好きなアルバムを自分勝手にダラダラ語る、そういったゆるいコンセプトのブログです。

もともとは色モノっぽいバンドだった - Police 『Reggatta de Blanc』

61A9SxXbbML  1979年リリース、2枚目のアルバム。UKチャートでは最高2位、ちなみに日本でも、オリコン・チャート最高16位まで上がっている。本格的にポピュラリティを確立したのは、やはり代表作『Synchronicity』の頃だけど、当時から既に日本でも、そこそこの知名度はあったのだ。
 
 今でこそ「Creamと並ぶ歴史的なロック・トリオ」としての評価が高いPoliceだけど、当時の日本での評価は、「バカテクだけど、やたらに日本好きなバンド」という受け止められ方だった。
 デビューして間もない頃に来日しているのだけれど、なぜかライブの予定は組まれず、ちょっとしたプロモーションとPVの撮影のみに終わっている。で、その時に撮影されたのが、デビュー曲"So Lonely"なのだけど、これがまた意味不明。ほぼ全編、営業中の都内地下鉄でロケーションしているのだけれど、当然新人バンドのため、車両丸ごと貸し切る予算があろうはずもなく、無許可のゲリラ撮影を強行している。なぜこのシチュエーションを選んだのか、監督の意図は何だったのか、後年行なわれたメンバーへのインタビューでも、口を揃えて「意味不明だった」とのコメントしか出て来ないのだけれど、まぁ意味なんてないのだろう。MTV以前のPVはこのように、コンセプト不明の映像作品が粗製乱造されていたのだ。

1979-the-police-live

 通常運行中の地下鉄車内にて、正体不明の外人3人がアテレコで好き放題歌い踊る様は、とてつもなく異様である。普通に通勤・通学中の一般人の微妙なリアクションと、半分ヤケクソ気味な外人3人のハイ・テンションとのギャップとが微妙にすれ違うことによって、逆にそれが当時のバンドの意味不明な勢いを引き立たせ、時代に風化されない怪作に仕上がっている。
 
 Police時代を通して、またメンバー3人のソロ・キャリアを通して言えるのは、壊滅的なビジュアル・センスのズレ具合である。オリジナル・アルバム5枚のアルバム・ジャケットを並べてみればわかるように、その卓越した音楽的センスとのあまりのギャップに気づくはず。

71tZOqwQGjL-tile

 ニュー・ウェイヴからコンテンポラリーなロックバンドへ華麗な脱皮を遂げた『Ghost in the Machine』からはスタイリッシュに垢抜けているけど、それ以前、特にこの『Reggatta de Blanc』のジャケットのセンスはひどい。
 デビュー作(『Outlandos d'Amour』)はまだわからないでもない。ポッと出の新人にそれほど予算もかけられないだろうし、新進パンク・バンドとして売り出すわけだから、逆に武骨なデザインの方が良い。でも2枚目ともなると、それなりにセールスも見込めたわけだから、もうちょっと何とかならなかったの?と言いたくなってしまう。
  
 噂では、マネジメントを行なっていたStewartの兄Miles Copelandが、実はCIAの秘密諜報員で、Policeがブレイクしたのも、世界ツアーという大義名分のもと、各国の情報収集に動きやすくなれるよう、CIAがチャート操作した、という説がある。あまりに荒唐無稽過ぎて、今なら2ちゃんねるの過疎版にでもコッソリ書かれていそうなネタだけど、なかなか無責任で面白いエピソードである。

3700633

 個々の音楽的才能・スキルは、ほんと同世代のミュージシャンと比してもダントツのレベルなのだけど、『Synchronicity』前後のビジュアル戦略以外は、デザインやPV、フォト・セッションなど、どれも微妙さが付きまとう。
 それなりに年齢や経験も重ね、それなりに洗練された近年においても美的センスのレベルは変わらず、再結成後のライブ・アルバム(『Certifiable』)なども、サウンドは全盛期を維持しながら、ジャケットはホント、素人自作のブート紛いのレベルだった。
 
 なぜ周りの誰も、何も言わないのか。
 それがPolice最大の謎とも言える。


Reggatta De Blanc (Dig)
Reggatta De Blanc (Dig)
posted with amazlet at 16.02.06
Police
Interscope Records (2003-03-04)
売り上げランキング: 57,572



1. Message In A Bottle
 俺が一番最初に買ったPoliceのCDということで、個人的にも特に思い出深いのが、このアルバム。
 『Synchronicity』全盛期の中、高校生の少ない手持ちの中、札幌の玉光堂でこのアルバムを選んだのだけど、多分この曲が入っていたのが決定打だったと思う。それくらい、この曲のインパクトは強い。
 「無人島で空き瓶にSOSのメッセージを入れて海に流したが、ある朝浜辺を見ると、世界中からSOSのメッセージの入った無数の空き瓶が漂着していた」という、イギリスの珠玉の短編のような歌詞は、もはやロック史においても燦然と輝くクオリティ。しかも、粗野で暑苦しいパンク・バンドが、見た目に似合わずハイ・レベルのサウンドでこれを歌うのだから、注目されない方が不思議である。
 Stewartのテクニカルなドラムが主にサウンドを牽引しているのだけれど、有名なAndyのギター・リフ、ヴォーカルながら、ただのダウン・ビートでは終わらせない、Stingの独創的なベース・ラインといい、すべてのピースがうまくかみ合った、全キャリアを通しての傑作。



2. Regatta De Blanc
 空間を活かしたドラミング、スペイシーなギター、Stingのフェイクで構成される、タイトル・ナンバーなのにインスト。
 最初っからインスト前提でレコーディングされたのか、それともメロディーや歌詞がうまくはまらなかったのか、はたまたタイム・スケジュール的にカツカツとなったため、何となく雰囲気っぽいセッションでお茶を濁したのか。どうとでも解釈できる曲である。
 
3. It's Alright For You
 Policeとしては、比較的シンプルに作られた8ビート。ただStewartの手数が相変わらず多いため、素直には聴かせないぞ、という意思すら感じられる。
 後半に進むにつれ、Andyによるギターのトラック数が増えており、あらゆるサウンドの重層構造になっている。Stingのキャッチーなメロディーが、当時のニュー・ウェイヴっぽさを反映している。
 
4. Bring On The Night
 Andyの初期ベスト・ワークに数えられるナンバー。細かいリフを散りばめたクリア・トーン・サウンドは、後年、あらゆるギタリストによって模倣されまくった。
 レゲエ・ビートとStingのハイトーン・ヴォーカルが南国っぽい。間奏のベース・ソロも、シンプルながら曲を盛り立てている。

 
 
5. Deathwish
  初期Policeとしては4分超の長尺曲。イントロもたっぷり1分と長く、焦らすだけじらさせる。基本、4.と同じコード進行なのだけれど、ベースの音が他の曲より重く、それが全体のサウンドに影を落としている。まぁタイトルもタイトルだけど。でも、ギターの構成がカッコいいので、埋もれてしまうには惜しい曲。
 
6. Walking On The Moon
 Stewartのハイハット・ワークの小技が光る。4.に続き、こちらも後年に大きく影響を与えた、サスティンを大きく利かせたAndyのギター・サウンドが心地よい。Beatles"A Hard Day’s Night"にも匹敵する、有名なサスティン・サウンドがここにある。しかも、こちらはほぼ全編に渡って鳴りまくっている。
 陳腐ではあるけど、ほんと" Walking On The Moon"、月の上を歩いているかのようなサウンド・プロダクションである。

 
 
7. On Any Other Day
 この辺になるとパンクやレゲエというよりむしろ、モッズ・バンド的な風情すら感じてしまう。 初期のKinksの未発表音源だとレクチャーされてから聴くと、何の疑いもなく納得してしまいそう。
 
8. Bed's Too Big Without You
 ロックの視点からフォーカスされた、本格的なレゲエ・サウンドだけど、この曲を最後にPoliceのレゲエ・テイストは次第に薄れてゆく。というより、パンクやレゲエを消化した、最強のロック・トリオへと進化してゆく。
 凡百のパンク・バンドに埋もれぬよう、戦略的な付加価値として選択したレゲエ・サウンドには、もうそれほど魅力を感じなくなったのか、それともミュージシャン・シップに目覚めて新規路線の開拓に走ったのか。
 
9. Contact
 Stingのベース・ラインが歌っている、ちょっと怪しげながら、実はポップな曲。Andyのリフも、ややBeatlesテイストになっている。
 この曲に限ったことではないのだけど、どれもStingが歌っていなくても十分成立するサウンド・プロダクション、というのがPoliceサウンドのもう一つの特徴でもある。
 この曲だって、ほんとはヴォーカル抜きで聴いていたいくらいである。

The-Edge-GTO-___-The-Police-1979

10. Does Everyone Stare
  珍しくピアノが導入された、パンク~ニュー・ウェイヴというラインではなく、後年Stingがカバーすることになる Kurt Weillテイストの強いナンバー。なので、ロック的な要素はほとんど感じられない。アルバム構成的にはこういうのもアリだろうけど、これだけを抜き出して聴くことは、これからも恐らくないと思う。

11. No Time This Time
 パンク時代への惜別のような、急き切ったハイ・テンション・ナンバー。あまりテクニックをひけらかさないタテノリ・ビート、少しエフェクトを利かせたハイ・トーン・ヴォーカル、大きく歪ませたギター、バットマンのテーマを思わせるベース・ライン。ヤケクソ気味なコーラスも気持ち良い。
 9.と同じく、これ以降、ここまでストレートなガレージ・サウンドは少なくなってゆく。



 パンク~ニュー・ウェイヴ時代には、既成の価値観を覆したとされる、様々なアーティストが輩出されたのだけど、その後も末永く生き残ったのは、結局のところ、初期衝動だけでなく、きちんと方向性が確立された者ばかりだった。
 過去の否定には勢いとパワーが不可欠だけど、持続させるためにはテクニックと知識、つまりは基本の演奏力、それと過去の音楽から得た素養にかかっている。セミ・プロ上がりのPoliceにとっては、浮かれたニュー・ウェイヴ・シーンなどはただの足掛かり、通過点に過ぎなかったのだろう。




グレイテスト・ヒッツ
ポリス
USMジャパン (2012-06-20)
売り上げランキング: 19,355
Message in a Box
Message in a Box
posted with amazlet at 16.02.06
Police
A&M (1993-09-28)
売り上げランキング: 128,121

あやつり人形じゃないことを証明した、DIY精神あふれる傑作 - Talking Heads 『Little Creatures』

 talking heads_little creatures1985年リリース、6枚目のアルバム。US最高10位UK最高6位。ちなみに日本でも最高59位という記録が残っており、この手のバンドとしては、結構売れた方である。確かにPVや雑誌の露出は多かったと記憶している。
 ちょっとセオリーを外したアート系のアーティストやアルバムが、アメリカ本国よりウケが良いのは、『Pet Sounds』あたりから続く、イギリスの伝統。

 インタビューでの発言や、解散後の地道な活動から見て、知的というよりはむしろ天然系と評した方が良さげなDavid Byrne、もうキャリアもそれなりに長く、セールス・作品のクオリティとも、それなりの実績を上げているにもかかわらず、なんかイマイチ評価が薄い、というか、大物感があまりない。
 もともとあまり偉ぶらない人なので、マイナーなイベントやフェスにも積極的に参加するくらいフットワークが軽いのだけれど、あまりに気軽なので、レア感が薄いというか、若手からのリスペクトも薄いような印象が強い。一応、長年の功績は認められており、Hall of Fameにも呼ばれるほどの人なのに、である。

 パンク~ニュー・ウェイヴ・ムーヴメントの発信源として、派手に隆盛を極めていたロンドンに対し、地味なアングラ系が多いと思われがちなニューヨークのミュージック・シーンだけど、あながち間違ってはいない。ヒッピー幻想の終焉と入れ替わりのベトナム戦争の長期化が災いして、何とも形容しがたい陰鬱と混沌、正体不明の閉塞感が蔓延していた。
 そんな中で地道に活動していたのが、Talking Headsである。デビュー間もなくは、ごくごく平均的なフォーマットのパンク・バンドだった彼らだけど、じきに大きく飛躍するチャンスを与える人物が現れる。
 その名は、Bryan Eno。

brian-eno-recording-studio
 
 歌うことも楽器を弾くこともなく(できず)、ましてやまともな作詞・作曲もできないのに、いつの間にか音楽業界に潜り込み、気づいた時には大御所ステージにまで上り詰めた男である。
 デビューのきっかけとなったRoxy Musicでは、「テープレコーダー担当」という出まかせのポジションを獲得、David Bowie張りのキッツいメイクでステージ上で踊りまくる、という、少なくともサウンドとはまるで関係ない、エキセントリックなパフォーマンスを行なっていた。脱退後は、まぁ言ったもん勝ちだと思うけど、退屈なシンセ和音を独りよがりに延々と鳴らし続けた冗長なインストに、「環境音楽」という、これまたいかにも「らしい」コンセプトを掲げて、アルバムを量産。自称スノッヴな連中の自尊心をくすぐるような活動を展開した。

 こうして書いてると、とんでもなく胡散臭いサギ師っぽく思えてしまうけど、何でも突き詰めていけば、その筋で一流になってしまうのは、致し方ないことである。きちんと客観的に身の振り方をわきまえて、流行の臭いを嗅ぎつけてすぐさまツバをつけてゆくところなど、秋元康並みにスゴイ、と認めざるを得ない。若手の有望株にうまく取り入って、プロデュースと称して気分次第で好き放題なことをそれっぽく語り、うまくブレイクしたら「おれの手柄」っぽく振る舞う男である。
 うん、やっぱり秋元康っぽい。

03IRWIN-articleLarge

 そんな彼が興味を持ったのが、単なるアングラ・シーンからメジャーへ進出しつつあったNYパンクのアーティストである。何となくモノになりそうなバンドをいくつか寄せ集めて、コンピレーション・アルバム(『No New York』)を作る。大して売れないのはわかりきっている。これ自体で儲けるつもりではない。これは単なるアドバルーン、センセーショナル話題作りでマス・メディアに取り上げられてもらうことが目的なのだ。
 その中で、こいつらなら俺の意のままに操れそう、とEnoが選んだのが、Talking Headだった、という次第。

 そんな彼ら、この後は高い評価を得た『Remain in Right』をある種の終着点として、Enoとのコラボレーションは発展的解消の途をたどることになる。Enoが得た名声と高評価とは対照的に、あまりに見返りの少ないバンドの評価、そして増大するプレッシャーももちろんだけど、あれこれ突拍子もない指示を出すEnoに対して、ほとほと愛想が尽きたのだろう。
 その後、彼らの活動ペースは急激に落ち、集大成とも言えるライブ映画、それに伴うサウンドトラック(『Stop Making Sense』)を作ったあと、『Remain in Right』の搾りカスのようなアルバム(『Speaking in Tongues』)を作り、それぞれが長期休養に入ったり、Tom Tom Clubを始めたりする。
 
  特にギミックに凝ることもない、楽しく踊れる音楽をコンセプトにしたTom Tom Clubが高セールスを記録したことによって、メンバー4人とも気づいたのだろう。
 次はゲストを入れず、4人だけのアルバムを作ろう。
 何の装飾もギミックもない、ただ「歌」のためにある『普通』のアルバムを。
 それが、この『Little Creatures』である。


Little Creatures
Little Creatures
posted with amazlet at 16.02.06
Talking Heads
EMI Catalogue (2009-08-31)
売り上げランキング: 77,898




1. And She Was

 ちょっとフォーク・ロック調の3枚目のシングル。US54位UK17位。Byrneのヴォーカルも、気が抜けてリラックスした印象。
 前作まで、神経症的なカン高い声を無理して張り上げていたが、「Hey,Hey」のかけ声も、どこか牧歌的でおだやか。
 バンド4人で顔を突き合わせ、ヘッド・アレンジで練り上げた曲なのか、後半のChris Frantzによるドラム・ロール、Byrneがかき鳴らすギターも楽しそう。セッションの楽しさが凝縮された曲である。



2. Give Me Back My Name
 前半がややEno臭さの残る曲。
 リズムもややオルタナっぽさが残っているけど、これまでTalking Headsでは使われたことのない、スチール・ギターの響きが全体を和ませている。
 サビに入るとカントリーっぽいメロディーが展開する、ライブ映えしそうな曲。

3. Creatures Of Love
 ほぼタイトル・ソングであり、アルバム全体の流れを象徴した、ややファンクっぽいギターをバックに、やはり楽しい曲。何ということもない曲だけど、やはりクセになってリピートしてしまう魔力を持つ、アルバム・ジャケットそのまんま、ファニーな曲。



4. The Lady Don't Mind
 UKのみシングル・カット、最高81位まで上昇した、先行1stシングル。Eno時代は付け焼刃的なファンク・リズムのミスマッチ感が、ニュー・ウェイヴ的なサウンドとして相乗効果を醸し出していたけど、ここでは「ちょっとヘタでもいいから自分たちでやってみよう」というバンドの意思が結実した、Talking Headsの進化形態とも言えるナンバー。
 評論家受けの強かったEno時代を真っ向から否定するのではなく、消化・吸収した上で自分たちのオリジナリティを確立し、ライト・ユーザーがラジオで聴いても好感を持たれる曲を作り上げた。
 サビのホーン・セクションと、Byrne+バンド・コーラスとのコール&レスポンスが最高。



5. Perfect World
 ややスタンダードなロック調。ギター・カッティングがPoliceっぽい瞬間がある。サビに入ると再びスチール・ギターが出てきて、普通のミドル・テンポが和んだ感じになる。

6. Stay Up Late
 Jerry Harrisonのキーボードから始まる、意外に珍しい曲。Jerryが終始リードを取っており、ちょっとひと昔前のニュー・ウェイヴ調。
 中間辺りでEnoっぽさが出ているけど、そこまで強いわけでもなく、エッセンス程度。やはりバンド単体で練り上げた曲だと思う。

7. Walk It Down
 今度はChris FrantzとTina Weymouthによる、Tom Tom Clubチームがイニシアティヴを取っており、ファンクともロックとも似つかない、エスニック系の変則ビートが他2人を引っ張っている。
 誰か一人、例えばByrneがすべてメインを張るのではなく、4人それぞれがアイデアを持ち寄り、合議制によって採用された作者が責任を持つ、という極めて当たり前なバンド民主主義が、このアルバムの最大の成果であり、好調要因である。
 まんまTom Tom Clubではなく、やはりTalking Headsというフィルターを通しているため、単純にカラッと明るいものではなく、やや不穏な重めのサウンドに仕上がっている。

creatures 3

8. Television Man
 前曲と同じく、リズムを強調。ていうか、ほとんどリズム・セクションとByrneの特色である、不安定な響きのギター・リフによって出来上がっている曲である。
 このアルバム全体に言えることだけど、鍵盤系のJerryの出番は少ない。細かなエフェクトのアイデアなど、目に見えずらい貢献度は高いのだけど、あまり見せ場を作ってもらえなかったのか、どうにも影が薄い。この後、ふて腐れてバンド活動に消極的になって、結果バンドを活動休止に追い込んだのも、まぁ気持ちはわかる。
 後半はモロ『Remain in Right』だけど、リズム中心ではなく、当時よりメロディーが立っている。

9. Road To Nowhere
 最初のアカペラ・コーラスから行進曲のようなドラム、まさしくアルバムのフィナーレを飾る名曲である。ちょっとエフェクトをかけたアコーディオンからして、もう楽しげ。Byrneもすっごく楽しそうに歌っている。
 4.と並ぶ、このアルバムの要となる曲である。

  




 「普通の楽曲を作りたかった」Talking Headsが、『普通』をコンセプトにアルバムを一枚作った。
 セールス的にもトータルで200万枚という、十分及第点な数字だった。
 でも、Byrneだけはどこか満足できなかったのか、もっと『普通』を極めたかったのか。通常パターンならプロモーション・ツアーを行なうところだけど、思うところのあったByrne、ツアーはキャンセルし、映画製作に乗り出す。その名も『True Stories』、アメリカのごく『普通』の人々を主人公に、ごく『普通』の生活を淡々と、それに若干のフェイクを加えた作品を作り上げた。
 Byrneのスケジュール待ちだった他3人、撮影終了まではヒマを持て余していたのだけれど、サウンドトラックをTalking Headsが担当することになり、再びレコーディングに臨むことになる。バンド側としては当然、この後はツアーに出る気まんまんだったのだけど、Byrneの多忙によって、ツアーは再びキャンセルされる。
 その後もライブ一つすら行なわれることなく、結局のところ、それが活動休止→解散の要因となる。


Best of the Talking Heads
Best of the Talking Heads
posted with amazlet at 16.02.06
Talking Heads
Rhino / Wea (2004-08-30)
売り上げランキング: 158,807
Talking Heads Dualdisc Brick
Talking Heads Dualdisc Brick
posted with amazlet at 16.02.06
Talking Heads
Rhino / Wea (2005-10-04)
売り上げランキング: 509,454

俺はいつだって、怒れる若者 - Style Council 『Our Favourite Shop』

51KQnRGfZkL 1985年リリース、UKチャート最高1位を獲得。バンドとしてのアルバムは2枚目(厳密には、ミニアルバム『Introducing』が最初だが、まぁ曲数の多いシングルのようなもの)。

 Steely Dan『Aja』レビューの際、リリース当時のUSチャートを調べてみたら、新しい発見もあって、今回もそれに倣って何となくUKチャートを調べてみると、これがなかなか面白い。
 国土が広いアメリカの場合、情報の伝播が今ほどスピーディではなく、地道なライブやラジオ・オンエアなど緩やかに広がってゆくので、瞬間的に売れるケースは少ない。ほんと時間をかけてじわじわと言った感じなので、いわゆるロング・セールスが多い。火が点くまでは長いのだけど、一度ブレイクすると、演歌じゃないけどそれこそ10年くらいはライブで食っていくことができる。レコード・セールスも大きな変動は少なく、ブレイクの度合いによっては、何か月も上位チャートをウロウロしてることだってある。Pink Floydの『The Darkside of the Moon』が延々10数年に渡ってチャート・インしていたというのも、人口の多いアメリカならではの現象だ。
 それとは逆に、アメリカと比べて国土はめちゃめちゃ狭く、人口も4分の1程度のイギリス。狭い分だけ情報の伝達度、例えばたった一度のテレビ出演によって、スターが生まれるというのは、大英帝国ならではの現象である。レコード・セールス自体も少ないので、絶対的な購買層は少なく、パイの奪い合いは熾烈で、チャート・アクションも一週ごとに結構変化がある。
 
 この年を代表するアルバムとして挙げられるのが、Bruce Springsteen『Born in the U.S.A.』、Phil Collins『No Jacket Required』、Dire Straits『Brothers in Arms』などといったところ。どれも全世界で1千万枚以上を売り上げたモンスター・アルバムだけど、こういった強豪たちの合い間を縫って、Style Councilが一週だけではあるけれど、イギリスでNo.1を獲得している。
 日本で言えば、AKBや3代目JSBらに挟まれて、KANA-BOONあたりがオリコンNo.1を獲るようなものである。前述した通り、UKチャートはほんと混沌としており、この年はほかにもSmithが1位になってるし、かと思えばMadonna『Like a Virgin』も大きくセールスを上げている。なんというか、いろいろと懐の深いチャートである。

tsc pic

 歌詞の内容、思想、発言、メッセージが思いっきり左寄り、実際、出自も労働者階級系のアーティストであるからして、本来はもっとアングラな立場の人のはずである。それなのにこのPaul Weller、JAM時代からのへヴィー・ユーザーから、音楽番組と言えば「Top of the Pops」くらいしか見ないライト・ユーザーまで、幅広く支持され続けている。英国王室のゴシップネタが、普通にテレビのコンテンツとして機能している英国人気質、体制への反抗・揶揄自体が、ファッションや生活の一部となっている国民性から起因するものなのだろう。また、その生粋の英国気質をコンポーザーの立場から保持し続けている、Wellerの自己プロデュース能力にも起因する。
 
  根っこはモッズ・バンドの人である。
 正確には、パンク・ムーヴメントから派生したニュー・モッズの流れを汲んでいるので、ブラック・ミュージックへの造詣も深い。デビュー当初こそ、比較的パンクのフォーマットに則ったサウンドを披露しているのだけれど、、"Batmanのテーマ"、Kinksの"David Watts"のカバーなど、いわゆる色モノ系ソングをソリッドに自分たち流にリ・アレンジしている。この辺は持って生まれたセンスの問題と思われる。
 
 まだレパートリーの少ない若手バンドのHPのチェック基準として、カバー曲のセンスがよく用いられる。ただ通好みの楽曲だけでなく、例えばベタベタのスタンダード・ソングの調理の仕方、、「おっ、こう来たか」というアレンジの妙によって、その曲に新しい価値観が吹き込まれ、それに伴ってバンド総体のセンス・イメージも好意的に評価される。
 当然、そのためには特定のジャンルに偏らず、様々なジャンルの音楽を聴いていなければならない。すべてが当てはまるわけではないけど、「有能なミュージシャン」になる前に、「有能なリスナー」になる、耳を養う勉強はとても重要だ。いまどきまったく一からオリジナルを作り上げることは、不可能に近いのだから。
 
0238

 多分、ほとんどがWellerの趣味、と言い切って間違いないと思うけど、彼らも初期から積極的にカバーに取り組んでおり、前述の曲だけでなく、Wilson Pickett、James Brown、Small Faces、Curtis Mayfieldなど、ベタな定番から隠れ名曲まで、あらゆる角度から挑戦している。若気の至りのような、荒削り・強引なアレンジもあるけど、経験値を積み重ねることによって、次第にMPも上がっており、それが後期の傑作群"Precious"や" Town Called Malice"として結実する。
 そのうち3ピースでは限界が来たのか、それと同時に自らの音楽的ルーツ・嗜好が、ギター・ドラム・ベースのトリオ構成だけでは賄いきれなくなってきたことが要因で、人気絶頂の中、Wellerは潔く解散の道を選ぶ。

 後年の経緯を見てもらえればわかるけど、決して戦略的な人ではない。ただ、その時その時の自分の感情に素直なだけなのだ。
 今の自分がやりたいことをやる。やりたくないことはしない、とはっきり意思表示する。
 ある意味、パンク・ミュージシャンの基本スタンスであり、潔い考えなのだけど、共同作業・バンド運営という面で見れば、決して正しい選択ではない。せっかく商業的にも安定してきたところなのだから、と助言する者も少なからずいたと思われる。
「取りあえず1,2年休業すれば…」
「サイド・プロジェクトでソロ・アルバムでも出せば…」
 まぁ、多分言っても聞かなかったら、この結果になったのだと思う。

Style-Council-The-Lodgers-79407

 もともとフロント・マンであるWeller一人で持っていたようなバンドなのだから、しょうがない。彼がルールなのだ。
 とにかく、彼は一旦、すべてをリセットすることを決め、解散に伴う事後処理的ツアーを行ないながら、並行して次のステップの準備を進めてゆく。旧知の仲であり、気の合ったMick Talbotを仲間に引き入れ、2人組ユニットStyle Councilを結成した。

 それだけの情熱を持って始めたのが、これまでの純正JAMのファン層からは最も遠い音楽、トレンディーでシャレオツなソフト・サウンドの構築である。
 こじゃれた細身のスーツ(まぁこれはある意味モッズ・アイテムのフォーマットとも被るけど)か、時には業界人を思わせるサマー・セーターを身にまとい、ピッカピカに磨き上げた革靴は捨てて、カジュアルなローファーに履き替えた。
 ギターの音からは歪みが消え、Wellerのヴォーカルからも破裂音、シャウトは少なくなった。ピアノ、時にはストリングスを主体とした、ジャズ、ソウル、ボサノヴァなど、ロック・ビート以外をベースにしたサウンドは、80年代という時流とうまくマッチして、バブル景気に湧きつつあった日本でも大きな支持を受けた。
 
 一聴すると、思いっきり大衆に迎合したイージー・リスニング、耳当たりの良いポップ・サウンドが主流なのだけど、サウンドに反して歌われる内容はかなり重く、当時のサッチャー政権への批判に始まり、鬱屈とした労働者問題などを積極果敢に取り上げることによって、一時はソッポを向いた旧JAMファンの支持も次第に回復した。


アワ・フェイヴァリット・ショップ
ザ・スタイル・カウンシル
USMジャパン (2011-11-09)
売り上げランキング: 38,537



1. Homebreakers
 まるでスパイ映画のようなオープニング。街中の喧騒から始めり、70年代ソウルっぽいサウンドに乗せて、サッチャー政権によって失業・貧困の被害を被った家族の悲劇を、Weller 朗々と歌い上げる。低音のCurtis Mayfieldと例えればわかりやすい。
 
2. All Gone Away
 さわやかな昼下がりを思わせる、ネオ・アコ風味の軽いアコギが奏でられる曲だけど、寂れた商店街とブルジョア階級との対比を皮肉る、やっぱり政治批判を込めたナンバー。
 
3. Come To Milton Keynes
 2.同様、ネオ・アコ路線にちょっぴりノーザン・ソウルのエッセンスを加えたナンバー。
 ベッタベタなストリングスとホーンの響きが、一歩間違えれば無難なムード音楽っぽくなってしまうところを、Wellerのヴォーカルがうまく締めている。
 UKシングル最高23位。
 
 

4. Internationalists
 間奏でMickのオルガンが全開する、アルバムの中では極めてセッション的な曲。かなりファンク成分を強くしたギター・カッティングといい、JAMファンでもとっつきやすくなっている。Wellerのヴォーカルも破裂音が多く、かなりシャウトしまくっている。
 タイトル通り、歌詞もやたらと政治的。彼らに限らず、この時期のUKアーティストのサッチャー政権アレルギーは、相当なものだ。
 
5. A Stones Throw Away
 一転して、弦楽四重奏をバックに、Wellerが朗々と歌い上げる佳曲。革命勢力を唄った、相変わらず左寄りの歌詞。
 
6. The Stand Up Comics Instructions
 Style CouncilはPaul Wellerのソロ・プロジェクトと思われがちだけど、なぜこのバンドにMick Talbotが必要だったのか、それを思い知らされる一曲。
 まるまるアルバム一枚を一から作り上げる技量はないけど、ちょっとしたエッセンスの投入、サウンド・メイキングについては、一流のセンスを持っている。全体の枠組みを俯瞰して、ここにひと味添える、ということができる、決して自分から前には出ないけど、コンポーザーとしてはWeller以上の時がある。
 最後はちょっとDoors"Strange Days"っぽく終わる。
 
7. Boy Who Cried Wolf
 シンセ・サウンドをベースに作られた、同時代のa~haやHoward Jonesなどと比較しても引けを取らない、傑作ポップ・ソング。
 バンドとしては珍しいくらい、センチメンタルなラブ・ソング。なのにどうして、UKではシングル・カットされなかったのかが不思議(ニュージーランドでは最高21位)。

 

8. A Man Of Great Promise
 サウンドとしては比較的珍しく,正調8ビートのネオ・アコだけど、内容は故郷の亡くなった友人の苦悩について。
 
9. Down In The Seine
 バンドネオンをバックに、おフレンチなワルツだけど、内容は中二病。
 
10. The Lodgers (Or She Was Only A Shopkeeper's Daughter)
 彼らの全レパートリーの中でも、俺が一番好きな曲。
 とにかく、Dee C. Leeのヴォーカルが気持ちよく、しばらくヘビロテになっていた時期がある。
 ごく初期のアシッド・ジャズを少しハード目にしたサウンド、ややハスキー気味な声質がちょうど好みに合うせいか、彼女のコーラスが聴けるナンバーなら、自分的にハズレはほとんどないくらい。
 これもいわゆる格差社会についての歌なのだけど、そんなめんどくさいのは抜きにして、後に公私ともにパートナーとなる、WellerとLeeのダブル・ヴォーカルを堪能してほしい(でも別れちゃうんだけどね)。
 
  

11. Luck
 ノーザン・ソウル・スタイルの、バンド・セットでの佳曲。親しみやすいポップ・ナンバーで、歌詞もサウンドも及第点ではあるのだけれど、あまり印象には残らない。悪い曲じゃないんだけどね。どこか一つ惜しい気もする。
 
12. With Everything To Lose
 元曲は、後日サントラの一曲として発売される"Have You Ever Had It Blue"、歌詞とアレンジが別バージョンになっている。スイング・ジャズ風アレンジの元曲に比べ、こちらはボサノヴァ風味。
 灼熱の夏のコテージの涼しい日陰を思い起こさせる、浮ついてこじゃれた感じ、バブル時代を通過してきた俺としては、結構好きな世界観。
 
13. Our Favourite Shop
 Mickのオルガンがたっぷり堪能できる、SpeedometerやNew Mastersoundsなど、現代ジャズ・ファンクの先駆け的な曲である。
 この人に関しては、ほんとメインを張るより、誰かのバックで弾いてる方が、すごくセンスが映える。インストだとスパイスだけ目立ってしまって、満腹感が出ないのだ。
 
14. Walls Come Tumbling Down
 UKシングル・チャート最高6位。ファンの中でも1、2を争う、「Style Council’s Soul Music」とでも言うべき傑作。
 イントロのハモンドから、高らかに響き渡るホーン・セクション、眉間に皺を寄せて「壁を崩せ!!」とがなり立てるWeller。ここまで大人しくしてたのは、ここで一気に爆発させるためだ!!、とでも言わんばかりに、こめかみの血管の青筋がうねり捲っている。
 同じく、ここぞとばかりにバカスカ叩きまくるSteve White。そして、そんな彼らを見守るかのように包み込む、Leeのバック・ヴォーカル。ここでは誰もが、アルバム中で一番の仕事をしている。
 ただ、このアルバムによって、Style Councilの基本フォーマット並びにバリエーションは完成されてしまい、この後の新展開はグッとレベルが下がる。バンド継続のため、サウンドの細分化に走ることによって、Style Council、そしてWeller自身も迷走状態に入る。

 

15. Shout To The Top
 多分、彼らの全楽曲において、日本での認知度は一番高いはず。聴けば、「あぁ、あれ」と思い出させる、しばらく平日朝8時のオープニング・テーマとなっていたナンバーである。佐野元春との同時代性(類似性)はよそでさんざん語り尽くされているので、ここではUKシングル・チャート最高7位とだけ付け加えておく。




 前述したように、この後彼ら、特にWellerは、JAMの時同様、拡大再生産の道は取らず、新しいサウンドを求めて探求者の道を選ぶ。
 突然ハウス・ミュージックに目覚めて気張って作ったはいいけど、あまりのキャラクターの変化にレコード会社が発売拒否、アルバム丸ごと1枚ボツにされたり(『Modernism』)、多分復活したBryan Willsonに影響されたのか、ピアノ・オーケストレーションなアルバム(『Confessions of a Pop Group』)を作り、あまりの地味な内容のため、大幅にセールスを落とすなど迷走し、結局6年あまりの活動期間で解散する。
 
 その後、ソロになってからのストーリーも、いかにもWellerらしいのだけれど、それはまた後日。



Greatest Hits
Greatest Hits
posted with amazlet at 16.02.06
The Style Council
Polyd (2000-09-18)
売り上げランキング: 25,850
The Style Council: Classic Album Selection
Style Council
Universal UK (2013-07-23)
売り上げランキング: 126,220
カテゴリー
月別アーカイブ
記事検索
Twitter
北海道の中途半端な田舎に住む、そろそろアラフィフ男。ほぼ週1のペースで音楽ブログ更新中。節操ない聴き方と思われてるけど、自分の中では一貫してるつもり。 最近は蔵書の整理がてら、古い本を再読中。ジョン・アーヴィングから始まって、フィッツジェラルドやゾラ、モームなど、いわゆる古典の復習中。いつになったら終わることやら。新刊読めねぇや。
最新コメント

音楽 ブログランキングへ


にほんブログ村 音楽ブログへ
にほんブログ村

アクセス
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計: