好きなアルバムを自分勝手にダラダラ語る、そんなユルいコンセプトのブログです。

フレンチ・シャレオツ系ジャズ・ファンク情熱系 - Electro Deluxe 『Play』

folder 地元フランスを中心に活動しているため、いまだ日本ではそれほど話題に上らない、なのに俺的には盛り上がってる現役ジャズ・ファンク+ちょっぴりエレクトロ風味とラップも少しのバンド、Electro Deluxe。今回紹介するのは2010年リリース、3枚目のオリジナル・アルバム。

 どのバンドもそうだけど、デビューから一貫したコンセプトを持って活動していたとしても、ターニング・ポイントが訪れることがある。短命のバンドならともかくとして、それなりにライブの数もこなし、アルバム・リリースも定期的に行なっていたら、メンバーの出入りによって新しい血が導入されたり、また不動のメンバーでも外部活動や嗜好の変化によって、主旨が変わることも多い。
 Electro Deluxeもその例に漏れず、当初はGael Cadoux(key)とThomas Faure(sax)を中心とした、スタンダード・ジャズ+エレクトロorラップというサウンド・コンセプトでスタートした。まだホーン・セクションが正規メンバーじゃなかったため、今ほどファンク臭は少なく、曲によってはまんまアシッド・ジャズっぽくなってしまうという、今とは似つかないスタイルでの活動だったのだ。
 当時はリード楽器がキーボードとサックス1本だったため、サウンドの幅を広げるにも限界があったのと、まだそれほどライブ活動に積極的でなかったため、バラエティを持たせる苦肉の策で、スタジオ・ワークの比重が大きかった。
 
 ただ、それでも地道にコンスタントに活動を継続してゆくと、フランス国内でもそこそこ好評を期すようになり、口コミによってライブ動員も増えてオファーが増えてくる。それに伴って同好の士が集うようになったのか、いつの間にかホーン・セクションが正規メンバーになり、ゲスト・ヴォーカルも増えてきた。あれよあれよと言う暇もなく、いつの間にか大所帯となって、ついには『Electro Deluxe Big Band』と称して、総勢18名でのライブ&アルバム・リリースにまで至った次第。
 無理に背伸びすることなく、地道にバンドの地力をつけてきた結果なのだろう。

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 で、いろいろ乗り越えてきた末にリリースされたこの『Play』では、それまでのアシッド・ジャズ的クラブ・サウンドはすっかり後退し、メインとなるのは重厚なリズム・セクション、それに絡むホーン・セクションの音の壁、そして多彩なゲスト・ヴォーカル陣による、フィジカルなグルーヴである。これまで人員的・予算的に苦肉の策だったエレクトロ風味で間に合わせる必要がなくなり、ほぼ自前の生音で賄えるようになったのだから。

 このころはまだ正式メンバーではなく、あくまでゲスト・ヴォーカルの一人という扱いだったJames Copleyが数曲でプレイしているのだけれど、やはりこの人が一番インパクトが強い、ていうかアクが強い。Ben L'Oncle Soul、Gael Fayeなど、個性的なラッパーを相手取って、また地力の強いバンド・セクションにも一歩も引けを取らず、あの暑苦しい顔・アクションで一際存在感を放っている。
 思えば、このCopleyとの出会いというのが、多分バンドとしてのターニング・ポイントだったのだろう。
 
 アシッド・ジャズのサウンド・フォーマットはもともと、クレヴァーな黒人女性ヴォーカルとの相性が最も良く、Electro Deluxeもデビュー当初はインストor女性ヴォーカル・ナンバーの二本立てをメインとしてやってきたのだけれど、アシッド・ジャズに徹するには、バンドの個性が強すぎたのだろう。女性ヴォーカルを引き立たせるため、演奏陣が必要以上にかしこまってしまったあまり、無難なプレイでお茶を濁してる場面も見受けられる。
 彼らの持ち味はビッグ・バンドでこそ発揮されるものだし、その音の壁に負けないヴォーカルは、シャウト型の女性ではなく、多少テクニック的には難がありながら、熱血バカ的なタイプの方が合うのだろう。狭いスタジオの中でリズム・パターンの打ち込みに精を出したり、ヴォーカルのニュアンスに合わせたトラックの修正など、彼らの性ではない。

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 で、このアルバム、ヴォーカル・ナンバーありラップ・ナンバーありインストありという、2ndまでの流れを引き継いだ構成になっているのだけれど、やはりどうしても注目してしまうのが、Coplayのプレイ&パフォーマンス。
 写真を見てもらえれば一目瞭然だけど、一般的な二枚目ではない。味のある表情といった方がいいかもしれない。で、なんとなく想像できるように、うまく立ち回れるような人ではない。どちらかと言えば胡散臭い感じが漂う、はっきり言って不器用な人である。
 テクニックがないとは言わないけど、そういったテクニカルな面で注目されようとは思っていないはずである。むしろ常にハイパーMAXなテンションで突っ走り、汗だくになり、唾を飛ばし、大ぶりなアクションによって、その膨大なカロリー消費量が観客を魅了してしまう、そういった人である。なぜか知らねど満ち溢れてくる「根拠のない自信」のようなものが、どうにも最初はアクが強くて受け入れづらいのだけれど、いつの間にかクセになってしまって、終いには応援せざるを得なくなってしまう。

 近年のフランスのアーティストとして俺が知ってるのは、せいぜいDaft Punkくらいだけど、多分ほとんどの人は俺と同レベル程度の知識だと思う。フランス出身であるという以外、彼らとの共通点は見いだせないのだけれど、そのフランス繋がりによるものなのか、サウンドからジャケットからフォト・セッションからPVから漂うシャレオツ感はハンパないものがある。やはりフランス人、頑固で排他的な性格だけれど、センスだけは相変わらずキレッキレである。


プレイ
プレイ
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01.Play 

02.Please Don't Give Up 
 ジャジーでニュー・ソウルの匂いさえ感じさせるメイン・ヴォーカルは、フランスのモータウンからデビューしたBen L'Oncle Soulによるもの。当時はまだデビュー前だったけど、すでに充分な存在感を放っている。
 やはり演奏が最高。ヴォーカルに合わせたジャジー・ヒップホップの流れなのだけれど、シンプルなバンド・セットながら、グルーヴ感が凄い。



03.Black And Bitter 
 ここで我らがCopley登場。ちょっとアイドリング気味なしっとり大人しめのナンバー。この時期のサウンドは、まだジャズ8:エレクトロ2くらいの配分で構成されているため、エフェクトの部分がヴォーカルのダイナミズムをちょっと減じている。いやカッコイイのだけれど、彼にはもっとメチャクチャに歌い上げてほしい。

04.California 

05. Between The Lines 
 このアルバムのハイライト的楽曲。こちらもBen L'Oncle Soul参加だけど、同じくフランスを代表するヒップホップ・バンドHocus Pocus の20syl(ヴァンシールと読むらしい)によるラップが前面に押し出されている。こちらもElectro Deluxe同様、生音でのライブが評判を呼んでおり、互いの共通点は多い。
 ネチッこいBenのヴォーカルは、正統なニュー・ソウルの流れを汲んだスタイルに徹しており、攻撃的なラップとジャズとファンクを絶妙にブレンドしたサウンドとのギャップが心地よい。ライブだとCopleyが歌っているのだけれど、会場が一体となるのがわかる、ほんと盛り上がる曲。



06.Let's Go To Work 
 ラップ・パートはフランスのヒップホップ・バンドMilk Coffee and SugarのGael Fayeという若手。Copleyによるヴォーカル・パートは英語なのだけれど、ラップはフランス語なので、もうさっぱりわからん。でもこの何ともミスマッチ感は、これはこれでいい感じ。
 導入部から中盤まではごく普通の良質なジャズ・ファンクなのだけれど、終盤になるにつれて、どうにもプログレ的な混沌とした展開になるのが、いつもながらスリリング。



07.Mousse 

08.Where Is The Love 
 ちょっとくぐもったスモーキーなヴォーカルを聴かせるBenに合わせて、気だるい感じのネチッこいスロー・ファンクをプレイするバンドがいい仕事。
 しかしこのBen、ほんとこのアルバムでは大活躍しており、曲調に合わせて様々な表情を使い分けている。ソロ作品を動画で見てみたのだけれど、レコード会社のせいなのか、どうにもポップ・ソウル的な売り方なので、ちょっともったいない。こっちの路線の方がずっとクールなのにな。ま、でも売れないけどね。

09.Old Stuff 

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10.Fine 
 後にレコーディングの常連となるNyr Raymondをフィーチャーした、ジャズ寄りのナンバー。どことなく秋のフランスの散歩道を連想させる。とても映画的な情景を喚起させる、地味だけれどイマジネーションの広がりやすい曲である。

11.Talking About Good Love... 
 もはやライブでは定番のアッパー・チューン。疾走感に溢れながらタメがあり、グルーヴ感タップリというのは、ジャズ・ファンク系のナンバーでは貴重。こちらも前曲同様、Nyrをフィーチャー。日本ではほとんど知られてないし、俺も詳しくはほとんど知らないけど、味のあるシンガーである。



12....Talking About Good Love 
 ややSlyっぽさも感じさせる、シンプルなバッキング、凝ったリズムの小品。音がスカスカながらもファンクっぽさを感じさせるのは、どことなくZappを連想させる。タイトルは同じながら、まったく対照的な印象を感じさせる2曲。

13.Chasseur de tetes 

14.Sorry 
 12.の空間を活かしたファンクと、10.のメロウ・ジャズとのいいとこ取りで作られたラスト・ナンバー。ファンクにしてはお行儀よく聴こえてしまうのは、フランス訛りの英語だからと言えるし、ジャズにしてはエモーショナルさがちょっと、と言えるのは、こちらもやはり上品さが漂うため。




 なので、次回作で大きくCopleyをフィーチャーしているのは、そういった理由もあるのだろう。あそこまで豪快でわかりやすいダイナミズムがないと、ライブ映えがしない。
 演奏のニュアンスを聴かせるのではなく、もっと奥底から湧き出る熱い想いをたぎらせて、無様にヨレヨレになりながら歌い踊りプレイする、そんな姿が人の心を動かし、そして笑い涙するのだ。

 オフィシャル・サイトでツアー予定を見ると、4月にチョロっとスイスを廻り、またずぅっとフランスをくまなく廻り、でちょっとドイツに顔を出した後、またフランスのドサ廻り、という相変わらずのマイペース。何しろ19人の大所帯だけあって、そんな遠くへも行けないのだろう。取りあえずバンドは維持できているようなので、存続してるうちは、まだ日本に来てくれる望みもあるものだ。
 いやほんと、そろそろ来ねぇかな。


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帝王Miles最後のご乱心? - Miles Davis『Doo-Bop』

folder Miles最晩年の異色作であり、ごく狭い内輪的ジャズ村の中では継子扱いにされている、いまだまともな評価を与えられていない、このアルバム。ちょうど死後に沸き起こったレア・グルーヴ・ムーヴメントによって、それまでは「Milesご乱心期」と位置付けられていたエレクトリック期の作品も、クラブ~ヒップホップ方面からの猛烈なリスペクトによって、きちんと再評価されているというのに、最もクラブ・シーンに接近したこの作品は、いまだ地味なスタンスのままでいるという皮肉。

 一応「遺作」という扱いでリリースされてはいるものの、制作中にMilesが急逝してしまったため、プロデューサーEasy Mo Beeが、残りのマテリアルをどうにかこうにかしてかき集め継ぎ足して膨らませて完成に至った、という経緯がある。なので、Milesの意図が充分反映されているのかといえば微妙なので、そこがファンの間でも何とも言えない評価となっているのだろう。
 ただ、これまでの経緯を辿ってみると、引退前はいつものTeo Maceroに、そして復帰後もMarcus Millerに編集作業を投げっぱなしだったので、プロデューサーが変わっただけの話である。もともと過去を振り返るのが大っ嫌いな人だったので、製作後のチェックも行なわなかったし。

 一応、モダン・ジャズもお勉強的にひと通り聴いてきて、どうも馴染めなくてしばらく離れていて、で、近年のジャズ・ファンクやレア・グルーヴ系を経由した耳だと、俺的には単純に「ジャジー・ヒップホップやジャジー・ラップにパクられまくった大元が、逆にパクり返した傑作じゃね?」と思ってしまうのだけど、メイン・ストリーム・ジャズの尺度で計ると、どうもそんな感じでもなさそうである。
 このコンセプトを基点として、もうアルバム2、3枚かけて膨らませてゆけば、ジャズにもヒップホップにも当てはまらない、もっと面白いサウンドが展開されたと思うのだけど。

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 Miles自身としても、まさかこれがキャリアの締めくくりになろうとは思ってなかったはず。直接の死因は肺炎だとか脳梗塞だとか言われているけど、それ以前に積年の不摂生がたたって、既に身体はボロボロだったのだろう。
 実際、迫り来る死期をある程度意識していたのか、それまで帝王として君臨し、気むずかし屋の代表だったはずのMiles、晩年、つまり『Doo-Bop』レコーディング直前の課外活動は、ちょっとこれまでの路線とは大きく逸脱している。

 Michael JacksonやCyndi Lauperのヒット曲をカバーしたあたりから、その傾向はあった。復活後のMilesは、メインの活動と並行してポピュラー・シーンとのコラボも頻繁に行なっているのだけれど、オファーを受けた基準が結構な割合で支離滅裂である。
 Chaka Khanくらいなら、まだ理解の範疇だけれど、どこに接点があったのかわからないScritti Polittiとのレコーディングとなると、ほんとどうしちゃったの?と聞きたくなってしまう。
 未見だけど、サントラを手掛けた映画『Dingo』にも、カメオではなく、ストーリーにガッツリ絡む役で出演までしているし、この時期はジャズ村では収まらない活動を展開している。そういった新しいフィールドでの活動を精力的に行なっている反面、こちらも接点がありそうで、実はこれまでほとんど面識のなかったQuincy Jones仕切りのもと、以前なら絶対やらなかったGil Evans時代のナンバーをステージで再現するという、どう見たって金がらみとしか思えない企画にも参加している。

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 もともと世間のトレンドを目ざとく察知し、その時その時の流行りものを取り込みたがる人である。それまでスーツ姿でステージに上がることが暗黙のマナーとなっていた黒人エンタテインメント界において、60年代末に勃興したフラワー・ムーヴメントに触発されると、プライベートだけにとどまらず、ステージ衣装ももろサイケデリックに変貌し、それに伴うかのようにSlyやJBらが編み出したファンク・サウンドに影響を受けて、リズム主体のエレクトリック期に突入した。
 これまで対岸の出来事に過ぎなかったロック・フェスティバルにも頻繁に出演するようになったのは、狭いジャズ村だけにとどまらず、もっと多くのヒップな若者層へ販路を広げる目論見もあった。ちょうど所属していたCBSがロック/ポピュラー層への拡販に力を入れていたことも、理由のひとつではある。

 ただ「Miles Davis」というフィルターを通すと、どのサウンドも彼のテイストが濃くなってしまい、結局は「Miles Davis」というオンリー・ワンの音楽に仕上がってしまう。彼としては単純に、ただ若者が自然に踊り出す音楽を作ったつもりなのに、出来上がってしまうのは、混沌とした複雑なリズムの曲ばかり。今でこそDJ的見地から、素材としてのリズム・サンプルとしての需要はあるけど、当時のティーンエイジャーらに、この曲で「踊れ!!}というのは、どうにも無理がある。「何で若い奴らはみんな、俺のアルバムを聴かないんだっ」と不満を漏らすその姿は、まさしく裸の帝王さながらである。
 ジャズの帝王として長らく君臨しながら、決してその地位に甘んずることなく、常に若者層へ向けて、若干フォーカスのズレたアプローチを行なってきたのが、Milesの軌跡である。そういった流れで見てみると、何も突然のご乱心状態に陥って、ヒップホップを導入したわけではないのだ。
 彼は常に時代の流れを読み、常人の一歩先二歩先を読みながら、キャリアを積み上げてきた。ただ、ベクトルがちょっとズレていただけなのだ。

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 Miles自らDef Jamにコンタクトを取り、活きのいい若手を誰か寄こしてくれ、と言ったのが、このプロジェクトの発端である。
 で、そこから紹介されたのが、前述したEasy Mo Bee。ヒップホップ方面はほとんど詳しくない俺も名前くらいは知ってたプロデューサーで、いわゆる職人的な人らしい。世間一般が思い描く「ヒップ・ホップ・サウンド」をまとめるのを得意とし、ビギナーでも受け入れやすいクセの少ないサウンドが特徴である。悪く言っちゃえば独自性は少なく、ヒップホップを深く聴き込んだユーザーからすれば、面白みは足りない、とのこと。
 ヒップホップ・シーンはほぼ表層的にしか知らない俺にとって、またMilesにとっても、ステレオ・タイプとしての彼のサウンドはわかりやすく、エゴが少ない分、これまでの自分のサウンドとの親和性も高かったのだろうと思われ。

 このアルバムでのMiles、通常のオリジナル・アルバムなら、もう少し自分のカラーが強いはずなのだけれど、何しろリーダーシップを発揮する前に亡くなってしまったので、Easy Mo Beeによるバランス感覚重視のプロデュースによって、そこまでエゴイスティックにはなってない。充分な長さのソロ・パートの録音マテリアルが少なかったため、短いフレーズをバランス重視で並べ、空白を過去作からの引用や自作トラックで埋める手法によって仕上げている。
 その苦肉の策が功を奏したのか、Miles独特のアクの強さがうまい具合に希釈され、皮肉にも聴きやすく踊りやすいアルバムに仕上がっている。Teo二代目ともいうべき、Easy Mo Beeの編集感覚が存分に発揮されたことは、もっと評価されてもいいはず。

 Miles自身もまた、当時最先端のダンス・ミュージックの担い手とのコラボによって、久し振りに現役感覚が甦ってきたのだろう。単発ではあるけれど、ここでは久しぶりに躍動感溢れる音色を奏でている。若い世代に支持され、踊り出さずにはいられないサウンドこそ、彼の求めていたものだったのだ。
 Marcus Millerもいいけど、あれは夜中にまったり聴き込むための音楽、自然に腰が動きステップを踏み意味もなくシャウトしてしまう音ではないのだ。


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1. Mystery
 ニュー・ジャック・スウィングやアシッド・ジャズで培われた手法を応用したリズム・トラックに、サンプリング的にMilesの咽ぶホーンが乗せられている。この辺はまだ前作までの流れが残っており、既存のファンでも受け入れられる余地はある。

2. The Doo Bop Song
 薄く流れるムーディーなシンセはKool & The Gang “Summer Madness”よりサンプリング。このサンプリングという技術自体が、メインストリーム・ジャズとはまず無縁である。そこにラップやフロウが付け加えられ、最後にMilesが仕上げ。Milesのペットの音がなくても、これはこれで成立しそうなサウンドに仕上がっているけど、多分それじゃ中途半端な出来なのだろう。

3. Chocolate Chip
 で、タイトル・ナンバーよりは俺、こっちの方が好き。ストリート感覚に溢れたバック・トラックに乗せてクールに吹きまくるというコンセプトとしては、こちらの方がハマってるんじゃないかと思う。ジャズ・ファンクでしかもインスト系が好きな人なら、こちらの方がオススメ。
 


4. High Speed Chase
 こちらはゴーゴー系で、ストリート感覚を演出するため、街の喧騒をエフェクトとして使用。タイトル通りリズムが速いため、これまでにないくらいMilesも必死の形相でついて行っている感じ。
 この曲の素材として使用されているDonald Byrd “Street Lady”、70年代初頭にMizell Brothersプロデュースによってリリースされた、ジャズ・ファンクの名曲。Milesがドロドロのファンクをプレイしている頃、もっとポップな形で表現していたアーティストが同時代にいたことは、もっと知られてもいい。

5. Blow
 JBをサンプリングすれば、どのトラックもそれなりにアベレージが上がってしまうという、不変の法則の一例。このリズムにMilesが惚れ込んだのも頷ける。
 エレクトリック期はもっと複数のリズムをごった煮にしていたため、カオス度は増したけど、純粋なリズムの強度は逆に減衰していた。ここまでストレートにサンプリング、要するにパクってしまえば、相乗効果が絶大となる。
 しかしカッコイイよな、これ。



6. Sonya
 このアルバムではあまり目立ってなかったベース・ラインが、一番カッコイイ曲。薄くピアノが入るとこの手の曲って、すぐアシッド・ジャズっぽくなってしまう。まぁそういったのが俺は好きなのだけど。
 そうか、一番フュージョンっぽいから違和感が少ないのか。

7. Fantasy
 重厚なリズム・トラックに合わせたのか、珍しくミュートを外して吹いているMiles。モード・ジャズ以降は、ほぼミュートか電気増幅での音色がほとんどのため、こうしてオープンで吹くスタイルはかなり貴重。サウンドに負けない音を出そうとしたんだろうか。
 中盤で挿入されるラップも適度にクール。

8. Duke Booty
 こちらも珍しく、ホーンをダブルで録音。ていうか編集のなせる業か。
 延々とクールなループ・トラックに乗せて、まるで歌うように咽び吹くMiles。若手とのレコーディングが楽しかったのか、饒舌で楽しげなMilesの姿が目に浮かぶ。

9. Mystery (Reprise)




 この路線を続けていくつもりだったのか、それとも単なる大御所の気まぐれだったのか、今となっては知る由もないけど、残された音の端々には、今後の大まかな方向性や可能性が散りばめられている。ジャズの立場から見ると、あまりに異端なサウンドだし、ヒップホップの立場からだと、それはあまりにビギナー向けであり、食指を動かすほどのものではないのだろう。  ちなみにMiles、これ以前にもファンク系のミュージシャンと接触してセッションを行なっている。  その名はPrince、あの人である。  Prince主導で仕切られたこのセッション、流出音源はほぼ1曲のみで、あとはほとんどまともな形にならず、消化不良のまま、自然消滅してしまったらしい。JB~Sly直系の天才的ファンク・ミュージシャンであるにもかかわらず、あまり彼の事を買ってなかったようである。  思うに、多分いけ好かない奴だったのだろう、Milesにとっては。  そう考えれば、納得がいく。



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80年代ロキノンでは正義の象徴だった - Style Council 『Cafe Bleu』

folder ガンコ親父英国代表であるPaul Weller、思い立ったら後先考えず突っ走るその性格は、デビューの頃から終始一貫している。JAM→Style Council→ソロ、どのキャリアにおいても大きな成功を収めたにもかかわらず、あまりそういったことに関心はないらしく、次のキャリアをスタートさせるのに躊躇するのを見たことがない。一旦活動に区切りをつけ、新たな形態で再スタートを切る時も、ほんと潔く行なっている。それまでにさんざん試行錯誤などして確立した音楽スタイルにもかかわらず、いとも簡単にリセットしてしまうのは、なかなかできることではない。
 特にJAM、ほんと人気絶頂の時に解散を宣言するなど、よほどのポジティヴ・シンキングか独裁者でしかありえない。まぁこの時もそれほど大事に考えていたわけでもなく、ただ単に純粋に新しい音楽がやりたかった、という極めてモッズ・スタイルに則っての行動である。

 そういったわけもあって、常に前向きの人であるがゆえ、過去のヒット曲は頑なにプレイしなかった人だったのだけど、ここ数年はさすがに丸くなったのか、ベスト盤やライブにおいても頻繁に過去の曲を取り上げることが多い。
 21世紀に入ってからのWellerの音楽的傾向としては、「進化」というよりは「深化」、斬新な未知なるサウンドの追求ではなく、これまで培ってきたクオリティの磨き上げの方に興味が向かっている。キャリアの長いミュージシャンなら誰でもそうなのだけれど、今さら目先の流行に惑わされるほどのキャリアではないし、また年齢的な点から見ても、残された時間が潤沢にあるわけではないことも、無意識の中にあるのだろう。

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 で、リリースされた当時、往年のJAMファンからは酷評され、アーバンでトレンディでスタイリッシュでスノッヴな連中からは大絶賛された、通称スタカンの本格的なファースト・アルバムが、これ。。実際はデビュー時にミニ・アルバムを発表しているので、デビューというには微妙なスタンスのアルバムでもある。そういった事情があったにもかかわらず、純正パンク・モッズ・ファン以外の幅広いユーザーを獲得したことによって、UK最高2位、ゴールド・ディスクに輝いている。
 ほぼ同時期に出てきたEverything But The Girlあたりのファン層と被ることが多く、ちょうどパンクの刺激的な音に疲れた層が、癒しのサウンドを求めてこの方面に流れて来たものだろう。

 パンク~ニュー・ウェーヴの流れでデビューし、WhoやSmall Facesから連綿と続く正統派モッズ・スタイルの3ピース・バンドとして、特にイギリス国内では絶大な人気をキープしていたJAM。Wellerの音楽的成長、方向性の変化によって、後期はモッズよりさらに遡った、60~70年代ソウル・ファンク系のサウンドに傾倒してゆく。音楽に対してシリアスな純正モッズ・バンドとしては当然の流れなのだけれど、あくまでパンク・バンドという枠組みの中で認知されているJAMという大看板では、音楽的冒険にも限界がある。メンバー間との実力・人気の格差による確執はもちろんのこと、彼らを取り巻く環境は巨大になり過ぎて、小回りが利かない状態になっていた。
 そういった現状に甘んじて、過去のレパートリーの拡大再生産に努めれば、Rolling Stones的スタンスでの活動スタイルもアリだったんじゃないかとも思えるけど、それを潔しとしなかったWeller、ほんと人気絶頂の最中に解散宣言を出す。そうすることが、彼には必要だったのだ。

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 で、一回すべての活動をリセット、JAM後期から構想のあった、ソウル・ファンク路線に加えて雑多なジャンルをミックスした音楽を実現するため、以前より交流のあったDexys Midnight RunnersのキーボーディストMick Talbotを迎えた新バンドStyle Councilが始動する。
 大方の予想は、それこそ後期JAMの延長線上、ソウル・ファンクをベースとした硬派なダンス・ミュージック系だったのだけれど、蓋を開けてみるとあらビックリ、微妙に別の方向性だったことに世間は当惑した。一応、ソウル・ファンク系のテイストやリズムはベースとしてあったのだけれど、彼らの雑食性はその範囲にとどまらず、ボサノバやジャズ、エレクトロ・ポップまで入ると、思惑とはかなり違ってくる。

 俺の世代にとって、彼らとのファースト・コンタクトはJAM解散後であり、単純にオサレ・バンドとして、そして通好みのバンドとして、一定の評価は得ていた。特に日本において彼らの評価は高く、あのロキノンでも一目置かれていた。今じゃ信じられない話だが、マクセルのカセット・テープのCMにも起用されていたくらいだったので、お茶の間での認知度もそこそこあったのだ。

 多分Wellerのコンセプトだったと思われるのだけれど、初期の彼らはシングル中心の活動であり、よってリリースのペースも早かった。当時は特にリミックスを施した12インチ・シングルが全盛で、彼らに限らず無数のバージョン違いが世にはびこっていた。当時、輸入盤をマメにチェックしていた者がどれだけいたのかは不明だけど、すべてのアイテムをコンプできた日本人は、ごく少数だったはず。
 
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 速報性が一つの利点であるシングルをハイ・ペースでリリースし、ある程度曲が溜まったらアルバムとしてまとめる、という流れ、これが次作『Our Favourite Shop』まで続く。こういった理想的なサイクルと、バンドとしてうまくまとまっていた状態とは、ちょうどシンクロしている。Wellerのビジョンと世間とのニーズがうまく一致していた、幸福な時代である。
 ただ、こういったサイクルはシステムとしては完成され過ぎているため、一度走ると簡単に止めることはできない。マグロの回遊と同じで、止まる時は死ぬ時なのだ。
 その後、彼らも2枚目以降は循環システムがうまく機能しなくなり、紆余曲折を繰り返した挙句、自家中毒のジレンマに陥ることになるのだけれど、このアルバム『Café Bleu』は、そういった杞憂もない頃、幸せな時代の作品である。


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1. "Mick's Blessings" 
 カテゴリー的にはロックなのに、オープニングはMickによる軽快なブギウギ・ピアノのインスト。当初のコンセプトとして、Style Councilとは既存のバンド・スタイルとは違って、今で言うユニット形式、既存メンバーにとらわれない、幅広い音楽性を強調していた。軽いジャブとしては有効。

2. "The Whole Point of No Return" 
 で、次もロックとはかなり真逆のベクトル、柔らかなセミ・アコを奏でるWellerの、これまたソフトなヴォーカル。リズムを抜いたボサノヴァ・タッチの曲なのだけれど、終盤に向かうに連れて、次第にヴォーカルに熱がこもって行くのがわかる。

3. "Me Ship Came In!" 
 次はラテン・ナンバー。こちらもインストで、まるでキャバレーのビッグ・バンドのよう。いくらロックから遠く離れたいからといって、ちょっと極端じゃね?って気がする。無理やり幅広いジャンルを網羅しようとしてねじ込んだようなナンバー。う~ん、まぁブリッジ的な曲だけれど、このアルバムはとにかくブリッジが多い。

4. "Blue Café" 
 こちらもスロウなジャズ・ギター的なインスト。同時代で行けば、Durutti Columnの路線にとても近いものがある。ポール・モーリアのようなベタなストリングスに乗せて、これまたロックと正反対のベクトルへ無理やり向かおうとするWellerのスノッブ振りが、今となっては何か微笑ましい。

5. "The Paris Match" 
 前年に先行シングル的に、”Long Hot Summer”との両A面でリリース済み。今思えば最強タッグである、初期スタカンではなかなかのキラー・チューン。これまたスローなジャズ・ヴォーカル・タッチで、ヴォーカルもご存じEverything But The Girlの歌姫Tracey Thornが担当。こういったタッチの曲は、やはりWellerのスタイルに合わず、それを自覚してもいたのだろう。
 JAM時代にこの曲をやろうとしても、ヴォーカルが自身であるという縛りから抜け出せず、ここまでのクオリティでは仕上がらなかったはず。ここが、何でもフロント・マンがメインを張らなくてはならないバンドの宿命から解き放たれ、適材適所にメンバーを配置できる、フレキシブルなユニットとしての利点。
 あまりにアンニュイでトレンディな世界観ゆえ、日本でもこの曲に影響を受けて同名のバンドが結成されたのは、有名な話。
 


6. "My Ever Changing Moods" 
 引き続きキラー・チューン、UK5位、USでも自己最高である29位にチャート・インした、こちらも初期スタカンを象徴する名曲。ピアノのみを配したシンプルなバッキングに、エモーショナルなWellerのヴォーカルが乗るのだけれど、落ち着いた曲調にもかかわらず、こめかみに血管を浮き出させたWellerの横顔が思い浮かぶよう。
 本人的にも会心の楽曲だったらしく、後にアップテンポのロック・ヴァージョン、また映画のサントラ用にリアレンジされたビッグ・バンド・ヴァージョンも存在する、様々な表情を見せる曲でもある。



7. "Dropping Bombs on the Whitehouse" 
 タイトルだけ見るとやたら攻撃的で不穏なイメージがあるが、実際のところは軽快なジャズ風のインスト。ほぼギターの出番は皆無なので、こんな時、Wellerが何をしていたのかが、ちょっと気になる。多分、スタジオ・セッションを横目で見ながら、ブースの隅っこ辺りで邪魔にならないように踊っていたのだろう。

8. "A Gospel" 
 テクノとファンクとラップとをグッチャグチャにミックスして、いびつな形のまんま仕上げた曲。ちなみにここでWellerは珍しくベースを担当、ヴォーカルを取っているのは、Dizzy Hiteというラッパー。今にして思えばスタカンとしてリリースする必然性を感じないのだけれど、やはりWellerの意向で、幅広い音楽性をアピールしたかったのだろう。Council(評議会)というからには、一つのジャンルに固執するのではなく、グローバルな視点が求められるのだ。

9. "Strength of Your Nature" 
 こちらはWeller、Dee C. Lee共にヴォーカル参加、前曲同様、ジャンルを飛び越えたダンス・ミュージックなのだけれど、ノリとしてはこちらの方が良い。特にファンク色の強いナンバーなので、これはプレイしている方も楽しいはず。
 この路線はWellerも気に入っており、このサウンドをもっと深化させたのが、完成直後はレコード会社よりリリース拒否、10年以上経ってからようやくリリースされた『Modernism: A New Decade』に繋がってくる。ハウス・ビートの要素が従来ファンには拒否反応を示したらしいのだけれど、俺的にもこのくらいのファンク加減がしっくり来る。

10. "You're the Best Thing" 
 夜景を望むこじゃれたバーにも、また延々と続く海岸線のドライブにも、柔らかな木漏れ日の差し込むオープン・カフェにもフィットする、それでいてきちんとロックを感じさせる、まったりとはしているけれど、不思議な感触の曲。UK5位は妥当だけれど、USでも76位まで上がったのは純粋に、そんな曲自体の魅力によるもの。



11. "Here's One That Got Away" 
 10.同様、Wellerのファルセットとフィドルが印象的な、軽めのネオ・アコ・タッチの小品。この手のソフト・サウンドのわりには、意外にドラムがドスバスしてリズムが立っている。この辺がJAMのアコースティック・ヴァージョンといった趣きで、旧いファンにも受け入れられやすい。

12. "Headstart for Happiness" 
 この頃のスタカンは要所要所でDee C. Leeをフィーチャーしており、特にこの曲ではコーラスにとどまらず、Wellerと五分でのデュエット。初期コンセプトに則って、Wellerのワンマン・バンドではなく、曲調に合わせたサウンド設定、メンバー配置を行なうことによって、バラエティを持たせている。言うなれば、Style Councilという大きな枠組みの中で組まれたコンピレーション・アルバムが、この時期には実現している。

13. "Council Meetin'" 
 最後はMickのハモンドを大きくフィーチャーした、グル―ヴィーなインスト。JAMでは実現できなかった構成であり、凝り固まった現状を打破するという意味では、このアルバムは充分パンク・スピリットに満ち溢れている。




 これだけハイ・ソサエティさに満ちて、シャレオツ業界人に消費され尽くされたアルバムを作りながら、ライブでは一転、これまでのJAM時代と変わらずシャウトしギターを弾きまくり汗を掻き唾を飛ばしシャウトしまくっていたWellerの潔さは、同世代のアーティストの中でも群を抜いていた。
 ClashとPILが自家中毒を起こして袋小路に嵌まりつつあるのを横目で見ながら、逆にパンク・スタイルにこだわることはダサいことであると一蹴し、敢えてロック以外の可能性を追求するその姿勢は、反語的にロックな姿勢でもあるのだ。

 なんか最後、ロキノンの原稿みたいになっちゃったな。


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北海道の中途半端な田舎に住む、そろそろアラフィフ男。ほぼ週1のペースで音楽ブログ更新中。節操ない聴き方と思われてるけど、自分の中では一貫してるつもり。 最近は蔵書の整理がてら、古い本を再読中。ジョン・アーヴィングから始まって、フィッツジェラルドやゾラ、モームなど、いわゆる古典の復習中。いつになったら終わることやら。新刊読めねぇや。
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