好きなアルバムを自分勝手にダラダラ語る、そんなユルいコンセプトのブログです。

最強のバンド、Attractionsとの出会い - Elvis Costello 『This Year's Model』

folder Huey Lewis & The Newsの前身バンドCloverを主に起用してレコーディングされたデビューアルバム『My Aim is True』、完パケした時点でのCostelloには、まだライブを行なうためのバンドがなかったため、ちょっと小休止するヒマもなく、早速バンド編成に動かなければならなかった。
 いま現在もそうだけど、ソロのパンク・ミュージシャンというのは、ごく少数派である。通常ミュージシャンがデビューするにあたっては、ライブ・パフォーマンスが注目されて、口コミ効果からレコード会社が目をつけ、そこからデビューに向かっての話が進むものだけど、Costelloの場合、方々に送りまくったデモ・テープが評価されてStiffレーベルに引っかかった、という経緯なので、ちょっと事情が違ってくる。
 一応デビュー前にFlip Cityというバンドで活動しているのだけど、契約できたのはCostelloのみ。よほど才能が突出していたのか、それとも他のメンバーがよっぽど使い物にならなかったのか。多分両方だと思う。

 で、早速結成されたのが、ご存知Attractions。ヴォーカル兼ギターのCostelloを筆頭として、その後も長く帯同することになるキーボード担当のSteve Nieve、そしてリズム・セクションはBruce Thomas(B)とPete Thomas(D)、ちなみに同じThomas姓だけど、縁戚関係はなし。

 Attractionsが結成された1977 年のライブ日程を見てみると、それはもうメチャメチャな過密スケジュール。7月イギリス国内からスタートして、移動日も含めれば、ほぼ休みなしで、あちこちの小ホールをドサ回りしている。当時のプロモーション手段といえば、ラジオかライブくらいしかなかったので、どの新人アーティストも似たような状況だったのだけど、特に彼らは急ごしらえのバンドだったため、とにかく現場で音を出してサウンドを確立させる必要もあった。
 取り敢えずイギリス国内をひと通り廻りきった後、11月からはアメリカへ渡り、ほぼ年末までこちらもドサ回り、年が明けて帰国してからも、ほぼ同じペースのまま、7月までほぼ100本以上のステージをこなしている。それだけ需要もあったのだから、当時の彼らの勢いが窺える。
 
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 1970年代中盤のパンク・ムーヴメントというのは、今に続くオルタナティヴ系アーティストの礎となった部分もあるけど、反面、時代の徒花的に、一瞬強烈な光を放ったと思ったら、すぐに消滅してしまう連中も多かった。シングル1枚制作できればまだいい方で、多くのバンドはライブハウスに出演できるかできないかの時点で足踏みしてしまうのがほとんどだった。もしアルバム・リリースまで漕ぎ着けたとしても、大抵のバンドはそこでネタ切れしてしまうか、仲違いの末解散してしまうなど、結果的に伝説になってしまうバンドが多かった。
 Sex PistolsだってPop Groupだって、過激なファッションやパフォーマンスを競ったバンドほど、その傾向が強かった。彼らにとって音楽とは、青春時代の初期衝動か、移り気な時代のトレンド的なものでしかなく、継続してゆくものではなかった。

 そのパンク以前、シンプルなロックンロールへの回帰という点において、根っこの部分は相当似ているパブ・ロック時代から活動していたアーティストは、総じて寿命は長い。
 シンプルなロックンロールからスタートしたことは同じながら、持ち前のアカデミックな音楽性によって、ジャンルを超えた活動を展開していったJoe Jackson、いびつな変拍子ギター・ポップでデビューしながらも、徐々に神経症的箱庭ポップに音楽性を変容させていったXTCなど、時代によって形を変えながら、未だに活動している人も多い。
 やはりファッションだけでは、早々にネタが尽きてしまい、それほど長くは続かないのだ。

 で、Costelloの話。
 そんなハード・スケジュールの中、ツアーの合間にレコーディングされたのが、このセカンド・アルバム。リリースが決定したはいいけど、何しろ詰め込むだけ詰め込んだツアー・スケジュールのため、まともにレコーディングできる時間がない。なので、年末年始のツアーの空白期間を利用して、実質10日間くらいで一気に録音された。
 普通のアーティストなら楽曲制作の時間もなく、途方に暮れてしまうところだけど、この頃から多作だったCostello、デビューしてからもほんの空いた時間を利用してのデモ・テープ作りは、もはや生活の一部となっており、素材は山ほどあった。しかもライブでは惜しげもなく未発表曲もレパートリーに入れていたので、ほとんどの曲は既にバンドでアレンジされていた。
 『My Aim is True』のような、スタジオ・ミュージシャン中心によるレコーディングではなく、長い間寝食を共にしたメンツでの作業のため、意思疎通もスムーズ、アンサンブルもしっかり練られた状態である。あとはライブの勢いをそのまま真空パックするように、基本ワンテイク、一気呵成にレコーディングされた。

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 その『My Aim is True』、決して悪い人ではないのだけど、はっきり言って呑んだくれのポップ親父Nick Loweがプロデュースということもあって、比較的メロディアスでキャッチーな、口ずさみやすいナンバーが揃っている。
 それに対し、この『This Year’s Model』、こちらもNickがプロデュースなのだけど、バンドでのヘッド・アレンジが前回よりも捗ったため、更にやることもなく、ブースで呑んだくれていたらしい。なので、Nickというよりはバンドの意向が色濃く反映されている。いわゆるキラー・チューンの割合は下がっているのだけど、甘さは抑えめ、サウンドの一体感が強く、アルバム1枚まるごとが一つのショウのような構成になっている。
 前作ではヴォーカル&インストゥルメンタルといった感じのバンド構成ゆえ、ちょっと遠慮がちだったCostelloも、ここでは思う存分、遠慮なくギターを弾きまくり掻き鳴らしまくり、加えて吠えまくっている。パンク/ニュー・ウェイヴ的サウンドということなら、断然こっちの方がパワーがある。

 デビュー2作目にして、最強のバック・バンドを従えたCostello、チャート的にもかなりの健闘ぶりで、UK最高4位US最高30位という、前作に劣らないセールスを記録した。
 で、このアルバムを引っさげて初来日公演という運びになるのだけど、これがまたお騒がせもの。チケットの売れ行きが悪いことに業を煮やしたCostello、どうにか目立って注目を浴びようと、なぜかメンバー全員、日本の学生服を着て(多分Costelloに強要されて)トラックの荷台に乗り、都内でゲリラ・ライブを行なった、というのが、今でも語り継がれるエピソードである。当然その後、道交法でパクられてしまうのだけど、まぁ三面記事程度には話題になったため、ライブは連日満員、おかげでバンドもノリノリだったらしい。

 結果的にどうにか丸く収まったのだけど、おかげで日本では長い間、Elvis Costelloといえば、「何をしでかすかわからないやつ」というレッテルが貼られることになる。
 そしてそういった扱いは、”She”の大ヒットまで、長らく続くことになる。


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1. No Action
 初っ端から疾走感あふれるナンバー。とにかく勢い一発、あっという間の2分間。出だしの囁くようなCostelloのヴォーカルから始まり、静かなオープニングかと思ったら、すぐにバンドはフル・スロットル、ギターはギャンギャン掻き鳴らしまくり、ドラムはドコドコ。ライブではもうちょっとキーボードが目立っているのだけど、ここでは断然Costelloがリードしている。
 何しろコード3つしか使ってないのに、これだけ表情豊かなサウンド、今のCostelloでは成しえない、シンプルかつキャッチー、永遠のパンク・チューン。



2. This Year's Girl
 少しポップ寄りのミドル・テンポ・チューン。タイトル曲だけあって、親しみやすいメロディなのだけど、Bメロが弱いせいか、地味に聴こえてしまう。ベースがウネウネ動いているのが、単純なパンク・バンドとは一線を画している。この頃のBruceはやる気が漲っている。アウトロのベース・ソロなんて、なかなか凝ってる。

3. The Beat
 初期のライブでは定番だった、Steveの見せ場。ライブでのキーボード・プレイはもっとアクティヴで、ファンキーなものだったけど、ここではロック・テイストの濃い、ミドル・テンポに仕上がっている。

4. Pump It Up
 このアルバムに共通してだけど、アップ・テンポのナンバーはどれも傑作。中でも俺が一番最初に聴いたCostelloの曲がこれ。確かNHK-FMで、氷室京介がゲストDJをやっていて、お気に入りの曲として、これをかけた。その時の衝撃は、今もって忘れずにいるし、なので、どうにも氷室京介に対しては悪い感情を持てない。
 バンドの一体感、生み出すグルーヴというのは、こういったのを指すんじゃないかと、今でも俺の中の基準の一つである。わかりやすくキャッチーでありながら、どす黒い冒頭のリフ、ちょっと上ずったCostelloのヴォーカル、中盤のドラム・ブレイクからCostelloのHey!!の掛け声によって再び始まる演奏…。言いたいことがいっぱいあってたまらないのが、この曲。UK最高24位にチャート・イン。もっと上に行ったっていいと思う。
 Status Quoがカバーしてるのはまだわかるけど、なぜかDeacon Blueまでがライブでカバーを披露していたというのは、ちょっとビックリ。想像つかないよな。



5. Little Triggers
 ちょっと切ないアメリカン・ロックの香り。この辺はもしかして、Nickあたりが強引に入れるようダダをこねたのかもしれない。ライブの緩急をつけるという意味では、こういったセンチメンタルな曲もアリ。俺も昔、この曲は好きだった。でも、いま聴いてみると、これって”Alison”の二番煎じだよな、きっと。

6. You Belong To Me
 これもライブでよく演奏されており、今でも時折セットリストに入っているので、多分お気に入りなんじゃないかと思う。メロディ主体のちょっと甘めのメロディだけど、演奏が硬質なビートを利かせているので、アルバムから浮いてはいない。

7. Hand In Hand
 サイケな逆回転エコーから始まるオープニングが、何やら不穏な空気を感じさせるけど、Costelloのヴォーカルが入れば、それは見事なパワー・ポップのお手本。
 中盤のドラム・パターンを聴けばわかるように、Phil Spectorまではいかないけど、ちょっとレコーディングでのお遊びを試してみた感じ。なので、曲も口ずさみやすく、親しみやすい。でもAttractionsの武骨なバッキングによって、甘さはそれほど感じない。
 
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8. (I Don't Want To Go To) Chelsea
 歯切れが良すぎて三味線のようにも聴こえてしまう、珍しくCostelloのギター・リフから始まるナンバー。ヴォーカル兼務のため、どうしてもストローク中心のプレイになってしまうところを、なんか急に弾きたくなってしまったのだろう。
 この頃から今に至るベテラン期まで、この人の場合、エア・ギターではなく、とにかく弾きたがるというのは、いつも感心してしまう事柄。特にこのナンバー、今でも必殺キラー・チューンとして、時々演奏してるくらいだから、よほど気に入っているのだろう。それとも単にギターを弾きたいだけなのか。UK最高16位まで上昇したシングル。

9. Lip Service
 何だかメロディがタイトル・チューンと似てるような気もするけど、まぁそこはスルーで。ダブル・ヴォーカルも入れてる分だけ音圧があり、アレンジも少し凝っている。
こういったアレンジの幅はやはり、英国王立音楽大学でクラシックを学んでいたSteveの貢献が大きいはず。なまじインテリゆえ、こういった肉体性の強い音楽に憧れを感じてしまうのだろう。

10. Living In Paradise
 ちょっとレゲエも入った、箸休め的なポップ・ナンバー。シングルでも良かったんじゃないかと思うのだけど、本人的にはそれほど思い入れがないのか、ライブでも初期以外はほとんどプレイしていない。

11. Lipstick Vogue
 性急感の強いシャッフル・ビートを難なくこなすPete。ここはとにかくビートを聴いてほしいナンバー。CostelloもBPMの速さに着いてくのが精いっぱい。
 結構難しい曲のはずなのだけど、もはや手馴れてもいるのだろう、レパートリーの中ではライブ・パフォーマンスが多い方に該当する。

12. Night Rally
 初版LPでは、これがラスト・ナンバー。ていうか、インパクトの強い曲に挟まれていたおかげで、存在自体を忘れていた曲でもある。もちろんアベレージは軽くクリアしているのだけど、他の曲が良すぎるのだ。




 で、このアルバムがリリースされた頃にライブ・レコーディングされたのが、『Live At The El Mocambo』。当初は限定盤、そして次に初期アルバム3枚とのBOXセットでリリースされた。俺が最初に買ったのが、このBOXセットで、3枚とも持っていたのに、これだけが欲しくて仕方なく購入したことを覚えている。
『My Aim is True』『This Year’s Model』の2枚からセレクトされた曲で構成されているし、今では普通に単品販売されているので、興味のある人はゼヒ。スタジオ・ヴァージョンとはまた違った、初期Attractionsの無闇なパワーあふれるパフォーマンスが生々しく刻まれている。



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Policeじゃできなかったことの集大成 - Sting 『Bring on the Night』

00029183 1985年当時のStingの活動は、プロパーの音楽活動だけにとどまらず、その音楽というツールを活用して、社会運動への積極的な参加意欲を強めている。Policeの活動が軌道に乗った80年頃から、ARMSコンサートへの参加など、UKニュー・ウェイヴ出身らしく、ベネフィット関係への関心は強かったのだけど、やはり解散してからは更にフットワークが軽くなったのか、より積極的な介入を強めている。
 Band Aid & Live Aidから始まって、アムネスティ主催による全世界ツアーへの積極的参加、アマゾンの熱帯雨林保護運動啓発のため、私財を投じてのレーベル設立など、こういったことをソロ・デビュー・プロジェクトと並行して行なっていたのだから、ものすごい活動量である。

 アーティストが大きな成功を手中に収めると、70年代までは、無尽蔵な酒とドラッグに浪費して、享楽と快楽にまみれ、金も、そして自身もすり減らしてしまうのが一般的だった。
 対してSting、もちろん根はロックなだけあって、一時は快楽に溺れたこともあったけど、バンドも後期に差し掛かると、ユングだSynchronicityだとインテリ性を強め、次第に社会問題/政治問題に関する発言も多くなってゆく。
 こういった一連の発言や活動から見えてくるように、彼はいわゆるロック・セレブのハシリのような存在である。膨大に儲けた金をただ個人的に浪費するのではなく、キリスト教圏に生まれついた者の宿命として、生まれつき身についたボランティア精神、他者への施しなどをスマートに行なえる、知性も併せ持った最初のミュージシャンである。公開/非公開の寄付やボランティア活動は、海外のセレブとしては半ば義務とされているものである。Stingもまた、そういったステイタスを手に入れるため、そしてまた純粋な問題意識の芽生えのもと、本業と並行した活動を行なってゆく。
 同じようなスタンスで、現在社会問題に積極的に取り組んでいるアーティストといえば、断然Bonoの名が挙がるはず。彼もまたSting以上に熱い男で、その熱心さは彼をも上回るくらいなのだけど、どこか胡散臭さを感じてしまうのは、そのマッチョ性の強さからなのだろうか。しかも、ロック・アーティストとしてのU2はと言えば、今世紀に入ってからもイケイケモードではあるけれど、例のitunesの件で全世界から顰蹙を買ったように、どこか世間とズレまくり&いろいろとハズしまくっているのは事実。それに彼ら、俺的には『Zooropa』で終わってるし。

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 Policeの無期限活動休止が決定し、それに伴うSynchronicityツアーが終わったと同時に動き出したソロ・プロジェクト、ほぼ間を置かずに動き出した記憶がある。バカンスもそこそこに切り上げて、とにかく思いついたアイディアを具現化したくてたまらなかったのだろう。本格始動前にある程度仕込みはしていたのだろうけど、その手際の良さはほんと感心してしまうくらい。

 で、その『Synchronicity』のすぐ後だというのに、こう言っちゃ悪いけど、あれほどジャズ・テイストの濃い、80年代としてはかなり地味なアルバムをリリースしてしまうのは、よほどの信念がなければできることじゃない。
 大物ゲストをズラリと並べたり、時代に合わせた煌びやかなサウンドを志向したとしても、もはや誰も日和ったとは思わない立ち位置にいたはずなのに、この頃のStingはかなり「攻め」の状態に入っている。
 これだけジャズ・テイストが強いにもかかわらず、80年代のチャラチャラしたサウンドとも充分渡り合い、きちんと商品として成立させているのは、アーティスト・パワーに依るところも大きいけど、やはり「良い音楽を手を抜かず、きちんと作り上げた」という点が大きい。Policeの二番煎じ的なサウンドを敢えて使わず、ほんとに自分のやりたい音楽をやって、それできちんと収益を上げる。アーティストとしては、理想の形である。
 無名ながらも腕の立つ若手ジャズ・ミュージシャンを揃え、内省的かつ政治問題まで幅広いテーマを取り上げたソロ・デビュー・アルバム『The Dream of the Blue Turtles』は、世界中はもちろん、ここ日本でも大きなセールスを記録した。

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 で、そのソロ・デビュー・アルバムを引っさげて世界中をツアーで回り、各地のベストテイクを収録したのが、この2枚組ライブ・アルバム。17カ国92本という大規模なツアーは1年に渡り、その美味しい所をピックアップしてるのだけれど、まぁどのテイクも安定してること。ジャズ・ミュージシャン中心のバンド編成のため、当然テクニック的には何の心配もなく、基本、セッション大好きアドリブ大好きな人たちばかりなので、安心して聴くことができる。
 ちなみにこのアルバム、初リリース時はなぜかアメリカでのリリースは見送られている。UK16位、他ヨーロッパ各国でもトップ10入り、そして日本でも最高28位と、2枚組にもかかわらず、けっこうなセールスを記録しているというのに、である。まぁその辺はアメリカA&Mとの折り合いが悪かったのか何なのか。

 このアルバムの参加メンバーは基本、新進アーティストばかりだったのだけど、唯一ジャズ界では名が知られていたのがBranford Marsalis。もともと一族のほとんどがジャズ・ミュージシャンという、いわばジャズ界の名門という家系に生まれたため、他の兄弟に倣って、彼もこの世界に入るのは、半ば既定路線のようなものだった。
 で、他の兄弟の中で最も才能に秀でていたのが、弟のWynton。若干18歳で、あのArt Blakeyに見込まれて名門Jazz Messengersに加入したくらいなので、その実力は推して知るべし。当初はWyntonばかりが持て囃されて、他の兄弟はついで扱いだった。

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 2人がデビューした80年代初頭というのは、70年代のフュージョン・ブームが一段落した頃、Herbie Hancockはジャズ・ファンク路線と並行してV.S.O.P.の活動を本格化させていたし、Keith JarrettやChic Coreaら、いわゆるMiles Childrenの連中が率先してアコースティックへ回帰していた頃だった。そういった潮流の中で、若手ミュージシャンもまた、新たな視点で50年代のモダン・ジャズをリスペクトする「新伝承派」という勢力が台頭してきて、その流れでデビューしたのがMarsalis兄弟である。
 最初は二人とも、その新伝承派のカテゴリーの中で活動していたのだけど、考えてみれば、ちゃんとしたモダン・ジャズを聴くのなら、断然オリジナルの方がいいに決まってる。モダン・ジャズ全盛時には生まれてもいない若手が、古色蒼然としたモード・プレイを披露しても、それは単なるコピーでしかなく、演奏に感動は生まれない。そういった活動が次第に尻つぼみになってしまうのは、自然の流れ。
 なので、この新伝承派ブームはすぐに下火になってしまう。まぁレコード会社の仕掛けめいた臭いもチラついていたので、うるさ型の多いジャズ・ファンなら、すぐにメッキの剥がれが見えてしまう。

 で、そんなこんなで兄弟の路線が次第に分かれていくのだけど、デビューから一貫してスタンダードの王道を歩んでいたWynton、プライドの高さが昂じて次第にお芸術路線に走ってしまい、モダン・ジャズと並行してクラシックの世界に足を踏み込んでしまう。一時の気まぐれで始めたものではなく、今も本流のモダン・ジャズと並行して地道に活動し続けているのは、素直に感心すべきものである。
 ただ、テクニック的にも充分聴くに値するものなのだけど、それを好きこのんで聴けるかと言えば、それはまた話が別である。
 ジャズについて造詣の深い村上春樹による彼の評として、こう述べている。
「やたら前戯がうまい男みたいで、もうひとつ信用できないところがある」。
 言いえて妙、とはまさにこのこと。俺も彼のアルバムはジャズもクラシックも、ほとんど聴く気がしない。

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 で、Branfordが選んだ道というのが、Stingバンド加入。Police終了にあたって、Stingが業界内に出したオファーに乗っかった形なのだけど、それまでジャズ界でそれなりに築き上げつつあったステイタスを一旦チャラにして、新しいキャリアをスタートさせたのは、かなりの決断だったんじゃないかと思う。
 対してWynton、高尚なアーティスト路線まっしぐらの中、本流から逸れてしまったBranfordに対して、直接/間接的に批判を表明したのは、まぁ一言多い性格なので、仕方のないところ。近年では一族揃っての共演など、それなりに関係は良好のようだし、Branfordもまたルーツ音楽の探求など、Wynton同様、後ろ向きな企画ばかり続いているので、結局は同じ穴のムジナだったのは、これも仕方ないところ。
 Stingもバンドの面々も、この頃が一番クリエイティブだったことは一致している。そうした若気の至り的跳ねっ返りのエネルギーが封じ込められたのが、この実況録音盤2枚組である。


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1. Bring on the Night / When the World Is Running Down You Make the Best of What's Around
 Police時代のヒット曲からスタート。11分もの長尺なのだけど、ダレる箇所はほとんどない。基本のリズム隊がしっかりしているおかげもあるのだけど、ここでやっぱり注目しておきたいのは、中盤のKenny Kirkland(P)のソロ。高速のラグタイム・プレイはStingの求めるサウンドと相性がピッタリしており、この後も長らく行動を共にしていたのだけど、34歳という若さで急逝してしまったことは、ほんと悔やまれる。
 もう一つのポイントは、同じく中盤のBranfordのプレイ。なんと、ラップを披露しているのだけど、これがまたうまい。こういったことも器用にできるのは、やはり良い意味でのサラブレッド。でも、これ聴いたらWynton、怒るよな、確かに。



2. Consider Me Gone
 『The Dream of the Blue Turtles』収録。アルバムでもスタンダード・ジャズ色が強く、地味な扱いだったけど、ここでもそのまんま、激渋なアレンジ。Stingの乾いたヴォーカルと、Branfordのソロとがうまく交差しており、しかもコンパクトに収めている。Stingの求めていたサウンドの本質は、案外これなんじゃないかと、勝手に思い込んでいる俺がいる。



3. Low Life
 Police時代の中でも地味さでは1,2を争う、1981年のシングル”Spirits in the Material World”のB面収録曲。ここで一旦、ジャズ・テイストは後退し、ちょっとAORっぽいナンバーに仕上げている。BranfordのプレイもBrecker Brothersみたいで、西海岸風。

4. We Work The Black Seam
 ここからLPではB面。『Blue Turtles』収録曲。チェルノブイリ原発事故の前年に作られた、ある意味予言的な曲で、メッセージ色が濃い。なので、アレンジもそれほどいじらず、ストレートに主張を歌い上げている。
 こういったメッセージ・ソングを歌う場合、例えばBonoなら熱くなり過ぎて時々胸焼けしてしまうくらいなのだけど、Stingの場合、そのドライな声質によって、変なくどさが抜けて、素直に聴くことができる。そう考えると、得な人だよね、Stingって。

5. Driven To Tears
 Police『Zenyatta Mondatta』収録曲。オリジナルより少しテンポを落とし、丁寧なヴォーカル・演奏を披露している。テーマである貧富の格差について、やはりいろいろ思うところがあるのだろうか、Live Aidでもプレイしてるくらい、思い入れの深い曲。ソプラノ・サックスに持ち替えたBranfordも、なかなかのプレイ。

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6. The Dream Of The Blue Turtles / Demolition Man
 タイトル・ナンバーは軽めのインストで、これはほぼオリジナル通り。メドレーとなる次曲は、Police『Ghost in the Machine』収録。この疾走感はロックではあるけれど、やはりリズムがジャズなので、このミスマッチ感がやはり、Stingの狙い通りといったところ。そのリズム隊、Omar Hakim(Dr)はこの後、様々な大物ミュージシャンから引っ張りだこになったし、Darryl Jones(B)なんて、今じゃすっかりRolling Stones御用達にまで出世してしまった。ミュージシャンにとって、今のStones加入がステイタスかどうかは微妙なところだけど、まぁ少なくとも、親に向かっては堂々としていられるんじゃないかと思う。
 後年になって、Sting自身、同名映画の主題歌用にセルフ・カバーをリリースしているのだけど、やはりこのヴァージョンが一番だと思う。

7. One World (Not Three) / Love Is The Seventh Wave
 ここから2枚目、C面に突入。メドレー1曲目は『Ghost in the Machine』収録。導入部がエスニック・ムード漂うアカペラから、徐々にリズムが入ってゆく構成。シンセによるパーカッション類がアフリカン・テイストを強めているけど、俺的にはこの曲、大陸的なアレンジのオリジナルの方が好み。
 続いての2曲目は『Blue Turtles』収録。オリジナルは単純なレゲエ・ビートだったけど、このヴァージョンはそれに加えてカリプソっぽさも添加されており、パラダイスなムードが満載。Branfordのソプラノ・サックスがまたイイ味だしているのと、ここで初めてギターが登場する。弦楽器担当はDarylかStingしかいないので、必然的に彼が弾くことになるのだけれど、インプロビゼーション的なプレイなので、ベースほどの凄みは感じない。

8. Moon Over Bourbon Street
 ほぼStingのベース弾き語りの導入部。クルト・ワイル的な世界観のもと、荘厳としたBranfordのソロ・プレイ。Stingの伴奏という点において、Branfordほどの適任者のソロイストはいない、と思えてしまうほどの名演。

9. I Burn For You
 これまた地味なナンバーで、Sting自身も出演した映画「Brimstone & Treacle」のサントラのみ収録されていたナンバー。多分、よほどのマニアでもなければ見たことも聴いたこともない曲であり、特に日本では当初、新曲扱いされており、俺自身もしばらくは知らなかった。
 言われてみれば映像的な曲だねぇ、と思ってしまいそうだけど、逆に言えば、音だけではなんともイマジネーションが掴みづらい曲。



10. Another Day
 ここから2枚目B面、最後のD面に突入。
 こちらはシングル"If You Love Somebody Set Them Free”のB面に収録。正直、シングル・ヴァージョンは印象に残らない曲だったのだけど、ライブで活きる曲の典型。冒頭のコール&レスポンスから始まり、ロック的な疾走感が心地よい。

11. Children's Crusade
 『Blue Turtles』収録。中世の少年十字軍になぞらえた、少年兵士の事を歌った曲なのだけど、5.同様、重いテーマの場合はストレートなアレンジで、メッセージ性を強めているようである。この辺がバランス感覚だよな。
 それでもやはり静かながらも燃えるBranford、Coltrane顔負けの超絶高速ソロをぶち込んでくる。

12. I Been Down So Long 
 ずっとオリジナルだと思っていたのだけど、今回初めて調べてみたところ、50年代のシカゴ・ブルースのカバーだった。俺はブルースはちょっと苦手なので、オリジナルを聴いてもピンと来なかったのだけど、このモダン・ブルース・ヴァージョンは好き。ていうか、Stingにブルースの素養があったことに、ちょっと驚いた。ここまでブルースどっぷりのナンバーは、これ以前も以降も、ほぼ皆無のはず。やはりバンドのカラーがそうさせたのだろう。



13. Tea In The Sahara
 シメはあっさりとしたアレンジのスロー・ナンバー。『Synchronicity』のラストに収録されていたナンバー。思えばこれもブルースなのだけど、スロー・テンポなので気がつかなかった。でも、「サハラ砂漠でお茶を」ってなに?いまだによくわからない。



 この後のStingはセカンド・アルバム『Nothing Like the Sun』を制作、これも傑作なのだけど、それはまた後日。



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ある意味ブレないポップ職人たちの定食メニュー - Beautiful South 『Choke』

choke-50b115e9c67ac 1990年にリリースされた2枚目のアルバムで、当時の全英チャートでは最高2位。3曲のスマッシュ・ヒット・シングルを収録しており、デビュー・アルバムに続いてのヒット・アルバムになった。
 この年のUKシングル年間チャートを見てみると、何故か1位がElton John、かと思えばSinead O'Connorが、あのPrince作”Nothing Compare to U”で上位にランク・インしており、以下有名なところではMadonna “Vogue”、キワモノ枠として、あのインチキ・ラッパーVanilla Iceが続く。そんなカオスなラインナップの中、本アルバム収録曲”A Little Time”が堂々13位に入っている。アコースティックを基調としたソフトなサウンドはいつも通りだけど、彼らのナンバーの中では比較的毒の少ない歌詞だったのも、ヒットの要因だったと思われる。

 当時はニュー・ウェイヴの延長線上にあったギター中心のサウンドから、ヒップホップ/ハウス・ビートの勃興期で、次第にリズム主体のサウンドが勢いづいていた頃、New OrderやDepeche Modeらが切り開いたサウンドが一気に花開いた頃でもある。MC HummerやEMF、Soul Ⅱ Soulなど、これまでの80年代常連組から一気に世代交代が進んでいる。
 とは言ってもみんながみんな、激しいビートやサウンドを求めていたわけではない。時代的にはマンチェスター・シーン真っ只中ではあったけど、英国人すべてがレイヴ・パーティに参加するはずもなく、大多数の善良な市民は、それこそElton JohnやBeautiful Southのようなゆるいサウンドを求めていたのだ。
 ちなみに同じ1990年、日本のオリコン年間チャート1位は”おどるポンポコリン”、次に”浪漫飛行”、ひとつ飛ばしてたまの”さよなら人類”と続く。似たようなもんだなこりゃ。

 前進バンドHousemartinsの時代から、ネオ・アコ・サウンドを基調とした爽やか系健康的なポップを志向していた彼ら、そこからビッグ・ビートの祖とされているNorman Cook、通称Fatboy Slimが抜けて新バンド Beautiful Southになるわけだけど、そこでサウンドのビート担当が抜けることによって、残るメロディ担当がメインとなる。
 で、彼らのメイン・ターゲットというのが、いわゆるその他層、音楽的にコアなサウンドを求めるユーザーではなく、もっと裾野の広い範囲、極論すれば、一家に一枚、イギリスの平均的な家庭になら必ずあるElton JohnやBeatles、Cliff Richardの横に並べられることを想定したサウンド作りを行なっていた。
 
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 国民の大多数を占める一般庶民に根ざした的確なマーケティング、といえば聞こえは良いけど、まぁ彼らの場合、特別にナニするでもなく、普段通りにしていれば、それがそのまま的を射ているので、そうした苦労はしていなかったと思う。
 最大公約数に合わせた中庸なサウンドは、適度に耳触りが良く、鼻歌でハミングしやすく、それでいて後に残らない。基本、スタンダードになりやすい曲調なのだけど、どぎついエログロな歌詞が、単純に聴き流せる イージー・リスニングにならないよう、そこは踏みとどまっている。きれいな歌声で流麗なメロディに乗せて、マニアックな歌詞を口ずさむという、彼らのオリジナリティーは既にこの時点で確立している。
 思えば国民的歌手の枠を飛び越えて、王室からナイトの称号まで受けてしまったElton Johnもまた、詞曲はまともながら、ゲイという性癖の反動からなのか、かつてはエキセントリックなキャラクターをステージで演じており、ポップ・ミュージックを選んでしまった男たちの業を感じる。

 庶民的なのはサウンドだけでなく、見た目もそのまんま、労働者階級の工場帰りのようなそのファッションは、もはやカジュアルを通り越している。はっきり言って、ほとんど普段着なのだけど、だからといっていきなり揃いのスーツでスタイリッシュに決めても、違和感しかない。
 いや待てよ、シャレでやってみたら、一、二回はアリか。

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 基本、デビュー当初から音楽性が固まっていたため、サウンド的な変遷で目立ったものはない。そもそも解散したのも、セールスの落ち込みによってバンド活動が維持できなくなったためであって、特別仲違いしたわけでもない。バンド・ストーリーによくある「存続の危機」やら「音楽性の衝突」など、そういったドラマ性とは無縁の連中である。
 なので、正直どのアルバムから入っても、それなりのクオリティは保証されている。乱暴に言ってしまえば、どれを聴いてもそんなに変わりはない。安定したクオリティと言えばカッコいいけど、代わり映えのしない人たちでもある。
 活動末期になって、レコード会社の要請だったのか、旧友Norman Cookを招聘してリズム面の新機軸を打ち立てようとしたことはあったけど、さすがのFatboy Slimもそのゆるい作風を根底から崩すことはできず、大幅な路線変更は叶わなかった。

 ちょっと話は逸れるけど、ラーメン屋におけるプロとアマの違いとして、「安定した仕事」というのが第一に挙げられる。
 潤沢な予算と時間を使えば、たとえ素人でも美味しいものができる。筋の良い者なら、プロ顔負けのラーメンも作れるかもしれない。なので、アマチュアほど手間暇を惜しまず、ディテールにも凝るので、かなりの確率でそれなりのモノができる。
 問題はその次だ。今日120パーセントのラーメンができた。でも、次の日は80パーセントの出来だった。また次の日は50パーセントかもしれない、でもその次は150パーセントで挽回してやる。
 これじゃダメなのだ。
 プロの条件とは、コスパとかマーケティングとかいろいろ基準はあるけど、ここで最も大事なのは、「商品の安定供給」だ。毎日ラーメンを作る上において、もちろん常に100パーセントが理想だけど、そうそううまく行くものではない。なので、客に出せる最低ラインだけは決めておく。90パーセントなら90パーセント、それ以下のラーメンは出さないようにする。それが商売の基本だ。
 もしかして、たまたま85パーセントのラーメンを客に出してしまうかもしれない。作る側にしては何百杯の中の一つでしかないけど、そのお客がここでラーメンを食べる機会は、一生に一度しかないかもしれないのだ。
 なので、常に同じクオリティの商品を安定して供給するということは、プロとしての最低条件である。

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 プロのポップ職人である彼らもまた、できるだけ生産ロスを出さない考えのもと、常に80パーセントの作品を安定供給してきた。大きな失望もなければ、大きく心を動かす感動も少ない。でも、最大公約数的な考えでいけばOKなのだ。
 常に定番の味のラーメン同様、彼らもプロとして、定番のサウンド、偉大なるワンパターンを継続していったのだろう。


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1. Tonight I Fancy Myself
 ヴォリュームを絞ったバグパイプのとモノローグのSEから始まる、フォーク・ロック調の牧歌的なナンバー。初代女性ヴォーカルBriana Corriganとの楽しげなデュエットだけど、「自動車事故」だの「切断された頭部」など、なかなか不穏なキーワードが仕込まれており、こういった曲をトップに持ってくるのが、彼らの持ち味である。

2. My Book
 シアトリカルなムード漂う、とてもネオ・アコ出身とは思えないサウンドを展開しているのだけれど、タイトル通り短編小説仕立てのナンバーなので、ミステリアスな雰囲気を醸し出している。詳しい訳はちょっとわからないのだけど、google翻訳で見てみたところ、どうも狂人の日記っぽく読める。
 ちなみにこんな気色悪い歌詞なのにシングル・カットされており、一応UK最高43位。そこそこ売れてしまっているのが、彼らの恐ろしいところであり、また英国人の不可解なところ。



3. Let Love Speak Up Itself
 彼らのもう一つの持ち味である、甘くムーディな正統派バラード。ちゃんとサビに向かって盛り上がるメロディなので、こういったものを照れずに、もっと量産していれば、もうちょっと違った展開もあったと思うのだけど、余計なお世話か。
 ちなみにこちらもシングル・カットされているのだけれど、UK最高51位。どう考えたって、2.よりもキャッチーで売れ線だと思うのに、ランクは下だったのは、俺的にはちょっと不可解。そこが英国気質と言われてしまえば、それまでだけど。



4. Should've Kept My Eyes Shut
 ちょっとアバズレっぽく歌い出すBrianaのヴォーカルが映える、ミドル・テンポの、こちらもちょっぴり牧歌的なナンバー。なのに内容は要するに痴話喧嘩。女性が優勢なのか、男性ヴォーカルPaul Heatonの声も心なしか疲れ切ってやつれ切って、精彩を欠いている。そこが狙いなのだけど。

5. I've Come For My Award
 ちょっと憂いを感じさせる、マイナー調のギター・ポップ。バンドのはずなのに、あまりバンドらしさを感じさせない彼らにしては、珍しくバンド・サウンドなナンバーである。バンドバンドってクドイな、ちょっと。
 拝金主義を高らかに歌い上げるその皮肉は、やはり英国人ならでは。そのため、サウンドもハードになっている。

6. Lips
 1分足らずのブリッジ的なナンバー。まぁ歌詞も適当なので、ちょっとあまったマテリアルに手を加えた感じ。メロディは美しいので、ボツにしてしまうのが惜しかったのだろうと思われる。

7. I Think The Answer's Yes
 すごく爽やかなフォーク・ロック調のナンバーで、相変わらずメロディも流麗であるというのに、ストレスに押しつぶされそうなビジネスマンの悲哀を皮肉たっぷりに描くのは、ほんと正確悪そう。その毒素は時事問題から、何故かU2やSimple Mindsにまで飛び火し、最後には、ロープかガス、どっちでくたばろうかと苦悩しながら、終わる。
 なんじゃこれ。でも、こんなのがイギリスのごく平均的な家庭には、必ず1枚はあったのだ。

8. A Little Time
 初のUK1位と共に、EU各地でもそこそこスマッシュ・ヒットした、初期の彼らの代表曲。サウンド的には中庸と言えば中庸、ほんとクセもなく口ずさみやすいのだけど、相変わらず内容は痴話喧嘩。
 男女交互にヴォーカルを分け合うスタイルは、日本で言えばヒロシ&キーボーかバービーボーイズと決まっていた。これが本格的に90年代に突入して、もっとサウンド的に下世話になればglobeになるのだけれど、そこはちょっと早すぎた。



9. Mother's Pride
 アップ・テンポになったせいなのか、演奏パートが気合が入っているっぽい。特にベース、ちょっと目立ちづらいけど、なかなか面白いフレーズを弾いている。このサウンドじゃ目立たないに決まってるのに。
 アルバムも終盤に差し掛かり、こちらも小休止、2分程度の短い曲。

10. I Hate You (But You're Interesting)
 主にギターのストロークをバックにした、彼らにしては重苦しい曲調のナンバー。何故か後半にラグタイム・ピアノが絡んでくるけど、すぐまたフェード・アウト。これもちょっと訳が分からなかったのだけど、中盤の”Me”の連呼と言い、ちょっと壊れちゃった感じに意味不明。

11. The Rising Of Grafton Street
 大団円は爽やかなアップ・テンポのインスト。カーテン・コールのように演奏隊は総出演している。ちなみにGrafton Streetとは、アイルランドはダブリンのメイン・ストリート。英国人なら多分その意図がわかるのだろうけど、俺的には不明。




 本国イギリスではプラチナ認定、30万枚以上のセールスを記録した本作だけど、記録ではニュージーランドで最高46位にチャート・インしたくらいで、ほんとガラパゴス的な売れ方がこの時点で確立してしまっている。なかなか本国以外ではわかりづらい比喩も含まれているので、他国で売るのは難しかったのだろうけど、もともと本人らが近所のパブで週末に演奏できればそれでオッケー的な人たちなので、それもまた仕方ないか。


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北海道の中途半端な田舎に住む、そろそろアラフィフ男。ほぼ週1のペースで音楽ブログ更新中。節操ない聴き方と思われてるけど、自分の中では一貫してるつもり。 最近は蔵書の整理がてら、古い本を再読中。ジョン・アーヴィングから始まって、フィッツジェラルドやゾラ、モームなど、いわゆる古典の復習中。いつになったら終わることやら。新刊読めねぇや。
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