好きなアルバムを自分勝手にダラダラ語る、そんなユルいコンセプトのブログです。

良い音楽に出会うことは、変わり映えしない日常に別の彩りを添えること - Prefab Sprout 『Let's Change The World With Music』

folder メイン・ソング・ライターでありヴォーカリストでありギタリストでもある、もはやソロ・プロジェクトと化したPrefab SproutのリーダーPaddy McAloon、彼の創作力の原点である、旧き良きアメリカへの憧憬をストレートにサウンドに反映させた『Gunman and  Other Stories』リリース後、再び長い沈黙に入ることになる。
 もちろん、ただ単にバカンスを満喫していたわけではない。だってそこはイギリス人、何週間も何か月も、能天気に仕事を忘れてのんびりする人種ではない。突き抜けるように高い青空よりも、くすみ淀んだ低い雨雲を好むのが、彼ら英国気質なのだ。

 ほんの身近な休息後、彼は再びレコーディング作業を再開するはずだったのだけど、大幅に体調を崩してしまったこともあって、その後のスケジュールに大幅な修正が講じられるることになる。
 長時間のスタジオ・ワークに加えて、趣味である大量の読書は、デリケートな視神経をじわじわ痛めつけ、遂には網膜剥離の診断が下され、休養を余儀なくされる。ロックン・ロール・ライフに憧れながら、私生活では清廉潔白に過ごしていたPaddyのことなので、それほど不摂生な生活を送っていたとは思えないけど、積年のストレスが溜まったのだろう。
 更なるトラブルとして、突発性難聴も加わることによって、状況は困難を極めることになる。それほどラウドなサウンドを作る人ではないのだけれど、やはりこれも長時間のレコーディングが祟ったのだろう。

Prefab-Sprout-circa-2009

 この間も断続的ではあるけれど、様々なコンセプトを掲げて大量の楽曲を制作しており、優にアルバム10枚分くらいのデモは溜まっていた。ただ、どの楽曲も完全なものではなく、中途半端な曲の断片や、壮大な組曲のほんの一曲だけなど、未完成品ばかりがどんどん出来上がり、この期間、まともな形のアルバムとして纏められることはなかった。
 そのあまりに長い沈黙の中、時々無名の有志によって未発表テイクがネット上に流出し、その度世界中のファンたちはフォーラム上で一喜一憂していた。それがハプニングによるものなのか、それとも意図的なものだったのかは不明だけれど、こんなところばかりがAndy Partridgeに似てしまって、何となく複雑な気分になってしまうのも、ファン特有の心理である。

 で、Prefabとしての新作が袋小路に嵌まってしまい、気分転換に着手したアンビエント系のサウンドが意外にすんなりとまとまってしまい、ほとんど成り行きで初のソロ・アルバムとして2003年にリリースされたのが、『I Trawl the Megahertz』。これまでのPrefabとは似ても似つかない、まったりした環境音楽的サウンドに無機的なモノローグが延々と被さり、純粋なヴォーカル曲は一曲のみという、何ていうかリハビリのために出したんじゃないかと思われる、これで金取る気なの?とまで思ってしまうアルバムである。
 多分俺だけじゃないと思うのだけれど、よっぽど熱心なPaddy信者でもない限り、これをフェイバリットとは言えないはず。だって、Paddyにこんなサウンドは求めてないもの。
 一応Paddyの新作音源としてリリースされたので、通して一回か二回くらいは聴いたと思うけど、ほんとただそれだけ。流して聴いていつの間にか終わってた、という程度の印象しかない。
 ただ困ったことに、2015年現在、PaddyまたはPrefab名義で公式に発表されたオリジナル作品はこれが最後であり、これから紹介する『Let's Change The World With Music』も含めて、その後は過去のアーカイブを引っ張り出してきて、手を加えたものでしかない。
 
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 この作品も『Earth: The Story So Far』『Devil Came A-Calling』など、数々の未完のプロジェクトから派生した作品集であるため、一つの明確なコンセプトでまとめられているわけではない。壮大なプロジェクトが頓挫して、その残滓の中からいくつか拾い上げ、磨けば光る物に少し手を加え、どうにか形にしたものばかりである。しかも、ほぼゲスト・ミュージシャンは入れず、純粋にPaddyのソロ・ワーク、機材も一昔前のモノばかりのため、出来の良いデモ・テープ並みの音質である。
 かつての盟友Thomas Dolbyでもいれば、もうちょっとなんとかしてくれたんじゃないかとも思えるけど、当時はちょうどネット関連の事業の立ち上げに関わっていた最中のため、スケジュールが合わなかった、とのこと。まぁどちらにしろ、もう2人が組むこともないのだろう。彼らが仲睦まじくスタジオの中で起こした数々のマジックは、あの時かぎりのものであり、再現できる類のものではないこと、それは2人とも承知の上なのだ。

 これ以降もPaddy、『Steve McQueen』のリマスター作業など、断続的にアーカイブのリリースを行なっているのだけど、純粋な新作の話はとんと聞こえてこない。もちろん全盛期と違って体力的な不安はあるので、以前のようなペースでの作曲・レコーディング活動は難しいのだろうけど。
 
 でも、我々ファンは待つのだよ。いつかきっと、を信じて。
 


Let's Change the World With Music
Prefab Sprout
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1. Let There Be Music
 いきなりリズムの立ったバック・トラックに乗せて、ちょっぴり黒っぽいナレーションが始まり、違うCDかと勘違いしてしまいそうだけど、Paddyの声が聴こえてくると、そこはもういつものPrefab Sprout。新機軸として、1990年当時流行だったハウス・ビートを見よう見まねで使用しているのだけれど、これが意外にはまっている。器用なんだよな、こういうとこが。
 


2. Ride
 こちらもリズムを強調したトラック。懸案だったMichael Jacksonをモチーフとしているためか、「リズムとメロディの融合」がテーマとしてあった模様。ソウル系の影響はほぼ皆無のPaddyだけれど、この打ち込みリズムは最新型ではない分だけ、妙に人力っぽさが漂っている。ただ、もうバンドの意味はないよね、これだと。
 


3. I Love Music
 ワルツを基調とした、リズム・パターンにこだわったトラック。間奏のプリセット丸出しのストリングスが時代を感じさせるけど、それ以外はいつものPaddy。普通のポップスのメロディ・ラインではなく、ジャズ・テイストを交えながら、一聴してPaddy’s Musicと分からせてしまうところが、強烈な個性でもある。

4. God Watch Over You
 重厚なエレピのリフレインが格調の高さを演出している、タイトル通り「神の視点」をテーマにした、シリアスな曲。朗々としたヴォーカルながら、重くなり過ぎないのはやはりメロディの美麗さ、敢えてチープなシンセの響きだろう。

5. Music Is a Princess
 直訳するとすごく気恥ずかしい、英語だからまだ堂々と歌うことのできる、非常に前向きで若々しさの残るナンバー。『Steve McQueen』あたりのアルバムに入っててもおかしくない、キラキラしたサウンドがバンド・サウンドを彷彿とさせる。こういった曲の割合がもう少し多ければ、もっとキャッチーになってセールス的にも健闘したのだけれど(UK最高39位)。

6. Earth, The Story So Far
 有名な未発表アルバムのタイトル・トラック。ここで初めて日の目を見ることになった、ということは、プロジェクト自体は完全お蔵入り?天地創造からPresleyまで、壮大な世界の歴史を語り尽くす予定が、サワリだけで終わってしまったってこと?タイトルとコンセプトばかりが独り歩きして、詳細は判明していないのだけれど、寸止めみたいな感覚がもどかしい。
 基本、『Jordan the Comeback』後に制作されたトラックが大半を占めるので、美麗なメロディを究めた後のテーマとして、リズムの工夫が目立つ曲が多い。アウトロのソプラノ・サックスも以前とは響きが違う。単品だけでも十分な味わいだが、これがフル・コースなら、一体どのような全体像になったのか。興味は尽きないが、すべてはPaddyの脳内にしまい込まれている。
 


7. Last of the Great Romantics
 『Jordan~』期を飛び越して、『Andromeda Heights』的サウンド、要するにAORを志向したトラック。もちろん極上のAORなのだけれど。ただ惜しいことに、急にこの曲だけ音質の劣化が見受けられる。全トラック、デモ・テープのリマスター版的サウンドなのだけれど、音の広がりが失われ、ダイナミック・レンジも妙に狭い。特に打楽器での響きが潰れた感じ。曲調はロマンティックなだけに、惜しい。

8. Falling in Love
 Paddy自身による打ち込みサウンドが多勢を占める中、比較的生音率の高いトラック。この曲のみ、地味な扱いではあるが生ギターが投入されており、ややカントリー・テイストのサウンドにオーガニックな彩りを添えている。

9. Sweet Gospel Music
 タイトルとは裏腹に、ちっともゴスペルっぽく聴こえないのだけれど、Paddyの中では立派にゴスペル・ミュージックなのだろう。黒人的なコーラスが入れば良いのではなく、要は神に捧げる音楽としては、ポップでありながら、そしてシリアスでもある。『Jordan~』的サウンドは荘厳としているため、テーマとの親和性は高い。

10. Meet the New Mozart
 ユニゾンではない多重コーラスを使うPaddyは意外に珍しい。コーラス・アレンジは『Jordan~』で、他のサウンドはエレクトロ・ベースのテクノ、時々ジャズも混入している。こういったリアルタイムの音楽にも目配りを行ない、「やってみた」はいいけれどイマイチしっくり来ず、結局いつものサウンドに落ち着いてしまうところが、これまたいつものPaddyである。
 案外保守的でなく、まずは恐れずに「やってみる」というのが、この人の妙に前向きなところである。自らの拡大再生産だけに終わらないところが、僅かではあるけれど新たなファンを獲得し続けている所以でもある。

11. Angel of Love
 ほぼヴォーカル・ラインだけで作ったサウンドに、グロッケンなどをエフェクト的に使用、Paddy率100%のトラック。ラストを飾る曲としてはドラマティックで良いと思うが、単品で聴いてみると、ちょっとお腹いっぱい。やはり壮大な組曲の一部として聴いた方が良さがわかる。

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 直訳すれば、「音楽で世界を変えてみよう」。
 当たり前の話だけれど、Paddyは音楽で革命を起こしたり、世界征服を目論んだりする人間ではない。また、音楽で人の心を掌握したり、世界平和を訴えたりなど、そういった大それた人間でもない。
 彼の本意はそういった大げさなものではない。もっと小ぢんまりとした、もっとパーソナルなものだ。
「良い音楽に出会うことは、心を豊かにすること、変わり映えしない日常に別の彩りを添えることなんだ」ということ。
 たったそれだけのことである。



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思ったよりチャラくない、音楽にマジメな男の軌跡 - Aztec Camera 『Covers & Rare』

folder 青臭い童貞っぽさを漂わせていたネオ・アコ期の凛とした面影はどこへやら、当時隆盛だったブルー・アイド・ソウル、ていうか思いっきりブラコン・サウンドに急接近した『Love』リリース以降のAztec CameraことフロントマンのRoddy Frame。ClashのMick JonesやOrange JuiceのEdwin Collinsらとコラボしたり、英オルタナ・シーンとの接点を維持してはいたのだけれど、レコード会社的にも、そしてRoddy的にも、もっと大きなフィールドでの活動を視野に入れていた。
 メジャー戦略に則ったサウンドの洗練に伴って、ビジュアルもよりスタイリッシュに傾きつつあった。真摯なギター少年の面影はすっかり薄れ、ビジュアル系音楽雑誌のグラビアを飾るまでになっていた。

 80年代洋楽の傾向として、Bruce SpringsteenやLAメタル系を代表とするアメリカのアーティストが、肉体性やマッチョを前面に押し出した、男性要素の強いビジュアルを演出していたのに対し、イギリスのアーティストはDavid Bowieに端を発した、中性的で線の細い、化粧映えするアーティストに人気が集中していた。特にRoddyやSmithsのJohnny Marrなど、中性的容貌に加え、少年性を漂わせる独特の趣きに魅せられたネオ・アコ少女たちも多く、ロキノンのカラー・グラビアでもしょっちゅう取り上げられていた。
 音楽性とビジュアルとのシンクロ率が高かった『Love』『Stray』期、日本でも女性ファンを中心に静かな盛り上がりを見せ、この時期は結構な頻度で来日公演を行なっている。当時は洋楽マーケットが日本でもそこそこのシェアを占めていたため、それほど大掛かりなセットや大人数でもない限り、採算が取れていたのだ。

 じゃないと、こういった種類のアルバムはリリースできない。しかも本国UKでは未発売、日本独自の企画盤である。ベスト盤ではなく、オリジナル・コンセプトのコンピレーション、シングルのみのリリースだったり、オムニバスへのワン・ショットでの参加曲、その他をライブ・テイクで埋めている。アルバムだけではカバーしきれない、熱心なファン向けのコレクターズ・アイテム的なポジションの作品だけに、普通ならライト・ユーザーやビギナーにはオススメしづらいのだけれど、有名曲のカバーも収録されているので、中途半端なオリジナルよりは、ずっと取っ付きやすいはずである。

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 このアルバムがリリースされた1993年は、Aztec Cameraのデビュー10周年、オリジナル・アルバム『Dreamland』リリース直後の頃。バルセロナ・オリンピック開会式の作曲・指揮やYMO再生により、活動のピークに達していた坂本龍一が全面プロデュースという謳い文句で話題になり、UKチャート最高21位と、まぁまぁのセールスを記録したアルバムである。作品・サウンド・アレンジとも会心の出来だったこともあり、これまでのキャリアに一段落ついたこともあって、この来日記念盤のリリースを許可したのだろう。

 穿った言い方をすると、いわゆる寄せ集め的なアルバムだが、すべてのシングルや客演までを把握しきれない日本の熱心なファンにとっては、貴重なアルバムである。当時のレコード会社や洋楽雑誌も小まめな情報発信を行なってはいたのだけど、ネットが普及する以前の90年代において、日本とUKとの間では、情報の格差はまだ大きかった。
 90年代は輸入盤の全盛期、札幌でもタワー・レコードやCisco、WAVEやVirginなど、ショップによってそれぞれラインナップに微妙な特徴があり、回って見るだけでも一日が潰れ、何も買わなくても楽しかった。ちなみに現在残っているのはタワーのみ。去年久しぶりに覗いて見たのだけど、2フロアあったのが1フロアに縮小されていたせいなのか、何だかすごくせせこましい配置になっていた。おかげで90年代当時の独特の空気感が失われていたため落ち着かず、10分足らずで店を出てしまった。

 去年久しぶりにソロ・アルバムをリリースし、再び小規模ながらツアーも始めたRoddyを確認できて、世界中のファンはひとまず安心した。細やかな透明感のあるギター・プレイや歌声はまだ健在である。まだ歌い続けてゆくことを表明してくれたことが、旧い友人からの久しぶりの便りのように、とても温かく、そして懐かしさを感じる。
 もうギラついた野心もないだろうし、このままマイペースで歌い続けていくのだろう。
 たまにでもいいから日本に来てね、できたら札幌に。


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1. Back On Board (Live)
 デビュー・アルバム『High Land, Hard Rain』収録、1983年ということなのでリリース直後、場所は有名なEl Mocambo、StonesやCostelloなど、有名どころがライブ・アルバム収録に利用しているのだけれど、キャパとしてはせいぜい400~500程度のなので、それほど大きな場所でもない。イギリスの新進アーティストとしては憧れの聖地だったのかもしれないが。
 曲調としては朴訥としたアコースティック・ロックなので、それほど盛り上がりを見せる曲調でもない。うん、別にライブ・ヴァージョンにしなくてもよかったんじゃない?

2. All I Need Is Everything (Latin Mix)
 『Knife』の先行シングルとしてリリースされた、12インチ・シングルの別ミックス。といっても、ちょっぴりラテン・フレーヴァーを足してイントロを長くしたくらい。昔の12インチには、こういった無意味な引き延ばしが多かった。ディスコ用に長く踊れるように、というのが本来の目的なのだけど、Aztec Cameraで誰が踊るの?って話になる。
 それは抜きにして、当時MTVブームの追い風によってノリにノッテいたMark Knopflerプロデュースによって、ヒットのツボを心得たサウンド・メイキングとRoddyの生来ポップなソング・ライティングとが絶妙にマッチングしている。全英チャート34位はちょっと低めなんじゃないかとも思えてしまう。

3. Jump (Loaded Version)
 その3.のB面に収録された、一躍話題となった、言わずと知れたVan Halen大ヒット・ナンバーのアコースティック・カバー。元曲とのあまりのアプローチの違い、あまりの静と動との対比に、まだ高校生ながら、「カバーとは、その曲に対しての愛情だけでなく、批評性もまた重要なのだな」と、まぁここまで整理して思っていたわけではないけど、そんなことを思った次第。
 静謐とした前半から徐々にテンションを上げてゆき、終盤での爆発した混沌の渦のギター・ソロ。その対比こそが、この曲の本質を見事に言い当ててるとも言える。
 


4. Set The Killing Free
 シングル” Walk Out to Winter” B面が初出。メロディはいつものRoddy色だが、ややサウンドはラウドに、歌詞の内容からして、どこかClashっぽい。当時のアルバムのカラーには合わなかったのだろう。

5. Consolation Prize
 CDシングル“Good Morning Britain”のみに収録。アナログ未収録、しかもCDはアメリカのみの発売だったため、これもなかなかのレア・アイテム。
 もともとオリジナルは、デュエットしているのEdwin Collins、同時代にネオ・アコ・ムーヴメントで何かと付き合いがあった、Orange Juiceのリーダー兼ヴォーカリスト。
 このシングルがリリース当時の1990年頃、Orange Juiceは解散しており、Roddyに比べてEdwinは不遇の時期だったわけだが、数年後、彼の曲が大ヒット映画『Charlie's Angels: Full Throttle』に採用されたことによって、一気に立場は逆転する。その後、またまた大ヒット映画『Austin Powers』にも採用されることにより、Roddyにとっては手の届かないポジションにまで行ってしまった。その割に結構フットワークの軽い人で、有名無名ジャンルを問わず、いろいろなセッションに顔を出しているのが、好感が持てる。
 俺的にお気に入りなのが、イタリアのアシッド・ジャズ・ユニットGabinのシングル。

6. True Colors
 3.同様、こちらも有名なCyndi Lauperの名曲バラードのカバー。ほんと2枚目リリースまでのCyndiは曲に恵まれており、自作である”Time after Time”を筆頭に、”Girls Just Want to Have Fun”” Money Changes Everything”など、今でも風化してない曲がたくさんある。ちなみにCyndi、何故か”True Colors”収録アルバムにて、Marvinの”What’s Going On”をカバーしているのだけれど、これはまぁあまりいい出来ではなかった。
 でRoddy、この曲については非常にストレートなカバー。”Jump”と違って純粋にメロディのきれいな曲なので、あまりいじることもできなかったのだろう。
 1990年リリース『Stray』と同時リリース・シングル” The Crying Scene”のB面収録曲。
 


7. (If Paradise Is) Half Is Nice
 イギリスの音楽雑誌NME(New Musical Express)創刊40周年を記念したコンピレーション『Ruby Trax』にのみ収録されている、多分全トラック中最もレア度の高い曲。全3枚組新旧アーティストがそれぞれ、オリジナルではなくカバー曲をプレイしているのだけれど、RoddyはAmen Corner1969年のヒット曲をチョイス、オリジナル・メンバーのAndy Fairweather Lowとデュエットするという凝りよう。
 軽いポップ・ソウル風で、どこか”Dock of the Bay”を思い起こさせる曲調が切なくてRoddy向き。
 
8. We Could Send Letters (Live)
 オリジナルは『High Land, Hard Rain』収録、1.と同じくEl Mocamboでのライブ。朴訥で愛想のないプレイは、新進バンドの堅さが現れている。

9. Salvation
 6.同様、シングル”The Crying Scene”収録。この人の場合、メロディ・ラインの癖は昔からあまり変わってないのだけれど、やはりサウンドがコロコロ変わっていることによって、彩りがまるで違って聴こえる。この曲だってデビュー・アルバム辺りに入っててもおかしくない曲なのに、まったりAORっぽいアレンジがしっくりはまっている。

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10. Deep & Wide & Tall (Breakdown Mix)
 思いっきりイメチェンを図った3枚目のアルバム『Love』の先行シングルとして発売、もちろん当時隆盛の12インチに収録。UK最高79位というのは不本意だったと思われるが、アルバム自体は最高10位にチャート・インしており、トータルではそこそこの成績。
 当時はブラコンに思いっきり接近していた時期でもあるので、Roddy自身もこういったのをやりたかったのだろう。といっても、こういったダンス・ミュージックへのアプローチはこのアルバムのみ、リズムを強調したサウンドへの興味は次第に薄れ、次第にもっとコンテンポラリーな、AOR的なサウンドへと移行してゆく。

11. Bad Education
 その10.同様、B面で収録されていたのがこれ。シンセのフレーズも流用したかのように似ており、同時期の兄弟的な曲である。サウンドは完全に『Love』仕様なのだけれど、もっとバンド寄り、楽しげにアコギをかき鳴らすRoddyが、そこにいる。

12. Good Morning Britain
 元ClashのMick Jonesとのコラボ、ということで当時でも大きな話題となった、UK最高19位のヒット・ナンバー。ここではダンス・ミックスでの収録となっているのが惜しい。これは『Stray』にオリジナル収録されているので、趣旨とはズレるけど、ぜひこちらを聴いてほしい。
 


13. Walk Out To Winter (Extended Version)
 "Oblivious"同様、今でもAztec Cameraの代名詞的名曲のダンス・ミックス。延々と続くベース・ラインなど、無闇な引き延ばしがウザく感じるのだけれど、ほんとにみんな、これで踊ってたの?とまで思ってしまう。まぁ踊れないよな、きっと。

14. The Red Flag
 『Love』からのセカンド・カット”How Men Are”B面収録のトラディショナル・ソング。イギリスでは18世紀くらいから伝わる、日本で言う唱歌のようなもので、大抵のイギリス人なら耳にしたことがあるくらい、有名な曲。
 いま調べるまでずっと、Roddyのオリジナルだと思っていた。そのくらいハマっている曲だし、A面曲とも調和の取れたシングルになっている。

15. Do I Love You?
 ラストはカバー曲、こちらもなかなかのレア・アイテム。
 1960年代まで活躍したアメリカのミュージカル/映画音楽を中心に活動した作曲家Cole Porterのトリビュート・アルバム『Red Hot & Blue』に収録。有名どころではU2やSinéad O'Connor、Thompson Twinsなど、80年代に活躍したアーティストがひしめく中、堂々のラストを飾っている。
 こちらも下手なアレンジはせず、ストレートにシンプルな、メロディを活かしたサウンドを展開している。しかし14.といい、スタンダードな音楽の似合う声質の人なのだと思う。次第に凝ったサウンドからヴォーカル重視になって行くのは、必然の流れだったのだろう。



 コンセプトのないコンピレーションのため、特別最初から通して聴く必要がないのが、このアルバムの利点。好きな曲ばかり聴いてもいいし、いまいち合わない曲は飛ばしたってかまわない。俺もリリース当時は”Jump”や”True Colors”、”Good Morning Britain”や『Love』収録曲がヘビロテだったけど、今回改めて聴いてみると、14.や15.のようなスタンダード・ナンバー、それとAndy Fairweather Lowとのコラボが意外に良くって、これが再発見。年代に応じて、色々な受け止め方のできるアルバムである。

 情報を詰め込んだせいか、なんかほんと、普通のレビューっぽくなっちゃったな。
 まぁいいでしょ、たまにこんなのも。



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ねぇSyreeta、これならどう? - Stevie Wonder 『Where I'm Coming From』

folder もうだいぶ前に『Innervisions』のレビューを書いたので、この流れで行けば、そりゃ当然『First Finale』にも触れないとな、と思って久し振りに聴いてみたところ…、う~ン、という感じ。
 いいアルバムだというのはわかる。クオリティも高い。ただ、『Innervisions』が自らのソウルのアイデンティティに加え、ルーツでもあり当時のトレンドだったジャズやファンクをも内包する「ネガティヴなパワー」に満ち溢れていたのに対し、『First Finale』 は一周回って角が取れてしまったというのか、ネガティヴさが減衰した代わりにハート・ウォーミングなムードが蔓延して、なんというか、イマイチ刺さってこないのだ。
 クタクタに疲れている時、または心の拠りどころにしたい時、そういった場合には「癒しの音楽」として機能するのかもしれないけど、俺がStevieに求めるのは、そういった方面ではないのだ。

 で、他のStevieのアルバムで気に入る物があるんじゃないかと思って、棚の中から引っ張り出したりパソコンのファイルを漁ってみたり、こうなりゃ徹底的に、と久しぶりにツタヤに行ってレンタルしてみたりした結果、『First Finale』や『Talking Book』より、むしろこっちの方がぶっ飛んでんじゃね?と気になったのが、このアルバム。有名な4部作前に制作されたアルバムなので、変なフィルターがかかってない分、純粋なStevie’s Musicを堪能できる。
 ちなみに今回、全部は揃えられなかったけれど、Stevieのアルバムをほぼ時系列に沿って聴いてみた結果、世間一般では「愛と平和の人」としてのレッテルが貼られ、クリエイター的には低迷期だったとされる、80年代から90年代のアルバムが、俺的には意外に良さげだった。この時期は"I Just Called to Say I Love You"など、スタンダードではあるけれど、凡庸なバラードも多く、誤解されてる面も多いのだけど、クリエイティヴィティな面から見れば、新アイテム「フェアライトCMI」が本格的に導入された頃なので、そのサウンドを活用した実験的な構成の作品も多く、案外充実してたんじゃないかと思われる。

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 で、邦題が『青春の軌跡』という、今となってみれば、まるで羞恥プレイのようなタイトルと思われがちだけど、リリースされたのは1971年、この頃の日本では、「青春」という言葉は決して恥ずかしいものではなく、むしろ時代の先端をゆくトレンド・ワードだったのだ。

 前述したようにこの作品、Stevieのディスゴグラフィにおいて、ポジション的には過渡期の作品として位置づけられている。ちょうどStevie二十歳の頃、親会社モータウンによってガチガチに固められた契約内容から自由になり、従来のモータウン流大量生産ポップ・ソウルから、天才エンジニアMalcolm CecilとRobert Margouleらの助力によって制作された4部作へと進化してゆく過程の途中の作品である。
 ほぼ初セルフ・プロデュース作品だけあって、完成度はそれほど高くない。アラも目立つ。ステレオ・タイプのモータウン・サウンドからの脱却を目指したはいいけど、差別化への想いが先走りし過ぎた感もあって、まだ技術が追いついていない面も多い。
 ただ、その溢れ出る剥き出しの野心の裏づけとして、それを補って余りあるメロディ・メーカーとしての才能、そして生来の卓越したリズム感が、Stevieにはあった。

 ちょうどこの頃からクレジットに登場するのが、当時付き合っていたSyreeta Wright。
 ピッツバーグの片田舎出身のコーラス・ガール上がりの女性と、幼少から天才少年としてチヤホヤされていた青年との間にどんな接点があったのか、今となってはわかりかねるけど、デビュー当時の彼女の写真を見てみると、コケティッシュながら野心の強そうな表情が見え隠れする。
 とは言っても、ただ野心むき出しの、何のとりえもない女だったわけではない。当時のサウンド・クリエイターがこぞって彼女とのコラボを希望したのは、天性のウィスパー・ヴォイスに惚れ込むものが多かったせいもある。他の誰も真似できない、記名性の高いその歌声は、業界内だけでなく、一般のリスナーへの求心力も強かったため、Stevieとの関係解消後も音楽活動を継続、時にゴシップ記事にまみれることもあったけど、基本コンスタントなリリース・ペースでの活動を続けていった。

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 彼女がまだ若いStevieを籠絡した、というのが後世の定説となっているようだけど、イヤイヤ、なかなかどうして、Stevieもヤリ手という点においては、彼女と引けを取らないはずである。
 いくらSyreetaが「魔性の女」だったとはいえ、Stevieもまた、幼少の頃から芸能界にドップリ浸かっていた男である。そりゃハンパないくらいの女遊びは経験済みだろうし、並大抵の色仕掛けや脅しなんぞは、軽く鼻であしらってしまえるほどのしたかさは持ち合わせている。何しろ、あの百戦錬磨のBerry Gordyと契約条件について五分で渡り合った男だ。単なる男女の関係の延長線上でパートナーになったのではない。彼が動くというのは、それなりの意味があったはずだ。
 まぁ性欲半分だったとしても、その天性の美声、また南部の片田舎から手段を選ばず這い上がってきたハングリー精神には、思うところ、共感する部分もあったのだろう。

 その後の彼女のキャリアを見ても、Leon WareやBilly Prestonなど、時代ごとに才能のある男を引き寄せてタッグを組み、Stevieほどではないにしても、それなりの売り上げのアルバムを残しているのだから、こういった吸引力もまた、一つの才能だろう。

 で、このアルバムは全曲Syreetaとの共作名義になっているのだけれど、まぁどの辺まで彼女が介入していたのかはわかりかねるけど、二人で一緒にスタジオに籠ってイチャイチャしてるうちに、何となくでき上がっちゃったのだから、Stevieへのメンタル面において、何らかの助力はあったのだろう。
 
 そう考えると、何だかJohn Lennonとオノ・ヨーコとの一連のアルバムを想像してしまう。
 あそこまでぶっ飛んじゃいないけどね。


青春の軌跡
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1. Look Around
 当時においての最新アイテム、クラヴィネットで奏でられるフーガ調のオープニング。明らかに、従来の明るく華やかなモータウン・ソングとは一線を画している。
 


2. Do Yourself A Favor
 同じくクラヴィネットをリードに、今度は複雑なファンクのリズムに、エモーショナルなヴォーカルを乗せている。サビが従来のStevieのメロディだけど、楽器の数が少ない分だけサウンドに隙間があり、その空間がまたファンク・スピリッツを強調している。

3. Think Of Me As Your Soldier
 シンプルなバラード。Stevieのバラードの特徴として、あまりソウルっぽさが感じられないことが、良く取沙汰されているけど、ジャンルを設定しないで聴いてみると、スタンダードにもなりうる、時代に流されない曲である。
 これまでも”For Once In My Life””A Place in the Sun”など、普通にポップ・スタンダードとして成立してしまう曲をサラッと書けてしまこと、そしてそれが限定的でない、多くの人の支持を受けることは、大きな才能の一つである。
 
4. Something Out Of The Blue
 まるでCarpentersのようなイントロ、そしてメロディであり、ここが前述したように、ソウル・ファンだけでなく、一般の白人ポップス・リスナーからも歓迎された才能の賜物である。ほんと、アップ・テンポならRay Charles並みに重量感を感じさせるのに、このようなポップ・バラードをかけるソウル・アーティストはそうそういない。
 
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5. If You Really Love Me
 なんかオリジナル・ラブあたりが似たような曲を書いていた記憶があるけど、何て曲だったかは思い出せない。Syreetaのコーラスがエッセンスとしてうまく作用している。ほんと、コーラスとしての声質の特異性はバツグンである。
 ホーン・アレンジが秀逸なのだけれど、惜しいのが音質。今の耳で聴けば、ヴォーカル以外が奥に引っ込んでるバランスが古臭く聴こえてしまう。この頃はまだ音質にまでこだわっている感がない。

6. I Wanna Talk To You
 カクテル・ジャズっぽいオープニング、Ray Charlesのようなピアノ弾き語りが続くが、途中イコライザーで声を変調させ、デュエットぽく仕上げ、曲調も次第に変則ミディアム・ファンクに変化する。うん、なんか変な曲。

7. Take Up A Course In Happiness
 ボードヴィルが入った軽快なジャズ・ヴォーカル・ナンバー。この頃のStevie、判読ラッピングの使い方がホントうまい。ソウル要素は薄いのだけれど、いわゆる当時のWASP層には、このくらい薄めてやらないと濃厚で受け付けがたかったのかも。

8. Never Dreamed You'd Leave In Summer
 独特ながら、十分スタンダードになりえるメロディ・ラインだというのに、あまり知られていないのは、アルバム自体のセールス不振だったからか。
 ビルボード最高62位という成績は、平均20位前後のアベレージからしても、やや低め。契約更新の煽りを受けて、あまりプロモートされなかった、身動きが取りづらかったことも考えられるが、ちょっと惜しい名曲。
 


9. Sunshine In Their Eyes
 ラストは長尺6分のバラードで締める。アルバム終盤で似たような曲調のバラードが2曲が続くのは、構成上どうなのかと思うけど、あまり曲順などには意識的ではなかったのか。
 静かなバラードで始まり、途中、調子はずれの子供のコーラスが入るのは、希望を失った子供たちについて歌った曲なので、歌詞を知らなければ、何だこれ、と思ってしまう。最後は”Hey Jude”っぽく、みんなで希望を捨てないコーラスで終わる。



 いわゆる過渡期のアルバムであり、完成度云々を語れるものではないけど、とにかく自分自身ですべてを仕切り、すべての作業工程に目を行き届かせたかったのだろう。慣れないプロデュース・ワークに困惑する面もおおかったのか、後の4部作、さらに後年の「愛と平和の人」的キャラクターと比べても、まだ不安定な部分が多い。
 ただこのアルバム、Stevieの本格的なミュージシャンとしてのキャリアのスタートが生々しく記録されており、今となってはなかなか見ることのできない、無難な路線に走ることなく、真摯にサウンドを追求している若干20歳のソウル・マンの葛藤が見え隠れしている。
 多分、直接的には貢献していないけれど、ライナスの毛布的にStevieのテンションの安定に寄与したSyreetaの尽力も、相当だと思われ。

 まとめて聴いてみると新しい発見もあったので、Stevieについてはまた次回。




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北海道の中途半端な田舎に住む、そろそろアラフィフ男。ほぼ週1のペースで音楽ブログ更新中。節操ない聴き方と思われてるけど、自分の中では一貫してるつもり。 最近は蔵書の整理がてら、古い本を再読中。ジョン・アーヴィングから始まって、フィッツジェラルドやゾラ、モームなど、いわゆる古典の復習中。いつになったら終わることやら。新刊読めねぇや。
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