好きなアルバムを自分勝手にダラダラ語る、そんなユルいコンセプトのブログです。

Police

「ケンカするほど仲はいい」とは言うけれど。 - Police 『Synchronicity』

folder 実質5年という短い活動期間の中、Policeは世界ツアーとレコーディングのルーティンを繰り返し行なっていた。やり手マネージャーMiles Copeland の戦略に基づき、次々とスケジュールが組まれため、『Ghost in the Machine』のレコーディングまで、ほぼ休みのない状態だった。
 明確なビジョンと行動力のあるマネジメントのおかげもあって、Policeは早い段階からワールドワイドな活動を行なっており、実際結果もついてきたわけだけど、実働部隊からすればたまったものではない。
 いま自分たちがどの国にいるのかもわからない、長く終わりなき世界ツアーの最中も、膨大な取材やフォト・セッション、当て振りの演奏を強要されるテレビ出演がねじ込まれる。訪れる国は変わっても、求められることは大体似たようなものだ。
 場所が変わっただけで、やる事は大体いつも同じ。そんな日々が長く続けば、時々フラストレーションが爆発するのも無理はない。定番の乱痴気騒ぎだったり、またはメンバー間のゴタゴタが絶えなかったり。

 そんな間を縫って、彼らは断続的にスタジオに入り、レコーディングを行なった。ライブで練り上げてきた曲もあるけど、ほとんどはスタジオに入ってから書き上げ、ほぼぶっつけ本番で演奏を組み立てる。何しろ時間が足りないので、短期間でチャチャっとまとめなければならなかった。
 メインのソングライターであるStingがハイレベルの多作家であったこと、またStewart Copeland もAndy Summers もテクニック的には折り紙つきだった上、下積みが長かったこともあって、場数を踏んでいた。なので、彼ら3人が顔を合わせて音合わせ、すぐ本テイクがレコーディングされ、それでいっちょ上がり、という具合が続いていた。
 Stonesのように、ダラダラ長時間セッションを行なうよりはずっと合理的だけど、逆に言えば、じっくり練り上げることがなかったため、若干やっつけ仕事っぽいテイクがあることも事実。「De Do Do Do, De Da Da Da」なんて、語感の勢いとインパクト勝負だけだもんな。その力技が強烈なんだけど。

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 デビューからずっと、そんなレコーディング事情だったため、意外なことにPoliceの未発表曲というのは、ほぼ存在しない。1993年にリリースされた5枚組ボックス・セット『Message in a Box』にも、シングルのみリリースの曲がいくつか収録されているけど、ほとんどは耳慣れたアルバム収録曲ばかりで、レア物といえるものはない。その後も、大物アーティストにありがちなデラックス・エディションの企画も立ち上がらないところからみると、よほど発掘ネタがないんじゃないかと推測される。
 プリプロダクションの段階でキッチリ絞り込んだおかげか、それともほんとに年末進行状態で手早く作業していたのか。まぁどっちもありえるな。
 それにもともと彼ら、長時間一室に閉じ込めて成果が上がるタイプのバンドではない。むしろ、普段はできるだけ遠ざけておいた方がよい、どいつもこいつも血気盛んな輩なのだ。
 スタジオ内やステージでのつかみ合い、または怒号。真剣さが高じて殺意が飛び交うバンド。それがPoliceだ。よく何年も一緒にやってたな。

 働きづめだった彼らへのご褒美として、彼らはモンセラット島でのバカンス休暇を与えられる。とはいえ、そこはマネジメントの抜け目ないところ、バカンスと兼ねて次回作のレコーディングもセッティングされていた。
 まぁ本人たちも、その辺は同意の上だったんだろうな。デビューしてからずっと、時間に追われたレコーディングだったし、ゆっくり手間ひまかけた作業ができる環境を用意してもらったんだし。

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 Policeの基本サウンドは、Sting × Stewart × Andyによるシンプルな3ピースが主体で、これは活動休止前まで変わることはなかったけど、このレコーディングでは時間的な余裕もたっぷりあったおかげで、メンバーそれぞれ寄ってたかって、サウンドでの実験に力を入れている。骨格のギター・ベース・ドラムのトライアングルに加え、ポリフォニック・シンセやホーンが、あらゆる曲で効果的に使用されている。最低1曲は入っていたレゲエ・ビートも一層され、シンセポップへ大胆にアプローチした楽曲が主体になっている。
 これまでと勝手が違うセッションだったせいもあって、ここに来てリハーサルやリテイクの数が多くなっている。なので、ブートで流出しているスタジオ・セッションというのは、ほぼこの時期に集中している。公式では未発表なので、聴きたい人は各自調べてみてね。
 「ケンカするほど仲が良い」とはよく言ったもので、いくら殴り合いが多かった3人とはいえ、この時期は一緒にレコーディング・ブースに入るだけ、まだマシだった。3人そろって「せーの」で音を出し(この時点でつかみ合いになることも多いけど)、ラフ・ミックスを聴きながら、あぁだこうだと意見を出し合いながら、シンセやエフェクトを加えたりして(この辺だと殴り合いだな)。基本は、従来のバンド・スタイルと大差ない。

 『Synchronicity』レコーディングは、『Ghost in the Machine』で培ったメソッドを、さらに深く推し進める形で行なわれた。基本、演奏は3人で行なわれ、ほぼ外部ミュージシャンを使うことなく、あらゆる機材が使用された。されたのだけど、レコーディングで3人が顔をそろえることはほとんどなく、大抵は個別のブース、スタジオを使用して別々に行なわれた。
 3人ともソロ活動を開始していたため、スケジュール調整が困難だった、というのが表向きの理由だった。シンセ機材の導入によって、特にStingの楽曲なんかは、ほぼ独りで完結させたトラックもあり、グループとしての必然性が薄い状況が垣間見える。
 当時からすでにささやかれていたことだけど、実際はグループ内の人間関係の悪化に尽きる。以前までは、せいぜい殴り合い程度で済んでいたのが、ここに来て蔓延しつつあった、シャレにならない殺気立った空気を、本人・スタッフとも按じての処置だった。
 3人そろってスタジオ入りしても、2人はそれぞれ別のブース、もう1人が調整卓の前とバラバラだったため、以前のような顔を合わせてのセッションは、ほとんど行なわれなかった。
 そんな按配だったため、『Synchronicity』のアウトテイクというのは、原則存在しない。ほとんどの楽曲はStingの手によるものだけど、彼の場合、もともと音源管理がしっかりしているのか、デモ・ヴァージョン的なものも発掘されない。30年経っても流出しないのだから、本当にないんだろうな、そういったのも。

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 言っちゃえば、Stingのソロ・アルバムの助走みたいな形となった『Synchronicity』 、初期の中心コンセプトだった「レゲエとパンクの融合」といったお題目はどこへやら、万人向けにすっきりコンテンポラリーにまとめたサウンドは、コアなロック・ユーザー以外にも強くアピールし、大ヒットを記録した。何しろ、あの『Thriller』と対等に渡り合っていたくらいだから、人気のほどが窺える。
 取り敢えず、一触即発が続きながらもレコーディングを終え、大規模な世界ツアーに出る3人。もうこの頃になると、いろいろ突き抜けてしまった挙句、ビジネスライクな関係へ変化していた。
 ちょっとした小競り合いくらいはあったけど、基本は不干渉。顔を合わせるのは最小限に抑え、貼り付けたような笑顔で人前に立ち、インタビューを受ける。もともとフレンドリーな関係ではなかったけど、えも言えぬ殺伐さは隠しきれなかった。もう隠す気もなかったんだろうな。
 『Synchronicity』プロジェクトをひと通りこなし、3人はソロ活動に入る。
 -もうしばらくは、姿も見たくなければ名前も聞きたくない。
 一旦、クールダウンの意味も含めて、バンドは暫し活動休止となる。

 それから3年ほど経過して、再度彼らは集結する。再びPoliceが動き始めた。
 長いブランクは、誰にとっても良い結果をもたらすはずだった。
 3年も経つと、大抵の悪感情は吹き飛んでしまう。わだかまりは薄れ、過去を振り返る余裕が生まれてくる。あの時ががむしゃらで気づかなかったけど、俺たちすごい事を成し遂げたんだし、考えてみれば、そんなに悪い奴らじゃなかったよな。
 誰もが、そう思っていたはずだった。ここはひとつ気持ちを改めて、もう一度バンドでやってみようじゃないか。
 そのはず、
 だったのだ、
 けど―。

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 結局、そのセッションは、何も生み出すことなく終わった。レコーディングにあたり、メインのソングライターであるはずのStingが、新曲を提供するのを渋ったのが主因だった。
 すでにソロ活動が軌道に乗っていた彼にとって、出来の良い楽曲は自分のものという認識だった。まぁ間違っちゃいない。いないのだけれど。
 かつてのように、スタジオでは怒号が飛び交い、掴み合いが始まった。それが一段落すると、延々と重い沈黙が続いた。時間だけが、無為に過ぎて行った。
 フレーズの断片や単調なリズム・トラックだけでは曲が構成できず、結局形になったのは、「Don’t Stand So Close To Me」のセルフ・カバーのみ。まぁこれが中途半端な仕上がりで、再始動のリード・トラックとして、一応は絶賛されていたけど、オリジナルを知ってる人なら「何これ?」と思っていたはず。PV制作を担当したGodley & Cremeの映像テクニックでごまかされたけど、アレンジは至って凡庸。多分、本人たちにとっても黒歴史だな。
 どうしてもキャンセルできなかったと思われるライブを3回行なった後、その後音沙汰はなく、Policeは自然消滅した。多分、アルバム契約も残っていたんだろうけど、「Don’t Stand So Close To Me ‘86」を無理やりねじ込んだベスト・アルバム発売で事態収拾した。多分、Michael Copelandがうまくねじ伏せたんだろうな。

 それからさらに20年ほど経って、3人は再々集結する。綿密な準備と段取りによる、本格的なリユニオンだ。大規模な世界ツアーを行なったけど、Stingの強い希望によって、レコーディング・セッションは行なわれなかった。
 -あんな惨劇はもうまっぴらだし、もし続けられたとしても、『Synchronicity』のクオリティには絶対追いつけない。
 そう悟ったのだろう。3人とも。








1. Synchronicity I
 パンクでもニューウェイブでもない、その後、各自のソロでも似たようなのがない、突然変異的に生まれたPoliceオリジナルのサウンド。シンセというよりは、キーボードだな、特別音色もいじってないようだし。あとはいつもの手数の多いドラム、それと同じく手数の多いリード・ベース。あれ、ギターは?ここではAndy、鍵盤系を受け持っている。
 「意味のある偶然の一致」という哲学用語をテーマにサビを設定したことによって、発語やコンセプトは硬質となっている。サウンドは隙間なく埋められ、3ピース特有の「間」はほぼない。息が詰まる、でもあっという間の3分間。

2. Walking in Your Footsteps
 Stewartの繊細でマニアックな技が光る、ポリリズミックなパーカッションをベースとした、浮遊感あふれるトラック。アフリカ奥地のジャングルの夜、深い闇で行なわれる獣たちの宴。そんな感じ。途中、いきなりキーを上げて咆哮を上げるSting。その雄叫びは、帳を切り裂く。

3. O My God
 『Zenyatta Mondatta』期を思い起こさせる、シンプルに3ピースで構成されたチューン。こういったリズムから発展して作らてたような曲だと、ほんとStewartの貢献度が大きなものだったことがわかる。やや走り気味のドラムを制するような、Stingの効率的かつキャッチ―なリフ・プレイ。なのでAndy、ここでもあんまり存在感がない。

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4. Mother
 と思ったら、ここでAndyが覚醒。呪術的なイントロと、マッド・サイエンティストのようなヴォーカル。絶叫と嗚咽、そしてサイケなギター・プレイ。後半にはサックスとのユニゾンなのだけど、プレイするのはなぜかSting。
 アバンギャルドっぽい曲で遊ぼうぜ的な流れだったと思うのだけど、よく収録したよな、こんなの。彼らのディスコグラフィーでも異彩を放っている。

5. Miss Gradenko
 Stewart作による、1分ちょっとのブリッジ的な小品。とはいえ軽く見ることはできず、ドラム、ベース、ギターとも細かな技をこれでもかと投入している、聴けば聴くほど新たな発見の多い曲。やっぱりPoliceってリズムなんだよな。Stingのメロディも、彼あってのものだというのがわかる。

6. Synchronicity II
 3枚目のシングル・カットとして、UK17位US16位。シンプルな8ビートのロック。ベースは重く、スネアもキックもデカい。やっとAndyもまともなロック・ギターを弾いている。
 思えば、俺が生まれて初めて買った洋楽がPoliceで、しかもこの曲の12インチ・シングルだった。ラジオで聴いてカッコよさを全身で受け止め、ダイエーのレコード店でこれを買った。まだ中学生だったので、アルバムまでは手が出なかったのだ。最初に好きになったのが彼らで、結局のところ、俺にとってのロックとはPoliceが基準になっている。そりゃ並みのバンドじゃハードル高いわな。



7. Every Breath You Take
 UK・USともに1位を獲得、言わずと知れた代表曲。近年では、「大人のラブ・ソングだと思っていたけど、実は執念深いストーカーの歌だった」という評価が根付きつつある。アップライト・ベースの存在を知ったのが、このPV。この頃のGodley & Cremeは才気走っていた。

8. King of Pain
 UKは17位だったけど、USでは3位まで上昇、アルバム中、確実に3本の指に入る秀作バラード。シンプルなオープングから、徐々に音が増え、サビに入って3人そろう。B面では特にAndyの貢献度が多く、ここでも3分過ぎてのトリッキーなソロは絶品。そして4分近くになってのブレイク。音が急に薄くなり、緊張感はピークを迎える。
 激しいサウンドなのに、すごく冷たい芯を持った、そんな不思議な曲。

9. Wrapped Around Your Finger
 無数のキャンドルに囲まれた3人、静かに燃える炎越しに、軽やかに舞うSting。とことんシンプルながら、サウンドとのシンクロ感がハンパない。映像エフェクトは何も使っておらず、ひたすら手間をかけたPVは、楽曲のグレードアップに大きく貢献した。ていうか、もし映像がなかったら、地味なバラードで終わっていたかもしれない。
 UK7位US8位を記録。



10. Tea in the Sahara
 ラストはベース・ラインを主体とした地味なバラード。いやほんと地味だから。アナログではこれがラストだったのだけど、まさかキャリアのシメがこれになるとは、本人たちも思ってなかったんじゃないだろうか。かなりStingのソロ色が強い、ミステリアスかつジャジーなバラード。

11. Murder by Numbers
 というわけなので、リアルタイムでは聴いていないため、いまだに馴染みの薄い曲。StingとAndy共作による、こちらもジャジーだけど、もうちょっとテンポ感のある曲。まぁ入れる場所、なかったんだろうな。ボーナス・トラックなので、まぁCD買ったらおまけがついててラッキー、っていう程度の印象。







アーサー・ケストラーなんて怖くない- Police『Ghost in the Machine』

folder 1981年リリース、前作『Zenyatta Mondatta』 からきっちり1年のブランクで制作された、4枚目のオリジナル・アルバム。この時期になると、世界的にもパンク~ニューウェイヴバンドのオピニオン・リーダーとしてのポジションが確立されており、UK1位US2位は指定席みたいなものだけど、日本ではオリコン最高29位と。
 これだけ見ると、洋楽アーティストとしてはまぁ健闘したかな?といった感じだけど、前作が16位、これの次の『Synchronicity』が17位となっているため、このアルバムで失速してしまった感が強い。なので、日本ではちょっと影の薄く、習作的扱いとなっている論調が強い。「『Synchronicity』において完成されたPoliceサウンド」に至るまでの過渡期の作品、てな感じで。

 世界中で売れに売れた『Zenyatta Mondatta』を引っ提げて行なわれた世界ツアーは、1年強で全86回ものショウに及んでおり、その間に『Ghost in the Machine』制作に向けてのプリプロや曲作りも行なっているのだから、彼らが質量ともにハンパないレベルのハードワークをこなしていたか。それにつけ加えて、各メディアからの取材やらTV・ラジオ出演やらも行なっているので、とにかく休まるヒマがなかったはずである。彼らだけに限らず、この時代のアーティストらのワーカホリックぶりが窺える。

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 今ではアーティスト・サイド主導による余裕を持った活動ペースが主流となっているけれど、90年代くらいまではレコード会社コーディネートによる「アルバム・リリース → プロモーション・ツアー → アルバム・リリース」という無限ループが当然とされていたため、楽曲制作に多くの時間をかけられないケースが多々あった。ツアーの合間を見ながらレコーディングしたり、またはレコーディング最中に楽曲制作に追われたりなど、クオリティの追求とは相反する状態こそが、むしろ通常でさえあった。当然、ライブ会場とツアー先のホテルとの往復ばかりの毎日では、アーティストとしての耐用年数は加速度的に減じてゆく。作品の出来はムラが多く、同じ曲ばかりリクエストされるライブでは、心身ともに消耗が激しくなる。
 何やかやのストレスの捌け口、爆発手前のガス抜きとして、大抵のアーティストなら一度は過剰な酒やセックスに走ったりする。もともと清廉潔白な者の方が少ない業界なので、多少のおいたは致し方ないところ。ある程度遊び慣れてる者ならそれで済んじゃうんだろうけど、変に真面目というか依怙地な人だったら、その辺の切り替えがうまくできなくて、終いには怪しげな宗教やドラッグに走っちゃったり、あげくの果てには自ら死を選択したり。何ごとも根を詰めすぎるのは良くないよね。
 Policeの場合だと、そこそこ分別はあった人たちっぽいので、大きくハメを外したエピソードは聞かない。まぁ世界各国を回ってるうち、ちょっと過剰サービスの接待や乱痴気騒ぎはあったんじゃないかと思われる。そういった情報統制やメンバーのメンタル面のケアなど、世界的にメジャーなアーティストになると、きちんとした管理が重要となる。その辺はStewart Copeland の実兄Milesのマネジメント力によるものが大きい。

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 新人パンク・バンドとしてデビューしたPoliceだけど、新人というわりには3人ともとうが立っており、素人に毛が生えた程度の他のバンドとは明らかに毛色が違っていた。パブ・ロック上がりのようにパンク以前からの下積みが長かったわけではない。別のジャンルで相応のキャリアを積んでいた熟練プレイヤー達が、パンク・ムーヴメントの追い風に乗って戦略的に結成されたバンドである。「売れる」ことが大前提にあったため、そもそもの成り立ちが違っていたのだ。
 プログレやジャズ、60年代ロックをバックボーンに持つ卓越したプレイヤー達が、敢えてそのテクニックを封印し、単調な8ビートとルート音のベース、シンプルな3コードでデビューしたのも、戦略のうちだった。変拍子や速弾きプレイが前時代的なものとして受け入れられなくなった70年代中葉、注目を集めるためには熟練の職人技はむしろジャマでしかなかった。
 後方伸身宙返りもマスターした優秀な体操選手が、近所の体操教室のレベルに合わせてでんぐり返しばっかりやっていると、フラストレーションは溜まるし技術レベルも低下する。朱に交れば何とやらで、自らミッションを課しないと思考レベルまで周囲に引き寄せられてしまうのだ。そんな事態を憂慮したのか、他のチンピラバンドとの差別化としてレゲエを取り入れたり、暗喩や隠喩を絡めた歌詞世界など、自分たちで飽きが来ないように手を尽くしていたわけで。

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 今でこそ、wikiやらファン・サイトやらで、彼らの詳細なバイオも簡単に調べることができるけど、活動当時は前述のバックボーンや音楽性のルーツなど、よほどのマニアでもない限り、広く知られていなかった。Curved Airや後期Animalsのファンと、パンク〜ニューウェイヴのファン層とがほぼ被らなかったおかげもあって、彼らの前歴がばれることもなかった。その辺はマネジメントの方も、巧妙に隠していたわけで。
 なので、前歴を知っていたPoliceファンというのはほぼいなかったため、3ピース・パンク色が払底された『Ghost in the Machine』の登場は、青天の霹靂だった。これまではあくまでパンク~ロックンロールの文脈で組み立てられていたサウンドが、80年代を代表するプロデューサーHugh Padghamの手によってコンテンポラリー色が一気に増した。前作とは大きく色合いを変えたサウンドは、ほんの少しだけ物議を醸した。
 シンプルな3ピース・パンクこそ至上のサウンドである、とするPolice原理主義者らはその路線変更を良しとしなかったけれど、そこまでガチガチだったのはごく少数で、彼らの声は論議にもならずフェードアウトした。

 破壊と創造の連鎖だった70年代が終わり、虚無と享楽の80年代が始まっていた。「何でもアリ」のニューウェイヴ・ムーブメントの最中に提示された「プロフェッショナルにカスタマイズ」されたサウンドは、新たなファン層の拡大に貢献した。
 シンプルなサウンドも3枚続けば、さすがに新味も薄くなってしまう。わずか3つの楽器だけでは、バリエーションといったって限界がある。あとは自己の無限コピーか拡大再生産、または思いっきりアバンギャルドに向かうしかなくなってしまう。「売れる」ことは一先ず達成したけど、「売れ続ける」には臨機応変な判断が必要となる。3ピースで構成されるサウンドの臨界点が『Zenyatta Mondatta』だとすれば、次回作は新たな切り口が必要となる。
 路線の軌道修正には、ちょうどいい頃合いだった。周囲に右ならえのでんぐり返しから、いきなり2回転半宙ひねりを繰り出した瞬間である。
 彼らが本気で世界レベルでのスターダムに向けて動き始めた。

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 デビューからの3作がプラモデルでいう、色もデカールもつけていない素組みだったとすれば、その後の2作はカラーリングや陰影をつけた立体感のある完成品である。ただ、半ば活動休止を前提として制作された『Synchronicity』を総決算として捉えるとすれば、この『Ghost in the Machine』こそがPoliceサウンドの完成形ということになる。今後の3人それぞれの方向性を示唆する作品の集合体『Synchronicity』以前、ソングライターStingの覚醒を素材として、他2人が対等の立場で料理していった結果が、『Ghost in the Machine』という近未来テイストの濃い作品として結実している。
 彼らの演奏スキルを持ってすれば、そのStingの成長より以前、もっと早い段階から完成形のビジョンは見えていたはずである。ここまで哲学的にならなくとも、楽曲テーマの深化、またサウンドのゴージャス感アップは可能だったんじゃないかと思われる。
 ただ、彼らはここに至るまではそこに手をつけなかった。
 「機が熟すのを待っていた」という見方もあるけど、彼らのアイディアの具現化に、レコーディング技術やマシン・スペックがやっと追いついた、というのが真相に近いだろう。これがもう1、2年早かったら、リズムにメリハリの効いたプログレ程度で終わってたんじゃないかと予想される。

 デビュー当時からほぼエンドレスで続けてきた、足かけ3年に及ぶ世界ツアーを終え、彼らはカリブ海に浮かぶ孤島モンセラートへ向かう。そこにはGeorge Martin所有のエアー・スタジオがあり、当時は数々の著名アーティストらがレコーディングで訪れていた。人里離れたリゾート地も兼ねていたため、まぁ長期休暇には格好の立地だったとも言える。実際、どのアーティストもレコーディングよりビーチでくつろぐ時間の方が多かったらしいし。
 Policeの場合も例外ではなく、バカンスを兼ねてだったけれど、そこは前述のCopeland兄の仕切りによってレコーディングの方に比重が置かれていた。バカンスのくせに作業工程表はタイトに組まれており、しかも凝り性ばかりの3人がゆえ、結局はスタジオ内にいることが多かったというのは何とも皮肉。
 デビュー当時から、3人顔を突き合わせると殴り合いのケンカになるのは日常茶飯事で、この時も何かあるたびに衝突が絶えなかったらしいけど、Hugh Padghamの采配によって、どうにかレコーディングは工程通り進められた。バンドとして一丸となってサウンド・メイキングに注力した最後の作品が、この『Ghost in the Machine』である。個の集合体としての結果報告が『Synchronicity』なら、バンド総体の相乗効果の最終形は『Ghost in the Machine』ということになる。
 マルチ・レコーディングの功罪として、メンバー個別でブースに入ることが多くなるのが、この時期からである。この後は、バンド・サウンドとしてのPoliceを第一として考えていたCopelandから、バンドの主軸がSting に移り、ソングライター視点でのパーソナルな色彩の楽曲が多くなってゆく。次第にバンドとしての存在意義が薄くなってゆくのだ。


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1. Spirits in the Material World
 コード弾きシンセのリズムはレゲエというより、もはや優美なワルツの如く。のっけから「僕たちは物質文明社会の魂なんだ」という、ポップ・ミュージックの語彙にはないサビを無機的にリピートするSting。ゴシック・ロック調のミニマル・フレーズは淡々と、それでいて既存のPoliceのイメージを次第に浸食してゆく。明らかに手触りが違っている。よく初っ端からこんな重い曲持ってきたよな。

2. Every Little Thing She Does Is Magic
 入口をダークなテイストで彩ることによって「これまでと違う」感を演出したのだけど、営業政策的なのか打って変わってポップなロック・チューン。彼らにしては歌詞もお手軽なラブ・ストーリー仕立てとなっており、シングルとして選出されたのも頷ける。シングルでUK1位US3位は、彼らの歴史の中でも大きく売れた部類に入る。



3. Invisible Sun
 『Ghost in the Machine』が彼らの作品の中でもダークな部類に入ることはファンなら周知の事実であり、大抵の楽曲なら好意的に受け取るものだけど、しかしこの曲をリード・シングルとしたことに違和感を覚えたユーザーは多かったんじゃないかと思われる。あまりに違うもの、以前とまったく別のバンドだし。
 当時、社会問題として英国では深刻化していた北アイルランド紛争をテーマとした楽曲は、必然的に陰鬱なテイストで彩られることになった。そういったメッセージ性・告発を行なうことはアーティストとしての義務である、と目覚めたのがStingだけど、他2名はあまり気乗りしなかったことは、後のインタビューでも明らかになっている。そういった視点を持つことが後のロック・セレブ化に繋がるわけだけど、いまにして思えば胡散臭さの方を強く感じてしまう。

4. Hungry for You 
 なので、極端にメッセージ性を露出させていない、旧来Policeサウンドに最も近いこの曲は、重苦しいムード漂う中においてはひと休みできるポイントであり、ごく普通に楽しめる。そうだよな、初めてこのアルバム聴いた時、何回か聴いただけで投げ出しちゃったけど、この曲だけはよくリピートして聴いてたもんな。



5. Demolition Man
 後にSylvester Stallone主演の同名映画に発展した、ソリッドなロック・ナンバー。ここではAndy Summersが大きくフィーチャーされて、印象的なリフとオブリガードを数多く披露している。ちょっと不協和音気味のホーンもアンバランスな状況を示唆しており、ダークではあるけれど当時から好んで聴いていたナンバー。もともとはGrace Jonesのために書かれた曲らしいけど、そっちはまだ未聴。ちなみにこの曲、彼らの中では6分と、最も長尺の曲。内容的にはプログレ的なテイストであるので、そういったテーマをたった6分で収めてしまうところに、彼らの気前の良さと構成力の妙が発揮されている。

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6. Too Much Information
 ここからアルバムではB面。ちょっと軽快なホーンとフリーキーなAndyのギター・ソロ、威勢のいいStingの掛け声。何となくこの辺にリゾートっぽさを感じてしまうけれど、リズムの重さはダークな世界観を支配する。たった3分にまとめられた勢い一発のナンバー。

7. Rehumanize Yourself
 B面曲のくせにやたらとポップで性急なスカ・ビートが印象的なナンバー。以前だったらこういった曲を軸にアルバムが制作されていたのだけれど、この配置だとまるでオマケの曲、アウトテイクから引っ張り出してきたかのような場違い感を醸し出している。いや俺はこういったPoliceが好きなんだけど。間奏の消防車のサイレンのようなホーンは特に印象的。

8. One World (Not Three)
 前曲に続き、リゾートっぽさが出たポップ・レゲエ。リズムの組み立ては完全にダブで、ほぼワン・コードでサビのフレーズのみで構成されている。灼熱の太陽の下、ジンライムでも飲みながら延々と聴き続けていたい曲である。

9. Ωmegaman
 多分、2枚目か3枚目に収録されていれば、アルバムの核として人気を博したナンバーになったのだろうけど、ここではいまいち場違い。程よいロック・テイストとちょっぴりの狂気。シンプルな8ビートは疾走感に支配され、リズム・アレンジも絶品。だからこそ惜しいのだ、こんな扱いで。

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10. Secret Journey
 アメリカでなぜかシングル・カットされ、46位にチャートインしたロック・ナンバー。ちょっと骨太なニューウェイヴ・バンドのシングルB面的な扱いの曲で、構造的にはシンプルでありながらエフェクトなんかで遊んでる感じ。曲はいいと思う。想うのだけれど。要するに、俺はこの曲、それほど興味がないのだ。


11. Darkness
 ここまでいわゆる「ロック」の文脈で構成されてきたこのアルバムだけど、Stewart作のこの曲だけ、ちょっとテイストが違っている。落ち着いたテイストでありながら、地を這うように鳴り響いているのは複雑に細かく刻まれたリズムの洪水。Andyも滅多に使うことのない逆回転ギターで存在感をアピールしている、。よく聴くとかなりアバンギャルドな実験が飛び交う曲でもある。
 そんな中でただ一人、朗々とペースを崩さず歌い、リズム・キープに徹したベースを奏でるSting。みんながみんな、あっちこっちへ行ってしまっては収拾がつかなくなる。それぞれのポジションを窺いながら振る舞うことが、バンド維持の秘訣でもある。



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デビュー作なのに、もうベテランの貫禄 - Police 『Outlandos d'Amour』

folder 1978年にリリースされたPoliceの記念すべきデビュー・アルバム。なんか最近デビュー・アルバムばっかりだな。
 UK6位US23位は妥当なところだけど、オランダで2位、ニュージーランドでは6位にチャート・インしてるところから、当時からすでに全世界的に名が知られていたことがわかる。これは多分、マネージメントを務めていたStewartの兄Miles Copelandの方針で、世界中のステージの大小を問わず、まるで新人演歌歌手のようにしらみ潰しに回ってライブをこなしていった結果による。Costelloの場合もそうだったけど、それに負けず劣らず、かなりの量のライブを行なっていたのが、初期〜中期にかけてのPoliceの特徴である。

 もちろんトータルの累計で考えれば、彼らよりも多くのライブを行なってきたアーティストはたくさんいるのだけれど、Policeの活動期間は実質5年、後期2枚のアルバムでのツアーはアリーナやスタジアム・クラスが多くを占めること、またレコーディング時におけるシンセサイザー導入によって、スタジオ・ワークの時間も長くなったため、必然的に回数は少なくなっている。
 そういった状況を考慮して、実質ライブ活動期間で換算してみると、彼らの精力的な活動ぶりがうかがえる。まともなオフもなく、始終顔を突き合わせているのだから、仲も悪くなるよな、そりゃ。

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「Sex Pistolsに憧れてバンド組みましたっ」的に、当時ワラワラ湧き出ていた有象無象の急造パンク・バンドと違って、当初からある程度の商業的成功を見込んだ上で、相応のキャリアを積んできた者をキャスティングして結成されたバンド、それがPoliceである。なので、他のバンドと違って行き当たりばったりの運営方針ではなく、当初からある程度の戦略に則って行動していた、または将棋のコマとして動かされていた、というのは、ちょっとディープなファンなら誰でも知ってること。

 前衛ジャズ・ファンク・バンドで地道な活動をしていた野心たっぷりのベーシストと、ハード・プログレからベーシックなロックンロールまで弾きこなす器用貧乏なギタリスト、それに同じくプログレ畑ながらアフロ・ビートから変拍子まで楽々とリズムを刻む無骨なドラマーとの間に、どのような接点があったのか。
 Stingのステージを見たStewartが才能を見出して声をかけ、バンド結成のために適当なギタリストを入れたけど、どうもフィーリングが合わないので、デビュー間もなくして彼はクビ、で、穴埋めとしてノンポリな便利屋Andy を入れた、というのが大ざっぱな経緯だけど、要であるStewartにどれだけの具体的なビジョンがあったのだろうか。

 普通に考えて、彼ら3人のミュージシャンとしての共通言語として挙げられるのが、これまでのキャリアにおいて通過点としてあったジャズ・ロックである。この路線を展開・進化させてゆくのが、バンドのサウンド作りの最も近道だったはずなのだけど、安易にそういった方針を選択しなかったことに、Policeの成功のカギがある。

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 手慣れたジャンルにおいて、そこそこ形になる物を作ることは簡単だけれど、プログレ風味のジャズ・ロックなんてのは、既にSoft MachineやCurved Airでやり尽くしており、それ以上の発展は見込めなかった。
 それなら、わざわざ新たにバンドを結成するメリットがない。

 Stingとしては、一応既にメジャー・デビューしていたStewartに注目されて、そりゃ悪い気はしなかっただろうけど、元Curved Airという、あくまでプログレ界でのメジャーどころであって、商業的成功とはほど遠かった彼の経歴を考えると、もしバンドを組んだとしても、将来の展望は楽観できるものではなかったはず。
 Stewartにしたって、今さらこれまでと同じマニアックなジャズ・ロックをやったって、売れないことはわかりきっていたはず。
 Stingの才能は欲しい。
 でも、それを活かすには、これまでの自分の手持ちのスキルだけじゃ、あまりに先が見えすぎている。
 何かほかに、良さげなコンセプトはないだろうか?

 -じゃあ、パンクでいいんじゃね?
 というのが、2人の出した結論。
 双方これまで積み上げてきたキャリアから最も遠いところ、まったく共通しないところからスタートするのが、最も効率の良い手段であるという結論に達した次第。
 どちらにしろパンク・サウンドに関しては二人とも素人のため、スタート・ラインは同じになる。
 ちょうどブームだし、それに載っかちまおう。
 ジャンル的にもトレンドだし、そんなに大げさなセッティングもいらないから、コスパもいいし。
 ギター?誰か適当にひっぱって来ようか。
 
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 で、2人はこれまでの小難しい演奏スキルを封印、複雑だったコード進行もできるだけシンプルにした。リズムも基本的な8ビートに、何曲かでレゲエを取り入れたのは、熟練ミュージシャンとしてのプライドだったけど、可能な限りステレオ・タイプのパンク・スタイルの枠組みをはみ出ないよう、プライドが突出しないよう心がけた。

 ここまでの戦略は、彼らよりはむしろ、マネージメントのMilesの意向が大きかったと思われる。
 パンクを音楽ビジネスの一環として捉え、常に冷静沈着に、客観的な状況判断ができる第三者の存在がなければ、ここまでスムーズに事が運ぶはずがない。
 バンドのテクニカルな部分にはタッチしない事によって、ミュージシャンとしてのプライドを損ねる事を最小限に抑え、随時チェック機能を働かせて臨機応変なコンセプトを設定した事が、Milesの最大の功績とも言える。

 そういった運営方針にうまくはまる事ができなかったのが、初代ギタリストであるHenry Padovaniであり、ある意味ロック・ビジネスという意図を理解して加入したのがAndyだったというわけで、まぁ結果論になるけど、これでうまく丸く収まったという次第。だってPadovani って名前、なんか変だし。

 そんなこんなの経緯で完成したのが、この『Outlandos d'Amour』である。
 今後も永くライブの定番となってゆくキラー・チューンはもちろんのこと、他の曲もバラエテイに富んでおり、ストレートなパンクもあれば、プライドが見え隠れする、ポエトリー・リーディングとパンクを融合させた、ちょっと変わった構成の曲もある。
 この時点ではPoliceとしてのバンド・サウンドがまだ確立されていないので、未整理のとっちらかった印象が強いのだけれど、逆にそこがバンドの発展途上具合が生々しく記録されているため、今でもこれが一番というファンも多い。

 俺的にはこのアルバム、5枚のオリジナル・アルバムのランクづけでは4位となっている。一番思い入れの薄い『Ghost in the Machine』が安定の最下位、『Outlandos d'Amour』を挟んで3位が、完成度・成熟度ではダントツの『Synchronicity』という位置付けが長年続いていたのだけれど、ここ最近レビューを書くにあたって全アルバムをまとめて聴き直してみたところ、30年近く前にヘビロテで聴いていた頃と比べて変化が出てきたのか、3位と4位のランクが入れ替わりそう、ていうか、コッチが3位でもいいんじゃね?という気になってきている。


Outlandos D'Amour (Dig)
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1. Next To You
 敢えてパンクというジャンルを彼らなりに模倣してみたのだけど、出来上がってみたら多くのパンク・バンドを軽く凌駕するクオリティになってしまって、結局は突出してしまう仕上がりとなってしまった曲。
 敢えてシンプルなドコドコ・ビート、シンプルなダウン・ストロークのベース、調子っぱずれのギターのフレーズなど、できるだけパンクのフォーマットを使用してのサウンドになっているのだけれど、後半になるに連れて三者三様のエゴが出始め、特にStewart、そんなにハイハット多用する奴、パンク・バンドにいないって。

2. So Lonely
 で、Stingの才能が当初から規格外だったことを証明する、初期の名曲の一つ。
 Police登場以前に有名だったレゲエ・カバーは多分、Eric Clapton “I Shot The Sheriff””くらいだったと思うのだけれど、その存在が霞んでしまうくらい、しかも自作曲でのレゲエ・ナンバーは相当インパクトがあったんじゃないかと思う。しかもパンク・バンドのくせして無駄に技巧的だし。
 これも疾走感がハンパないキラー・チューン。UK最高6位まで上昇。



3. Roxanne
 とは言っても、いくらStingの才能がケタ外れだったとはいえ、初期のPoliceがStewart主導で動いていたのは事実であり、とくにこの曲なんてリズム・セクションがリードして、Andyの単純なリフは、Stingの独創的なベース・ライン、Stewartのリズム・ワークに埋もれきってしまっている。



4. Hole In My Life
 Beatlesがパンクと変拍子に出会ってたら、多分こんな感じになるんじゃないかと思える。メロディ自体はポップなナンバー。Kinksでもいいかな?伝統的なブリティッシュ・サウンドの系譜をたどっている。

5. Peanuts
 ここで純正パンク・ナンバー。パンクよりになればなるほど、どこかつまんなく聴こえてしまうのも、この人たちの特徴。普通のロックなので、安心して聴けるけど、無難なPoliceに一体、どんな価値があるというのか。
 でもAndyの神経症的な間奏ソロは必聴。

6. Can't Stand Losing You
 UK2位まで上昇した、当時の彼らの中ではもっと成功したシングル。こちらもレゲエ・ビートを導入しているのだけれど、いつの間にかロック・ビートに変わり、そしてまたレゲエに戻るという、なかなかテクニカルな構造の曲である。
 アルバム収録曲の中では、最もフック・ラインがはっきりし、求心力の強いメロディを持っている。でも、ベタにならないんだよな、不思議なことに。



7. Truth Hits Everybody
 お、これはストレートなパンク・ナンバー。今になって聴いてみると、わざと稚拙で単純なプレイなのだけれど、初出時ならこれ、普通にソリッドなロック・なんばーとして人気あったんじゃないだろうか。

8. Born In The 50's
 こちらも8.同様、シンプルで大陸的に大味なリフを持つロック・ナンバー。これもリアルタイムで予備知識なしに聴いてたら、普通にカッコ良かったんじゃないかと思う。
 後半のブレイク、Stingが血管切れそうな勢いでシャウトしまくるという、なかなかお目にかかれない姿を拝むことができる。

9. Be My Girl – Sally
 シンプルなロックン・ロールが3連発。と思ったら、勢いがイイのは冒頭だけ、急に場面はガラリと変わり、戯曲的なナレーションが延々と続く、プログレを引きずったようなナンバー。
 StingとAndyが中心となって作り上げた曲ということなので、まぁお遊びと思えばいいんじゃないかと思う。このトーンでアルバム1枚作られたら、そりゃたまったもんじゃないけど。

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10. Masoko Tanga
 アルバムの中でももちろん異色だけど、それだけでなく、全ディスコグラフィーの中でも異彩を放つナンバー。
 彼らの場合、もともと熟練のミュージシャン集団なだけあって、単純なロックやポップ・ソングをプレイするだけでは飽き足らず、アルバムに必ず1,2曲はミュージシャン・エゴを満たすような、ガス抜き的なマニアックな曲が収録されている。
 この曲もそういった類なのだけど、実験的でありながらもメロディはきちんと立っており、バックのサウンドとの親和性も高い。ただ、演奏はひどくプレイヤビリティに溢れており、それでいて覚えやすく口ずさみやすいという、なかなかに不思議な曲。




 『Synchronicity』から入った俺的にはこのアルバム、当時はベテラン・ミュージシャンが敢えて戦略的に、基本フォーマットのパンク・サウンドを模倣したものだと思って、正直苦手だったのだけど、あれから四半世紀も経つと、当時の時代背景も薄れてフラットなスタンスで聴けるようになった。
 先入観を抜きにして聴いてみると、装飾の多い後期の作品よりもむしろ、ちょっと高度にねじれたストレートなサウンドこそが、Policeサウンドの本質であることがわかるようになる。
 年を取ることも案外悪くない、これも一つの功罪だと、自分では思ってる。


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北海道の中途半端な田舎に住む、そろそろアラフィフ男。ほぼ週1のペースで音楽ブログ更新中。節操ない聴き方と思われてるけど、自分の中では一貫してるつもり。 最近は蔵書の整理がてら、古い本を再読中。ジョン・アーヴィングから始まって、フィッツジェラルドやゾラ、モームなど、いわゆる古典の復習中。いつになったら終わることやら。新刊読めねぇや。
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