとサウンドはエレクトロ・ファンク、肝心のPaulのヴォーカルは変わらぬロック・テイストのため、このミスマッチ感が80年代を想起させる。普通にカッコいいのにね。
 シングル・カットされてUK最高9位。ちょっと地味過ぎたか。



2. Right to Go
 モデル・チェンジはさらに続き、ここではラップ・パートの導入。ここではほとんどPaulもLeeも出番は少なく、メインを張るのはオールド・スクール系のthe Dynamic Three。正直存在すら知らなかった人たち。Paul思うところの、いわゆるロック畑の人がイメージするラップ像を忠実に再現しているのが彼ら。これなら無理やりPaul自身でで無理やり叩きつけるようなヴォーカルをとっても面白かったんじゃないかと思うけど、そこを狙ったんじゃないんだろうな。
 「よりよい未来のためだ。権利を行使しろ。さあ、投票だ」とアジテートする内容は、直接的なラップという手段が必要だった。

3. Heavens Above
 メロウなサックスの調べが印象的な、このアルバムのハイライト・チューン。ファンク色を抑えた軽快なフィリー・ソウルは、あ、こんな曲も書けるんだ、と再発見してしまった。と言っても、気づいたのは20年くらい経ってからだけど。
 同じハスキーな声質のLeeとのデュエットは相性バツグン、演奏もまた、甘いソウルだけに流れずに、ギターの音はロックの響きになっており、ドラムもいい感じに走っている。後半アウトロの長くカオスなコーダが気持ちよくて、ここだけずっと聴いていたいくらい。ある意味、ここが最終形だったんだろうな。



4. Fairy Tales
 サウンドはダンサブルなファンクなのだけど、メロディやコード進行が結構動いてフレキシブルなので、楽曲自体は前作『Our Favorite Shop』期に通ずるものを感じる。ある意味ファンクとは力技なので、こういった技巧的な曲調とはちょっとマッチしづらい。ミスマッチ感を楽しむという考え方もある。
 と思ってたら、この曲だけなぜかCurtis Mayfieldがプロデュース兼ミキサーを務めている。なんで?

5. Angel
 このアルバム唯一のカバーで、1983年Anita Bakerのデビュー・アルバムに収録、US最高5位にチャートインした出世作。オリジナルはジャジーなばらーどだったのを、ここではサウンドのボトムを太く、Leeが主役だけど、Paulも時々デュエットに参加している。しっかし合わねぇなPaulの声、こういったシットリ系のナンバーだと。
 シングルで切ってもよさそうなものだったのに、1.のチャート・アクションがイマイチだったせいもあるのか、そのままに終わった。もったいない。



6. Walking the Night
 これも1、2枚目のアルバムのテイストに近いジャジー・ナンバーなのだけど、やっぱりリズムのボトムが太くなった分だけ、シャレオツ感よりはライブ感覚を重視した音作りになっていることが窺える。ホーン・アンサンブルもそれ風だしね。
 なので、ソウル/ファンクっぽさを追求したこのアルバムの中ではちょっと浮いている。俺的にもファンキーさがない分だけ思い入れは薄い。ここではPaulがほぼソロで歌ってるけど、この曲こそLeeも入れればぴったりだったと思うのだけど。でもそれじゃ出すぎか。

7. Waiting
 イントロがほとんど”Long Hot Summer”なミディアム・バラードは、一応2枚目のシングル・カットなのだけど、UK52位と大幅に順位を落としてしまったため、印象が薄い。あまりに露骨に”Long Hot Summer”なため、別にこれじゃなくてもいいんじゃね?感が強い。自家中毒の始まりだったのかもしれない。

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8. The Cost of Loving
 タイトル・ナンバーは、Mickのオルガン・プレイが冴えるクールなファンク・ロック・チューン。Paulよりはむしろリズム隊中心で作られたようなナンバーで、この時期のバンドの絶好調さが見えてくる。シャッフルを多用したサビ、一聴してMickとわかる決め異性の強いオルガンの音色。

9. A Woman's Song
 ラストはLeeによるドライな響きのソウル・バラード。シンプルなバッキングに乗せて、Leeの抑えたヴォーカル、そしてそれに応えるように歌を邪魔せず、それでいて効果的なフレーズを繋ぐMickの鍵盤プレイ。派手なハモンドだけじゃない、メロウな一面を見せている。




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北海道の中途半端な田舎に住む、そろそろアラフィフ男。ほぼ週1のペースで音楽ブログ更新中。節操ない聴き方と思われてるけど、自分の中では一貫してるつもり。 最近は蔵書の整理がてら、古い本を再読中。ジョン・アーヴィングから始まって、フィッツジェラルドやゾラ、モームなど、いわゆる古典の復習中。いつになったら終わることやら。新刊読めねぇや。
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