好きなアルバムを自分勝手にダラダラ語る、そんなユルいコンセプトのブログです。

Style Council

パンク世代のペット・サウンズ - Style Council 『Confessions of a Pop Group』

folder Style Councilは実質5年強という短い活動期間ながら、商業的にもクリエイティブ的にも大きな実績を残している。容易に全貌がつかめぬほど大量のリミックス12インチ・シングルをマーケットに放出、いくつかの名曲はヒットチャートでも優秀なセールスを記録した。反サッチャリズムで盛り上がっていた80年代UKロック・シーンの空気を反映して、痛烈な社会批判や労働問題を取り上げた歌詞は、そのチャラいサウンドとのギャップによって、主に若者層の支持を集めた。
 Jam時代より過激かつ直接的になったメッセージやイデオロギーの羅列は、新規ファンの取り込みに大きく貢献したけれど、表層的な変化を嫌い、本質から目を逸らすかつてのファンは、年を追うごとに離れていった。保守的なんだよな、ガチのパンクスって。

 とは言っても、解散から30年経った現在、彼らの実績がクローズアップされるのは、ほぼ最初の2枚『Cafe Bleu』か『Our Favorite Shop』までであり、その後の活動については触れられることも少ない。
 ヒットメイカーとアジテーターとのダブル・スタンダードを実現した前期と比べ、急速にクラブ・シーンへ傾倒したPall Wellerが、黒人音楽へのコンプレックスを露わにした『The Cost of Loving』以降は迷走、それに連れてセールスもガタ落ちになり、自然消滅となったのが、後期のStyle Council である。ざっくりまとめ過ぎたかな。
 なにしろ最後のアルバム『Modernism』なんて、あまりの変節さゆえ、レコード会社にリリースを拒否されたくらいだもの。音楽性に節操がなかったユニットとはいえ、さすがにディープ・ハウスはイメージとかけ離れ過ぎ。営業かける方も困っちゃうよな。

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 初期パンク〜モッズ・サウンドでスタートしたJamは、Paulのクリエイティブ面での覚醒によって、次第にソウル/ファンクのエッセンスが激増、従来の3ピース・バンドでは表現するのが難しくなったため、人気絶頂の中、解散の途を選ぶ。同じ3人編成でも、Policeのようにならなかったのは、プレイヤーとしてのポテンシャルの違いが大きかったから。あっちはだって、パンクの威をかぶったベテラン揃いだもの。
 そんな経緯を経てPaulが立ち上げたのが、Style Councilである。この時点で保守モッズ・ファンの多くは離れていったけど、Paul的にはそれも織り込み済みだった。ここでPaulは、既存のパンク/モッズからキッパリ足を洗い、片っぱしから未踏のジャンルを吸収して、「何でもアリ」の新たな音楽性を開拓していったのだった。そのためには、夜のクラブ活動にも真剣にならざるを得ないわけで。
 根は生真面目なPaul、そっち方面を突き詰めるにも全力である。

 「スタイル評議会」という名前が象徴するように、あらゆる音楽スタイルを吸収・咀嚼し、メジャー・シーンでも受け入れられる商品に加工して幅広く普及させることが、初期スタカンのコンセプトだった。
 痛烈な政治・社会批判や怒りを、性急なビートとラウドなガレージ・サウンドでもって直截的に表現したJam時代のメソッドと違って、80年代の浮ついたムードの上澄みをうまくすくい取り、ボサノヴァやネオアコといった、パッションとは正反対のサウンドでデコレートしていた。「現地調査」と称した夜のクラブ活動によって、時代のトレンドを先読みしたそのサウンドは、Jam時代よりも耳障りよくキャッチーなナンバーが多かったため、彼らに大きな成功をもたらした。
 ただ、そんなソフト・サウンドとは裏腹に、レッド・ウェッジ支援やサッチャー批判など、歌う内容はJamよりはるかに過激で直接的だったため、時に賛否両論を巻き起こすこともある、何かとお騒がせユニットであったことも確か。なのに、パンクの連中って上っ面だけで判断しちゃうんだよな。

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 結果的に「シャレオツな音楽」の代名詞となってしまったスタカンだったけど、何も自らトレンディ路線を推し進めていたわけではない。前述の夜のクラブ活動に影響を受けて、当時はまだマイナーだった初期ハウスやヒップホップ、レアグルーヴなどの雑多な音楽を好んで聴いていたPaulが、「自分たちでもできるんじゃね?」と思いつきで始めたのがきっかけである。それがたまたま、クラブやカフェバー文化とシンクロしただけで。
 Jam末期〜スタカン結成に至る80年代中期というのは、既存のロックを打ち破る存在だったはずのパンクが疲弊、次第に様式化しつつあった頃である。パンクやニューウェイヴの中でも「型」が定まりつつあり、真にプログレッシブなアーティストにとって、ロックというジャンルは窮屈になっていた。
 そんな状況に置かれていたPaulが選んだのが、ロックからの脱却であり、言ってしまえば「ロック以外なら何でもいい」といった覚悟でもって、同好の士であるMick Talbotに声をかけたのだった。

 ある意味、「売れること」を目的としたユニットだったため、「売れ線に走った」という批判は当たらない。だって、そこ狙ってやってるんだもの。そういったポピュラリティの獲得と並行して、より真摯な主張を楽曲に織り込むことによって、彼らはクールな存在であり続けた。
 映像に残された彼らのライブを見ればわかるはずだけど、ライブ・セットやコスチュームはあか抜けて洗練されたものだけど、彼らのパフォーマンスは原初パンク・スタイルと何ら大差ない。汗まみれで客席にツバを飛ばし、全力でがなり立てるPaulの姿から、優雅さを感じることはできない。そこにいるのは、感情のおもむくまま、激情とパッションのみで突っ走る、単なるひとりのミュージシャンだ。

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 『ポップ・グループの告白』という自虐的なタイトルを掲げ、静謐なピアノ・ソロを中心に構成された、クラシカルな組曲のA面。打ち込み率の高いダンス・チューン中心のB面、という正反対の構造を持つ『Confessions of a Pop Group』。これまでより、かなり挑戦的なコンセプトである。
 ホワイト・ファンクに急接近した『Cost of Loving』まではどうにか着いてこれた既存ファンも、多くはさすがにここで挫折した。実際、俺もそうだったし。この後は、人気もセールスも一気に下降の一途をたどる。
 俺も含めて、大多数のファンがPaul に求めていたのは「強い確信」である。どんなジャンル・どんなサウンドであろうとも、そこには必ず彼独自のスタンスや視点があった。根拠はなくとも強い信念のもと、自信たっぷりに「これでどうだっ」と提示する潔さこそが、彼の魅力だったのだ。
 それがここでのPaul 、正直自信なさげである。そりゃ、自信に満ちあふれた奴が「独白」なんてしないよな。前ならもっと、問答無用で強気で推してたはずなのに。

 リリースされてすぐ購入したけど、何度も聴き返す気になれず、早々と売っぱらってしまった記憶がある『Confessions of a Pop Group』。ちゃんと聴くのは、およそ30年振りである。せっかくなので、極力先入観を持たずに聴いてみた。
 フラットな視点で聴いてみると、多分Paul、A面では80年代の『Pet Sounds』 をやりたかったんじゃないかな、というのが俺の印象。「海だ車だサーフィンだ」の印象しかなかった初期Beach Boysのイメージを覆す、躍動感のかけらもない老成したサウンドは、Brian Wilsonの悲痛な叫びを具現化したものだった。
 当時のPaul がBrianほど追い詰められていたのかは不明だけど、Jam時代からずっと、音楽的には順風満帆だった彼にとって、思っていたほど歓迎されなかったソウル/ファンク路線の不振は、いわば初めての挫折だった。絶対的な確信が揺らいだまま、「こんなのはどうかな?」と恐る恐る吐き出す心情吐露は、『Pet Sounds』ほどの求心力を持たなかった。

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 対してB面、不器用でゴツゴツした仕上がりだけど、現場感覚を持ってクラブ活動に勤しんだ成果があらわれて、こちらの方がずっとリアルな響きである。ボトムの弱いシンセ・ビートは80年代ダンス・サウンドの特徴ゆえ、今となっては低音の物足りなさが目立ってしまうけど、実際のクラブ・シーンにかなり接近した、メジャー発サウンドのひとつである。
 スタカンという先入観によって、逆に損してる部分の方が多いサウンドである。情報を隠して匿名でのリリースだったら、評価は違ってたんじゃないかと思われる。

 もし、B面のコンセプトのみでアルバム全体をまとめていたら、後期の評価はもう少し違ったものになっていたかもしれない。まったく別コンセプトのサウンドを強引にひとつにまとめちゃうから、どっちつかずの評価になってしまったわけで、最初っから2枚に分けるなりすれば、まだマーケットも寛大だったことだろう。Paulのソロとスタカンって棲み分けすれば、「まぁこういったのもアリなんじゃね?」という可能性もあったはず。そういった流れなら、『Modernism』のぞんざいな扱いも回避できたんじゃないかと思われる。
 ただ、A面サウンドでまとめるにも、そこにはPaul 以外の絶対的なコンポーザーの存在が必要になる。要するに、彼のそばにVan Dyke Parksはいなかった。そういうことだ。
 明確なコンセプトを立てられぬまま、単に葛藤する内面をさらけ出してしまっただけのA面は、表層的には流麗であるけれど、そこに確信はない。あるのは、ナルシシズムな迷いだけだ。
 その迷走は、ユニット消滅まで続くことになる。


Confessions of a Pop Group
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Style Council
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「Piano Paintings」
1. It's a Very Deep Sea
 Mickによるピアノ、奥方Dee C. Leeと共に丹念に重ねられたコーラス、そして淡々と丁寧に紡がれるPaulのヴォーカル。はるか遠くから奏でられる、波音とカモメの鳴き声。ほぼハイハットのみ参加のSteve White。ほぼメロディだけで構成されているはずなのに、きちんとリズムが立っているのは、やはりこのメンツだからこそ。
 英国人が歌う海は深く、そして空はどこまでも灰褐色で、そして低い。そう、北の海は重く深い。

2. The Story of Someone's Shoe
 60年代から活動しているフランスの老舗コーラス・グループSwingle Singersをフィーチャーした、クラシカルな味わいも深いアカペラ・チューン。出口のない虚無感と乾いたユーモア。英国人から見た『Pet Sounds』史観が如実にあらわれている。

3. Changing of the Guard
 ピアノのエコー感が増しただけで、初期スタカンっぽさ浮き出てくる。厚みのあるストリングスに合わせてか、Dee C. Leeのヴォーカルもやや抑え気味。こうして聴いてみると、リキが入った時のPaulって、ストリングスとも女性ヴォーカルともフィットしない。やはり彼はバンド・セットの方が声が映える。

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4. The Little Boy in a Castle / A Dove Flew Down From the Elephant 
 Mickのピアノ・ソロによるインタールード。同時代的に、坂本龍一タッチを狙ってるかと思われるけど、フレーズのつぎはぎで終わってしまっているのは、やはり向いてないから。逆に、ブギウギやジャズの感性は教授にはないものなので、そこは向き不向きがあるわけで。

5. The Gardener of Eden (A Three Piece Suite) 
 I) In the Beginning
 II) The Gardener of Eden
 III) Mourning the Passing of Time
 10分に渡る3部作という構成になっており、単調なストリングスの1部と3部はまぁどうでもいいとして、Dee C. Leeメインの2部が秀逸。いい意味でリズムを引っ込めたアシッドジャズといったムードで、後半のジャジーな展開はコンポーザーPaul Wellerの面目躍如。
 1部と3部をもう少し丁寧に作って、2部を5分程度にまとめた方がコンセプトもわかりやすかったんじゃないかと思うのだけど、まぁ拗らせすぎちゃったんだろうな。変に小難しいことやろうとすると、大抵は空回りしちゃうのが世の常であって。

「Confession Of A Pop-Group」
6. Life at a Top People's Health Farm
 シングル・カットされてUK最高28位にランクイン。ほぼ打ち込みで構成されたサウンドはDee C. LeeもMickの存在感もなく、ほぼPaulの独演会。レコードではちょうどB面トップ、A面の鬱屈さ地味さから一転して、威勢のいいサウンドはテンションが上がる。

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7. Why I Went Missing
 地味だ迷走していると、何かと評判の悪い後期スタカンだけど、このアルバムの中でも初期を彷彿とさせるさわやかなミディアム・バラード。うねるように絶好調なベースとDee C. Leeのソウルフルさが加わって、シャレオツ指数はかなりのアベレージ。エモーショナルかつフェイク感あふれるファンクっぽさこそが、彼らの魅力であることを思い起こさせてくれるナンバー。でも、そこにとどまり続ける人じゃなかったんだな。

8. How She Threw It All Away
 なので、「インチキ・ソウル風」な彼らを好むのなら、ツボが押されまくりなポップ・ソウル・チューン。サビがまるっきり「September」という指摘は、まぁその通りだと思う。でもいいじゃん、いい曲だし。『The Cost of Loving』も同じベクトルだけど、こっちの方がポップだし。
 シングルとしてはUK最高41位と不振だったけど、あまりに惜しい。



9. Iwasadoledadstoyboy
 ファンキーにひと綴りになってるけど、わかりやすく書けば「I Was A Dole Dads Toy Boy」。シンセ・ビートとサンプリングに負けじと、Mickのオルガン・ソロがなかなか健闘してるけど、でもただそれだけ。曲自体がほぼサビだけ、ワンフレーズでつくられているので、結局エフェクトに耳を傾けざるを得ないのだけど、そのサウンドがあまり芸がない。まぁこういったのをやりたかったんだよね、とお茶を濁そう。

10. Confessions 1, 2, & 3
 クラシカル・セットに挑戦した「The Gardener of Eden」を、今度は通常バンド・セットで再演すると、こんな感じに仕上がる。安心して聴けるアンサンブル。ビッグバンド・ジャズ的なアレンジは、ディーバDee C. Leeのポテンシャルを最大限に引き出す。やっぱ彼女って、メジャー・タッチは似合わんな。こういった憂いを感ずる楽曲でこそ映える声。でも、歓声のSEはいらなくね?それと、どこからが1で2なのか。それはちょっとヤボか。

11. Confessions of a Pop-Group
 ラストは「It Didn’t Matter」の進化形的なクールなシーケンス・ファンク。中盤のブレイクはいつもドキッとさせられるくらいカッコいいのだけど、やっぱ長いよな、これも。リミックス・ヴァージョンでもないのに9分はサイズデカすぎ。





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80年代ホワイト・ファンクを見つめ直そう - Style Council 『Cost of Loving』

folder 1987年リリース、3枚目のオリジナル・アルバム。日本でも好セールスを記録した前作『Our Favorite Shop』から2年、第1期の総決算的なライブ・アルバム『Home & Abroad』 を挟んでのリリースになっている。UK2位でゴールド・ディスク獲得といった成績はほぼ前作並みだけど、”Shout to the Top”や”Walls Come Tumbling Down”などのわかりやすくキャッチーなシングル・ヒットが収録されていないため、印象としてはちょっと地味である。
 ちなみにUSでは最高122位と低迷しており、ブリティッシュ・インベイジョン真っ只中の80年代中期にしてはちょっと低い数字。ていうかPaul Weller、この作品、またはスタカンに限らず、全キャリアを通してアメリカ市場とのマーケットとの折り合いが悪いことで有名である。あれだけクセの強いCostelloやJoe Jacksonでさえ、ビルボード・チャートの上位に食い込んでいるのに、その無視されっぷりはどうにも謎である。
 その辺が気になったので、ジャム、スタカン、そしてソロのビルボード・チャートを調べてみたところ、まぁひどい扱いだこと。ジャム時代は『Sound Affects』が72位、スタカンでは『Cafe Bleu』の56位、それでやっと最高位である。微妙に音楽性は違うけど、ClashやらTears for Fearsやらがトップでブイブイ言わせてる中、彼らにもチャンスはあったはずなのだけど、頑固な英国気質が災いしたんだろうか。
 それにも増して、ソロ時代に至ってはデビュー以来、チャートインすらしない状況が続いている。すっかり大御所ポジションを確立した本国UKでは、今もアルバムが出ると上位に入るくらい安定しているというのに、この落差は極端過ぎる。まぁ今さら本格的なアメリカ進出しようだなんて、思ってないだろうし。

 これまでの第1期は、固定メンバーがPaulと鍵盤担当のMick Talbotのみ、ライブではサポート・メンバーを導入、レコーディング時は曲ごとにコラボを変えるフレキシブルな構成だった。多彩なジャンルを幅広く取り扱うよろず屋的な体制は、モッズ・パンクのイメージに囚われて息苦しさを感じていたジャム時代の反省から来るものだった。勝手に固定されたアーティスト・イメージをなぞる安定路線よりむしろ、それまで培ったキャリアをかなぐり捨てて新体制で臨むその潔さは、賛否両論を巻き起こした。普通に考えるなら、別プロジェクトや変名を使って異ジャンル交流を図るのが安全策なのだけど、そういった中途半端を許さないのがこの男である。
 とは言っても、多分2人でやれる事はやり尽くしたのか、それともよっぽど新メンバー2人が気に入ったのか、このアルバムからのスタカンはもう少しバンドっぽい4名編成になる。

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 1人はドラマーのSteve White。スタカンが解散して以降もPaulとは長らく行動を共にしており、よほど相性が良かったと思われる。デビュー以来、ほぼずっとPaul関連でしか名前を見なかったのだけど、近年はお互いマンネリ気味なのか、ソロ・ワークも多くなっている。とは言ってもその別バンドにはMickもおり、しかもPaulとの親交も続いているので、三者の関係は程良い距離感を保っている、といったところ。
 で、もう1人がバック・ヴォーカル兼時々メインに立つこともある女性ヴォーカルDee C. Lee。Wham! のバック・コーラスとして名が知られるようになったところをPaulがスカウトし、前作から準メンバー扱いで加入している。スタカンだけでなく、Paulの全キャリア中、1、2を争うクオリティの大名曲”Lodgers”での名演が注目を浴びることになり、正式加入に至った次第。
 そのソウル・ディーヴァの降臨にPaulはたちまち虜になる。あまりに気に入ってしまったため、彼女のために自らソロ・デビューの段取りに奔走すると共に、なし崩しのようにイチャイチャして入籍までしちゃったくらいの惚れ込みよう。まぁ解散後の音楽性の変化もあって、10年後には離婚してしまうのだけど。

 英国ロック・シーンにおいて不動の地位を確立したジャムに自ら終止符を打ったPaul、その後スタカンを結成した理由というのは、どれだけ多様な音楽性を展開しようとも、「The Jam」のクレジットでリリースするアイテムは、すべてモッズ・サウンドにカテゴライズされてしまうことにストレスを感じていたためである。
 Policeもそうだけど、ソウルやファンク、ボサノヴァまで幅広いジャンルをカバーしてゆくのに、トリオ編成ではどうしても無理が生じてくる。第一、メイン・ソングライターのPaulがいくら頑張ったとしても、他の2人はオーソドックスなロック以外への興味が薄いのだ。Policeと違ってリズム隊の2人とも、コンセプトに応じた柔軟なプレイもできそうにないし。
 そういったしがらみや制約の中で新たなサウンドを追求してゆくことに限界を感じ、もっと自由なメンバー構成で、バラエティに富んだ音楽をやってゆくために始めたのが、Style Councilというプロジェクトだった。
 デビュー・アルバム『Cafe Bleu』ではTracy thornがまるまる一曲ヴォーカルを取っていたり、ジャム時代には考えられなかったピアノ・バラードなど、ポスト・パンクの今後、イコール従来のロック・サウンド以外の方向性を示した楽曲が多く収録されていた。どの曲もコンセプトがバラバラでトーンが統一されていないため、一聴するととっ散らかった印象が強いけど、もともと初期はシングル中心のリリース戦略を強く打ち出していたため、ある意味狙い通りである。
 2枚目の『Our Favorite Shop』も基本は同様のコンセプト、それぞれ方向性の違うサウンドを持つシングルを集めたスタイルで構成されている。ここではほぼオリメン2名・新メン2名が中心となって音作りがされており、事実上バンド形態に近いものになっているけど、サウンドは当初のコンセプト通り、バラエティを持たせている。
 彼らが日本で知られるようになったのがこの頃、カフェ・バー文化から派生したシャレオツな音楽がもてはやされた時代である。ていうかPaul Wellerという存在自体、一般ロック・ファンにも認知されるようになったのが、この頃である。日本ではジャムの知名度なんてたかが知れていたし。

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 で、この3枚目、実はリリース当時から、そして今をもって評判は芳しくない。数々のシングル・ヒットが収録された前2作と比べて、キャッチーでわかりやすい曲が少なく、正直言って地味である。これまでのスタカン・サウンドが、色とりどりの多ジャンルなバリエーションを揃えていたのに対し、このアルバムはハードな質感のホワイト・ソウル一色で統一されている。従来のスタカン・ファン、そしてPaulの変節を受け入れられなかったかつてのジャム・ファン、どちらにもコミットしないサウンドである。
 そういった視点で見ると、いまだまともな再評価がされていない、かわいそうなアルバムでもある。

 後期ジャムでもその傾向はあったのだけど、少年期のPaulにとってのアイドルだったCurtis Mayfieldを始めとする、ソウル/ファンク系のアーティストへの溢れんばかりのオマージュを込めた楽曲が多くを占めている。それらを単なるオールド・スタイルで再現するのではなく、当時ダンス・フロアを席捲していたハウス・ビート、特にJam & Lewisからインスパイアされたサウンドが強く打ち出されているのが、大きな特徴。
 これまではトップ40ヒットを軸としたユニット運営だったのが、ここではダンス・シーンへ大きく舵を切っているため、まだ少し残っていたロック的要素がここでは完全に切り捨てられている。こういった潔さはジャム時代から変化がない。思い切ったことを平気でやる人なのだ。
 リリース当時はロック中心のリスナーだった俺、ほんの2、3回流して聴いたくらいで長らく忘れていたけど、あれから四半世紀が流れ音楽的嗜好も変化、レアグルーヴを通過した耳で聴くと、オイシイ所だらけのアルバムである。いま聴くといろいろと気づかされる部分も多い。あんまり聴いてなかった分だけ、新鮮な感覚で聴くことができるのは幸せだ。

 なので俺的にはこのアルバム、80年代のブルー・アイド・ソウル/ホワイト・ファンクの中ではマスターピース的な扱いになっている。
 年を経て、経験を積むことでしか見えてこないものだってある。前評判や世評だけに捉われず、フラットな耳で聴けば、面白い音楽はまだまだいっぱいある。
 あんまり頑なになって、同じ音だけ聴いてても損だよ。
 俺も気づくのは遅かったけど。


The Cost of Loving
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1. It Didn't Matter
 これまでの路線とは色合いの違う、クールなホワイト・ファンクでスタート。一応、日本ではマクセル・カセットテープのCMソングとして起用されて、そこそこ認知度があった。モノクロ・タッチの粗い画質のPV風映像はシャレオツ感満載だった。
 いまになって聴いてみるとサウンドはエレクトロ・ファンク、肝心のPaulのヴォーカルは変わらぬロック・テイストのため、このミスマッチ感が80年代を想起させる。普通にカッコいいのにね。
 シングル・カットされてUK最高9位。ちょっと地味過ぎたか。



2. Right to Go
 モデル・チェンジはさらに続き、ここではラップ・パートの導入。ここではほとんどPaulもLeeも出番は少なく、メインを張るのはオールド・スクール系のthe Dynamic Three。正直存在すら知らなかった人たち。Paul思うところの、いわゆるロック畑の人がイメージするラップ像を忠実に再現しているのが彼ら。これなら無理やりPaul自身でで無理やり叩きつけるようなヴォーカルをとっても面白かったんじゃないかと思うけど、そこを狙ったんじゃないんだろうな。
 「よりよい未来のためだ。権利を行使しろ。さあ、投票だ」とアジテートする内容は、直接的なラップという手段が必要だった。

3. Heavens Above
 メロウなサックスの調べが印象的な、このアルバムのハイライト・チューン。ファンク色を抑えた軽快なフィリー・ソウルは、あ、こんな曲も書けるんだ、と再発見してしまった。と言っても、気づいたのは20年くらい経ってからだけど。
 同じハスキーな声質のLeeとのデュエットは相性バツグン、演奏もまた、甘いソウルだけに流れずに、ギターの音はロックの響きになっており、ドラムもいい感じに走っている。後半アウトロの長くカオスなコーダが気持ちよくて、ここだけずっと聴いていたいくらい。ある意味、ここが最終形だったんだろうな。



4. Fairy Tales
 サウンドはダンサブルなファンクなのだけど、メロディやコード進行が結構動いてフレキシブルなので、楽曲自体は前作『Our Favorite Shop』期に通ずるものを感じる。ある意味ファンクとは力技なので、こういった技巧的な曲調とはちょっとマッチしづらい。ミスマッチ感を楽しむという考え方もある。
 と思ってたら、この曲だけなぜかCurtis Mayfieldがプロデュース兼ミキサーを務めている。なんで?

5. Angel
 このアルバム唯一のカバーで、1983年Anita Bakerのデビュー・アルバムに収録、US最高5位にチャートインした出世作。オリジナルはジャジーなばらーどだったのを、ここではサウンドのボトムを太く、Leeが主役だけど、Paulも時々デュエットに参加している。しっかし合わねぇなPaulの声、こういったシットリ系のナンバーだと。
 シングルで切ってもよさそうなものだったのに、1.のチャート・アクションがイマイチだったせいもあるのか、そのままに終わった。もったいない。



6. Walking the Night
 これも1、2枚目のアルバムのテイストに近いジャジー・ナンバーなのだけど、やっぱりリズムのボトムが太くなった分だけ、シャレオツ感よりはライブ感覚を重視した音作りになっていることが窺える。ホーン・アンサンブルもそれ風だしね。
 なので、ソウル/ファンクっぽさを追求したこのアルバムの中ではちょっと浮いている。俺的にもファンキーさがない分だけ思い入れは薄い。ここではPaulがほぼソロで歌ってるけど、この曲こそLeeも入れればぴったりだったと思うのだけど。でもそれじゃ出すぎか。

7. Waiting
 イントロがほとんど”Long Hot Summer”なミディアム・バラードは、一応2枚目のシングル・カットなのだけど、UK52位と大幅に順位を落としてしまったため、印象が薄い。あまりに露骨に”Long Hot Summer”なため、別にこれじゃなくてもいいんじゃね?感が強い。自家中毒の始まりだったのかもしれない。

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8. The Cost of Loving
 タイトル・ナンバーは、Mickのオルガン・プレイが冴えるクールなファンク・ロック・チューン。Paulよりはむしろリズム隊中心で作られたようなナンバーで、この時期のバンドの絶好調さが見えてくる。シャッフルを多用したサビ、一聴してMickとわかる決め異性の強いオルガンの音色。

9. A Woman's Song
 ラストはLeeによるドライな響きのソウル・バラード。シンプルなバッキングに乗せて、Leeの抑えたヴォーカル、そしてそれに応えるように歌を邪魔せず、それでいて効果的なフレーズを繋ぐMickの鍵盤プレイ。派手なハモンドだけじゃない、メロウな一面を見せている。




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80年代ロキノンでは正義の象徴だった - Style Council 『Cafe Bleu』

folder ガンコ親父英国代表であるPaul Weller、思い立ったら後先考えず突っ走るその性格は、デビューの頃から終始一貫している。JAM→Style Council→ソロ、どのキャリアにおいても大きな成功を収めたにもかかわらず、あまりそういったことに関心はないらしく、次のキャリアをスタートさせるのに躊躇するのを見たことがない。一旦活動に区切りをつけ、新たな形態で再スタートを切る時も、ほんと潔く行なっている。それまでにさんざん試行錯誤などして確立した音楽スタイルにもかかわらず、いとも簡単にリセットしてしまうのは、なかなかできることではない。
 特にJAM、ほんと人気絶頂の時に解散を宣言するなど、よほどのポジティヴ・シンキングか独裁者でしかありえない。まぁこの時もそれほど大事に考えていたわけでもなく、ただ単に純粋に新しい音楽がやりたかった、という極めてモッズ・スタイルに則っての行動である。

 そういったわけもあって、常に前向きの人であるがゆえ、過去のヒット曲は頑なにプレイしなかった人だったのだけど、ここ数年はさすがに丸くなったのか、ベスト盤やライブにおいても頻繁に過去の曲を取り上げることが多い。
 21世紀に入ってからのWellerの音楽的傾向としては、「進化」というよりは「深化」、斬新な未知なるサウンドの追求ではなく、これまで培ってきたクオリティの磨き上げの方に興味が向かっている。キャリアの長いミュージシャンなら誰でもそうなのだけれど、今さら目先の流行に惑わされるほどのキャリアではないし、また年齢的な点から見ても、残された時間が潤沢にあるわけではないことも、無意識の中にあるのだろう。

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 で、リリースされた当時、往年のJAMファンからは酷評され、アーバンでトレンディでスタイリッシュでスノッヴな連中からは大絶賛された、通称スタカンの本格的なファースト・アルバムが、これ。。実際はデビュー時にミニ・アルバムを発表しているので、デビューというには微妙なスタンスのアルバムでもある。そういった事情があったにもかかわらず、純正パンク・モッズ・ファン以外の幅広いユーザーを獲得したことによって、UK最高2位、ゴールド・ディスクに輝いている。
 ほぼ同時期に出てきたEverything But The Girlあたりのファン層と被ることが多く、ちょうどパンクの刺激的な音に疲れた層が、癒しのサウンドを求めてこの方面に流れて来たものだろう。

 パンク~ニュー・ウェーヴの流れでデビューし、WhoやSmall Facesから連綿と続く正統派モッズ・スタイルの3ピース・バンドとして、特にイギリス国内では絶大な人気をキープしていたJAM。Wellerの音楽的成長、方向性の変化によって、後期はモッズよりさらに遡った、60~70年代ソウル・ファンク系のサウンドに傾倒してゆく。音楽に対してシリアスな純正モッズ・バンドとしては当然の流れなのだけれど、あくまでパンク・バンドという枠組みの中で認知されているJAMという大看板では、音楽的冒険にも限界がある。メンバー間との実力・人気の格差による確執はもちろんのこと、彼らを取り巻く環境は巨大になり過ぎて、小回りが利かない状態になっていた。
 そういった現状に甘んじて、過去のレパートリーの拡大再生産に努めれば、Rolling Stones的スタンスでの活動スタイルもアリだったんじゃないかとも思えるけど、それを潔しとしなかったWeller、ほんと人気絶頂の最中に解散宣言を出す。そうすることが、彼には必要だったのだ。

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 で、一回すべての活動をリセット、JAM後期から構想のあった、ソウル・ファンク路線に加えて雑多なジャンルをミックスした音楽を実現するため、以前より交流のあったDexys Midnight RunnersのキーボーディストMick Talbotを迎えた新バンドStyle Councilが始動する。
 大方の予想は、それこそ後期JAMの延長線上、ソウル・ファンクをベースとした硬派なダンス・ミュージック系だったのだけれど、蓋を開けてみるとあらビックリ、微妙に別の方向性だったことに世間は当惑した。一応、ソウル・ファンク系のテイストやリズムはベースとしてあったのだけれど、彼らの雑食性はその範囲にとどまらず、ボサノバやジャズ、エレクトロ・ポップまで入ると、思惑とはかなり違ってくる。

 俺の世代にとって、彼らとのファースト・コンタクトはJAM解散後であり、単純にオサレ・バンドとして、そして通好みのバンドとして、一定の評価は得ていた。特に日本において彼らの評価は高く、あのロキノンでも一目置かれていた。今じゃ信じられない話だが、マクセルのカセット・テープのCMにも起用されていたくらいだったので、お茶の間での認知度もそこそこあったのだ。

 多分Wellerのコンセプトだったと思われるのだけれど、初期の彼らはシングル中心の活動であり、よってリリースのペースも早かった。当時は特にリミックスを施した12インチ・シングルが全盛で、彼らに限らず無数のバージョン違いが世にはびこっていた。当時、輸入盤をマメにチェックしていた者がどれだけいたのかは不明だけど、すべてのアイテムをコンプできた日本人は、ごく少数だったはず。
 
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 速報性が一つの利点であるシングルをハイ・ペースでリリースし、ある程度曲が溜まったらアルバムとしてまとめる、という流れ、これが次作『Our Favourite Shop』まで続く。こういった理想的なサイクルと、バンドとしてうまくまとまっていた状態とは、ちょうどシンクロしている。Wellerのビジョンと世間とのニーズがうまく一致していた、幸福な時代である。
 ただ、こういったサイクルはシステムとしては完成され過ぎているため、一度走ると簡単に止めることはできない。マグロの回遊と同じで、止まる時は死ぬ時なのだ。
 その後、彼らも2枚目以降は循環システムがうまく機能しなくなり、紆余曲折を繰り返した挙句、自家中毒のジレンマに陥ることになるのだけれど、このアルバム『Café Bleu』は、そういった杞憂もない頃、幸せな時代の作品である。


カフェ・ブリュ
カフェ・ブリュ
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Universal Music LLC (2007-07-26)
売り上げランキング: 39,593




1. "Mick's Blessings" 
 カテゴリー的にはロックなのに、オープニングはMickによる軽快なブギウギ・ピアノのインスト。当初のコンセプトとして、Style Councilとは既存のバンド・スタイルとは違って、今で言うユニット形式、既存メンバーにとらわれない、幅広い音楽性を強調していた。軽いジャブとしては有効。

2. "The Whole Point of No Return" 
 で、次もロックとはかなり真逆のベクトル、柔らかなセミ・アコを奏でるWellerの、これまたソフトなヴォーカル。リズムを抜いたボサノヴァ・タッチの曲なのだけれど、終盤に向かうに連れて、次第にヴォーカルに熱がこもって行くのがわかる。

3. "Me Ship Came In!" 
 次はラテン・ナンバー。こちらもインストで、まるでキャバレーのビッグ・バンドのよう。いくらロックから遠く離れたいからといって、ちょっと極端じゃね?って気がする。無理やり幅広いジャンルを網羅しようとしてねじ込んだようなナンバー。う~ん、まぁブリッジ的な曲だけれど、このアルバムはとにかくブリッジが多い。

4. "Blue Café" 
 こちらもスロウなジャズ・ギター的なインスト。同時代で行けば、Durutti Columnの路線にとても近いものがある。ポール・モーリアのようなベタなストリングスに乗せて、これまたロックと正反対のベクトルへ無理やり向かおうとするWellerのスノッブ振りが、今となっては何か微笑ましい。

5. "The Paris Match" 
 前年に先行シングル的に、”Long Hot Summer”との両A面でリリース済み。今思えば最強タッグである、初期スタカンではなかなかのキラー・チューン。これまたスローなジャズ・ヴォーカル・タッチで、ヴォーカルもご存じEverything But The Girlの歌姫Tracey Thornが担当。こういったタッチの曲は、やはりWellerのスタイルに合わず、それを自覚してもいたのだろう。
 JAM時代にこの曲をやろうとしても、ヴォーカルが自身であるという縛りから抜け出せず、ここまでのクオリティでは仕上がらなかったはず。ここが、何でもフロント・マンがメインを張らなくてはならないバンドの宿命から解き放たれ、適材適所にメンバーを配置できる、フレキシブルなユニットとしての利点。
 あまりにアンニュイでトレンディな世界観ゆえ、日本でもこの曲に影響を受けて同名のバンドが結成されたのは、有名な話。
 


6. "My Ever Changing Moods" 
 引き続きキラー・チューン、UK5位、USでも自己最高である29位にチャート・インした、こちらも初期スタカンを象徴する名曲。ピアノのみを配したシンプルなバッキングに、エモーショナルなWellerのヴォーカルが乗るのだけれど、落ち着いた曲調にもかかわらず、こめかみに血管を浮き出させたWellerの横顔が思い浮かぶよう。
 本人的にも会心の楽曲だったらしく、後にアップテンポのロック・ヴァージョン、また映画のサントラ用にリアレンジされたビッグ・バンド・ヴァージョンも存在する、様々な表情を見せる曲でもある。



7. "Dropping Bombs on the Whitehouse" 
 タイトルだけ見るとやたら攻撃的で不穏なイメージがあるが、実際のところは軽快なジャズ風のインスト。ほぼギターの出番は皆無なので、こんな時、Wellerが何をしていたのかが、ちょっと気になる。多分、スタジオ・セッションを横目で見ながら、ブースの隅っこ辺りで邪魔にならないように踊っていたのだろう。

8. "A Gospel" 
 テクノとファンクとラップとをグッチャグチャにミックスして、いびつな形のまんま仕上げた曲。ちなみにここでWellerは珍しくベースを担当、ヴォーカルを取っているのは、Dizzy Hiteというラッパー。今にして思えばスタカンとしてリリースする必然性を感じないのだけれど、やはりWellerの意向で、幅広い音楽性をアピールしたかったのだろう。Council(評議会)というからには、一つのジャンルに固執するのではなく、グローバルな視点が求められるのだ。

9. "Strength of Your Nature" 
 こちらはWeller、Dee C. Lee共にヴォーカル参加、前曲同様、ジャンルを飛び越えたダンス・ミュージックなのだけれど、ノリとしてはこちらの方が良い。特にファンク色の強いナンバーなので、これはプレイしている方も楽しいはず。
 この路線はWellerも気に入っており、このサウンドをもっと深化させたのが、完成直後はレコード会社よりリリース拒否、10年以上経ってからようやくリリースされた『Modernism: A New Decade』に繋がってくる。ハウス・ビートの要素が従来ファンには拒否反応を示したらしいのだけれど、俺的にもこのくらいのファンク加減がしっくり来る。

10. "You're the Best Thing" 
 夜景を望むこじゃれたバーにも、また延々と続く海岸線のドライブにも、柔らかな木漏れ日の差し込むオープン・カフェにもフィットする、それでいてきちんとロックを感じさせる、まったりとはしているけれど、不思議な感触の曲。UK5位は妥当だけれど、USでも76位まで上がったのは純粋に、そんな曲自体の魅力によるもの。



11. "Here's One That Got Away" 
 10.同様、Wellerのファルセットとフィドルが印象的な、軽めのネオ・アコ・タッチの小品。この手のソフト・サウンドのわりには、意外にドラムがドスバスしてリズムが立っている。この辺がJAMのアコースティック・ヴァージョンといった趣きで、旧いファンにも受け入れられやすい。

12. "Headstart for Happiness" 
 この頃のスタカンは要所要所でDee C. Leeをフィーチャーしており、特にこの曲ではコーラスにとどまらず、Wellerと五分でのデュエット。初期コンセプトに則って、Wellerのワンマン・バンドではなく、曲調に合わせたサウンド設定、メンバー配置を行なうことによって、バラエティを持たせている。言うなれば、Style Councilという大きな枠組みの中で組まれたコンピレーション・アルバムが、この時期には実現している。

13. "Council Meetin'" 
 最後はMickのハモンドを大きくフィーチャーした、グル―ヴィーなインスト。JAMでは実現できなかった構成であり、凝り固まった現状を打破するという意味では、このアルバムは充分パンク・スピリットに満ち溢れている。




 これだけハイ・ソサエティさに満ちて、シャレオツ業界人に消費され尽くされたアルバムを作りながら、ライブでは一転、これまでのJAM時代と変わらずシャウトしギターを弾きまくり汗を掻き唾を飛ばしシャウトしまくっていたWellerの潔さは、同世代のアーティストの中でも群を抜いていた。
 ClashとPILが自家中毒を起こして袋小路に嵌まりつつあるのを横目で見ながら、逆にパンク・スタイルにこだわることはダサいことであると一蹴し、敢えてロック以外の可能性を追求するその姿勢は、反語的にロックな姿勢でもあるのだ。

 なんか最後、ロキノンの原稿みたいになっちゃったな。


Greatest Hits
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北海道の中途半端な田舎に住む、そろそろアラフィフ男。ほぼ週1のペースで音楽ブログ更新中。節操ない聴き方と思われてるけど、自分の中では一貫してるつもり。 最近は蔵書の整理がてら、古い本を再読中。ジョン・アーヴィングから始まって、フィッツジェラルドやゾラ、モームなど、いわゆる古典の復習中。いつになったら終わることやら。新刊読めねぇや。
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