Sharon Jones

好きなアルバムを自分勝手にダラダラ語る、そういったゆるいコンセプトのブログです。

追悼 Sharon Jones。 - Sharon Jones & The Dap-Kings 『Soul Time!』

folder -ソウル&ファンク・バンド、シャロン・ジョーンズ&ザ・ダップ・キングス(Sharon Jones And The Dap-Kings)のリード・シンガー、シャロン・ジョーンズ(Sharon Jones)がすい臓癌からの合併症のため死去。シャロンは2013年に癌と診断。その後、手術と治療を行って一時音楽シーンに復帰するものの、2015年に癌が再発していました。60歳でした。
 (amass)

 癌であることを告知された後のSharonは、ある程度の中・長期的な休暇を挟みながら、ライブにレコーディングにゲスト出演に精力的に顔を出していた。去年はDavid Byrneのトリビュート・ライブにも参加してオーディエンスの注目を総取りしてしまう、圧倒的なパフォーマンスを披露していたし、今年の夏はもっぱら夫婦ブルース・ロック・バンド Tedeschi Trucks Bandと全米を回っていた。ジャンルは違えど通ずるものがあったのか、今年の夏は何かと彼らのセッションに呼ばれてパフォーマンス映像が公開されたり、断続的ではあるけれど快方に向かいつつある姿を見ることができた。
 ついこの前は、あのIggy PopとDavid Bowieの「Tonight」をデュエットしたり、これまでソウルのカテゴリーで収まっていたのが、より花広い交友関係が築かれつつあった。

 ここまで業界内でSharonブームが盛り上がったのは、昨年から制作中だった彼女の半生とライブ・パフォーマンスを交えたドキュメンタリー映画『Miss Sharon Jones!』の前評判とリンクしている。冷静に考えてみると、ワールドワイドでは大きなセールスを挙げているわけでもない、主にニューヨーク周辺で活動しているローカル・ソウル・バンドのヴォーカルが映画の主演に抜擢されること自体、極めて異例である。そんな彼女と共演をオファーする大物ミュージシャンが引きも切らなかったことから、やはり何かしら通ずるものがあったのだろうし、フォトジェニックなパフォーマンスに惹かれるものがあったのだろう。少なくともDaptoneが映画プロジェクトに積極的だったとは思えない。彼らも自分たちのことで精いっぱいだし。

sharon-lafaye-jones2

 予兆は8月のEUツアーのキャンセルからあった。復帰後にリリースされたクリスマス企画アルバム『It's a Holiday Soul Party』で健在ぶりをアピールしていたのだけど、まだ60前だっただけに癌の進行は予想以上に早かった。本人も、周囲もその辺は承知の上だったのだろう。これまでとは畑違いのストレスがあったに違いない映画撮影も、体を気遣うならストップさせるべきだっただろうけど、それでも彼女はカメラを回すことを拒みはしなかった。多分、残された命を考えると、少しでも歌えるうちにその姿を収めておくことが、自分にも、そしてファンにも納得行く結果に落ち着く、と判断したのだろう。

 彼女が所属していたレーベルDaptoneは、60年代ヴィンテージ・ソウルを真空パックから開封したような、ある意味時代遅れのサウンドを主に取り扱っている。ダイナミック・レンジと録音トラック数の多さによって、音圧自体は現代の主流サウンドと引けを取らないようになってはいるけど、やはり古臭い。AMラジオで聴いたら時代感覚を失ってしまうようなサウンドばかりである。なので、決して万人受けするような音楽ではない。かつて60年代にティーンエイジャーだった者が懐古的に聴き直すわけでもない。彼らの主力ターゲットはもっと若い世代のレアグルーヴ愛好家だ。
 そういった戦略で自転車操業を続けてきたレーベルの性格上、マーケットはどうしてもニッチなものになってしまう。なので、瞬間的にバカ売れする類のものではなく、ゆっくりじっくりと、ロングテールで地道に売れ続ける音楽である。どんな時代でも一定数、彼らのような音を求める層は存在する。
 そんな事情もあって、ヒットチャートの常連的なポストにはたどり着けなかったけど、デビュー後は一度も契約が切れることもなく、コンスタントにシングルやアルバムをリリースしていた。着実に実績は積み上がっていて、『Miss Sharon Jones!』公開を間近に控え、次回作ではチャート・アクション的にも期待を持てそうだ、と誰もが思っていた。レーベル・メイトであるCharles Bladleyが、EUシングル・チャートにランクインするようになっていたため、それに続いてSharon もまたEU本格進出の足掛かりを得た。
 そんな矢先、突然の訃報である。

facebook_event_1134623316579925

 1956年、アメリカ南部のオーガスタで、6人兄弟の末っ子として生を受けたSharon Lafaye Jonesは、ブルックリンの高校・大学に進んだ。その傍ら、多くの敬虔な黒人に倣ってゴスペル・シンガーからキャリアをスタートさせ、銀行勤務と並行しながら地元のR&B、ファンクバンドを渡り歩いた。80年代に入ってからは、バック・コーラスとして多くのレコーディングに参加、後にDaptoneに入るきっかけとなったLee Fieldsのレコーディング・セッションを機に、もっぱら裏方だった彼女にデビューのチャンスが巡ってくる。
 1996年、シングル「Damn It's Hot」でデビューした頃、彼女はすでに40歳を迎えていた。いくら満を持しての実力派シンガーと言っても、ちょっと遅咲き過ぎるくらいのデビューである。
 その小柄な全身からみなぎる彼女の破裂的なヴォーカルや、熱狂的なステージ・パフォーマンスは草の根的に口コミが口コミを呼び、当時所属していたレーベルDescoのコンピレーション・アルバムには高確率で収録されるまでになるのだけれど、NYの弱小インディー・レーベルでは単独名義のアルバムを制作できるほどの体力はなかった。これは大多数の弱小零細レーベルだとよくある話で、大量のアルバム在庫を抱え込むほどの資本がないため、どうしても低単価のシングル中心のリリースになってしまう。そのシングルだって、レーベルの基礎体力以上に爆発的に売れてしまうとバックオーダーが追い付かず、売れまくったがゆえに倒産、という逆転現象を引き起こしてしまう事例だってある。会社が潰れない程度にほどほどに売れてくれた方が、会社としては好都合なのだ。

6a014e6089cbd5970c0168e5fecdc7970c-800wi

 Sharon自身としては、シングル・リリースだけでも降って湧いたような話であり、アルバム・リリースまでの野心は想像もつかないので持てなかった、というのが実情。取りあえず名刺代わりにシングルを切ってレパートリーを増やし、それが話題になることでライブ動員が安定してくれれば、といった程度の心積もりだった。セッション・シンガーとして、レーベル内外で声をかけられることも多く、バッキングを務めるDap KingsらもAmy WinehouseやMark Ronsonなど、UKの一流どころとのセッションやレコーディングに忙殺されていた。週末の趣味的なバンド活動は、外部活動による生活基盤の安定のもとに成り立っていた。
 そんな状況が変わり始めたのが、DescoのオーナーだったGabriel Roth とPhilip Lehmanとが袂を分かってレーベルは発展的解消、RothとNeal Sugarmanによって創設されたDaptoneに移籍してからである。自らインスト・ソウル/ファンク・バンド Sugarman 3を率いるSugarmanの意向を受け、アルバム・リリースをひとつの柱としたDaptoneが第一弾アルバム・アーティストとして指名したのがSharonだった。前述のLee Fieldsと並んで看板アーティストとなったSharonは、その後、5枚のオリジナルと2枚のコンピレーションを残し、今年は『Miss Sharon Jones!』のサントラをリリースした。

 コンスタントに2年の1枚程度の割合で安定したクオリティのアルバムを残した彼らだけど、その個性がもっともよく表れているのは、やはりシングル中心で編まれたコンピレーションである、というのが俺の主観。時期はバラバラだけど、Daptoneのアーティストは基本、自社スタジオでアナログ・レコーディング、バンドのプレイヤビリティは絶妙の安定感のため、ツギハギ感はほとんどない。
 2004年から2011年くらいまで、ほぼ10年の足取りがここに収められており、これから聴こうとする人には最適なんじゃないかと思われる。この手のバンドあるあるだけど、シングル中心・売り切り在庫なしのパターンが多いため、まだ日本にそれほど生息していないと思われるSharon Jonesマニア以外のライト層にも十分アピールできるラインナップとなっている。

06_sharonjones1817_wide-0f5d7d5949e135496db5bcfcbe1caaf404dfc4a5

 訃報をきっかけに存在を知り、再評価されるというパターンは昔から多い。死後の遺産を発掘してリリースする作業は今後になると思われるので、今のところはこれが一番とっつきやすい。
 彼女の新しい歌を聴くことは、もうできない。
 でも、今後も時々、思い出すことはできる。取りあえず、今はそれだけで十分だ。
 今年もBowieやPrinceを始め、好きなアーティストをずいぶん見送ってきた。
 残された作品を聴き続けること、そしてこうやって時たま思いを書き留めておくこと。
 誰に頼まれたわけではないけど、多分、これからも俺はそんな行為を続けるのだろう。


Soul Time!
Soul Time!
posted with amazlet at 16.11.21
Sharon Jones & The Dap-Kings
Daptone (2011-08-07)
売り上げランキング: 288,712



1. Genuine Pt. 1
 2004年リリース6枚目のシングル。日本人からすれば馴染みの深いチンドン屋風のオープニングは、親近感を持ってしまう。古来の土着性のダンス・ミュージックという点で共通点は多い。SharonよりはむしろDap-Kingsにフォーカスを当てたミックスは、アナログ・シングル特有の音圧を引き出している。

2. Genuine Pt. 2
 1.の続き。ヴィンテージ・ソウルによくあったスタイルだけど、アナログ・ディスクのカッティング・レベルの維持と、ラジオ・オンエアでかかりやすくするため、長尺の曲を二分割して収録するケースが多かった。21世紀に入ってからも、そういったソウル・マナーにこだわる辺りが、Daptoneが支持される理由。



3. Longer and Stronger
 2010年アメリカで公開された映画『For Colored Girls』のサウンドトラックより収録。タイトルから何となくわかるように、黒人女性を主軸とした人生模様を描いたオムニバス・コメディで、キャストがWhoopi GoldbergやなぜかJanet Jacksonなど、映画にはほとんど明るくない俺でも知ってるメンツが出演している。日本では未公開だったらしく、俺自身も未見。
 ストーリー・コンセプトに基づいた選曲となっており、クレジットを見ると、Sharon以外にもLalah HathawayやLeona Lewis、懐かし枠ではGladys KnightやNina Simoneもピックアップされている。
 スタックス系のホーン・セクションがカントリーっぽくプレイしたような、郷愁漂うスロー・チューンは、映像が目に浮かぶよう。見たことないけどね。

4. He Said I Can
 2011年リリース、出世作となった4枚目『I Learned the Hard Way』リリース後にリリースされたシングル。その後、すぐにこの『Soul Time』に収録されたため、この時点でもっとも新鮮なSharonたちのパフォーマンスが封入されている。
 ファンキーなワウワウ・ギターとオルガン、ホーン・セクションとの軽快なコール&レスポンスなど、聴きどころ満載のチューン。ほぼワン・コードで押し通しているのに、この表情の豊かさといったら。

29MISSSHARON-master768

5. I'm Not Gonna Cry
 3枚目のアルバム『100 Days, 100 Nights』のレコーディングと同時期に録音され、シングル・オンリーでリリースされたナンバー。南部テイストの濃い演奏は泥臭く、初期の彼女らの音楽性を象徴している。バンドの方向性がSharonメインに移行し、ソウルっぽさが強まるのはもう少し後から。

6. When I Come Home
 2010年リリースのシングル。初期より洗練されたソリッドなファンキー・チューン。ますますJBっぽさが堂に入りつつある。ギターのオカズと音色が黒っぽさを助長させている。

7. What If We All Stopped Paying Taxes?
 かなりストレートなタイトルのジャンプ・チューン。2004年リリースということでDap-Kingsの黒っぽさがハンパない。この後はAmy Winehouseプロジェクトの参加を経て、ゴツゴツ角の尖った演奏が次第に丸みを帯びてゆくのだけど、ここではまだキレッキレの頃。特にテーマがテーマなだけに、Sharonのヴォーカルも攻撃的。

sharon_jones_daptones_soul_review_h

8. Settling In
 シングル・カットされた『100 Days, 100 Nights』のタイトル・チューンのB面収録曲。多分同時期にレコーディングされたと思われるけど、なぜかドップリ黒いスロー・ブルース。こういった曲も歌えるのはわかるけど、やはりもっとダンサブルで熱いサウンドの方が、彼女の声質には合っている。まぁB面だし、ちょっとやってみたかったんだろうな。

9. Ain't No Chimneys In The Projects
 2009年、クリスマス・シーズンにリリースされたシングル。この時期になるとDap-KingsとSharonとのパワー・バランスもいい塩梅となり、どちらの良さも引き立ったプレイとなっている。
 甘くて切なくて、それでいて楽しみなクリスマス。そんなムードを盛り上げるには絶好のチューン。結果的に生前最後となった企画アルバム『It's a Holiday Soul Party』にも再録された。



10. New Shoes
 2011年リリースのクリスマス・シングル。サウンド的にはソウル間が薄く、勢いと疾走感が印象強い。それでもどんな音でも自分たちの音として聴かせてしまう力技が、この時点で確立されている。

11. Without A Trace
 ゴスペル色が強いサウンドで、ここでのSharonは通常のファンキーな勢いではなく、もっと言葉を噛みしめるようにエモーショナルなヴォーカライズとなっている。この曲だけどうしても初出がわからなかったのだけど、多分ダウンロード・オンリーかこのアルバムのみ収録だと思われる。

12. Inspiration Information
 前曲に続き、こちらもしっとりヴォーカルを聴かせるスロー・チューン。2009年のコンピレーション『Dark Was the Night』収録、オリジナルはShuggie Otis、1974年の作品。ファンクを通過してからのオールド・ソウル風味は、聴き手を和ませる。パーティもそろそろ終わり。帰る時間だな。
 
SharonJones
 
 お疲れさま。ゆっくり休んでね。




Miss Sharon Jones! (Ost)
Miss Sharon Jones! (Ost)
posted with amazlet at 16.11.21
Sharon Jones & The Dap-K
Daptone (2016-08-19)
売り上げランキング: 513,001
Daptone Gold II
Daptone Gold II
posted with amazlet at 16.11.21
Various Artists
Daptone (2015-09-18)
売り上げランキング: 115,466
 

2015年のソウル・クリスマス - Sharon Jones & The Dap-Kings 『It's a Holiday Soul Party』

folder 2015年も末にリリースされたばかりの、初のクリスマス・アルバム。相変わらずの平常運転、いつも通りの60年代ヴィンテージ・ソウルっぷりである。

 考えてみると、近年クリスマス・アルバムといえば定番曲を集めたコンピレーションが主流で、単独アーティストによる作品はほとんど聴いてなかったのだけど、調べてみると結構な数のアルバムがリリースされており、単に俺がそういったイベントから縁遠くなっていただけだった。
 Mariah Careyはド定番として、今年はKylie Minogueが参戦しており、Mary J.BligeやRod Stewartまで、錚々たるメンツが名を連ねている。どちらにせよ、どれも俺の趣味とは微妙にズレてる人たちばかりである。
 ちなみにここ日本では、アイドルやアニメ関連での企画物は多々あるけど、アーティストがしっかり本腰入れて作ったものは少ない。十分生活に根ざしたイベントだと思うのだけど、あまり需要がないのか季節商品に力を入れるのに気が進まないのか。
 全然関係ないけど、調べてみてちょっと気になっちゃったのが、これ。

411KCGDFW9L

 前回のレビューでもちょっと触れたように、ヴォーカルのSharon、胆管ガンの手術成功後、間髪を入れずにオリジナル・アルバム『Give the People What They Want』をリリース、グラミー賞にノミネートされるほどの絶賛を受けたのだけど、この秋にガンが再発したと公表、「今後は化学療法を受けながら病魔と闘ってゆく」というステイトメントを発表した。遅咲きのキャリアのため、年齢はすでに50オーバーだけど、肉体的にガンの進行は予断を許さない。長い目で付き合ってゆくしかないのだ。

 公式サイトを見てみると、この夏からTedeschi Truksとのツアーを開始、最近ではドキュメンタリー映画が製作されるほどの多忙さのため、取り敢えず病状的には安定はしているらしい。単発ではあるけれど、余裕を持った日程のツアーも年末からスタートするので、無理しない程度に頑張ってほしい。
 でも、ペース配分とか考える人じゃないよな、きっと。

 そんな不穏な状態の中でリリースされた、突然のニュー・アルバムである。
 このように手馴れたスタンダード曲を交え、企画ミニ・アルバム的スタイルでのリリースは、多分Sharonの都合上、オリジナルを充分に練り上げる時間がなかったためと思われる。まぁどちらにしろ、彼らのようなライブ主体のバンドでは、スタジオでじっくり音を作るより、本番一発せーので合わせるほうが性に合っているので、結果的にそんなに音は変わらないけど。

images

 デビュー当時から所属しているDaptoneは、2002年にニューヨークで設立された60〜70年代のソウル/ファンク/ジャズをベースとしたアーティストを専門に扱うレーベルで、彼女が看板アーティストの1人。
 基本、過去タイトルのリイシューではなく、新規録音が主体であり、一応自社スタジオも構えている、ちゃんとしたレーベルである。しかもそこのスタジオ機材が、今どきヴィンテージのアナログ・テープ使用というところも徹底している。メンテナンスやエンジニアリングも含め、収益優先で考えたらとてもできることじゃないけど、理想のサウンドを求めた結果なのか、どのアーティストのリリースにおいても、このスタイルを貫き通している。
 そんな頑固な姿勢によるレーベル運営は、短期的に回収できるビジネス・モデルではないけど、全世界を相手にすることによってどうにか成り立つことが可能であり、地味ではあるけど、どのカタログもロング・テール型のセールスを記録している。

 彼女の他にも、Charles Bradley やLee Fields、Budos Bandなど、70年代から進化を止めてしまったようなオールド・スタイルのアーティストを多々抱えているのだけど、まぁ日本じゃほとんど名前を知られてない人ばかりである。オールディーズ系の発掘は世界一進んでいる日本だけど、現役のアーティストに対しては紹介すらされない状況、それは昔から。
 Stylisticsなどの甘茶系スウィート・ソウルの需要は昔からあるのだけれど、彼女にようなアッパー・チューンを主体としたファンクネスはあまり受け入れられないのも、メロウな旋律につい惹かれてしまう日本人の特徴でもある。
 なので彼らのアルバム、Sharonを除いてほとんどは、日本発売さえ見送られているのが現状である。
 そんな中でもSharon はすでに6枚のアルバムをリリース、他のアーティストも着実にキャリアを重ね、地味ではあるけれどコンスタントな活動状況なので、海外においてはそれなりのニーズがあることがわかる。なので、なにも無理して日本くんだりまで来てプロモーションしなければならない必然性もない。別に日本だけが上客ではないのだ。

CR75A9bWwAAeFVV

 で、Daptone 、日本で例えるなら若手演歌歌手専門レーベルみたいなものだけど、取り巻く環境はどこも同じらしく、ドサ回りともいえる地道なロードによって活動を維持している。これもどこの国でも言えることだけど、トラディショナルなジャンルは案外息が長いのだ。
 ただ、日本の演歌の平均的ユーザーが後期高齢者で占められているのに対し、Daptone のアーティストらは老若男女バランス良い分布となっている。実際、若手アーティストとのコラボも多く、年齢層の若いフェスにも普通に参戦している。若手との交流が上手く行ってるのは、ベテランが偏見を持たないこと、そして若手がきちんとリスペクトしていること、それでいながらナァナァにならず、真摯な姿勢で音楽に対して向き合っていられる環境だからなのだろう。

 そういった恵まれた環境の中、Sharonも業界内ではウケが良く、Michael Buble からPhishまで幅広いアーティストとコラボしており、グラミー効果とドキュメンタリー公開時に行われた迫真のパフォーマンスによって、一般的な認知は高まっている。何しろあのめんどくさいPrinceともライブで共演しているくらいだから、実力のほどは言わずもがな。
 大物アーティストのサポートから場末のクラブでのささやかなセッションまで、ありとあらゆるオファーをこなすDap KingsもSharon 同様、経済的基盤を確保しつつ、外部セッションで得たクリエイティビティをバンド本体にフィードバックさせている。
 そういった好循環によって、過度にセールスを気にすることなく、とことん自分たちの好きな音楽をやってゆけるので、バンドとしてはいい状態が続いている。

 それでも危惧してしまうのは、やはりSharonの体調。あり余る精力が漲ってる彼女だけれど、決して楽観できる状態ではないので、お身体だけはお大事に。
 それとDaptone、綱渡りの経営だろうけど、できるだけそのまんまの規模で、これまで通りの仕事を続けてくれ。


It's a Holiday Soul Party
It's a Holiday Soul Party
posted with amazlet at 16.02.16
Sharon Jones & The Dap-K
Daptone (2015-10-30)
売り上げランキング: 63,873




1. 8 Days (of Hanukkah)
 Hanukkahとはユダヤ教のイベントで、これがクリスマスにあたるらしいけど、よくわからん。8日間取り行われることがタイトルの由来。一般的にクリスマスと言えばやっぱキリスト教だけど、その辺分け隔てなく、みんなでクリスマスを祝いましょう的ムードが流れているオープニング・ナンバー。

2. Ain't No Chimneys In The Projects 
 そこからちょっとしっとりした、静かだけどパワフルなソウル・バラード。サックスのフレーズにジングルベルが挿入されているあたり、クリスマス・ムード。ビデオがアニメ仕立てになっており、本人たちは出演してないけど、これがなかなか可愛くて、それでいてちょっぴりホラー・チック。



3. White Christmas 
 スタンダードをファンキーにアレンジしたナンバー。こういうサウンドって、どこか泥くさくって、スタックス系、Otis Reddingへの経緯が感じられる。だってこれ、オケだけ聴いてたらまんま”Shake”だもの。でも、それがよい。

4. Just Another Christmas Song 
 イントロから再びジングルベル。パーティも序盤を過ぎ、一旦小休止、歓談の時間。思い思いにオードブルをつまみながらシャンパンやワインに口をつけ、プレゼントの交換。タイトルとは裏腹に、親密なムードの漂うミドル・バラード。



5. Silent Night 
 再びスタンダード・ナンバー。こちらはちょっとブルース調でカバー。スローなリズムはチーク・タイムにピッタリ。遠くで微かに聴こえるベルがムードを盛り上げている。しかしこれでアナログ録音なのだから、恐ろしいテクニック。

6. Big Bulbs
 タイトルはクリスマス・ツリーの飾り付けに使うライトのこと。もともとはSaundra WilliamsとStarr Duncanから成る女性二人組Dapettesのナンバーで、彼女らもコーラスに参加している。こういった曲をきちんと探してこれること、そんなところにアメリカという国の奥の深さを感じさせる。

7. Please Come Home For Christmas
 もともとはブルース・シンガーCharles Brownが1961年にリリースしたナンバーのカバーだけど、Bon JoviやEaglesのカバー”ふたりのクリスマス”の方が有名。オリジナルに敬意を表したスロー・ブルースになっており、日本人好みのナンバーになっている。

0005784006_10
 
8. Funky Little Drummer Boy
 ひと昔前のキャバレーっぽいバックとコーラス。パラッパラッパーというフェイク、タメの効いたリズム、ほとんどコード移行もない、いわゆる大人のクリスマス。クリスマスも仕事で遅くなり、単身赴任などで家に帰れないお父さんたちが独り、盛り場で過ごす聖夜のひととき。そういった人たちにも、平等にクリスマスは訪れる。

9. Silver Bells 
 オリジナルはBing Crosbyによる1951年のコメディー映画『The Lemon Drop Kid』の挿入歌。Elvis Presley、Stevie Wonder、Barry Manilowなどカバーも多く、アメリカでは”クリスマス・イヴ”的ポジションの大有名曲。俺は知らなかったけど。
 アメリカのゴールデン・フィフティーズを象徴するような、ポジティヴ感満載の曲に理屈はいらない。ここではバックも手堅い演奏、妙なアドリブもほとんどなく、パーティのハウス・バンドに徹している。

10. World of Love 
 Dap-KingsのギタリストBinky Griptiteが2007年にリリースしたソロ・シングル。ここだけ彼がリードを取っており、普段はなかなかメインに出てこないながら、なかなか堂々とした正統派ソウル・バラード。ストリングスの使い方もスリリングかつ効果的。60年代末にリリースされたまま埋もれてた発掘レア・グルーヴ系ナンバーと言われても見分けがつかないくらいの仕上がり。褒め言葉だよ、言っとくけど。



11. God Rest Ye Merry Gents 
 パーティも終わり。蛍の光的クロージング・ナンバー。歌姫Sharonも袖に引っ込んでしまい、あとはバンドが閉店まで延々と、好き放題なアドリブをかましながらの自由なセッション。




Daptone Gold (Dig)
Daptone Gold (Dig)
posted with amazlet at 16.02.16
Various Artists
Daptone (2009-11-24)
売り上げランキング: 506,013
Daptone Gold II
Daptone Gold II
posted with amazlet at 16.02.16
Various Artists
Daptone (2015-09-18)
売り上げランキング: 29,287

世界のジャズ・ファンク・バンド巡り:番外編、アメリカのディープ・ファンクのご紹介 - Sharon Jones & The Dap-Kings 『Dap Dippin'』

folder で、前回のMighty Mocambosとキャラはかぶるのだけど、こちらもどストレートの人力ファンク、「60~70年代にサイケの狭間でひっそりリリースされたまま埋もれてしまったレア・グルーヴの裏名盤」と紹介されたらつい信じちゃいそうな人たち、Sharon Jones & The Dap-Kingsのご紹介。

 この手のジャンル、決して今の時代のメインストリートを歩くサウンドでもないし、実際大きなセールスは見込めないのだけど、細く長く続けてゆくのなら手堅い部分もある。これは日本の演歌と被る点が多いのだけど、いわゆる本来の意味のプログレッシヴを求められる音楽ではない。音楽シーンを揺るがす革新的なサウンドには目もくれず、ワンパターンでありながらひたすら自分たちの音楽フォーマットを崩さずに邁進する、ということが求められる。ボカロやオートチューンなんてもっての外だ。

 ディープ・ファンク/ジャズ・ファンクという、ポピュラー・シーンにおいては比較的ニッチだと思われるこれらのジャンル、CDやレコードなど物理メディア販売においては難しい面もあるけど、あくまで半径100km圏内という生活圏において、ライブハウス中心の活動なら、案外継続は難しいことではない。世界中、どの地域においてもそれなりの需要はあるジャンルなので、高望みさえしなければ、それなりのオファーはある。
 ただ、オファーが切れないのと収益性とでは、また別の問題である。「ファンク・バンドあるある」ばかりになってしまうけど、大抵は大所帯のバンドが多いため、わずかなギャラを均等割りすると、経費だけで足が出てしまう場合が多い。とてもバンド一本だけで食っていけるジャンルではないのだ。
 だからこそ、彼らは大抵の場合、喰っていける本業と掛け持ちか別バンドとの掛け持ちが、他ジャンルと比べてとても多い。大抵の売れないバンドはみなそうなのだけど、特にファンク・バンドはその傾向が強い。あくまで趣味性の強いバンド・コンセプトが多いため、どうしてもサウンドはマニアックになりがちである。だって、別に売れなくたっていいんだもん。
  
2252_50415263916_48909068916_1342221_785_n

 彼らの所属レーベルDaptone、NYを拠点とした小ぢんまりとしたレコード会社なのだけど、所属アーティストがほぼ年季の入ったジャズ・ファンク・ソウルのどれかの順列組合せみたいなアーティストばかり、昔ながらの伝統芸能的サウンドを供給し続けている。EDM?何それ?といった感じの人たちばかりである。
 多分経営的には楽ではないはずだけど、それでもレーベル・コンセプトが徹底していることから、その手のファンにとっての信頼は厚く、継続的なリリースを維持できるだけの収益は確保している。ニッチなマーケットではあるけれど、全世界を対象としているだけあって、細かな売り上げをかき集めると、案外バカにならないのだろう。

 で、Dap-Kings。
 「ファンク・バンドあるある」として、ライブ活動中心ゆえ音源リリースは少ないことが常なのだけど、彼らの場合、比較的恵まれているのか潜在的支持が高いのか、アルバム→ツアー→アルバムのループがスムーズに回っている。決して派手なサウンドでもないし、Daptoneというインディペンデントなレコード会社ゆえ、特別プロモーションが上手いわけでもない。どうひいき目に見たって、爆発的に売れる要素はない。
 彼らの名前を最も広く知らしめたのが、あのAmy Winehouseとのコラボ。セカンド・アルバム『Back To Black』では、ほぼ半数の曲でバックを務め、しかもその中には、あの大ヒット曲"Rehab" と"You Know I'm No Good"が含まれている。アルバムに伴うツアーにも同行し、おかげでバンドの財政状況は大きく好転した。まさにAmy様々である。

sj

 そういった経緯もあって、他のバンドと比べて運営は非常にスムーズである。バンドの継続において経済的な問題は欠かせないのだ。
 おかげでサウンドは過剰に売れ線を意識することもなく、ひたすらオールド・スタイルのレディー・ファンクを貫いている。変に大衆に媚びた感じもなく、またDaptoneというレーベルのブランド・イメージの保持にもなっているため、それがまたうるさ型のリスナーを呼び込むという、いい感じの循環構造が出来上がっている。

 一昨年、胆管がんの宣告を受け、結構シャレにならない体調不良に追い込まれたSharon。ニュー・アルバムのリリースはおろか、一時は命まで危ぶまれたが、どうやら持ち直してライブ・シーンに復帰した。何しろ御年58歳、ソウル・シンガーとしてはまだまだ現役だけど、お体は大事にね。


Dap Dippin
Dap Dippin
posted with amazlet at 16.02.16
Sharon Jones & The Dap-Kings
Daptone (2002-05-14)
売り上げランキング: 188,529




1. Introduction
 Dap-Kingsによるオープニング・インスト。臨場感あふれるソウル・レビューを模したアナウンスがまた、JBっぽさをいい感じでリスペクトしている。

2. Got A Thing On My Mind
 Daptoneレーベルにおいても記念すべき第一弾45回転シングルでもある、この曲が実質アルバムのオープニング。初っ端のドラム・ロールが迫力あって、レーベル・カラーを象徴している。ディープ・ファンクのコンピレーションではもはや定番曲となっており、このまま行けば普通にファンク・クラシックスとして歴史に残るだろう。そんな永遠の名曲。
 


3. What Have You Done For Me Lately?
 こちらもシングル・リリースされたナンバー。ミドル・テンポのドッシリ腰の据わったヴォーカルを聴かせる。一聴すると音がダンゴ状にひとかたまりになって分離が悪いのだけど、これこそがDaptone、モノラルで聴くことを前提にミックスしているので、どうしてもこういった音になる。すべての音が混然一体となった迫力のサウンドを堪能してほしい。

4. The Dap Dip
 ベースがファンキー過ぎる、こちらもミドル・テンポのドロドロ・ファンク。ここまで時代錯誤だと、ほんともうひと回りして新しくさえ感じてしまう。ていうか、時代を超越した音である。30年前もクラブではこういったサウンドに乗って腰を振っていただろうし、多分これから30年後も同じような状況は続くだろう。ほんとDNAにすでに刷り込まれてるんじゃないかとまで思えてしまう、神経に直接反応するファンク・ミュージック。

5. Give Me A Chance
 今度はギターの音がドロッドロ。なんだこれ。ほんとワン・アイディア、ワン・コードで延々続く、シンプルな構造のサウンドなのだけど、考えてみればファンクではこれが結構当たり前である。体に直接作用する音楽なのだから、余計な音はいらない。非常に合理的なサウンドである。しっかし時代読めねぇよな、これ。

sharonjones

6. Cut That Line
 日本人なら結構な割合で誰でも聴いたことのある、あの”Tighten Up”のオマージュによるオープニング。ていうか、こちらも最初から最後まで、ほぼこのフレーズが続き、そこにSharonがメロディを乗せる、というスタイル。間奏のオルガンがもファンキーそのもの。

7. Got To Be The Way It Is
 こちらもシングル・ナンバー。やっぱりワン・コード・ファンク。これもよくコンピレーションやミックス・テープに収録されているので、雑食系の人なら聴いたことがあるかもしれない。
 


8. Make It Good To Me
 しっとりとした南部系のソウル・バラード。こういった曲調をソウル・シンガーが歌うと、ほとんどすべてがAretha Franklinのフォロワーっぽくなってしまい、非常に分が悪いのだけど、一歩も彼女に引けを取らないSharonがここにいる。

9. Ain't It Hard
 ソリッドなファンク・ナンバー。少しトーンを落としてるところがMarva Whitneyっぽく聴こえる。オーソドックスながら変則的なリズムに、正統ファンク・バンドとしてのこだわりが感じられる。

10. Pick It Up, Lay It In The Cut
 こちらもシングル・カット。アフロ/ラテン・ビートの入ったリズムに乗って、ベースもドラムもギターも、そしてブラスさえも混然一体となったファンク・サウンドの大洪水。しかし主役はやはりSharon、このサウンドに負けないパワーが、バンド全体を圧倒させている。
 


11. Casella Walk
 ラストはDap-Kingsによるインスト・ファンク。ゴリゴリのファンク・ギターなのに、不思議なくらいブルース色を感じさせないのは、ジャズ・テイストも入ったバンドの特色なのだろうけど、そこがアメリカだけに留まらないファン層の拡大に寄与しているのだろう。




 全11曲でトータル・タイム38分。ほんと前時代的にコンパクトにまとめられたアルバム。インプロビゼーションを主体としたバンドならもっと長尺になるのだろうけど、基本はソウル・レビューを前提としたヴォーカル・メインなので、このくらいのサイズが適しているのだろう。


Daptone Gold (Dig)
Daptone Gold (Dig)
posted with amazlet at 16.02.16
Various Artists
Daptone (2009-11-24)
売り上げランキング: 505,879
Daptone Gold II
Daptone Gold II
posted with amazlet at 16.02.16
Various Artists
Daptone (2015-09-18)
売り上げランキング: 29,287
カテゴリー
記事検索
Twitter
北海道の中途半端な田舎に住む、そろそろアラフィフ男。ほぼ週1のペースで音楽ブログ更新中。節操ない聴き方と思われてるけど、自分の中では一貫してるつもり。 最近は蔵書の整理がてら、古い本を再読中。ジョン・アーヴィングから始まって、フィッツジェラルドやゾラ、モームなど、いわゆる古典の復習中。いつになったら終わることやら。新刊読めねぇや。
最新コメント

音楽 ブログランキングへ


にほんブログ村 音楽ブログへ
にほんブログ村

アクセス
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計: