好きなアルバムを自分勝手にダラダラ語る、そんなユルいコンセプトのブログです。

Beautiful South

ある意味ブレないポップ職人たちの定食メニュー - Beautiful South 『Choke』

choke-50b115e9c67ac 1990年にリリースされた2枚目のアルバムで、当時の全英チャートでは最高2位。3曲のスマッシュ・ヒット・シングルを収録しており、デビュー・アルバムに続いてのヒット・アルバムになった。
 この年のUKシングル年間チャートを見てみると、何故か1位がElton John、かと思えばSinead O'Connorが、あのPrince作”Nothing Compare to U”で上位にランク・インしており、以下有名なところではMadonna “Vogue”、キワモノ枠として、あのインチキ・ラッパーVanilla Iceが続く。そんなカオスなラインナップの中、本アルバム収録曲”A Little Time”が堂々13位に入っている。アコースティックを基調としたソフトなサウンドはいつも通りだけど、彼らのナンバーの中では比較的毒の少ない歌詞だったのも、ヒットの要因だったと思われる。

 当時はニュー・ウェイヴの延長線上にあったギター中心のサウンドから、ヒップホップ/ハウス・ビートの勃興期で、次第にリズム主体のサウンドが勢いづいていた頃、New OrderやDepeche Modeらが切り開いたサウンドが一気に花開いた頃でもある。MC HummerやEMF、Soul Ⅱ Soulなど、これまでの80年代常連組から一気に世代交代が進んでいる。
 とは言ってもみんながみんな、激しいビートやサウンドを求めていたわけではない。時代的にはマンチェスター・シーン真っ只中ではあったけど、英国人すべてがレイヴ・パーティに参加するはずもなく、大多数の善良な市民は、それこそElton JohnやBeautiful Southのようなゆるいサウンドを求めていたのだ。
 ちなみに同じ1990年、日本のオリコン年間チャート1位は”おどるポンポコリン”、次に”浪漫飛行”、ひとつ飛ばしてたまの”さよなら人類”と続く。似たようなもんだなこりゃ。

 前進バンドHousemartinsの時代から、ネオ・アコ・サウンドを基調とした爽やか系健康的なポップを志向していた彼ら、そこからビッグ・ビートの祖とされているNorman Cook、通称Fatboy Slimが抜けて新バンド Beautiful Southになるわけだけど、そこでサウンドのビート担当が抜けることによって、残るメロディ担当がメインとなる。
 で、彼らのメイン・ターゲットというのが、いわゆるその他層、音楽的にコアなサウンドを求めるユーザーではなく、もっと裾野の広い範囲、極論すれば、一家に一枚、イギリスの平均的な家庭になら必ずあるElton JohnやBeatles、Cliff Richardの横に並べられることを想定したサウンド作りを行なっていた。
 
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 国民の大多数を占める一般庶民に根ざした的確なマーケティング、といえば聞こえは良いけど、まぁ彼らの場合、特別にナニするでもなく、普段通りにしていれば、それがそのまま的を射ているので、そうした苦労はしていなかったと思う。
 最大公約数に合わせた中庸なサウンドは、適度に耳触りが良く、鼻歌でハミングしやすく、それでいて後に残らない。基本、スタンダードになりやすい曲調なのだけど、どぎついエログロな歌詞が、単純に聴き流せる イージー・リスニングにならないよう、そこは踏みとどまっている。きれいな歌声で流麗なメロディに乗せて、マニアックな歌詞を口ずさむという、彼らのオリジナリティーは既にこの時点で確立している。
 思えば国民的歌手の枠を飛び越えて、王室からナイトの称号まで受けてしまったElton Johnもまた、詞曲はまともながら、ゲイという性癖の反動からなのか、かつてはエキセントリックなキャラクターをステージで演じており、ポップ・ミュージックを選んでしまった男たちの業を感じる。

 庶民的なのはサウンドだけでなく、見た目もそのまんま、労働者階級の工場帰りのようなそのファッションは、もはやカジュアルを通り越している。はっきり言って、ほとんど普段着なのだけど、だからといっていきなり揃いのスーツでスタイリッシュに決めても、違和感しかない。
 いや待てよ、シャレでやってみたら、一、二回はアリか。

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 基本、デビュー当初から音楽性が固まっていたため、サウンド的な変遷で目立ったものはない。そもそも解散したのも、セールスの落ち込みによってバンド活動が維持できなくなったためであって、特別仲違いしたわけでもない。バンド・ストーリーによくある「存続の危機」やら「音楽性の衝突」など、そういったドラマ性とは無縁の連中である。
 なので、正直どのアルバムから入っても、それなりのクオリティは保証されている。乱暴に言ってしまえば、どれを聴いてもそんなに変わりはない。安定したクオリティと言えばカッコいいけど、代わり映えのしない人たちでもある。
 活動末期になって、レコード会社の要請だったのか、旧友Norman Cookを招聘してリズム面の新機軸を打ち立てようとしたことはあったけど、さすがのFatboy Slimもそのゆるい作風を根底から崩すことはできず、大幅な路線変更は叶わなかった。

 ちょっと話は逸れるけど、ラーメン屋におけるプロとアマの違いとして、「安定した仕事」というのが第一に挙げられる。
 潤沢な予算と時間を使えば、たとえ素人でも美味しいものができる。筋の良い者なら、プロ顔負けのラーメンも作れるかもしれない。なので、アマチュアほど手間暇を惜しまず、ディテールにも凝るので、かなりの確率でそれなりのモノができる。
 問題はその次だ。今日120パーセントのラーメンができた。でも、次の日は80パーセントの出来だった。また次の日は50パーセントかもしれない、でもその次は150パーセントで挽回してやる。
 これじゃダメなのだ。
 プロの条件とは、コスパとかマーケティングとかいろいろ基準はあるけど、ここで最も大事なのは、「商品の安定供給」だ。毎日ラーメンを作る上において、もちろん常に100パーセントが理想だけど、そうそううまく行くものではない。なので、客に出せる最低ラインだけは決めておく。90パーセントなら90パーセント、それ以下のラーメンは出さないようにする。それが商売の基本だ。
 もしかして、たまたま85パーセントのラーメンを客に出してしまうかもしれない。作る側にしては何百杯の中の一つでしかないけど、そのお客がここでラーメンを食べる機会は、一生に一度しかないかもしれないのだ。
 なので、常に同じクオリティの商品を安定して供給するということは、プロとしての最低条件である。

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 プロのポップ職人である彼らもまた、できるだけ生産ロスを出さない考えのもと、常に80パーセントの作品を安定供給してきた。大きな失望もなければ、大きく心を動かす感動も少ない。でも、最大公約数的な考えでいけばOKなのだ。
 常に定番の味のラーメン同様、彼らもプロとして、定番のサウンド、偉大なるワンパターンを継続していったのだろう。


Choke
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BEAUTIFUL SOUTH
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1. Tonight I Fancy Myself
 ヴォリュームを絞ったバグパイプのとモノローグのSEから始まる、フォーク・ロック調の牧歌的なナンバー。初代女性ヴォーカルBriana Corriganとの楽しげなデュエットだけど、「自動車事故」だの「切断された頭部」など、なかなか不穏なキーワードが仕込まれており、こういった曲をトップに持ってくるのが、彼らの持ち味である。

2. My Book
 シアトリカルなムード漂う、とてもネオ・アコ出身とは思えないサウンドを展開しているのだけれど、タイトル通り短編小説仕立てのナンバーなので、ミステリアスな雰囲気を醸し出している。詳しい訳はちょっとわからないのだけど、google翻訳で見てみたところ、どうも狂人の日記っぽく読める。
 ちなみにこんな気色悪い歌詞なのにシングル・カットされており、一応UK最高43位。そこそこ売れてしまっているのが、彼らの恐ろしいところであり、また英国人の不可解なところ。



3. Let Love Speak Up Itself
 彼らのもう一つの持ち味である、甘くムーディな正統派バラード。ちゃんとサビに向かって盛り上がるメロディなので、こういったものを照れずに、もっと量産していれば、もうちょっと違った展開もあったと思うのだけど、余計なお世話か。
 ちなみにこちらもシングル・カットされているのだけれど、UK最高51位。どう考えたって、2.よりもキャッチーで売れ線だと思うのに、ランクは下だったのは、俺的にはちょっと不可解。そこが英国気質と言われてしまえば、それまでだけど。



4. Should've Kept My Eyes Shut
 ちょっとアバズレっぽく歌い出すBrianaのヴォーカルが映える、ミドル・テンポの、こちらもちょっぴり牧歌的なナンバー。なのに内容は要するに痴話喧嘩。女性が優勢なのか、男性ヴォーカルPaul Heatonの声も心なしか疲れ切ってやつれ切って、精彩を欠いている。そこが狙いなのだけど。

5. I've Come For My Award
 ちょっと憂いを感じさせる、マイナー調のギター・ポップ。バンドのはずなのに、あまりバンドらしさを感じさせない彼らにしては、珍しくバンド・サウンドなナンバーである。バンドバンドってクドイな、ちょっと。
 拝金主義を高らかに歌い上げるその皮肉は、やはり英国人ならでは。そのため、サウンドもハードになっている。

6. Lips
 1分足らずのブリッジ的なナンバー。まぁ歌詞も適当なので、ちょっとあまったマテリアルに手を加えた感じ。メロディは美しいので、ボツにしてしまうのが惜しかったのだろうと思われる。

7. I Think The Answer's Yes
 すごく爽やかなフォーク・ロック調のナンバーで、相変わらずメロディも流麗であるというのに、ストレスに押しつぶされそうなビジネスマンの悲哀を皮肉たっぷりに描くのは、ほんと正確悪そう。その毒素は時事問題から、何故かU2やSimple Mindsにまで飛び火し、最後には、ロープかガス、どっちでくたばろうかと苦悩しながら、終わる。
 なんじゃこれ。でも、こんなのがイギリスのごく平均的な家庭には、必ず1枚はあったのだ。

8. A Little Time
 初のUK1位と共に、EU各地でもそこそこスマッシュ・ヒットした、初期の彼らの代表曲。サウンド的には中庸と言えば中庸、ほんとクセもなく口ずさみやすいのだけど、相変わらず内容は痴話喧嘩。
 男女交互にヴォーカルを分け合うスタイルは、日本で言えばヒロシ&キーボーかバービーボーイズと決まっていた。これが本格的に90年代に突入して、もっとサウンド的に下世話になればglobeになるのだけれど、そこはちょっと早すぎた。



9. Mother's Pride
 アップ・テンポになったせいなのか、演奏パートが気合が入っているっぽい。特にベース、ちょっと目立ちづらいけど、なかなか面白いフレーズを弾いている。このサウンドじゃ目立たないに決まってるのに。
 アルバムも終盤に差し掛かり、こちらも小休止、2分程度の短い曲。

10. I Hate You (But You're Interesting)
 主にギターのストロークをバックにした、彼らにしては重苦しい曲調のナンバー。何故か後半にラグタイム・ピアノが絡んでくるけど、すぐまたフェード・アウト。これもちょっと訳が分からなかったのだけど、中盤の”Me”の連呼と言い、ちょっと壊れちゃった感じに意味不明。

11. The Rising Of Grafton Street
 大団円は爽やかなアップ・テンポのインスト。カーテン・コールのように演奏隊は総出演している。ちなみにGrafton Streetとは、アイルランドはダブリンのメイン・ストリート。英国人なら多分その意図がわかるのだろうけど、俺的には不明。




 本国イギリスではプラチナ認定、30万枚以上のセールスを記録した本作だけど、記録ではニュージーランドで最高46位にチャート・インしたくらいで、ほんとガラパゴス的な売れ方がこの時点で確立してしまっている。なかなか本国以外ではわかりづらい比喩も含まれているので、他国で売るのは難しかったのだろうけど、もともと本人らが近所のパブで週末に演奏できればそれでオッケー的な人たちなので、それもまた仕方ないか。


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美メロの応酬、でも歌詞はグロ満載 - Beautiful South 『Welcome to the Beautiful South』

folder 1989年リリース、UKネオ・アコ・ムーヴメントの流れで紹介されることの多い、今でも人気の高いファースト・アルバム。あまりに人気が高いので、レコード会社のネオ・アコ再発キャンペーンの際には、ほぼ必ずリスト・アップされているのだけれど、逆にBeautiful Southといえばコレ、という感じで、ほぼコレ1枚だけで終わってしまい、他のアルバムはあまり見向きもされていない現状にある。ベストやライブ盤だけじゃなく、まずはオリジナル・アルバムの安定供給を考えてくれよ、と言いたくなってしまう。

 Housemartinsという文科系帰宅部バンドが母体となって結成されたこのバンド、中心メンバーはほぼそのままスライドしているので、一聴してあまり変化はなさそう、看板変えただけじゃね?と思ってしまいがちだけど、一応、明確な新機軸のもと、新バンドは結成されている。
 人懐っこいポップ性はそのまま引き継いだのだけど、大きな変化は、これまでより更に英国気質を強めた歌詞、爽やかなサウンドに乗せて下世話な世界を軽やかに歌う、非常にニッチでドメスティックなコンセプトは、同じく根底は下世話な英国人の間で長く支持された。
 デビューしてしばらくは、ロキノンやクロスビートなど、「何てないことをさも小難しく語る」系の雑誌で頻繁に紹介されていたので、この時期にロックをかじってた人なら、名前くらいは何となく聞いたことがあると思うし、一曲くらいなら何となく耳にしたことがあるはずである。

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 基本、ソフト・サウンディングをベースにして、男2女1のメイン・ヴォーカルを曲によって組み合わせを変える方式を採用していた。「していた」というのは、もう解散してしまったから。
 徹底的に国内需要にこたえるスタイルを貫いていたおかげで、イギリス国内での人気は安定れして高く、一時は「国民的バンド」と称されて、高目安定なコンスタントな売り上げをキープしていた。いたのだけど、同じ曲調によるマンネリ化が進むに連れて、英国労働者階級出身そのまんまの飾らないキャラクターが仇となった。おかげでテコ入れのためのイメージ・チェンジも思うように進まず、活動自体が次第にフェード・アウトしていった次第。
 曲は聴いたことあるけど、どんなメンバーが在籍していたのか、またどんなバンドが歌ってるのかも充分認知されなかったのは、日本に限らずイギリスでも同じ状況だった。
 
 セールス的に陰りが見えてきた頃になってから、多分レコード会社からの要請だと思うけど、かつての盟友Norman Cook(別名Fatboy Slim)にプロデュースを依頼、クラブ系サウンドの導入で起死回生を狙った時期もあったのだけど、誰よりも本人たちの予想通り、それほどの支持は得られなかった。誰もBeautiful Southにそんなサウンドは望んでいなかったこと、また彼ら自身もアッパー系なクラブよりも、場末のパブで呑んだくれながらダラダラ演奏してる方が性に合っていることを自覚していた。
 
 Housemartinsの時代からその兆候はあったのだけど、黄金比メロディを基調としたアコースティック・サウンドに、ウィットに富んだ皮肉な歌詞を載せるというコンセプト自体は、決して間違っていなかった。現に、ひねくれてねじ曲がった国民性の英国では、末長い支持を得ていたし、本人らもサウンドの進歩などはあまり考えず、このまま美メロの拡大再生産で、細く長く生き延びて行くはずだったのだから。
 ただ21世紀に近づくにつれて、ヒット・チャートの主流がエレクトロ・ベースのダンス・ミュージック中心となってゆき、自然と彼らの居場所が少なくなっていった。同じカテゴリーで語られるEverything But The Girlもまた生き残りを賭けてテクノ・サウンドに活路を見出し、一時は物珍しさにより持て囃されたけど、やはりスタイルに無理があったせいか、次第にネタ切れとなり、自然に失速していった。
 一方、Beautiful Southは最後までほぼ基本姿勢を崩さぬまま、潔く解散の道を選んだ。EBTGのようなデュオならまだしも、6人編成バンドという大所帯は、方向性を変えるにも全員の意見がまとまらず、そんな不安定な状態でバンドを維持するのは難しかったのだろう。
 
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 で、このファースト・アルバム、最後のアルバムと比べても区別がつかないくらい、この時点で既に偉大なるワン・パターンを創りあげてしまっている。前回の『Solid Bronze』のレビューでも書いたけど、全期間を通して、サウンド的な変遷のあまり見られないバンドなので、時系列をシャッフルした曲順構成だと、どのアルバムに入ってた曲なのか、相当のファンでも混乱してしまうはず。それだけブレずに安定したソング・ライティングを行なっていた、という逆説的な証明にはなるのだけれど。
 
 今もメイン・ヴォーカルの2人、Paul HeatonとJacqui Abbottは、デュオとして地道に活動、今年アルバムをリリース、それに伴って国内ツアーや野外フェスに参加したりしているのだけど、映像を見ると温かい大歓声の中、非常にリラックスしたムードで楽しげに歌っている。それだけファン層のすそ野が広く、愛されてきた証なのだけれど、穿った見方をすれば、いわゆる懐メロ歌手的扱いにも見える。もはや、新しいアクションは期待されていないのだろう。
 
 でも、懐メロとさえ認識されずに消えていった、幾多のミュージシャンと比べれば、これはこれで幸せな状況なのかもしれない。


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1. Song For Whoever
「ペンケースの底から君を愛す」という歌詞は何かの比喩なのだろうけど、よくわからん。昔日本版も持っていたのだけれど、あいにく大昔に売っぱらってしまったため、いま手元にあるのは輸入盤。
 ファースト・シングルのはずだけれど、なぜか6分超もある。ラジオのオンエア対策など、考えてなかったんだろうか。
 オーソドックスなポップスと言うには、なんかいびつさを感じるのは、ポップとは無縁な男性ヴォーカルの声質だろうか。
 こういった曲がUKチャート2位まで上昇したというのは、思えば懐の深い時代だったのだろう。



2. Have You Ever Been Away
 初代女性ヴォーカルであるBriana Corrigan、この頃はまだゲスト・ヴォーカル扱いなので、やや影は薄い。あまり考えずに女性ヴォーカルを入れてみたところ、思ったより出来が良くバンドのカラーにもフィットしたので正式加入となったのだろう。
 一応リズムはレゲエなのだけど、全然それっぽく聴こえないのは、英国の曇り空を愛するバンドだから。
 
3. From Under The Covers
 Housemartinsの面影が感じられる、バンド・スタイルのシンプルなサウンド。ベースの音がやたら響くので、ヴォーカル隊ではなくバンド主導で作られた曲と思われる。
 
4. I'll Sail This Ship Alone
 UKチャート31位まで上昇。Housemartinsではできなかった、ピアノ主体のしっとりした曲。彼らの曲の中では比較的ストレートなラブ・ソング。サウンド・詞・メロディ三位一体きちんと整った曲である。これだけ取り上げて聴いていると、実はすごくまともなバンドであることがわかる。
 皮肉を盛り込んだ歌詞は照れの裏返しとも取れるが、だからといってこのような曲ばかり作ってても、イギリスではなかなか芽が出ない。あのElton Johnだって、最初期のステージはかなりぶっとんだ衣装だったし、何かしらスキャンダラスな二面性も見せないと、評価すらしてくれないのだ。



5. Girlfriend
 彼らにしてはモダンなサウンド。リズムを強調したホワイトR&Bといったイメージ、バック・トラックだけ聴いてるとRobert Palmerみたいにも聴こえる。ギターがきちんとギターの音を出しているのも、なかなかバンドっぽい音でかっこいい。
 
6. Straight In At 37
 当時チャートの常連だったDuran DuranのSimon le BonとPaul Youngを徹底的に揶揄した歌。サウンドも何だか小馬鹿にしたような80年代ビート・ポップサウンドを模している。最後には何故か女優Nastassia Kinskiの名前も。
 
7.  You Keep It All In
 UKチャート8位まで上昇。気怠い感じのBrianaと元気ハツラツなPaul Heatonとのヴォーカルの対比が妙。男女の絡みのヴォーカルと言えばバービーボーイズが思い出され、非常に仲睦まじいポップな3分間だが、内容は殺伐としており、強盗殺人犯に拘束されてる現状を嘆いている。



8. Woman In The Wall
 爽やかなヨーデル調のポップ・ソングながら、歌詞はこのアルバム中、最もグロテスク。酔っぱらった際、つい魔が刺して妻を殺害、死体を壁に塗り込めて隠ぺいしようとするが、腐臭が漂ってこりゃたまらん、という、書いててもムカムカするような内容。でも曲・メロディはきれい。
 
9. Oh Blackpool
 ちなみにBlackpoolとはイギリスの有名な保養地。日本で言えば、軽井沢や葉山マリーナあたりをイメージしてもらえればよい。
 ヒトラーやカール・マルクスを引き合いに出して、資本主義の悲哀を嘆く歌を、これでもかというくらい爽やかに歌っている。俺的に、英語はまったくネイティヴではないので、メロディ中心に好きこのんで聴いていたのだけど、まぁこれからも歌詞に重きを置いて聴くことは、あまりないと思う。それだけサウンドとメロディが良いのだ。

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10. Love Is... 
 なぜか7分超の大作。キャッチーなメロディが持ち味のポップ・バンドにとって、長尺の曲はあまり必要とされていない。ホント昔ながらの3分間ポップスが一番需要が高いのだ。なのに彼ら、時たま冒険を侵す場合があるのだが、その大概は失敗に終わっている。
 この曲もそこまで引き延ばすべき曲かと言えば、そこまででもないような気がする。まぁせっかくのファースト・アルバムなので、多少サウンドの幅を持たせたかったのだろう。
 
11. I Love You (But You're Boring)
 歌詞中に出てくるCarouselとはメリーゴーラウンドのこと。珍しくSEなども使いながら多重トラックを組み合わせながら、曲に奥行きを与えている。アコースティックを多用したシンプルなサウンド、ヴォーカルも熱を帯びて、ラスト曲をうまく締めくくろうといった気概が見える。




 ファースト・アルバムながら、チャート的に好成績を収めたBeautiful South、今後十年ほどは安定した人気でイギリスのお茶の間までをも席巻し、コンスタントにアルバムを発表することになる。かなりポピュラー・ミュージック寄り、非ロック性の強いアルバムであり、ブルース&ロック色が導入されるのはこの後から。純粋なメロディを堪能するのなら、このアルバムが一番だろう。


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俺たち、イギリスが大好きっ! - Beautiful South 『Solid Bronze: Great Hits』

CS1822110-02A-BIG 2001年に発表された、バンドとして2枚目のベスト・アルバム。地味ながら根強い人気を誇るバンドなので、いろいろな形態のベストが出ているのだけど、冗長でなくコンパクトにまとめられてるモノを選ぶのなら、これが一番とっつきやすいはず。
 もちろん、選に漏れた曲の中にも、いい曲はほんとたくさんあるのだけれど、ほぼ全キャリアを俯瞰するのなら、これが一番。

  もともと、アルバムごとにきっちりしたコンセプトを設定しているわけではなく(悪い意味ではない)、コンスタントにシングルをリリース、いくつか溜まった頃にアルバムとしてまとめるタイプのバンドなので、良く言えば安定したクオリティ、ちょっと意地悪な見方をすれば、どのアルバムも寄せ集め感覚の似たテイストなのだけど、カタログ的な聴き方を試しにしてもらって、もし気に入った曲があったのなら、そこからオリジナル・アルバムを辿って聴いてもらえばよい。
 逆に言えば、1曲気に入った曲があれば、ほぼハズレのないバンドなので、この世界観を気に入った人には、入り口として最適のアルバムでもある。
 
 ちなみに今は解散しており、それぞれがソロ活動中。今ではすっかり忘れられた存在だけど、時々コンピレーションや未発表ライブのリリースなどがアナウンスされるくらいなので、多分イギリスでも懐メロ的扱いなのだろうけど、それなりにリターンの見込める、確実なコンテンツなのだろう。地味だけど息の長い、ロング・テール型のビジネス・モデルとしては、優良でもある。

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 現役当時から言われてることだけど、「イギリスでは誰もが知ってる国民的なバンドなのに、日本ではイマイチ」というのが、このバンドの一般的な評価である。でも、だからといってイギリスと日本以外で売れているのかといえば、そういうわけでもない。徹底的にイギリス本土を主要マーケットに据えた、ドメスティックなバンド、国内需要を主としたバンドである。
 リスクの分散がうまく行かなかったため、本国で活動が失速した際、他国へ活路を求めるべきだったのだけど、その英国的スノッブな作品性は、輸出するにはなかなか困難だった。英国ポップには比較的寛容な日本においても、なかなかブレイクできなかったのは、活動のピーク時に来日しなかったことが大きい。
 
 前身であるHousemartinsが発展的解消した後、主要メンバーであり、ツイン・ボーカルを務めていたPaul HeatonとDave Hemingwayが再結集、装いも新たにBeautifthul Southを結成する。
 Housemartinsよりバンド色を薄め、ピアノや、時にはストリングスも導入するなど、マンチェスター・シーンが盛り上がりつつあった当時の動向には背を向け、サウンド的には、アンダーグラウンドなネオ・アコから転身して、グローバルかつオーソドックスなポップスを志向していたEverything But The Girlと近い道を歩むようになる。もう少しBurt Bacharach成分を注入して歌を抜けば、あら不思議、ホテルのロビーに流れるBGMに早変わりする。
 
 サウンド的には脱ロック的な、親しみやすいポップなメロディー、それに乗せて、辛辣な政治批判や焼身自殺、グロテスクな殺人事件を題材とした歌詞を、男性2人に女性1人が爽やかに歌いあげる、という、大英帝国特有の捻くれまくったコンセプトが360度ひと巡りした結果、案外素直に聞き流せてしまえるくらい、イギリスのお茶の間にも浸透し、いきなりUKチャートで上位にランク・イン。以後、皮肉とペーソスを好む固定客(ほとんどが英国人)をしっかりつかんで、安定した人気を得るようになる。

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 サウンド、メロディ的には古びることのない、スタンダードなポップスを志向していたバンドなので、表面的なサウンドの変化は少なく、ゆえに終始安定していたイメージが強いけど、実は活動期間中に女性ボーカルが2人も変わっていたり、ハウス系のプロデューサーにサウンド・メイキングを依頼したりなど、まぁ中堅バンドとしては有りがちな、そこそこのマイナー・チェンジも行なっている。
 チャート・アクションが地味になってきた頃、Housemartins時代のバンド仲間でありながら、業界での力関係はすっかり逆転してしまったNorman Cookにプロデュースを依頼、ややビッグ・ビート気味なサウンドが、どうにも声とミスマッチだったりしている。これも迷走した中堅バンドに有りがちである。
 
 その迷走の最中にリリースされたのが、このベスト・アルバムなのだけど、まぁ契約消化的な意味合いもあって、本人達的には不本意な選曲もあるだろうが、全キャリアからまんべんなくセレクトされているので、よく言えば俯瞰した作り、意地悪く言えば無難な作りになっている。
 この後も迷走は止まらず、脈絡もなくカバー・アルバム『Golddiggas, Headnodders and Pholk Songs』をリリースする。日本でもそうだけど、アーティストが脈絡もなくカバー・アルバムを出す時、それは大抵、レコード会社からの要請、オリジナルじゃ売れないから、みんなが知ってる歌でセールスを補填することと相場は決まっている。で、当然だけど、大して思い入れのない付け焼刃のカバーは誰の共感も得ることができず、案の定、セールスはさらに下降線を辿ることとなる。
 結局、バンドもレコード会社も、方向性の行き詰まりを解消することができず、遂に2007年、Beautiful Southは18年の歴史に幕を閉じることとなる。楽曲のワン・パターンぶりは致し方ないとしても、バンド内のささくれ立った人間関係に限界を感じていたのだろう。
 
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 日本では、2枚目の『Choke』あたりからメディアの取り上げが多くなり、俺もこの辺りから聴き始めた覚えがある。
 Beautiful Southが精力的に活動していた1990年代は、リアル・タイムのバンドとして、REMやレッチリ、Oasisなど、他にインパクトの強いバンドが数多く活動していた。
 熱狂的なカリスマ性を持ったバンドではないので、特にこのバンドが一番好きだった時期はないのだけど、何というか、腐れ縁のカップルのように、何年かに一度、ふと思い出して引っ張り出したり、何となく気になり始めた頃にニュー・アルバムが出たりして、ズルズル聴き続けていた次第。

 で、今回うちのCD在庫を漁ってみると、なぜか7枚も持っていた。
 多分、イギリスでの売れ方もこんな感じだったんじゃないかと思う。
 なんとなく買ってしまう、家族か友人の誰かが持ってるので、何の曲は知らないけど耳にしたことがある、など。日本でも昔なら、レベッカかBOOWY、最近(といっても前世紀だが)ならglobeかGLAYのアルバムのようなものだ。
 最近はそういったアルバムも少なくなったけど、昔はたとえ自分で持ってなくても、何となく全曲口ずさめるアルバムというのがあった。


Solid Bronze
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Beautiful South
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1 Rotterdam (Or Anywhere)
 『Blue Is The Color』収録、シングル最高6位。シングルとしては珍しく、Jacqui Abbottのソロ・ナンバー。ちょっとボサノバの入ったリズムとアコギのリード、気だるいヴォーカルが、休日の朝の目覚めを思い起こさせる。前述のコンテンポラリー・サウンドのお手本のような曲。チャートで支持されたのもうなずけるし、リード・トラックとしては最適。

2 Perfect 10
 『Quench』収録、シングル最高2位。バンドとしては一番脂の乗っていた時期。やや怪しげな響きを奏でるハモンドから、コール&レスポンスでのPaulとJacquiのツイン・ヴォーカルが、サウンドをリードしてゆく。イギリス版「3年目の浮気」と評した人がいたけど、的を得ていると思う。
 ちなみにPaul Wellerがギターで参加しているのだけど、それほど目立った活躍でもない。
 
 

3 You Keep It All In
 『Welcome to the Beautiful South』収録、シングル最高8位。間の抜けたリズム・ボックスに乗せて歌う2人。こういった曲がチャート上位に食い込んでくる状況というのは、アイドルやダンス系だらけの日本のチャートよりは、バラエティに富んで健全だと思う。
 何となくだけど、日本で言えば浜田省吾がシングル・チャートで健闘するイメージかな?
 
4 Don't Marry Her
 『Blue Is The Color』収録、シングル最高8位。Beautiful Southといえば、必ず取り上げられるくらい、最大の話題作であり、問題作。
 「Rotterdam」と同じく、Jacquiの爽やかなヴォーカルと、アコースティックを基調としたバンド・サウンドが良質なポップスを演出しているのだけど、歌詞の内容は近親相姦をテーマとしており、タイトルではカットされているが、正式名称は「Don't Marry Her, (Fuck Me)」である。しかもはっきり、「Fuck」って歌ってるし。
 このようなシングルがきちんと評価され、チャート・インするのも、まぁイギリス特有の国民性なんだろうな。
 
 

5 A Little Time
 『Choke』収録、シングル最高1位。バンドとしては唯一のNo.1シングル。まぁいい曲なのだけれど、初代女性ヴォーカルBrianaはちょっと甘さが強く、俺としては中期のJacqui の声の方が好み。
 
6 Everybody's Talkin'
 『Miaow』収録、シングル最高12位。皮肉やウィットの強い歌詞世界を持つこのバンドには、ちょっとアバズレた雰囲気のJacqui の声質が合っている。
 
7 Good As Gold (Stupid As Mud)
 同じく『Miaow』収録、シングル最高23位。
 
8 Dream A Little Dream
 シングル発売はないけど、前ベスト『Carry On up the Charts』収録。もともとは有名なスタンダード・ナンバーらしく、最近ではRobbie Williamsもカバーしていた。

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9 Song For Whoever
 デビュー・シングル。『Welcome to the Beautiful South』収録、シングル最高2位。
 
10 Old Red Eyes Is Back
 『0898』収録、シングル最高22位。Beautiful Southはアルバムも含め、シングルもジャケット・デザインが凝っており、ちょっと悪趣味で面白い。
 
11 The Root Of All Evil
 新曲。バンド・アンサンブルのまとまりが良い頃なので、良曲。
 いかにもイギリスの労働者階級っぽい、見た目の冴えないオヤジどもの集団だが、ライブでは、なぜかカッコよく見える。観客の反応も良く、大衆に愛されたバンド、という感じでホッコリしてしまう。
 
12 One Last Love Song
 前ベスト『Carry On up the Charts』収録、シングル最高14位。Brianaのベスト・トラック。これを最後に彼女はバンドを脱退するのだけど、置き土産としては最高。Beautiful Southとしては珍しく直球のバラード。
 
 

13 Dumb
 『Quench』収録、シングル最高16位。「くたばれ」というスラングをポップなメロディー、コーラスでコーティングした、ほんと両方の意味でイギリス人らしい曲。ラス前のJacqui のカウンター・メロディが秀逸。
 
14 How Long's A Tear Take To Dry?
 同じく『Qench』収u録、シングル最高12位。アルバムのリード・トラック。PaulとJacquiの掛け合いがバービーボーイズを思い起こさせる。
 
15 Blackbird On The Wire
 『Blue Is The Color』収録、シングル最高23位。俺自身としては、Beautiful Southで最も好きな曲。
 チャート・アクションはそこそこ、曲としても地味だけど、Paulのセンチメンタルな面が多く出たヴォーカルが最高。ピアノ・ソロを主体としたバック・トラックが、情感たっぷりに歌い上げるヴォーカルを引き立たせている。
 
 

16 Closer Than Most
 『Painting It Red』収録、シングル最高22位。
 バンドとして煮詰まっていたのか、ウニョウニョしたシンセ・サウンドをバックに、徐々にドライブするギター、珍しくホーン・セクションも導入した一曲。
 この路線は結構好きだったのだけれど、バンド活動自体が次第に地味になっていった。
 
 

17 The River
 『Painting It Red』収録、シングル最高59位。ストリング・セクションをバックに、PaulとJacquiがしっとり歌い上げるのだけど、もう『Quench』の頃のようなマジックは生まれなかった。
 
18 Pretenders To The Throne
 1995年発表、オリジナル・アルバム未収録、シングル最高18位。リリース時期でいえば『Miaow』の少し後なだけに、良質なポップ・チューン。
 
19 The Mediterranean (Morcheeba Mix)
 『Painting It Red』収録、シングル発売はなし。Dave Hemingwayによるナンバー。オリジナル2枚組アルバムということでバラエティ色を出したかったのだろうが、逆に裏目に出て散漫な印象となっている。一つ一つは良い曲なのだけど、もう少し曲数を絞ってシングル・アルバムにしていたら、すごく良くなっていたと思う。



cbebcd75

 前~中期までのベスト・アルバムという位置づけ。この後、解散までの3枚のアルバムが後期とされているのだけど、次第に地味になってゆく印象は拭えない。この後もキャッチーではないけれど、ポップな良曲がリリースされているので、まずはこのアルバムを入り口に、いろいろ聴いてみてほしい。
  PaulとJacquiは久しぶりにコラボレーションを行ない、つい先日、連名でアルバムをリリースした。やはり、何か惹かれあうものがあったのだろうと思う。



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北海道の中途半端な田舎に住む、そろそろアラフィフ男。ほぼ週1のペースで音楽ブログ更新中。節操ない聴き方と思われてるけど、自分の中では一貫してるつもり。 最近は蔵書の整理がてら、古い本を再読中。ジョン・アーヴィングから始まって、フィッツジェラルドやゾラ、モームなど、いわゆる古典の復習中。いつになったら終わることやら。新刊読めねぇや。
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