好きなアルバムを自分勝手にダラダラ語る、そんなユルいコンセプトのブログです。

#Pop

トッドの音楽療法 - Todd Rundgren 『Healing』

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 1981年リリース9枚目、前作『Hermit of Mink Hollow』から3年振りのオリジナル・アルバム。この頃のトッドにしてはブランクが空いてるよなぁ、と思ってしまいがちだけど、この間にユートピアとして2枚、ライブを1枚リリースしているので、いやいや相変わらずのワーカホリック振りである。ほぼ同時期、日本では大滝詠一が同様のリリース・ペースで活動していたけど、こちらは途中で息切れ。まぁ勝ち負けの問題じゃないけど。
 トッドの場合、市場のニーズに応えての多作ではなく、誰も頼んでないのにレコーディングしまくっていただけなので、このアルバムもビルボード最高48位と、何とも微妙な成績。「Can We Still Be Friends」のようなキラー・チューンもなかったため、ヒットの基準のひとつであるトップ40入りは逃してしまう。
 とはいえ、もともとトップ40入りすること自体が珍しいので、本人的にはそこまで気にはしていなかったと思われる。正直、周囲もその辺は諦めていただろうし。
 別にこの時期に限ったことではなく、キャリアを通して大きなヒットを飛ばしたことはないけど、一部の熱狂的マニアや業界人にはウケが良いため、存在がフェードアウトすることはないのが、この人の特質である。何かと使い勝手が良いのか、リンゴ・スターのオールスター・バンドでワールド・ツアーを回ったり、ほとんど関連性のないカーズ再結成に参加したり、まぁフットワークの軽いこと。あ、カーズは黒歴史だったな。

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 叙情的なメロディメーカーしての一面が強く浮き出た『Hermit of Mink Hollow』製作後、その反動からかトッド、ライブ活動に力を入れるようになる。地味で悶々とした宅録レコーディング作業は、精神衛生上、長く続けるものではない。
 べアズヴィルのハウス・エンジニアもプロデュース・ワークも最小限に抑え、引きこもり生活からの脱却を図ったトッド、ライブ・シーン本格参戦のため、ユートピアの改革に手をつける。
 表向きには「プログレッシブ・ロックによる壮大な音世界の構築」というお題目を掲げながら、実は「単にステージでギターを弾きまくりたいだけ」という動機で結成されたユートピアは、オリジナル2枚目の『太陽神RA』がUS79位UK27位と、この時点でもそこそこの支持を得ていた。ジャンルとしてのプログレはすでに行き詰まっていたけど、ハードロック要素が強く、ライブ映えするアメリカン・プログレには、まだ需要があったのだ。
 当時のプログレ・セオリーに則って、主旋律より各パートのインプロビゼーションの方が長いため、どの曲も最低10分以上だった。―何となく神秘っぽく、何となくミステリアス。「大風呂敷ではあるけれど、その実、大したことは何も言ってない」コンセプト至上主義は、大ざっぱなアメリカ人には受け入れられやすいものだった。そこにキラキラしたシンセ・フレーズや、手クセ満載の速弾きギター・ソロを付け加えれば、レコード売り上げはともかくライブではウケた。

 なので、初期ユートピアが決して悪かったわけではないのだけど、活動のメインをバンドに据えることにしたトッドの意向もあって、大掛かりな方向転換が行なわれる。当時のトッドの構想としては、「ユートピアで商業的な成功を収めることで経済的な基盤を固め、バンド活動の合間に趣味的なソロを作る」というのがあったらしい。この時点では、わずかにソロの方が上だったけど、まぁどっちもどっち。戦略としては、間違ってないんだよな。
 ライブ・バンドとしてはそこそこ定評があったけど、セールス的にはあと一歩だったユートピアのテコ入れとして、従来のアメリカン・ハード・プログレ路線から、ハード・ギター・ポップ路線に転換する。字面だけではちょっとわかりづらいけど、要するに、曲の尺が短くなった。
 アルバム片面をまるまる費やす冗長な一大組曲は一掃され、ラジオでオンエアされやすい4分程度にダウン・サイジングされた。何となく高尚で斜に構えたコンセプトも取っ払われ、歌詞のテーマはごく普通のロック・バンドと変わらなくなった。
 トッド的には、同じ音楽性だったスティックスやジャーニーが宗旨替えしてブレイクしたのだから、そこに追随したのだろうけど、ユートピアは思惑ほど売れなかった。両バンドにならって、キャッチーな音楽性を志向するのは間違ってはいなかったけど、もうひとつ肝心なところを忘れていた。
 トミー・ショウやスティーブ・ペリーなど、ビジュアル映えするフロントマンの存在が、ユートピアには欠けていた。トッドも決して見栄えが悪い方ではないのだけど、トミーのような美少年要素も、またスティーブのようなハイトーン・ヴォイスもなかったのは致命的だった。
 もしかして、最初から気づいてたのかも、と思う反面、トッドの性格を考えれば「ガチでイケる」と思っていた節もある。だってこの人、自意識強そうだもの。

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 せっかく路線変更したにもかかわらず、プログレ時代とそんなに変わらぬチャート・アクションが続いたため、打開策としてユートピアはライブ本数を増やしてゆく。
 当たればデカいアメリカン・ドリームだけど、そこに至るまでは相当の努力を要する。ただレコードを出しだけではダメで、世に広く知らしめる手段を取らなければならない。そのためには、ラジオでパワー・プレイされなければならないし、全米くまなく地道にライブで回らなければならない。
 いわゆるプロモーション・ツアー、言ってしまえばドサ回りだけど、そんなにすぐ効果があらわれるものではない。演歌のドブ板営業よろしく、粗末な設備の会場だってあるし、常に満員御礼というわけでもない。
 べアズヴィルに手厚いサポートを期待できるわけもなし、当時のライブ収支はどんぶり勘定。先の展望が見えず、肉体的にも精神的にも疲弊してゆくメンバー。そしてトッド―。
 約2年、バンド活動に専念したトッドが出した結論が、「…俺ってやっぱ、ソロ体質だよな」という自覚だった。ソロとバンド、並行してやるからストレスも分散するのであって、どっちかに偏ってしまうと、たちまちストレスが集中してしまう。
 考えてみれば当たり前の結果だけど、こういうのってやってみないとわからない。

 で、『Healing』。
 当時の邦題『トッドの音楽療法』が象徴するように、疲弊した自身への癒しとも言える、穏やかなサウンドで構成されている。激しいディストーション・ギターや強烈なバスドラを排し、シンセとリズム・マシンを用いて、ほぼ独りでレコーディングされている。
 長年練り上げたものではなく、衝動的にスタジオに飛び込んで、一気呵成に組み立てられたそのサウンドは、プライベートな色彩に満ちている。生来のポップ気質が滲み出ているため、息が詰まるほど厭世的ではないけど、発表を前提としない個人的な音で満たされている。
 「聴きたかったら聴けば。サービスはないけど」。自己陶酔と憐憫の強いその空間は、他者に開かれたサウンドを追求していた当時のユートピアとは、一線を画している。
 ヒット性やライブ・パフォーマンスを考えず、最もヴォーカル映えするキーで作ったサウンドをバックに、悦に入って歌うトッド。言ってしまえば自作カラオケ、またはニコ動の歌い手的な、自己満足優先の楽曲が並んでいる。

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 でも、考えてみればトッド、人のプロデュースは別として、自己満足を優先しない作品を作ったことは、後にも先にもないのだった。商業的な成功よりはむしろ、とにかく自分で「あ、コレやりたい」というシンプルな動機、初期衝動だけで「やってみた」作品群が、のちのち再評価で盛り上がったわけで。
 ドラムを叩けばリズムが揺れたりヨレたり、ヴォーカル・ピッチがズレても問題なし。練習してうまくプレイするより、いまやりたいことを優先する。録音もミックスも、細かいことにはこだわらない。まずは、やってみる。失敗も振り返らず、常に新しいことにチャレンジする。そんなロック少年的なシンプルな衝動が、狭いけどコアな層にヒットして、熱狂的な固定ファンを今も生み出し続けている。
 なので、何度も聴くには痛い『Healing』だけど、これもトッドのサウンド一大絵巻のひとつなのだ。ワーナー以降は正直、当たりハズレも多いトッドだけど、べアズヴィル時代のアルバムは、どれもはずすことができない。


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1. Healer
 ケルト民謡のようなオープニングでちょっとビックリするけど、そこから先はいつものトッドのメロディ。山下達郎も顔負けの多重コーラスは入るわ品評会のような多彩なシンセの音色、案外ツボにハマるリズム・パターンといい、お腹いっぱい。ていうか詰め込み過ぎだよな、ビギナーが聴くと。でも、これが過剰こそ至高であるトッドなのだ。

2. Pulse
 タイトルが象徴するように、新たな波動を様々な音色のシンセで表現している。中盤からのリズミカルなマリンバっぽいリズム・パートは、ガチのプログレ。セオリーならここから10分以上続くところを、ここでは3分に圧縮。これ以上は沼にハマってしまう。

3. Flesh
 かなりエモーショナルなヴォーカルを支える、荘厳なシンセの響き。これこそまさしく独りカラオケ状態。他人からすれば癒しには聴こえないけど、作る本人としては、カタルシスを得ることで充分満たされたことが窺える。音圧が高いのといろいろ詰め込んだおかげで、ナチュラルにコンプがかかっている。ここまでやって、トッドの通常パターン。

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4. Golden Goose
 『Runt』のアウトテイクにシンセ・パートを加えたような、思いっきり脱力してしまうマーチ風ポップ・チューン。これもまたひとつの癒しの形。アルバム構成的にも、ひと息つくにはちょうどいい頃合い。やっぱプロデューサー目線ははずせない。

5. Compassion
 誰もが認める名曲バラード。ややフラット気味のハスキーなヴォーカル、黄金パターンからははずれているのに親しみやすい美メロ、いずれもトッドの必勝パターンである。正直、このヴァージョンはシンセがコッテリなので、ヴォーカルをメインとしたライブ・ヴァージョンの方がいい。



6. Shine
 8分を超えるアメリカン・ハード・プログレ。ユートピアでもそうだけど、トッドの場合、ここに加えてオールド・タイプのロックンロール風味も添加されるので、他のプログレ・バンドと比べてポピュラー性が強いのが、ひとつの特徴である。なので、このトラックも序章の重厚なパートさえ抜いちゃえば、ノリも良いソリッドなロックなのだけど、本人的には全部含めての「Shine」なので、そんなのは余計なお世話。終盤なんてライブ映えするギター・ソロも炸裂しているので、間口が狭いのがちょっと惜しい。
 ここまでレコードではA面。トータル・タイム27分ちょっと。音質を優先しての理想的な収録時間が20分程度なので、当然カッティング・レベルは低くなる。それもトッド的には通常営業。

7. Healing, Part I
 ポリリズミックなシンセのリフを基調に、控えめなギター・ストロークとリズムが挿入される、トッドにしては抑えたアンサンブルが印象的なトラック。終盤はジャジーななサックス・ソロがムーディに締める。
 タイトルが示すように、ここからがトッド言うところの「癒し」であり、それは聴き手にも向けられるような、柔らかな感覚。宗教的な崇高ささえ漂う世界。

8. Healing, Part II
 宗教的な真っ向臭さはさらに強まり、ガムランからインド風味から、隠し味としてのアフロ・タッチ、もう何もかもごちゃまぜにぶち込んだ模様。ギターのアルペジオのみが正気を保っているけど、ダウンの時に聴いたら持ってかれそうな危険さを孕んでいる。

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9. Healing, Part III
 1・2部のエッセンスをミックスした、組曲のまとめ。8.のようなダウナー感は一掃され、もっとポップに開かれた感が増している。ここまで3部作、よくあるコンセプト・アルバムと違って、パーツの切り貼りというよりは楽曲として独立しているため、重苦しさはそれほどでもない。まぁでも8.だけはちょっと勘弁だな。

10. Time Heals
 初回リリース時はボーナス・シングルとして収録されており、実際に単独でシングル・カットもされた。CDになってからはほぼ正規扱いとして収録されており、実際、俺もボーナス扱いだとは長らく思っていなかった。
 「これがユートピアの理想形だったんじゃないの?」と思ってしまうくらい、キャッチ―でソリッド、それでいてトッドのエッセンスもしっかり織り込まれている。なので、ビルボードのMainstream Rockという専門チャートではあるけれど18位にランクインしているくらい。
 ただトッドからすれば、壮大な組曲の後に、こんなポップ・チューンが続くと、世界観が壊れてしまうことを恐れたのだろう。だからボーナス扱いだったのであって、同時にそれだけのインパクトを残す楽曲でもあるという証明。



11. Tiny Demons
 で、そのシングルB面。こちらはもう少しダークな質感。いつ盛り上がるか、待っているうちに終わってしまう、そんなナンバー。タイトルと言い、UKゴシック系のバンドっぽいよな、そういえば。Cureとか聴いてたのかな、トッドも。



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歳食ったって?顔デカいからや。 - Culture Club 『Life』

folder 2018年リリース、前作『Don't Mind If I Do』から19年ぶり、5枚目のオリジナル・アルバム。本国UKでは最高12位、他のEU諸国ではトップ40にも入らず、あまり話題に上らなかった。
 近年の傾向として、彼ら80年代組の全盛期を知っているアラフィフ世代の購買力によって、CDなどフィジカルの売り上げは良いはずなのだけど、その恩恵は届かなかったようである。ていうか、あまり積極的にプロモーションも行われなかったのか、俺自身もリリースを知ったのは、だいぶ後になってのことだった。
 ただでさえCDが売れない時代、配信限定じゃないアルバムを製作できたことだけでも、充分賞賛に値することではある。あるのだけれど、一時は世界規模で栄華を極めた彼ら、クオリティだって決して低くないアルバムが知られていないのは、ちょっと悲しい。

 近年の再結成事情として、今回の彼らのような「新録アルバム・リリース → ツアー」というケースは減っている。大抵は新規ユーザーを取り込むための「オールタイム・ベストをリリース → そこから世界ツアー」という流れ。ちなみに、日本を含むアジア圏は大抵あと回し、終盤でチャチャっと済まされるのが、これまたセオリーとなっている。
 滞りなく世界ツアーを終えることができれば、最後にライブ映像か音源をリリースして、一連のプロジェクトは終了、最後まで「ファン・サービス」という名の債権回収に余念なく励む。
 または、「欧米の有名フェスにいくつか出演 → 配信限定で新曲リリース →それを含めたベスト・アルバム → EUまたは全米ツアー」という流れもある。
 ニュー・アイテムがある分、こっちの方がもう少し良心的かもしれないけど、シングル程度で収めるのが無難である。ヘタに内輪で盛り上がってアルバム制作にまで発展しちゃうと、大抵ロクなことがない。ストーン・ローゼスがこのパターンにはまって撃沈した。
 なので、ヘタにニュー・アルバムに手を出さないよう、プロジェクト関係者はアーティスト・サイドにたびたびクギを刺す。やるんだったら、プロジェクトを終えてから、個人としてやってくれ。俺たち巻き込まれたくないし―。
 これまでリリースされた再結成アルバムは、かなりの高確率で駄作が多い。実際の売り上げも含め、これは紛れもない事実である。
 それもあって、なかなか完成させる気ないんだろうな、X Japan。

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 普遍的なメッセージをわかりやすく届けるために作った「The War Song」がネタ扱いされたあたりから、彼らの人気は下降線を辿ってゆく。能天気な「センソーハンターイ」のインパクトが強すぎて、まともな評価はいまだ下されていないけど、マジメに向き合えば、シリアスなメッセージ性をポップにコーティングした優秀なヒット・ソングなのだ、と言いたいのだけど、やっぱダメだ、お手軽なウケ狙いにしか聴こえない。
 クイーンもポリスもキング・クリムゾンも、日本語バージョンは黒歴史として、ほとんどのケースで封印されてしまっている。若き日の過ちというか気の迷いというか、とにかくヤっちまった感が強い。
 その後は気を取り直し、再度キャッチ―なポップ・ソング路線へ回帰したカルチャー・クラブだったけど、一度踏み外した路線を修整するのは、なかなか難しい。一時は隆盛を極めた第2次ブリティッシュ・インヴェイジョンのブームも収束し、連動して彼らのチャート・アクションも地味になってゆく。
 さらに加えて、バンド内の人間関係もギスギスし始める。職場内恋愛進行中だったジョージとジョン・モスとの痴話喧嘩が決定打となり、グループは解散してしまう。
 解散後、各メンバーは一旦表舞台から消え去ったけど、フロントマンであるジョージはスキャンダラス面も含め、何かと話題に事欠かなかった。とはいえ、純粋にアーティストとしてフィーチャーされることはほんのわずか、ドラッグに溺れたり激太りしたり痴話喧嘩で逮捕されたり、ゴシップ・ネタで取り上げられることがほとんどだった。
 ソロ・デビュー作の『Sold』は、話題性も手伝ってそこそこヒットしたけど、その後はリリースするたび、セールスは尻すぼみしていった。UKハウス〜テクノの盛り上がりに乗じて、DJに転身したことがちょっと話題になったけど、ほんと話題になっただけ、売り上げに直結するものではなかった。
 アーティスト的には「すでに終わった懐メロ歌手」というのが、世間一般の彼の評価だった。もはや搾り出しても新たなアイディアは出なさそうだし、そもそもそんなニーズも少なかった。

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 シーンの第一線からは弾き出されたものの、単発的に行なわれた再結成ライブは盛況だった。ランダムに盛り上がる80年代リバイバルの中で、彼らは間違いなくスターだった。
 1998年、彼らはヒューマン・リーグとハワード・ジョーンズと合同で欧州ツアーを行なった。単独では難しいけど、複数アーティストによるショーケース形式なら、動員も見込めるし、収益もそこそこのまずまずだし。
 どの国・どの地域でも、懐メロショーというのは手堅い需要がある。みんながみんな、最新ヒット・チャートばかり聴いているわけではないのだ。そんな中、カルチャー・クラブの出番になると、客席の盛り上がりはピークに達し、実際、レビューの反応も好意的だった。
 そこでどうおだてられちゃったのか慢心しちゃったのか、世間のニーズに応じるつもりで彼ら、渾身のニュー・アルバム『Don't Mind If I Do』をリリースしてしまう。これが間違いだったんだな。
 再結成事情のセオリー通り、同時期リリースのベストはプラチナ認定の大ヒットだったけど、『Don't Mind If I Do』はUK最高64位と、玉砕する結果で終わった。その後、彼らは暫し沈黙に入ることになる。

 そして、もう何度目かになるリユニオン・プロジェクトは、用意周到に行なわれた。2014年、オフィシャル・サイト開設と同時に、長期ワールド・ツアーと新録スタジオ・アルバムのリリースが告知された。そこには、シーンの第一線にこだわるバンド側の強い意志が汲み取れる。
 アルバム・タイトルは『tribes』、スペインで2週間、集中的にセッションを行なう予定も決まっていた。事前準備の仕切りは、完璧のはずだった。
 ただほとんどのメンバーは、長くレコーディングから遠ざかっていたこともあって、作業は思い通りに進まなかった。加えて、ジョージが喉にポリープを患ってしまい、さらに工程は遅延。最終的にプロジェクトは頓挫、一旦仕切り直しとなってしまう。
 そんなこんなでツアー日程が先に決まってしまい、レコーディングは無期延期となる。どこかのタイミングで長期バカンスを取り、その一部をスタジオ・ワークに充てる方法もあったのだろうけど、彼らが再びスタジオに入ることはなかった。

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 思えばカルチャー・クラブ、ニューロマ出身ということもあって、「流行りモノ狙いの泡沫バンド」という位置付けが長く続いていた。ただ四半世紀を経て、フラットな視点で見れば、ポップ・センスに長けた高性能UKファンク・バンドだった、というのが近年の評価である。
 全盛期は、シンセ中心の音作りと、ジョージのバイセクシャル性ばかりがクローズアップされていたけど、装飾を取り払ったリズム・セクションは、レゲエやファンカラティーナ、16ビートまで、自由自在にこなしている。リズム・カッティング主体だったギター・プレイも、キャッチーでツボを押さえたオカズを入れてきたり、基本はファンク・マナーに忠実なバンドである。
 モータウンやグラム・ロックをルーツとしたジョージの楽曲も、当時は刹那的な使い捨てポップと思われていたけど、21世紀にも充分通用する大衆ポップ性によって、今ではスタンダード化したものも多い。
 さらに、彼らの音楽がティーン向けのバブルガム・ポップで収まらなかった要素として挙げられるのが、案外ドスが効いているジョージの声質。バラードからダンス・チューンまで難なく歌いこなせるヴォーカル・テクニックと併せて、同時代のバンドの中では図抜けていた。
 確かな技術に裏付けされたサウンド・メイキングと、自身の声質を理解したソング・ライティング。ビジュアルだけに頼らない、ミュージシャンとしての基本スペックの高さが、彼らをエヴァーグリーンな存在に押し上げた。
 ビジュアルったって、セックス・アピールはないしね、ジョージ。顔デカイし。

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 で、話は戻って『Life』。ファンはもちろん、もしかして本人たちも忘れてたんじゃないかと思えるくらい、長いインターバルを置いてリリースされた。企画倒れで終わっちゃっただろうな、と思っていた人が大多数だったはず。
 正確なアーティスト・クレジットは「Boy George and Culture Club」と、ジョージのソロ・プロジェクトのニュアンスが強くなっている。ここだけ見るとジョージ以外は参加してないんじゃないかと思ってしまうけど、楽曲クレジットを見ると、ほとんどの曲がメンバーとの共作となっている。
 多分、イギリスでは「あの」ボーイ・ジョージといった風に、それなりにネームバリューが生きているのだろう。でも、売れなかったけどね。
 すっかり野太さに磨きがかかったジョージのヴォーカルは、年輪の渋みが加わり、味わいが深くなった。紆余曲折と二転三転を経てエモーショナルさが増すというのは、演歌のメンタリティにも通ずるものがあるな。
 多くの同世代アーティストが懐メロ化してゆくか、はたまたセミ・リタイアすることが多い中、常に第一線のサウンドを追求し続けていたのが、ボーイ・ジョージである。バンド解散後のハウスやDJプレイなど、その多くはジョージがやる必然性を感じなかったけど、少なくとも、前へ進む姿勢を崩さなかったことは否定できない。
 過去の拡大再生産だけにとどまらず、常にアップデートした最新型を提示しようとする姿勢は、音楽に対して真摯な姿勢のあらわれなのだろう。
 ちょっとは見習えよ、アクセル・ローズ。


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1. God & Love
 ダークな味わいを持った、ゴスペル調のバック・ヴォーカル&コーラスが時々入るオルタナ・ブルース。久方ぶりのメジャー作の一発目がこれとは、冒険を通り越してもはや無謀。いや過去に囚われたくないのはわかるんだけどさ、出だしはもうちょっとアッパー系のポップ・チューンでもよかったんじゃね?というのは余計なお世話か。
 
2. Bad Blood
 なので、ちょっと地味なグルーヴィー・ファンクが展開されたこのチューンの方が、俺的には好み。ていうか、「成長したカルチャー・クラブ」、ファンが望んだ形は、正しくこれなんじゃないかと思う。ほど良く抑制されたファンクネスとポップ・センス。サビがクラプトンの「Bad Love」ソックリ、というのは目をつむろう。

3. Human Zoo
 全盛期を思わせる、ちょっとカリブっぽさを漂わせたポップ・チューン。いまのジョージの声域に合わせて、キーはかなり低め。昔だったら、もっとリズムが跳ねてたのだろうけど、やはりそこは寄る年波、しっとり聴かせてスタイルで仕上げている。

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4. Let Somebody Love You
 ちょっとお気楽なレゲエ・チューン。無理にポップに寄せず、ほんと気楽なビートに身を任せるジョージの姿が見えてくる。そう、もはや最前線にはいないのだから、ほどほどのファン・サービス、そして自分の好きなペースでやればいいのだ。

5. What Does Sorry Mean? 
 続いてもレゲエ2連発、今度はラヴァーズ・ロック。さらにシフトダウンしたビートは、ゆったりした楽園の世界。でもジョージの声が野太いため、空はどこか曇り気味。そりゃそうだ、だって英国人だもの。ピーカンは似合わない。

6. Runaway Train
 王道のフィリー・ソウル。完全にリスペクト状態、ほぼそのまんま。リズミカルなストリングス、ツボを押さえたサビメロ、完璧なポップ・ソウル。俺的にもこのアルバムのベスト・トラック。
 新しいサウンドではない。むしろノスタルジー満載の音である。でも、みんなが新しいモノばかり求めているわけではない。新機軸と言えるのはもちろん「God & Love」だけど、いや余計だなやっぱ。



7. Resting Bitch Face
 70年代ニュー・ソウルを彷彿させる、シリアスなファンク・ロック。ギターのリフとホーンの絡みは、レア・グルーヴ好きにはたまらない好物。ジョージの声質も趣きが変わっており、いろいろな技を持ってるんだな、というのが窺える。疾走感を求めるのなら、間違いなくコレ。彼らにそう言ったのを求める人が少ないのが残念だけど。

8. Different Man
 どの曲もそうだけど、このアルバムでのジョージは過去のアーカイヴへのリスペクトを強く打ち出している。この曲もサム&デイブあたりにインスパイアされたスタックス・ソウルなのだけど、ほぼそのまんま。どうせならご本人登場、といった風にデュエット企画にしてもよかったんじゃないの?と余計なお世話を焼きたくなってしまう。

9. Oil & Water
 ビリー・ジョエルかエルトン・ジョンを連想してしまうピアノ・バラード。リズム主導のポップ・チューンだけではなく、こういったバラードもまた、彼の本質のひとつである。全盛期も「Victims」のような王道バラードを歌っていたけど、声に深みが加わったことによって、説得力が増したよなぁ、という感想。演歌もバラードも、人生の紆余曲折を経ないと、重みが出ないのだ、という好例。

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10. More Than Silence
 「Be My Baby」(コンプレックスじゃないよ、ロネッツの方)のオマージュとも受け取れるリズム・パターンに乗せて歌われる、スケール感あふれるロック・チューン。U2みたいになるんだろうけど、そこまで下世話にはならないんだな、別の意味で。ベテランのまっとうなロック・チューンとしては、秀逸の出来。

11. Life
 多分、ジョージ的には最もヴォーカルに力を入れたゴスペル・チューン。年齢に合った曲調、といった見方とは別に、こういった歌を歌えるようになるため、紆余曲折と七転八倒を重ね、経験を積んできた、という見方もできる。
 若いうちにこれを歌っても、浮き足立ちばかりが目立って消化不良で終わっていたかもしれない。この曲だけじゃなく、ポップという最強ツールを使わずに、虚飾を取り払った姿勢で取り組んだのが、この『Life』だったのだろう。ようやく納得した。





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そして、私たちも、ひとり。 - Eurythmics 『We too are One』

folder 1989年リリース、7枚目のオリジナル・アルバム。ダークで暴力的なサウンド・デザインに支配された前作『Savage』から一転、憑き物が落ちてしまったかのように、メジャー仕様のコンテンポラリーなサウンドで彩られている。
 いい意味での下世話さが復活したことによって、レビューもおおむね好意的、セールス的にちょっと苦戦した『Savage』から復調した。US34位・日本51位、そして本国UKでは見事1位をマーク、最終的にダブル・プラチナを獲得して、健在ぶりをアピールした。
 とはいえ、彼らの活動はここで一旦終了、実質的な再結成作となる『Peace』まで、まるまる10年ブランクを置くことになる。2人が同じ方向を向くまでには、それだけの冷却期間が必要だったのだ。
 有終の美と言えば美だけれど、どちらかと言えば彼ら、音楽性同様、ドライなイメージがあったため、フェアウェル的な雰囲気はない。解散イベントもなければ公式インフォメーションもなく、プロモーションのためのワールド・ツアー終了後は、それぞれソロ・プロジェクトへシフト・チェンジしていった。

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 -『ブレードランナー』のレプリカントを連想させるビジュアルのアニー・レノックスが歌う、ジャーマン風味無機質テクノ・ポップ。シーケンスによるミニマル・ビートは強い中毒性を放ち、ユニセックスなアニーのヴォーカライズとの相乗効果で、強い求心力を生み出した。キャリアを重ねるにつれ、レコーディング・オタクのデイブ・スチュアートによる緻密なバック・トラックから脱線してゆくアニー。アニーの中で有機体が目覚め、プログラムは暴走、人間らしさが前面に出るようになる。もともとロック少年だったデイブも、そんなアニーの変化に引っ張られるように、ロック・コンボ・スタイルにサウンドも変化する。数々のヒット曲を量産してワールドワイドの成功を収めたが、長期に渡るツアーの代償で、肉体的・精神的に疲弊、活動継続に疑問を抱くようになる。成功と賞賛の反動から、極端に厭世的になってサウンドもネガティブ化、そこで毒から憎悪から膿から垂れ流してデトックス、そして最後に大団円-。
 ざっくりキャリアを総括すると、こんな感じ。かなり端折っちゃったけど。
 緻密なサウンドを構成するマニアック気質のデイブと、繊細かつ時に狂気を孕んだ一面を覗かせるアニー。役割が違うだけで、根っこは一緒である。
 どちらも「俺が」「私が」と前に出たがるキャラではない。ないのだけれど、ストレスの溜まる地味なレコーディング作業とは打って変わって、ライブではどちらも前のめりに挑んでいた。
 溜め込んだ感情のガス抜きとして、ライブ・アクトは有効に機能していた。ただ、感情爆発の連続は、別の意味でストレスを誘発する。そのストレスの捌け口は他人へ向かい、人を傷つける。その相手がいなくなると、最終的には自分の躰を傷つけることになる。

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 「作るのはボク、歌うのはキミ」といった風に、ゆるい分業体制がうまく回っていたのがユーリズミックスだった。活動中、多少の諍いはあっただろうけど、それがユニット解消の決定打だったとは言い切れない。
 当時隆盛のエレクトロ・ポップに、ゴシック調のダークな味わいを加えたサウンド・コンセプトを提唱したのがデイブだった。アニーの声質やキャラクターを研究した上で、市場に最もインパクトを与えるサウンドに、彼女も同意した。
 その試行錯誤の成果は、「Sweet Dreams」のヒットで開花する。押しの強いPVとの相乗効果で、一躍スターダムにのし上がった彼らだったけれど、そこで満足せず、サウンドは変容してゆく。もし「Sweet Dreams」の二番煎じを続けていたら、ヤズーのように早々に店じまいしていただろう。
 サウンド面はほぼデイブに丸投げだったアニーだけど、ライブ動員の増加によってスタジアムやアリーナ・クラスでの公演が多くなり、会場規模に合わせてヴォーカル・スタイルもエモーショナルに変化してゆく。シンセ主体だったサウンド・プロダクトも、大会場仕様のスタジアム・ロック・スタイルに変化、演出やパフォーマンスも大きくなってゆく。
 そういった変化は、デイブかアニー、どちらかが強制したものではない。多少はマネジメントからの要請もあったかもしれないけど、どんな事であれ、最終的には2人で話し合い、そして互いの合意のもとで進められた。
 いわゆるご乱心作となった『Savage』、そしてこの『We too are One』でも、2人の齟齬は見られない。創作上の衝突はあっても、感情的な衝突とは無縁だったのが、ユーリズミックスというユニットの特性だった。

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 元夫婦がそのまま同じ職場で働き続けることは、実社会ではそれほど珍しいことではない。案外、公私使い分けることは難しくないし、周りだってそれなりに気は遣う。みんながみんな、そんな簡単に転職もできないだろうし。
 ただその場合、同じ会社でも別部署、またはどちらかが別会社へ出向、というパターンが多い。そう考えると、始終顔を合わせていたユーリズミックスは、まれな存在である。
 夫婦で同じユニットで思いついたのが、テデスキ・トラックス・バンド。デビュー当時、姉弟デュオという触れ込みだったホワイト・ストライプスは、「隠してたけど実は夫婦だった」という謎設定。どちらにしろ、もう解散してるし離縁してるし。
 パンク界のおしどり夫婦と称されていたソニック・ユースも、サーストン・ムーアの浮気が原因でキム・ゴードンが激怒、もつれにもつれた末、解散している。テデスキ・トラックス・バンドは今のところ順調みたいだけど、ジャム・バンド特有の交友関係の広さゆえ、こちらもどうなることやら。
 で、ユーリズミックス。前進バンド・ツーリストの時は周囲公認のカップルだったけれど、ユーリズミックス結成直前に男女関係を解消している。普通なら、別れちゃったらしばらく顔も見たくなくなるようなものだけど、結成当初から彼ら、商業的成功を見据えたビジネスライクな関係と割り切っており、その後も永くパートナーシップを継続した。
 お互い、音楽的な才能に惹かれ合ってのことではあるけれど、でも。
 元カノと一緒に「仕事しよう」だなんて思わないって。

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 で、『We too are One』。自虐的な暴力性を申し訳程度のポップ・センスでコーティングした『Savage』とは一転、剥き出しの攻撃性は失せ、シングル・チャートでブイブイ言わせていたスタジアム・ロック的サウンドが復活している。
 でも、ここで奏でられる音は、とてもクレバーで冷静だ。決して芯は熱くなっていない。
 みんなが理想とする「ユーリズミックス」を、アニー・レノックスとデイブ・スチュアート、それぞれ個人が手を取り合って演じている。適度にポジティブで、時に陰影を放つ。突き放すほどではないけれど、適度な距離感を思わせる、適度にコンテンポラリーな音。
 「このサウンドでなければ」という必然性は、あまり感じられない。いい意味での消化試合、最後のファン・サービス的な音だ。
 なんとなく終焉が察せられていた英国ではともかく、世界的なセールスも当時の身の丈程度に落ち着いた。もしこれが大ヒットしたとしても、これ以上の活動継続を彼らが望まなかったことは、容易に想像がつく。

 これ以上2人でいても、無為な時間を費やすしかない―。そう彼らは気づいたのだろう。
 せっかく長い時間をかけて、ようやく友達と呼べるようになったのに。これ以上時を重ねても、互いに傷つけるようになるだけだ、と。
 言葉にしなくても、そのくらいは分かり合える。それが「感覚を共有する」ということだから。
 また2人でやりたくなった時、そして、いろいろなタイミングが合えば。誰かに言われなくたって、その時は、互いに引き寄せられることになるだろう。
 言葉にしてしまうと、途端に陳腐になる。だから、わざわざ口にしない。
 そんな関係は、いくらだってある。


We Too Are One (Remastered)
We Too Are One (Remastered)
posted with amazlet at 19.04.03
Sony Music CG (2018-11-16)



1. We Two Are One
 これまであまり見られなかったブルース・スケール。とはいえ彼らのことなのでそこまで泥くさくなく、当時流行っていたロバート・クレイのサウンドを想像してもらえば、だいたい説明がつく。
 ブルースなんてこれまで興味のなかった女と、いくら音符で追ったとしても、凡庸さの隠せないギター・プレイ。リアルさを求めるのはお門違いで、こういったフェイクっぽさをきちんと構築するところが、彼らの強みなのだ。

2. The King and Queen of America 
 シングル・カット3枚目で、UK29位・日本でも62位にチャート・イン。ハリウッドやアポロ計画、TVのクイズ・ショウなど、明るい未来にあふれたかつてのアメリカ、そして、軍隊の行進や軍人墓地など、その裏面に潜む悲惨なアメリカとの二面性を揶揄したテーマを、ポジティヴなパワー・ポップに乗せて歌っている。
 それよりもとにかく面白いのが、このPV。デイブとアニーふたりが様々なコスチュームに扮しているのが一興。ハリウッド・スターや大統領夫妻などはまだ予想の範疇だけど、月面の宇宙飛行士やヘヴィメタは、ちょっと意外。
 さらにさらに、あのネズミの国のキャラクターまで演じちゃうとは。とにかく一度見てほしい。



3. (My My) Baby's Gonna Cry
 めずらしく2人のデュエット。初期のシーケンス・サウンドにギターとデイブのヴォーカルをダビングしたような、ドライな作り。リズムを強調すると、スタジアム・ロックとしても充分通用する。それだけシンプルなコード進行ということなのだけど。
 デイブのギター・ソロは相変わらず凡庸だけど、サウンドのトータル・バランスとしては、これくらいが程よいくらい。

4. Don't Ask Me Why
 2枚目のシングル・カット。US40位・UK25位は妥当だったとして、なんと日本ではオリコン最高15位。ゴシック感と大衆性との奇跡的な邂逅が、東洋の島国のツボにうまくハマったんだろうか。巧みに歌い上げるアニーのヴォーカル、そしてストリングスを絡めながら抑制したバッキングを構築するデイブとの見事なコラボレーション。
 後期の名曲として、これを挙げる人も多い。いや俺も好きだもの。



5. Angel
 ユーリズミックスは80年代のバンドなので、こういったステレオタイプの80年代ソングがあっても不思議はない。ハートやスターシップあたりが歌ってもおかしくない、大味なアメリカン・ロッカバラード。UK23位まで上がっているのだけど、当時の英国人がこういった大味さを許容していたのかと思うと、そっちがむしろ驚き。

6. Revival
 『We too are One』はなんと5枚のシングルが切られているのだけど、これが先行シングルで一発目。UK26位をマークしたアメリカン風ロック。コール&レスポンスもあるくらいだから、まぁパロディだな。アニーのヴォーカルもポップ・ソングをいしきしてか、いつもよりちょっとキーが高め。ストーンズみたいなギター・リフもご愛敬。
 こうしてここまで聴いてみても、「最後なんだから、好きなこと全部やっちまえ」的なお気楽ムードに満ちている。そう考えると、シリアス・タッチの曲もどこか客観的。

7. You Hurt Me (And I Hate You)
 抑制されたAメロがすごくツボにはまったのだけど、サビになると大味なアメリカン・ロックになってしまうのが、ちょっと惜しい。当初はシンプルだったロック・チューンが、デイブがあれこれ手を入れてくうち、完パケ時には下世話な意味でキャッチ―になっちゃったんだろうか。まぁライブ映えはしそう。

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8. Sylvia
 なので、こういった静謐なバラードが後に続くと、妙に落ち着いてしまう。ストリングスのリフを基調とした、言っちゃえばマイナーの「Eleanor Rigby」なのだけど、そこにチェンバロを模したエフェクトをかましたギター・ソロを挿入することによって、曲全体が締まっている。このセンスがやはりデイブがデイブたる所以なのだな。

9. How Long? 
 そう、やはりユーリズミックスは80年代のバンドなのだ。なので、当時でもすでに使い倒されまくってたはずのゲート・エコーも、そしてドライブ感あふれるギターのストロークも、彼らにとっては使って当たり前のツールなのだ。大味でコンテンポラリーに寄り過ぎるけど、まぁいいじゃん、曲順的にもうラス前だし。

10. When the Day Goes Down
 ラストはライブ感が強く打ち出された、壮大なスケールを想起させるバラード。正攻法。何の小技もいらない。プレイヤーそれぞれに見せ場があり、そしてそれを緩やかに束ねる、アニーのエモーショナルなヴォーカル。
 華麗なるフィナーレとは、このことか。見事なエンディングだった。



Ultimate Collection
Ultimate Collection
posted with amazlet at 19.04.03
J Records (2005-11-08)

Live 1983-1989
Live 1983-1989
posted with amazlet at 19.04.03
RCA Records Label (2016-04-23)


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北海道の中途半端な田舎に住む、そろそろアラフィフ男。不定期で音楽ブログ『俺の好きなアルバムたち』更新中。ただでさえ時間ないのに、また新しい音楽ブログ『80年代の歌謡曲のアルバムをちゃんと聴いてみる』を始めてしまい、どうしようかと思案中。
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