好きなアルバムを自分勝手にダラダラ語る、そんなユルいコンセプトのブログです。

ロック以外にこだわった偏屈者の非ロック的アルバム - Joe Jackson 『Night & Day』

folder デビュー作『Look Sharp』と2作目『I’m The Man』がストレートなタテノリ・パンク(を装った高度なロックン・ロール)、3枚目『Beat Crazy』でレゲエに色目を使い、4枚目『Jumpin’ Jive』では、何をとち狂ったのか、本格的な1920年代ジャイヴ・ミュージックにまで手を伸ばしたJoeが行きついた先は、人種のるつぼNYだった。ここでGraham Maby以外の従来のバンド・メンバーを一掃し、心機一転、前代未聞のポップ・アルバムを完成させた。
 
 節操がないというのか音楽的な探求心が強いというのか、はたまたただ単に落ち着きがないのか、とにかく様々なジャンルにあっちこっち手を出し、縦横無尽に動き回っていたのが、当時のJoeの印象である。
 
 あくまで一般論として、大きなヒットが一つあると、大方のミュージシャンやレコード会社は、更なる二匹目のドジョウの存在を捕まえようと目論むため、できるだけそのイメージを崩さぬまま、拡大再生産を図るものである。もちろん、ほとんどのミュージシャンの場合、ヒットはおろか、人知れずして消えゆくパターンの方が遥かに多いのだけど、Joeの場合、あまり大きな圧力はなかったらしい。まぁ確かに商売優先で考えるのなら、『Jumpin’ Jive』のようなアルバムをリリースしようとはしない。
 
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 Joe自身も自分のポジションは一応認識はしていたようで、レコード会社主導による大掛かりなプロモーション活動はあまり行われず、ライブを中心とした草の根的な、ブレの少ない活動を現在も行なっている。そんなマイペースな活動にもかかわらず、意外にセールス的にはほぼ及第点ともいうべき成績を収めている。
 トータルの数字は多分それほどでもなさそうだけど、デビュー作から『Big World』まではUSトップ40に入っており(サントラ『Mike's Murder』を除く)、同じ英語圏とはいえ、大概が苦労しているUKのミュージシャンの中では恵まれている方。
 Royal Academy of Music出身という、クラシック畑のミュージシャンがアメリカで受け入れられるのは少し意外だけど、ただ単純にゴキゲンな、それでいて少しモダンなロックン・ロールとして認知されていたのだろう。
 理屈はいらないのだ、だってロックン・ロールなんだもん。
 
 当時Joeが所属していたA&Mは、もともとミュージシャンであるHerb Alpertらによって設立された会社であり、比較的自由というか緩いというか、ミュージシャンの自主性を重んじていた。
 代表的なアーティストとしてPoliceやCarpenters、Quincy Jonesがおり、こうして並べてみると、かなり支離滅裂な組み合わせである。一見まとまりがなさそうだけど、どのアーティストにも共通して言えるのが、どこかひと癖あってアクが強く、一筋縄ではいかない連中ばかりである。
 そんな彼らを呼び寄せる磁力というのか、他のレコード会社には収まりきれない連中の吹き溜まり的要素が、この会社にはある。もちろん、吹き溜まりと言ってもそれぞれのレベルは相当なものだけど。

 そんな中、メジャーでありながら独自の配給網はそれほど強くなく、十分なプロモーションも行なわれないA&Mにおいて、Joeは試行錯誤しながら、自らの音楽レベルを高めていった。そんな求道的なアーティスト・モラルを尊重する気風が、この頃のレコード会社にはまだあった。
 
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 デビュー前のストックも交えた最初の2枚を最後に、それ以降のJoeのアルバムは、ロックン・ロール一辺倒の内容から脱皮して、様々な音楽性をやたらめったら導入するようになる。純正のロックン・ロールの割合はアルバム・リリースごとに減少してゆき、サルサ、レゲエ、ジャズなどのワールド・ミュージック的要素やエッセンスを絡めた曲の割合が多くなってゆく。
 前述したように、長らくクラシック系の勉強をしてきただけあって、もともとロックに対してさほど執着があるわけではなく、というかむしろ単純なロックを毛嫌いしていたため、こういった流れは自然の結果でもある。
 
 今作『Night & Day』ではロックへの拒否反応がピークに達したのか、ロックン・ロールの象徴であるギター音の排除を行なっている。ミュージシャン・クレジットに目を通し、そして実際に音を聴いてみても、ギターの音色は聴こえない。ほとんどのリード楽器は、ピアノかホーンに限られている。
 とにかくロック的なテイストを悉く排除し、またはロック以外のサウンドに置き換えて構築されたのが、この『Night & Day』である。
 その姿勢こそがまさしくロック以外の何物でもない、というのは穿った見方だろうか。


Night & Day
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Joe Jackson
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1. Another World
 サルサっぽいオープニングからJoeが吠える。出だしはかなりヤケクソ気味な荒れたヴォーカルだけど、すぐに持ち直す。
 このアルバムでの鍵盤系はほとんどJoeの演奏だけど、主旋律を司る、カリンバっぽいエスニック調の軽めのエレピ、重厚なピアノの音との対比が良い。
 
2. Chinatown
 前曲と切れ目なく続く、不穏なムードのオープニング。どことなく20世紀初頭のギャング街のチャイナタウンを想起させる。チープなスパイ映画のサウンドトラックっぽさはJoeの狙い通りだろうか。
 同じくピアノの音が分厚い。通常のリード楽器であるギターと置き換えた、というべきだろうけど、ここはむしろ、あまりにもギターレス編成での演奏が良かったため、ギターの入る余地がなかった、もし無理に入れたとしても曲調が変わってしまい、まったくの別物になってしまうことをJoeが察知したのだろう、と思いたい。
 
3. T.V. Age
 さらにシームレスに曲は続く。同じくエスニック調で、Joeのラップっぽいヴォーカルを、ちょっぴりだけ聴くことができる。
 タイトルが象徴するように、TVのチャンネルをザッピングしているかのように、4分足らずの中で曲調がコロコロ変わるのだけど、せわしない印象はない。
 
4. Target
 まだまだ曲は終わらない。アフリカンなミニマル・リズムを基調とした、カリンバっぽいピアノが特徴。その上に80年代DX7プリセットの懐かしのシンセ音が乗り、そのミスマッチ感が時代を感じさせる。多少意識的なミュージシャンなら、他ジャンルとの融合を真剣に取り組んでいた頃である。
 
5. Steppin' Out
 結局A面はすべてひと繋がり、一つの組曲と思ってもらえれば良い。そのシメが、最初にシングル・カットされたこの曲。
 同じくプリセット・シンセのソロに乗せて、幾分しっとりしたヴォーカルでJoeが丁寧に歌っている。UK・USともシングル・チャートで最高6位まで上った、今でもJoeの代表作。
 Joe Jackosnといえばコレ、というかコレしか知らない人も多いだろう。あまりにポップな仕上がりのため、Joeの長年のファンの間ではあまり重要視されていないけど、ここまでヒットしたからには、多くの大衆の心をつかんだ何かがあるのだろう。
 ただJoe自身もプレイするのに飽きているのか、これ以降のライブではスロー・バラードのアレンジで歌っており、レコードのままのアレンジで歌われたことはほとんどない(敢えて言えばBBCライブくらい)。

 
 
6. Breaking Us In Two
 ここからB面。一応A面が「Night Side」、B面が「Day Side」という括りらしいけど、Joe本来の正統なバラードはB面に集中しており、あまり昼っぽさは感じられない。むしろ多国籍なA面の方に夜の妖しさが感じられる。
 ライブでも定番のナンバーであり、このアルバムからは2枚目のシングル・カットなのだが、それでもUS18位まで上がっている。
 決してポップではないのだけど、大人のバラードである。それが当時のカフェバー文化の発展の一翼を担ったのだろう。

 
 
7. Cancer
 A面の流れを汲んだ、サンバのリズムがDay Sideっぽいけど、曲が進むにつれて、ただの明るい曲ではないことがわかってくる。陽光燦々とした南国の陽射しの中、青っちょろい不健康な顔立ちの男が、一心不乱にピアノを叩いている。
 ピアノとは打楽器である、そしてここは真昼の暗黒。
 
8. Real Men
 6.同様、こちらもライブの定番であり、ファンの間でも特に人気の高い曲。なぜかオランダのみでシングル・カットされて、17位まで上がっている。
 Joeによる冒頭の流れるピアノから徐々にテンションが上がって行き、サビでは哀しき雄叫びを上げている。ギターを入れてもそれほど違和感もなさそうだけど、それではアルバムの調和が取れなくなることをJoeが恐れたのだろう。
 随所に流れる弦楽四重奏も良いアクセントとなっている。

 
 
9. A Slow Song
 長らくライブのエンディングを飾っていた、アルバムのシメとして相応しい曲。ファン、アーティストともども思い入れが深く、長らく愛されてきた曲である。
 基本、とてもシンプルなバラードだけど、世界一周ともいえる音楽的冒険を、このアルバムの中で縦横無尽に行ない、すべてをやり尽くした上でたどり着いたのが、この曲である。
 特別なギミックや技術を弄することなく、ただピアノに向かいながら、感情の赴くままタイトルを連呼するJoeの姿は、ある意味神々しく映る。

 



 このアルバムによって、アメリカでゴールド・ディスク(100万枚)を獲得し、Joe Jacksonは一流アーティストの仲間入りを果たす。作品クオリティと大衆の支持とが見事に合致したことは、時代の流れも良かったろうし、タイミングも絶妙だったのだと思う。どちらが欠けてもうまくはいかないのだ。
 この路線に確信を得たJoeは更に音楽的な探求心を強め、今度はジャズにターゲットを変え、こちらも傑作『Body & Soul』をリリースすることになる。
 
 ちなみに後年、Joeは諸々のトラブルによって鬱病を患い、しばらく表舞台から遠ざかることになる。
 周囲の尽力などによって徐々に回復することになるのだけど、そのリハビリ過程でで制作されたのが、もろ続編の『Night & Day Ⅱ』である。同じ道を通ることを良しとしなかったJoeが、初めて過去を振り返り、続編を作った唯一の作品である。
 そこに至るまでの事情は色々あったろうが、傑作とまでは行かずとも、こちらも秀作である。

 Joe Jacksonについてはもう少し続けたいので、また次回。


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Costelloさんメジャー・シーンに躍り出る、の巻 - Elvis Costello 『Spike』

folder 続けてCostelloの紹介。
 リリース当時、日本では未発売となった『Blood & Chocolate』発表後、メジャーのレコード会社から契約を外れたCostelloの動向は掴みづらくなる。途切れ途切れ単発的な情報のみが、雑誌に申し訳程度に発信された。ネットもない当時、なおさら情報は入ってこない。
 
 リリース契約もないので、次回作未定のまま、気楽なツアーを単発的に行なうことになるのだが、その内容が前代未聞である。
 リリース直後の1986年から翌年にかけて、彼は2つのバンドを率いている。ひとつは従来のAttractions、そしてもうひとつは『King Of America』のレコーディング・メンバー(James Burton、Jerry Scheff 、Jim Keltner、Benmont Tench、T-Bone Wolk)で構成したConfederates。
 時期によってこの2つを短期間に使い分けているのだけど、当然バンドのニュアンスが全然違うので、企画したはいいが、Costello自身もかなりのストレスが生じたと思う。どっちにしろ、Costelloのヴォーカルが入ってしまえば、どんなサウンドもすべてCostello節になってしまうのだけど、わざわざ自分から苦労をしょい込むちうか、こういったことを平気でする人なのだ。
 
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 それすらもマンネリが生じてきたのか、バンドを変えるだけではなく、もっと行き当たりばったりのスリリングなライブをやりたい、という意向で行なわれたのが、今や伝説となった『Spectacular Spinning Songbook』である。
 ランダムに曲名を羅列した巨大なルーレットをステージに上げ、それを指名された観客が手回しして、針が刺した曲をリクエストとして歌う、という、まるで東京フレンドパークのラストみたいなアトラクションを行なっていた。
 何が歌われるかわからない、というのは、熱心なファンにとってはサプライズ満載の楽しいライブになるだろうが、一見さんだと、もしかして知らない曲ばかりが歌われる可能性もあり、非常にギャンブル性の高いショーとなる。
 それは演者にとっても言えることで、当然ルーレットの全ての曲を熟知していなければならず、ストレスは溜まる一方。
 主役のCostelloと言えば、いざとなればギター1本で大観衆を沸かせることもできるほど、ミュージシャン・スキルの高い人なので、どうということはない。いつも振り回されるのは脇役ばかりだ。

 ちなみに、Costello本人はこのスタイルのライブが気に入ったらしく、近年この形でのツアーを復活させ、それまであまり乗り気ではなかったライブ・アルバムまでリリースしている。ここまでのキャリアになると、何かしらの緊張感で自分を追い立てないと、テンションも上がらないのだろう。
 
 マイナー映画のサントラへの参加や他アーティストとのコラボ(Nick Lowe、Jimmy Cliffや実父まで様々)など、主に単発的な活動が続いている。
 おそらく契約的な縛りもあったのだろう、1987年いっぱいで大々的なツアーを終えるとAttractionsは解散(Steve NieveだけはCostelloの元に残り、その後現在まで続く長いパートナーシップを築くことになる)、大メジャーWarnerとの全世界契約を結ぶことになる。今まではUK、US、他の国でもそれぞれ微妙にレーベルやレコード会社が違っていたのだが、これを機にWarnerで全世界統一されることになる。

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 このアルバムのジャケットは、タータン・チェックの柄の中央にWarnerのロゴ型の窓、そこから顔を出す陰陽のメイクを施したピエロ姿のCostelloといった構図となっている。大メジャーの販売ルートに乗ることが出来て、よほどうれしかったと見えるCostelloがそこにいる。
 この頃のワーナーはRed Hot Chili Peppersを筆頭に、オルタナ・ロック系に力を入れていた時期である。Princeを取締役に入れたりインディー・チャートの常連だったR.E.M.を多額の契約金で獲得したり、今の惨状と違い、勢いがあった。
 
 とにかくメジャー感溢れるアルバムである。前述した『Punch The Clock』『Goodbye Cruel World』のような無理やり感がなく、きちんとしたスタッフによってしっかりお金をかけて作られた作品・サウンドに仕上がっている。メジャーの販売ルートなので、プロモーションにかけられる予算もノウハウも段違いである。
 そのあまりのメジャー感によって、リリース当時は「CostelloにしてはPOP過ぎる」として、好評不評が入り交じった微妙な評価だったが、25年も経った今となっては、プロフェッショナルなエンターテイナーElvis Costelloの誕生が記録された、貴重な作品である。


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1. ...This Town
 なぜかここでも『King Of America』時に使用したDeclan Patrick Aloysius MacManusでのクレジット。作詞作曲はすべてこの名義なのだが、この曲だけMacManus名義でのプレイ。
 ちなみにRoger McGuinnが12弦ギター、Paul McCartneyがベースをプレイ、という超豪華メンツでのレコーディング。
 またちなみに、ちょうどPaulとのコラボを積極的に行なっていた時期であり、この曲もBeatles っぽく聴こえるが、作ったのはCostello。逆にPaulがCostelloっぽい曲を書いたりして、相互作用がいい感じで結果に表れている。

  
 
2. Let Him Dangle
 Marc Ribotのギターがイイ味出している、やや怪しげなムードの曲。もともとはジャズや現代音楽のフィールドの人なので、多ジャンルとの化学反応が良い方向に働いた好例。こういった幅広い人選ができるのも、メジャーの底力なのだろう。
 ドラムのJerry MarottaはHall & OatesからPeter Gabrielまで、幅広いジャンルを網羅する職人肌の、それでいて個性バリバリのドラマー。
 
3. Deep Dark Truthful Mirror
 のちにコラボ・アルバムまで出すことになる、Allen Toussaintのピアノが南部アメリカっぽいムードを醸し出す。
 ホーン・セクションもいい感じで泥臭く、Costelloのヴォーカルも一皮むけた感じで、このアルバムのおすすめ曲の一つ。『King Of America』セッションを通過したことによって、味のあるヴォーカルである。

  
 
4. Veronica
 このアルバムの、というよりCostelloの有名曲としては三本の指に入るほどのネーム・バリュー。
 日本中のTVの朝8時に一斉に流れていたが、もともとリリース当時もUK31位US19位とヒットしており,古参のファンの間でも認知度の高い曲だった。なので、何を今さら感が強かったのは確かである。
 ちなみにPaulとの共作なのだが、Costelloの創作力に対し脅威を感じていたのか、これまでの蓄積をさらけ出した上、敢えて禁じ手としていたBeatles路線のメロディに回帰している。おかげでその後のソロ・ツアーでBeatlesナンバーが大量に演奏されるようになったのだから、PaulファンにとってはCostello様々である。

  
 
5. God's Comic
 Marc、Jim Keltner(Dr)参加による激シブの一曲。Marc参加の曲はどれも一癖あり、これまでのCostelloの曲とテイストが違っている。やはりこれも相互作用のあらわれなのか。
 
6. Chewing Gum
 こちらもMarc参加、リズムがかなりアブストラクトな、通常フォーマットのロック/ポップスの範疇から外れた曲。ホーン・セクションが入ると変態ファンクになる。タイトルもどことなくファンキー。
 
7. Tramp The Dirt Down
『コンドルは飛んでゆく』を連想させる、南米民謡っぽさ溢れる曲。
 何故かAttractionsのPete Thomas(Dr)参加だが、大して目立った活躍はしていない。というか、非常に存在感が薄い。もうCostelloにとってはこの時点で、Attractionsとの蜜月は遠い昔の事だったのだろう。
 ロック一辺倒ではできない曲。

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8. Stalin Malone
 後にリリースされるDeluxe Editionでは短編小説的な歌詞が朗読されているが、このヴァージョンはインスト。Dirty Dozen Brass BandのセッションはCostelloにアメリカ南部への郷愁を想起させ、この後も度々南部テイストの作品・コラボを繰り返すことになる。

9. Satellite
 スタンダードな3連バラード。少しワルツっぽく聴こえる瞬間もあり。
 何となくAttractionsっぽいプレイも聴こえるが、メンツはまったく別物である。
 ちなみにバック・ヴォーカルでChrissie Hyndeが参加しているらしいが、ほとんど目立ってない。そういえばPretendersも『とくダネ』のオープニング歌ってたよな(”Don’t Get Me Wrong”)。
 
10. Pads, Paws And Claws
 Paulとの共作3曲目。ちなみにMarc参加のため、これもアバンギャルド風味が添加されている。
 よって、大御所の作品にしては面白い構成の曲なのだけれど、サビのところはごく普通のロックン・ロール。ここがポップ職人としての性なのだろう。
 
11. Baby Plays Around
 ほぼCostelloのフル弾き語り。PoguesのCait O'Riordanとの共作。
 この時、彼女と結婚していたことは今回初めて知った。一度バンドのプロデュースを請け負ったことが縁らしいが、後に離婚。
 しかし、地味な曲なのに、どうしてシングル・カットしたのだろう。ライブでは時たま取り上げられているので、本人としてはお気に入りに曲だと思われる。

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12. Miss Macbeth
 Dirty Dozen Brass Band大活躍の、なんか変な構成の曲。曲調がコロコロ変わる、実は実験的な曲。
 
13. Any King's Shilling
 アイルランド民謡っぽさがVan Morrisonを連想させる、地味だけど染み入る曲。
 
14. Coal-Train Robberies
『Spike』の中で一番疾走感溢れる曲。タイトル通り石炭列車強盗の事を歌っているのだが、怪しさ満載のVoxのオルガンの響きが、70年代スパイ映画っぽい。
 こう言った曲はAttractionsの専売特許だったのだが、もう彼らを必要としなくなったCostelloが弾けている。
 
15. Last Boat Leaving
 ラストはしんみり、でもせわしなくCostello自身が様々な楽器をとっかえひっかえして演奏している。
 今年になってから急にライブのレパートリーに復活し、定番の位置に収まっていた。後半の盛り上がりは確かにCostelloの真骨頂。




 チャート的にはUK5位US32位と久々のヒットとなり、シングルも多数カットされた。作品のクオリティとセールスとがうまく合致した、幸せな結果となった。
 この路線に自信を持ったおかげで、続けて同路線の『Mighty Like A Rose』をリリースすることになるが、それはまた後日。


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世捨て人の王様、アメリカへ想いを馳せる - Elvis Costello 『King of America』

folder 久しぶりにCostelloの続き。
 順序は前後するけど、前回レビューの『Blood & Chocolate』の前にリリースされた、通算10枚目のアルバム。
 ただし、このアルバムでのクレジットは「Elvis Costello」名義ではなく、本名の「Declan Patrick MacManus」という、どこからもCostelloのイメージが想像できない名前である。また、バック・バンドというか、アーティスト・クレジットも「The Costello Show」、日本語で言えば『コステロ一座』となっている。こうして日本語に直してみると、なんだか気の抜けたネーミング。まるで旅芸人の一座のよう。
 ただ、敢えてそういったダサさを狙ったというか、名が表すように、時代と逆行したレイド・バックというか、それまでリリースしたCostelloのアルバムの傾向とはかなりベクトルを変えた、恐ろしく気の抜けたカントリー・アルバムに仕上がっている。
 
 その時の気分によってたびたび音楽スタイルを変える人なので、Costelloの場合、こういったケースはよくある。このアルバム以前にも、全編カントリー・スタイルのアルバム『Almost Blue』をリリースしたことがある人である。多分、時々自分探しの旅に出たくなってしまう時期があるのだろう、思い出したようにルーツ回帰に走る人なのだ。それは今でも変わってない。
 ただ、『Almost Blue』の時のバック・バンドはいつものAttractionsであり、あくまでこれまでのキャリアの延長線上、別の側面的な意味合いが強かったのに対し、このアルバムについては、またちょっと事情が違っている。
 
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 物事には必ず前置きがある。詳細を知るためには、まずそれを知る必要がある。
 前作・前々作に当たる『Punch The Clock』『Goodbye Cruel World』の2枚のアルバムでCostelloが目指していたのが、「アメリカ市場での成功」「MTVでのヘヴィー・ローテーション化」の2つである。
 これまでもUK・USとも安定したポジション、爆発的なヒットはないが一目置かれるタイプのアーティストとして、マニアにも一般ユーザーにも、それなりの評価を受けていたが、なにぶん80年代初頭から中盤にかけては、MTVや12インチ・シングル全盛の、ダンサブルで華やかできらびやかなショー・ビジネスの世界。UK・US双方でビッグ・セールスが連発されているのを横目に、堅実ではあるが地味なポジションに不満が生じてきたのかもしれない。
 音楽的なクオリティは高いはずだし、評論家受けも良い方だというのに、セールスはほぼ横ばい、ライブ会場もアリーナ・クラスを埋めるには力不足だし、それよりも何よりも、Culture ClubやDuran Duranより知名度が低いことに我慢できなかったのだろう、とは何となく思う。
 
 これまでよりスケールの大きい世界での活動を選んだCostelloは当時、アメリカ市場にアピールするため、結構なり振り構わぬ行動を起こしている。
 売れっ子プロデューサーClive Langer & Alan Winstanleyと組んだり、ほとんど面識のないDaryl Hallとデュエットして、チープな寸劇仕立てのPVを作ったり、はたまた伝説のライブ・エイドでは、キャラクター的にあまり求められてないカバーを歌ったり(Beatlesの”All You Need Is Love”)、慣れないながら結構努力した方だと思う。そういえば、Scritti PolittiのGreenとも、なぜかデュエットしていたな。
 
 そうやってあらゆる手を尽くしたにもかかわらず、肝心のセールスはといえば、実際のところチャートを賑わすには至らず、というか、従来のCostelloのアルバムと、売り上げはほとんど変わらなかった。
 まぁ以前よりシングルがUKでスマッシュ・ヒットしたかな?という程度。
 番宣目的で慣れないバラエティ番組に出まくったにもかかわらず、視聴率がそれほど振るわなかったドラマ主演俳優のような心境だったろうと察する。

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 サウンドとしては、充分80年代ポップのセオリー通りで良かったのだが、誰もCostelloにそこまでのハジけっぷりは求めてなかったのだろう。
 大御所俳優がバラエティで痛々しいジョークを連発し若手出演者が愛想笑いを繰り返すのと、図式は同じである。結構体は張ったし不慣れな足お笑いまで作ってアピールしたってのに、アメリカのエンタテイメントの壁は厚かった。
 
 -じゃあどうすりゃいいんだよ、これじゃどうやったって同じじゃん。
 そう開き直ったのか、まるで売れることを拒否したかのような、モジャ髭面のCostelloがイミテーションの王冠を被って、虚無感漂う無表情で、所在なさげに斜を見つめている。その眼の奥に、もはや光はない。
 どうせ売れるつもりもないのだから、これまで築き上げてきたElvis Costelloというネーム・バリューを捨て、そして苦楽を共にしたAttractionsも捨て(厳密には1曲のみ参加)、サウンドも徹底的に地味になった。
 これまではAttractionsがバックだったため、どれほどスローな曲でも演奏に勢いのようなものがあったが、今回のCostello ShowはElvis Presleyのバック・バンドを務めていた連中がメインとして参加している。「熟練した手練れの演奏」と言えば聴こえは良いが、まぁ要するにダイナミズムのない枯れた演奏である。安定してはいるが、大きな盛り上がりはなく、まず80年代アメリカでは決してアピールしない音だ。
 徹底的に売れることを拒否、いやむしろセールスの落ち込みを自ら期待するようなサウンドである。

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1. Brilliant mistake
 虚ろな眼のCostelloが歌うアメリカの虚飾と繁栄。どう隠したってカントリーを歌うCostelloなのに、どうやっても匿名性を維持したいのか、Little Hands Of Concreteという変名でアコギを弾いている。
 有名どころのミュージシャンとして、Jerry Scheff(b)、長らくPresley のバックを務めた男。それとMitchell Froom(org)が参加。Los Lobosのプロデュースで知られるようになったがが、何と言っても一番有名なのは、Suzanne Vegaの元夫だという事実。

  

2. Lovable
 まったりした演奏の1.から一転、テンポの速いロカビリー・タッチのナンバー。ちょっとPresleyを意識してると思ったら、Jerry、Mitchellと一緒に重鎮スタジオ・ミュージシャンJim Keltner(Dr)が参加。跳ねるドラムがCostelloのヴォーカルを煽る煽る。
 
3. Our little angel
 生音中心の柔らかなバラード。ここで御大James Burton(g)の登場。カントリー特有のドブロ・ギターが心地よい。
 このアルバム全体に言えることだが、Costelloの歌い方が大きく変化していることがわかる。
 スロー~ミドル・テンポが多くを占めているのだけれど、以前よりも発音が正統というか、イギリス訛りの臭みが抜けており、もっと言葉を丁寧に発している。サウンドからギミックを抜き、可能な限りストレートに処理した結果、このように素直な唱法を手に入れたのだろう。
 
4. Don't let me be misunderstood
 もともとはNina Simoneがオリジナル、その後Animalsがカヴァーしてヒットしているが、多分日本で最も有名なのは尾藤イサオのヴァージョンかもしれない。他にメジャーどころではJohn LegendやCyndi Lauperらもカヴァーしているとのことだが、ちっとも知らなかった。
 Costelloのヴァージョンは非常にエモーショナルに響き、やはりこれまでの唱法とは違って聴こえる。
 ここでミュージシャンとして、プロデューサーであるT. Bone BurnettがE.Gで参加しているが、ほとんど目立った活躍はしていない。

  

5. Glitter gulch
 日本人が思い描く、アップテンポのカントリー・ソングそのまんま。レコーディング・メンバーは3.とまったく同じ面子なのだが、曲調のあまりの違いに驚かされる。と共に、カントリーの奥深さ深遠さにも感心。
 
6. Indoor fireworks
 邦題が"室内花火“。日本ではあまり馴染みがないが、パーティ用の安全な花火がアメリカでは普通に売られているらしい。googleでも販売用のパッケージが出てきたので、意外とメジャーなものなのだろう。
 Stiffの兄貴分Nick Loweもカヴァーしている、落ち着いたバラードの名曲。
 
7. Little palaces
 Jerryのベース以外はCostello 自身のアコギ時々マンドリンによる、ほぼ弾き語りに近い激情バラード。曲調としてはかなりBob Dylanに近い、というかギター弾き語りになるとどうしてもDylanっぽくなってしまうのは仕方ないこと。
 歌詞も日本人には完全な理解は不可能な比喩に満ちており、それもまたDylanイズムに溢れている。
 
8. I'll wear it proudly
 こうして続けてみると、やはりDylanの影響が濃いカントリー・タッチの曲調が多い。カントリー調のDylanといえば『Nashville Skyline』が挙げられるが、DylanよりもCostelloの方がメロディは凝っており、日本人でも素直に受け入れられやすくなっている。

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9. American without tears
 古き良き50年代アメリカを皮肉るような歌詞が、やはりイギリス気質バリバリのCostelloならでは。憧れであり嫉妬の対象であるアメリカというイコンは、彼にとっては愛憎半ばの思いであり、存在なのだろう。
 曲をリードするアコーディオンが刺々しい歌詞をうまく中和してポップに響かせてくれる。
 
10. Eisenhower blues
 オリジナルはJ. B. Lenoirというブルース・ギタリストによるもの。
 よくもまぁこんなマニアックな選曲を、といった感じの、Costelloによる「なんちゃってブルース」。だってあんまりブルースっぽさは感じられないんだもの。まぁ本人もその辺は薄々わかってるとは思うが。
 前にも書いたように、一つのジャンルを深く極めるタイプの人ではないのだ。
 
11. Poisoned rose
 名曲。俺的にCostelloのバラードとしては3本の指に入る。他二つが何かといえば、もう一つは”Shipbuilding”、あとは…忘れた。
 このアルバムの中では最もカントリー色が薄く、それは同時にアメリカ臭さのマイルドさを意味する。複雑な比喩も少なくストレートな表現の多い歌詞もロマンティックなラブ・ソングであり、なかなか珍しい部類。
 なんだ、やればできるじゃん、と言ってあげたい。

  
 
12. Big light
 ややメキシカン成分も混じったテンポの速い南部カントリー。地味ではあるがJerryのランニング・ベースがいい響き。
 
13. Jack of all parades
 イギリスの諺「Jack of all trades」(日本で言うところの何でも屋)をもじった言葉らしい。これもこのアルバムの要となる名曲の一つ。
 中盤で一瞬ヴォーカルにフランジャーがかかっているが、この音像処理もさり気なく、切ない声質を更に際立たせている。

  

14. Suit of lights
 この曲のみ、Attractionsによる演奏。本来はアルバム半分を彼らが受け持つ予定だったが、彼らがスタジオにやってきた頃には既に大よその曲を録り終えていたため、気分を害し一曲のみの参加となったらしい。
 いくら長い付き合いの気心知れた演奏でも、ベテラン・ミュージシャンらによる熟練さと比べられると、そりゃいい気はしないだろう。
 かすかな嫉妬とわずかな敗北感。彼らの気持ちもわからないでもない。
 Attractions相手だとやはり歌う姿勢も違うのか、何だかヴォーカルも下手に聴こえてしまう。ただSteve Nieve(P)とは現在でもつかず離れずの関係を維持しているので、ここはやはりリズム・セクションとの相性によるものだろう。
 
15. Sleep of the just
 ラストはCostello、Mitchell、Jerry、Jimによるしんみりした演奏。
 Princeの場合もそうだが、Costelloもまたテクニカルではないが、ここでは味のあるアコギの演奏を聴かせる。弾き方というより聴かせ方がうまいのだろう。
 Jimのタメるドラム・プレイも絶品。前の曲と続けてみるとヴォーカルの聴かせ方が違うのがわかる。不機嫌なピリピリした演奏と、リラックスした演奏との違いだろう。




 できるだけCostelloとしてのパーソナルを隠し、憧れのメンツとセッションを重ね、音楽的ルーツに素直に倣った作品を作ることは、彼にとっては至福の瞬間だったことだろう。長年音楽業界にいることによって、いつの間にか無意識ではあるがヒットの重圧を感じていただろう。それを気にせずにいられることは、Costelloにとっては必要な過程だったのだ。
 
 にもかかわらず、セールス的には従来と大きく変わらなかった。あれほど大プロモーションを展開した前作『Goodbye Cruel World』とほとんど変わらず、数値的には微動だにしないが、リリースした途端に名盤扱いされる始末。でも売り上げは変わらない。
 
 売れようとしても変わらず、売れることを拒否しても変わらず。
 じゃあ、俺ってどうすりゃいいの?
 そこからヤケクソに開き直って制作したのが、次作『Blood & Chocolate』 である。



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北海道の中途半端な田舎に住む、そろそろアラフィフ男。ほぼ週1のペースで音楽ブログ更新中。節操ない聴き方と思われてるけど、自分の中では一貫してるつもり。 最近は蔵書の整理がてら、古い本を再読中。ジョン・アーヴィングから始まって、フィッツジェラルドやゾラ、モームなど、いわゆる古典の復習中。いつになったら終わることやら。新刊読めねぇや。
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