好きなアルバムを自分勝手にダラダラ語る、そんなユルいコンセプトのブログです。

少年のように無邪気に笑える大人でい続けることは、とても難しいことだと思う - 佐野元春『No Damage』

 1983年にリリースされた、佐野元春4枚目のアルバム。当時、中学生だった俺の周りでは佐野元春の存在自体、知ってる者は誰もいなかったので、今回改めて調べてみて、4週連No.1を獲得していたことは、ちょっとビックリ。まさかそんなに売れてたとは思わなかった。ちなみに、年間チャートでも17位にランク・イン、トータル売り上げは36.5万枚に達している。
 ちなみにその年の年間チャート1位は『Flash Dance』のサントラ。ほぼ100万枚に迫る、ダントツのトップである。そういえばヒットしてたよな。
 
 前年の"Someday"やナイアガラ・トライアングルへの参加によって、先物買いの音楽ファンには多少の知名度はあったものの、当時、佐野元春は決してメジャーな存在ではなかった。北海道の片田舎の中学二年の周囲で流行っていたのは、オフコースかユーミンであり、あとは地元つながりの松山千春、ちゃんと聴いたことはないけど名前だけは辛うじて知ってる山下達郎くらいであり、元春の名前を知る者は誰もいなかった。少なくとも俺の周りでは、テレビの露出もなく、メジャーなヒット曲もない元春は、まだ知る人ぞ知る存在だった。
 
 現在の達観した表情というか、飄々とした物腰からは想像しづらいけど、デビューするまではいろいろ紆余曲折があった人である。バンドとしてポプコンに出場、独特のポップ・センスが評価されて、一応それなりの評価は得たけど、デビューするまでには至らず、バンドは空中分解、その後たまたま知り合った佐藤奈々子の制作ブレーンとして、音楽業界に足を踏み入れる。ブレーンといえば聴こえは良いが、要は何でも屋であり、デモ・テープ制作からマネジメントなど、ほとんどすべての付帯業務を一手に担い、その甲斐あってどうにかデビューにこぎ着けるけど、ほぼ同期デビューだった竹内まりやや杏里、尾崎亜美ほどのスター性・大衆性はなかったので、セールス的には苦戦、仕事でプライベートでこじれにこじれた挙句、男女の関係の破局と共にコンビは解消。ごく短期間、広告代理店のサラリーマンとして勤務、それと並行して作ってたデモ・テープが認められて、念願のソロ・デビュー、といった流れ。

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 Bruce SpringsteenやJackson Browne張りの熱いライブ・スタイルが口コミで好評を得、徐々に評判は上がって行ったが、大きなヒットを生み出すまでには至らなかった。
 当時の元春の歌詞の最大の特徴として、シーン設定のNowhwre性と英単語の多用が挙げられる。当時の日本人にとって、元春の歌詞世界は感情移入しにくく(現実に"NYから流れてきた寂しげなAngel"と接点のある日本人がどれだけいるのか?多分今もあまり変わらないけど)、まだまだ歌謡曲が元気だった時代において、そのバタ臭さを受け入れる余地は、あまりに少なかった。

 空気が変わったのは、大滝詠一との出会いである。ナイアガラ・トライアングルへのユニット参加を経て、飛躍的に世間の注目度が高まった。
 その絶好のタイミングでシングル『Someday』をリリース、同名アルバム共にスマッシュ・ヒットを記録し、ようやく一定のステイタスを築こうとした頃だった。
 
 そうした追い風の状況だというのにもかかわらず、元春は敢えて活動休止を宣言、単身NYに渡ることになる。
 前から考えていたのか、それとも周囲の急激な変化に戸惑いを覚えていたのか、ほんとのところは本人にしかわかりえないけど、このタイミングで日本に踏みとどまり、国内をベースに活動を続けていれば、日本のロック&ポップスの歴史も少し変わってたんじゃないかと思う。ベストテンの常連アーティストになっていたかもしれないし、バンド・ブーム以前の日本のロックの礎を築いてきたうちの一人であるからして、今頃サザンくらいのポジションにいたかもしれない。
 ただ、NYにて制作された傑作『Visitors』は作られなかっただろう。

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 NYへ発つ直前、ファンへの置き土産として残していったのが、ここまでの総決算としてまとめられたこのアルバム、『No Damage』である。ヒット・シングルが入ってるわけではないので、グレイテスト・ヒッツではない、とは本人の弁。
 
 レコード会社主導のベスト・アルバムとは違って、いわゆる契約消化的なものではなく、本人監修の元、きちんとしたコンセプトにのっとって制作されたアルバムになっている。本人としては認めないと思うけど、その後のキャリアにおいても重要な曲がてんこ盛りなので、ざっくりした初期ベストと考えてもいいんじゃないかと、俺は勝手に思ってる。
 レコード時代のA面/B面が、Boy’s Side/Girl’s Sideに振り分けられているけど、あくまで便宜的なものであって、それほど厳密なコンセプトに縛られているわけではないので、あまり深読みしなくてもよいと思う。もしかすると、元春自身ににしかわからないこだわりがあるのかもしれないけど、少なくとも俺的にはよくわかんない。


No Damage
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佐野元春
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1. スターダスト・キッズ
 Bruce SpringsteenとPhil Spectorの幸せな融合。一発目でこの曲が流れた瞬間、田舎の中学生にとっては結構衝撃だった。
 後年になって、この曲のオリジナル・ヴァージョン(今アルバム収録はリミックス・ヴァージョン。初出はシングル"Downtown Boy"のB面だった)を聴いてみたら…、なんかすっごくショボかった。いくらB面とはいえ、なんでこんなサウンドにしたのか、これが良いと本気で思っていたのか。ちょっとチープなガレージ・サウンドに憧れたのか。
 結果的にリミックスして大正解だった曲。

2. ガラスのジェネレーション
 初期の代表曲。ちょっとモータウンっぽい導入部から始まる、ポップ・ロックのお手本みたいな曲である。「つまらない大人にはなりたくない」というメッセージに、当時何万人ものティーンエイジャーが耳を傾けただろう。かつてPete Townshendが歌った「年取る前に死んじまいたい」というより、ずっと前向きな言葉だ。
 他にも「見せかけの恋ならいらない」「君はどうにもかわらない 悲しいけれど」など、必殺フレーズがボコボコ飛び出してくる、ほんと油断ならない曲である。

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3. SOMEDAY 
 ここまでほぼ曲間がなく、メドレー形式で曲が続く。アルバム本来のコンセプトである「パーティー・シーンでのBGM」として、このように疾走感のある構成は正解だと思うけど、当時の日本において、果たして実際にパーティー・シーンで使用した者がいただろうか?元春的には多分、アメリカン・グラフィティ的なシーン設定で制作したんじゃないかと思われるけど、そもそもそういったパーティー・シーンが存在したのか?という疑問も残るが、まぁそれはそれで。
 これもロック史にとどまらず、日本の歌謡史にも残る傑作。のちに元春自身述懐しているように、大滝詠一との出会いが大きかったと思われる。Phil Spectorサウンドを大々的に導入した、奥行きと厚みのあるサウンドは、当時の日本のロック・シーンでは結構画期的だった。テクノ・ポップに代表されるシンセ中心の音作りと逆行した、バンド全員でせーので音を出して構築してゆく手法は、すでにこの頃から時代遅れになりつつあったけど、結果的にこのアルバムのサウンドは後年まで残り、逆に当時のトレンドだったテクノ・ポップは時代の徒花として、風化し忘れられていった。
 
 「ステキなことはステキだと無邪気に 
       笑える心が好きさ」

 
 元春の歌詞の中で、一番好きなフレーズだ。今では45歳でヒネクレまくってしまった俺だけど、この言葉は俺の中で長く心に留まっている。


 
4. モリスンは朝、空港で
 地味なサウンドの曲で、こちらはシャッフルなリズムの、ちょっと不思議な感触のナンバー。アウトロ辺りからオフ気味に収録されている、ラウドに弾きまくってるギター・ソロが、ミスマッチ感を演出してるのがなかなか。
5. IT’S ALRIGHT 
 2枚目のアルバム『Heart Beat』に収録。疾走感というか、ほんとノリ一発のロックン・ロール・ナンバー。語呂と気分と思い付きで羅列した歌詞はロックン・ロール・クラシックへのオマージュであるため、まぁそんなに意味はない。意味なんてあるもんか、踊れ踊れ。
 
6. Happy Man 
 ドラムの音がモロ80年代なパーティー・ソング。こちらも何も考えなくてもよい、ほんとハッピーで楽しい曲。シングル・カットされたのも頷ける。売れなかったけどね。
 このアルバムのリリース当時、『ストップ!! ひばりくん!』という、今で言うBL系の先駆けだったマンガがあり、主人公のひばりくんがこの曲の歌詞を口ずさみながら原宿の街を歩いている、というシーンがあった。週刊少年ジャンプ連載だったので、それなりの影響力があった記憶がある。

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7. グッドバイからはじめよう 
 渡米前最後のシングルとなった曲。A面最後を締めくくる、これまでの喧騒とは打って変わって、ストリングスのみで構成された静謐なナンバー。余計な装飾を削ぎ落した、すごくシンプルな歌詞とメロディー、ほんの3分ちょっとの短い曲だけど、この時点での元春の集大成。何のギミックもテクニックも使用せず、ただ純粋に曲のクオリティを追求した結果が、これ。
 元春の曲の中でも、地味にコアなファンの間では人気が高いことで知られている。

8. アンジェリーナ
 パクリ疑惑も多い曰くつきの曲だけど(元曲は忘れた、調べればわかることだけど、どうでもいい)、ある意味オマージュと考えれば納得するくらい、それだけ瞬発力のある曲。ある程度下積みを経てからのデビュー曲だっただけに、それまで培ったすべてが詰め込まれており、元春本人としても特別思い入れの深い曲。
 長年のファンとしても同じ気持ちなのか、ライブ映像を見ていると、この曲のイントロが始まると、会場のテンションが一気に上がることがわかる。セット・リストでも、いくつかあるハイライトの中でも常に大一番的なポジションに配置されており、それだけ本人、そしてファンにとっても大切な曲。


 
9. So Young
 もともとは山下久美子に提供した曲で、後にセルフ・カバーとして、シングル1.のB面に収録された。
 まぁ元気いっぱいノリの良いポップ・ロック・ナンバー。ロックン・ロール・テイストの強い曲の場合、元春の歌詞は大体内容がない。これも前述したように、偉大なるロックンローラーへの敬意を表したものなのだろう。
 
10. Sugartime 
 3枚目のアルバム『Someday』の先行シングル・カットとしてリリース。ポップ・ロックの中でもややロック・テイストが強いので、系譜としては2.の流れにある。当時ナイアガラ・トライアングルで交流のあった杉真理がコーラス参加しており、一聴して彼とわかるスウィート・ヴォイスを披露しているのだけど、まぁセールス・ポイントとしてはちょっと弱め。俺は好きだけどね。
 
11. 彼女はデリケート
 オリジナルは『ナイアガラ・トライアングル Vol.2』に収録。アルバム・リリースと同時にシングル・カットされた。オリジナルはイントロ前に、空港の公衆電話での友人との会話が収録されていたけど、このヴァージョンではカットされている。
 こちらも8.同様、かなりの勢いで突っ走る、疾走感バリバリのロックン・ロール。ロックンローラー佐野元春としての一面が、かなり強調されている。
 ナイアガラ・トライアングル参加時、どちらかといえばポップス寄りだった大滝・杉とのサウンド・カラーに合わせるため、元春はこの曲を、一旦候補から外したのだけど、大滝のイチ押しによって収録に至った、というエピソードがある。敢えて自分とのミスマッチを選択することによって、逆にアルバムのトータル性に広がりを演出した、プロデューサー大滝のベスト・ワーク。

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12. こんな素敵な日には(On The Special Day)
 シングル・カットされた11.のB面としてリリース。ラウンジ・ジャズ・テイストの濃いナンバーで、初期はこういったあらゆるサウンドを実験的にプレイしていた感が強い。まぁ今としてはこういったのもアリだと思うけど、リリース当時は眠たくなる曲として、いつも飛ばしてしまうのが定番だった。
 
13. 情けない週末 
 
「もう他人同士じゃないぜ」

 田舎の中二にとって、それはすごく大人の言葉に響いた。響きはしたがしかし、だからといって実感が湧くはずもなく、アウトロのフリューゲル・ホーンの切ない咽びの方が、まだリアルに響いた。
 「生活という うすのろがいなければ」という歌詞も、当時はなんとなくカッコよく聴こえたが、アラフォーを過ぎた今にしてみれば、ちょっとう~んという気もしないでもない。純粋な恋愛だけじゃ、男と女の関係は続かない。そんなカッコいいものじゃないのだ。長く続けてゆくには、所帯じみてはいても、「生活感」というのも必要なのだ。
 
14. Bye Bye Handy Love
 パーティーももう終わり。みんなを家路へ送り出すためのエンド・ロール。でも最後は湿っぽくならず、楽しく別れよう、そんな歌。意味はあまり考えなくてもいい、ストレートなロックン・ロール。




 リリース30周年を経て、デラックス・エディションも発売されている。限定生産なので、もうかなり入手が難しいと思うけど、当時の貴重なライブ音源と映像が追加収録されているので、できればこちらも見て聴いてほしい。
 ライブCDとDVDには、これも初期元春の代表作なのだけれど、『No Damage』のコンセプトに合わなかったため収録が見送られた、"R&R Night"と"Heartbeat"が収められている。どちらも7~8分超の長い曲で、アーティスト佐野元春の人生観が凝縮されているので、必聴。
 
 バラエティに出てる時、見当違いのことを言って芸人にいじられても、不快な表情ひとつ見せることなく、いつもニコニコ笑っている元春を見ていると、こういった大人になるのも悪くないな、と思う。
 ベタな表現だけど、少年のように無邪気に笑える大人でい続けることは、とても難しいことだと思う。
 そんなことを思う、45歳の初秋の夜長。



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世界のジャズ・ファンク・バンド巡り:フランス編 - Electro Deluxe Big Band 『Live in Paris』

folder 日本ではまだあまり紹介されていない、ていうかこのアルバム、日本未発売。フランス産のバンドのご紹介。
 
 あくまで俺の私見だけど、「フランスの音楽」といって思い浮かんだのが、シャンソンかMichel Polnareff(古すぎるか?)、それかSerge Gainsbourg。でもちょっと調べてみたところ、現在のフランスは、政府主導による移民政策の強力な後押しによって、全人口の10%以上がイスラム系という、アメリカも顔負けの多民族国家になっており、前記のような古典的な音楽はむしろ少数派となっている。
 ジャズ畑のミュージシャンがJames Brownに憧れたのか、ファンク系ミュージシャンがジャズを演奏したくなったのか、それともヒップ・ホップ系DJがトラックを繋ぐだけでは飽き足らなくなったのか―。
 いろいろ経路はあるだろうが、ここ十年くらいの間に自然発生的に、しかも世界中でほぼ同時多発的に静かに盛り上がったのが、この現代ジャズ・ファンク・ムーヴメントである。
 特別、ビッグ・ヒットを放ったアーティストがいるわけではない。ただ演奏したい、聴いてもらいたい、という純粋な発想が先だって、現在でも静かに長く続いている現象である。
 
 非英語圏という言語的な問題のため、ただでさえ日本人にとっては敷居の高いフランスの音楽だけど、このバンドも含め、現代ジャズ・ファンク・バンドの多くは英語で歌っているので、比較的とっつき易い部類に入る。全世界的な流れとして、英語で歌っていればグローバルな活動ができるので、特に情報がボーダーレス化した近年では、アメリカ・イギリスなどの英語圏にこだわらず、スペインやドイツ、フランスなど、非英語圏でのリリースが多いのも、このジャンルの特色である。

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 前述したようにitunesやamazon、youtubeなどの手段によって、低コストで情報発信が瞬時に行なえるようになってきたため、口コミでの情報伝達は早いけど、メジャー・レーベルがあまり参入しづらい、すき間産業的なジャンルのため、大きなブレイクが見込めないことも、このジャンルの広がりづらさの一因でもある。
 
 日本での紹介も少ないため、情報があまりないのだけれど、2001年Gaël Cadoux(key)とThomas Faure(sax)が中心となってバンド結成、James Copley(vo) Jérémie Coke(per) Arnaud Renaville(dr)が加わり、2005年『Stardawn』、2007年『Hopeful』、2010年『Play』と3枚のアルバムをリリースしている。で、今回紹介するのが、それまでの総集編とも言うべきライブ・アルバムである。
 ちなみにバンドの正式名称はElectro Deluxe、主要メンバーは5人だけど、ゲスト・ヴォーカルやミュージシャンの参加が多いため流動的で、しかも今回のようなライブ編成、ブラス中心のビッグ・バンド総勢13名が加わると、かなりの大所帯バンドに進化する。
 調べてみて分かった情報は、ほんとこれだけ。俺自身、フランス語はネイティヴではないので、あとは勉強するしかないけど、どちらにしろ情報開示の少ないバンドではある。

 何となくのイメージなので、誤解だったらすぐ謝るけど、フランス人というのはプライドが高く、ライフスタイルや主義主張などもすごく洗練されているのだけれど、なんというかこう、英語圏と比べて閉鎖的というのか、「わかんないんだったらそっちで調べろよ、なんでこっちがわざわざ教えてやんなきゃいけないの?」的な、ぶっきら棒で不親切なイメージがある。
 HPを見ても、バイオグラフィーは制作中、簡単なディスコグラフィーとツアー・データが載せられてるだけ。もうちょっと何とかなんないの?と言いたくなる。

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 そのツアー・データを見ても、ほとんどがフランス国内のライブに限られており、せっかく認知度も上がってきているはずなのに、非常にドメスティックな活動振りである。よほど愛国心が強いのか、それとも海外渡航がヤバいメンバーがいるのか、せっかく英語で歌っているのだから、もっと幅広い活動を行なえばよさそうなのに、である。
 現実的なところで言えば、ビッグ・バンドを抱えた大所帯ゆえ、いろいろな経費が掛かるのだろう。Prince『Lovesexy』のレビューでも述べたように、バンドというのは、それはもう、存在するだけで膨大な経費がかかるのだ。
 
 基本はジャズ・バンドから始まったのだろうけど、そこにファンク要素と若干のエレクトロ風味(デビュー当時はエレクトロ色が強かったため、一聴するとただのアシッド・ジャズに聴こえる曲もあったけど、ここ最近の2枚では生音主体のため、有名無実化している)を絶妙なバランスでミックスしている。移民が多いお国柄ゆえ、ラッパーとの共演も多いので、ジャジー・ラップ好きの人にも充分アピールしやすいんじゃないかと思う。
 シンセや日雇いのミュージシャンではなく、自前のブラス・セクションを抱えているため、ジャズ要素も強く、これが一番言いたいのだけれど、物量的に他のバンドよりも音が厚い。
 
 でも売れないんだろうな、日本やアメリカだったら。
 日本ではP-VINEがすごく頑張ってくれてるんだろうけど、結局はごく小さなムーヴメントなので、いくらプロモートしたとしてもたかが知れており、横には大きく広がらない。

 コンスタントにライブを重ねているバンドなので、盛り上げ方が上手く、サマソニやFUJI ROCKなんかに出たら、それこそ日本でも人気が出るのだろうけど、何しろ大人数のため、呼ぶにしてもかなりの出費を覚悟しなければならず、主催者側が二の足を踏んでしまうのも、なんとなくわかる。
 世界中のコアなファンの間では、twitterで情報やレビューが飛び交っているのだけれど、日本では相変わらず発売すらされない有様である(しつこいかな)。


Live in Paris
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Electro Deluxe
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1. Let's Go to Work
 オープニングは、当時のレイテスト・アルバム、3枚目『Play』からの曲。
 オリジナル・ヴァージョンは、演奏自体はほぼ同じアレンジながら、ラッパーGaël Fayeとの共演。ライブではJamesがほぼメインで歌いまくっている。
 ビデオを見てもらえばわかるけど、とにかく楽しそう。演ってる方も見てる方も楽しい、そんなライブ。

 

2. Black and Bitter
 こちらも『Play』より。往年のビッグ・バンド・スタイルとFunkの融合。ブリッジのハーモニカがまたドライ。
 普通ハーモニカの音色といえば哀愁を漂わせることがセオリーみたいになっているが、Jamesのハープは普通にビッグ・バンド・ジャズと果敢に渡り合っている。
 
3. California
 出だしがStevie Wonder“Too High”っぽい導入部で始まる、バンド主体の曲。
 現代ジャズ・ファンクの特徴として、インストとゲスト・ヴォーカル入り楽曲で構成されており、メジャーに近くなるほどヴォーカルの比率が高くなるのだけれど、彼らもまた例外でなく、Jamesの出番が多くなってきているが、それに比例するかのようにビッグ・バンドの出番も多くなり、エレクトロ要素は次第に少なくなってきているので、結果的にはOK。

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4. Play
 
5. Between the Lines
 彼らの中では比較的メジャーな部類に入る曲。俺もこの曲から彼らに興味を持ち始めた。
 今までジャジー・ラップというジャンルに興味がありながら、どれもいまいちピンと来なかったのだけど、この曲は目から鱗だった。ラップとの親和性を重視した、寄り添うバック・トラックではなく、ライムに負けないブラス・セクションの圧倒的なパワー、一見慇懃無礼で胡散臭いフランス人そのままのJamesとの掛け合いが、この曲を際立たせている。

 

6. Please Don't Give Up
 前曲に引き続き、こちらもライブでは定番のキラー・チューン。ビデオでは、ガタイの良い黒人ラッパーBen L Oncle Soulと、蝶ネクタイの胡散臭い中年男Jamesとの掛け合いが面白い。
 CD版では、ここまでが1枚目。

 

7. Back to the Riddle
 2枚目トップは少しシックな、ジャズ・テイストの強いサウンド。それでも相変わらずJamesのヴォーカルはねちっこい。1分半ほど過ぎてからのブラス・セクションがカッコイイ。
 
8. Point G
 
9. Old stuff
 
10. Where Is the Love
 再びキラー・チューン。オリジナル同様、6.でデュエットしたBen L Oncle Soul 再登板。ライブなので互いにエキサイトした、ねちっこい歌い方だけど、オリジナルはもう少しマイルドになっている。
 昔風の言い方なら、全体的にバタ臭いテイストのバンドなので、例えばこの曲なんかも、外資系企業のCM、例えばappleなんかが使ってくれたら、イメージ的にもマッチするんじゃないかと思うんだけど。まぁapple じゃムリか。

 

11. Talking About Good Love
 
12. …Talking After Good Love
  ややエレクトロ風味の鍵盤からの導入部、ホーン・セクションがけたたましく響き、相変わらず胡散臭いJamesのヴォーカル。ビジュアル面から見て、さすがフランスだけあって、主要メンバーの誰もが、ラフでありながらケレン味があるというのか、どいつもこいつもおしゃれ番長である。それでありながら、ひとりごっついMorrisseyのように異彩を放つ、Jamesの存在感。
 ここまで書いてみて、方向性はまるで違うのだけれど、バンドの安定した演奏力、アクの強いヴォーカルというのが、日本で言えばウルフルズに結構近いんじゃないか、とふと思ってしまった初秋の夜長。
 
13. Peel Me




 最近では胡散臭さに輪をかけたように、売れない映画俳優みたいな風貌になってきたJamesを筆頭とするElectro Deluxe、あくまで自分たちの活動ペースを崩したくないのか、当面フランスから出る気配はなさそうである。
 札幌に来るなんてことは夢物語になりそうなので、取りあえずは解散せず、時々作品を作ってくれれば、それでよい。幸い、HPをチェックしていれば、不定期にビデオ・クリップをUpしてくれるので、それがビデオ・レター代わりになってくれている。
 
 つい先日も、新しい便りが届いた。今回はスタジオ・セッション風、もう少しラフな、素のElectro Deluxe達だ。



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多分あまり知られてない、『無記名の音楽』 - James Mason 『Rhythm Of Life』

folder グーグルで「James Mason」で検索しても、出てくるのはイギリスの古い映画俳優の名前ばかりで、ジャズ/フュージョン・ミュージシャンJames Masonについては、ほとんどヒットして来なかった。wikiでも一応調べてはみたのだけど、この『Rhythm Of Life』のこと以外、経歴・バイオグラフィー・ディスコグラフィーその他諸々の詳細は、ほとんどわからなかった。
 
 ギタリストとして、Roy Ayersの元にいたところまでは、割とよく知られているけど(といっても、世界中のレア・グルーヴ・マニアのごく一部だけだろうけど)、まともなソロ・アルバムはこれくらいしかないので、それ以前・以後のことはほとんど知られていない。
 生きてるのか死んでるのか、もし生きていたとして、ミュージシャンとしては現役なのか隠遁状態なのか。1980年ごろ、日野皓正のアルバムにチラッと参加したらしいけど、これは未聴なので、結局わからずじまい。
 それくらい謎のヴェールに包まれた、乱暴に言っちゃえば、それほど関心を持たれなかった人である。
 
 1977年リリース当時も、それほど売れたわけではない。当時の新人アーティストの慣例として、アルバム契約もワン・ショットだったと思われる。
 これが売れれば次のアルバム制作もあり得たのだろうけど、あいにくフュージョン・ブームに乗っかるにはナイーヴすぎたのかもしれない。Herbie Hancockほどの下世話さと政治力があれば、また歴史は違っていたのだけど、セールス的にも次を期待されるほどの成績は残せなかった。なので、その後は表舞台へ出ることもなく、そのまま時代に埋もれてしまう羽目となる。

ダウンロード

 彼が脚光を浴びたのはもっと後年、世界的なレア・グルーヴ・ムーヴメントでの再評価がきっかけだった。最初はヒップホップから、主にサンプリング・ソースとしての需要だった。
 ブームの最初の頃なら、James BrownやCurtis Mayfieldなど、ソウル/ファンクの有名どころから引っ張ってくればよかったのだけど、みんながみんな同じ音源を使いまわしてると、次第にそれも飽きられてくる。市場が爛熟化してゆくに連れ、まだ誰も手をつけてないソースを使って差別化を図らないと、生き残ってはゆけないのだ。
 そういった事情もあって、世界中の場末の中古レコード店のエサ箱は、クリエイター達によって発掘されることになる。時代の流れに埋もれたジャズ・ソウル・ファンク・フュージョンの旧作が彼らによってサルベージされ、「隠れた名作」というレッテルを張られ、市場に再出荷された。
 Jamesのこのアルバムも、リリースから15年の歳月を経て、DJや研究家によって再発見されて脚光を浴び、今ではレア・グルーヴ界ではスタンダードとなった。
 
 解明されている個人情報がほぼ皆無のため、アーティストのネーム・バリューなどの周辺情報を抜きにした、残された音楽のみが純粋に評価された、アーティストとしては、ある意味究極の理想である。「無記名の音楽」とは、最高の褒め言葉だろうか。
 
 初ソロ・アルバムだけあって、かなりの気合の入り方が窺えるけど、ジャズ/フュージョンというジャンルにしては珍しく、特にマルチ・プレイヤーとしての才能が開花。本来の担当楽器であるギターはおろか、ピアノやフェンダー・ローズ、ムーグなどの鍵盤系を操ることはおろか、アレンジ・プロデュースもほぼ独自で行なっている。
 
 時代的な背景もあるのだろうけど、どちらかといえばフュージョン寄りの人である。70年代のジャズ・シーンにおいて、正統なモダン・ジャズはほぼ衰退しており、この時期にジャズで身を立てていこうとすれば、スタジオ・ミュージシャンかフュージョンの途へ行くか、はたまたこのJamesのアルバムのように、ファンク成分を混ぜたジャズを演奏することがトレンドとなっていた。 
 ほとんどの曲がヴォーカル入りなので、普通のソウル、ファンク好きの人でも充分楽しめるだろうし、こうした演奏メインの音楽に新しい価値観を見出す人も、少なからずいると思う。俺もその一人だ。


Rhythm of Life
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James Mason
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1. Sweet power your embrace
 James自身のアープによるイントロから、印象的なギターのカッティング。ジャズ/フュージョンの場合、ある程度の基準で演奏テクニックが保証されているので、変にギターの音色にエフェクトをかける必要がなく、ごまかしのないクリア・トーンを聴くことができる。
 2分半も経ってから、やっとClarice Taylorのヴォーカルが入る。力強くありながら、曲に合わせて抑えたヴォーカル。Justo Almarioによるスタンダード・ジャズ・スタイルのサックス・ソロと、Jamesによる激しいギター・ソロが絡み合ってフェード・アウト。

 
 
2. Good thing
 Clariceの独壇場。レア・グルーヴのコンピに何度も収録された、クールなソウル・ナンバー。ギターはそれほど効いてなく、Jamesはトータルなサウンド・メイキングに徹している。
「パッパラッパッパー」と薄くかかるバック・コーラスもソウル・マナーに則っている。
 
3. Free
 Mustafa Ahmedによるコンガのアフロ・ビートとJamesのアープが絡む。
 ここでの主役はNarada Michael Waldenによる正確なハイハット。
 今ではプロデューサーとしての名声が上になってしまったNarada Michael Walden、かつてはジャズ・ミュージシャンとしての活動もコンスタントに行なっていた。これだけ曲を引っ張るドラムが叩けるのに…。
 ある時期から、Whitney Houstonに魂を売ってしまった結果なのだろう。
 
4. Mbewe
 ブリッジ的なインストの小品。ここはJustoの伸びやかなサックスが主役。ギター・カッティングに混じる生ピアノが心地よい。
 ところでこれ、何て読むの? 
 
5. Funny girl
 再びClariceの出番。これもよくコンピに収録されたり、ミックス・テープで使われたり、汎用性の高い音である。
 ジャズ/フュージョン系全般に言えることだけど、どれも非常に録音が良い。エンジニア達も効果的なマイク・セッティングや録り方を熟知しているのだろうし、ミュージシャン達もまた、楽器の鳴らし方をよく理解しているのだろう。マスターの状態が良い分だけ、後年再発売される際もリマスター効果は大きい。
 ロック・ポップス系の場合だと、昔の録音はやっつけ仕事的な物が多く、しかもテープの保存状態もぞんざいなので、最新のリマスターを施したとしても、妙に古臭く聴こえる場合が多い。一時的な流行ものとしての認識が強かったため、末永く残るように作る必要はない、と現場も上層部も判断していたのだろう。
 それに引き替えジャズの場合、昔からテープ管理も比較的良かったこと、また流行もの的なエフェクトをあまり使用していない分、風化することが少ない。
 この曲など、特にヴォーカルを含むすべてのパートが適切な状態で録音されており、それぞれの音が太く、独自の存在感を醸し出している。

 
 
6. Slick city
 シャッフル・ビートに乗って、横揺れしたClariceがハンド・クラップしながら、軽快に踊り歌う姿が思い浮かぶ、ノリのよい曲。やっぱりNarada Michael Walden(ナラダマイケルウォルデン、と一気に言いたくなってしまうような名前だな、これ)のドラムが歌っている。

 
 
7. Rhythm of life
 タイトル曲。少し走ったシャッフル・ナンバー。
 ドラムがDwayne Perdueに代わってるが、Narada Michael Walden同様、リズムが走る走る。
 Jamesが久しぶりにカッティングとソロと両方でフル回転、一番弾きまくってる曲である。Clarieも演奏に引っ張られて力が入るのか、声が太い。

8. Hey hey hey
 2分弱のブリッジ。タイトル通り、掛け声メインで作られた、シンプルなナンバー。後半でJames 自身のヴォーカルも聴ける。
 下手ではないけど、いかにもミュージシャンが片手間で歌ってみました風なので、若干の照れが見られる。ここで開き直って、もう少し色気があれば、George Bensonも夢じゃなかったのに…。
 
9. I've got my eyes on you
 これもよくコンピで聴ける曲。Dwayne参加のセッションは、どれもリズムが良い意味で走っている。
 ClariceとJustoの掛け合いが最高。一番歌い上げている曲だと思う。
 同じようなリズムなのに、ドラムが違うと、これだけヴォーカルの力の入れ具合も違ってくる、という良い見本。
 あっ、Jamesもモチロンいい味出してます。

 
 
10. Dreams
 ラストは少し軽めに。
 この辺りの曲を、いまのミュージシャンがアシッド・ジャズ風にカヴァーしてくれれば、もう少し知名度も上がるのに、と思う。
 けど、まぁ上がんないか、今どきアシッド・ジャズじゃ。
 でも俺はちょっと聴いてみたい。




 一般的にジャズのオススメといえば、Miles DavisやJohn Coltrane、Bill Evansなどの、いわゆるジャズ・ジャイアンツの面々をお勧めすることが無難なのだろうけど、ロックやポップスを聴いてきた耳で、いきなり歌が入ってない音楽を聴いても、そんなに楽しめないと思う。
 俺自身も若い頃、お勉強感覚でモダン・ジャズを片っぱしから聴いていたけど、次第にどれも同じに聴こえてきたので、一時期聴くのをやめてしまった。無理に聴いたとしても、やはり興味の薄いものは好きになれないのだ。
 ネーム・バリューに躍らされるのではなく、例えば俺のように、レア・グルーヴ経由でジャズ/フュージョンの世界に入った方が、ずっと間口は広いだろうし、好みの音を探す作業は楽しいものである。しかも、自分で苦労して探し求めたアイテムは、ずっと自分の宝物になる。



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北海道の中途半端な田舎に住む、そろそろアラフィフ男。ほぼ週1のペースで音楽ブログ更新中。節操ない聴き方と思われてるけど、自分の中では一貫してるつもり。 最近は蔵書の整理がてら、古い本を再読中。ジョン・アーヴィングから始まって、フィッツジェラルドやゾラ、モームなど、いわゆる古典の復習中。いつになったら終わることやら。新刊読めねぇや。
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