好きなアルバムを自分勝手にダラダラ語る、そんなユルいコンセプトのブログです。

最悪の人間関係の中で生まれた過渡期の傑作 - Police 『Zenyatta Mondatta』

Police-album-zenyattamondatta 3ピース・バンド・サウンドの可能性を最大限まで追求した初期の名作『Reggatta de Blanc』と、大幅なサポート・メンバーの増員によって、サウンドが劇的に変化した『Ghost in the Machine』に挟まれているため、いくぶん影の薄いPolice3枚目のアルバム。
 Policeは俺が洋楽で初めて興味を持って聴き始めたアーティストのため、個人的に思いれが強い。基本どのアルバムにも愛着があるのだけれど、『Zenyatta Mondatta』は今のところPoliceの全アルバム(といっても5枚しかないけど)中3位という位置づけになっている。ちなみに1位は、最初に買った『Reggatta de Blanc』、次に『Synchronicity』といった感じ。

 もともと各メンバーのポテンシャルが高かったため、サウンド的・技術的にはデビュー当時から完成されていたバンドである。そんな彼らのデビュー当時のテーマとしてあったのが、ギター・ベース・ドラムという最小限のユニットにおいて、パンク・ビートを基調としたホワイト・レゲエをどこまで深化できるか、が一つの課題であったはず。
 パンク以降を席巻したニュー・ウェイヴ・ムーヴメントの潮流に乗ってデビューしたPolice、本来なら、これまで培ってきた三者三様の技術スキルを駆使すれば、いくらでも高度なサウンドを展開できたはずなのに、時代が時代なだけあって、卓越した技術や経験などは、逆に足かせとなった。なので、デビューに当たっては、ニュー・ウェイヴ・バンドとしては障害となる、経験値や演奏テクニックを敢えて封印、素人に毛の生えた程度のメンツに混じり、素知らぬ顔で新人ヅラして活動していた。
 当初は若干毛色の違う、ニュー・ウェイヴにしては平均年齢の高いバンドとして位置づけられていた彼らだったけど、基本スペックが他のバンドと比べて飛びぬけていたため、2枚目『Reggatta de Blanc』リリース時には、ニュー・ウェイヴ出身という看板が要らなくなっていた。

 前回のレビューでさんざん触れたのだけど、ジャケットの悪趣味さ(オレンジと黒!!)は言うまでもないが、それ以上に、なんだゼニヤッタモンダッタって。
 当時、バンドの主導権を握っていたStewartによる命名ということで、確かに彼の趣味を反映した、エスニック風味満載のタイトルなのだけど、ほんと誰か忠告する奴が居なかったのか、と当時の関係者がいれば、30分ほど問い詰めてみたくなるようなタイトルである。

 もともと音楽的な接点がほとんどないメンツであるため、感情のもつれ・音楽的な意見の対立によって何かともめ事も多く、ステージ裏では流血寸前の取っ組み合いになることもしばしばだった、とのこと。年長者ゆえ、基本は静観の構えのAndy 、兄貴がマネジメントを行なっていることを楯にして、リーダー面であれこれ独断専行のStewart、メインのソングライターであり、フロント・マンであるにもかかわらず、一番年下というだけで、バンド内カーストにおいては最下層に位置するSting。

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 ほとんどリハーサルの必要もなくレコーディングに突入した、とのことだけど、当時は殺人的スケジュールでの全世界ツアーが組まれていたため、練習する時間もなかったのだろう。とは言っても、個々の演奏スキルが相当高いレベルであったため、単純なミス・テイクはほぼ皆無、粛々と進行したらしい。まぁ下手なイージー・ミスでも起こそうものなら、途端に取っ組み合いにもなり兼ねなかったため、スタジオ内は張りつめた緊張感でいっぱいだったことだろう。
 逆に、同じ空気を吸っているのもイヤなので、とにかく一刻も早くレコーディングを終わらせるため、システマティックにビジネスライクに事を進めてたのかもしれないけど。

 まぁそんなこんなで色々ありながら、バンド内の均衡は辛うじて破裂寸前のレベルで抑えられていたものの、ちょっとした弾みやボタンの掛け違いによって、簡単に決裂する恐れも何度かあったはず。そんな中、バンドのほぼ実権を握っていたStewartが、半ば腕ずくで二人を服従させていたのだろうと思われているけど、実際のところ、Stingからすれば好きにプレイさせてくれればどっちでも良かっただろうし、 Andyも自由にギターを弾かせてくれるのなら、いちいち揉め事を作りたくなかったのだろうと思われる。
 そういった面、彼らの大人の対応、悪く言えばビジネスライクな人間関係が、人によっては好き嫌いが別れるのだろう。

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 三者三様の思惑が複雑に錯綜する中、唯一結びつける共通項はたった一つ、音楽のみだった。
そんなコンディションの中で生まれた意欲作である。
 何度も言う。ジャケットと邦題の悪趣味さで嫌いにならないでね。


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Police
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1. Don't Stand So Close To Me
 Stingの高校の教育実習生体験をモチーフに書かれた歌詞なので、邦題が『高校教師』。まぁ確かにその通りだけど、何だか投げやりなネーミング。こんな風に何十年後も残るのだから、もうちょっと何とかならなかったの?と言いたくなるのだけど、当時はこの程度の扱いだったのだろう。
 不穏に薄く被さるシンセ音がこれまでと違うミステリアスなイメージだが、本編が始まれば、やっぱりいつものPolice。やはりこの頃までのPoliceはStewartのバンドである、と断言できるほどのリズムの奔放さ。リズム感の切れがハンパない。
 


2. Driven To Tears
 邦題が『世界は悲しすぎる』。世界の貧困問題を取り上げた内容なので、このタイトルはうまくはまっている。
 ギター・シンセも併用した、スペイシーなAndyのサスティン・ギターの音色が心地よい。ここでの主役はもちろんAndy。ややプログレッシヴな響きの間奏ギター・ソロに本気度がうかがえる。後半のStewartのハイハット乱れ打ちも最高。

3. When The World Is Running Down, You Make The Best Of What Is Still Around
 『君がなすべきこと』という邦題がしっくり来る。それほどアップテンポでもないのに、妙に疾走感のある曲。普通の8ビートなのに、肝はStingのベースだった。リード・ヴォーカル兼任のため、通常ベース・ラインはシンプルになりがちだけど、Stingの場合、かなりの割合で印象深いフレーズをぶち込んでくる場合が多い。特にこの曲においてはランニング・ベースというのか、手数は多いのだけれど、曲を壊さない絶妙のバランスでフレージングしている。
 


4. Canary In A Coalmine
 1980年時点でもそれなりに流行っていた、スカ・ビートの疾走感溢れる曲。勢い一発ではあるが、実はよく聴いてみると、結構複雑なアンサンブルで演奏しているのがわかる。あっという間の2分間。

5. Voices Inside My Head
 時々Stingによる「Cho!!」というシャウトが入る、ほぼインスト・ナンバー。前回の『Reggatta de Blanc』でもあったように、最初からインストのつもりで作ったのか、それとも歌入れが間に合わずに止むを得ずインストになったのか、それは不明。でもサウンド構成としてはヴォーカルを入れること前提で作ったように思われる。
 Andyの細かなフレーズのリフとStewartの複雑なリズムとが延々と続いているように思われるけど、そこはさすが手練れのメンツが揃ってるだけあって、ミニマル・ミュージック的な反復から徐々に細部が変化し始め、最後はクールな盛り上がりを見せている。

6. Bombs Away
 Stewart制作による、このアルバムの中では比較的ストレートなロック・ナンバー。PoliceといえばどうしてもStingのワンマン・バンドだと思われがちだが、実のところ演奏に関して言えば3人ともほぼ対等、ていうか誰もがほか二人を喰ってしまいそうな勢いでプレイしていた。この曲も3人それぞれの見せどころがあり、そのせめぎ合いがバンドに程よい緊張感を与えていた。
 そのバランスが崩れたのが第三者の介入、すなわちシンセサイザーの大幅な導入である。

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7. De Do Do Do, De Da Da
 レコードで言えばB面トップ、当時のヒット・チャートを知るものなら誰もが知っている、完璧なヒット・ナンバー。何しろメロディ・演奏・そして歌詞が完璧。特に歌詞の内容が徹底的に無内容なのが最高。ある意味ヒット・ソングの条件をすべて満たしていると言える。
 Andyのナチュラルなサスティンからスタート、珍しくドラム・アンサンブルもシンプル。この曲のサウンド面においては、何と言ってもAndyが主役。
 ちなみにこの曲、来日記念盤として日本語歌唱ヴァージョンが存在する。邦題は『ドゥドゥドゥ・デ・ダダダ』と、まぁそのまんま。一応日本でもオリコン50位と、それなりには売れた模様。珍品としてしばらくCD化されていなかったのだけど、1997年になって初めてベスト・アルバムのボーナスCDとして、ひっそりリリースされた。日本では、大槻ケンヂによる失笑カバーによって、ごくごく一部では有名である。
 


8. Behind My Camel
 Andyによる、ギター・メインのインスト・ナンバー。これこそ純粋に、インスト前提で作られたと思われる。やはり経歴が長いだけあって、サウンド的にもどこか風格があり、後にデュオ・アルバムをリリースすることになるRobert Fripp色、イコールKing Crimsonっぽい瞬間が垣間見える。

9. Man In A Suitcase
 ちょっぴり能天気なスカ・ナンバー。なんか語呂が良いだけのサビで、7.同様、内容がありそうで、実はそれほどない歌詞。全体的にPoliceはリズムが立っているため、時として続けて聴くと重苦しく感じる場合がある。そう言った中での箸休めとして、こういった曲も必要なのだ。

10. Shadows In The Rain
 久々のレゲエ・ビート、ダブ・サウンドを前面に押し出しているが、この曲だけはどうにも退屈。どうしても後年のStingのセルフ・カバーと比べてしまうと分が悪い。それほどStingヴァージョンが秀逸なのだ。

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11. The Other Way Of Stopping
 ミステリアスな疾走感のあるオープニング。久々にニュー・ウェイヴ的サウンドを展開する。こちらも主役はStewart。なんだこのドラム。これも歌入れ前提だったと思われるインスト・ナンバー。
 当時のPoliceはワールド・ツアーの真っ最中、多分に充分アイディアを練り上げる暇もないままレコーディングに及んだことも多々あったはず。3人とも演奏スキルは充分過ぎるくらいあったので、スタジオに入って短時間でまとめることはた易かったかもしれないが、アレンジの更なる追求にまでは、とても手が回らなかったのだろう。




 そういったジレンマもあったのか、ワールド・ツアー終了後、もっとじっくりした環境でとことんサウンドを練り上げるため、彼らはカリブ海に浮かぶモンセラット島へ向かう。リゾート地に立つスタジオゆえ、半ば休養も兼ねてのレコーディングだったのだけど、スケジュールに追われない音作りは、結果、これまでにない緻密なサウンドとして結実した。それが次作『Ghost in the Machine』である。
 細部まで作り込んだサウンドは好評を得、さらに次作の『Synchronicity』への重要な橋渡しとなるのだけれど、それと引き換えるように、初期のエモーショナルなサウンドは次第に失われてゆく。


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息をするように皮肉が飛び出す生粋の英国人集団 - XTC 『Oranges & Lemons』

folder 英米のみならず、ここ日本においても飛躍的に知名度を上げたヒット作『Skylarking』リリース後のXTC、にもかかわらず、リーダーAndy Partridgeのステージ・フライト(恐怖症)は回復の見込みがなかったためライブができず、苦肉の策として行なわれたラジオ局回りや日本でのサイン会という、極めて中途半端、ロー・リスク、ロー・リターンなユルい仕事しかしていないのだった。

 本人いわく、ラジオ出演時にスタジオ・ライブは時たま行なったらしいけど、そのほとんどはラジオ収録のついでに行なわれたアコギの弾き語りセッションばかりで、普通の神経ならとてもライブやってますっ、と言える代物ではない。それでもそこを臆面もなく言い張る英国気質こそが、まぁAndyなのだけど。

 進んでしまった時は、もう元に戻せない。
 歴史に”if”は付きものだが、もしあの頃、『Skylarking』~『Nonsuch』までの間にAndyが一念発起して、せめて小ホール・クラスでもいいから、また短期でもいいからツアーを行なっていたとしたら?大ヒットまでは行かないまでも、日英米のセールスは上向いただろうし、ファン層ももう少し広がったはず。
 他のメンバー2人Colin MouldingとDave Gregoryはといえば、彼らはむしろライブ活動に前向きであったため、やはり問題はAndyである。
 確かにフロントマンとしての重圧はそれなりにあったろうし、体調的な問題も結局は本人次第なのだけど、それでも一度くらいはまともなライブをやって欲しかった、というのがファン共通の思いである。

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 ファンの多くは知っていることだけど、Andyというのは非常にめんどくさい男である。前作『Skylarking』でタッグを組んだプロデューサーTodd Rundgrenとは、レコーディング中に何かと行き違いすれ違いが多く、最終的にはケンカ別れとなった。なので、今回は同じ轍を踏まぬよう備えたのか、もう少し若い世代のエンジニア系プロデューサーPaul Foxを起用している。
 これだけあらゆるプロデューサーとぶつかり合いながら、なぜセルフ・プロデュースを行なわないのか、というのも、主にファン・サイトで長らく議論されている。すべての作業が終わってから、雑誌インタビューなどを通じてプロデューサーを散々こき下ろす事が、一種の恒例行事になっている。大抵は「自分の理想とするサウンドを滅茶苦茶にされた」と、皮肉な冷笑を添えて語ることが多い。

 すべての作業を自分の管理下に置けば、不満も少なくなるのではないか、と思ってしまうのだけど、そう簡単なものではないのが、Andyのまためんどくさい点である。一応自己分析能力はあるのか、プロデュースの才能がない事を自覚してるフシがある。サウンド・プロデュースもそうだけど、もう少しシステム的な問題、期限とバジェットを決めたレコーディングというのが苦手なようである。もし時間が許すのなら延々とレコーディングばかりやっている男なので、いつまでも作業が遅々として進まず、完成できたものが何一つない、グタグタな状態になる事を承知しているのだろう。
 自分の描くビジョン通りに事が運ぶのが理想だけど、人に委ねることによって、そう簡単にはいかず、だからといってスムーズに事が運んでもプライドが傷つけられ、やはり不満は生じる。
 もともと生粋の英国人、息をするように皮肉が飛び出すお国柄である。


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1. Garden of Earthly Delights
  インド音楽調のイントロから一転、カラフルなパワー・ポップの洪水。『Skylarking』で得たポップ・サウンドをさらに金と手間をかけて磨き上げた、アバンギャルド性と大衆性との融合。気合の入り方が、これまでとはまるで違う。何しろ音の厚みがこれまでとは段違いになっている。それでいて、個々の音がきちんと聴こえる、というのは録音にもこだわったのだろう。
 


2. The Mayor of Simpleton
 こちらも軽快なギター・ポップ。XTCとしては珍しくUSチャートでも健闘したシングルで、Mainstream Rock Tracksという専門チャートでは15位、Modern Rock Tracksでは、何と1位を獲得している。まぁニッチなチャートではあるけれど、”Dear God”に続く快挙である。
 こういうヒット・ソングを引っ提げてのツアーに出ていれば、今後の状況も変わってたかもしれないけど、まぁ出なかったよね。このサウンド・フォーマットでもう2、3作続けていれば、とは思ってしまうけど、まぁ今さらか。
 


3. King for a Day
 1.2.がAndy作曲で、これはColin作曲。性急なビートと転調がAndyの特徴に対し、彼の場合比較的オーソドックスなメロディを基調としている。スタンダードなポップ・ソングが彼の持ち味なので、驚きや刺激は少ないけど、Andyとの対比によって、アルバム全体としてはうまくバランスが取れている。
 今のところColinのソロ・プロジェクトは聴いたことがないのだけど、多分これ一色だと甘ったるいんだろうな、きっと。Andyだって通して聴いてると、薬味だけ食ってるみたいだろうし。
 1.同様、Mainstream Rock Tracks15位、Modern Rock Tracks38位と、スマッシュ・ヒットを記録している。

4. Here Comes President Kill Again
 再び大統領を殺したい、という不穏な内容を、ダウナーっぽいポップ・ロックに乗せて気怠く歌うという、まぁいつものAndyお得意、皮肉を交えた時事ソング。甘いケーキの後には、こういったシナモン・ティーの刺激を欲するのが、やはり英国流である。

5. The Loving
 スタジアム・ロックっぽいイントロから始まる、でもやはりいつものXTC。『Skylarking』では大人しめだったAndyのギターが、この『Oranges & Lemons』では爆発しているのだけれど、ギター・サウンドならこの曲がオススメ。ベタにポップなリフから、間奏でちょこっと聴けるギター・ソロまで、普通にギター・ロック好きな人なら気に入ると思う。ほんと、やりゃできるのに、どうしていつも執拗にサウンドを捏ねくり回してしまうのか。
 まぁそれが英国人集団XTCの持ち味でもあるのだけれど。

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6. Poor Skeleton Steps Out
 アフリカン・ビートをベースとした変則リズムこそ、変態POPバンドXTCの真骨頂である。かつての彼らなら、もっとダウナーでエキセントリックなサウンドにしてしまうところを、プロデューサーPaulの判断なのか、それともXTCの変節なのかは不明だけど、聴きやすくコンテンポラリーな形に仕上げている。やはり行き過ぎは良くないのだ。

7. One of the Millions
 再びColin作。前作は比較的Colin作が多く取り上げられていたが、今回のメインはAndy、Colin名義は3曲である。これが冷遇されているのかというと、どうもそういったわけではなさそうである。これ以降、急激に二人の仲が悪くなったわけでもなさそうなので、そこは音楽的クオリティーを重視して、互いに譲り合っているのか。まぁよくわからん関係ではある。
 こちらもオーソドックスなアコースティック・サウンドでまとめられており、アルバム構成的にはバラエティに富んで正解。
 特にこの『Oranges & Lemons』、これまでのアルバムと比べて収録曲数も多く、レコードでは2枚組だったため、かなりの長尺である。CD1枚の限界まで目いっぱい詰め込んだボリュームで、Andy一色に染めてしまうと、ちょっと胸焼けしてしまう。ちょうどいいバランスを判断できる、第三者的なプロデューサーがいないと難しいのだ、このXTCというバンドは。

8. Scarecrow People
 よーく聴けばカントリー・タッチでもあるのだけれど、オルタナ・フォーク?ギターのサウンドが面白く、これぞXTCならでは、という楽曲。ただ単純なポップ・ソングではなく、ひと捻りもふた捻りもしてねじ曲がった変態ポップ。
 歌詞は『オズの魔法使い』をモチーフにして作った、ということだけど、まぁ俺も含め日本人なら理解しづらいので、サウンドを堪能してほしい。
 


9. Merely a Man
 ストレートなパワー・ポップ。Huey Lewisあたりがカバーしててもまったく違和感がない、それくらい王道のポップ・ソング。こういう曲も作れるはずなのに、何かにつけ余計にひと手間ふた手間かけてしまうのが、この人。
 まぁそれはしょうがないとして、こういったサウンドに負けないくらい、Andyは堂々と歌っている。ちょっと神経質ながら、十分通る声質を持ち合わせているのだ。これでも少し図太ければ、チャートの常連も夢ではなかったのに。

10. Cynical Days
 三たびColin作。曲数は少ないながらも、バリエーションに富んだ曲を提供しており、今度はメランコリックなスロー・テンポで、どこかサイケデリック。実はこの曲、ドラムがかなり健闘している曲であり、逆に言えばドラム抜きのトラックだと、何とも間の抜けた、甘ったるいだけのバラードになってしまうところを、Andyも顔負けの変則ビートが曲を支配している。
 今回のアルバムはほぼ全曲、Pat Mastelottoが担当している。10代からスタジオ・ミュージシャンとして数々のセッションに参加、Mr. Misterでメジャー・デビュー後、並行してセッション・ミュージシャンとしての活動も継続、後にあのRobert Frippに見初められてKing Crimsonに加入してしまう、何とも波乱万丈なスケールの男である。 
 下手すると、XTCよりもミュージシャンとしてのスキルは上であり、曲によってはこのようにメインを食ってしまうこともままある男である。
 この曲については、そんな捻くれ者同士のよじれ切った才気が、良い方向に融合した好例。

11. Across This Antheap
 珍しいスタンダード・ジャズ調のしっとりしたオープニングから一転、いつものパワー・ポップなXTC。エフェクトの使い方などが、ちょっと前のXTC、どことなく『Black Sea』あたりを連想させる。
 今回のプロデューサーであるPaul、バンドにはいつも通り結構好き勝手にやらせていながら(ていうか特にAndy)、仕上がりはこれがなかなか、XTCビギナーでもすんなり抵抗感なく聴けるようになっている。意外と策士でバンドを上手く手なずけていたと思うのだけれど、結局いつものAndyのボヤキによって、今作だけのコラボになってしまったのは残念。

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12. Hold Me My Daddy
 典型的なXTC型パワー・ポップ。このようなアッパー系のナンバーが多いのも、このアルバムの特徴。バラード、スロー・テンポの曲は数えるほどしかないことから、当時のAndyの躁状態がうかがえる。

13. Pink Thing
 というわけで、パワー・ポップが続く。アコギをメインとして使っているため、これまでよりはやや大人し眼め。全15曲というボリュームのため、こういった曲も入れてメリハリをつけないと、全部アッパー系では胸焼けしてしまうのだ。
 この辺の曲は普通にシングル・カットしてもそこそこのチャート成績を収めそうなのに、切ったシングルは2曲のみ。この辺りにアメリカ進出戦略の甘さが窺える。ただ良い曲を書いていれば、それでいいわけじゃないのだ。

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14. Miniature Sun
 最初Colinのナンバーだと思っていたのだけど、クレジットを確認してみたら、Andy作だった。アレンジがそれっぽかったのだけど、やはり同じバンドにいると、どこか曲調も似てくるのだろうか。マイナー調のメロディに時折入るシンセ・ブラスが印象的。

15. Chalkhills and Children
 遂にBryan Wilsonの境地にまで達した、とリリース当時から各方面より絶賛された、Andyのソングライター歴の中でも、最も透徹とした美しい曲。Chalkhillsとは、彼らの故郷Swindon 近郊、『English Settlement』のジャケットにも書かれている象形画Uffington White Horseで有名な所らしい。
 ここまではハイ・テンションのパワー・ポップ一辺倒だったにもかかわらず、ラストでここまで美しい曲を出してくるとは、Andyやるじゃん、と言いたくなる。ていうか、もうこれ反則の域である。感情を押し殺したヴォーカルとコーラス、薄くヴェールのように全体を覆う柔らかなシンセ・サウンド、遠い霞の向こうから響くドラム。全てが調和が取れた完璧を志向した世界。
 この曲を聴くたび思い出すのが、ヘッセの『ガラス玉演戯』という小説。美しい世界の美しい音楽、それにまつわる人々の愛憎。関連性はまったくないはずなのだけど、読めば何となく共感できるはず。






 UK28位US44位という、『Skylarking』に続くアルバムとしてはまずまずの成功を収めたXTC、チャート的には上昇傾向にあり、さらなる密室ポップの追求として、最も外部に開かれたアルバム『Nonsuch』をリリースすることになる。メジャー・サウンドを意識しながらも、あくまで基本は作品至上主義だった。
 それは良いのだけれど、問題はやはりAndy。Stage Flight振りは相変わらずだった。
 それはまた次回で。


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美メロの応酬、でも歌詞はグロ満載 - Beautiful South 『Welcome to the Beautiful South』

folder 1989年リリース、UKネオ・アコ・ムーヴメントの流れで紹介されることの多い、今でも人気の高いファースト・アルバム。あまりに人気が高いので、レコード会社のネオ・アコ再発キャンペーンの際には、ほぼ必ずリスト・アップされているのだけれど、逆にBeautiful Southといえばコレ、という感じで、ほぼコレ1枚だけで終わってしまい、他のアルバムはあまり見向きもされていない現状にある。ベストやライブ盤だけじゃなく、まずはオリジナル・アルバムの安定供給を考えてくれよ、と言いたくなってしまう。

 Housemartinsという文科系帰宅部バンドが母体となって結成されたこのバンド、中心メンバーはほぼそのままスライドしているので、一聴してあまり変化はなさそう、看板変えただけじゃね?と思ってしまいがちだけど、一応、明確な新機軸のもと、新バンドは結成されている。
 人懐っこいポップ性はそのまま引き継いだのだけど、大きな変化は、これまでより更に英国気質を強めた歌詞、爽やかなサウンドに乗せて下世話な世界を軽やかに歌う、非常にニッチでドメスティックなコンセプトは、同じく根底は下世話な英国人の間で長く支持された。
 デビューしてしばらくは、ロキノンやクロスビートなど、「何てないことをさも小難しく語る」系の雑誌で頻繁に紹介されていたので、この時期にロックをかじってた人なら、名前くらいは何となく聞いたことがあると思うし、一曲くらいなら何となく耳にしたことがあるはずである。

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 基本、ソフト・サウンディングをベースにして、男2女1のメイン・ヴォーカルを曲によって組み合わせを変える方式を採用していた。「していた」というのは、もう解散してしまったから。
 徹底的に国内需要にこたえるスタイルを貫いていたおかげで、イギリス国内での人気は安定れして高く、一時は「国民的バンド」と称されて、高目安定なコンスタントな売り上げをキープしていた。いたのだけど、同じ曲調によるマンネリ化が進むに連れて、英国労働者階級出身そのまんまの飾らないキャラクターが仇となった。おかげでテコ入れのためのイメージ・チェンジも思うように進まず、活動自体が次第にフェード・アウトしていった次第。
 曲は聴いたことあるけど、どんなメンバーが在籍していたのか、またどんなバンドが歌ってるのかも充分認知されなかったのは、日本に限らずイギリスでも同じ状況だった。
 
 セールス的に陰りが見えてきた頃になってから、多分レコード会社からの要請だと思うけど、かつての盟友Norman Cook(別名Fatboy Slim)にプロデュースを依頼、クラブ系サウンドの導入で起死回生を狙った時期もあったのだけど、誰よりも本人たちの予想通り、それほどの支持は得られなかった。誰もBeautiful Southにそんなサウンドは望んでいなかったこと、また彼ら自身もアッパー系なクラブよりも、場末のパブで呑んだくれながらダラダラ演奏してる方が性に合っていることを自覚していた。
 
 Housemartinsの時代からその兆候はあったのだけど、黄金比メロディを基調としたアコースティック・サウンドに、ウィットに富んだ皮肉な歌詞を載せるというコンセプト自体は、決して間違っていなかった。現に、ひねくれてねじ曲がった国民性の英国では、末長い支持を得ていたし、本人らもサウンドの進歩などはあまり考えず、このまま美メロの拡大再生産で、細く長く生き延びて行くはずだったのだから。
 ただ21世紀に近づくにつれて、ヒット・チャートの主流がエレクトロ・ベースのダンス・ミュージック中心となってゆき、自然と彼らの居場所が少なくなっていった。同じカテゴリーで語られるEverything But The Girlもまた生き残りを賭けてテクノ・サウンドに活路を見出し、一時は物珍しさにより持て囃されたけど、やはりスタイルに無理があったせいか、次第にネタ切れとなり、自然に失速していった。
 一方、Beautiful Southは最後までほぼ基本姿勢を崩さぬまま、潔く解散の道を選んだ。EBTGのようなデュオならまだしも、6人編成バンドという大所帯は、方向性を変えるにも全員の意見がまとまらず、そんな不安定な状態でバンドを維持するのは難しかったのだろう。
 
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 で、このファースト・アルバム、最後のアルバムと比べても区別がつかないくらい、この時点で既に偉大なるワン・パターンを創りあげてしまっている。前回の『Solid Bronze』のレビューでも書いたけど、全期間を通して、サウンド的な変遷のあまり見られないバンドなので、時系列をシャッフルした曲順構成だと、どのアルバムに入ってた曲なのか、相当のファンでも混乱してしまうはず。それだけブレずに安定したソング・ライティングを行なっていた、という逆説的な証明にはなるのだけれど。
 
 今もメイン・ヴォーカルの2人、Paul HeatonとJacqui Abbottは、デュオとして地道に活動、今年アルバムをリリース、それに伴って国内ツアーや野外フェスに参加したりしているのだけど、映像を見ると温かい大歓声の中、非常にリラックスしたムードで楽しげに歌っている。それだけファン層のすそ野が広く、愛されてきた証なのだけれど、穿った見方をすれば、いわゆる懐メロ歌手的扱いにも見える。もはや、新しいアクションは期待されていないのだろう。
 
 でも、懐メロとさえ認識されずに消えていった、幾多のミュージシャンと比べれば、これはこれで幸せな状況なのかもしれない。


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1. Song For Whoever
「ペンケースの底から君を愛す」という歌詞は何かの比喩なのだろうけど、よくわからん。昔日本版も持っていたのだけれど、あいにく大昔に売っぱらってしまったため、いま手元にあるのは輸入盤。
 ファースト・シングルのはずだけれど、なぜか6分超もある。ラジオのオンエア対策など、考えてなかったんだろうか。
 オーソドックスなポップスと言うには、なんかいびつさを感じるのは、ポップとは無縁な男性ヴォーカルの声質だろうか。
 こういった曲がUKチャート2位まで上昇したというのは、思えば懐の深い時代だったのだろう。



2. Have You Ever Been Away
 初代女性ヴォーカルであるBriana Corrigan、この頃はまだゲスト・ヴォーカル扱いなので、やや影は薄い。あまり考えずに女性ヴォーカルを入れてみたところ、思ったより出来が良くバンドのカラーにもフィットしたので正式加入となったのだろう。
 一応リズムはレゲエなのだけど、全然それっぽく聴こえないのは、英国の曇り空を愛するバンドだから。
 
3. From Under The Covers
 Housemartinsの面影が感じられる、バンド・スタイルのシンプルなサウンド。ベースの音がやたら響くので、ヴォーカル隊ではなくバンド主導で作られた曲と思われる。
 
4. I'll Sail This Ship Alone
 UKチャート31位まで上昇。Housemartinsではできなかった、ピアノ主体のしっとりした曲。彼らの曲の中では比較的ストレートなラブ・ソング。サウンド・詞・メロディ三位一体きちんと整った曲である。これだけ取り上げて聴いていると、実はすごくまともなバンドであることがわかる。
 皮肉を盛り込んだ歌詞は照れの裏返しとも取れるが、だからといってこのような曲ばかり作ってても、イギリスではなかなか芽が出ない。あのElton Johnだって、最初期のステージはかなりぶっとんだ衣装だったし、何かしらスキャンダラスな二面性も見せないと、評価すらしてくれないのだ。



5. Girlfriend
 彼らにしてはモダンなサウンド。リズムを強調したホワイトR&Bといったイメージ、バック・トラックだけ聴いてるとRobert Palmerみたいにも聴こえる。ギターがきちんとギターの音を出しているのも、なかなかバンドっぽい音でかっこいい。
 
6. Straight In At 37
 当時チャートの常連だったDuran DuranのSimon le BonとPaul Youngを徹底的に揶揄した歌。サウンドも何だか小馬鹿にしたような80年代ビート・ポップサウンドを模している。最後には何故か女優Nastassia Kinskiの名前も。
 
7.  You Keep It All In
 UKチャート8位まで上昇。気怠い感じのBrianaと元気ハツラツなPaul Heatonとのヴォーカルの対比が妙。男女の絡みのヴォーカルと言えばバービーボーイズが思い出され、非常に仲睦まじいポップな3分間だが、内容は殺伐としており、強盗殺人犯に拘束されてる現状を嘆いている。



8. Woman In The Wall
 爽やかなヨーデル調のポップ・ソングながら、歌詞はこのアルバム中、最もグロテスク。酔っぱらった際、つい魔が刺して妻を殺害、死体を壁に塗り込めて隠ぺいしようとするが、腐臭が漂ってこりゃたまらん、という、書いててもムカムカするような内容。でも曲・メロディはきれい。
 
9. Oh Blackpool
 ちなみにBlackpoolとはイギリスの有名な保養地。日本で言えば、軽井沢や葉山マリーナあたりをイメージしてもらえればよい。
 ヒトラーやカール・マルクスを引き合いに出して、資本主義の悲哀を嘆く歌を、これでもかというくらい爽やかに歌っている。俺的に、英語はまったくネイティヴではないので、メロディ中心に好きこのんで聴いていたのだけど、まぁこれからも歌詞に重きを置いて聴くことは、あまりないと思う。それだけサウンドとメロディが良いのだ。

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10. Love Is... 
 なぜか7分超の大作。キャッチーなメロディが持ち味のポップ・バンドにとって、長尺の曲はあまり必要とされていない。ホント昔ながらの3分間ポップスが一番需要が高いのだ。なのに彼ら、時たま冒険を侵す場合があるのだが、その大概は失敗に終わっている。
 この曲もそこまで引き延ばすべき曲かと言えば、そこまででもないような気がする。まぁせっかくのファースト・アルバムなので、多少サウンドの幅を持たせたかったのだろう。
 
11. I Love You (But You're Boring)
 歌詞中に出てくるCarouselとはメリーゴーラウンドのこと。珍しくSEなども使いながら多重トラックを組み合わせながら、曲に奥行きを与えている。アコースティックを多用したシンプルなサウンド、ヴォーカルも熱を帯びて、ラスト曲をうまく締めくくろうといった気概が見える。




 ファースト・アルバムながら、チャート的に好成績を収めたBeautiful South、今後十年ほどは安定した人気でイギリスのお茶の間までをも席巻し、コンスタントにアルバムを発表することになる。かなりポピュラー・ミュージック寄り、非ロック性の強いアルバムであり、ブルース&ロック色が導入されるのはこの後から。純粋なメロディを堪能するのなら、このアルバムが一番だろう。


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Beautiful South
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北海道の中途半端な田舎に住む、そろそろアラフィフ男。ほぼ週1のペースで音楽ブログ更新中。節操ない聴き方と思われてるけど、自分の中では一貫してるつもり。 最近は蔵書の整理がてら、古い本を再読中。ジョン・アーヴィングから始まって、フィッツジェラルドやゾラ、モームなど、いわゆる古典の復習中。いつになったら終わることやら。新刊読めねぇや。
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