好きなアルバムを自分勝手にダラダラ語る、そういったゆるいコンセプトのブログです。

美メロの応酬、でも歌詞はグロ満載 - Beautiful South 『Welcome to the Beautiful South』

folder 1989年リリース、UKネオ・アコ・ムーヴメントの流れで紹介されることの多い、今でも人気の高いファースト・アルバム。あまりに人気が高いので、レコード会社のネオ・アコ再発キャンペーンの際には、ほぼ必ずリスト・アップされているのだけれど、逆にBeautiful Southといえばコレ、という感じで、ほぼコレ1枚だけで終わってしまい、他のアルバムはあまり見向きもされていない現状にある。ベストやライブ盤だけじゃなく、まずはオリジナル・アルバムの安定供給を考えてくれよ、と言いたくなってしまう。

 Housemartinsという文科系帰宅部バンドが母体となって結成されたこのバンド、中心メンバーはほぼそのままスライドしているので、一聴してあまり変化はなさそう、看板変えただけじゃね?と思ってしまいがちだけど、一応、明確な新機軸のもと、新バンドは結成されている。
 人懐っこいポップ性はそのまま引き継いだのだけど、大きな変化は、これまでより更に英国気質を強めた歌詞、爽やかなサウンドに乗せて下世話な世界を軽やかに歌う、非常にニッチでドメスティックなコンセプトは、同じく根底は下世話な英国人の間で長く支持された。
 デビューしてしばらくは、ロキノンやクロスビートなど、「何てないことをさも小難しく語る」系の雑誌で頻繁に紹介されていたので、この時期にロックをかじってた人なら、名前くらいは何となく聞いたことがあると思うし、一曲くらいなら何となく耳にしたことがあるはずである。

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 基本、ソフト・サウンディングをベースにして、男2女1のメイン・ヴォーカルを曲によって組み合わせを変える方式を採用していた。「していた」というのは、もう解散してしまったから。
 徹底的に国内需要にこたえるスタイルを貫いていたおかげで、イギリス国内での人気は安定れして高く、一時は「国民的バンド」と称されて、高目安定なコンスタントな売り上げをキープしていた。いたのだけど、同じ曲調によるマンネリ化が進むに連れて、英国労働者階級出身そのまんまの飾らないキャラクターが仇となった。おかげでテコ入れのためのイメージ・チェンジも思うように進まず、活動自体が次第にフェード・アウトしていった次第。
 曲は聴いたことあるけど、どんなメンバーが在籍していたのか、またどんなバンドが歌ってるのかも充分認知されなかったのは、日本に限らずイギリスでも同じ状況だった。
 
 セールス的に陰りが見えてきた頃になってから、多分レコード会社からの要請だと思うけど、かつての盟友Norman Cook(別名Fatboy Slim)にプロデュースを依頼、クラブ系サウンドの導入で起死回生を狙った時期もあったのだけど、誰よりも本人たちの予想通り、それほどの支持は得られなかった。誰もBeautiful Southにそんなサウンドは望んでいなかったこと、また彼ら自身もアッパー系なクラブよりも、場末のパブで呑んだくれながらダラダラ演奏してる方が性に合っていることを自覚していた。
 
 Housemartinsの時代からその兆候はあったのだけど、黄金比メロディを基調としたアコースティック・サウンドに、ウィットに富んだ皮肉な歌詞を載せるというコンセプト自体は、決して間違っていなかった。現に、ひねくれてねじ曲がった国民性の英国では、末長い支持を得ていたし、本人らもサウンドの進歩などはあまり考えず、このまま美メロの拡大再生産で、細く長く生き延びて行くはずだったのだから。
 ただ21世紀に近づくにつれて、ヒット・チャートの主流がエレクトロ・ベースのダンス・ミュージック中心となってゆき、自然と彼らの居場所が少なくなっていった。同じカテゴリーで語られるEverything But The Girlもまた生き残りを賭けてテクノ・サウンドに活路を見出し、一時は物珍しさにより持て囃されたけど、やはりスタイルに無理があったせいか、次第にネタ切れとなり、自然に失速していった。
 一方、Beautiful Southは最後までほぼ基本姿勢を崩さぬまま、潔く解散の道を選んだ。EBTGのようなデュオならまだしも、6人編成バンドという大所帯は、方向性を変えるにも全員の意見がまとまらず、そんな不安定な状態でバンドを維持するのは難しかったのだろう。
 
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 で、このファースト・アルバム、最後のアルバムと比べても区別がつかないくらい、この時点で既に偉大なるワン・パターンを創りあげてしまっている。前回の『Solid Bronze』のレビューでも書いたけど、全期間を通して、サウンド的な変遷のあまり見られないバンドなので、時系列をシャッフルした曲順構成だと、どのアルバムに入ってた曲なのか、相当のファンでも混乱してしまうはず。それだけブレずに安定したソング・ライティングを行なっていた、という逆説的な証明にはなるのだけれど。
 
 今もメイン・ヴォーカルの2人、Paul HeatonとJacqui Abbottは、デュオとして地道に活動、今年アルバムをリリース、それに伴って国内ツアーや野外フェスに参加したりしているのだけど、映像を見ると温かい大歓声の中、非常にリラックスしたムードで楽しげに歌っている。それだけファン層のすそ野が広く、愛されてきた証なのだけれど、穿った見方をすれば、いわゆる懐メロ歌手的扱いにも見える。もはや、新しいアクションは期待されていないのだろう。
 
 でも、懐メロとさえ認識されずに消えていった、幾多のミュージシャンと比べれば、これはこれで幸せな状況なのかもしれない。


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1. Song For Whoever
「ペンケースの底から君を愛す」という歌詞は何かの比喩なのだろうけど、よくわからん。昔日本版も持っていたのだけれど、あいにく大昔に売っぱらってしまったため、いま手元にあるのは輸入盤。
 ファースト・シングルのはずだけれど、なぜか6分超もある。ラジオのオンエア対策など、考えてなかったんだろうか。
 オーソドックスなポップスと言うには、なんかいびつさを感じるのは、ポップとは無縁な男性ヴォーカルの声質だろうか。
 こういった曲がUKチャート2位まで上昇したというのは、思えば懐の深い時代だったのだろう。



2. Have You Ever Been Away
 初代女性ヴォーカルであるBriana Corrigan、この頃はまだゲスト・ヴォーカル扱いなので、やや影は薄い。あまり考えずに女性ヴォーカルを入れてみたところ、思ったより出来が良くバンドのカラーにもフィットしたので正式加入となったのだろう。
 一応リズムはレゲエなのだけど、全然それっぽく聴こえないのは、英国の曇り空を愛するバンドだから。
 
3. From Under The Covers
 Housemartinsの面影が感じられる、バンド・スタイルのシンプルなサウンド。ベースの音がやたら響くので、ヴォーカル隊ではなくバンド主導で作られた曲と思われる。
 
4. I'll Sail This Ship Alone
 UKチャート31位まで上昇。Housemartinsではできなかった、ピアノ主体のしっとりした曲。彼らの曲の中では比較的ストレートなラブ・ソング。サウンド・詞・メロディ三位一体きちんと整った曲である。これだけ取り上げて聴いていると、実はすごくまともなバンドであることがわかる。
 皮肉を盛り込んだ歌詞は照れの裏返しとも取れるが、だからといってこのような曲ばかり作ってても、イギリスではなかなか芽が出ない。あのElton Johnだって、最初期のステージはかなりぶっとんだ衣装だったし、何かしらスキャンダラスな二面性も見せないと、評価すらしてくれないのだ。



5. Girlfriend
 彼らにしてはモダンなサウンド。リズムを強調したホワイトR&Bといったイメージ、バック・トラックだけ聴いてるとRobert Palmerみたいにも聴こえる。ギターがきちんとギターの音を出しているのも、なかなかバンドっぽい音でかっこいい。
 
6. Straight In At 37
 当時チャートの常連だったDuran DuranのSimon le BonとPaul Youngを徹底的に揶揄した歌。サウンドも何だか小馬鹿にしたような80年代ビート・ポップサウンドを模している。最後には何故か女優Nastassia Kinskiの名前も。
 
7.  You Keep It All In
 UKチャート8位まで上昇。気怠い感じのBrianaと元気ハツラツなPaul Heatonとのヴォーカルの対比が妙。男女の絡みのヴォーカルと言えばバービーボーイズが思い出され、非常に仲睦まじいポップな3分間だが、内容は殺伐としており、強盗殺人犯に拘束されてる現状を嘆いている。



8. Woman In The Wall
 爽やかなヨーデル調のポップ・ソングながら、歌詞はこのアルバム中、最もグロテスク。酔っぱらった際、つい魔が刺して妻を殺害、死体を壁に塗り込めて隠ぺいしようとするが、腐臭が漂ってこりゃたまらん、という、書いててもムカムカするような内容。でも曲・メロディはきれい。
 
9. Oh Blackpool
 ちなみにBlackpoolとはイギリスの有名な保養地。日本で言えば、軽井沢や葉山マリーナあたりをイメージしてもらえればよい。
 ヒトラーやカール・マルクスを引き合いに出して、資本主義の悲哀を嘆く歌を、これでもかというくらい爽やかに歌っている。俺的に、英語はまったくネイティヴではないので、メロディ中心に好きこのんで聴いていたのだけど、まぁこれからも歌詞に重きを置いて聴くことは、あまりないと思う。それだけサウンドとメロディが良いのだ。

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10. Love Is... 
 なぜか7分超の大作。キャッチーなメロディが持ち味のポップ・バンドにとって、長尺の曲はあまり必要とされていない。ホント昔ながらの3分間ポップスが一番需要が高いのだ。なのに彼ら、時たま冒険を侵す場合があるのだが、その大概は失敗に終わっている。
 この曲もそこまで引き延ばすべき曲かと言えば、そこまででもないような気がする。まぁせっかくのファースト・アルバムなので、多少サウンドの幅を持たせたかったのだろう。
 
11. I Love You (But You're Boring)
 歌詞中に出てくるCarouselとはメリーゴーラウンドのこと。珍しくSEなども使いながら多重トラックを組み合わせながら、曲に奥行きを与えている。アコースティックを多用したシンプルなサウンド、ヴォーカルも熱を帯びて、ラスト曲をうまく締めくくろうといった気概が見える。




 ファースト・アルバムながら、チャート的に好成績を収めたBeautiful South、今後十年ほどは安定した人気でイギリスのお茶の間までをも席巻し、コンスタントにアルバムを発表することになる。かなりポピュラー・ミュージック寄り、非ロック性の強いアルバムであり、ブルース&ロック色が導入されるのはこの後から。純粋なメロディを堪能するのなら、このアルバムが一番だろう。


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アメリカ代表ポップ馬鹿、完コピに熱中する、の巻 - Todd Rundgren 『Faithful』

folder ずっと引っかかっていたのだけど、要はコンセプトありきの人なのだと思ったら、妙に納得してしまった。
 
 Nazzを解散して最初の2枚はシンガー・ソングライター・ブームの先駆けとも言えるシンプルなサウンド、続く『Something / Anything』では一転して、レコード溝の振り切れる限界まで音を詰め込み、こちらも宅録の先駆けとも言えるセルフ・レコーディングを2枚組大作で極めるつもりだったが、途中で力尽きたのかネタ切れしたのか、最後の2枚目D面はゆるいジャム・セッションでグダグダのエンディング。体力と気力の限界を痛感した反省を踏まえてなのか、続く『A Wizard, A True Star』ではAbbey Road方式を採用、A面のみ丸ごと組曲という構成に落ち着いた。
 「2枚組アルバムを作るんだ!!」という以外は特別なコンセプトのないセルフ・タイトルの2枚組は、一応まとまってはいるけど、逆にこれといったフックが少なく、やや散漫な印象。中途半端な仕上がりに再び反省したのか、続く『Initiation』ではB面が1曲のみ、アメリカン・ハード・自己満足・ポップ・プログレ” A Treatise on Cosmic Fire“で埋め尽くした。
 
 コンセプトがしっかりしているアルバムは、結果的に構成もしっかりしているので何度も愛聴できるのだけど、冗長な2枚組ともなると、ピントのボケた単なる寄せ集め的なアルバムになってしまい、聴く機会もほんとわずかになってしまう。多分アルバム片面くらいなら集中力も続くのだろうけど、それ以上となると関心が他の方面へ、例えば次に制作予定のアルバムへ意識が向いてしまうのだろう。

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 で、今回の『Faithful』。A面が60年代ロックのカバー、B面がオリジナルという構成。これまでの経緯を踏まえると、「コンセプト系+オーソドックス系」といった風に二面性を効果的に演出する方が、一枚フルに通したテーマよりまとまりやすいのだろう。
 Todd自身としては、こうした二面性を「絶妙なバランス感覚」と良い方に受け取っているのだろうけど、客観的に見ればどっちもどっち、それほど大差はない。
 そう、それは趣味性全開の密室ポップ。どこから切っても金太郎アメ、個性の強い馬ヅラToddの顔面が視界いっぱいに広がり、そしてむせ返るようなToddの世界観を凝縮した濃密サウンドが展開される。
 
 それが如実に現れるのが、やはりA面のカバー群。
 今なら素人でもちょっと勉強すれば、フリー・ソフトを駆使することによって、そこそこのスペックのパソコンでもそれなりのサウンドを作ることも可能になったけど、何しろ時は1976年、電卓がやっと卓上式になり、やっとマッキントッシュが創業された頃である。シンセでさえまだアナログの時代、そんな中、Toddは限定された条件の中であらゆる手法を駆使、自らも生きてきた60年代の空気感の再現に挑戦している。
 さすがにこだわりが強かったのか、レコーディング当時でも既にヴィンテージ扱いだったギターやドラムなどの楽器類だけでなく、マイクやテープ・レコーダーなどのレコーディング機材も、可能な限りオリジナル・ヴァージョンと同じ条件のものを揃えている。
 
 駆け出しのコピー・バンドならまだしも、経歴の長いプロのミュージシャンが有名曲のカバーを行なうことは、時としてデメリットになる場合がある。
 ミュージシャンとしてのスキルが高ければ高いほど、プロならではの視点・独自性が求められ、よって要求されるハードルは高くなる。これが思いっきり的はずれのアレンジなら、それはまたそれで潔く受け止められるかもしれないけど、大してひねりもない、アレンジもほぼそのまんまのカバーだと、同業者だけでなく、長年のファンからもソッポを向かれ兼ねない。下手すると、それまで築き上げてきたファンとの信頼関係も、一瞬にして失いかねない危険性を孕んでいる。
 それだけカバーという行為は、下手なオリジナル曲よりシビアな目で評価される。

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 ただこのアルバムのTodd、特徴のあるヴォーカル以外はオリジナルを忠実になぞった作り、批評性・客観性のかけらもないサウンドを提示している。ギターの音色やスネアの反響具合など、細かなディテールまでこだわって作り込んだトラックに合わせて、エコー成分やブレスのカウントまで忠実に再現するTodd。ここまで精密に作り込んでしまったら、もう笑うしかないくらいである。
 何のためにここまでするのか。
 そして、何の意味があるのか。
 多分、意味なんてない、ただの思いつきだ。思いつきという行為を突き詰めてゆくことによって、見えてくるものもあるのだろう。
 
 ただこの人、ここまで読んでいくと偏屈に思われそうだが、基本的には「いい人」なので、昔からのファンに向けて、B面は極上のポップ・ソングを用意している。これがまたイイ感じの美メロを取り揃えており、純粋なシンガー・ソングライターとしてのToddを存分に堪能できる、
 「ほんと、やりゃ出来るじゃん」とでも言いたくなってきてしまうけど、事はそう単純でもない。
 偏執狂的なポップ馬鹿のファンもまた同族、聴き手の方も屈折している者が多く、ただ流麗なだけ、ただ美メロなだけの曲、では肩透かしを食らった気になってしまう。
「え、これで終わりなの?これじゃちょっと素直すぎね?」
 ―ファンというのは身勝手なものである。


Faithful
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Todd Rundgren
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1. Happenings Ten Years Time Ago
 オリジナルはYardbirds、Jimmy PageとJeff Beckとの双頭ツイン・リード体制でリリースされた唯一のシングル、というのが一般的なインフォメーション。Toddのファンなら大体が同じはずだけど、俺が最初にこの曲を知ったのは、Toddのこのアルバムから。なので、オリジナルは後付けで知った、という人が案外多い。いや、リアルタイムで聴いてました、って人なら別ですけどね。
 当時はちゃんとやっていたPageのリフも、曲間のモノローグまでできる限り忠実に再現している。やりたかったんだろうな、こういうの。

2. Good Vibrations
 これは有名、Beach Boys、ていうかBrian Wilson作詞・作曲・プロデュースによる、一大ポップ・シンフォニー。ポップ馬鹿とは多分、この人が元祖。
 何重にも複雑にかみ合わせたコーラスを、これまた忠実にミックスして再現したところ、それとチューニングが難しいと言われているテルミンの音色もクリソツ。ま、でも最初に作った人が一番すごいんであって、結局は完コピに過ぎないんだけどね。
 それでもキワモノ的な珍しさがあったのか、アメリカではこのToddヴァージョンがシングル・カットされ、34位にランク・インしている。
 


3. Rain
 こちらもご存じBeatles、ただ後期のシングルB面曲だったため、ファン以外の認知度はちょっと少ない。Ringo Starr曰くが自身のベスト・プレイだったと振り返った、力強いバスドラの響きも忠実に再現。打楽器のニュアンスを再現するにはかなりの苦労があったと察するけど、そこは筋金入りのBeatlesオタク(後年Ringoのオール・スター・バンドに加入して世界中を廻ることになる)、この程度の苦労は苦労とも思わなかったのだろう。
 鼻濁音の辺りで、時々John Lennonが憑依したように聴こえる瞬間があるのだけれど、考えてみればこの頃Johnはまだ健在だった。憑依も何もないや。

4. Most Likely You Go Your Way [And I'll Go Mine]
 Bob Dylan『Blonde on Blonde』収録。この頃のDylanは一介のフォーク・シンガーから後のThe Bandとなる手練れの連中を従えロックのフィールドに進出し、更に音楽性を広げていた頃、世間一般のイメージよりもポップな曲となっている。ちょっと上ずり加減でダルそうに歌うと、誰でもDylanっぽく聴こえるというのは、アメリカ人でも同じなのだろうか。日本でいう森進一のような、マネしやすいシンガーの一人である。

5. If 6 Was 9
 あまり接点が感じられないけど」、Jimi Hendrixのカバー。ブルースを基調にした、ややポップ性を意識した曲なので、Toddもカバーしやすかったのだろう。
 初めて『Faithful』を購入した10代の頃、ジミヘンはほぼ接点がなかったため、このヴァージョンで聴くのが初。Jeff Beckと並んでジミヘンの場合、カスタムメイドのエフェクター使用などによって、完コピが難しいギタリストの一人に数えられるけど、Toddヴァージョンもまた、なかなか近い音色を作り出している。
 Lenny Kravitzのカバーしてたので、一応この機会に聴いてみたのだけど、ジミヘンっぽいギターの鳴り方はいいとして、そこかしこで中途半端にオリジナリティーを入れちゃってることにより、聴いていると次第に違和感の方が強くなってしまう。まぁどっちにしろ俺の場合、Lennyはイマイチ受け付けないので、どうしても点は辛くなってしまうけど。

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6. Strawberry Fields Forever
 超有名なBeatlesのカバー。懐かし番組でBeatlesの足跡が語られる場合、だいたい中盤あたりでこのPVが流されるので、まったく興味がなくても聴いてる人は多いはず。思えばこの曲、Beatlesがライブ活動を停止してレコーディングに没頭していた頃の産物である。当時のトップ・アーティストがレコーディング中心の活動にシフトしたことによって、ポピュラー音楽の音響技術は飛躍的にアップしたけど、それに伴って後年有象無象のポップ馬鹿を産み出す次第となったのは、彼らの功罪のひとつである。
 そのポップ馬鹿集団のトップ・ランナーに位置するTodd、テープ逆回転やスプライシング技術などを可能な限り解明して、Beatesサウンドの再現に努めている。よくやるよ、ほんと。

7. Black And White
 Utopiaでの課外活動、またGrand Funkのプロデュースなどで得たアメリカン・ハード・サウンドのノウハウを全開、重いギター・リフを中心とした、単純明快なハード・ポップ。そう、Toddがからんでくると、どんなハードな曲でもポップになってしまう。
 後半で重くトリッキーなギター・ソロが挿入されるけど、やはり音色はどこかポップで変態チック。

8. Love of the Common Man
 何かに似てると思ったら、George Harrison”My Sweet Road”に構成がそっくりだった。バック・トラック固定のまま、互いの歌だけ取り換えても、何ら違和感がない。Toddにしては珍しくコード進行も安定しており、よって独特なメロディの揺れやムラもなく、きちんと一曲にまとまっている。
 こういった曲だけ集めて作ったアルバムもあるのだけど(『Hermit of Mink Hollow』)、それはまた後日。
 


9. When I Pray
 ゴスペル・コーラスが中心となって構成された曲。珍しくメイン・ヴォーカルのキーが低く設定されており、そこにやや違和感。バック・トラックだけ聴けば、伝統的なゴスペル・ソングの白人的解釈とも言える小品なのだけど、ヴォーカルとのミスマッチ感の方が強く印象に残る。でもそのギャップ感こそが、普通のポップスとはひと味違うところ。

10. Cliché
 Runtシリーズに入ってててもおかしくない、シンガー・ソングライターとしてのスペックを最大限活用したナンバー。コードの不安定感やサスティンを効かせたギターの揺れる音色によって、Toddの楽曲の最大の特徴である「未完成ゆえの調和」を演出している。ただ俺的にはちょっと甘口。もう少しビターな風味があったら、さらに良かったかも。

11. The Verb To Love
 「甘さはチョット…」と言いながら、この曲は別格なのだった。Toddが得意とするスウィートなフィリー・ソウルをベースとした、ドラマティックなポップ・バラード。もともとこのアルバム全体が、当時のUtopiaのメンバーをそのまま演奏に起用しているため、特にこの曲においてはそれがうまく作用して、Utopia特有のアメリカン・プログレ風味とがうまくマッチしている。
 


12. Boogies [Hamburger Hell]
 ラストはGrand Funkっぽいブギ・テイストのロックン・ロール。こういった曲ならいくらでも書けそうだし、Todd自身も好んでこういったタイプの曲をアルバムごとに2~3曲くらいはぶち込んでくるのだけど、まぁあまり需要がないのだろう。世間的に、ロックンローラーとしてのToddはあまり求められていないのである。




 この後、Utopiaはプログレ風味を薄めてハード・ポップ路線を強めてゆくのだけど、その路線変更が功を奏したのか、そこそこのセールスを記録するようになる。次第に活動のメインがUtopia中心にシフト、Toddのソロは次第にフォーカスが定まらなくなる。
 その迷走状態の直前、ソロとバンドとの均衡が取れていた最後の状態を記録したのが、この『Faithful』である。


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アメリカ代表ポップ馬鹿、極上の思いつきサウンド - Todd Rundgren 『A Cappella』

folder 1985年にリリースされた、ソロとしては12枚目のアルバム。他にもアメリカン・プログレッシヴ・ハード・ポップ・バンド(長い!!)Utopiaとして9枚のアルバムを制作しているので、彼の70~80年代は膨大な仕事量に明け暮れている。その他にもソロ・グループ両方のツアーを行ない、また長らく所属していたBearsvilleレーベル・スタジオのハウス・エンジニアとして、数多のアーティストのプロデュースを行なっているので、一体いつ寝てるのか、こっちが気になってしまうくらい。
 それに付け加えて、巡り巡った縁により女優Liv Tyler(ご存じ父親はAerosmithのSteven Tyler)の育ての親として奮闘している。ま、これは単なる豆知識。
 
 当時のToddは古巣Bearsvilleを離れ、大メジャー・レーベルのワーナーに移籍して間もない頃。それまで特別大きなセールスを上げることもなく、そしてまたこれからもビッグ・セールスは期待されていないはずなのに、どういった経緯でワーナーとの契約に至ったのか。
 
 前回のToddでも述べたように、この人はアメリカでも日本でも、そして全世界の音楽業界関係者からの受けが良く、ミュージシャンズ・ミュージシャンとしての評価がとても高い。絶対数は少ないけど、世界中に満遍なくマニアックなファンが点在しているため、すべてかき集めればそこそこのセールスは見込めるし、またレコード会社から見ても、「別にいなきゃいないでいいけど、特別拒む理由もないから取りあえずうちにいてもいいよ」的な扱いのアーティストだったせいもある。

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 まだ音楽配信なんて技術もなく、CD・レコードなど物理メディア以外に音楽流通の手段がなかった頃、まだ業界全体に余裕があり、音楽出版というのは文化事業的な側面を担っていた。
 例えば日本でも、あまりセールスの見込めない童謡や純邦楽、落語・朗読などのセクションは、規模こそ縮小されているけど、カタログのラインナップにはほぼ必ず残っている。当然、社内的には窓際ポジションなのだけど、企業としてのアイデンティティ、儲け一辺倒な活動だけではないことをアピールしていくためには、必要不可欠なものである。新陳代謝が少なく、もはや先細りの文化を保護してゆくことは、社会的責任を担う企業の社会貢献として、当然のことと受け止められていた。ま、経営的観点から見れば、税金対策でもあるのだけれど。

 稼ぎ頭であるポピュラー部門も例外でなく、少しアバンギャルドでちょっぴりプログレッシブな音楽もまた、いますぐ収益を生み出すものではないけれど、将来への投資を兼ねて、また未来の成長分野として育成してゆくため、ビッグ・セールスで得た儲けを、そういったマイナー部門へ注ぎ込んでいた。当時のElton JohnやCarpenters、ABBAらに救われたアーティストらは無数にいたはずだ。
 物理メディアによる流通が崩壊しつつある現代において、アーティスト契約自体がシビアになりつつあるけど、1985年当時はまだ、Toddのように大きな収益を生まないアーティストでも、どうにかメジャー・レーベルの隅っこで息をつけるくらいの余裕はあった。
 
 で、この『A Cappella』、サウンド的にはかなり凝っていて、ていうか、もうなんていうかこう…、目の付けどころが変態である。あ、もちろん褒め言葉です。
 いわゆる一般的なドゥー・ワップ、山下達郎やゴスペラーズ的なロマンティックなものを想像すると、ひどくバカを見る形になる。アカペラといっても、一般的な和声コーラスを重ねたものではなく、ごく普通のバンド・サウンド、例えばギターやドラム、ベースといった楽器の音色を、すべてToddの肉声を加工して、ピッチや音程を整えて貼り付けた代物である。思いつきにしては膨大な手間のかかる、普通に演奏するか普通にアカペラにするかのどちらかにすればいいのに、わざわざこんなしちめんどくさい所業を行なうのは、とても悪趣味な行為である。

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 で、肝心の出来栄えだけど、これが案外良い。ていうか、サウンドの奇抜さに埋もれて分かりづいけど、何回か聴き込めばいつものToddだということに気づかされる。メロディは従来のTodd、DNAに刷り込まれたアメリカン・ポップスと敬愛するノーザン系ソウルとのいいとこ取りとなっており、さすがメジャー移籍第一弾として、気合の入ったところを見せてくれている。
 それなのにリリース当時から、そして現在でも、トリッキーな変態サウンドのことばかり先行しているおかげで、肝心の中身についての評価はとても少ない。
 今だからこそ、ぜひ再評価してほしいアルバムである。


A Cappella
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Todd Rundgren
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1. Blue Orpheus
 インドネシアの伝統的な男性コーラス唱法「ケチャ」を取り入れている、だからスゴイ!!という論調ばかりで語られる曲だけど、まぁ確かにその通り。まだワールド・ミュージックという概念自体が語られることも少ない時代。ポピュラー界で目をつけていたのは、せいぜいPeter Gabrielくらいだったはず。Toddがどういった成り行きでこのジャンルに出会ったのかは定かではないけど、アルバム一曲目のつかみとしてはベストだったんじゃないかと思う。
 ただこの曲、サウンドのエフェクト的な部分だけでなく、純粋にメロディが絶品。あくまでケチャ云々は装飾の部分であり、メインのメロディ、そしてややメジャー感を意識したToddのヴォーカルを堪能してほしい。
 
2. Johnee Jingo
 ちょっぴりゴスペル調。コーラスがアフロっぽいので、黒人霊歌という単語を思い出してしまった。
 ここで今さらToddの特徴だけど、この曲に限らず、正確なピッチというものにあまりこだわりのない、ベテラン・ミュージシャンとしては珍しいタイプの人である。口ベースのリズムの揺れは、気になる人は気になるのだろうけど、Todd自身としてはトータルの出来栄えが重要であって、ニュアンス的な部分は結構雑である。
 この曲もTodd自身によるドゥー・ワップ調多重コーラスが大きなうねりを作り出しており、そこかしこに詰めの甘さは見られるのだけれど、トータルで見れば結果オーライ。
 ま、「作り込んだってしょうがねぇやどうせ売れねぇんだし」という気持ちもあるのだろう。
 
3. Pretending To Care
 このアルバムにおいてのベスト・トラック。流麗なア・カペラ・コーラスが全体の曲調を支配しているのだけれど、コーラスを抜きにしても、きれいなメロディである。そうだよ、こういうことが普通にできるんだよ、この人は。
 それにしてもTodd、ゴスペルに代表される黒人コーラスを意識しているのだろうけど、やはりそこはもともとの声質の細さ、ダイナミズムを感じさせるには迫力が足りない。それでもイコライザーやサンプラーを駆使して精いっぱい肉声グルーヴを作り出している。何が何でもDIY、というのがこの人、Todd Rundgrenなのである。

 
 
4. Hodja
 スタンダードなドゥー・ワップから始まる、3.同様、こちらも正当なア・カペラ。昔から変なコード進行が取沙汰される人だが、この曲についてはまとも。もしかすると素人目にはわからないくらい巧妙な構成なのかもしれないけど、メロディの終わりが中途半端ではないので、安心して聴ける。
 なんだ、やっぱやりゃできるじゃん。
 
5. Lost Horizon
 1.同様、Toddヴォイスを加工したリズム・トラックを使用している。普通にやればとってもきれいな曲なのに、そうはせずに一回転も二回転もよじれ捻るところが、やっぱりTodd。
 直訳すれば「失われた地平線」、コーラスがとても幻想的で、濃密な夜の密林、怪しげなジャングルを連想させる。
 
6. Something To Fall Back On
 またまた変態リズム・トラック使用。今度はToddお得意の60年代フィリー・ソウルをベースにしたポップ・ソング。楽しんで作ったのか、リズムのオカズも弾んだ声になっている。
 しっかし、これも普通にやればハッピーになれる曲なのに、やはりエフェクトの部分だけでしか語られないのが惜しい。いやほんと、この頃のToddは極上のメロディ・メイカーだったと思う。

 
 
7. Miracle In The Bazaar
 Utopiaのアルバムに入っててもおかしくない、まるでYesのように荘厳としたコーラスが宇宙的な広がりを見せるプログレッシヴ・ポップ。これをUtopiaでやったとすれば、恐らくアルバム片面をまるまる使った組曲になりそうなところだけど、ここでは4分程度に凝縮している。プログレッシヴという本来の意味に沿った、Toddしかできない(やりそうにない)野心作。
 
8. Lockjaw
 ちょっぴりガレージ・ロック風味の、メイン・ヴォーカルにもコンプをかけてニュー・ウェイヴっぽく仕上げている。
 もともとバンドでデビューしただけあって、ロック・サウンドへの憧憬が深い人なのだけど、元来の声質の細さ、ロック・ミュージックにしては変則的なメロディ、コード進行によって、ロックになり切れない自分に気づいてる節がある、それがTodd Rundgren。どちらかといえば重厚なパワー・ポップに仕上がっているのだけど、Toddの声質ではここまでが限界。
 
9. Honest Work
 加工していない素の声を使い、ちょっとしっとりした導入部。ソングライターとしての側面を良い方向で表現した佳曲。2分足らずの曲だけど、白人としてのアイデンティティ、黒人サウンドへの憧れとが同居した、Toddならではの持ち味が発揮されている。
 
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10. Mighty Love
 60年代ソウル・グループSpinnersのカバー。シンプルなドゥー・ワップに仕上げている。
 少年時代の憧れのサウンドをそのまんま、ほとんど加工していない多重コーラス、シンプルなフィンガー・スナップとハンド・クラッピング、そして熱くソウルフルに近づけたヴォーカルで構成されている。ほんとに好きやってみたかったのだろう。
 これ一曲だけならヴァリエーションとしてありだが、コーラス・テクニックだけを取り上げるのなら、本家の方が秀逸だし、またゴスペラーズの方が上手い。
 ただ、そういった問題ではない。重要なのは、その曲、そのアーティストへの愛情、リスペクトの具合だ。それがなければ、ただのテクニック品評会に終わってしまう。




 というわけで、どうにかこうにかアルバムを完成させたTodd、次は外注仕事、プロデュースの依頼が舞い込み、しばらくそちらに専念することになる。専念するも何も、ほんとはそんなつもりはなかったはずなのだけど、専念せざるを得ない事情が出てくる。
 何しろ相手はXTC、あの『Skylarking』のレコーディングに駆り出されることになる。


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北海道の中途半端な田舎に住む、そろそろアラフィフ男。ほぼ週1のペースで音楽ブログ更新中。節操ない聴き方と思われてるけど、自分の中では一貫してるつもり。 最近は蔵書の整理がてら、古い本を再読中。ジョン・アーヴィングから始まって、フィッツジェラルドやゾラ、モームなど、いわゆる古典の復習中。いつになったら終わることやら。新刊読めねぇや。
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