好きなアルバムを自分勝手にダラダラ語る、そういったゆるいコンセプトのブログです。

すべての人に聴いてほしい、天才の傑作 - Stevie Wonder 『Innervisions』

Innervisions  1973年発売、Stevie若干23歳にして、既に16枚目のオリジナル・アルバム。何しろ12歳でデビューしているのだから、とにかく芸歴が長い。
 レーベル全盛期を支えた多くの所属アーティストらが、まぁそれぞれいろいろあって、次々と他社へ移籍したり、またはいつの間に活動自体がフェード・アウトしてしまったりする中、Stevieはデビューから一貫して古巣モータウンに所属し続けている。活動ペースのムラはあれど、一途に浮気もせず、脇目も振らず、いまだ現役の稼ぎ頭として、老舗レーベル・モータウンの屋台骨を支え続けている。
 
 Berry GordyとSmokey Robinsonによって創設されたモータウンは、 Marvin Gaye『What's Going On』のレビュー でも述べたように、スタジオ・ミュージシャンを缶詰め状態にして、とにかく大量のバック・トラックを制作、ツアーやテレビ・ラジオ出演の合間を縫って、スタジオに飛び込んできたシンガーらがチャチャッと歌を吹き込み、熟練のエンジニアらがラジオで最適の音質で聴こえるようにミックス・ダウン、毎週月曜日の会議を経て、次々と高クオリティのポップ・ソウルをリリースしていった。ここ日本においてでも、90年代初頭に流行したビーイング・サウンドの席巻は、モータウンのノウハウが十二分に活用されている。
 
 そういったイケイケ状態の新興レーベルに所属している状況だったので、まだセールス実績もそこそこの十代で、しかも盲目というハンディキャップを背負っている少年にとって、まともな発言権などあろうはずもなかった。キャリアを重ねるに連れ、次第に表現欲求や自己主張も増えていったことだろう。ちょっと口を挟みたい時だって、数知れずあったと思う。しかし、当時の音楽業界に携わっていた者は、多かれ少なかれ山師的な胡散臭さと老獪さを持ち合わせており、デビュー間もない小僧の戯言にまともに耳を傾けることはなかった。
 社会的・音楽的にも激動の時代を迎えた60年代のまっただ中にいるにもかかわらず、いつまでたっても永遠の少年扱いのままのStevie、相も変わらず社命によって、「ちょっと音楽的に器用な黒人の少年」というレッテルのもと、お仕着せのポップ・ソングを歌い続けなければならなかった。

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 モータウンによる音楽的な過干渉に耐え切れなくなり、抑えきれなくなったフラストレーションのガス抜きのため、Stevieはこれまでとはちょっと流れを変えた、ほぼすべての楽器を自分で演奏したジャズ・インスト・アルバム『Alfee』を制作したのだけど、あまりにこれまでのStevie Wonderのイメージとかけ離れていたため、営業戦略上、まともな形で発売することを渋ったモータウンは、老獪な懐柔の末、『Stevie Wonder』ではなく、別名義(Stevie Wonderのスペルを逆に綴ったEivets Rednow名義)でのリリースを提案する。
 Stevieとしては、とにかくアーティスティックな一面をアピールできれば、セールスは二の次だったので、その提案にホイホイ乗ってしまう。モータウンとしても、多分大きなセールスは見込めないと判断したのか、プレス枚数は最低限度、プロモーションもほんの申し訳程度で済ませてしまったため、当然、リリースされたこともほとんどのファンが気づかず、リリース当時から幻のレア・アイテムとなってしまった。
 モータウンとしては、一時的な売り上げ減少にはなったけど、先を見越した考えでゆけば、頭に乗ってきた若手に差し出した、ちょっとしたアメ玉的プレゼントでしかなかった。結局のところ、周囲の大人にうまく丸め込まれた、というのが、ここまでの経緯。
 
 二十歳の誕生日を迎えたと同時に、それまで抑圧されていたStevieの反撃は始まる。
 これまで稼ぎに稼いだ挙句、未成年という理由でプールされていた正当なギャランティを、完全に合法的な手続きに則って、管財人となっていたモータウンから、ほぼ全額奪い返す。しかも、自前のプロダクションと音楽出版社も用意し、法的武装も怠らなかった。さらには、自作のプロデュース権まで獲得することによって、最も自分の音楽を作りやすい環境づくりに成功する。
 ここまで用意周到な交渉過程の裏には、もちろん弁護士など専門家からの助言アドバイスも大きかっただろうし、いろいろ甘言を吹き込む取り巻きなどの尽力もあったのだろうけど、それにも増して、自らの音楽的信念を曲げず、進むべき道を邁進するために手練手管を尽くした、Stevie自身の手腕が大きく物を言っている。

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 金と自由を手にし、あとは音楽を作るだけである。
 これまでは子ども扱いされて、ミキサー卓に触れることも容易にできず、お仕着せの売れ線ソングを歌うだけだった頃と比べ、もう容易に口出しできる者はいない。今までは常に上から目線だった会社のお偉方も、今となっては、Stevieに対しては愛想笑いを浮かべるばかりである。
 もっとも、モータウン側にも、Stevieばかりに構っていられない事情があった。当時のポイント・ゲッターの椅子が、Michael Jacksonをヴォーカルに据えたJackson 5、それとSupremesを脱退してソロ活動をスタートさせていたDiana Rossらに移っていたため、正直、Stevieが勝手に事を起こしても、レーベル全体にとっては、それほど大きな脅威にはならなかった。
 というわけで、結果的に雑音の少ない状況となった中、Stevieは次々と歴史的な傑作を制作してゆく。
 
 昔から名盤扱いされていたこのアルバムだけど、俺が本当に好きになったのは、ここ半年くらいのことである。20代前半、アルバム・ガイドに載っていたモノを片っぱしから買い集めていた時期に聴いたものの一つだったのだけど、当時ロックをメインに聴いてきた耳では、イマイチピンと来なかった。
 というより、80年代のStevie自体が、アップ・トゥ・デイトな存在ではなくなっていた。
 当時の彼の代表作は、「I Just Called to Say I Love You」と「Part-time Lover」、ポップ・ソウルの基準で行けば、余裕でアベレージ超えなのだけど、かつて3部作+ 『Songs in the Key of Life』を世に問うた頃の彼と比べれば、ほんと凡人と天才ほどの格差が開いていた。80年代のStevieとは、無難なポップ・ソングを作り続ける「愛と平和の人」であり、、いわば革新的なソウル/ポップ・アーティストの基準で見れば、「とっくに終わった人」程度の扱いだったのだ。

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 ここ2、3年、自分の音楽的嗜好が、ロックやポップスなどから、レアグルーヴやジャズ・ファンク、アシッド・ジャズ、ディープ・ファンクなどに変化し、一時はマニアックなジャンルへも進んだのだけど、いろいろ聴いてきてひと回りしたのだろう。ベタな名作を再度聴き直すバイオリズムに入ったため、ほんとつい最近になって再び、『Innervisions』と巡り合った。
 すると、今まで退屈でちょっと小難しく聴こえてきてしっくり来なかったサウンドが、数十年経った今となっては、Stevie自身によって濃厚に調味されディスプレイされた記名性の高いサウンドが、驚くほどスルリと耳に馴染み、そして完全に虜になった。
 若い頃の耳では理解できなかったことが、年を経るにつれ、少しずつではあるけれど、噛みしめる度に理解が深まってゆく。
 44歳になって、初めてStevie Wonderが、本っ当に好きになった。


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1.Too High
 ムーグとスネアによる導入部、スキャットっぽい女性コーラスの後、少しEQをかけた、くぐもったStevieのヴォーカル。バック・トラックは一定ながら、曲調は結構いろいろ変化し、最後はジャズ・セッションっぽく終わる。
 最初はサビとコーラスが気持ちよくて、何となく聴いていたに過ぎなかったのだけど、通して最後まで聴いてみると、普通のアルバム一枚分のアイデアがぎっしりと詰め込まれた、かなり完成度の高い、なんかすごい、そしてなんかヘンな曲である。でも、クセになる曲。
 
 

2.Visions
 比較的ストレートなスロー・バラード。ちょっとフラメンコっぽいギターが曲調をリードしているのだけれど、時々変なオブリガードが入っており、やはり一筋縄ではいかない曲。
 
3.Living For The City
 このアルバムが紹介される際、最も取り上げられる頻度が高い曲。すべての楽器プレイをStevie自身が行なっている。一人でドラムを叩いてリズム・トラックを作り、それに上物である鍵盤類を被せて、自分でヴォーカルも乗せる。音を合わせてゆくだけでも大変なのに、若干20歳前後の少年がこんなグルーヴを作ることができたのは、やはりこの時期のStevieは神がかっていたとしか思えない。
 この時期の未発表曲は山ほどあるらしく、完成・未完成問わず含めると、その数は1000曲近く、そこから厳選されたのが、俗に言われる『Talking Book』、『Innervisions』、『Fulfillingness First Finale』、『Songs in the Key of Life』の4部作である。
 
 

4.Golden Lady
 一般的に人気の高いのは、これのひとつ前の3.なのだけど、俺的には、これがこのアルバムでのベスト・トラック。
 シンプルなピアノ・ソロから始まるInterludeの後、ミドル・テンポが淡々と続く。この時期のStevieの特徴として、ヴォーカルの緩急の付け方が上手くなった、という点が大きい。比較的抑え気味のヴォーカルが演奏の一部として楽曲に溶け込み、徐々に熱くなってくるリズム・セクションに引っ張られてゆく。終盤に差しかかるに連れて、ヴォーカルもフェード・インするように、次第に熱量が大きくなってくる。
 一聴して地味な曲だけど、非常に吸引力の強い、麻薬的な習慣性を引き起こす。
 
 

5.Higher Ground
 Red Hot Chili Peppersのカバーが最も有名。演奏・アレンジもほぼ完成の域に達しており、かなりの腕達者の集団であるはずのレッチリでさえも、この作品世界を壊すことはできなかった。手練れのプレイヤー集団が一堂に会しているのだから、いろいろ試行錯誤しながらセッションを重ねたのだろうけど、結局、新たな価値観を創造することができず、ストレートにカバーせざるを得なかった。
 ちなみにこの曲も、すべてのトラックを一人で演奏している(驚)。
 
 

6.Jesus Children Of America
 邦題が"神の子供たち"。まぁ意訳として間違ってはいない。Stevieのアンチの意見として、その博愛主義、宗教めいた教条主義に拒否反応を示す、という意見を読んだことがあるけど、80年代のほんの一時期の傾向のみを切り取って、大げさに語っているに過ぎない。
 『Innervisions』発表直前、Stevieは従兄弟の運転する車に同乗した際、交通事故に遭う。この事故の後遺症で一時味覚と嗅覚を失うのだけど、その後のリハビリが功を奏し、肉体的には、ほぼ完全に回復した。ただ、この時のボーダー体験が、彼を内的世界(Innnervisons)へと誘うきっかけになったのだと思われる。
 「究極の信仰は自分の中にある」というのなら、Stevieもその時に得た世界観に従って、このアルバムを制作したのだろう。
 
7.All In Love Is Fair
 シンプルにまとめられた、ドラマティックなバラード。ちょっとElton Johnをモチーフにした、ストレートで、しかも時代の風化を感じさせない曲。
 
8.Don't You Worry 'Bout A Thing
 Stevieの曲はジャンルを問わず、かなり多くのアーティストにカバーされているのだけど、Incognito のヴァージョンは最高!俺的には、カバーがオリジナルを上回った、稀有な例だと思っている。
 リズムの面白い曲だけど、アシッド・ジャズの基本フォーマットである、4つ打ちドラムが心地よい。
 
 

  

9.He's Misstra Know-It-All
 一聴して地味な曲調が多い『Innnervisions』、ラストを飾るこの曲も、長い間聴き流しており、魅力に気づいたのは、つい最近。
 基本は単調なメロディの反復である。流麗なピアノ・ソロで始まり、徐々にコーラスとリズム・セクションが加わり、転調の後、Stevieのヴォーカルも熱を帯びる。後半はジャズのアドリブっぽくなり、混沌がピークに達しようとしたその時、コーラスとのコール&レスポンスで締める。






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モータウンの良心、社会に怒る - Marvin Gaye 『What’s Going On』

e0267928_1117519 1971年に発表された、Marvin初のセルフ・プロデュース・アルバム。発表当時はビルボード最高6位という、今にしてみれば中途半端なセールス・アクションだったけど、その影響力は実際の販売枚数以上の威力があり、記録よりも記憶に残る名盤として、今でもソウル史の中でも重要な立ち位置にいる。同名シングルは全米2位(R&Bチャートでは1位)まで上昇しているので、ヒット・ソングとしては上々の成績だったので、モータウン的にも面目がついたんじゃないかと思う。
 ちなみにアメリカの雑誌「ローリング・ストーン」による「All Time Beat Album 500」でも、堂々の6位。Beatles、Beach Boys、 Bob Dylanと続く中でのランク・インなので、アメリカでもなかなかの知名度があることがわかる。ちなみに、いきなりスケールは小さくなるけど、ここ最近では、「レココレ」の「ソウル/ファンクの名曲ベスト100」にて、タイトル曲がNo.1を獲得した。 

 発表当時から名盤扱いされ、40年以上経ってもその地位が揺らぐことのない、永遠のマスター・ピース、ほんと優等生のようなアルバムである。ほぼ10年おきぐらいのペースで、最新鋭のリマスターが行なわれており、デラックス・エディションや高品質アナログ盤など、節目節目に出されるアイテムも多岐に渡る。それだけ根強いファンが多いこと、そして、このアルバム単体の求心力が、とてつもなく強いということなのだろう。 

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 モータウンのヒット曲製造システムのフォーマットに則って作られた、60年代初期のポップ・ソウルには、当時まだ大国としての威厳が残っていた、享楽的なアメリカの夢が詰まっている。
 最初はそのとっつき易さが良かったのだけれど、人工甘味料や着色料でゴテゴテ装飾された、ジャンク・フード的楽曲ばかりでは、あまりに他のシンガーと大差なく、飽きが来てしまう。
 大量生産(全盛期のモータウンでは、流れ作業的に次々とバック・トラックのレコーディングが行なわれており、入れ代わり立ち代わり次々とシンガーらが歌を吹き込んでいた)された音楽のレーンに乗ることを自ら拒否し、そして作り上げたのが、このアルバム『What’s Going On』である。

 ファルセットを多用したソフト・ヴォイシング、破裂音の少ないパーカッションやコンガによる柔らかいリズム、Marvin自身による、幾重にも重ねられた、薄く柔らかく奏でられる多重コーラス。 パワフルなホーンとバスドラでデコレートされていた、モータウン特有の、「前に出る」サウンドから一転して、音の感触としては、派手な部分はそぎ落とし、ヴォーカル、コーラス、バッキングそれぞれが前に出過ぎることなく、それぞれのパートの絶妙なハーモニーによって、サウンド総体を作り上げている。
 当たり前の話だけど、オーソドックスなサウンドでも、手間暇とコストをかけることによって、複合的な厚みが生じ、そこに普遍性が誕生する。そのため、どの時代においても音のテイストは古びることなく、確実に一定のアベレージを維持できる、ほんと不思議なアルバムである。

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 「名盤」と呼ばれる定義はいろいろあるだろうけど、俺が勝手に思ってる定義として、「数年に一度,何となく聴きたくなって、つい最初から最後まで聴き通してしまう」アルバムこそが「名盤」だと、勝手に思っている。
 コアとなる曲が数曲あり、誤解を恐れず言えば、多少クオリティの落ちる曲がいくつかあったとしても、トータルのサウンド・メイキング、またはコンセプトの妙によって、それらはアルバムの一構成要素として組み込まれることになる。ヒット曲やタイアップ曲、馴染みのあるカバー曲ばかりを寄せ集めれば良いというわけではない。そんなのは、トータルなテーマを無理やりこじつけただけの、ただのベスト・アルバムに過ぎない。

 このアルバムについては、発表当時から、既に多くのことが語り尽くされている。
 「ベトナム戦争を背景にした曲」、「ソウルとしては初めて社会問題に言及しているため、モータウンが発売に難色を示した」、など、様々なエピソード、逸話などが、まぁ出てくる出てくる。
 そのような時代背景、当時荒んでいたMarvinの私生活事情を念頭に入れながら聴くのも一興だろうけど、あまり肩ひじ張らず、心地よいサウンドに身を委ねるだけで良い。
 我々は、批評をするために音楽を聴いているのではないのだ。


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Marvin Gaye
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1. What's Going On
 夕映えの場末のバーの喧騒の間を縫って、高らかに響くソプラノ・サックス、Marvinのソフト・タッチのヴォーカル、Marvin自身の多重バック・コーラスがレスポンスしながら、終始入れ代わり立ち代わり鳴り響く、珠玉のナンバー。
 泥沼化したベトナム戦争などの社会的な状況、ロックの本格的な台頭、それに伴う商業主義による音楽ビジネスの肥大化にも呼応し、ダイレクトなメッセージ性を強め、ヴォーカルもリズムも等価に並んだサウンドが心地よい。
 まずはとにかく、サウンドを聴いてほしい。メッセージはその次だ。



2. What's Happening Brother
 ベトナム戦争に従軍した弟から聴いた逸話をもとに作られた、シリアスな歌詞。前曲から続く、軽いソフト・タッチのヴォーカルは、そんな重さを見事に中和させ、英語がネイティヴでなければ、普通に美しい一曲。

3. Flyin' High (In the Friendly Sky)
 妖しげなファンキー・ソウル。冒頭のドラっぽい打楽器の音色が、B級カンフー映画テイストを醸し出している。無国籍なサウンドを狙ったのかと思われるけど、そこは狙い通り。
 ベトナム帰還兵の事を歌っているのだけれど、今で言うPTSDによりドラッグ依存が強く、タイトルは底の中毒症状とかけている。

4. Save the Children
 冒頭から、Marvinの不穏さを予感させる語りから始まる、こちらもメッセージ性の強い一曲。レスポンスするのは、抑え気味ながらもソウルフルなMarvinのヴォーカル。
 あまり語られることはないけど、この曲に限らず、このアルバムはベースが聴きどころ。手数が多い割にはうるさくなく、きちんと曲を引っ張るベース・ラインというのは、こういったプレイを言うのだろう。全盛期モータウンの屋台骨を支えた、職人James Jamersonの技が堪能できる。

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5. God Is Love
 6.のInterrude的な小品。セッションの肩慣らしというか、あまり力を入れずにサラッとしたメイン・ヴォーカルが、歌詞の重苦しさを和らげている。短めだけど、コンパクトにポイントをまとめており、次の曲へ繋ぐブリッジで終わらせるには、ちょっともったいなかったかもしれない。

6. Mercy Mercy Me (The Ecology)
 最近CMでも起用されていたため、知らずに耳にしていた人も多い、Marvin初心者でも馴染みやすい曲。実際、カバーも多い。
 ピアノとギター・カッテイングが軽いタッチでリズムを引っ張り、ノン・リバーヴのマルチ・ヴォーカルが軽く、心地よいサウンドに乗せられている。  
 LPでいうところの、ここまでがA面となっており、ほぼ同じサウンドがシームレスにつながっており、一つの組曲として聴くことができる。このソフト・サウンディングの中に、深刻な社会問題やシリアスなメッセージを内包したことが、当時のソウル・ミュージックの中では画期的だったのだろう。
 時事問題も含めたメッセージは、現代人には通じにくい部分も多いが、サウンドだけはずっと普遍的なものだ。



7. Right On
 このアルバムの中では一番長尺の、ちょっとジャズ・テイストの入った、妖しげなコード進行のナンバー。全編に流れるグィロの響きがまたラテンの暗黒面を象徴するかのよう。比較的緩やかなセッション風のナンバーなので、演奏が進むにつれ、曲調が次第に変化してゆく。5分くらいから怪しげさが薄れ、このアルバムのカラーに戻ってくる。どちらかと言えば演奏主体のナンバーなので、Marvinのヴォーカルも構成楽器の一つとして捉えればわかりやすい。だけど聴いてる方にとっては、インパクトはちょっと薄い。

8. Wholy Holy
 タイトル通り、神を讃え、神に捧げる曲。欧米の人なら、神に対して無防備に惜しみない愛情を表明できるのだろうけど、やはり日本人にはわかりづらい世界。広い意味で捉えればゴスペルなのだけど、そこを超越した讃美歌の世界。荘厳としたストリングスに彩られたバックグラウンドは、実はスタンダード・ナンバーをこよなく愛するMarvinならでは。

9. Inner City Blues (Make Me Wanna Holler)
 ブルースというよりはジャズ・ヴォーカルっぽく聞こえる曲。他の曲にも共通するのだけど、スキャットの多用、ほとんどリード楽器と思われるくらい前面に出た、コンガとベースによるリズム・ライン。最後はオープニングとループするかのように、“Mother, Mother“で終わる。





 本編はここまでだけど、最近発表された 『40th Anniversary Edition』では、この後、延々と未発表テイクが続くのだけれど、やはりオリジナル・ヴァージョンと聴き比べると、完成度のレベルの差が大きいため、「だから当時は未発表だったんだな」と納得してしまうテイクが多い。タイトル曲のシングル・ヴァージョンなんて、あまりにもサウンドが素っ気なくて、よくこれで当時売れたものだと、逆に感心さえしてしまう。
 いやもちろん、掘り出し物もあるんですよ。ま、俺もめったに追加テイクは聴くタイプじゃないけど。

 アーティスト、サウンド・コンポーザーとしての名声を今作で得たMarvinだったけど、その後も自分の適性と理想とのギャップに、遂に最後まで折り合いをつけることができなかった。ジャズ・シンガーの夢潰えて落ち込んだかと思えば、今度はプロ・フットボール・プレイヤーに憧れる、という中二病を患うなど、さらに迷走。
 この後、離婚を挟んだり、親族との不和に疲れ果て、スイスに雲隠れした挙句、一世一代のソウルのマスターピース的名作『Midnight Love』を、ほんと最後の最後に生み出すのだけど、そこまで一気に書こうとしたら、とても体力と根気が続かない。。
 Marvinについては、また次回。




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孤高のポップ馬鹿、稀代の傑作 - Prefab Sprout 『Jordan The Comeback』

jordanthecomeback 1990年発表5枚目のアルバム。UKチャートでは最高位7位。時代はすっかりマンチェスター・シーンのまっただ中、Stone Roses なんかと対抗するには分が悪く、よって、セールス面だけ見れば、当時はそこそこの売り上げにとどまっている。
 
 Prefab Sprout が紹介される際、真っ先に挙げられるのは、大体が2枚目『Steve McQueen』(別名(『Two Wheels Good』、当然だけどアメリカでは遺族周辺からクレームがつき、原題ではリリースできなかった)であり、ディスコグラフィーの中では唯一、2枚組レガシー・エディションがリリースされている。何年か前に行なわれた「レココレ」の80年代アルバム・ランキングでも、確か上の方、トップ10には入っている。
 一般的な名作とされているのが『Steve McQueen』なら、長年のファンの中で心に残る名作と言えば、断然『Jordan The Comeback』の支持率が高い。

 前回のAztec Camera同様、このバンドも80年代ネオアコ・シーンから頭角をあらわし、デビュー当初は予測不能なコード進行と自由自在な転調、文学少年的にこじれすぎた抽象性の高い歌詞が話題となり、同じく中二病をこじらせていた、斜め上ばかり見ていた日本の若者(そのほとんどがロキノン読者とされている。うん、もちろん俺もそうだ)が食いついた。
 ただ若気の至りとも言える、ささくれ立ちヒリヒリしたサウンドはここで一旦幕を引き、次作『Steve McQueen』ではポップ職人としての覚醒がはじまり、一聴するとAORかと思われるメロディー・ラインと、今後長い付き合いになる、Thomas Dolby による凝ったサウンド・メイキングの妙によって、メジャー、マイナー・シーン共に高い評価を得ることになる。
 『Jordan the Comeback』とは、蒼き少年性のよじれた青臭い情熱が飽和点に達し、わずかに未成熟な部分を残すことによって、逆に完成度の高さを証明した、初期の秀作である。メイン・トラックでもあるシングル・カット「When Love Breaks Down」がUKチャート25位と、これまでの最高位を獲得したことも、大衆性を獲得できた一因である。
 
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 この後、3枚目『From Langley Park to Memphis』がリリースされるのだけど、これがかなりの難産で、完パケまで3年のブランクが空いている。彼らに限らず、近年になるに連れてアルバムのリリース・ペースは長くなる傾向にあり、3年くらいなら全然普通、決して長い方ではないけど、ポップ・スターのステップを昇り始めたばかりの若手バンドとしては、致命的とさえ言える異例の長さだった。
 ただ、サウンドの具体像が見えていたことによって、完成図はしっかりしており、よって長い時間をかけることは想定の範囲内であったこと、また、手間暇をかけることによって、それに見合う完成度をメンバー自身だけでなく、レコード会社もそれなりの理解を示していたことが、レコーディングの長期化を招いたと思われる。
 どういったコネクションだったかは不明だけど、なぜか Stevie Wonder や Pete Townsent など、あまり関連性はないけど、とにかく豪華なゲストを招き入れたことも手伝って、UKチャート最高5位と大健闘した。「Cars and Girls」「The King of Rock 'n' Roll」「Hey Manhattan!」と、シングル・カットも多い分、注目を浴びる期間も長かった。
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 決してライブには積極的ではない若手バンドのわりに、商業的には成功したと言えるけど、ここからリーダー兼ヴォーカリスト兼ソングライターである Paddy McAloon の迷走が始まることになる。
 同世代のソング・ライターの中では突出した能力を持った Paddy だからして、その作曲レベルの経験値は増し、技術的なスキルが上がってゆくことはもちろんだけど、それに伴って作品のクオリティの要求度合い、ジャッジメントのレベルも次第にアップしてゆくのは、自然の成り行き。盟友 Thomas と共に、試行錯誤を繰り返しながら、レコーディング・スタジオに籠りきりの日々が続く。
 先行きの見えないレコーディングがあまりに長引いたおかげで、次第にレコード会社からのプレッシャーは強くなり(多分レコーディング費用が思いの他かさんだおかげで、損益分岐ラインを割りそうになり、継続の条件として、何かしらのアイテム・リリースを要求されたのだと思う)、当時からすでに幻の名作扱いとなっていた『Protest Songs』をリリースすることになる。
 
 いわくつきのアルバム『Protest Songs』の制作は実は古く、『Steve McQueen』完成後、2週間で一気に作り上げたアルバムである。
 Thomas の緻密なコントロールによって練り上げられた『Steve McQueen』完成後、解放感に満ちあふれたメンバーらが、勢いの余っているうちに、今度はまったく逆のコンセプト、もっと肩の力の抜けた作品を作ろうと、一気呵成に制作された。メンバー(ていうか Paddy )側の意向としては、『Steve McQueen』と陰陽の関係で、間髪入れずにリリースしたかったのだけど、意外に『Steve McQueen』がチャート上で健闘したこと、またヒット・アルバムの次回作としては、あまりに地味な印象だったため、レコード会社がリリースを拒否する事態になってしまった。
 で、月日は流れ、当初は不満タラタラだったメンバー達でさえ、すっかり存在を忘れていた頃、レコード会社の都合によって、さもニュー・アルバムかのようにプロモートされてリリースされた、という経緯。
 長く待たされたファンは「あの幻の作品!」と歓喜し、相変わらず高いソングライティング・クオリティに満足した。Paddy 自身としては、もはやすっかり忘れていた作品を、今ごろになってニュー・アルバムまでの繋ぎとして持ち出されたことが不本意だったらしい(実際、プロモーションを拒否した、とのこと)。
 
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 リリース直前までゴタゴタが続き、長い長いレコーディング期間を経て完成したのが、この『Jordan The Comeback』。発表当時からすでに名盤の呼び声が高く、雑誌レビューでもほぼベタほめの内容が多かった。
 それぞれの曲のクオリティがとても高い。練り上げられたソング・ライティング、丹念に磨きこまれたサウンド・プロダクション。どれも一流の仕事である。個々の完成度は恐ろしくハイレベルだけど、良い意味でどの曲もアルバム中のワン・オブ・ゼムとなっており、すべてがこのアルバムのために構成されており、すべての音が大きな括りである『Jordan The Comeback』の世界のために鳴っている。
 なので、シングル・カットされた「We Let The Stars Go」が、このアルバムの中では比較的有名な曲だけど(実際、俺もこの曲のPVを見てファンになった)、シングル一曲だけを取り出して聴くより、アルバムを通して聴いて、前後の流れも把握しながらの方が、Paddy の創り上げた世界観を堪能できる。
 
 ジャケット裏を見ると全4パートで構成されており、それぞれにコンセプトもあるのだけど、あまり歌詞の内容にはこだわらず、心地よいサウンドとメロディに身を任せてる方がよい。このように全体を俯瞰した構造のアルバムは、コンセプト系が強いプログレのアルバムでよく見受けられるのだけど、そこまで一貫したストーリー性があるわけではない。理屈よりはまず、耳で心で聴いて、感じてほしい。
 コンポーザー Paddy McAloon 、プロデューサーである Thomas Dolby とのタッグで作り上げた、極上のポップ・ソングの集合体である。


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1.Looking For Atlantis
 軽快なドラムからアコギのかき鳴らし、紅一点である Wendy Smith による、透明感のあるコーラスで幕を開ける。アルバムの始まりとしては最適。明快な言い訳なしのポップ・サウンドは、メロディ自体はそれほどフックは聴いていないのだけど、やはりこのサウンド、そして Paddy のちょっぴりハスキーなヴォーカルによって、つい口ずさみたくなるようなラインが散りばめられている。
 なのにシングルはUK最高51位。世間はもっとハードでダンサブルな音を求めていた時代である。
 
 

2.Wild Horses
 Paddy といえばよくメロディ・センスが取沙汰されるけど、これは珍しくリズム・パターンに特徴のある曲。このアルバム以降、Paddy の嗜好によって、サウンドの質感を重視するがあまり、必然的にメロディー重視となってゆくのだけど、ここではまだ、リズムとメロディーの遊びがうまく融合している。
 
 

3.Machine Gun Ibiza
  なぜかプロモEPのみが存在してるのだけど、結局本リリースには至らなかった、謎の経緯を持つ曲。ドゥーワップ調のコーラスとリズムの調和が美しい。とてもポップな曲調なのだけど、タイトルがマシンガンって…。
 
4.We Let The Stars Go
 アコギのストロークの使い方、音像処理がうまい。このアルバムの中では。比較的知名度の高い曲。
 少し熱のこもったハスキーなPaddyの声質は、時にJohn Lennonを連想させる。『星をきらめかせて』という邦題はちょっと恥ずかしいけど、曲のイメージを端的にあらわしてる点で見れば、名邦題だと思う。
 
 

5.Carnival 2000
 4曲入りEP『Jordan:The EP』にも収録された、バック・トラックはほんと明るいカーニバルなのだけど、普通に歌っても、どこか憂いを感じてしまうPaddyのヴォーカルにウキウキ感は少なく、どこか狂騒から疎外されてるような、第三者的な視点を感じる。どうもポジティヴに考えることができない人なのだろう。と思ったら、そういえばPrefabってイギリスのバンドだった。なるほどね。
 
6.Jordan: The Comeback
 こちらも『Jordan:The EP』に収録。タイトル・トラックのくせに地味というのは、やはりどこか変化球を好む英国人気質のあらわれか。半分近くをナレーションのようなモノローグで埋めており、このアルバムが単なるポップ・ソングの寄せ集めでなく、きちんと考え抜かれたコンセプト・アルバムであることを暗示させている。
 
7.Jesse James Symphony
 出だしはマーチのリズムから始まるのに、次第に曲調が微妙に変化し、遂にはタイトル通りSymphonyになる、不思議な曲。
 うちの妻がこれを一聴して、「水戸黄門みたい」と評した。確かにその通りだ。
 
8.Jesse James Bolero
 7.とのメドレー。やはり水戸黄門が頭を離れない。
 
9.Moon Dog
 地味な曲だけど、サビに向けて少しずつ盛り上がりを作っていくのは、ポピュラー・ソングとしては非常にまっとうな構造の曲。なので、すごく地味なメロディ・ラインが続くのだけど、変にクセがないので、ずっと聴いてられる点として、俺の中で『Jordan』の中ではベスト・トラック。
 
 

10.All The World Loves Lovers
 コンパクトにまとめた3分間のエレ・ポップ。このアルバムの中では珍しくメロディが立っており、だいぶ後になってからシングル・カットされている。UK最高61位。まぁ地味な曲だけど、アルバム・リリース1年以内だったら、もうちょっと上に行ってたかもしれない。
 
11.All Boys Believe Anything
 とは言っても、この曲も同じく1分足らずで終わってしまう。普通に1曲にすればよかったのに、と思ってしまうのは、ちょっと合理的な考え過ぎる。あえて前・後半と分けたことに、コンセプト・アルバムとしての意図があるのだ。あるのだろうけど、でも、やっぱまとめちゃっても良かったんじゃない?
 
12.The Ice Maiden
 Thomas Dolbyのプロダクションが強いのだろう、曲としては地味なのだけれど、サウンドの妙で、ついつい最後まで聴いてしまう曲。
 どの曲もそうなのだけど、メロディ・メーカーとしては一流のPaddy、ただヒット・メーカーとしてはちょっと難があって、フックの効いたメロディが書けない。それとも書くのを恥ずかしがってるのかは知らないけど、アレンジという肉づけを取り払ってしまうと、案外素っ気ないメロディの曲も多い。
 そういったウィーク・ポイントを、自分でもわかっているのだろう。敢えてThomasに丸投げすることによって、これもきちんと楽曲として成立している。
 
13.Paris Smith
 
前曲から切れ目なく続く、同じく武骨なメロディ、ていうかモノローグっぽく始まる曲。でもサビはキャッチーなメロディを使用している。これも3分足らずの短めの曲なので、もう少し展開して長尺にしたら、シングルでもありだったんじゃないかと思うけど、まぁ売れないよな、きっと。
 
14.The Wedding March
 往年のハリウッド映画のサントラみたいな小品。アルバムの流れの中ではうまくはまってるけど、単品だとちょっとキツイ。アメリカを意識すると、こういった曲も入れてバラエティを持たせないとダメなのだ。

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15.One Of The Broken
 『Jordan:The EP』1曲目を飾る、このアルバムの中でも屈指の名バラード。基本Paddyのアコギ弾き語りなのだけど、薄く被さっているサウンド・メイキングが絶妙。キリスト教が基盤となった社会において、神を讃える歌というのは日常であり、ましてやPaddy世代ともなると、こういった荘厳とした曲を、しかもポップに聴かせることができるのは、ヨーロッパ人ならでは。
 
16.Michael
 シングル"Looking for Atlantis"B面ににも収録された、Paddyのモノローグから始まり、次第にゴスペルめいたコーラスが加わり、そして大団円へと収束してゆく。このように神を直接取り上げたテーマ、アメリカなら大人数のゴスペルとなって、次第にテンポも速くハイ・テンションになるのだけれど、ヨーロッパでは畏れ多い存在として、へりくだった姿勢が垣間見えてくる。
 
17.Mercy
 15.から続く組曲の締めくくりとなる、Paddyによるアコギの弾き語り。ほんとこれだけ。飾りも何もない、ほぼ素のままのPaddyの祈りが刻まれている。
 
18.Scarlet Nights
 このアルバムの中では、唯一バンド・サウンドっぽいポップ・ソング。前作『From Langley Park to Memphis』収録"Golden Culf"とサウンドのテイストが似てるので、もしかしたら制作時期は近かったのかもしれない。
 なかなかテンションの上がる曲なので、アルバム構成的には、もう少し前の方に入れてもよかったんじゃね?と勝手に思ってしまうけど、Paddy的にはここでOKなのだろう。
 
19.Doo-Wop In Harlem
 Paddy風ゴスペルの完成形。このアルバムにもゴスペル的要素を含んだ曲はいくつかあるけれど、これはゴスペル・ミュージックと、そしてキリスト教的信仰と正面切って向かい合って作られた曲。ゴスペルと言えばもっとアップ・テンポの、多勢によるアカペラが連想されてしまうけど、Paddyにとってのアカペラはどちらかと言えば讃美歌に近く、そしてすごくパーソナルなもの。宗教的体験を皆で共有するのではなく、あくまで神と対峙の姿勢というのが、Paddyのスタンスである。

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全19曲60分超。大作。一年に一度くらいは、特に"Looking For Atlantis"と"Moondog"が聴きたくなり、かけたら結局、最初から最後まで通して聴いてしまうことになる。
 そしてまた、一年が過ぎてゆく。
 
 どの曲もクオリティは高いのだけれど、ヒット・チューンとしては必須となるフックのメロディが少ないので、単体では地味な曲ばかりである。ただ、緩やかでもコンセプトを設定し、テーマに沿って曲順を構成することによって、個々の曲の輝きが増し、結果、全体のクオリティも向上する、という構造は、昔から『Abbey Road』や『Sgt.Pepper’s』などでも使われた手法だ。
  一曲だけを抜き出すより、通して聴きたくなるアルバムなので、時間のある時に、じっくり聴いてみてほしい。

  このアルバムの完成後、バンドとして一つの頂点を極めた、と判断したのか、Prefab Sproutは活動自体が縮小、遂にはPaddyのソロ・プロジェクトへと変貌していく。



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北海道の中途半端な田舎に住む、そろそろアラフィフ男。ほぼ週1のペースで音楽ブログ更新中。節操ない聴き方と思われてるけど、自分の中では一貫してるつもり。 最近は蔵書の整理がてら、古い本を再読中。ジョン・アーヴィングから始まって、フィッツジェラルドやゾラ、モームなど、いわゆる古典の復習中。いつになったら終わることやら。新刊読めねぇや。
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