Prefab Sprout

好きなアルバムを自分勝手にダラダラ語る、そういったゆるいコンセプトのブログです。

相反する2つの意味を持つアルバム - Prefab Sprout 『Protest Songs』

folder -プロテスト・ソング(Protest Song)とは、政治的抗議のメッセージを含む歌の総称である。
 政治的な主張やスタンスからは最も遠く、むしろ抽象的な言い回しや婉曲的な表現の多いPaddy McAloonが、なんでこんなアルバム・タイトルをつけたのか。
 同名タイトル曲が入っているわけではないし、基本、日々の感情の機微やうつろい、物憂げなラブソングを歌ってる人なので、もともと過激なテーマを取り上げる人ではない。日本で言えば来生たかおや稲垣純一など、ニューミュージック寄りのポジションのアーティストであり、営業戦略的にはあまりふさわしいタイトルではない。エピックもよく、こんなミスマッチなタイトルでゴーサインを出したものだ、と思ってしまう。

 マニアックなコード進行を使ったメロディに、曖昧で意味深げなボキャブラリーを乗せたデビュー作『Swoon』でニューウェイヴ以降のネオアコ・ムーヴメントの筆頭格としてシーンに躍り出たPrefab、UK最高22位というチャート・アクションは新人としてはなかなかの実績だったけど、あくまで国内のみで知られる存在に過ぎなかった。当時はAztec CameraやOrange Juice、Housemartinsの方が人気があったのだ。
 明快なメロディを口ずさみながらアコギをメインとした演奏を繰り広げるバンドが多かったネオアコ勢の中、変に意味ありげで抽象的な言葉を無愛想なサウンドで無造作に投げ出す彼らのサウンドは、明らかに異質だった。配給元ののレーベルKitchenware自体がクセのあるアーティストを多く抱えていたこともあって、バンドの自主性を重んじることは良かれと思うけど、積極的に売り込むノウハウには欠けていたせいもある。

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 そんな彼らが一躍スターダムへと駆け上がるきっかけとなったのが、2枚目のアルバム『Steve McQueen』。ロング・セールスを記録し、USでも最高180位と下位ながら、唯一ビルボードでチャートインした、彼らの代表作である。以前のレビューでも書いたけど、ここからポップ・プロジェクトPrefab Sproutの本当の意味でのスタートとなる。
 タイトルからわかるように、アメリカでのリリースの際、遺族からクレームがつき、『Two Wheels Good』という、何とも中途半端なタイトルに変更させられた、という経緯がある。何かしら横やりが入るのもわかりそうなものなのに、アーティスト側はともかくとして、当時のエピックの担当者は何を考えていたのか。多分、たいして考えてなかったんだろうな。いきなり大ヒットするような類のジャンルじゃないし。

 世界的に見ても名盤扱いされているこのアルバム、当時「彼女はサイエンス」などの世界的ヒットで若手クリエイターとして注目されていたミュージシャン兼プロデューサーのThomas Dolbyとがっぷり四つに組んで作り込まれたポップの芸術品である。この時のレコーディング体験によってPaddyのポップ・センスが開眼、以後、長きに渡るタッグを組むことになるのだけど、それはまた別の話。

 で、ほぼDolbyとPaddyとの濃密な2人作業で練り込まれ組み上げられた『Steve McQueen』のレコーディングが終了、ミックスも何もかも終わって2週間後、ほぼ休む間もなく開始されたのが、この『Protest Songs』のレコーディング。普通ならフル・アルバム分のストックなんてなさそうだけど、もともと『Steve McQueen』用に用意された曲が相当数あり、クオリティの問題でボツになった以外にも、コンセプトが合わずに収録されなかった曲も多かったため、その辺は無問題だった。

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 目新しいエフェクトやMIDI機材に囲まれた中、主にスタジオ・ブースでシミュレートしながら創り上げてゆくサウンドは、もともとバンド・マジック的な連帯感とは無縁で、むしろソングライター的な気質を持つPaddyにとって、その孤独な作業は苦ではなかった。
 彼にとって音楽=作曲という作業は、勢い余った初期衝動の産物ではなく、むしろ精密に組み立てられた工芸品的なニュアンスの方が強い。ハプニングや偶然性をコンセプトとした現代美術ではなく、長い年月をかけて培われた技術によって生み出された職人の作品こそが、Paddyの志向するところなのだ。
 青年期の一時的な衝動を経て、華麗な円熟期へのベクトルが示されたのがこの時期だったと言える。

 ただ、人間はそうすぐには変われない。
 きらびやかな密室ポップへの方向性を見出したPaddy McAloonではあるけれど、ヒリヒリ叩きつけるような冬のつむじ風の如く、円熟を拒む規格外のサウンドを創り出すPaddyも、そこには同時に存在する。何しろ、この時のPrefabには彼以外、3人のメンバーがいたのだ。
 実弟Martin McAloon (b)、Neil Conti (dr)、そして紅一点、恋仲でありながら、ついにPaddyと結ばれることのなかったWendy Smith (key)。実質的にプロのミュージシャンと言えるのはNeilくらいであったため、当初からPaddyのワンマン・バンドとしての認識が強かったけど、それでも当時のPaddyはバンドという組織への理想像、運命共同体としてのあり方など持っていた。少なくともこの時期は。

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 精緻に作り込まれたサウンドの対極、または同列として、シンプルなバンド・サウンドへの憧憬というものも残っていたPaddyがここにいる。
 ギターの音色ひとつ、またはドラムのリバーヴ加減ひとつにもいちいちこだわり、あれこれ違うエフェクトを試しながら理想の音を探る、という作業も、それはそれでひとつのやり方である。だけど、そんなモダンなやり方、機材のセッティングに何時間もかけるようなやり方じゃなく、もっと段取りを端折ったっていいんじゃね?的な。メンバー全員でスタジオに入り、アンプの電源を入れたら軽いサウンド・チェックと雑なコード進行の打ち合わせ、それだけ決めてあとは「せーの」で音を出す。間違ったっていい。まずは探り探り完奏してみよう。終わったら一度テープ・チェック。あそこをこうやって俺はここで入るからお前はあのパートをこんな感じで云々。雑談交じりの打ち合わせは休憩時間の方が長い。でも、そんな無駄な時間も含めてのバンド・レコーディングなのだ。タバコの切れのいいところでリテイク。さっきの修正点も含め別なアプローチも交えつつ、もう一度演奏してみる。さっきよりまとまりは良い。でも、ファースト・テイクほどの緊張感や勢いはちょっと薄くなる。結局、全員一致で最初のテイクが採用となる。まぁこんなもんだよね。
 -そんな風にPaddyが思ったのかどうかは不明だけど、まだ辛うじてバンドとしての形が保たれていた、そんな危うげな状態だったPrefabの瞬間をパッケージングしたのがこのアルバムである。

 で、「プロテスト・ソングス」。「プロテスト」単体の語義はそもそも「反抗」という意味合いだけど、Prefabファンなら知ってのとおり、このアルバムに限らずどの時期においても、強い負の感情を表すサウンドは存在しない。一体、何に対してアンチを表明しているのか。
 『Steve McQueen』完パケ後、ほぼ時を置かずしてレコーディングは再開された。間口の広い「陽」に対し「陰」を司る象徴として、『Protest Songs』は制作された。そして陰陽のコントラストをより鮮明に印象付けるため、あまりブランクを置かずリリースすることが、バンドとしての意向だった。
 だがしかし。シングル「When Loves Break Down」が思いのほか売れてしまったため、状況は一変する。この勢いに乗せて収録アルバムをプッシュしてゆきたいエピックの思惑の方が重視され、リリースは一旦ペンディング、近い将来に改めて仕切り直し、という事態となった。
 そうなると面白くないのがバンド側である。当初から間髪置かず、連続リリースすることに意味があったのに、ブランクを置くことは意味合いがまったく違ってくる。あれだけ入れ込んで創り上げたにもかかわらず、Paddyは一気に興味を失ってしまう。もうどうだっていいや。
 で、実際にリリースされたのはその4年後。さらにレコーディング・テクニックにこだわりまくったおかげでスケジュールが押しまくった『Jordan the Comeback』リリース遅延のつなぎとして、このアルバムはようやくリリースされた。

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 そんな曰くや逸話の多い『Protest Songs』。「付帯情報ばかりが多いわりには地味なアルバム」と思われがちだけど、先入観を一旦取り払って聴いてみると、また違った側面が見えてくる。
 特に具象化がちょっとだけ進んだ歌詞。基本は、あまり救いのないラブ・ソングが中心なのだけど、主人公であるPaddyの視点の先、または背後のバックボーンに存在しているのは、絶対的な神の視点である。「教会」や「祈り」など、80年代のチャラいほとんどのポップソングと比べると、明らかに異色である。冷笑に満ちた皮肉な英国人にとって、宗教を中心とした世界観は至って普通のことであり、日々の生活に根差したものである。いくら性格が悪い英国人と言ったって、ほとんどは素朴で敬虔な一般人である。ただちょっと他人の不幸に目ざといだけであって。

 俺の家系は代々無宗教なので、その辺は詳しくわからないのだけど、ローマ=バチカンを主軸としたカトリック正教に対し、ヘンリー8世の独断によって誕生したのが、英国国教会を中心としたプロテスタントである。門外漢から見れば、どっちも同じキリスト教なんじゃね?と思ってしまうけど、彼らの中では新・旧ときっぱり別れている。同じ神を奉りながら、その姿勢はまったく別物なのだ。
 レーベルに対する反逆精神と対を成す、個人的な恋愛観の隙間から見え隠れする宗教観。
 これらのダブル・ミーニングを交えたタイトル=コンセプトを持つのが『Protest Songs』だとしたら、納得が行く。彼の中ではどちらも等価なのだ。


Protest Songs
Protest Songs
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Prefab Sprout
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1. The World Awake
 低音でつぶやくような「Oh, Yeah」というコーラスが耳に残る、気だるい世界の目覚めを象徴するナンバー。ベーシック・トラックもシンセのエフェクトも、あまり練られた感じではないけど、バンド・グルーヴが心地よいので最後まで飽きずに聴くことができる。
 アウトロ近くのフィル・インなど、Neilの技が光っている。やっぱ生粋のミュージシャンだな、この人は。

2. Life of Surprises
 後にリリースされたベスト・アルバムのタイトルにもなった、地味だ地味だと言われている『Protest Songs』の中では1.と並んでキャッチーなアップテンポ・ナンバー。ファンの間でも昔から人気が高い。そのベストに合わせてシングル・カットされ、UK24位という、彼らの歴史の中でも比較的高いセールスを記録した。
 ほぼ音色をいじっていないシンセのリフが気持ちいい。1.同様、ポップ・バンドにしてはグルーヴ感が強く出ている。ほんと、この路線もあったんじゃね?と改めて思ってしまう。

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3. Horse Chimes
 アップテンポがつづいたので、ここでペースダウン。軽やかで洒脱なアコースティック・チューン。あまり加工されていないPaddyのヴォーカルが瑞々しい。これ以降はもっとエコーも深めでフェイザーをかけ過ぎて、時に過剰になってしまう場合もあるのだけれど、ここでは曲調とマッチしたラフな仕上がりが良い方向に出ている。
 不思議なコード進行のため、Paddy以外が歌ったら支離滅裂になってしまいそうだけど、危うさを見せながらもきちんとまとまった小品に仕上げている。

4. Wicked Things
 リズム・セクションが思いのほか健闘ぶりを発揮している、ややホワイト・ソウルっぽさも感じさせるナンバー。Paddyにしては珍しく、ダルなロックンロールっぽいギター・プレイ。曲調としてはシンプルなので、逆にバンドの一体感がクローズアップされている。

5. Dublin
 A面ラストはさらにシンプルに、Paddyのアコギ弾き語りバラード。朗々と紡がれるダブリンの寓話は古色蒼然としており、80年代ポップへの反旗とも取れる。そう、チャラさばかりが強調されるネオアコ勢も、元をたどればみなパンクを通過しているのだ。

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6. Tiffanys
 チャールストンっぽく古き良きアメリカを軽やかに歌い上げる、いつもの人名シリーズ。ロカビリーを連想させるギター・プレイは、Paddy自身が楽しんでいる姿が想像できる。
 そう言えば大滝詠一も晩年はプレスリーのカバーやってたよな。洋の東西問わず、突き抜けたポップ馬鹿の背骨には、シンプルなロックンロールが宿っている。

7. Diana
 シングル「When Love Breaks Down」のB面としてリリースされたのが初出で、ここで再レコーディング。シングル・ヴァージョンが『Swoon』の面影を残したアップテンポだったのに対し、ここでは『Steve McQueen』を通過した後のアダルトなポップ・チューンに仕上がっている。
 オリジナルのギクシャクした変調ポップはニューウェイヴっぽさが強く出ていて、若気の至りとして聴くにはいいのだろうけど、やはりストレートなポップに仕上げた子のヴァージョンの方が俺的には好み。

8. Talkin' Scarlet
 当時、ネオアコ界でのヒロインの座を独占していたWendyのヴォーカルがフィーチャーされた、ジャジーな雰囲気のアコースティック・チューン。取り立てて起伏もなく淡々とした曲だけど、しみじみした味わいはファンの間でも人気が高い。ここでのPaddyのヴォーカルも、青臭い童貞が初彼女の前ではっちゃけてる感じでテンションが高い。そういった時期もあったのだな。

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9. Till the Cows Come Home
 産業革命時代の工場地帯を思わせるSEの後、もはやプレ『Jordan the Comeback』とも形容できる作り込まれたサウンド。すでに骨格は完成されている。
 あと必要だったのは、全体を包括するコンセプト、そしてPaddyの心の中にのみ存在する、「あるはずもない良き時代のアメリカ」という世界観。

10. Pearly Gates
 ラストは天国の門をテーマとした、荘厳とした正統バラード。メロディもコード的にもほとんど小細工もなく、ただただ神への無垢な信仰。あまりに無防備なヴォーカルは癒しとか安らぎをも通り越して、単にPaddy自身の祈りとして昇華する。もはや誰が聴いていようが、大きな問題ではないのだ。それはPaddy自身のための旋律である。
 目立たず寄り添うようにハーモニーを重ねるWendyと共に、このアルバムはきれいに完結する。
 その円環構造に出口はない。いつまでも愚直に、ただ延々と回り続ける。



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ある意味、プログレよりもプログレッシヴ - Prefab Sprout 『Crimson Red』

folder 2013年リリース、今はPaddy McAloonの独りプロジェクトとしてすっかり定着したPrefab Sprout、4年振りのニュー・アルバム。UK最高15位チャートインは『Andromeda Heights』以来の好成績、なぜかドイツでは92位、スウェーデン21位ノルウェー10位というデータもwikiではアップされている。なんだか中途半端なデータだな。
 4年振りとは言ってもこの人の場合、もう何十年もエンドレスで楽曲制作・レコーディング作業を続けているので、このアルバムのために新たに書き下ろしたマテリアルは少なく、過去のアーカイブを再構成した割合の方が多い。その量が膨大かつ中途半端なデモ・テイクが多くを占めているため、ひとつにまとめる労力たるや、ハンパないエネルギーを必要とする。
 もともと前世紀から寡作で知られるPaddyなので、この4年というインターバルは全然短い方、彼にしてはかなりのハイペースである。今どきメジャー第一線で活動している現役アーティストだってこのくらいのリリース・スケジュールになっているのだから、やっと時代がPaddyに追いついた感じである。いや違うな、きっと。
 リリース・スパンが短くなりつつあるのは、Paddy自身、残された時間が限られていることを意識しているせいもある。なので、これまで中途半端な仕上がりで未整理になっていた作品たちへの落とし前をつけるような、総まとめ的な作風が強くなっている。

 ただ前作『Let's Change the World with Music』リリース前にも『Steve McQueen』のレガシー・エディション・リリースに伴うリマスター+アコースティック・リメイク・ヴァージョンの制作も行なっているので、ここ近年は表に出る仕事が結構多くなっている。
 そりゃMark Ronsonや秋元康の仕事量と比べると微々たるものかもしれないけど、彼らが多くの実動スタッフを擁して流れ作業的にこなしているのに対し、Paddyの場合はほぼ単独、しかも手のかけ方が丁寧かつ細部に至っているので、作業の延べ時間は同等と言ってもいいくらい。表に出た結果と裏方仕事の比率の違いだと思う。
 オフィシャルにリリースされたアイテムが少ないため、世間的には寡作の人と思われがちだけど、制作中にフェード・アウトしてしまった作りかけのアルバムや楽曲が山のようにあることは、ちょっと熱心なファンなら誰でも知っている事実。もともと頻繁にライブやインタビューを受ける人ではないので、無為な隠遁生活を送ってるように思われがちだけど、実際はなかなかのワーカホリックである。

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 このアルバムがリリースされる経緯というのがまたこんがらがっており、そういった意味ではちょっぴり話題を集めたアルバムでもある。
 すごく端折ってまとめると、
 ① 何の前触れもなく、ほぼ完パケ状態のデモ音源集『The Devil Came a-Calling』がネット上に流出。
 ② 出どころ不明のため、ソニーは沈黙。その後、新作製作中のインフォメーション発表。
 ③ 曲順を変えただけ、ほぼそのまんまの形でオフィシャル・リリース、
 といった流れ。
 この流出がアクシデントだったのか、それとも関係者による意図的なものだったのか、その辺はうやむやにされて未だ不明だけど、Prefab Sproutという存在にニーズがあるのかどうかという市場リサーチ、ある種のアドバルーン効果を狙って流出させたものなんじゃないか、とは俺の私見。アーカイブものではない完全未発表ニュー・アイテムがどこまで受け入れられるのかを気に揉んだ末のアクションは、ネット時代を象徴したエピソードである。ファンだったらそんなの、無条件で受け入れるはずなのにね。

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 下世話な話だけど、「どうやって食ってるんだろう?」と思ってしまうくらい、今ではメジャー・シーンの喧騒からは身を引き、世俗的な所から離れて暮らしているPaddy。自宅兼スタジオのあるイギリスの古都ダラムは学生都市でもあるので、さほど生活費はかからないのかもしれないけど、スタジオの維持費だってそれなりにかかるだろうし、正直印税だって潤沢なものではないはず。
 それこそAndy Partridgeのように、デモ音源公開もビジネスとして捉え、しっかり計画立てたアーカイブものをリリースしていけば、財政的にも少しは潤うと思うのだけど、案外その辺が妙に前向きなので、ややこしくなる。自身が納得いくまでトラックに手を入れ、完成品じゃないとリリースしないのは、イギリスが誇るポップ馬鹿たる所以である。

 Paddy McAloonは世界のポピュラー界において稀代のソングライターではあるけれど、自ら行なうことが多いスタジオ・エンジニアリングの技術レベルは、お世辞にも褒められるものではない。レコーディングの使用機材が30年前のレベルで止まってしまっているため、現代の音響技術に追いついていないのが実情である。
 正直、年代物のATARIで製作された打ち込み音源は、今の視聴レベルでは古臭く聴こえてしまう。機材のポテンシャルが追いつかず、ピーク・レベルを超えて音割れしてる箇所だって目立つ。80年代に活躍したシンセポップ・ユニットの未発表アルバムと言われても、つい信じてしまいそうになるサウンドである。なので、現代のメインストリームの音楽には決して成り得ない。
 ほんとならPaddyの作った音源をベースにして、各トラックの音色だけアップ・トゥ・デイトなサウンドにコンバートしてしまえば、もう少しファン層の拡大に寄与すると思ってるのは俺だけじゃないはず。ていうかPaddy以外の誰もが多かれ少なかれ思ってることなのだけど、そうなる気配はひとっつもない。Thomas Dolbyは現場から離れて長いから難しいとして、もう少し現役感のある若手クリエイターにある程度委ねちゃってもいいんじゃないの?と余計な心配までしてしまう。

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 今後のリリース・スケジュールを考えてみると、一時期よりはだいぶ健康状態も回復しているようだけど、年齢的に偏執的な凝り性は進行しそうだし、一から十まですべてをハンドメイドで行なう作業スタイルは変わらないと思われるので、基本的なペースは変わらないと思う。前述したように、今どきのメジャー・アーティスト同様、平気で4〜5年くらいのブランクを空けることは世間的にごく当たり前になっているし、締め切りに追われたケツカッチンの作業をするのは性に合わなさそう。ていうかそういった仕事をPaddyに期待するのはお門違いだし。
 幸い作りかけのマテリアルは山ほどあるし、ネタに困るといったタイプでもないので、そのへんの心配は少ない。直近の2作同様、過去のアーカイブの幾つかを基本として、そこに新たに作ったマテリアルをプラスしてゆく、というスタイルを今後も続けてゆくんじゃないだろうか。
 これまでも「Michael Jacksonの一生」や「20世紀アメリカ文化の総括」など、構想半ばのコンセプト・アルバムが過去インタビューで明らかにされているけど、正直残された時間を考えると、すべてのプロジェクトの完成はちょっと難しい。なので、地球の歴史を長大な組曲として完成させる予定だった『Earth: The Story So Far』が『Let's Change The World With Music』に取り込まれたように、これまでの大がかりなコンセプトを曲単位に凝縮して、小品集的なアルバムとしてまとめるスタイルになると思われる。実際、名言はしていないけど、長大なコンセプトの名残りを残したような作品もここでは見受けられるし。

 今後のPaddyの仕事を円滑に進めるために必要なのが、優秀なコーディネーターの存在。Thomas Dolbyとのコラボ解消後はもっぱらCalam Marcomがテクニカル・パートナーとなっているけど、彼はあくまでエンジニアであり、サウンド面のアドバイスの域を出ることはない。スタジオという閉じられた空間での音楽ファイルのやり取りのみのコミュニケーションだけでは、外に広がっていかないのだ。Paddyの作品傾向やコンセプトを理解した上で、アーティスト・イメージを保持しつつ、新たな展開を真剣に考えてくれるマネジメント、ビジネス・パートナーが必要なのだ。
 いっそオーケストラとの共演アルバムなんかは相性が良いと思うのだけど、そういった動きもない。幼少時から教会音楽に慣れ親しむ機会の多い英国人ゆえ、ストリングスとの親和性は高い。予算や時間、段取りの煩雑さに対してのリターンが少ないせいもあるのだろうけど、これまでの古臭い打ち込み音源よりはずっとマッチするはず。
 こういった新プロジェクトにまつわる交渉ごとにおいては、アーティスト本人の熱意だけでなく、きちんと損益分岐も考えたコーディネイターの存在が必要になるのだ。問題は、その適任者が誰になるのか。Kitchenwareじゃ規模的に無理そうだし、条件的には一番適いそうなソニーもアーカイブ以外には予算を渋りそうなので、これもまた難しい。
 その辺を誰かプレゼンしてくんないかな。


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1. The Best Jewel Thief In The World 
 直訳すると「世界一の宝石泥棒」。なので、イントロに交じってパトカーのサイレンが遠くから鳴り響いているという設定。シングル・カットも一応されているけど、まぁ取り敢えず出してみました、といった感じ。今さらシングル・チャートにこだわってる風でもなさそうだし。
 それでもシングルにしただけあって明快なリフ・フレーズは覚えやすく取っつきやすい。でも正直、ミックスがねぇ。どの音も主張が強すぎて詰め込み過ぎた印象が拭えない。もうちょっとスッキリ整理してほしかった。



2. The List of Impossible Things
 なので、このくらいのサウンドの加減の方が、Paddyのヴォーカルにはしっくり来る。間奏のギター・ソロは郷愁を誘う。ちょっとブルースっぽくもある拙い感じが今の風貌にもマッチする。
 昔のThomas Dolbyのプロダクションだと、こういった曲調の場合、もっと幽玄としたエコーをかけて奥行きを演出していたのだけど、ここではほぼノン・エコーのドライなヴォーカル・トラックに仕上げている。雰囲気重心ではなく、一音一音をしっかり聴いてもらいたいという心境の変化か、それとも技術スキルの問題なのか。

3. Adolescence
 このシンセの音色は今じゃオールド・スタイルなのだけど、やはりPaddyの作る音楽にはしっくり馴染んでいる。今さらやり方を大幅に変えることもできないし、このサウンドを想定しての一連のメロディ、コード進行、そして歌詞なのだろう。
 一節にアルバム・タイトル「Crimson Red」が挿入されている。
“Adolescence Crimson/Red Fireworks Inside Your Head”
 タイトルは「思春期」の意。永遠の思春期をさまよい歩くPaddy、その秘めたる情熱は深紅の炎の如く熱く、そして自らを焼き焦がす、といった意味か。毛髪はすっかり白いけどね。

4. Grief Built The Taj Mahal
 これも直訳すると「深い悲しみがタジ・マハールを建てた」。これまでよりエフェクトも少なく、ほぼナチュラル・トーンのギターの弾き語りスタイル。曲調的には『Andromeda Heights』期のニュアンスに近く、これも壮大なコンセプトの一片と窺える。地味な曲ではあるけれど、Paddyのヴォーカルが最も映えるのはこういったシンプルなスタイル。

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5. Devil Came A Calling
 発売前にさんざん出回った流出ブートレグのアルバム・タイトルとなったトラック。「悪魔が呼び出しに来た」といった不穏なタイトルが象徴するように、サウンドもダークなテイストで統一されている。凝ったコードもそれほど使っておらず、メロディ自体はほとんどワンパターン、それが呪術性を象徴しているのだろう。
 60年代Dylanのベースメント・テープスのアウトテイクから引っ張ってきた、と言われたたら信じてしまいそうな、そんなテイストのアコギかき鳴らしナンバー。

6. Billy
 ここでも出てきた個人名シリーズ、今回はBilly、William氏。ネオアコ・テイストを彷彿とさせる、やや青さも感じさせるミディアム・チューン。バンドとしてのPrefab Sproutを思い出させてくれる曲調で、オールド・ファンには最もウケがいいと思われる。まだこういったこともできるんだなぁ、と改めて感慨に耽ってしまう。
 あぁ、これももっといい音で聴きたかった。

7. The Dreamer
 サウンド的には最もコンテンポラリーで、間口の広いナンバー。今のPrefab Sproutがどんな音楽をやってるのか?と問われた場合、この曲を聴かせればファンになること請け合いだと思う。まぁそんな機会ってまずないんだけど。
 2部構成の組曲となっていて、後半はほんと『Andromeda Heights』サウンドになっちゃってるのだけど、これもデモ自体はその時期に作られたんじゃないかと思われる。「Dreamer」なんて言葉、50近くになってからは滅多に口に出せないしね。



8. The Songs Of Danny Galway
  Danny Galwayは架空の人物。もちろんモデルは実在しており、かつて楽曲提供し、セッションまで行なってしまったPaddy憧れのアーティスト、Jimmy Webb。ここでは恐ろしく持ち上げられているDanny、いやほんとはJimmy。
 ストレートな憧憬を表現するため、ヴォーカルにも熱が入り、シンプルなバンド・セットでのサウンド・メイキングとなっている。やっぱりこうだよな、Prefabって。AORっぽいメロディアスなのもいいけど、時々こうやってアクティヴにやってくれてた方がメリハリがついてグッド。

9. The Old Magician
 老マジシャンを歌った、こちらも60年代末期Dylanをイメージさせるアコギ弾き語りナンバー。歌詞の内容もDylanっぽく老成した内容。ていうかこの人、昔から老成した歌詞ばっかり書いている。後期に入ってからは純粋なラブ・ソングを書き、そして今は年相応のテーマを歌うようになった。
 若い時に敢えて斜に構えて「老い」を歌ったかつての楽曲より、当事者として素直な視点で歌えるようになったことは、成長なのかそれとも老成なのか。まぁどっちもだろう。

10. Mysterious
 ラストは情緒的なハープが全編を彩るミディアム・チューン。アルバム前半の派手な打ち込みサウンドから徐々にアコースティック・テイストに変化してゆき、ここではゆったりした「いつもの」Prefabサウンド。音数も少ないので、変に強調されたミックスになることもなく、安心して聴くことができる。
 そうだよ、別に「進化」なんかしなくっていい。いつものサウンドで充分なんだ。変に今風に合わせなくたって、聴き続けるファンは必ずいるんだから。






 今のところのPaddy、目立った動きはない。今どきFacebookもtwitterもインスタグラムもやらないので、インフォメーションの経路は恐ろしく限られている。世界中のファンサイトが熱心に情報を上げてくれてはいるけれど、そのほとんどはアーカイブの発掘情報ばかりで、リアルタイムの状況が発信されることはほとんどない。
 多分、今もダラムの田舎で規則正しい静かな生活を送りながら、マイペースな創作活動に励んでいるのだろう。それがPaddyの望んだ環境である以上、ファンは彼が腰を上げるのを待つ他にない。
「惚れちゃった弱み」っていうんだろうな、こういうのって。



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イギリスのネオ・アコ・ポップ馬鹿、最初の覚醒 - Prefab Sprout 『Steve McQueen』

folder 1985年にリリースされた2枚目のアルバム。UK最高21位は、22位を記録したデビュー作『Swoon』とあまり変わらないけど、最高25位のスマッシュ・ヒットのシング”When Love Breaks Down”が話題となってロング・セラーになった。
 それほど愛想もないインディー出身のバンドとしては、なかなかのセールスになったため、ほんとは間髪入れずリリースする予定だったアルバム『Protest Songs』がオクラ入りしてしまったのは、うれしい悲鳴であり、ちょっと不本意なアクシデントではあったけど。

 ほぼ同世代のバンドAztec Cameraと同じネオ・アコ・シーンから出てきた人たちだけど、接点があった話は聞いたことがない。ていうかAztecに限らず、他のバンドとの交流はほとんどないバンドである。
 孤高の存在といえば聞こえはいいけど、いま思えばコミュ障をこじらせてる人間ばかり。今じゃすっかり達観した仙人のような風貌のPaddyを始めとして、ベースのMartinは実の弟だし、恋人だか単なるメンバーだか、ずっと微妙な立場に甘んじていたWendy Smithも、結局は煮え切らないPaddyとのパートナーシップ解消と共にバンドを去り、今ではすっかり業界から足を洗っている。唯一のバンドマンであるNeil Contiが早々に見切りをつけてバンドを去ったのは、正しい判断だったと言える。

 Aztec Cameraとの直接的な関係はなかったけど、彼ら同様、Prefabもまた、このメジャー2作目でガラリと作風を変えてきた。『Swoon』がインディー時代の集大成として、粗削りでどこか未完成の可能性を秘めた習作だったのに対し、ここではメジャー販売網を意識したポップ・サウンドになっている。普通の感性ならまず使おうとしないコード進行や不安定なメロディはそのままに、不愛想な4ピースのシンプルなサウンドだった『Swoon』 と比較して、ここではメジャー・ヒット作と遜色ないものに仕上がっている。

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 この変化はPaddy独自のものではなく、その後長らくコラボすることになる盟友Thomas Dolbyの影響が大きい。
 今もミュージシャンとしての活動は行なっているけど、ネット関連のビジネスマン的側面が強いThomas、この頃は最新機材を駆使したシンセ・サウンドが好評を得て、David BowieやJoni Mitchellなど、大物ミュージシャンからも引く手あまたの活躍だったのだけど、それがどうしてバジェットも小さい新人バンドのプロデュースを引き受けたのか。
 多分双方とも、「ぜひ彼とタッグを組みたい」と指名したわけでもなさそうなので、エージェントからの要請がきっかけだと思う。その後も何かと共同作業を行なっているというのは、目指す方向性が同じだったのだろう。

 『Steve McQueen』は今をもっても彼らの代表作と言われており、実際、Paddy自身にとっても大きなターニング・ポイントとなっている作品である。もしThomasに出会えてなかったら、『Swwon』だけの泡沫バンドで終わっていた可能性もあるし、時代の徒花として片づけられていたかもしれない。
 そんなアルバムが、レコード会社の要請によって、レガシー・エディションが発売されることになる。本来は発売20周年に合わせて2005年にリリースされる予定だったのだけど、大幅に制作が遅れに遅れ、実際リリースされたのは2007年、さらに2年が経過してからだった。

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 普通、こうしたデラックス・エディション形式のアルバム制作の場合、アーティスト本人が関与してくることは、ほとんどない。中心となる作業が、収録トラックのリマスタリングやリミックス、または当時のデモ・テープやライブ・トラックの発掘が主たるもので、実作業はディレクターやエンジニア主体である。せいぜい、形ばかりの監修くらい、名義貸しくらいしかやることはないのだけれど、なぜかPaddy、どこで本気を使ってるのか、新緑アコースティック・ヴァージョン8曲を新たにレコーディングしている。しかも、単なるアコギの弾き語りではなく、時間をかけて熟成され、緻密なオーヴァー・ダヴによって新たな命を吹き込まれている。
 80年代を象徴するDX7サウンドのヴェールを剥ぎ取った中から現れたのは、Paddyのピュアで透徹としたヴォーカルと、丁寧に重ねられた明瞭な響きのギター・サウンドだった。その繊細さからは、20年という時間すら忘れてしまう、エヴァーグリーンなテイストが漂っている。


Steve Mcqueen
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1. Faron Young
 トップに相応しい軽快なロックンロール・ナンバー。『Swoon』の延長線上で購入したネオ・アコ・ファンなら、きっとその変化に驚いたんじゃないかと思う。オールド・ロックンロールをリスペクトしたギターの音色、DX7のエフェクト、またバンジョーやブルース・ハープを入れる発想は、やはりThomasの貢献が大きい。ていうか新人バンドをテスト・ケースとした、彼の壮大な実験。
 シングルとしてもリリースされ、UK最高74位。2007年ヴァージョンはギターに薄くシンセを被せており、弦の擦る音までクリアに生々しく録音されている。



2. Bonny
 ここからしばらく続く、Prefab人名シリーズの第1弾。彼女であるBonnyと破局、家を出てゆく様をポップ・サウンドにコーティングして、他の曲とのバランスを取っている。2007年ヴァージョンはシンプルなサウンドをバッキングに、朗々と切なさを表現している。
 Paddyの意図としては、詞のストレートな解釈として、悲壮感漂うニュー・ヴァージョンのサウンドにしたのだろうけど、俺的にはオリジナルの方が逆にドライな質感で好み。

3. Appetite
 単純に"Appetite"という語感が好きだったのだけど、後になって「食欲」の意味だと知り、ちょっと拍子抜けしてしまった想い出。まぁそこをラブ・ソングと絡めて世界観を作ってしまうソング・ライティング能力は、同世代ソングライターと比べても段違い。
 こちらもシングル・カットされており、UK最高92位。でもなぜかオーストラリアでは45位にチャート・インしている。メロディ・ライン的には、このアルバムの中ではわかりやすい方なので、もっと売れてもよかったんじゃないかと思うけど。
 


4. When Love Breaks Down
 でも、この曲に比べると、ヒット・ナンバーとしてのキラキラ感が違っていることに気づかされる。ちなみにこのアルバム、総合プロデューサーはThomasなのだけど、この曲だけPhil Thomallyという人が制作を手掛けている。
 あまり聞いたことがない人なので、ちょっと調べてみると、もともとCureに在籍しており、ちょうどこの頃はプロデューサーやソングライターとして活躍していた頃。Bryan AdamsやThompson Twinsらを手掛けていた、いわゆるヒット請負人。Thomasの音作りだと、時にマニアックになり過ぎるところを、ヒット・チャート狙いで作り込みを減らし、ムーディさを強調することで、高級AORっぽいサウンドに仕上げている。
 なので、俺だけじゃないと思うけど、この曲の「これじゃない感」を持つPrefanファンが結構多いはず。

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5. Goodbye Lucille #1
 すでに『Jordan:The Comeback』への萌芽が垣間見える、このアルバムの中でもちょっと異質な、それでいて親しみやすいメロディを持つナンバー。若手バンドらしく、若き日のPaddyのシャウトするヴォーカルも聴くことができる。
 これもシングル・カットされており、UKでは64位なのだけど、アイルランドではその熱さが好評だったのか、最高28位、4.と同じくらいのチャート・アクションを見せている。

6. Hallelujah
 ギターで参加してるKevin Armstrongは、Thomasのお抱えギタリストとも言うべき、今をもって行動を共にしてる人。ちょっとブルースっぽい響きはあるけど、Thomasの創り出すテクノロジー・サウンドとのミスマッチ感が、逆に相性良く聴こえる。
 この曲もメロディのはっきりしない曲なのだけど、Prefabのファンはあまりキャッチーなメロディを求めていないので、逆にこれも人気は高い。『Swoon』サウンドをビルドアップさせたような、モダンなバンド・サウンドは完成形。なので、レガシー・エディションでもこの曲は再演されていない。ていうか、うまく行かなかったのかな?

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7. Moving The River
 LPでいえばB面は浮遊するメロディ、ちょっと凝ったコード進行の曲が多く収録されている。なので、今もってこのアルバムが多くの人を惹きつけるのは、このミステリアスさ他ならない。一聴して虜になってからも、どこかヴェールに包まれた核心の部分はひっそり残されているのだ。
 レガシー・エディションではオーヴァーダヴもなく、ほんとギター一本のみで歌っており、曲の構造が剥き出しになっているのだけど、クリアに明快になったわけではない。

8. Horsin' Around
 『Swoon』のアウトテイク的な、起伏の少ないメロディを持つナンバー。変則的なワルツは後半、ジャジーなテイストに変化する。Prefabの作品の中でも独特な、ちょっと実験色が濃いナンバーなのだけど、実はシングルB面だと、こういった曲はゴロゴロある。ほんと趣味的な色彩が濃いので、よくこれを収録したものだと思う。

9. Desire As
 ここでのゲスト・ミュージシャンは、前述のKevinとMark Lockhartというサックス・プレイヤー。ほぼ雰囲気づくり的なKenny G.テイストの音色なので、それほど目立った感じではない。
 ブリティッシュ・ジャズ系統のミュージシャンで、今もコンスタントに活動しており、特別代表作みたいなものはないのだけど、なぜかRadiohead 『Kid A』にクレジットされている。ちゃんと聴いてなかったけど、ちょっと意外。
 レガシー・エディションでも再演されているけど、まぁテイストはそんなに変わらない。

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10. Blueberry Pies
 こちらも『Swoon』の延長線上的ナンバーで、最小限のエフェクトによって、やや聴きやすくマイルドに仕上げている。2分程度の小品なので、まぁタイトル同様、お手軽で肩慣らし的な曲。

11. When The Angels
 最後を飾るのは、キリスト教原理主義に則ったナンバー。そこへは神への敬意と共に、どこか皮肉も入り混じった複雑な感情が入るのは、生粋の英国人。
 これもメロディ的には、それほどキャッチーなナンバーではないはずなのだけど、Thomas渾身のアレンジメントによって、ラストに相応しい華やかなサウンドに仕上げている。




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北海道の中途半端な田舎に住む、そろそろアラフィフ男。ほぼ週1のペースで音楽ブログ更新中。節操ない聴き方と思われてるけど、自分の中では一貫してるつもり。 最近は蔵書の整理がてら、古い本を再読中。ジョン・アーヴィングから始まって、フィッツジェラルドやゾラ、モームなど、いわゆる古典の復習中。いつになったら終わることやら。新刊読めねぇや。
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