好きなアルバムを自分勝手にダラダラ語る、そんなユルいコンセプトのブログです。

Amy Winehouse

心臓を鷲づかみする声、あらゆる者を虜にするまなざし - Amy Winehouse 『Back to Black』

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 2006年リリース、エイミー2枚目のオリジナル・アルバム。そして、これが生前最期の作品集となった。全世界での累計セールスは1100万枚、日本でも10万枚売れてゴールドを獲得している。
 本国イギリスではなんと400万枚、歴代13番目に売れたアルバムとして記録されている。マドンナのベストとアデル『25』に挟まれるほど、あの英国人に支持されていたとは、ちょっとビックリ。あぁいったヴァンプ的なビジュアルに拒否反応示す人も多いだろうに。

 一度聴いたら忘れられない個性的な声を天から授かったエイミー、さらに加えて暴力的とも言える動物的カンまで併せ持っていた。
 イントロが始まり、静かにマイクの前に立つエイミー。リズムを感じながら躰を揺らし始める。バンド・アンサンブルの調子を確かめながら、自身のコンディションをシンクロさせてゆく。何度も歌ってきた曲であっても、その作業は変わらない。クレバーな反復とセンシティヴな直感、それらは必要なプロセスなのだ。そんな手続きを経ることによって、エイミーの歌は常に鮮烈で、同じ曲でも違ったアプローチとなる。そのパフォーマンスはオリジナルであるけれど、常に刹那的なものだ。
 なので、どんなバッキング、どんなサウンドで歌っても、結局エイミー・ワインハウスのオリジナルになってしまう。ジャズでもロックでもソウルでも演歌でも、ほんと何だって無問題、ドスとタメの効いたヴォーカルは、一声でサウンドを制圧してしまう。
 彼女が活動していた時期のヒット・チャートの主流は、リヴァーブ厚めのビートを音圧MAXにブーストした、終始アッパー系リズムが支配したサウンドだった。そんな時流とは正反対のベクトルを描いていたのが、エイミーの歌だった。

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 50年代の正統派ジャズ・ヴォーカルのアルバムから、ヴォーカルだけ抜いて21世紀のサウンド仕様にアップ・コンバート、そこにガラガラ声でクセの強いビッチ風ヴォーカルを差し替えたのが、デビュー・アルバム『Frank』だった。
 当時のトレンドとは真逆のベクトルを描いた『Frank』の異質さは、万人向けのものではないはずだった。はずだったのだけれど、でも売れた。発売当初はジャズ・ヴォーカルとして売り出されたはずだけど、そのカテゴライズも無用になるくらい、『Frank』は売れた。
 記名性の強いエイミーの声は、アクも強いし、世間一般で言う美声ではない。ビジュアル同様、万人にアピールする声ではないはずだった。だったのだけれど、その声は、一部のユーザーの心の琴線を鷲づかみにする。そんなハートを撃ち抜かれたユーザーが、イギリスだけでも100万人いた事実。

 『Frank』の商業的・音楽的成功を経て、『Back to Black』は制作された。彼女のバックボーンであるジャズ路線だけでなく、マスへの拡大戦略として、新機軸が導入されている。
 DJとして最初は注目され、プロデューサーとしてはまだ駆け出しだったマーク・ロンソンは、エイミーの特性をいち早く見抜いた1人だった。『Frank』でのジャズ・コンボとの相性が悪いわけではなかったけど、いい意味で下世話にコーディネートすることによって、エイミーのパーソナリティがもっと映えることに気づいたのだ。
 サウンドのモチーフとしたのは、60年代のガールズ・ポップだった。エイミーもまた同じベクトルを志向していたため、プリ・プロダクションもスムーズに運んだ。
 ヴィンテージ・ジャズやソウルを好んで聴いていたエイミーだったけど、さすがに自分が歌うとなれば、もう少しモダンなサウンドにしたくなる。いくつも修羅場をくぐってきたような顔と声とはいえ、まだ二十歳を少し超えたばかりの女の子なのだ。

Amy Winehouse

 バッキングにダップ・キングスをキャスティングしたのは、エイミー自身の要望によるものだった。渡米した際、レトロなソウル・ショー・スタイルの彼らのステージに、エイミーは魅了された。ツアーの前座に招いたりして交流を深め、レコーディング開始時には、もう彼ら以外のサウンドは考えられなかった。
 リーダーのボスコ・マンは、60年代レトロ・ソウルをそのまんま現代にタイムスリップさせたサウンドが特徴のダップ・キングスを結成、併せて自主レーベル「ダップトーン」を設立していた。彼らがヴォーカルとして選んだのが、40過ぎまでチャンスに恵まれずにいた苦労人シャロン・ジョーンズだった。歌姫としてはビジュアル的な華やかさは劣り、サウンドもまたシンプルで味も素っ気もない。彼らが志向するサウンド・コンセプトは、明らかに時代と逆行していた。
 ただアメリカのエンタメの裾野は、われわれ日本人が思っている以上、想像以上に広い。エキサイティングなライブ・パフォーマンスと、古いヴィンテージ機材を用いて忠実に60年代を再現した一連のシングルは、コアなファンを生んだ。大ヒットとまでは言わずとも、どうにかバンド運営を続けられる程度には知られるようになった。
 エイミーもまた、そんな彼らのサウンドに魅せられた1人だった。

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 マーク・ロンソンのプロジェクトでのベーシック・トラックは、多くがブルックリンのダップトーン・スタジオで録音された。ある意味ヴィンテージ、ある意味時代遅れな設備や機材に囲まれ、気心知れたダップ・キングスのサウンドからインスパイアされ、エイミーはほとんどの楽曲をほぼ独力で書き上げた。強固なバックボーンと多大なリスペクトに溢れた「Rehab」や「You Know I'm No Good」は、生まれた瞬間からスタンダードを約束されていた。
 アウトテイクや別ヴァージョンで聴く限り、ダップトーン直送のサウンドは、バンドとエイミーとのせめぎ合いが、強烈なグルーヴ感を醸し出している。音響的には決して恵まれたものではなかったけれど、エイミーのパフォーマンスは最高潮に達している。
 ただ、レアなサウンドがすべての面で良いとは限らない。クオリティ的には充分だけど、いわゆるマスへの訴求力、多くの人に聴きやすく届けるためには、また別の処理が必要になる。
 マーク・ロンソンのプロデュース手法は、ベーシックを大きく改変することはない。基本のバンド・アンサンブルとヴォーカルという素材を活かすため、ほんの少しのエフェクト処理、そしてヴォーカル・ミックスに工夫を凝らした。同時代のヒット曲と見劣りしないよう、各パートの音をひとつひとつ、くっきり浮き立たせた。この絶妙な加減とセンスによって、『Back to Black』は名作になったと言ってよい。

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 -その後は快進撃となるはずだった。だったのだけど、突然の夭折によって、それもすべてご破算となった。どこで歯車が狂ってしまったのか、破滅への一方通行を食い止めることは、誰にもできなかった。
 まるで自身を痛めつけるかのように、末期のエイミーはドラッグに溺れ、酒を手放さなかった。意識は常に朦朧としたまま、自力で立ち続けることすらできなくなった。
 まともに歌うことさえ、ままならなくなった。数々のステージをキャンセルし、どうにか力を振り絞ってステージに立つまではできたものの、最後までショーを務め上げることは、もはや稀だった。
 今さら、「もし」も何もないけど、心身ともに健康だったら、もっと素敵な歌を届けてくれていただろうか。
 変にオーバー・プロデュースされたEDMバリバリの駄作を作っていたかもしれないし、はたまた一周めぐって、ガチガチのスタンダード・ジャズに回帰していたかもしれない。
「もしこうだったら~」なんて、何とでも言える。
 生きていてさえいてくれれば、どんな可能性だってあったのだ。
 でも、それはもう、叶うことはない。


Back to Black
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Amy Winehouse
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1. Rehab
 アルバム発売4日前に先行リリースされた、エイミーの代名詞ともなっているガールズ・ポップ風ナンバー。UK最高7位・USでは9位、一応、アメリカでは唯一のトップ10ヒットとなっている。
 レイ・チャールズとダニー・ハサウェイがフェイバリットのアル中女の愚痴、ってまんま自分じゃないの。こんな曲が全世界で300万枚も売れてしまったのは、一体どういうことだったのか。
 ポジション的に、ヴァンプの雰囲気を醸し出す白人女性アーティストの座は、長らく不在だった。マドンナはちょっと違うし、コートニー・ラブはゴシップ色が強すぎる。アバズレ感を出しながら、音楽的なスキルやポップ・イコンとしての適性が高い者として、エイミーがすっぽりハマったんじゃないか、というのが俺の私見。

2. You Know I'm No Good
 エイミーと言えば「リハブ」が一番有名だけど、もう少し深く知るようになると、こっちの曲の方が好きになる人が多い。2枚目のシングルとして、UK18位・US77位。なぜだ?もうちょっと高くてもいいはずなのに。
 中盤のブレイクのあたり、ちょっとループっぽいスネアのプレイに、マーク・ロンソンのこだわりが感じられる。単に生演奏を忠実に記録するだけじゃなく、ちゃんとヒット性を考慮してコントラストをつけるあたりが、やはりDJの見地から見たサウンド処理なのだろう。
 ウータン・クランのゴーストフェイス・キラをフィーチャーしたヴァージョンがあるのだけど、あんまりラップには興味がない俺も、これは聴ける。まぁエイミーがらみじゃないと聴く気はないけど。



3. Me & Mr Jones
 ここでムードが一変、なぜって、『Frank』からのプロデューサー、サラーム・レミの仕切りだから。一気にオールディーズくさくなる。同じように生演奏が基本なのに、やっぱコーラスの使い方だな。いいんだけど、古い。コール&レスポンスのパターンが古臭く聴こえるのだけど、まぁ前作とつながりでコレはコレでありなんだよな。

4. Just Friends
 夏っぽさや爽快さのかけらもない、UK発のラヴァーズ・ロック。英国の空は低く、常に曇り模様というのが、音からにじみ出ている。
 このオケ・このリズムで、なんでこんな気だるい歌い方ができるんだろうか。けなしてるんじゃないよ、難しいんだろうな、って思って。

5. Back to Black
 UK8位を記録した3枚目のシングル・カット。これもやはりロンソン・プロデュース。ここまでシングルはすべてロンソンの手によるもの。日本では「リハブ」一色だけど、欧米でエイミーが紹介される際、この曲が使われることが多い。
 イントロのピアノがもうシュープリームス。まぁ確信犯なんだろうけど。ダイアナ・ロスのウィスパー・ヴォイスで始まるかと思いきや、聴こえてくるのは酒灼けした巻き舌のエイミーの声。全体的にダークな雰囲気のアレンジだけど、それがまた淫靡さと妖しさとをそそる。

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6. Love Is a Losing Game
 5枚目のシングル・カット。やや大人しめの楽曲だけど、逆にいろいろアレンジしやすいらしく、ライブでもいろいろなヴァージョンがある。殿下ことプリンスがギターで参加しているライブがあり、これがまた盛り上がる。アクの強さでは引けを取らない2人、どっちを見ても楽しい。
 でもね、殿下。やっぱギター・ソロはいつも通りだね。あんまり引き出し多い人じゃないし。



7. Tears Dry on Their Own
 これは4枚目のシングル・カット。レミ・プロデュースの中では突然変異的に良く思えてしまうのは、あんまりジャズ臭が少ないためか。テンポも良いので、エイミー自身がいい意味でうまく歌い飛ばしている。この辺がもう少し多ければ、レミももう少し大きな顔できたのに。

8. Wake Up Alone
 死後発表された未発表曲集『Lioness Hidden Treasures』に収められたオリジナル・ヴァージョンは、タイトルに即してまったりとしたボサノヴァ・タッチだった。ここではオールディーズ風にエフェクトされたギター・ソロに導かれて、歌い上げるソウル・ナンバーに変貌している。どっちが好みかは人それぞれだけど、俺個人としてこっちのヴァージョン。アルバムのタッチとしても彼女のヴォーカルにしても、こっちの方がフィットしている。

9. Some Unholy War
 レミが多くの楽器をプレイしており、少人数でのセッションで作られているバラード。オールディーズっぽさが強いけど、歌詞もネガティブなので、エイミーのヴォーカルの陰影が強い。

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10. He Can Only Hold Her
 シャロン・ジョーンズが歌ってもしっくりハマっちゃいそうな、ダップ・キングス色の強いナンバー。ポップよりソウル・テイストが強く、俺的には好みのサウンド。ちょっとけれん味のあるエイミーのヴォーカルも、新たな側面が窺える。こういった違ったタッチのヴォーカル・スタイルも、この先あったんじゃないかと感じさせる。

11. Addicted
 ラストはタイトルまんま、「中毒」。「ハッパ」というのが「彼氏」を暗喩しているのだろうけど、おいおい普通は逆だろ、メジャーで出してるアルバムなんだし。もっとオブラートに包めよ、と逆に心配になってしまう。
 こういったソウル・ジャズ的なアレンジが、もっともエイミーのじゃじゃ馬っぷりがクローズアップされて、つい引き込まれる。でも、これもまた彼女の魅力のひとつでしかないのだ。



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心臓を鷲掴みする声、最後の歌たち - Amy Winehouse 『Lioness Hidden Treasures』

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 2011年リリース、生涯で2枚のオリジナル・アルバムしか残せなかったAmy Winehouse、死後に出された追悼アルバム。多分、これからも何年かごとに発掘音源がまとめられるのだろうけど、とりあえず最初のお蔵出し。デビュー前の音源から最後のTonyとのデュエットまで、敢えて時系列はバラバラに構成されている。もともと活動期間自体が短いので、その辺の違和感はほとんどない。
 データだけ見ると寄せ集め感満載であり、アルバムの性質上、統一されたコンセプトはないのだけど、彼女の個性的なヴォーカルによって不思議と統一感が生まれ、サウンドのニュアンスの違いはほとんど気にならない。
 
 とにかく突っ込みどころの多い女である。絵にかいたようなアバズレというか、あまりにも類型的なビッチっぽいルックスのため、どうしてもパパラッチの餌食になりやすい女でもある。なのに、そんな自分を曲げようともしない。もう少し、品行方正とまでは行かないにしても、うまい魅せ方ややり方だってあったはずだし、多分周囲のスタッフも口を酸っぱくして身辺に気を付けるよう助言していたはずだけど、最後まで変わることはなかった。
 年中スピリタスとシガーとを交互にせわしなく口に運び、朦朧とした意識のままステージに上がってマイクを握る。ステージ前はあれだけボロボロだったのに、歌が始まった途端、誰もが虜になる。何だこれ、聴いたこともない。でもスゴイ。ステージでは特別なパフォーマンスはない。今どきの女性シンガーなら複雑なダンスや振り付けも当たり前だけど、彼女はただ歌うだけ。たまに体を揺らしてステップらしきものを踏むこともあるけど、振りというほどのものではない。ていうか、歌だけで充分観衆の視線を釘付けにできる。そんな自信に満ちあふれたパフォーマンスだ。オフステージではあれほど破天荒な所業を繰り広げたというのに、ステージ上では真摯に歌うことに全霊を傾けていた。そう、末期をのぞいては。

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 デビュー前後はメジャー・シーン進出にあたって、多少は畏まった部分もあった。今ではトップ・プロデューサーのMark Ronson主導で作られたトラック、それはちょっとダルだけど基本はヒット・パターンに則った、今どきのヒット・ソングだった。実際ヒットもしたし、おかげでAmyのキャラも浸透した。
 いい事ばかりあるわけじゃない。自分ではごく普通のつもりなのに、どこか人に映る印象は違う。自分はただ、かつてのBilly Holidayみたいに歌いたいだけなのに、注目されるのはビッチなファッションとビッグ・マウス。レーベルの戦略上、そういった自分を演じていた部分もあったけど、見てもらいたいのはそこじゃないのに。
 増大するセールス、それに伴って激増するプレッシャー。そして、日に日に増えゆくアルコールと紫煙。一時のストレス発散や安息に、それらは最適だ。だけど、確実に躰を蝕んでゆく。少しずつではあるけれど、パフォーマンスにズレが生じてくる。
 最初、それはごくわずかなものだ。大して気に留めるほどじゃない、自覚できてるうちは修正だって簡単だ、大丈夫、私はできる
 しかし、ズレは次第に多くなってゆく。でも次の日にはすぐ軌道修正できた。そんな深刻に受け止めなくたっていい。ていうかオーディエンスも予想外のハプニングは大歓迎だ、サプライズとして受け止めてくれる。そう、まだ私はできる
 さらにズレは大きくなる。しかもそのズレ幅は、もはや自分ではどうにもならないくらい大きくなる。最初はまっすぐだった線も、次第に蛇行してゆく。ここまでゆくと、ステージ上のサプライズは日常的になる。平穏な日常と突発的なサプライズとは相反するものであり、ただでさえ奔放だったライブ・パフォーマンスは次第に予測不可能となる。
 進行を無視したパフォーマンス、ロレツの回らない意味不明なMC、そしてバック・バンドから乖離してゆくヴォーカル―。
 終いには、歌が歌でなくなる。リズムは走るかヨタるもの、スキャットは歌詞を忘れたのを誤魔化すため、世界中のオーディエンスを魅了したハスキー・ヴォイスは、アルコールと不摂生のおかげですっかり焼け爛れてしまった。
 それでも観客のため契約消化のため、そしてかつての自分を取り戻すため、何とかステージを最後まで勤めようとする。深刻な体調不良の中、無理やり上げたテンションが続くはずもなく、結局はライブを中断、最期にはステージへ上がることすらできなくなった。死後1か月前、セルビアの野外コンサートが、彼女が公に姿を現わした最期となる。

 入念にプロデュースされたオリジナル・アルバムと性質が違い、死後4か月ほどでリリースされたこのアルバムは、モノによってはデモ・テープ・レベル、それほど大がかりなオーバーダビングも施されておらず、サウンド的にはさほど意匠を凝らしていない。この種のアルバムはタイミング命、出しちゃったモン勝ち的なところがあるので、多少のやっつけ仕事には目をつぶり、取り敢えずリリースしちまえ的になっちゃった部分が大きい。ただ余計なスタジオ・ワークで過剰に悲劇的になることもなく、結果的にはサウンドがシンプルな分だけ、生身のAmy、初々しいデビュー当時から末期までのヴォーカルの変遷を俯瞰することができる。

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 Amyのように歌うことは努力すれば可能だ。だけど、Amyのように人の心を動かすことはできない。そういうことだ。


Lioness: Hidden Treasu
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Amy Winehouse
Islan (2011-12-02)
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1. Our Day Will Come
 2002年録音、デビュー作『Frank』がその翌年リリースなので、プレ・デビュー前、ほぼデモテープと考えてよいテイクだけど、サウンドはともかくとして、彼女のヴォーカルはすでに完成されている。バック・トラックは敢えてベタなレゲエ・ビートのオールディーズだけど、それが却ってAmyの個性を引き立たせている。
 
2. Between The Cheats  
 2008年録音、やはりオールディーズっぽいスタンダード調のナンバーが続く。
 生前はポップ歌手としての認知度が高かった彼女、こうして続けて聴いてみると、やはりジャズ・スタンダードとしての素養が高かったことがわかる。
 
3. Tears Dry (Original Version) 
 少しテンポの速い『Back to Black』収録ヴァージョンが先に世に出てるけど、録音時期としてはこちらの方が早い。
 ドスの利いたバラードが、聴く者の心臓を鷲掴みにする。一気に引き込まれるようなヴォーカル・パフォーマンスが繰り広げられる。両ヴァージョンを比較すると、確かにこちらのテイクの方が惹きつける力は強いのだけど、ポップ・ソングとしては濃厚過ぎるのかもしれない。ワールドワイドで売れるためには、多少マイルドにしておいた方が口当たりは良い。ただすぐに物足りなくなる。
 それが消費サイクルの速いポップ・ソングの宿命ではあるのだけれど。



4. Will You Still Love Me Tomorrow? 
 往年のハリウッドのミュージカル映画オープニングを思い起こさせる、壮大なストリングスのイントロ。なんと作者はあのCarole King、もともとはブリル・ビルディング一派のコーラス・グループThe Shirellesに書いたナンバーで、オールディーズでは結構定番とのこと。まぁ俺はそっち方面は詳しくない。
 ここでのリズム・トラックはお馴染みThe Dap Kings。近年ではずっとフォローし続けてきたSharon Jonesのバック・バンドとしての顔が強く、Amyとのコラボもすっかり目立たなくなってしまったけど、彼らとAmyとの相性はSharonをも凌駕する瞬間がある。もともとベクトルが全然違うので、比べるものじゃないけどね。
 
5. Like Smoke [feat. NAS] 
 デュエットという感じではなくて、あくまでAmyのヴォーカル・パートとNASによるラップ・パートとの組み合わせ。スタンダード一辺倒だけでなく、こういったリアルタイムのアーティストとも積極的にコラボしていることも、Amyの飽くなき探究心の表れであるだろうし、プロデューサーとして終生永く寄り添ったSalaam Remiの舵取りの上手さなのだろう。

 
 
6. Valerie ('68 Version)
 『Back to Black』ヴァージョンよりギター・カッティングが強調されている、The Dap Kings参加のナンバー。バンドの音が少し大きくなっており、それに呼応してなのか、Amyもサウンドの一体感を感じてリラックスしたヴォーカルを披露している。
 Amy本人もお気に入りの曲だったとのことなので、ライブで歌い込んでゆけば、もっと違ったヴァージョンも聴くことができたのかもしれない。
 
7. The Girl From Ipanema
 あまりにスタンダード過ぎるため、今までオリジナルをまともに聴いたことがなかったけど、改めてこのアルバムで「こんな曲だったんだ」ということを知った。
 あらゆるシンガーに歌い尽くされた曲ながら、当時若干18歳のAmyが臆することなく、奔放に自分の解釈で歌い上げている。古色蒼然としたスタンダード・ナンバーにドラム・ループを導入して、現代にうまくリンクさせたRemiのサウンド・メイキングが良い仕事。
 
8. Half Time 
 やはりRemiプロデュースによる、ややポップ寄りのバラード・ナンバー。ドラム・ループを中心とした、シンプルなバック・トラックは同時代性ときちんとリンクしている。ちゃんとしたリズムさえあれば、彼女的にはバックはあまりこだわらなかったのかもしれないけど、やはり熟練の技がそこかしこで光るナンバーはAmyの神がかったパフォーマンスが脳裏に映る。
 めずらしく噛みしめるように、丁寧に歌うAmy。こんな一面もあるんだな、と再発見できる。

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9. Wake Up Alone (Original Recording) 
 いわゆるデモ・テイクをどうにか商品レベルにブラッシュ・アップしたナンバー。エンジニアの苦労が偲ばれる。シンプルなギターのアルペジオとドラムのみのバッキングで、まだアルコールやドラッグに蝕まれていない頃のAmyが聴ける。
 ファースト・テイクに近いせいもあって、まだあまり曲を呑み込めていないのか、手探りで歌ってる感が強い。なので、『Back to Black』ヴァージョンとは違うフェイクも聴こえる。
 
10. Best Friends, Right?
 ライブではオープニングの定番だった曲が初収録。
 なぜこれほどクオリティの高い曲が今までリリースされなかったのか―。まぁ諸事情はいろいろあるだろうけど、単純にアルバムのどこかに嵌め込みづらかったんじゃないかと思われる。こういった形と言ってはなんだけど、まずは公式に音源化されたことを素直に喜びたい。
 ジャズ、ソウル、ポップそれぞれのオイシい要素がうまくイイとこ取りされた、ほんとオススメのナンバー。ご挨拶代わりとしては最適。
 
11. Body And Soul
 生前最後となった、憧れの大先輩Tony Bennettとのレコーディング。
 プロデュースは大御所Phil Ramone、ド定番のジャズ・スタンダードのカバーと、直球メインストリームのフィールド。さすがに小手先技や誤魔化しが効くはずもなく、さすがのAmyもここでは若干畏まった表情となっている。
 もともとTony主導で始まった企画なので、ある意味ゲスト的なスタンスで参加したAmy、無理やり振り絞るような晩年のパフォーマンスとは打って変わって、いい意味で責任丸投げでリラックスした感のAmyがそこにいる。

 
 
12. A Song For You
 Leon Russell作曲による、まぁ誰もが知ってるポップのスタンダード・ナンバー。
 実は俺がAmyに引き込まれたきっかけとなった曲である。生前のAmyについてはタブロイド紙のスキャンダルな側面しか知らず、このアルバム・リリースに伴うラジオOAで集中的に流れていたのが、ちょうどこの曲だった。
 初めて耳にした時のことは、結構鮮烈に覚えている。前述した通り、何というかこう、音楽を聴いて心臓を鷲掴みされた感覚を覚えたのは、結構久しぶりのことだった。
 ”Rehab”くらいは耳にしたことがあるけど、単なるポップ・スター程度の認識であって、それ以上の関心は起こらなかった。「スキャンダラスな死に方をしたビッチっぽい人」という、まぁほとんどの人が思ってた程度の認識だったため、先入観としてはネガティヴな印象だった。
 それがこの曲、Amyの歌い出しを聴いた瞬間、すっかりその世界に引き込まれ、ほんとその場ですぐamazonにオーダーしたくらい。そのくらい、Amyの歌は一時俺を虜にさせた。
 体調的には最悪だった2009年のレコーディングということもあって、ヴォーカルはかなり荒れている。ピッチも正確でじゃないし、曲間のフェイクだってヨレヨレだ。
 でも、そんなことは大した問題じゃない。どれだけきれいに譜面通りに歌おうとも、大勢の人を感動させるのは、また別の問題だ。聴く者の心臓を鷲掴みできるほどの衝撃を与えるためには、技術以外の才能が必要になる。
 しかも、それは自ら努力して獲得する類のものではない。神に選ばれし者のみが、その力を行使できる。そして選ばれし者は、決して歌うことを止めてはならないのだ。






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Amyの遺していったもの - Amy Winehouse 『At the BBC』

folder 近年の女性シンガーの中では圧倒的にキャラが強くてゴシップも多く、それでいてただの流行りものではない、記名性の強いヴォーカライズで世間を魅了したAmy、非業の死からそろそろ4年経過しているのだけど、今ではすっかり話題に上ることもなく、潮が引いたように忘れられつつある。亡くなった直後はそれなりにエンタメ業界にも激震が走り、アウトテイクをかき集めたようなラスト・アルバム『Lioness: Hidden Treasures』がリリースされたのだけど、その後はこのBBCライブがリリースされたのみで、それ以降の動きはほとんどない。未発表音源や他アーティストによるトリビュートの動きもあると思っていたのだけど、そういった盛り上がりもなさそうである。

 音楽業界に限らず、現在エンタテインメントの第一線で活躍するアーティストには、その才能とは別に、コンプライアンスの遵守が強く求められている。かつてのようなドラッグまみれで自堕落なロックン・ロール・ライフを送る者への風当りは強く、今じゃチャンスすら与えられない状況が続いている。
 スキャンダラスな言動やパフォーマンスによって注目を浴び、スターダムにのし上がる行為自体は、今でも続いている。しかし、一旦ヒットを産む存在になると、そこから路線変更を強いられる。ソフィスティケートされたエンタメ業界において、ファッションとしてのアウトローは、今でも十分セックス・シンボルとしての需要はあるけど、あくまでビジネスとして割り切って演じなければ、次第に隅に追いやられてしまう。イメージの世界以外では、常識人としての立ち振舞いが求められるのだ。

 そういった制約を窮屈に思っていたのか、はたまたそこまで考えが及んでなかったのか。結果的に破滅的な生涯ばかりが取り沙汰されるAmy、ある意味、生まれ来る時代を間違えてしまったんじゃないかと、都度思ってしまう。

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 Amyと同じような流れを歩んだアーティストで、俺が真っ先に思い出したのがJanis Joplin。彼女もまたAmy同様、本当に心を開ける友人や恋人が周りにいなく、孤独な生涯を短く生きた人である。キャリアの絶頂でオーバードースで亡くなってしまった部分も、Amyと重なっている。ちょうど次のアルバムのレコーディング途中だったため、残された音源をどうにかこうにかつなぎ合わせ、追悼盤として『Pearl』が作られ、皮肉にもJanis最大のヒットとなったのは有名な話。
 Janisの場合、その後も破天荒な生き様が70年代ロック特有のロマンチシズムと合致して、無数のフォロアーやインスパイアされた作品も含め、彼女自身の発掘音源も時々リリースされているのだけど、Amyに至っては、そういった動きもほとんどない。

 Janisが亡くなったのが70年代初頭、当時はまだロック・ビジネスも黎明期で、彼女のように波瀾万丈なストーリーも、話題性のひとつとして寛容に受け入れられるような雰囲気はあったのだけれど、現在ではAmyのようなアーティストにとって生きづらい時代になっている。表舞台での破天荒ぶりは許容されているけど、一旦プライベートに返ると、良き家庭人としての側面を見せなければならないのだ。

 Amyの場合、生前フル・アルバムとしてリリースされたのは実質2枚、死後に1枚と、物量的にはかなり少ない。しかも最近のリリース傾向として、1年も経たないうちに2枚組デラックス・エディションが出るという流れ なので、すでにマテリアルが使い尽くされている状況である。実際の活動期間も短いため、掘り返したとしてもリリースできるほどのクオリティのアイテムがどれだけあるか。
 あとはライブ発掘に期待するしかないのだけど、これまた末期はアル中の度合いがひどすぎて、まともにフル・ステージ演じ切れなかったケースも多々なので、さてどれくらい残っているか。

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 Mark Ronsonのディレクションによる華々しいデビューによって、主にポップのフィールドで活躍してた人だけど、本来はBilly HolidayやHelen Merrillの流れを汲んだ、正統なジャズ・ヴォーカルの人である。特にそのスキャンダルに翻弄された生き方は、Billyと被る部分が多い。
 AmyとBilly、そして前述のJanisにも言えることだけど、どうしてもこの3人、スキャンダラスな面ばかりが強調されてしまい、純粋に音楽的観点での評価がしづらいところがある。音楽と対峙するその姿勢はとても真摯であるのだけれど、どうしても音楽自体より、そのバックボーン、音楽以外の生きざまやら行動様式に注目が行ってしまうことは、アーティストとしては不幸なスタンスである。

 Amyに絞って話を進めると、コンディションの違いはあれど、どのライブでも一回一回が真剣勝負、全身全霊を込めて感情を叩きつけるような姿勢でステージに上がっている。なので、ライブ・テイクを聴いてみると、どれひとつ同じ歌がないことに気づかされる。いい時は歴史に残る名演になるのだけれど、悪い時は、そりゃもう呂律も回らないくらいひどいもので、とにかくムラがある。
 ユルい構成によるサプライズが許容された昔と違って、緻密に構成されたエンタテインメントが求められる現代において、玉石混交な彼女の歌は規格外なのかもしれない。

 だけど、音楽に規律を求め過ぎるのは、ちょっと違うんじゃないかと思ってるのは、俺だけじゃないはず。


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1. Know You Now (Live At Leicester Summer Sundae 2004)
 デビュー・アルバム『Frank』収録。スタジオ・ヴァージョンはシンプルなバッキングでAmyのヴォーカルを引き立たせるサウンドだったけど、ここではホーン・セクションが目立っており、Amyの歌もサウンドの一部に過ぎない。
 やはり生バンドが入ると気合も違うのだろう。

2. Fuck Me Pumps (Live At T In The Park 2004)
 同じく『Frank』収録。UKでは4枚目のシングルとして切られ、最高65位。まだ”Rehab”フィーバー前なので、この時期のシングルはどれもチャート・アクションは弱い。
 基本、スタジオ・テイクと変わらないシンプルなアレンジで、60年代ソウルとジャズの融合した形。ジャジー・ソウルではない。そんな洒落たテイストの曲ではない。

3. In My Bed (Live At T In The Park 2004)
 『Frank』からの3枚目のシングル・カット。これだけの数のシングルがあったということは、アルバムもそれなりのアクションだったのだろう。最終的にはUKではプラチナ獲得まで行ってるのだけど、多分”Rehab”以降のセールスも多かったと思われるので、リリース直後の動向は、ちょっとわからない。
 スタジオ・テイクはMark Ronsonコーディネートによるムーディーな現代版ビッグ・バンド的アレンジだったのだけど、ここではブラス・セクションが大活躍している。俺的には、スウィング時代のディーヴァが甦ったという設定の、スタジオ・ヴァージョンも好き。
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4. October Song (Live At T In The Park 2004)
 この時期もそうだけど、Amyは主にバック・バンドDap-Kingsとの行動が多かった。以前も書いたけど、Amyとのコラボによってバンドの維持費を稼ぎ、そこで得たノウハウや資金をSharon Jonesとの活動につぎ込む、というループだったのだけど、近年ではSharonとの活動も軌道に乗り、安定した活動振りである、と言いたいのだけど、肝心のSharonも最近体調がよろしくない、とのこと。無事を祈りたい。
 ここまでがデビュー間もないAmyのパフォーマンスが聴けるのだけれど、まぁ見事に変わってないアバズレ振り。手練れのバンドの振り回し具合、そしてどれだけAmyが脱線しようとも、最終的には帳尻を合わせてくるバンド陣。絶妙なコラボレーションが堪能できる。

5. Rehab (Live At Pete Mitchell 2006)
 ここから2枚目『Back to Black』収録曲が続く。UKではチャート最高7位だけど、世界各国でゴールド、プラチナムを獲得しまくった、言わずと知れた大ヒット・ナンバー。日本でもFMを中心にヒットしたし、結構TVでもサウンド・クリップとして、いろいろなところで使われている。なので、老若男女、知ってる人は意外に多い、データだけでは計り知れない認知度を誇る楽曲でもある。
 ここでのアレンジは至ってシンプルなため、ドスの効いたAmyのヴォーカルが前面に出て迫力が引き立っている。Rehabの意味は文字通りリハビリ。その後の経緯を思うと、歌詞が突き刺さってくる。

6. You Know I m No Good (Live At Jo Whiley Live Lounge 2007)
 こちらもUK最高18位にとどまったけど、同じく人気の高い曲。俺的には”Rehab”よりこっちの方が好きだし、実際ネットでもこの曲へのリスペクトは高い。50~60年代の古いジャズ・ソングかと思ってたのだけど、後にオリジナルと知って、ちょっとビックリ。2枚目でこの貫禄だったのだから、さらにキャリアを積んだら、とんでもない存在になってたんじゃないかと思うのだけど、うまくいかないものだ。



7. Just Friends (Live At Big Band Special 2009)
 この曲もそうだけど、『Back to Black』における双頭プロデュース体制というのはかなり的を射ていたんじゃないかと思ってしまう。ヴィンテージなソウル・テイストのジャズ・ヴォーカル・ナンバーはSalaam Remi、キャッチーなポップ・ソウルはMark Ronsonと役割分担することによって、アルバム的にもバラエティ感が出、チャートでも十分健闘できるスタイルを、この時点ですでに築き上げていた。
 実はスタジオ・テイクはちょっと大人しめなのだけど、やはりここはDap-Kings、そろそろヘロヘロになりつつあったAmyをサポートしつつ煽り立てている。

8. Love Is A Losing Game (Live At Jools Holland 2009)
ご存じイギリスの有名な音楽番組『Later With Jools Holland』からのテイク。時々CSミュージック・エアでも再放送しているので、うまくいけば見れるかもしれない。
 この曲もスタジオ・テイクは無難なポップ・バラードなのだけど、ここではAmyがドスを効かせたジャズ・バラードに仕上げている。ミックスのせいなのか、ピアノのアタック音も強く、演奏陣も力が入っている。やはりJools Hollandの前では手を抜けないのか?
 
9. Tears Dry On Their Own (Live At Jo Whiley Live Lounge 2007)
 UK最高16位まで上昇した、こちらもファンの間では人気の高い曲。なので、追悼盤『Lioness: Hidden Treasures』にも初期ヴァージョンが収録され、ここでもまだ元気な声の頃のAmyのヴァージョンで収録されている。俺的にAmyは『Lioness: Hidden Treasures』が最初だったため、どうしてもこのヴァージョンが基本となってしまっている。



10. Best Friends, Right (Live At Leicester Summer Sundae 2004)
 ヴォーカル・プレイとしては、多分これがベスト・テイク。もっとも声も通ってるし、フェイクやアドリブも効いている。ジャズ・ヴォーカル特有の崩し加減が苦手なビギナーも多いのだけど、このレベルなら充分人を惹きつけられる。

11. I Should Care (Live At The Stables 2004)
 ただ、この曲以降になると、本格的なジャズ・ヴォーカルが多くなる。まぁアルバム構成上そうなったのだし、普段のライブでも、何曲かはこのようなスタイルのスタンダード・ジャズを演っている。
 もともとは1944年、Bing Crosbyに書かれた曲ということなので、スウィングの入ったジャズ・ソングである。

12. Lullaby Of Birdland (Live At The Stables 2004)
 同じライブから、もう1曲。Birdlandはもちろん、Charlie Perkerのライブハウスにちなんだもので、こちらもゴリゴリのジャズ・ナンバー。Ella FitzgeraldのためにGeorge Shearingが書いたことは、いま知った。

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13. Valerie (Live At Jo Whiley Live Lounge 2007)
 オリジナルは2006年UKインディー・バンドZutonsによるもので、2006年のワールドカップで頻繁にメディアに使用され、イギリスではお馴染みの曲らしいけど、まぁそんなことは俺もいま初めて知ったくらい。
 Mark Ronsonとのフィーチャー・シングルとしてリリースされ、こちらもUK2位、EU圏でも数々のトップ10入りを果たしている、近年にしてはめずらしくジャズ・テイストの強いポップ・ソング。

14. To Know Him Is To Love Him (Live At Pete Mitchell 2006)
 これも昔から有名な、Phil Spectorによるオールディーズ・ポップ・ソング。シンプルなバッキングに、素直なヴォーカルを乗せる、ゆったりとした秋の夜長を感じさせる、夜にピッタリのナンバー。



 と、ここまで書いてから、Amyのドキュメンタリー映画がひっそり公開されていたのを、すっかり忘れていた。7月にイギリスで上映されたのだけど、その後日本で公開されるのか、それともDVDのみの発売なのか、情報は入ってこない。そこそこのヒットはしたようだけど、まぁ作品の性質上、大々的なロードショーというわけにはいかないようだ。
 本国イギリスでは、まだ忘れられていないことがわかっただけでも、充分としよう。



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北海道の中途半端な田舎に住むアラフィフ男。不定期で音楽ブログ『俺の好きなアルバムたち』更新中。今年は久しぶりに古本屋めぐりにハマってるところ。
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