好きなアルバムを自分勝手にダラダラ語る、そんなユルいコンセプトのブログです。

Stevie Wonder 第2章のスタート - Stevie Wonder 『Hotter Than July』

folder 1980年にリリースされた、なんと通算19枚目のオリジナル・アルバム。
 当時Stevieは30歳、デビューが12歳前後だったため、単純に考えれば、ほぼ年1枚のペースでフル・アルバムをリリースしていたという計算になる。早熟の天才に恥じぬ多作ぶり、と言いたいのだけど、案外これも眉唾ものである。
 Stevieがデビューした当時のモータウンは、もっぱらシングル主体のリリース戦略を取っていた。45回転の8インチの塩ビ盤に、どれだけのクリエイティビティを盛り込めるかを、メーカーが競っていた時代である。ユーザーの購買力やラジオでのエアプレイを考慮すると、何よりもシングルをいかに売っていくか、そのためにはどのようなプロモート戦略が必要かを、各スタッフが知恵を絞り技術を向上させていた。

 なので、アルバム制作とはほんとついで、ついでと言ったら言い過ぎかもしれないけど、その姿勢はシングルに向ける労力と比べれば、ほんの僅かでしかなかった。
 そもそも、アルバム用に新たに楽曲を制作する姿勢が薄い。適当なシングルのリリース枚数が溜まったら、B面曲はもちろんのこと、これまた適当なカバー曲やら没テイクやらを一緒くたに詰め込んで、取り敢えずアルバムとしての体裁を整えることが常態化していた。なので、曲順なんかも適当で、全体の流れを考えた構成?何それ?といった感じである。
 これは別にモータウンだけの話ではなく、当時のメーカーならどこでも事情は似たようなものである。なので、モータウンに限らず、60年台中盤までのアルバムリリース事情というのはアバウトだったため、通算アルバム枚数というのはあまり意味を成さない。

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 Stevieに話を戻すと、未公開映画のサウンドトラックという変則的な形態だった前作『Journey Through the Secret Life of Plants』からは1年ぶりなのだけど、そのまた前作である大作 『Songs in the Key of Life』からは、さらに3年のブランクがある。

 70年代に一世を風靡し、セールスだけでなく、グラミーを含む数々の栄冠に輝いた三部作の後、さらに新奇な才能とアイディアに満ち溢れた大作『Key of Life』をリリースしたStevie、その後はまるで憑き物が落ちてしまったかのように、ごくノーマルな作風に変わってしまったことは、よく言われている。

 Robert MargouleffとMalcom Cecilとのコラボによって、当時の最新機器ムーグをとことん使い倒し、未完成作も含めて1000曲にも及ぶ楽曲を制作したのが、Stevieの70年代前半である。この時期はとにかくレコーディングに明け暮れていたらしく、ライブ・パフォーマンスに関しては控えめである。オフィシャルのライブ音源は、まとまった形ではほぼ皆無だし、ブートでもそんなに数は出ていない。それだけ頭の中に溢れ出すアイディアを具現化するだけで精いっぱいだったことが窺える。
 なので、そのプロジェクトが一段落してしまった後のStevieは結構シリアスな虚脱状態に陥ってしまっている。あまりに濃密な時間を短期間で過ごしたため、長いインターバルをおく必要があったのだろう。

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 再び創作活動に復帰するまでには長い年月を要することになってしまったのだけど、そのStevieが鳴りを潜めていた1975年から78年というのは、同じくニュー・ソウル・ムーヴメントを牽引していたアーティストらの栄枯盛衰が如実に表れている。
 Marvin Gayeは自身の離婚騒動にまつわる壮大な独り語り『Here My Dear』をリリース後、行き詰まりの末、なぜかアメフト選手を目指していたし、Curtis Mayfieldも名作『There's No Place Like America Today』リリース後は迷走状態に入り、出来のよくないディスコまがいのアルバムを連発していた。Donny Hathawayに至っては、長年苦しんでいた鬱状態がこじれて、遂には自ら命を絶ってしまう結末となってしまう。

 なので、そう考えるとこの時期、Stevieが表舞台に出なかったのは正解だったのだろう。もしかしてレコーディング自体は続けていたのかもしれないけど、変に時流に合わせたディスコまがいの作品を出して酷評されるよりは、むしろ沈黙を守っていた方が、精神衛生上も良い。

 そう考えると、一応復帰作としてリリースされた『Secret Life』が地味な作品だったのは、その後の流れを考えると、ある意味正解だったんじゃないかと思う。Curtisのように中途半端に世間におもねった作品を作ったら、それまでのキャリアが台無しになってしまうし、かといって『Key of Life』のような作品を作るには、もうあそこまでのテンションに自分を追い込むほどの意欲はなくなってしまっている。いや、意欲はあるのだけど、同じものではダメなのだ。
 あくまでポピュラー音楽のフィールドではなく、学術的要素の濃い、未公開映画のサウンドトラックという体裁をを取ったアルバムを助走としてはさみ込むことによって、Stevieはディスコ・ブームに沸いた70年代後半を乗り切ることができた。ちょっとめんどくさい経緯だけど、そうせざるを得なかったのだ。

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 そんなこんなを経て、本格的な復帰作となったこのアルバム、『Secret Life』の次という順序を踏まえれば、決して悪いアルバムではないけど、俺のように後追いでStevieを聴く者にとっては、どうしても型落ち感は否めない。何しろ 3部作や『Key of Life』からランダムに手をつけているので、比較してしまうのは致し方ない。あそこまでの先鋭性がなくなってるのは事実。事実なのだけど、俺的にはそれほど嫌いになれないアルバムでもある。

 全体的な印象として、ロック・サウンドのフォーマットを使用した曲が多い。ギターの音色やリズム・パターンは従来のコンテンポラリーなロックそのものだし、バラード系もそれほど凝ったサウンドではなく、シンプルなバッキングでヴォーカルを聞かせるサウンドになっている。いま現在、「Stevie Wonder」というアーティストの一般的なイメージの元となった、オーソドックスなMOR的な展開になっている。

 それまでのサウンドはかなり作り込んだものが多く、聴いていると新しい発見が多く革新性もあったのだけど、実のところ聴き続けていると疲れてしまうのも事実である。『Key of Life』なんて通常の2枚組プラスアルファの大盤振る舞いのボリュームで、才能とアイディアの濃縮エキスが詰まっているのだけれど、Stevieのエゴが強く出過ぎていたり、曲によっては冗長に感じる部分もある。
 これもよく言われているのだけど、ダブル・アルバムにこだわらず、1枚に収まるように絞り込んでゆけば、そりゃもうとんでもない傑作になったんじゃないかと思われる。

 なので、このアルバムはもっとユーザー目線で、長いスパンで聴き続けられる配慮なのか、サウンド的にはオーソドックスに、分量も程よく仕上げられている。 ただ汎用のポップ・サウンドを使用したとしても、そこはやはりStevie、他のアーティストでは作り得ないメロディ・ライン、特に白玉主体の旋律は相変わらずである。ベースがしっかりしてるから聴けるけど、こんな曲、普通は作れない。


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1. Did I Hear You Say You Love Me
 Stevie流に解釈したディスコ・サウンド。単純な四つ打ちじゃなくて、ちゃんと考えられた構成になっている。こういったニュー・ウェイヴを通過したギターの音色は、休養前はなかった。新境地も開拓している、アルバム・リードとしては最適。
 邦題は「愛と嘘」。なんで?3枚目のシングルとして、ビルボード・ソウル・チャート最高74位。



2. All I Do
 1.から切れ目なしに続く、Paul McCartneyとやった”Say Say Say”と同じイントロのミドル・テンポ・ナンバー。コーラスにMichael Jacksonが参加しているのだけど、あまりキャラは濃くない。

3. Rocket Love
 これまであまり取り上げてなかった、メロディ主体のシンプルなバラード。3部作の中ではちょっと甘めの『First Finale』に入ってても違和感がなさそう。後半のストリングス導入部あたりから、ちょっとコード進行が不安定になるのだけど、そこをきちんと曲として成立させているのが、やはりStevieの力技。俺的にはこれ、結構好きなのだけど。

4. I Ain't Gonna Stand For It
 Eric Claptonがカバーしてから再評価が進んだ曲だけど、まぁそのまんま。Claptonって、多分オリジナルへのリスペクトが強いのか、この曲に限らず、ストレートなカバーが多い。
 ドラムの音処理が80年代っぽく軽いのと、もっとリズムを強調してファンキーなシンセの音色にすれば、俺的にはもっと満足なのだけど、時代的にこのくらいマイルドにしてやらないと、他のヒット曲から浮きまくっちゃったのかもしれない。それほど、Stevieというのは異質な存在なのだ。
 セカンド・シングルとして、US最高4位、UKでも10位まで上昇。



5. As If You Read My Mind
 サンバのリズムを応用した、俺的にはこのアルバムの中では一番好き。『Innnervisions』のモダン進化系といった感じのサウンドは、もっと評価されてもいいはず。重くないリズムながらもファンキーで、しかもクールさを忘れないヴォーカルのStevie。時々興が乗ってシャウトする様がカッコいい。

6. Master Blaster (Jammin')
 ファースト・シングルとして、US最高5位UK2位。言わずと知れた、Stevieが本格的にレゲエに取り組んだナンバー。これまでのような「レゲエ・テイストを取り込んだ」のではなく、「まんまレゲエ」。
 はっきり言ってBob Marleyそのまんまなのだけど、StevieがMarleyを敢えて模倣したのか、それともレゲエというリズム/ビートというのが、Stevieをしてもねじ伏せることのできない、それほど強烈な音楽なのか-。
 アルバム・ジャケットを象徴するような、ホットなナンバー。しかし、その汗は氷のように冷たい。

7. Do Like You
 ゴーゴーのリズムも取り込んだ、80年代以降のStevieのプロトタイプ的なナンバー。ノリが良くってちょっぴりファンキーなシャウトで、という「一般的に想像されるStevie Wonder」がここにいる。ポップな曲調なので、軽快なドラム・パターンもちょうどフィットしている。でもStevie、全体的に言えるけど、アタック音が強いよね。そこが味なのだけど。

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8. Cash In Your Face
 ちょっぴりレゲエ・ビートで、ゆったりしたリズムのミディアム・ナンバー。あまりコード感のないナンバーで、こういったのはStevieの独壇場。
 この人の凄いところは、「ただ漫然とプレイしながら、きちんと曲として成立させてしまう」点なのだけど、そこら辺はあまり取り上げられていない。逆に言えば、この曲を他の人がカバーしても、きっとうまく行かないはず。だって、通常ルーティンからは大きく外れているのだから。

9. Lately
 で、このアルバムのハイライトで、王道バラード。7.がStevieの「動」とすれば、この曲が「静」を表す、誰もが文句のつけようのないナンバー。US最高4位UK最高3位は妥当。



10. Happy Birthday
 ある意味、『Hotter Than July』は9.で完結しており、俺的にはこれ、ボーナス・トラック的扱い。Stevieということは意識してなくても、TVのサウンド・クリップとしても頻繁に使用されているため、「ポップなStevie」といえば、これを連想する人も多い。
 もともとはMartin Luther Kingに捧げた曲で、彼の誕生日を国民の祝日にする運動を後押しするために作られた曲なのだけど、そういった背景を抜きにして、優秀なポップ・ソングとして仕上げている。
 サウンドといいメロディといい、しかもきちんと織り込まれたメッセージ。啓蒙という意味でいえば、完璧なポップ・ソング。




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邦題は『灼熱の狂宴』。熱い。 - Earth Wind & Fire 『Gratitude』

folder 一般的にEW&Fのイメージと言えば、”September”や”宇宙のファンタジー”、ちょっと踏み込んでも”Boogie Wonderland”などのディスコ・クラシック系が有名で、それ以前はどんなサウンドだったのかは、あまり知られていない。実のところ、俺も長らくそのイメージが強く、ヒット曲以外のナンバーはほとんど関心がなかったのが事実。あくまで俺の先入観だけど、「大人数のアフロたちが大げさなコスプレで、ステップを踏みながら愛と自由を歌ってる集団」というのは、それほど間違ってないんじゃないかと思う。
 こうした先入観とは裏腹に、海外のレア・グルーヴ界隈でEW&Fの人気は高く、特にディスコ・サウンドへの転身によって、(当時としては)時代のトレンドとなる以前、まだ70年代ジャズ・ファンクの香りが強い頃の泥臭いサウンドに、圧倒的な人気がある。

 俺がEW&Fを知ったのはまだ小学生の頃、音より先に、まずビジュアル面での出会いだった。5歳上の従兄弟の部屋へ遊びに行くと、大量にあった週刊少年チャンピオンやジャンプの単行本を読み耽るのが楽しみだった。当時の従兄弟は高校中退してガソリン・スタンドでバイトをしており、自分で使える金に余裕があったのだ。次第にマンガよりレコードの量が多くなってくるのは、まぁ年頃ならではの変化である。で、その中にあったのがEW&Fの『Faces』のLPだった。
 見てもらえばわかるように、なかなかインパクトの強いジャケットである。いまどき宗教法人のパンフレットだって、ここまで胡散臭くはない。そんな妖しげなデザインは、まだ歌謡曲程度しか興味のなかった小学生にとっては、得体の知れない抵抗感のほうが強かった。勝手に聴くと従兄弟に怒られそうだったので、結局聴かずじまいで終わってしまった。
 ちなみにその従兄弟、当時はEW&Fのメンバー同様、アフロでキメていた。なので、なんだか別世界の人になっちゃった感が強く、そうした経緯もあって、ディスコ以降のEW&Fには未だ馴染めずにいる。

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 で、そんな俺がきちんとEW&Fを聴くようになったのは、前述したようにレア・グルーヴ経由、海外のミックス・テープに紛れ込んでいた”Sun Goddess”がきっかけだった。俺が最初に聴いたのは、Ramsey Lewisのヴァージョンである。もともとはスタンダードなジャズ・ピアニストだったのが、60年代からジャズ・ファンク的サウンドに感化されて、一時期サイケな作品を量産していたのだけど、そんな中で俺の気を引いたのが、この曲である。
 この『Gratitude』にも同曲が収録されており、最初はそのRamseyのカバーだと思っていたのだけど、クレジットを見ると、作曲がMaurice White、EW&Fのリーダーその人である。何だかサウンドがそっくりで、雑なカバーだなぁと思ってたら、何のことはない、大元は同じだったわけだから、無理もない。

 ちなみにこのアルバム、LPでは2枚組なのだけど、ちょっと変則的な構成になっており、レコードでいうABC面が各地のライブ・ダイジェスト、D面がスタジオ・テイクとなっている。前作の『That's the Way of the World』(邦題『暗黒への挑戦』)がビルボード1位を獲得したため、CBSとしてはここで畳み掛けるようにひと勝負打ちたい、との思惑と、バンド側のマテリアル不足とを解消する折衷案だったと思われる。CDだとまるまる1枚に収められているため、その制作意図がわかりづらくなっているのは、まぁ致し方ないとしても、そこら辺を意識して聴いてみると、ライブとスタジオ・テイクとの質感の違いが如実に表れている。
ライブ・テイクは”Sun Goddess”などのジャジー・テイストの入ったファンク・チューンを柱として、各セクションのソロ・プレイをフィーチャーした長尺の曲が多いのだけれど、スタジオ・テイクでは、エアプレイに向いた3分程度のコンパクトなナンバーが並んでいる。
 ある意味、ここがEW&Fのターニング・ポイントと言える。これまでの総集編的なジャズ・ファンク仕様のライブ・テイクと、今後の方向性を提示したソリッドなダンス・チューンとの分岐点。

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 EW&Fだけに当てはまるわけではないのだけど、当時の彼らのように、スタジオよりむしろステージで威力を発揮するタイプのサウンドは、昔からアメリカではウケが良い。延々と続くギター・カッティングや、入れ替わり立ち替わりで吹きまくるホーン・セクション、ヴォーカル・パートはほんのちょっぴりなのに、ジャム・セッションの演奏が1時間以上続くことも珍しくない。

 アメリカ国内だけで細々やってくのなら、それはそれで良いのだけれど、もっと広いフィールドで活動してゆくのなら、また違う戦略が必要となってくる。なにしろ広い国土なので、隅々までツアーで回るには、途方もない年月が必要だし、どうにも効率が悪い。特にEW&Fのような大所帯バンドだと、移動するだけでも膨大な経費がかかるし、その他もろもろの維持費もバカにならない。

 なので、アメリカでブレイクするためには、ラジオのエアプレイが大きなカギになる。DJらに積極的に後押ししてもらえるよう、3分前後のオンエアしやすいサイズの曲が必要になる。そうすると、従来のような冗長なインプロビゼーション、壮大なスケールの組曲などは、逆に障害になる。

 そういった事情もあって、彼らの曲は次第にコンパクトかつソリッドになってゆく。冗長なフレーズはタイトになり、サビもキャッチーでわかりやすくなった。もともとバンドのポテンシャルは相当なレベルだったので、起承転結を3分にまとめることは、ちょっとその気になれば難しいものではなかった。
 その成果が、総合チャートでも1位を獲得した”Shining Star”だったという経緯。

 この後は、一斉を風靡した長岡秀星のジャケット・アートが象徴するように、ステージ衣装も大げさにスペイシーになり、ビジュアルだけで見ると、二流のディスコバンドと大差ない。ただしこの『Gratitude』までは、その商業ポップ性とミュージシャンとしてのプライドがいい感じで拮抗して、絶妙なバランスで仕上がっている。
 ディスコ以外のEW&Fはまだいろいろあるので、ここを入り口として聴いてみると、かなりの割合で先入観が払底されるんじゃないかと思う。


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1. Introduction - Africano/Power
 当時のレイテスト・アルバム『That's the Way of the World』収録曲と、1972年リリース3枚目のアルバム『Last Days and Time』収録曲をつなげた、壮大なインスト・メドレー。ホーンが4人も自前のバンドでいると、やっぱり音の厚みはすごい。ソウル・ショウでよくあるように、まずはオーディエンスをホットに盛り上げるため、リズム・セクションを含めてのグルーヴ感は最強。
 “Africano”はシングルとして、ディスコ・チャートで1位になった、とのこと。専門チャートとはいえ、インストでトップに立ったというのは、やはりこの当時のバンドのパワーと勢いが窺える。

2. Yearnin' Learnin
 で、ここからヴォーカル陣が登場。引き続き、こちらも『That's the Way of the World』から。Philip Baileyリードによる、ややディスコよりのナンバー。それでもバックのパワーが強いので、軽さはない。この頃のPhilipはまだそれほどファルセットを多用していないので、悪く言えば普通のバンドだけど、この路線もカッコ良かったんじゃないかと思える。
 オリジナルはテンポがゆったりしてタメがあるグルーヴなのだけど、俺的にはこっちのライブ・ヴァージョンのほうが好み。

3. Devotion
 5枚目のアルバム『Open Our Eyes』に収録。シングル・カットもされており、ビルボード総合33位、ブラック・チャート23位まで上昇。ヒットしたことも納得できる、メロウなコーラスとPhilipのファルセットが印象的。夕暮れ時の野外ライブで聴いたら、そりゃもう大変なことになりそう。
 オリジナルはひたすらメロウなのだけど、ここではリズムが前面に立っており、やっぱり俺的にはライブ・ヴァージョンのほうが好き。



4. Sun Goddess
 俺がEarthに惹かれたきっかけとなったナンバー。Al McKayの気持ち良いギター・カッティングが延々と続き、そこからじゃジー・テイストな分厚いコーラス。Don Myrickによるアルト・サックス・ソロ。どの瞬間を切り取っても、これぞEarth!!といったプレイが聴ける。
 ライブ・アルバムとしては珍しくシングル・カットされており、ビルボード総合44位、ブラック・チャート総合20位というのは、ほとんどインスト・ナンバーという条件としては、かなり健闘したんじゃないかと思う。
 曲自体のパワーももちろんだけど、7分という長尺にもかかわらず、ほとんど長さダルさを感じさせないのは、やはり作曲したMaurice Whiteの構成力の賜物。



5. Reasons
 またまた『That's the Way of the World』より。ほとんどPhilipによるソロで、ライブの流れ的にはクール・ダウン的なメロウ・ナンバー。シングル・カットはされていないのだけど、なぜか俺も知ってたくらい有名な曲で、調べてみると数々のベストに収録されており、もともと人気の高い曲である。
 ここでPhilipはほぼファルセットで通しているのだけど、時々Princeっぽく聴こえてしまうのは、多分この辺をモチーフとしているのだろう。

6. Sing A Message To You
 Mauriceによる、まぁタイトルをひたすらコーラスで連呼しているナンバー。ここではブリッジ的な扱いだけど、フェード・インで入ってるということは、実際にはもっと長く、観客への煽りとして使われてたんじゃないかと思う。
 コーラスもヴォーカルも、そして演奏もダントツで、この時期のEarthにはほんと隙がない。ライブではほんと最強だったんじゃないかと思えるけど、この熱気をうまくスタジオ・テイクで発揮することができなかった。そこがバンドとしての課題であり、なので重心をヴォーカル・パートに移したディスコ・サウンドへの傾倒は、流れ的にやむを得なかったんじゃないかと思われる。

7. Shining Star
 『That's the Way of the World』収録、言わずと知れたEarthにとって総合シングル・チャート初の首位を獲得した、現在においてもキラー・チューンのポジションを守り続けているファンク・ナンバー。ほぼスタジオ・テイクと変わらないアレンジでプレイしているのは、やはりそれだけ自信作であった証拠。
 スタジオ・テイクを聴いて驚くのは、実は3分にも満たないこと。これだけのグルーヴ感、キャッチーなメロディを濃縮して詰め込んでいる。完璧な曲。



8. New World Symphony
 かなりジャズ・ファンク・テイストの濃いインスト・ナンバー。多分Mauriceがこういうのが好きだったんだろうけど、このラインナップの中では恐ろしく地味。いや、嫌いじゃないんだけどね。
でも、バンドとしての方向性が次第にプレイヤビリティと商業性との間で揺れ動く過渡期の中で、ヴォーカル&インストゥルメンタル・バンドとしてのアイデンティティを確立させたかったというのか…。

9. Sunshine
 LPのC面ラストという、非常に中途半端な位置だけど、ここからが新緑スタジオ・テイク。タイトル通り、さわやかなミディアム・ナンバー。やはりPhilipがほぼメインで効果的なファルセットを多用している。

10. Sing A Song
 思いっきりディスコ・ナンバーなのに、そこまでチャラく聴こえないのは、やはり作曲にAl McKayが絡んでいるから。ビルボード総合5位、ブラック・チャート1位は妥当。



11. Gratitude
 俺的に想像してしまったのが、「さわやかなParliament」。グルーヴの強い演奏でタメもあるのだけど、ポップ性が強いのと、P-Funk勢ほどゴチャゴチャしていないところが、俺的には好み。

12. Celebrate
 わずか3分足らずのナンバーなのに、曲調がコロコロ変わる、奇跡のような曲。ジャズとファンクとの融合、転調の嵐など、構成としては”Shining Star”に似てる。

13. Can't Hide Love
 出だしはディープなファンクかと思ったら、ゴージャスなホーン・セクションのリードによる、ちょっと不思議なテイストのスロー・ナンバー。この曲だけ外注となっており、作者Skip Scarboroughは、LTDやDeniece Williams、Anita Bakerにも書いてる人。ラインナップを見ればわかるように、ジャジー・テイストのミディアム~スロー・ナンバーを得意としている。
 シングルとして、ビルボード総合39位、ブラック・チャート11位とは、なかなかの成績で、俺的にはこういったナンバーは好きだけど、よくヒットしたもんだよなぁと思ってしまう。当時のディスコ・サウンドへ傾倒しつつあったEarthの流れとはちょっと違う気もするのだけど、やはりここは勢いなのだろう。




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ホントは今でもゴリゴリのジャズ・ファンク - Bamboos 『Step It Up』

folder 2006年リリース、オーストラリアではバツグンの知名度を誇るジャズ・ファンク・バンドBamboosの記念すべきデビュー・アルバム。結成が2001年ということで、アルバム・デビューは遅かったけれど、基本シングル中心の活動というのは、現代ジャズ・ファンク・バンドにとってはよくある話。
 彼らが一気に話題になったのは、2003年2枚目のシングル”Tighten Up”から。日本ではYMOが『増殖』でカバーしてから話題になり、近年もビールのCMで起用されるなど、忘れられる前に誰かが取り上げることによって、息の長いヒットになっている。そんなヴィンテージなファンク・インストを、ほんと何の衒いもない直球ストレートなアレンジで彼らがカバーすることによって、一躍クラブ・シーンに躍り出たBamboos、そんな前評判もあっての、満を持してのデビュー・アルバムとなったのが、本作。

 順調かつ地道にキャリアを積んできたことによって、本国オーストラリアではポピュラー・シーンにおいて、それなりのポジションでは収まっているらしい。いわゆる一般的な大ヒットまではいかないけど、現時点での最新アルバム『Fever in the Road』が、国内アルバム・チャートでトップ20に入る程度の固定ファンは掴んでいる。
 20位がやっとなのか、という見方もあるかもしれないけど、ライブ中心で活動している彼らのようなジャンルでありながら、ここまでのチャート・アクションというのは、世界的に見ても立派なものである。それほど枚数が捌けるジャンルではないのだ。ここまで国内メジャーのポジションを獲得したバンドは、俺が知る限りでは日本のスカパラくらいのものである。

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 ちなみにここ数枚の彼らのサウンドの傾向だけど、あくまでアルバム単位に絞って言うと、得意のジャズ・ファンク・テイストはあまり前面に出さず、もっと一般リスナーに開かれたコンテンポラリーなサウンドを展開している。デビュー当時からずっとオーストラリア国内のレーベルTru Thoughtsに所属していたのだけど、最新作からは配給元が変わり、同じくオーストラリアのInertiaというレーベルに移籍している。
 オーストラリアのエンタメ・シーンがどうなってるのか、正直俺の認識では、AC/DCとINXSとOlivia Newton-Johnで止まっちゃってるので、詳しいところはわからないのだけど、オフィシャル・サイトを見る限りでは、オルタナ・ロックからダンス・ポップまで扱う総合レーベルのようである。多分、販売力もしっかりしてそうなので、半インディー的なスタンスであるTru Thoughtsでは賄いきれなくなった部分もあるのだろう。

 そういった事情もあって、近年は多彩なゲストを入れたポップ寄りのサウンドに変化してきたわけで、今やアルバムだけで考えると、まったく別のバンドになっちゃってるのが現状。セールス的には上向きになっているので、バンド運営的には正しい戦略だったと言わざるを得ない。得ないのだけど。
 ただし、完全にメジャーに魂を売ってしまったわけではないようで、近年のライブ映像では、相変わらずのジャズ・ファンク振り、オールド・スタイルのソウル・ショウを展開している。プレイヤー・サイドから見れば、パッケージとライブとでコンセプトを変えることによって、うまい具合にガス抜きしてるんじゃないかと思う。ほんとのBamboosを見たければ、ライブに来なよ、とでも言ってるかのように。
 でも、あんまり日本に来てくれないじゃん。
 
bamboos

 その『Fever in the Road』から急激に売れ線に走ったというわけではなく、緩やかな変化はもう少し前、5枚目の『Medicine Man』あたりからヴォーカル・ナンバーが増えている。しかも、それまではほぼ出ずっぱりでヴォーカルを取っていたAlice RusselやKylie Auldistが次第にソロ活動を重視してきて、参加するのが少なくなってきたことに合わせて、次第に複数のゲスト・ヴォーカルを迎えることが多くなってきている。
 そのような戦略によるため、アルバムだけで見ると、だんだん普通のバンド化しているのが現状である。グローバル戦略としては正しいのだろうけど、古くからのファンからすれば、その変節に複雑な思いを抱くことも多いのかもしれない。俺はその『Medicine Man』から彼らの存在を知って、そこから遡って聴いてきたクチなので、そこまで強く初期サウンドに固執しているわけではない。しかし、ジャズ・ファンク・バンドを漁ってきた身からすれば、次第に洗練されつつある近年の作品は、以前ほど聴く機会が少なくなっているのが事実。

 どのジャズ・ファンク・バンドもそうだけど、サウンドの性質上、どうしても大所帯になってしまい、バンドの維持にはどこも苦労している。他アーティストのサポートやホーン・セクションの外部委託に頼らず、バンド単体で自立してゆくためには、こういったスタイルで生き残ってゆくのもひとつの生き方ではある。

 初期のBamboosは、そういったポピュラリティーをあまり考慮しないところで音作りしているので、現代ジャズ・ファンクが好きな人なら、まずハズレはない。JBやMetersなど、シンプルに自分たちの趣味、自分たちが影響を受けてきたモノにこだわり、出したい音をそのままストレートに出しているスタイルなので、何も考えずにノルことができる。


Step It Up
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1. Step It Up
 どストレートなファンク・ナンバー。歌うは歌姫Alice Russel。彼女の声はソウルフルではあるけれどそれほど泥臭くなく、同じく洗練されたバンド・サウンドにはうまく馴染んでいる。この後のAliceはソロ活動も盛んとなって、近年ではQuanticとコラボすることが多くなって、ちょっとソウル方面とはご無沙汰になってしまうのだけど、ここではパワー全開のソウル・チューンを難なく歌いこなしている。ライブを見てもらえればわかるように、ほんとずっと聴いてたくなるようなナンバー。たった3分で終わってしまうのは惜しい。



2. Tighten Up/Album Version
 オリジナルは言わずと知れたArchie Bell & The Drellsによる1968年のヒット・ナンバー。基本オリジナルに忠実なカバーなのだけど、リズムはこちらの方が立っている。オリジナルはスッカスカのリズムと間の抜けたホーンとのアンサンブルが絶妙だったのだけど、ここでは敢えてコントラストを強調している。ギターのカッティングもソリッドになっている。



3. In The Bamboo Grove
 タイトルはもちろんJBの”In the Jungle Groove”からインスパイアされたもの。立ち上がりはネチッこいスロウ・ファンクだけど、終盤に向かうにつれテンポ・アップして、ラストはうまくまとめている。

4. Golden Rough
 ほんとJB'sが好きなんだな、と感心してしまうナンバー。リズムのボトムが思いっきり腰より下で響き、ホーン・セクションとのコンビネーションも絶妙。この辺はリーダーLance Ferguson(G)のセンスによるものだと思う。

5. Black Foot
前2曲からテンポ・アップし、今度はBen Graysonによるハモンドが主役のナンバー。シンプルなミニマル・リズムに的確にフレーズを叩きこむBenのプレイは、地味だけど数多の黒人ファンク・バンドを凌駕するテクニックを発揮している。こちらも恐ろしくコンパクトに、3分ちょっとにまとめている。フェード・アウトしてしまうのが惜しい。

6. Transcend Me
 人力ブロークン・ビーツに乗せて、再びAlice登場。この辺は古き良きジャズ・ファンクだけでなく、Bamboos独自のモダン・ファンク・サウンドを感じさせる。ただ往年のサウンドの再現だけじゃダメなのだ。こういった曲も、バンドを前進させてゆくためには必要である。俺はシンプルなジャズ・ファンクが好きだけどね。

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7. Tobago Strut
ホーン・セクションが出ずっぱりで活躍するナンバー。ちなみにこの時点でのホーン担当はAnton Delecca(Tenor S), Ross Irwin(Tr)のたった2名。フルートなどブラス系全般をまかなっていたわけだけど、とても2人でやっているとは思えないほどの音の厚みを実感してほしい。

8. Another Day In The Life Of Mr. Jones
 ちょっとセカンド・ラインも入ったオールド・タイプのファンク・チューン。Lanceという人はリーダーでありながら、あまり前に出ない人だけど、ここでもひたすらバッキングに徹し、クレバーなリフや細かなオブリガードを刻んでいる。

9. Crooked Cop
 再びスロウ・ファンク。ファンクと言えば高速カッティングと16ビートの切迫したリズムが持ち味だと先入観を持ってる人にこそ、ぜひ一度聴いてほしいナンバー。これだけリズムのタメがありながら、ファンキーさを出せるバンドは、なかなかいないはず。



10. Eel Oil
 直訳すれば「ウナギ油」。もちろんインストのため、どの辺がウナギなのかは不明。脂っこさはそこそこあるけど、うまくソフィスティケートされているため、クドさは感じない。
 スネア中心の音作り、そして珍しくソロを聴かせるLanceもまた、ここが見せ場と張り切っている。とにかくスネアの音が乾いて軽くて気持ちよく、シングルとしてリリースされたのも頷ける。

11. Voodoo Doll/Album Version
 これまでとはちょっと毛色の違った、どこかセッション的な雰囲気を感じさせるナンバー。比較的カッチリした構成の演奏を見せるBamboosだけど、ここではリラックスして、やや緩めのアンサンブルを見せている。ギターのセカンド・ライン・テイスト、ハイハットの響きがとても印象的。




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北海道の中途半端な田舎に住む、そろそろアラフィフ男。ほぼ週1のペースで音楽ブログ更新中。節操ない聴き方と思われてるけど、自分の中では一貫してるつもり。 最近は蔵書の整理がてら、古い本を再読中。ジョン・アーヴィングから始まって、フィッツジェラルドやゾラ、モームなど、いわゆる古典の復習中。いつになったら終わることやら。新刊読めねぇや。
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