好きなアルバムを自分勝手にダラダラ語る、そんなユルいコンセプトのブログです。

Costelloさんは最初からCostelloだった、の巻 - Elvis Costello 『My Aim is True』

folder 前回のJoe Jacksonに続き、今回もデビュー・アルバムのご紹介、同じくパンク・ムーヴメントの流れでデビューした、Elvis Costello。
 デビュー当時のCostelloとJoeとは共通点が多く、彼の場合もまた、このアルバムのチャート・アクションがUK14位US32位と、当初からイギリスはもちろんのこと、アメリカでもウケが良く、セールス100万枚に到達、ゴールド・ディスク認定を受けているところも似ている。

 アメリカという国が日本の25倍の面積であることは良く知られている。それに引き替え、総人口は日本の倍程度なのだけれど、人種の坩堝という異名を取るだけあって、様々な価値観が存在する。
 音楽の世界に特化すると、このアルバムのリリース当時の1977年、音楽業界の世界的なトレンドは断然ディスコ・サウンドだったのだけど、だからと言ってみんながみんな、そればかりに目が行っていたわけではない。今となっては猫も杓子もサタデー・ナイト・フィーバー、John Travolta一色だったように報じられているけれど、多くの人々にとってディスコ・サウンドというのは都会の若者が聴くような音楽という認識であり、南部の保守的WASPらにウケる音楽ではなかった。彼らには彼らのための音楽、古色蒼然とした昔ながらのカントリー・ミュージックが、しっかりと生活に根付いていた。
 以前、Blues Brothersのレビューでも書いたけど、ムショ帰りの彼らが再結成後、最初にプレイしたのは、当時、南部のどんな田舎でも必ず一軒はあったカントリー・クラブだった。Willie NelsonやDolly Partonをこよなく愛するオーディエンスの前では、彼らが得意とするソウル・レビュー・スタイルはまったくウケが悪くブーイングの嵐、そこで仕方なしにやってみせたのが『ローハイドのテーマ』、そしてこれがまた大ウケするのである。

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 こういった例に漏れず、案外アメリカというのは、地域によってはめちゃめちゃ保守的な傾向が強い。あまりに広大過ぎる国土のため、どうしても最大公約数的なものばかりがブームとして取り上げられているけれど、それすらもごく少数での盛り上がりということは、普通のアメリカ人ならとっくに気づいていた。
 CostelloやJoeが受け入れられた土壌というのも、アメリカではほんのごく一部なのだけれど、ゴールド・ディスクを獲得するくらいなので、それなりのニーズは確実にある。少なくとも、イギリス全土を束ねても適わないくらい、裾野はだだっ広い。

 考えてみれば、パンク・ムーヴメント襲来の70年代後半アメリカでは、彼らのようにベーシックなロックン・ロールをプレイするアーティストがあまりいなかったことも、ヒット要因の一つである。
 そのパンク・ムーヴメントだけど、今でこそ歴史の転換点として大仰に伝えられているけれど、前述したように、音楽業界全体に影響を及ぼすだなんて、とてもとても。ましてやセールス面だけで取り上げたとしても、もろもろのディスコ・サウンドと比べて、そりゃもうお話にならないくらい。
 ロックのカテゴリーで当時チャート・トップに君臨していたのはEaglesとFleetwood Macであり、どちらにしろロックン・ロールと呼ぶには、あまりにかけ離れたメンツばかり。
 ある意味隙間産業、ニッチな部分のニーズにスッポリうまく嵌まったのが、彼らイギリスのパンク・ロッカーらなのであった。

 芸名にElvisを使用(ちなみに本名はDeclan Patrick Aloysius MacManusという、Elvisとは何の関係もない)、ジャケットでの出で立ちは、まんまBuddy Hollyという、往年のロックンローラーへのリスペクト満載といった趣きだったので、その辺は多少、ユーザーへ向けての戦略的な部分があったんじゃないかと思われる。

 Joeの場合もそうだけど、この時代にリリースされたアルバムは昔から、『パンク・アルバム50選』などというお題目のディスク・ガイドで、ほぼ定番としてリストアップされており、最早さんざん紹介され尽くされている。
 なので、ちゃんと聴いたことがないのに聴いた気になってしまっている、または逆にヘソを曲げて聴く気になれないという場合も多い。

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 これは音楽全般に言えることだけど、評論家やリスナーから名盤という位置に祭り上げられてしまったがため、「これは名盤なんだから」と自分に言い聞かせながら、クソつまんない音楽を聴いちゃってる人も結構多いはず。何の予備知識もないままプログレや古典ブルースを聴いてみても、どれも同じように聴こえてつまらないだけだし、物によってはいつの間にか寝てしまったりなど、むやみなセレクションによって挫折して聴かずじまいのジャンルは以外と多い。

 個人的にもう何百回も聴いてるこのアルバムだけど、しばらく聴いてなかったので、今回久しぶりに車の中で聴いてみたら、あらビックリ、ほとんど覚えてる曲ばっかりだった。
 最近はそうでもないけど、一時期海外のブートCDに凝っていたことがあって、Costelloのライブもいろいろ漁っていたのだけれど、どの年代においても『My Aim is True』からの選曲が必ず1,2曲はある。この人のライブ選曲の特徴として、ワーナー以前:以後の割合がほぼ7:3くらいなので、必然的に初期の曲が多くセレクトされる傾向にある。多分、今もその割合はそんなに変わってないんじゃないかと思われる。

 このアルバムのレコーディング時点では、Attractionsはまだ参加しておらず、代わりにバックを務めたのが、あのHuey Lewis & The NewsのThe Newsの方、このNewsの主要メンバーが中心となって行なわれたというのは、結構有名な話。
 当時新興レーベルだったStiffとしては、バンドで売り出すと経費が嵩むので、最初はソロで売り出す予定だったらしい。しかもプロデュースは、レーベル・メイトであるNick Lowe、このNickもまた、具体的なプロデュース作業はほとんど行なわず、ミキサー卓の前にどっかり座って飲んだくれるだけだった、ということなので、まぁインディーズ・レーベル特有のアバウトさも手伝って、比較的雑な扱いだったことがうかがえる。
 
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 デビューしてから間もなくAttractions結成、その後、英米を中心としたツアーが始まるのだけれど、まぁその数の多いこと。当時のツアー・データを見ると、ほとんど移動日もなしに、月20日以上はライブの予定が詰め込まれている。それだけなら当時のバンドも似たようなものだけど、そのうちのいくつかはダブル・ヘッダー、昼夜二回公演という日も見受けられる。
 それだけ需要があった、廻れるところはとにかくブッキングしまくったのだろうけど、その辺にバンドのコンディションなんてまったく考慮しない、労基?何それ?というスタンスのマネージメントの姿勢がうかがえる。
 そしてまた、それすらを跳ね返すバンドの勢い、どうにか這い上がろうとする若さとパワーがビシビシ伝わってくる。いやほんと、何枚かはオフィシャルでもリリースされているけど、初期のライブはネットで漁りまくるほどの価値は絶対ある。大きな声では言えないけど、俺もいくつか持ってるし。

 そんな熱気や野心、そして現状不満を見事サウンドとして封じ込めた、姿勢としてのパンク、次の『This Year’s Model』もそうだけど、俺にとっては極上のロックン・ロールなアルバムである。
 パブ・ロックっぽさも強いけどね。


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Elvis Costello
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1. Welcome to the Working Week
 ほんの1分半程度の短い曲だけど、疾走感は群を抜いている。導入部→メロディ→サビ→再びメロディ→最後にサビ、という展開が凝縮されている。アルバム一曲目の自己紹介的な出だしは完璧。しかもこの曲、Costello自身も血糖値が上がるのか、近年の演奏でもほぼ同じテンションでプレイしている。
 ちなみに当時、シングル”Alison”B面でリリース。A面でもいいんじゃないかと思えるくらいのクオリティだけど、ちょっと尺が足りないか。



2. Miracle Man
 ちょっとポップなロックン・ロール。最初からアメリカ・マーケットを意識していたかのような、覚えやすくノリやすい曲である。今になって聴いてみると、ちょっとドラムの手数が多いかな?Pete Thomasならもっとシンプルに、スクエアなドラムだったと思う。

3. No Dancing
 ドラムがやはりアメリカ寄り、出だしがもろ”Be My Baby”である。このドラム・パターンはどの年代においても人気があるので、やはりこの曲もよくライブで演奏されている。あと、コンテンポラリーなサウンドを目指していたのか、どのアルバムに比べてもコーラスの厚さが目立つ。アメリカ勢が多いという先入観なのか、Doobie Brothersあたりと印象が被ってしまう。

4. Blame It on Cain
 ちょっぴりブルース・スケールも引用している曲。ほぼサビ一発みたいな曲だけど、この時期にブルース成分を入れてきたのは、やはりアメリカ勢の為せるワザか。

5. Alison
 “She”があれだけ爆発的にヒットするまでは、多分これがCostelloの中では一番有名な曲だったはず。長年のファン、そして俺にとってもすっかりお腹いっぱいの曲だけれど、でもしかし、やはり聴くといいんだよな、これ。
 これだけ長いキャリアなので、様々なパターンの曲を作ってきたCostello、当然「どっかで聴いたことない?」ってな曲も数多く存在するのだけれど、この”Alison”タイプの曲はこれ以降、作られていない。Costelloのバラードといえば、後年になるにしたがって音数が少なくなり、スロー・テンポを朗々と歌い上げることが多いのだけれど、ここまで速いテンポのマイナー・コードの曲は、多分俺が知る限りではこれくらいだと思う。最初から完成されたポップ・バラードを作ってしまったがため、これ以上の曲が作れなかったのだろうか?
 ちなみにシングル・リリースもされているのだけれど、当時はUS・UKともチャート・インはなし。USは仕方ないとして、UKについてはちょっと不思議。なにやってんだ、英国人っ。



6. Sneaky Feelings
 ここでA面ラスト。比較的アメリカ寄り、ミディアム・テンポのロックン・ロール。A面はポップな面を強調しているのか、それほど攻撃的な曲はない。これも歌いやすくノリやすいナンバー。

7. (The Angels Wanna Wear My) Red Shoes
 ここからがB面。
やっと「怒れる若者」としてのCostelloが登場する。これまでとレコーディングのメンツは変わらないはずなのだけれど、サウンドの攻撃性がまるで違っている。
この曲もライブで長年レパートリーに加えられており、1.同様、当時と変わらないテンションで歌い継がれている。

8. Less Than Zero
 記念すべきデビュー・シングル。こちらもどこにもチャート・インせず。うん、デビューにしてはちょっと、インパクト弱いよな。いや、いい曲なんだけどね、シングルとしてはちょっと、華がなかったんじゃないかと思われる。

9. Mystery Dance
 そう考えると、こちらの方が断然シングル向き。Presleyの現代的解釈とでも言うような、性急な8ビート。間奏のギターがカントリー・ロックっぽいところも、初期Presley の意匠をそのまま受け継いでいる。1.同様、こちらも1分半程度のめちゃくちゃ短いナンバー。
 
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10. Pay It Back
 ちょっとテンポの遅いロックン・ロール。9.の後に聴くと、なんかモッサリ感があって胃もたれする感じなのだけど、単体で聴けば普通に良質のナンバー。

11. I'm Not Angry
 タイトル通り、パンクな曲。パンクの名盤と呼ばれているこのアルバムだけれど、ほんとに性急なビートと怒りに満ちたメッセージを兼ね備えたナンバーというのは、実は数少ない。B面は比較的アップ・テンポの曲が多いのだけれど、それでもそれ以上に若干レイド・バック気味のナンバーが多いのは、やはりバックがアメリカ勢が多くを占めている影響だろうか。

12. Waiting for the End of the World
 そういった数少ないパンク・ナンバーが続く。こちらもギターのレイド・バック感が強く、一瞬、UK産であることがわからなくなる場合もある。ただビートはきちんと英国風味を醸し出している。

13. Watching the Detectives
 初リリース時、UKオリジナル盤には収録されておらず、日本盤のみのボーナス・トラック扱いだったのだけど、現行CDでは普通にこのポジションで収録されている。
 シングルとして、UK15位US108位、初めてチャート・インした、”Alison”と並んで最初期の名作の一つ。
 この時期に既にレゲエ・ビートを取り上げていたこと、アルバムとはレコーディング・メンバーが違い、ここで初めてSteve Nieveがキーボードで参加していること、Detective(探偵)という、ロックとは馴染みづらそうな単語を使ってヒットさせたことなど、書きたい事はいろいろあるのだけれど、やはり肝心なのは音。
 こちらはUK勢が中心のメンツ、演奏もCostello自身を含めて4人という最小限のフォーメーションで挑んでいる。ソリッド感がまるで違うこと、余韻を残すことのない、シャキッとした音の響きもまた、この曲の魅力の一つである。






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純度100%のロックンロールなデビュー作 - Joe Jackson 『Look Sharp!』

folder 1979年にリリースされた、Joe Jacksonのデビュー・アルバム。この手のストレートなロックン・ロールには固定的なファンがついているらしく、デビューにもかかわらずそこそこの売り上げ、UKでは最高40位まで上がっている。
 上がっているのだけれど、実はそれ以上に、アメリカではなんとビルボード最高20位まで上がっている。単純に両国人口比率で考えると、ほぼ4倍の開きがあり、しかも順位的にも倍なので、8倍の開き。ちょっと単純すぎる計算だけど、当初よりイギリスよりアメリカで好評を得たことは間違いない。

 1979年デビュー当時のツアー・データがファン・サイトで公開されているのだけれど、推移を見てみると、最初こそ地元イギリスを中心に回っているけど、この年の後半ではアメリカ・カナダが中心となっており、その成果が実を結んだのか、その年の内にアメリカでゴールド・ディスク(売り上げ50万枚以上)を獲得している。
 (当時から)髪も薄くて男臭くてムサ苦しいメンツのUKパンク・ロッカーとしては、大成功の部類に入るんじゃないかと思う。キャリアのスタートからアメリカで好セールスを記録したという点と、シンプルなロックンロール・サウンドという共通項から、当初はElvis Costelloとセットで紹介されることが多かった。

 以前も書いたようにこの人、もともとは根っからのロック/パンクの人ではなく、Royal Academy of Musicという、王立の由緒正しき音楽アカデミーにて、きちんとクラシックを中心とした音楽理論を学んできた人であり、本来ならポピュラー音楽畑の人ではない。クラシック業界から挫折した末にこちら側へやってきた、意に沿わない形でのデビューであり、当時の本人の心境としては、なかなか複雑だったんじゃないかと思われ。
 ほんとは高度な作曲理論を習得していたり、プレイヤーとしても演奏スキルがめちゃめちゃ高いにもかかわらず、敢えてそれを封印してレベルを落とし、パンク~ニューウェイヴ・ムーヴメントの勢いに乗ってデビューしたというのは、Policeとも共通している。
 そういえば、どちらも所属レーベルは同じA&M、何かと共通項の多い人である。
 
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 デビュー・アルバムとは、そのアーティストの今後の方向性がすべて詰まっている羅針盤のようなもの、とよくたとえられるけど、特にJoeの場合、ここに収録されているほぼ半数の曲が、今でもライブの定番レパートリーであり、結果代表曲となっているものも多い。
 特に3枚目『Beat Crazy』までは名曲のオンパレードであり、ここまでのラインナップだけで充分ライブが成立してしまうというのも、スゴイ話。アンコールにチョロっと”Stepping Out”でも歌っておけば完璧だ。

 別にデビュー当時から成長していないわけではない。
 この後Joeは『Beat Crazy』まででストレートなロック・ナンバーを一旦究め、その後はジャズやらラテンやら現代音楽やらを交えた、Joe独自のジャンルレスな音楽を形作ってゆく。それはそれで好評なのだけど、古くからのファンから見れば、ライブの締めやアンコールでは、やっぱり拳を振り上げて”One More Time”がサイコー、というノリになってしまうのだ。
 近年のライブはロック・バンド・スタイルではなく、ピアノ・トリオ編成が多いこと、またJoe自身の体力的な問題もあって、初っ端からトバシまくり、オール・スタンディングとはいかないけれど、興が乗るに連れて、鍵盤を叩きつけ唾を飛ばしまくって熱唱するJoeのテンションは、昔から変わってない。
 
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 アルバムごとに変遷しまくる音楽性のため、一言ではカテゴライズしにくい人なのだけど、一応このアルバムと2枚目までは、ほぼセットと言って良いほど音楽性が似ており、パンク/ニュー・ウェイヴ系のサウンドとして分類されている。まぁ俺個人としてはむしろ、パンクの前にちょっとだけ盛り上がったパブ・ロック系だと思うのだけれど。
 ヴォーカル/ピアノ、ギター、ベース、ドラムという4ピース、ロック・バンドとしての基本、必要最低限のメンバーのみでサウンドは作られており、余計なエフェクト成分が入っていないことが、時代性を超えて通用する音なので、逆にいつまでも古びた感じがないことが、この時期の魅力なんじゃないかと思う。
 時代を象徴する、これ見よがしなモノ・シンセの音色、もう少し歴史を下ると80年代特有のゲート・エコーや、残響音をカットしたバス・ドラなどが出てくるのだけれど、そういった最新鋭のサウンドやトレンドには、昔から関心を持たない人である。このような一貫したサウンド・ポリシーが、ミュージシャンとして、そしてそれ以上に真摯な音楽家としての矜持の正しさが感じられる。

 小手先でいじくり回した音色にこだわるのではなく、きちんとした楽曲を、きちんとした演奏で再現すること。
 そのためには、バンド・アンサンブルを緻密に構成したり、有名無名を問わず、腕の良いミュージシャンと組む、リハーサルは入念に、ライブではいつも真剣勝負、現場での鍛錬によって、さらに演奏・作曲スキルは向上してゆく。
 書いてみれば至極当たり前のことなのだけど、当たり前のことに精力を傾けることは、何においても大事なことだ。
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 デビュー当時の時代背景としては、やはりパンクの全盛期、既成概念にとらわれた旧来のロックを否定・破壊行動に向かったと思われているけど、ファッション的な要素を抜きにして、純粋に音楽的な意義で考えると、正確には原点回帰というニュアンスの方が近い。
 プログレに代表される、冗長で高尚なものになってしまった音楽ビジネスを一旦リセットし、シンプルでコンパクトなロックンロールへのリスペクトというのが、パンク・ムーヴメントの音楽的な成果である。
 そういった現状への不満から、ロンドンの街角レベルで芽吹いたのがパブ・ロック・ムーヴメントであり、それをもっとスキャンダラスに、そして大々的に展開したのが、パンク・ロックの勃興という次第。
 
 で、Joe Jackson、若いうちはメイン・ストリートの音楽をアカデミックな環境で学んでいたため、いわゆるスタンダードな音楽への造詣は深い。深いがゆえ、特に対極的な価値観のもの、先人によってほぼ完成され尽くされたクラシック漬けの人間が、既成概念の破壊をテーマとしたパンクと出会ってしまった場合、どうなるのか。
 強力な拒否反応を示すか、またはそのインパクトに当てられて深みにはまり込むか。その対極の差が広ければ広いほど、比例してその振れ幅も強くなる。

 てっとり早くメジャー・デビューするため、敢えて戦略的にシンプルなロックンロールを選択した、という見方も出来るけど、そうは言っても人間、まったく興味のない事をし続けられるようにはできていない。やりたくないことをやり続けても、どこかにガタがでるか、それともボロが出るかのどちらか。
 なので、まったく下心がなかったわけじゃないけど、それなりにリスペクトはしていた、と考える方が自然である。


Look Sharp! (Remastered)
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1. One More Time
 オープニングは渋めのロックンロール。バックは基本の3ピースなのだけど、驚きなのは、どのパートもサウンドに埋もれず、しっかりディティールが判別できること。デビューしたてのバンドなので、レコーディングにそれほど時間をかけられたわけでもない。
 これはもともとの演奏力、楽器のポテンシャルを最大限に引き出せるテクニック、から来るもの。いくら録音技術が良くたって、下手くそなら意味がない。既にそれだけのスキルを積み上げていたのだ。
 ちなみに、このアルバムからシングル・カットされた3枚目のトラックである。USカレッジ・チャートでは最高17位。



2. Sunday Papers
 引き続き、今でもライブではほぼ定番となっているナンバー。すでにレゲエ・ビートを導入しており、やはり他のパンク・バンドとの差別化が図られている。昔から語られているけど、やはりこのバンドの要はGraham Mabyである。とにかく手数が多いのにうるさくなく、しかも適切なフレージングで曲をリードする。終盤でテンポ・アップしてパーティ・ソングっぽくなるのはご愛嬌。
 ちなみにこれは2枚目のシングル。USカレッジ・チャートでは最高20位、イギリスのデータは見つからなかった。それだけアメリカ主導で人気が出たのだろう。

   

3. Is She Really Going Out with Him?
 三たびライブの必須アイテム・ナンバー。これはJoeもかなりのお気に入りらしく、後年の『Live 1980-86』では様々なヴァージョン違いで3トラック収録しているくらいの別格扱い。この曲も様々なアレンジによって、長年親しまれているけど、この初期ヴァージョンが一番、というファンも多い。
 前曲同様、レゲエ・ビートが一部導入されていることも、エキゾチックなアレンジに一花添えている。
 これがデビュー・シングルであり、アルバム先行という形でリリースされた。UK13位でも充分スゴイのだけれど、アメリカではビルボード総合でなんと21位にチャート・インしている。そりゃ思い入れもあるよな、きっと。



4. Happy Loving Couples
 ちょっとモッズ・ビートの入ったビート・ロック。やっぱりベースだよな、この曲も。ここまでハードな質感のナンバーが続いたけど、ここで少しペース・ダウン。当時のJoeにしてはポップなメロディの、親しみやすい曲。

5. Throw It Away
 前曲が突然カット・アップされ、間髪入れず、Joeのカウントで始まる、疾走感溢れるドライヴ・ナンバー。一番パンクっぽいのが。多分この曲。Joeもここでは本腰を入れ、ピアノを弾きまくり、エコーまでかけている。中盤でのシャウトはどこか”Beat Crazy”を連想させる。
 ここはギターのGary Sanfordが頑張ってリフを弾きまくっている。

6. Baby Stick Around
 ここからB面スタート。
 こちらも性急な8ビートで、やはりライブの定番。盛り上がること必至である、ロカビリー成分もちょっぴり入った、暴力的なビートながら、覚えやすいメロディーが人気の高いナンバー。

7. Look Sharp!
 俺的にはDr. Feelgoodを連想させる、ステージで練り上げられたように演奏し慣れた体も感じとれるトラック。これも定番だよな、ブートでよく聴いてたし。
 ここでのバンドは比較的クール。リズムも走ることなく、スクエアなリズムをキープしている。はっちゃけるのはやっぱり、いつもJoe である。

8. Fools in Love
 こんなにレゲエばっかり入ってたっけ?というのが正直な感想。
 Policeもそうだけど、Joeもまた、当時のレゲエに溢れていたシリアスな部分、じっとりした冷や汗のようなサウンドを展開している。これも定番であり、名曲。
 USカレッジ・チャートでは9位まで上昇。こんなハードなサウンドがウケてしまうのが、アメリカという市場の大きさ、懐の深さである。



9. (Do the) Instant Mash
 これはJoeにしては珍しく、ロックン・ロールではなく、普通のロック。Garyによるオーソドックスなギター・リフが、それを象徴している。中盤でのJoeのハープがまた、中途半端なブルースを演じている。この人の場合、あまりブルースは似合わないし、こういったサウンドなら、Dr. Feelgoodの方がずっとうまい。

10. Pretty Girls
 これも何だかな、普通のロックかな。アルバム制作のためにかき集めたのか、それともサウンドの幅を持たせるため、敢えてこういったベタな曲にも手を出したのか。まぁいいんだけど、俺的にはそれほど印象に残ってなかった曲。

11. Got the Time
 冒頭のベース・ソロがおどろおどろしさを醸し出し、ヴォーカルも何かにせっつかれるような、テンポの速い曲である。一番わかりやすいフォーマットのパンク・ロックである。これも定番なんだよな、ライブの。特にこの曲、パートごとの見せ場がうまく設定されている曲なので、メンバー紹介に使われることも多い。
 USカレッジ・チャートでは11位まで上昇。




 デビューから『Beat Crazy』までは、ほぼブレることもなく、この路線を邁進してゆくのだけれど、しばらくすると他のジャンルに色目を使い始めるのは、これまたアーティストとしては致し方ないこと。ジャズやラテンなど、ポピュラー音楽の枠組みで貪欲に吸収しているうちはいいものの、時代を追うに連れて、バックボーンであるクラシックや現代音楽にも足を突っ込むようになる。
 そうなると音楽性と商業性との緩やかな乖離が進行し始め、下降してゆくセールスと共にJoeの精神状態も思わしくなくなり、遂には90年代に入ってからの活動は地味になって行く。

 この時代はまだそんなことも頭にない、純度100パーセントの純粋なロックンロールである。


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にっちもさっちもどうにもノンサッチ - XTC 『Nonsuch』

XTC-Nonsuch 1992年にリリースされ、『Oranges & Lemons』に続いてUK28位、ビルボード総合チャートでも28位にランク・イン、セールス的には彼ら最大のヒット作となったアルバム。特にここ日本においては、レコード会社主導で雑誌メディアを巻き込んだ「XTC来て来てキャンペーン」が大々的に実施され、大いに盛り上がった。
 あまりの日本のファンの熱心さに、皮肉屋Andyもさすがに心を動かされたのか、遂には単独来日を果たすに至る。至ったのだけど、文字通り単独での来日のため、ライブは行なわれず、ちょっとしたトーク・ショーとサイン会が催されただけで、複雑な心境のファンも多かったはず。
 そんな中途半端だったら最初っから来んなっ、と胸中をくすぶらせたファンも多かったんじゃないかと思われるのだけれど、そこをグッと呑み込んで口に出さないのが日本人の特性である。黒船襲来のご時世から、異国の人間に対しては、取り敢えずへり下ってしまうことが、DNAレベルで刷り込まれてしまっている。
 そんな日本人の真意を汲み取ってくれればよかったのだけれど、侘び寂びなんて感情とは無縁の英国人、「こんなマイペースな僕でも受け入れてくれるんだ♡」とポジティヴに受け止めてしまうのが、まためんどくさい男である。

 長い間まともにライブを行なわず、特別キャラの立ったメンバーがいるわけでもない。だけど変態ポップ・センスに魅かれるニッチなファンたちに支えられて、まぁ次のレコーディング契約が継続できる程度には収益をもたらしていたXTC。にもかかわらず、当時の所属レーベルVirginとの関係は、日に日に悪化していった。
 そしてこのアルバムのレコーディング〜プロモーション期間中、両者の決裂はもはや修復不可能となり、結局メジャーとしてはこれが最後のオリジナル・アルバムとなってしまった。

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 離合集散が頻繁なニュー・ウェイブ系のバンドが多い中、XTCは、細かなメンバー・チェンジはあれど主力メンバーはほぼ一定しており、よって歴代のアルバムの完成度も安定していた。ヒット・チャートの常連ではなかったけど、日本やEU諸国においては、そこそこの知名度を保っていた。
 アメリカ進出が遅れたおかげで総合チャートのアクションは地味だったけど、ラジオが中心となるカレッジ・チャートでは、”Dear God”のヒットが引き金となって、以来そこそこの実績を維持していた。
 なのに、Virginにおける彼らのポジションはいまだ不安定なものであり、キャリアや実績に見合うほどの待遇を受けることはできなかった。
 
 Andy曰く、アーティスト契約がバンドにとって、めちゃめちゃ不利なものだった、悪徳マネージャーによって搾取されまくった、とのこと。『Skylarking』のレビューでも書いたのだけど、歴代プロデューサーとの衝突も多く、Todd Rundgrenとの衝突は今でも語り草になっており、あまりに互いが互いを罵倒しまくった挙句、今では2人とも定番の持ちネタとして、何かにつけエピソードを披露しまくる事態となっている。インタビューの度にいつもネタ振りされるので、近年では、そのトークに一層磨きがかかっている。

 実際『Nonsuch』においても、大御所プロデューサーGus Dudgeonと衝突を起こしている。ミックス・ダウン作業のイニシアチブをどちらが握るかについて意見が分かれ、最終的には完パケ寸前にGus 解雇という、なんとも後味の悪い結末に終わっている。
 Gusとしてはレーベルの意向に沿って、売れ線重視のコンテンポラリーな仕上がりをシミュレートしていたのだろうけど、あくまで自分の感性にこだわるAndyとしては、最終段階で他人の手によって、手塩にかけた作品が自分の意に沿わない方向へ歪められるのを、黙って見ているわけにはいかなかったのだろう。 まぁ自意識の強いアーティストなら、当然なのだろうけど。

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 以前からの疑問、XTC、まぁ主にAndyなのだけど、彼とVirginとはなかなか方向性が合わず、契約解消まで終始平行線だった、という見解になっている。ただしピックアップされているのは、ほぼAndyサイドの発言ばかり、Virginの言い分はほぼ聞いたことがない。概ねAndyの主張通りなのか、それともVirgin側の「金持ちケンカせず」の余裕っぷりなのか―。
 どちらにしろ、互いの意見を聞いてみない限りは、一方の主張ばかりに肩入れするのも、大人としてはなんだかね、という気になってしまう。

 じゃあ、他のVirgin所属アーティストはどうだったのかといえば、Andyほど過剰に反応する者は、あまり聞いたことがない。XTCを除いたすべてのアーティストの契約条件が良かったのかといえば、それも考えづらいし、他のアーティストが「資本主義の犬」としてすっごく従順だったり、またはアーティスト契約条項にもの凄く秀でたビジネス・パーソンばかりだったのかといえば、それももっと考えづらい。
 典型的な英国病を患っているAndyの場合、その都度、仮想敵という存在を設定しておかないと、表現意欲の維持がままならなかった面もある。そんなとばっちりを受け入れたのが、一アーティストのいちゃもん程度では揺るぐことのない、磐石とした会社組織Virginである、という対立構造。
 適度なストレスは人を成長させる。ある意味、そんなネガティヴなパワーが彼らの創作意欲を掻き立てていた側面もあるんじゃないかと思われ。
 
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 そして現在、自主レーベル運営によって、悠々自適とまではいかないまでも、マイペースな活動ぶりのAndy。かつての盟友DaveもColinも去ってしまって今は独り、メンバーやレコード会社との衝突からも解放され、ストレスとは無縁の生活を送っているのだけれど、それに比例した作品のつまらなさと言ったら、そりゃあもう。いつまでもアーカイブものばっかやってんじゃねぇよ、とまで言いたくなってしまう。

 『Nonsuch』まとめ作業に伴うライナー・ノーツやインタビューにおいて、いまだAndyはブツクサ言っているようだけど、ライブ演奏を前提としない、密室空間で練り上げられたポップ・ソング集にしては、バンドとしての躍動感がある。曲順構成もしっかりしており、後に小出しに勿体ぶってリリースされた『Apple Venus』シリーズよりも、ずっと高い完成度で仕上がっている。
 多分Andyは絶対認めたがらないだろうけど、手練れのプロデューサーGusによる初期段階の仕切り、アイディア提供やコンセプト設定の賜物だろう。ただ好きなようにダラダラ作詞・作曲して、ただ思いのまま独りよがりにレコーディングして、他人の忠告に耳を貸さずにミックス・ダウンしているだけでは、こういった出来栄えにはならない。
 商品として売ってゆくためには、明確なユーザー像とニーズを想定しておかないと、ただの自己満足でしかないのだ。


Nonsuch
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1. The Ballad of Peter Pumpkinhead
「まぬけなピーターのバラッド」。直訳したタイトルからは想像もつかない、この頃のXTCとしてはソリッドでストレートなロック。相変わらず歌詞は暗喩や言葉遊びを交えた多重構造なので、いちいち解釈を加えると、はっきり言ってめんどくさい。Peterというのが誰なのか、昔の宗教家なのか政治家なのか、いろいろな受け取り方はあるけど、どちらにしろ大した意味はない。
 一流のポップ職人として、緻密なガラス細工のような小品ばかりを量産していたAndyだったけど、ここではノリ一発のロックン・ロールをシミュレートして、完璧なパワー・ポップ・ソングを作り出した。やればできるじゃん。
 Stonesのようなギター・リフのオープニング、本人曰く、Mick Jaggerを揶揄したようなハープなど、聴きどころは満載だけど、XTCだけあって小技もいろいろ効かせており、俺的にお気に入りなのは、ほんと終盤のBeach Boysのようなコーラス。
 セカンド・シングルとしてカットされ、UKでは最高71位だったけど、アメリカのModern Rock Tracksチャートでは、なんと1位を獲得。一聴すると普通のスタジアム・ロックに聴こえるけど、普通のアメリカ人はスタジアム・ロックの要素をわざわざXTCに求めたりはしない。アメリカにもなかなかめんどくさい奴が多かったらしく、「あのXTCが普通のスタジアム・ロックをやった」ということで興味を示したのだろう。当時のアメリカ人にもサブカルかぶれ、中二病的な者も多かったと思われる。



2. My Bird Performs
 Colin担当のトラック。比較的オーソドックスなポップス。少なくともロックの文脈で語れるようなメロディや歌詞ではない。昔のA&M的ソフト・ロック・サウンドを目指しているのだろうけど、それをXTCに求めるのは、何か違うんじゃないかと思う。ただソフトに流れ過ぎてしまうサウンドを、ちょっと武骨な響きのギターがうまく全体を締めている。

3. Dear Madam Barnum
 メロディとコーラスがちょっとサイケっぽくなっている、ポップ寄りのロックはAndy作。『Skylarking』に入っててもしっくり来そうだけど、ここではもう少しリズムが立って、疾走感が出ている。

4. Humble Daisy
 Beach Boys、ていうか『Pet Sounds』期のBryan Wilsonのデモ・テープを発掘して現代風に蘇らせたような印象。ちょっとミスマッチなドゥー・ワップ風のコーラスなども、ちょっとアバンギャルド。趣味的な小品だけど、俺は昔から結構気に入っている。
 
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5. The Smartest Monkeys
 Colin作、ちょっと怪しげな雰囲気の漂うゴシック・ロック。それにしても不思議なのは彼のメロディ・ライン。普通の定番コード進行とは外れたところで音が構成されているため、何というかメロディの「揺れ」のようなものが感じられる。ふわふわして揺れ動き、音符の終着点が凄く曖昧なままに終わる印象が強い。
 そこが独特の浮遊感を演出しており、なので地味だけどColinのファンも多い。純粋なポップ・ソングの作り手としては、Andyよりも勝る部分も多い。

6. The Disappointed
 すごくモダンなサウンド、キャッチーなアレンジ、かなり気を使って録られたAndyのヴォーカル。なのに、歌詞は「失望」について。これぞまさしく英国人、してやったりである。
 一応、アルバムのリードとして最初にシングル・カットされてるけど、UK最高33位。Stephen LillywhiteがBeach Boysをプロデュースしたようなサウンドは、英国人にはイマイチ受けなかった。



7. Holly Up on Poppy
 “Dear God”をもう少しメジャー・コードに展開したようなフォーク・ロック。Andyの弾くアコギはなかなかいい響きなので、地味だけど味わいのある一品。でもこれって、やっぱGusのアイディアなのかな、きっと。

8. Crocodile
 XTC流パワー・ポップのお手本的作品。軽快なエレキのアルペジオ、いい感じに軽快に響くバスドラ、ロック・サウンドなのに統率のとれたコーラス。でも、テーマは鰐。
 このタイプの曲がもう2,3曲入っていれば、もう少しVirginとしても力を入れやすかったろうし、アルバムのフックとして、まとまった力になっていただろう。でも、それをしないのがXTCでもある。

9. Rook
 タイトルに反して、彼らとしてはこれも珍しくドラマティックなバラード。荘厳としたストリングスはAndyのアレンジ。アルバムのバラエティを考えると、こういった曲もあって良かったんじゃないかと思えるけど、この後に控えている『Apple Venus』シリーズの前哨戦的サウンドとして捉えると、ちょっと複雑。これを全編でやられてもちょっと、って感じだし、第一誰もXTCにはそれ求めてないし。

10. Omnibus
 よく聴くとリズムがラテン。まさかXTCでラテンなんて、と思ってしまうけど、まぁこれもアルバムの一曲として、アリッちゃアリ。どちらかといえばリズム主体の曲なので、Andyの曲なのに、ついつい耳が行ってしまうのはColinのベース・ライン。やはりソングライターの弾くベースだけあって、メロディアスかつリズムのリードもしっかりしている。

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11. That Wave
 ちょっとダウナーなゴシック・ポップといった趣き。この曲もAndy作なのに、ベースがうまい感じで重心の低さを演出している。こういったテイストの曲はギターの歪みが目立つものなのに、あいにくAndyもDaveも音が軽く性急な運指によって、重厚さがしっかり出ていない。
 やはりこのバンド、Colinの存在は大きかったことがわかる。曲は軽いのに、ベースは重いという、珍しいタイプのプレイヤーである。

12. Then She Appeared
 ややカントリー・タッチの、やはり”Dear God”タイプのフォーク・ロック。あそこまで重苦しくないのは、Beach Boys風のコーラスがうまく中和してることによる作用。

13. War Dance
 久しぶりにColin作が登場。オープニングが怪しげなスパイ映画のような、木管楽器の音色から始まる。
 ブリティッシュの風味が漂う曲、というのが俺の印象。午後の芝生の上でお茶を楽しみながら、社交界の動向や噂話に興じる紳士たち。低く垂れこめる雨雲は黒く、今にも振り出してきそうな気配だ。

14. Wrapped in Grey
 一度はシングル・カット候補になりかけたけど、Virginの独断によってそれがボツとなり、契約解消の導火線となった曲。基本Beach Boysサウンドの踏襲なのだけど、色々な暗喩やダブル・ミーニングを内包した歌詞世界は、ちょっと抽象的かつAndyの人生哲学も孕んでいるため、ちょっと高尚なイメージが強い。
 ただサウンドだけに耳を傾ければ、良質のポップ・ソングであることは間違いない。



15. The Ugly Underneath
 AメロとBメロとでまるでムードが違うため、”A Day in the Life”的に何曲かをくっつけ合わせたかのような、一曲で何度も楽しめる曲。そんなに長い曲でもないのに、わざわざ違う曲調を一つにまとめてしまった意図がよくわからないのだけど、なんかスタジオでいじくり回してるうち、できあがっちゃったのだろう。

16. Bungalow
 久しぶりにColinメイン。『Nonsuch』では4曲しか採用されていないのだけど、それとも提供を出し渋ったのか、それは不明。モッサリした声質のColinのヴォーカルは好き嫌いが分かれるところだけど、まぁ俺的にはあんまり興味がないので、どっちでもいい。

17. Books Are Burning 
 ラストは(多分)第2次世界大戦時のナチスが行なった焚書からインスパイアされた、強大な力を持った権力に対し、屈することなく立ち向かってゆく、Andyの強力な意思表明が描かれている。強大な権力がVirgin なのかと邪推するのは、子供じみた詮索なので、ここでは保留。
 ある意味、これがXTCとしてのSwan Songともいうべき出来となっており、そのすべての音が美しく、強い意志を持って響いている。アウトロでフェード・アウトしてゆく、DaveとAndyのギター・ソロも、これまでにないストレートなインプロビゼーションとなっている。
 海外ファン・サイトでは、比較的人気の高い曲でもある。






 『Nonsuch』リリース当時、ここ日本では初回限定の特典で、中世の視力表を模したミニ・タペストリーを貰ったのは、もう昔の思い出。
 また、これは輸入盤のみだったけど、CDのプラケースにジャケットと同じ宮殿のイラストが金色に直接プリントされていたことも、かつてのファンなら鮮明に覚えているはず。


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北海道の中途半端な田舎に住む、そろそろアラフィフ男。ほぼ週1のペースで音楽ブログ更新中。節操ない聴き方と思われてるけど、自分の中では一貫してるつもり。 最近は蔵書の整理がてら、古い本を再読中。ジョン・アーヴィングから始まって、フィッツジェラルドやゾラ、モームなど、いわゆる古典の復習中。いつになったら終わることやら。新刊読めねぇや。
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