Aztec Camera

好きなアルバムを自分勝手にダラダラ語る、そういったゆるいコンセプトのブログです。

やっぱりチャラ男路線は合わなかった。 - Aztec camera 『Stray』

aztec-camera---stray 1990年リリース、Aztec Camera4枚目のアルバム。文化系男子の中性的フェロモンを発していたネオ・アコ・サウンドから一転、大幅にメジャー・サウンドを意識したアーバン・ソウル的な秀作『Love』からは3年のブランクが空いている。
 前作に引き続き、唯一のメンバーRoddy Frame以外のミュージシャンはすべて外部起用、すっかり彼のソロ・プロジェクトとして定着したAztec Cameraだけど、このアルバムはUK最高22位と、緩やかにセールスのピークを過ぎていた頃である。
 時代はマッドチェスター・ムーヴメントの真っ只中、イキのいい若手(とは言っても、実際はそれほど若くなかったけど)のStone RosesやHappy Mondaysやらが台頭してきて、ハウス・ビートとオルタナ系ロックとのハイブリッドが幅を利かせつつあった頃である。
 Roddyもまた、『Love』でアメリカのブラコン・サウンドを移植した横揺れビートを導入していたけど、終末感を漂わせた暴力的なリズムの前では太刀打ちできず、この『Love』をピークとして、チャート・アクション的には次第に地味になってゆく。

 ニュー・ウェイヴ・ムーヴメント終了後の80年代初頭からインディー・シーンで活動していたギター・メインのバンドということで、どうしてもネオアコの範疇で語られることの多いAztec Camera、ていうかRoddy。
 とは言っても、ほんとにステレオタイプなネオ・アコ・サウンドを展開していたのは、初期の2枚しかない。なぜかMark Knopflerをプロデューサーに迎えた初期の傑作『Knife』が、そのネオ・アコ的サウンドの集大成とも総決算とも言える出来栄えだったため、もうこの路線においてはやり尽くしてしまった感が強い。
 そういった経緯もあって、3枚目の『Love』では新機軸として、80年代ブラコンのメロウ&エモーショナルなMOR的サウンドを導入、セールス的にもキャリア最高の売り上げ計上に至った。最初は戸惑いもあったファンからも次第に理解を得、しばらくはこの路線で行くのだろう、と誰もが思っていた。いたはずなのだけど、変わりゆく音楽シーンの傾向に合わせようとしたのか、それともミスマッチ感の強いダンサブルなサウンドに違和感を覚えたのか、その後は音楽性が定まらず、遂にAztec Camera終了まで迷走状態に陥ってしまう。

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 なので、この『Stray』にも言えることだけど、よく言えばバラエティに富んだ音作り、意地悪く言ってしまえば、まとまりなくとっ散らかった印象が強い。
 Roddyの人間性として、今で言う「意識高い系」というのか、もう50歳を過ぎているにもかかわらず、いまだ「永遠のアダルト・チルドレン」的要素が強い。どうやっても現状に満足せず、ひとつところに落ち着かず、すぐに自分探し/自分磨きの旅に出てしまうのが、当時のRoddyに見られる特徴である。日常では役に立ちそうもない資格の勉強をしたり、Facebookに雲やラテアートの写真をアップしてしまうアラフォー女子の如く、傍から見るとちょっとイタイ人でもある。
 まぁそんなスキだらけなところが母性本能をくすぐるため、昔から女性ファンが多い証でもある。

 反面、レーベル側としてはイメージが定着しないため、積極的にプロモートしづらくなる。特にこの『Stray』では、ひとつのアルバムの中でもコロコロ曲調が変わるので、セールス・ポイントが絞りきれず、結局はいつも通り、「ネオアコの旗手による意欲作」など、どうにもフワッとしたキャッチ・フレーズでお茶を濁してしまうことになる。
ダウンロード販売が主流となって、アルバムというフォーマットの意味自体が薄れかけている現在なら、それはそれで良いのだろうけど、当時はまだアルバム・コンセプトが重視されていた時代である。国内盤発売の担当者や輸入盤のショップ店員も、さぞかしPOP作成に苦労したんじゃないかと思われる。
 
 メジャー・レーベルへの移籍によって、レコーディング環境や販促体制の充実というメリットを手に入れたはいいけど、そこから方向性に行き詰まってしまったのが、90年代のAztec Cameraである。
レーベル側としては、ネオアコ界のトレンド・リーダーとしての才能と可能性を見出だし、でもそれだけじゃ世界戦略的にはちょっと弱いので、時流に合わせたブラコン・サウンドの意匠を嵌め込んで、キャッチーさを演出してみた。結果としてはキャリア最高のセールスを叩き出し、みんながwin-winで収まるはずだったのだけど、そこで今で言う中二病をこじらせてしまったのが、肝心のRoddy。これまでの「悩める思春期モラトリアム」から一転、リア充よろしく精いっぱいチャラくしてみたつもりだったけど、どこか居心地の悪さ、無理やり感は拭えなかった。所詮は、「どこかヘタレ感の漂う文系男子」である自分を客観視してしまったんじゃないかと思われる。

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 どこかにあるはず、もしかすると、自分のすぐ足元にあるかもしれない、自分にしっくり来る理想のサウンドを追い求める、そんなRoddyの試行錯誤が如実に記録されているのが、このアルバムである。
 拳を振り上げたくなるストレートなロック・ナンバーから、しんみり聴き入ってしまうバラードまで、サウンドはバラエテイに富んでいる。前作のようなブラコン要素は薄く、むしろ『Knife』のビルド・アップ・ヴァージョン、叙情性をベースにサウンドをゴージャスにした感が強い。まぁ曲調によってヴォーカル・スタイルを切り替えられるほど器用な人ではないので、どれを聴いてもRoddyのカラーが色濃く現れている。

 逆に言えば、どんなサウンドだったとしてもRoddyのパーソナリティは微動だにせず、正しくAztec CameraというバンドがイコールRoddyそのものである、と証明しているのが、この『Stray』である。
 この頃からRoddyのライブ・パフォーマンスはバンドを引き連れないソロ・スタイルのセットが多くなり、初期のアコースティック・ナンバーはもちろんだけど、メジャー移籍以降のナンバーから最新曲まで、そのほとんどを自身によるギター弾き語りだけで表現している。「僕がAztec Cameraそのものなんだっ」という自信の顕れでもあるし、まぁ予算の何やかやもあったんじゃないかとは思うけど。
 
 時間と予算をかけて作り上げたサウンドを一旦チャラにして、ライブで披露される素顔のRoddyの歌は、昔と同じ、技巧にあふれた素直なメロディ・ラインを奏でている。どれだけ新奇なアレンジを施そうとも、Roddyの歌が揺るがないのは、曲自体がしっかり作り込まれているから、と言わざるを得ない。それがしっかり伝わってるからこそ、彼のファンは年季の入った人が多い。

 多いのだけど、そんな魅力が外部にきちんと発信されているのかと言えば、残念ながら充分とは言い難い。イメージが定まらない、またはネオアコの先入観が強すぎるのも考えものである。
 これがDavid Bowieなら、変化してゆくこと自体がコンセプトになるのだろうけど、あいにくそこまでのエゴは少ない人である。結局は良い曲を愚直に演奏してゆくことが一番性に合ってるという、極めて当たり前の結論に落ち着くことになるのだけど、そこに至るまでの若気の至りが、この『Stray』から解散まで、しばらく続くことになる。


Stray
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1. Stray
 何のごまかしもない、正統派王道バラードからスタート。ギターとピアノによるシンプルなバッキングで、前作のようなオーバー・プロデュース気味だったサウンドとは一線を画している。
 これだけ聴いてると、正々堂々としたアコースティックなテイストで統一されてるかと思いきや、実はバラバラであることを思い知らされることになる。

2. The Crying Scene
 エフ クトを効かせたギターを抱えたRoddyが歌うポップ・ロック・ナンバー。ややアメリカン・ロック調なところがあって、時々Bryan Adamsっぽく聴こえる瞬間もあり。甘いマスクは彼と共通するところもあり、もう少し色気づいていれば、彼と同じポジションくらいまではいけたかもしれないけど、まぁ無理か、所詮文科系だし。
 シングルとして、UK最高70位。



3. Get Outta London
 その細い声質からは想像できないけど、多分Stones辺りをモチーフとして作られたんじゃないかと思われる、Roddyなりのブルース・ナンバー。時々ラウドなギターを弾く瞬間があるのだけど、まぁほどほどの感じで収めているのが、やはりRoddy。この辺が真面目といえば真面目。
”Jump”に近いアプローチだけど、時々こういったのがやりたくなるのだろう。

4. Over My Head
 本人曰く、Wes Montgomeryも意識したジャジーなナンバー。1分ほど「らしい」ストロークが続き、なんかこのまま終わっちゃうんじゃないかと思ってしまうほど、イントロだけで十分完結している。
 
5. Good Morning Britain
 このアルバムで一番といえば、やはりこれ。一緒に歌うは元ClashのMick Jones。当時のMickはBig Audio Dynamiteで第2のピークを迎えていた頃で、ロートルにもかかわらず勢いが有り余っていた時代である。
 Roddyのポップ性とMickのエモーショナルなロック成分、それにほんのちょっぴりモダン風味のデジ・ロック・サウンド。Roddyとしても憧れだったはずだし、Mickもまたイケイケ状態だったため、若手に胸を貸す心づもりだったのが、案外ウマが合って意気投合し、できあがったのがこのサウンド。
どの場面を切り取ってもいちいちサマになる、80年代ロックの完成形のひとつがここにある。どんな理屈をこねようと、拳を振り上げたくなるような音楽には、誰もかなわない。
US19位は近年を比べても妥当な位置。だけど、もっと売れてほしかったな。



6. How It Is
 もろ”Honky Tonk Woman”っぽいギター・リフから始まり、最後までストレートなハイパー・ブルース・ロックを奏でている。こうして最初から聴いてみると、声とサウンドとのミスマッチ感が逆に良い方向へ作用しているのがわかる。

7. The Gentle Kind
 ここでやっと、ネオ・アコ登場。この辺は初期っぽいサウンドだな。
 バラードでもなく、かといって入念に作り込まれたポップでもない。メロディ・ラインも流麗で、ギターの音色もちょうど良い。『Knife』サウンドの完成形と言っても褒めすぎではないくらい、しっかりした構造なのだけど。
 だけど、こんな曲ならRoddy、ササッと作れてしまうのだろう。ネオ・アコの文脈で書かれた曲は、所詮ネオ・アコ村の中でしか通用しない。彼が求めるのは、今までに演じたことのないサウンドなのだ。
 
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8. Notting Hill Blues
 ラスト2曲はシンプルなバラードで。あまりに正統派過ぎて、メロディがあまりキャッチーではないのが気になるところ。こういったサビ、日本でも結構パクられてた記憶があるけど、すぐは思い出せない。

9. Song For A Friend
 8.よりもう少しギターを前面に出した曲。サウンドはまんまフォークなのだけど、メロディのポップさによって、どこかミスマッチ感が漂っている。いるのだけど、長年のファンなら恐らく気に入ってしまう世界観をを、余すところなく表現している。




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思ったよりチャラくない、音楽にマジメな男の軌跡 - Aztec Camera 『Covers & Rare』

folder 青臭い童貞っぽさを漂わせていたネオ・アコ期の凛とした面影はどこへやら、当時隆盛だったブルー・アイド・ソウル、ていうか思いっきりブラコン・サウンドに急接近した『Love』リリース以降のAztec CameraことフロントマンのRoddy Frame。ClashのMick JonesやOrange JuiceのEdwin Collinsらとコラボしたり、英オルタナ・シーンとの接点を維持してはいたのだけれど、レコード会社的にも、そしてRoddy的にも、もっと大きなフィールドでの活動を視野に入れていた。
 メジャー戦略に則ったサウンドの洗練に伴って、ビジュアルもよりスタイリッシュに傾きつつあった。真摯なギター少年の面影はすっかり薄れ、ビジュアル系音楽雑誌のグラビアを飾るまでになっていた。

 80年代洋楽の傾向として、Bruce SpringsteenやLAメタル系を代表とするアメリカのアーティストが、肉体性やマッチョを前面に押し出した、男性要素の強いビジュアルを演出していたのに対し、イギリスのアーティストはDavid Bowieに端を発した、中性的で線の細い、化粧映えするアーティストに人気が集中していた。特にRoddyやSmithsのJohnny Marrなど、中性的容貌に加え、少年性を漂わせる独特の趣きに魅せられたネオ・アコ少女たちも多く、ロキノンのカラー・グラビアでもしょっちゅう取り上げられていた。
 音楽性とビジュアルとのシンクロ率が高かった『Love』『Stray』期、日本でも女性ファンを中心に静かな盛り上がりを見せ、この時期は結構な頻度で来日公演を行なっている。当時は洋楽マーケットが日本でもそこそこのシェアを占めていたため、それほど大掛かりなセットや大人数でもない限り、採算が取れていたのだ。

 じゃないと、こういった種類のアルバムはリリースできない。しかも本国UKでは未発売、日本独自の企画盤である。ベスト盤ではなく、オリジナル・コンセプトのコンピレーション、シングルのみのリリースだったり、オムニバスへのワン・ショットでの参加曲、その他をライブ・テイクで埋めている。アルバムだけではカバーしきれない、熱心なファン向けのコレクターズ・アイテム的なポジションの作品だけに、普通ならライト・ユーザーやビギナーにはオススメしづらいのだけれど、有名曲のカバーも収録されているので、中途半端なオリジナルよりは、ずっと取っ付きやすいはずである。

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 このアルバムがリリースされた1993年は、Aztec Cameraのデビュー10周年、オリジナル・アルバム『Dreamland』リリース直後の頃。バルセロナ・オリンピック開会式の作曲・指揮やYMO再生により、活動のピークに達していた坂本龍一が全面プロデュースという謳い文句で話題になり、UKチャート最高21位と、まぁまぁのセールスを記録したアルバムである。作品・サウンド・アレンジとも会心の出来だったこともあり、これまでのキャリアに一段落ついたこともあって、この来日記念盤のリリースを許可したのだろう。

 穿った言い方をすると、いわゆる寄せ集め的なアルバムだが、すべてのシングルや客演までを把握しきれない日本の熱心なファンにとっては、貴重なアルバムである。当時のレコード会社や洋楽雑誌も小まめな情報発信を行なってはいたのだけど、ネットが普及する以前の90年代において、日本とUKとの間では、情報の格差はまだ大きかった。
 90年代は輸入盤の全盛期、札幌でもタワー・レコードやCisco、WAVEやVirginなど、ショップによってそれぞれラインナップに微妙な特徴があり、回って見るだけでも一日が潰れ、何も買わなくても楽しかった。ちなみに現在残っているのはタワーのみ。去年久しぶりに覗いて見たのだけど、2フロアあったのが1フロアに縮小されていたせいなのか、何だかすごくせせこましい配置になっていた。おかげで90年代当時の独特の空気感が失われていたため落ち着かず、10分足らずで店を出てしまった。

 去年久しぶりにソロ・アルバムをリリースし、再び小規模ながらツアーも始めたRoddyを確認できて、世界中のファンはひとまず安心した。細やかな透明感のあるギター・プレイや歌声はまだ健在である。まだ歌い続けてゆくことを表明してくれたことが、旧い友人からの久しぶりの便りのように、とても温かく、そして懐かしさを感じる。
 もうギラついた野心もないだろうし、このままマイペースで歌い続けていくのだろう。
 たまにでもいいから日本に来てね、できたら札幌に。


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1. Back On Board (Live)
 デビュー・アルバム『High Land, Hard Rain』収録、1983年ということなのでリリース直後、場所は有名なEl Mocambo、StonesやCostelloなど、有名どころがライブ・アルバム収録に利用しているのだけれど、キャパとしてはせいぜい400~500程度のなので、それほど大きな場所でもない。イギリスの新進アーティストとしては憧れの聖地だったのかもしれないが。
 曲調としては朴訥としたアコースティック・ロックなので、それほど盛り上がりを見せる曲調でもない。うん、別にライブ・ヴァージョンにしなくてもよかったんじゃない?

2. All I Need Is Everything (Latin Mix)
 『Knife』の先行シングルとしてリリースされた、12インチ・シングルの別ミックス。といっても、ちょっぴりラテン・フレーヴァーを足してイントロを長くしたくらい。昔の12インチには、こういった無意味な引き延ばしが多かった。ディスコ用に長く踊れるように、というのが本来の目的なのだけど、Aztec Cameraで誰が踊るの?って話になる。
 それは抜きにして、当時MTVブームの追い風によってノリにノッテいたMark Knopflerプロデュースによって、ヒットのツボを心得たサウンド・メイキングとRoddyの生来ポップなソング・ライティングとが絶妙にマッチングしている。全英チャート34位はちょっと低めなんじゃないかとも思えてしまう。

3. Jump (Loaded Version)
 その3.のB面に収録された、一躍話題となった、言わずと知れたVan Halen大ヒット・ナンバーのアコースティック・カバー。元曲とのあまりのアプローチの違い、あまりの静と動との対比に、まだ高校生ながら、「カバーとは、その曲に対しての愛情だけでなく、批評性もまた重要なのだな」と、まぁここまで整理して思っていたわけではないけど、そんなことを思った次第。
 静謐とした前半から徐々にテンションを上げてゆき、終盤での爆発した混沌の渦のギター・ソロ。その対比こそが、この曲の本質を見事に言い当ててるとも言える。
 


4. Set The Killing Free
 シングル” Walk Out to Winter” B面が初出。メロディはいつものRoddy色だが、ややサウンドはラウドに、歌詞の内容からして、どこかClashっぽい。当時のアルバムのカラーには合わなかったのだろう。

5. Consolation Prize
 CDシングル“Good Morning Britain”のみに収録。アナログ未収録、しかもCDはアメリカのみの発売だったため、これもなかなかのレア・アイテム。
 もともとオリジナルは、デュエットしているのEdwin Collins、同時代にネオ・アコ・ムーヴメントで何かと付き合いがあった、Orange Juiceのリーダー兼ヴォーカリスト。
 このシングルがリリース当時の1990年頃、Orange Juiceは解散しており、Roddyに比べてEdwinは不遇の時期だったわけだが、数年後、彼の曲が大ヒット映画『Charlie's Angels: Full Throttle』に採用されたことによって、一気に立場は逆転する。その後、またまた大ヒット映画『Austin Powers』にも採用されることにより、Roddyにとっては手の届かないポジションにまで行ってしまった。その割に結構フットワークの軽い人で、有名無名ジャンルを問わず、いろいろなセッションに顔を出しているのが、好感が持てる。
 俺的にお気に入りなのが、イタリアのアシッド・ジャズ・ユニットGabinのシングル。

6. True Colors
 3.同様、こちらも有名なCyndi Lauperの名曲バラードのカバー。ほんと2枚目リリースまでのCyndiは曲に恵まれており、自作である”Time after Time”を筆頭に、”Girls Just Want to Have Fun”” Money Changes Everything”など、今でも風化してない曲がたくさんある。ちなみにCyndi、何故か”True Colors”収録アルバムにて、Marvinの”What’s Going On”をカバーしているのだけれど、これはまぁあまりいい出来ではなかった。
 でRoddy、この曲については非常にストレートなカバー。”Jump”と違って純粋にメロディのきれいな曲なので、あまりいじることもできなかったのだろう。
 1990年リリース『Stray』と同時リリース・シングル” The Crying Scene”のB面収録曲。
 


7. (If Paradise Is) Half Is Nice
 イギリスの音楽雑誌NME(New Musical Express)創刊40周年を記念したコンピレーション『Ruby Trax』にのみ収録されている、多分全トラック中最もレア度の高い曲。全3枚組新旧アーティストがそれぞれ、オリジナルではなくカバー曲をプレイしているのだけれど、RoddyはAmen Corner1969年のヒット曲をチョイス、オリジナル・メンバーのAndy Fairweather Lowとデュエットするという凝りよう。
 軽いポップ・ソウル風で、どこか”Dock of the Bay”を思い起こさせる曲調が切なくてRoddy向き。
 
8. We Could Send Letters (Live)
 オリジナルは『High Land, Hard Rain』収録、1.と同じくEl Mocamboでのライブ。朴訥で愛想のないプレイは、新進バンドの堅さが現れている。

9. Salvation
 6.同様、シングル”The Crying Scene”収録。この人の場合、メロディ・ラインの癖は昔からあまり変わってないのだけれど、やはりサウンドがコロコロ変わっていることによって、彩りがまるで違って聴こえる。この曲だってデビュー・アルバム辺りに入っててもおかしくない曲なのに、まったりAORっぽいアレンジがしっくりはまっている。

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10. Deep & Wide & Tall (Breakdown Mix)
 思いっきりイメチェンを図った3枚目のアルバム『Love』の先行シングルとして発売、もちろん当時隆盛の12インチに収録。UK最高79位というのは不本意だったと思われるが、アルバム自体は最高10位にチャート・インしており、トータルではそこそこの成績。
 当時はブラコンに思いっきり接近していた時期でもあるので、Roddy自身もこういったのをやりたかったのだろう。といっても、こういったダンス・ミュージックへのアプローチはこのアルバムのみ、リズムを強調したサウンドへの興味は次第に薄れ、次第にもっとコンテンポラリーな、AOR的なサウンドへと移行してゆく。

11. Bad Education
 その10.同様、B面で収録されていたのがこれ。シンセのフレーズも流用したかのように似ており、同時期の兄弟的な曲である。サウンドは完全に『Love』仕様なのだけれど、もっとバンド寄り、楽しげにアコギをかき鳴らすRoddyが、そこにいる。

12. Good Morning Britain
 元ClashのMick Jonesとのコラボ、ということで当時でも大きな話題となった、UK最高19位のヒット・ナンバー。ここではダンス・ミックスでの収録となっているのが惜しい。これは『Stray』にオリジナル収録されているので、趣旨とはズレるけど、ぜひこちらを聴いてほしい。
 


13. Walk Out To Winter (Extended Version)
 "Oblivious"同様、今でもAztec Cameraの代名詞的名曲のダンス・ミックス。延々と続くベース・ラインなど、無闇な引き延ばしがウザく感じるのだけれど、ほんとにみんな、これで踊ってたの?とまで思ってしまう。まぁ踊れないよな、きっと。

14. The Red Flag
 『Love』からのセカンド・カット”How Men Are”B面収録のトラディショナル・ソング。イギリスでは18世紀くらいから伝わる、日本で言う唱歌のようなもので、大抵のイギリス人なら耳にしたことがあるくらい、有名な曲。
 いま調べるまでずっと、Roddyのオリジナルだと思っていた。そのくらいハマっている曲だし、A面曲とも調和の取れたシングルになっている。

15. Do I Love You?
 ラストはカバー曲、こちらもなかなかのレア・アイテム。
 1960年代まで活躍したアメリカのミュージカル/映画音楽を中心に活動した作曲家Cole Porterのトリビュート・アルバム『Red Hot & Blue』に収録。有名どころではU2やSinéad O'Connor、Thompson Twinsなど、80年代に活躍したアーティストがひしめく中、堂々のラストを飾っている。
 こちらも下手なアレンジはせず、ストレートにシンプルな、メロディを活かしたサウンドを展開している。しかし14.といい、スタンダードな音楽の似合う声質の人なのだと思う。次第に凝ったサウンドからヴォーカル重視になって行くのは、必然の流れだったのだろう。



 コンセプトのないコンピレーションのため、特別最初から通して聴く必要がないのが、このアルバムの利点。好きな曲ばかり聴いてもいいし、いまいち合わない曲は飛ばしたってかまわない。俺もリリース当時は”Jump”や”True Colors”、”Good Morning Britain”や『Love』収録曲がヘビロテだったけど、今回改めて聴いてみると、14.や15.のようなスタンダード・ナンバー、それとAndy Fairweather Lowとのコラボが意外に良くって、これが再発見。年代に応じて、色々な受け止め方のできるアルバムである。

 情報を詰め込んだせいか、なんかほんと、普通のレビューっぽくなっちゃったな。
 まぁいいでしょ、たまにこんなのも。



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今までより、ちょっぴりチャラくしてみました - Aztec Camera 『Love』

love 1 1987年リリース3枚目のアルバム。UKチャートトップ10入りした、最初で最後のアルバムでもある。
 1983年、Roddy Frame (Vo,G)を中心とした、普通の5人編成バンドとして、当時メジャー・レーベルに対抗するインディー新興勢力だったラフ・トレードより、『High Land, Hard Rain』でデビュー。この頃はまだそれなり、ごく普通のギター・ポップ・バンドだった。シングル「Oblivious」(間奏ギターソロは必聴!)で脚光を浴び、「おっ、チョットそこらのバンドとは違うんじゃね?」と注目を浴びるとすぐ、メジャーWEAとワールドワイド契約、さらにネオアコ~ギター・ポップ路線を突き詰めた佳作『Knife』をリリースした。

 当時「Money For Nothing」の大ヒットによって、一気にメジャー・シーンに躍り出た Dire Straits のリーダー兼コンポーザー Mark Knopfler がプロデュースしたことも、大きな話題となった(なぜこの人選に至ったのか、今となっては経緯は不明。多分レコード会社主導で企画されたコラボだったと思う)。
 ちなみにこの辺りから、他メンバーの影は次第に薄くなってゆく。もともとほとんどの曲を自作、しかもメイン・ヴォーカルでありフロント・マンでもあった Roddy 、サウンド・メイキングにバンドの力を借りる必要はなかった。ほとんどのトラックを Mark と共に作りこんでゆき、バンド・メンバーも辛うじてクレジットはされているものの、ほぼサポート扱いだったことが、当時のメディアでも報道されている。わかりやすく言えば、 ZARD みたいなもの(これしか思い浮かばなかった)。
 
 バンドとしての Aztec Camera の活動は次第にフェード・アウトしてゆき、心機一転、 Roddy のソロ・プロジェクトとして再スタートを切った初めてのアルバムが、この『Love』である。この時代から、レコーディングやライブ毎に適時メンバーを編成する手法がスタートする。今でこそあまり珍しい形態ではなくなったけど、ここまでフレキシブルなバンド編成は、当時あまり類を見なかった。

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 それまでの Aztec Camera で思い浮かぶのが、「ネオアコ・ポップ界のギター・ヒーロー」、「青臭く繊細な文化部系バンド」という一般的なイメージである。俺個人としても、「Walk Out To Winter」を聴いていると、真冬の朝、白い息を吐きながら、静かな街中を軽快に歩く Roddy のビジュアルが思い浮かぶ。ツルンとした中性的な顔立ち、ユニセックスなビジュアルも、当時の洋楽オタク女子、今で言う腐女子らにアピールしていた。
 
 1980年代中盤から後半のブリティッシュ・シーンにて興ったムーヴメントの一つとして、ブルー・アイド・ソウル現象が挙げられる。もともとは Daryl Hall & John Oates に端を発する、アメリカが発端のムーヴメントなのだけれど、緻密なメディア・イメージ戦略とMTVパワー・プレイを最大限に活用することによって、メジャー・レーベルの思惑通り、イギリスを始めとした全世界に飛び火し、後追いするミュージシャンが続いた。
 既存のロックに"No"を突きつけた、パンク/ニュー・ウェイヴ・シーンが無残な末期を迎え、一転して先祖返りしたオーガニックなネオアコ・サウンドの流れが続いたのだけど、その路線も行き詰ってしまい、方向性を見失った彼らが目を付けたのが、ブリテッィシュの視点でブラック・ミュージックを消化(模倣)したサウンドだった。
 
 積み重なる人件費と、その他諸々の経費(主に酒・女・ドラッグなど)によって、多人数編成のバンド維持が困難になりつつあったソウル・ミュージシャン達にとって、簡易型のシンセサイザーの普及は、大きな革命に値するものだった。演奏機材の技術的向上、大量生産によるコスト・ダウンに伴う爆発的な普及化によって、多人数のホーン・セクションを雇わなくても、そこそこのクオリティのサウンドを作ることが可能となり、それが80年代 R&B の基本フォーマットとして定着した(その発端となったのが Marvin Gaye であり、機材の使い方によっては Zapp にもなった)。

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 多かれ少なかれ、アメリカへのコンプレックスを抱いていたイギリスの文化系ミュージシャンたちが、「これなら俺にもできそう!」と勘違いして、ヤマハDX7やフェアライトCMIのプリセット・サウンドを用い、プラスチック・ソウルを演じた。サクセス・ストーリーのまだ途中だった Jam を解散してまで  Style Council を結成した Paul Weller 、ソロでは Paul Young 、Dr. Robert  率いる Blow Monkeys  などが典型である。
 ただ、あまりにも時代の要請に応えすぎたあまり、そして当時の演奏機材のスペックの限界もあって、ほとんどのサウンドが、ヴォーカルを抜くと、どれを聴いても金太郎飴状態となってしまう。そうなれば行き着く先は決まっており、他アーティストとの差別化が困難なため、無理やり路線変更を強いられるか、はたまた空中分解してしまうか、どちらかである。
 結局のところ、最後に優劣を決めるのは曲そのもの、バンドやヴォーカル自体の地力の差という、当たり前の結論に落ち着くこととなる。
 そう考えると、サウンドは徹底的に作り込みながらも、ヴォーカルは線の細いままの Scritti Politti が成功を収めたのは、理に適っている(同様のコンセプトのサウンド・メイキングでありながら、さらにリズムを強調した New Order  は、更に大きな成功を手にした)。
 
 ほんの一瞬ではあったけど、時代の寵児であった Roddy  もまた、そんな尻馬に乗った一人である。メジャー・レーベルから提示されたビッグ・バジェットを最大限活用し、時代を象徴する、きらびやかなサウンド、悪く言えばチャラい路線を彼は選んだ。
 それまでは、イギリス国内でカレッジ・チャートを賑わせる程度の存在でしかなかった Roddy だったけど、同時代のアーティストの成功を横目で見て野心が湧いたのか、はたまたレコード会社の要請だったのか、有名どころの Steve Gadd (Dr)、Dan Hartman (B.Vo), Steve Jordan (Dr), Will Lee (Bass)などをそろえ、アメリカ市場を意識したゴージャスなサウンドを創出している。


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1.Deep And Wide And Tall
 一発目から80年代特有リヴァーブ・ドラムがさく裂する、さらに今回初導入したソウルフルな女性コーラスと共に、Roddy が爽やかに歌い上げる。当時のMTVでヘビロテされてもおかしくないレベルに仕上がった、Roddy 流メジャーポップ。
 
2.How Men Are
 俺が Aztec Camera に興味を持つきっかけになった曲なので、思い入れも一段と強い。
 Peter Barakan が深夜にやっていた「ポッパーズMTV」にてこのPVが流れ、そのセンチメンタリズムに魅了され、即座にファンになった。もともとセミ・アコを用いたギター・プレイに定評のあった Roddy だけど、このアルバムではサウンド・クリエイターの面を強く押し出しており、ギター・サウンドを前面に押し出した貴重な曲。
 セミ・アコによって奏でられる、間奏のソロの切なさ否たさがたまらないのだけれど、アウトロ前からかぶってくる、R&B風女性コーラスがちょっとクドい。でも好きな曲。

 

3.Everybody Is A Number One
 タイトル通り、アッパーで前向きなポップ・チューン。軽快なギター・リフと、時代を感じさせるシンセ・ブラスが特徴。間奏の女性コーラスとによるコール&レスポンスも、当時のヒット・チャートを意識したかのようなハデな作り。
 
4.More Than A Law
 ウエットなメロディとスウィートな旋律が日本人の感性にもフィットする、ネオ・アコ的なナンバー。この腹から声の出ない Roddy のヴォーカルは、当時のバンド系腐女子らのハートを狙い撃ちして、イチコロにした。
 
5.Somewhere In My Heart
 Aztec Camera としては最大のヒット曲。全英シングル・チャート3位。
 シンセ・ブラスとリヴァーブの利いたドラムで構成された曲。このアルバムのためにボイス・トレーニングを受けたのだろう、線は細いけど声が十分前に出ている。
 掻きむしるかのような、間奏のギター・ソロが絶品。

 

6.Working In A Goldmine
 UKシングル・チャート31位まで上昇した、切ないラブ・ソングっぽく聴こえる曲だけど、歌詞は金鉱で働く労働者の嘆きを歌っている、別な意味で切なくなってしまう曲。間奏のギター・ソロもまた郷愁を誘うようにドラマティック。淡々としてはいるけれど、メロディのフックも効いており、そこそこの売り上げだったことは理解できる。
 
7.One And One
 一転して、これまでの Aztec Camera の流れからは想像できないダンス・ナンバー。ファンキーなギター・カッティング、女性ヴォーカル Caroll Thompson との掛け合いは完全に気迫負けしてはいるけど、アメリカのコンテンポラリーなサウンドを背伸びして狙っていたことが想像できる。「プラスティック・ソウル」という形容がピッタリはまる曲。

8.Paradise
 80年代の典型的なフォーマットに則って作られたポップ・ソング。破綻も少ない凡庸なバラードなので、これって、別に Rodyy じゃなくてもいいんじゃね?といつも思ってしまう。Rick Springfield にでも歌ってもらった方が、こういった曲はずっとチャラくウエットに仕上げてくれるはず。
 
9.Killermont Street 
 ネオアコ風味が残ったラスト・ナンバー。後に自らのホームページのタイトルにもなっている、本人の思い入れも強いと思われる名バラード。



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 この時代のほとんどのアーティスト同様、思いっきりアメリカン・チャートを意識した音作りにもかかわらず、ビルボード最高193位という、どうにも不本意な結果に終わってしまう。この後、ほんとに神経質になったのか、まんま『Stray』というアルバムを作ったり( Clash の Mick Jones とコラボした「Good Morning Britain」がオススメ)、坂本龍一をプロデューサーに迎えてAORっぽいアルバムを作ったりと、しばらく迷走の日々が続く。
 それでも日本ではウケがよかったのか、アルバム未収録曲やライブ・ヴァージョンで構成された独自企画盤が2枚もリリースされており、Roddy 自身も温かく迎え入れてくるオーディエンスに応えて、何度も来日公演を行なっている。
 
 永遠の少年性を漂わせる、ツルンとした顔立ちと風貌、ライブでの気さくな人柄が功を奏したのだろう、名義を Roddy Frame 単独にして、地道に活動を継続、インディーズに戻ったことによって、余計なプレッシャーから解放され、自由かつマイペースな活動を続けた。リリース・ペースは長くなったけど、時々思い出したようにアルバムを制作、今年に入ってからも秀作『Seven Dials』を発表してくれた。
 今年50歳を迎え、さすがに童顔だった Roddy も寄る年波には抗えず、今回のジャケット写真では、年相応の老け込み具合が長年のファンにショックを与えた。しかし、何かを振り切ったのだろう、決してかつての名曲たちにはかなわないけど、極上のメロディを携えてシーンに帰ってきてくれたことを素直に喜びたい。




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北海道の中途半端な田舎に住む、そろそろアラフィフ男。ほぼ週1のペースで音楽ブログ更新中。節操ない聴き方と思われてるけど、自分の中では一貫してるつもり。 最近は蔵書の整理がてら、古い本を再読中。ジョン・アーヴィングから始まって、フィッツジェラルドやゾラ、モームなど、いわゆる古典の復習中。いつになったら終わることやら。新刊読めねぇや。
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