好きなアルバムを自分勝手にダラダラ語る、そんなユルいコンセプトのブログです。

#Jazz

正妻と愛人との狭間で - Herbie Hancock 『Magic Windows』

7591 80年代コロンビア・ジャズ部門の一端をリードしていたのが、新伝承派のWynton Marsalis一派であり、その対極でアブストラクトなキャラクターを放っていたのがHerbie だった、というところまで前回書いた。今回はその続きから。

 70年代末からストリート・レベルで盛り上がってきたヒップホップは、80年代に入ってからしばらくはカウンター・カルチャーのポジションであり、当時はまだ知る人ぞ知る未知の音楽だった。「11PM」や「ポパイ」などで独自のファッションやライフスタイルは紹介されてはいたけど、まだ物珍しい時事風俗レベルの発信のされ方であって、肝心のサウンドが届けられることは少なかった。当時はまだ刹那的な流行りモノとして、あまり重要なムーヴメントと捉えられていなかったのだ。
 そんな怪しげな音楽にいち早く目をつけ、すでにこの時点でNYアングラ・シーンの中枢に鎮座していたBill Laswellとの出逢いが、Herbieの、そしてヒップホップの成功を決定づけた。当時、彼が率いていたMaterialのコネクションを総動員し、そこにHerbieが乗っかることによって、『Future Shock』、ていうか「Rockit」は大ヒットに至った。
 ここで重要なのは、すでに大御所であったはずのHerbieが、Billのサウンド・コーディネートにほとんど口を出さず、彼が集めてきた有象無象の新進アーティストに好き放題にプレイさせた点である。同じ頃、Miles DavisもHerbie同様、バックトラックを当時青二才のMarcus Millerに丸投げ発注している。ただ、Milesの場合は前回書いたように、あくまで信頼関係に基づくもの、「ジャズ」という共通言語をお互い理解していたからこそ可能だったわけで、Herbieの場合とはちょっと事情が違っている。『Future Shock』で奏でられたサウンドは、これまでのジャズの文脈とはひとつも当てはまらない、まったく異なるジャンルとのコラボである。
 普通なら「保険」として、ベーシックなジャズ・サウンドはそのままに、「何となく新味を盛り込みました」的に、スクラッチやシーケンス・ビートも申し訳程度しか使わないものだけど、Herbieの場合、その辺は徹底している。「エッセンスを取り込む」なんてレベルじゃなく、ベテラン自らが体を張って、別のジャンルに飛び込んじゃうんだからもう。
 ベテランのリアクション芸人が率先して体を張って笑いを取り、若手が中途半端なガヤ扱いで盛り上がりに欠けるシーンがバラエティでよくあるけど、あんな空気と同じものを感じる。
 前に出すぎるベテランは、扱いに困ってしまう。でも力技で笑い取っちゃうんだよな。

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 「Rockit」の成功は、数字で表せるセールス実績だけでなく、ひとつの「現象」、音楽の「世代交代」として、ヒップホップという新たなジャンルを広く世の中に知らしめる結果となった。Godley & Crèmeによる、マネキンやジャンク小道具を効果的に使ったPVもレトロ・フューチャー感を演出、お茶の間のテレビで何度もリピートされるほどの知名度を得た。ジャズ界ではすでに大物だったHerbieもまた、MTVでのヘビロテからポップ・チャートでのチャートインに結びつき、その後のボーダーレスな活動を行なう上で強力な後ろ盾となった。この後も同コンセプトでのアルバムを2枚リリース、そしてほぼ10年周期でテクノ~エレクトロニカ系の作品を手掛けるようになる。
 年功序列的にいえば、ジャズ界においては文句なしのレジェンド級、Milesを始めとしてあらゆる有名セッションをこなし、ソロ名義でだって数々の名盤をリリースしてきているのにでも、そんなHerbie、いわゆるオーソドックスなモード・ジャズのプレイは極めて少ない、珍しいキャラクターでもある。
 デビュー作の「Watermelon Man」然り、ヒップホップ以降、方々でサンプリングされまくった「Cantaloupe Island」然り、よく聴いてみると、セオリー通りの4ビートではプレイしない人である。本人のルーツとして、カリプソやラテンがバックボーンにあることは想像できるけど、フォーマットに沿った「ジャズ」とは無縁なのは昔からである。

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 Milesクインテット以降は、フェンダー・ローズを思いっきりフィーチャーした『Head Hunters』を発表、ジャズ・ファンク~フュージョンのオピニオン・リーダーとなった。なったのだけど、総合チャートにランクインするほど売れまくった『Head Hunters』のイメージで固定されることを嫌ったのか、はたまたポップ・チャートの魔力に取りつかれたのか、次第にヴォーカル・パートの割合が激増、ディスコ~ブラコンに手を染めるようになる。
 「ヒットチャートに魂を売った」的な声も内輪から上がったこの時期の作品は、今でこそ90年代以降のクラブ・シーンからのリスペクトもあって、一定の評価もされてるけど、チャラ路線と思われていたことも確かである。どうひいき目に見たって、メインストリームのジャズからは大きく逸脱しているし、Herbieのクレジットがなければ、単なるソフトR&Bである。
 ただHerbie側に立って考えてみると、ディスコ/ファンク一色に塗りつぶされた70年代後半のミュージック・シーンにおいて、新しモノ好きな彼がそこに食いつくのは、ある意味必然だった。前回のBranford Marsalis のレビューでも書いてるけど、ジャズの発祥並びに成長過程において、「ダンスビート」という要素を切り離して考えることはできない。特にHerbieのような、時代の趨勢に目ざといアーティストならなおさらである。
 まぁ当時「愛のコリーダ」でブイブイ言わせてたQuincy Jonesへの嫉妬というか、対抗心もあったんだろうけど。

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 ポップスターのポジション獲得のため、手段を選ばなかったHerbie、挙げ句の果てにはQuincy のプロダクションを丸ごと引き抜いてアルバムを作る(『Lite Me Up』)など、結構エグい手を使ったりもしている。ただ、そこまでしても『Head Hunters』を超える鵜セールスを上げることができなかった。
 才気走った感情の赴くままに作った作品が、思いのほか大ヒットして、いざ体制を整えて本腰を入れた途端、「売れ線に走った」と酷評される始末。なかなか難しいものだ。
 とは言ってもHerbie、その辺の空気を読む力は健在であり、ディスコ路線ばかりやっていたわけではない。あくまで本業あってこそのHerbie Hancockであることを自覚していたのか、メインストリーム路線もちゃんと押さえており、この時期はMilesバンドの同窓会的プロジェクトVSOPと並行して活動している。本妻と愛人宅とを行き来するかのように、どちらの家庭にも目配りを怠らないのは、マメな男の証左である。当然、ジャズ村界隈ではこっちの路線の方が高く評価されており、しかもセールスもそこそこ高かった。
 やっぱり本妻は、それだけ強いのか。

 そんな事情もあって、「愛人宅でのお戯れ」「羽を伸ばして趣味に走った」時期の作品として位置づけられているのが、この『Magic Windows』。しつこく、とにかく執拗に続けてきたポピュラー路線は、思うような結果を出せず、何をどうやっても空振りが続いた。もうこの辺になると方向性がグダグダで、はっきり言って迷走状態である。Herbie Hancockというエクスキューズがなければ、キッチリ作り込んだブラコン・サウンドとして、もうちょっと売れたかもしれないくらい、ちょっとかわいそうな作品である。
 ただ逆に考えれば、外部でのお戯れによってストレス発散ができ、それが功を奏して、本業において会心の出来のモダン・ジャズがプレイできた、という見方もできる。ブラコンあってのVSOPか。なんか微妙な持ち上げ方だな。
 もともと器用な人ではあるけれどしかし、「好きこそ物の上手なれ」という風にいかないのは、何も音楽に限った話ではない。「下手の横好き」って言葉もあるしね。
 そんな空振り状態解消のためのテコ入れなのか、『Magic Windows』は後にも先にもないくらい、ゲスト・ミュージシャンが豪華である。多分、一気にレコーディングしたんじゃなくて、断続的なセッションをひとまとめにしているのだろう。それにしてもこれだけ幅広いメンツを集められるのは、さすがレジェンドである。これだけミュージシャン・クレジットが豪華なのは、あとはSteely Danくらいしかいないんじゃないかと思われる
 Ray Parker Jr.とAdrian BelewとWah-Wah Watsonのプレイを、一枚でまとめて聴けるアルバムなんてまずないので、そういった幕の内弁当的オールスター・メンツを一度に堪能できると考えれば、十分お得、コスパ的にも優秀なアルバムである。何かスーパーのまとめ買いみたいな言い回しだな。
 ちなみにリリース当時のチャート・アクションだけど、ビルボード最高では140位。R&Bチャートでは40位、ジャズ・チャートでは13位にランクインしている。なんだかんだ酷評してたはずなのに、さすがは保守的なジャズ・ユーザー、きちんと買い支えてる。
 やっぱ彼らにとってHerbieって、何やってもジャズ扱いなんだな。


Magic Windows
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1. Magic Number
 有名どころとして、Ray Parker Jr.がギターで参加。アラフィフの俺でさえ、彼の印象と言えばゴーストバスターズだけど、もともとはファンク・バンドRaydio出身、ソロに転じてからもStevie WonderやBoz Scaggsのバックを務めていた職人肌の人である。それがどうしてあんな色モノに転じてしまったのやら。
 この頃はまだいわゆるセッション・ミュージシャンとしてのカラーが強く、オーソドックスなカッティング・プレイに徹している。ネームバリューに頼らない堅実なリズムの上で、ディスコやらカリプソやら技を繰り出すHerbie。まぁジャズには聴こえないな。

2. Tonight's the Night
 初っぱながインパクト勝負過ぎたバランスなのか、2曲目はオーソドックスなブラコンでまとめている。ヴォーカルのVicki Randleは当時のフュージョンでは引っ張りだこの人気だった人で、すごく上手いのにソロ作がないのがむしろ不思議。Randy Crawfordほど下世話だったら、もっとフィーチャーされてもおかしくなかったほど、惜しいヴォーカリストである。引っかかりが少ないのかな。
 ここでのスペシャル・ゲストはMichael Brecker、正直、あまり見せ場の少ない無難なプレイである。時期的に脂の乗り切ったプレイを見せてもおかしくないのに、何で弾けきらないのかと思ってクレジットを見たら、なぜかドラムがRay Parker Jr.、ベースはHerbieというリズム・セクション。何だそりゃ。

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3. Everybody's Broke
 「Money」をパクったようなキャッシャーのエフェクトから始まる、ボトムの効いたどファンク・チューン。ヴォーカルのGavin ChristopherはかつてRufus周辺で活動していた人で、いい意味で下品な泥臭さがファンクネス指数を爆上げしている。ブイブイ響くベースを奏でるLouis Johnsonも、もともとはBrothers Johnsonで弾いていた人で、後にMichael Jacksonに引き抜かれて『Off the Wall』~『Dangerous』で名を上げることになる。
 なので、ほぼディスコ・ファンクがベースで、Herbieはほとんどエフェクト的扱い、変な音担当としてシンセを操っている。リーダー・アルバムなのに存在感が薄い、寛容の心の持ち主ではある。

4. Help Yourself
 カッティングのリズム感がガラッと変わったと思ったら、Al McKayだった。ご存じEarth,Wind & Fireの中心メンバーである。Alが加わったことによって、サウンドは一気に洗練され、さっきまでベッタベタなファンクっぽさを前面に出していたLouisも、ここではオーソドックスなソウル・ヴォーカルである。それとも、これが本質なのかな。
 Herbieのプレイはすでに『Future Shock』以降の音になっており、やはりヒップホップというエッセンスは重要だったんだな、と確認できる。しかし再登場のMichael Brecker、もうちょっと顔出せよ。それとも、吹きまくったけどカットされちゃったのかな。



5. Satisfied with Love
 もっとエコーが強ければ、まんま80年代のブラコンそのものだけど、エフェクト系は抑え気味なので、今だったら逆にこの程度の響き具合の方が馴染むかもしれない。なので、歌もサウンドの一部として溶け込んでおり、いい感じのフュージョンにしあがっている。ドラムのAlphonse Mouzonは70年代Herbieのアルバムでも出席率が高く、いわゆる「あ・うん」の呼吸のアンサンブルである。この辺の曲は、もうちょっとまとめて聴きたかったな。



6. The Twilight Clone
 最後は飛び道具的なキャスティングのAdrian Belewとの共作。時期的にはまだKing Crimsonとの合流前であり、多分にTalking Head 『Remain in Light』にインスパイアされて作られたものと思われる。しかしリスペクトするのに必ずキーパーソンを引っ張ってくるというのは、相変わらずの荒業である。
 ほぼパーカッションで構成された曲であり、Herbieは何となく「らしい」コードを押さえるくらいで、特別目立ったプレイを見せているわけではない。70年代ジャズ・ファンクの進化形とアフロ・アンビエントとでも形容すべき楽曲は、やはりHerbie独自の視点である。
 思えば5.と6.でそれぞれ1枚ずつアルバム作っていたら、後世の評価もまた変わっていたかもしれない。そこを素直にやらず、「とにかくポップスターになりたいんだ」というあさってのベクトルが、さらに泥沼にはまるきっかけとなる。




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もう「じゃない方」じゃない! - Branford Marsalis 『Mo' Better Blues』

folder 80年代のコロンビアのジャズ部門は主に、新伝承派のWynton Marsalisと、フュージョン(ていうか「Rockit」)のHerbie Hancockを主軸としていた、と前回書いた。今回はその続き。
 フュージョンとヒップホップのハイブリッド・サウンドをレジェンド級のベテランが、対して懐古主義的な4ビート・ジャズを、全盛期を知らない若手が牽引しているという、こうして並べてみればチグハグな組み合わせだけど、それぞれ真逆のマーケットに応じた販売戦略がうまかったのが、当時のコロンビアである。

 50年代まではヒップなジャンルとされていたモード・ジャズだったけど、60年代に入ってからは、ロック/ポップスの台頭によって、時代の最前線から追いやられるようになる。ボサノヴァやラテンなど、他ジャンルのエッセンスを吸収することで発展してきたのがジャズという音楽だったのだど、Beatlesの台頭あたりから、そのポジションが変化してゆく。
 -吸収する側から吸収される側。相手の方がデカくなり過ぎたのだ。
 特にジミヘンやJBらに危機感を覚えたMilesが、習うより慣れろで電気楽器を導入、それに続くジャズ・ミュージシャンらが、『Bitches Brew』の方法論を応用してフュージョンを開拓、どうにかこうにかして70年代を乗り切ったのだった。
 ただ、そうまでしてもセールス格差は止まらない。帝王Milesでさえ、ビルボード200に入るのもせいいっぱいで、他のアーティストなんて推して知るべし。一度陥落したポジションは、簡単に取り戻せないのだ。
 「ジャズであること」の限界を思い知ったMilesなんて、結局引退しちゃうし。

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 で、80年代に入ると、従来の「あっちこっちからネタを引っ張ってくる」策も尽きてしまい、いよいよ前向きな視点が少なくなってくる。ほんとはずいぶん前からネタ切れになっていたのだけど、新伝承派の登場が最後通牒を突きつけちゃったわけで。だって、中心となって引っ張ってかなきゃならない若手が、ことごとく原点回帰に走っちゃうんだから。ジャズに限った話じゃないけど、老害の重鎮と覇気のない若手、中堅層の薄い組織は、ほっといても衰退してしまう。
 いやもちろん、復帰後のMilesやその周辺、Ornette Colemanから派生したM-Baseムーヴメントなど、プロパーのモダン・ジャズからはみ出した場所、限られたコミュニティでの新たな息吹はあったのだけど、肝心のメインストリーム、もっとハッチャけてもいいはずの若手が、どいつもこいつもかしこまってフォーマルなモダン・ジャズに流れてしまい、内部活性が滞ってしまう。いわゆるムード音楽、ジャズのイージーリスニング化である。

 新伝承派の筆頭であるWyntonは、ジャズ界では名門とされるMarsalis 家の出身である。親族にもミュージシャンが多く、ある意味、通常の親戚付き合いが、イコール音楽の英才教育だったとも言える。
 1961年生まれのWyntonが育った時代背景だと、ブルースやファンクに行っちゃっても不思議はないのだけれど、まぁそんな環境ゆえ、オーソドックスなスタンダード・ジャズへ向かうのは必然だった。ディスコ方面へ行っちゃったら、一族から総スカンだったろうし。
 幼少時から自然と培われた彼の才能は、同世代ミュージシャンの追随を許さず、純粋培養されたテクニックとセンスは、往年のモダン・ジャズを忠実に再現した。
 「みんなが思うジャズっていえば、こんなんじゃね?」的なジャズを演奏するWyntonは、たちまちスターになった。偶然性を極力コントロールし、整合性を重んじた新伝承派ジャズは、はっきりした起承転結を好む日本のファンにもウケが良かった。

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 で、お兄ちゃんのBranford。
 本格デビュー前から「早熟の天才」として崇められていたWyntonに対し、最初から「じゃない方」的立場に甘んずることが多かった。何をやってもソツなくこなす弟に対し、なんか普通すぎるというかセールスポイントが定まらないというか、はたまた弟に遠慮してた部分があったというか。
 どの世界でもそうだけど、出来のいい次男に対して、長男って期待値も大きいから、どうしても割りを食う部分が多い。若貴だってそうだったしJackson 5だってMichael 総取りだったし。Gallagher兄弟はちょっと微妙だけど。そうえいば、Van Halenって、今どうなんだろな。

 トランペットを操るWyntonにとって、80年代という時代背景は好都合だった。
 Chet Bakerはドラッグから抜け出せずにいたし、Donald Byrdも本流とは別のところにいた。有望な若手はみんなフュージョンに行ってたので、まともにジャズを吹けるプレイヤーが少なかったのだ。もちろん、往年のジャズ・ミュージシャンが細々と現役で吹いている例はあったけど、彼らの全盛時のひらめきはとっくの昔に失われていた。
 音楽的には保守的ながら、盟友Terence Blanchardと共にジャズシーンを引っ掻き回すWyntonのスタイルは、自家中毒を起こしていたジャズそのものの活性化に繋がった。
 対してサックスのBranford。David SanbornもWayne Shorterも Michael Breckerも、同じくフュージョンに行っちゃっていた。Wynton同様、まともなジャズ・サックスを前向きにやってる奴が少なくなっていのだ。こういった状況はWyntonと同じ。
 ただ違っていたのは、対するレジェンドの存在。Wyntonの場合、帝王Milesがまだ現役で君臨していた。しかも、同じコロンビア枠で。まともに戦っちゃうと勝ち目がない相手だけど、コロンビア側が描いた営業戦略として、「レジェンド」vs.「若手」の対立構造を煽っていた節がある。MilesはコロンビアによるWyntonへの厚遇に難色を示していたせいもあって、後年ワーナーへ移籍してしまうのだけど、少なくとも前述したような活性化に繋がったのも、また事実である。
 対してBranfordだけど、そういった仮想敵を見出せなかった/コロンビア・サイドがコーディネートできなかったことが、「じゃない方」的ポジションからの脱却が遅れた要因でもある。Sonny Rollinsは乗り越えるとか倒すべき存在とはちょっと違うし、サックス界のラスボスと言えるJohn Coltraneはとっくの昔にこの世を去ってるし。第一Branford、弟と違ってそんな攻撃的な性格じゃないし。

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 なので、無理にジャズの中で地道にやるだけじゃなく、ジャンルの外に出て新たな価値観を養った方が、精神安定的にも良かったのだろう。Stingバンドでは「じゃない方」ではなく、単なるサックス吹きのBranford。主役ではないけど、少なくとも個人のアイデンティティは保てるし。
 俺個人としても、Branfordの存在を知ったのはStingを介してだし、多分、ほとんどのユーザーもそうだったんじゃないかと思う。一応、Wynton兄弟の存在はFM雑誌のディスク・レビューや記事で知ってはいたけど、当時はジャズにそれほど関心がなかったので、実際に彼らの音を聴いたことはなかった。「Engishman in New York」で奏でられたソプラノ・サックスによるコーダが、彼との出会いだった。
 発表当時、特にジャズ方面から「大衆に媚びた」という否定的な論調が多かったけど、俺のようなロック・ユーザーからの認知度は飛躍的に高まった。ここからジャズを聴くようになったユーザーも多かったし、ジャンルの相互交流にも一役買った形になったのも事実である。狭いジャズ村とは対照的に、「そもそもジャズは大衆の音楽なんだから、これだってアリじゃね?」という声の方が多かったため、ジャズ・ミュージシャンとしてのBranfordのステイタスも確立されることとなった。

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 ある意味、アイデンティティ獲得のための武者修行でもあったのか、「ヒップな音楽を好きにやりゃいいんだよ」という境地に達したBranford、その後は徐々にメインストリーム・ジャズの路線に回帰してゆき、時たまポピュラー・シーンに客演するというスタンスで活動することになる。久しぶりにStingのライブに客演した際は、盛大に迎えられたくらいなので、やはりポジション的にはもうジャズ・レジェンドなのだろう。近年はなぜかGrateful Deadに客演したりしてるし、もう「良い音楽」であれば何でもアリなのだろう。
 で、まだ若干ヤマッ気が残ってた頃、1990年にリリースされたのが、Spike Lee監督によるTVドラマのサントラ。Spikeとはほぼ同世代ということもあって、同じような音楽を聴いて育ってきたおかげで、最初からウマが合ったらしい。
 近年でこそ、Robert GlasperやKamasi Washingtonなど、ヒップホップ以降の音楽へのリスペクトを表明するジャズ・ミュージシャンが多くなってきたけど、これも何も今になって始まったことじゃない。Branfordに限らず、他のジャズ・ミュージシャンだってプライベートでは一般リスナーと大差ないわけで、ごく普通に時代に沿ったロックやソウル、ディスコだってたしなんできている。もともとダンス・ミュージックから派生したパーティ音楽がジャズの発祥であって、現場のクラブ・シーンを見失うと、本質を見誤ってしまう。
 あくまで映像がメインであり、純正ジャズにこだわらず、バラエティに富んだサウンド構成になっているので、純粋なジャズ好きの人だったら抵抗があるかもしれない。なので、ジャンルレスで音楽を楽しめる人、俺のような雑食系、Spike Leeファンの人にはおススメである。要はあんまりこだわりの少ない人。俺だってたまたま「Harlem Blues」を聴いて興味を持ったくらいで、別にBranfordが吹いてるから聴いてるわけではない。ジャジー・ヒップホップもあるから飽きないよ。トータル性は薄いけど、間口は広いアルバムだし。
 もう一回くらい、こういうのやってくんないかな、Branford。


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1. Harlem Blues
 ヒロインCynda Williamsによる極上バラード。ナイトクラブでの演奏シーンだけでも十分お腹一杯になってしまうパフォーマンス。日本の映画と違って、ほんとうまいよな、あっちの女優さんって。



2. Say Hey
 なので本格的な新伝承派ジャズとなるとこちらになる。そういえば書き忘れてたけど、当時のクインテットのラインナップがTerence Blanchard (tr)、Kenny Kirkland (p)、Jeff  Watts (dr)。多少はストーリー展開に沿ったアンサンブルなんだろうけど、Branfordのパートになると急にテンション上がってColtraneっぽくなるのは避けられないんだな。

3. Knocked Out the Box
 Terenceリードによるジャンプ・ナンバー。やっぱり若手だけあって手数も多くテクニックは折り紙つき。でもたった1分で終わっちゃうんだな。ブリッジ的な扱いはサントラだから致し方ないのかな。

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4. Again, Never
 再びTerenceリードによるスローな4ビート。先ほどのハッチャけ具合から一転、アダルトでムーディなカクテル・ジャズ。こういったのだったら、いくらでもできるんだろうな、このメンツじゃ。でもつまんないんだろう。まぁ確かに無難な仕上がりだしね。

5. Mo' Better Blues
 若きDenzel Washingtonのコワモテぶりが印象的なメイン・テーマ。今ではアクション・スターのイメージが強いWesley Snipesも、ここではシブくクールなサックス・プレイヤーを演じていた。
 ブルース・コードをベースに、ほどよく抑制されガッツのある演奏は映像とマッチしている。当時のBranfordとTerenceの関係性を彷彿とさせる。



6. Pop Top 40
 主演2人によるジャジー・ヒップホップ。ていうかライムを踏んでるわけではないので、どちらかといえばポエトリー・リーディングに近い。佐野元春がやってるようなやつで。どちらにしろ、ジャズにこだわり過ぎるとできないサウンドだよな。ジャズの貪欲な雑食性が強く浮き出ている。

7. Beneath the Underdog
 まだ十分洗練されていない50年代初頭のジャズをシミュレートした、そこにアトランティック以降のColtraneをタイムスリップさせたようなナンバー。この時期のBranfordはまだColtraneコンプレックスから抜け出せていない。開き直るまでには、もうちょっと時間が必要。

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8. Jazz Thing
 そうか、あのDJ PremierはGang Starだったのか、とヒップホップに疎い俺。近年のオートチューン中心のサウンドはどうもダメだけど、80年代のラップ/ヒップホップはまだ受け入れられる俺である。「一般人が思うところのヒップホップ」として、特にうるさ型のジャズ・ユーザーにもギリギリ受け入れられやすいサウンドになっている。いやダメか、あいつら頑なで視野狭いし。

9. Harlem Blues (Acapulco version)
 ラストはオープニングとループ、ストリングスも入ったゴージャスなヴァージョン。ヴォーカルも気合が入っている。でも俺的には1.の方が好みかな。





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「俺の欲しい音わかるよな?」と脅して作らせた音楽 - Miles Davis 『Tutu』

_SX355_ Milesが辿ってきた音楽的変遷というのは、要は「どれだけジャズというジャンルから逃がれられるか」の軌跡である。既存の枠にカテゴライズされることを忌み嫌い、「俺自身がジャンルだ」と気を吐くのは昔からのことで。やっぱJBとかぶるよな、こういうとこって。
 とはいえ、本人がどう思おうが、Milesはどこまでもジャズの人である。ビバップ以降のジャズの可能性を広げたのは、どうしたってこの人だし。

 30年もの間、所属していたコロンビアは基本、彼をジャズのカテゴリで売り出し続け、5年のブランクを置いての復帰後も、これまで通り、快く迎え入れた。何の問題もない。彼はすでに生きる伝説だった。
 80年代のコロンビア・ジャズは、20代の若手主導による新伝承派と、70年代残党によるフュージョン/クロスオーバーとが主力で、それらのオピニオン・リーダーとなっていたのがWynton Marsalis とHerbie Hancock だった。
 ポピュラー界全体でも、まだ一般的ではなかったスクラッチと無限変速のダンス・ビートによって、大きなインパクトを与えた「Rockit」の成功は、商業的にも大きな成功をもたらした。その基本は、70年代からのジャズ・ファンク〜R&B路線をアップデートさせたものだが、市場のニーズと彼の嗜好とがうまくシンクロした結果である。
 Herbieの優れた点は、そういった大衆路線と並行して、VSOPでスタンダード路線もしっかり押さえていたところ。『Future Shock』だけなら単なるご乱心だけど、「伝統的な4ビートだって忘れてないんだぜ」的な二面性を保つことによって、保守派ジャズ・ファンからも一目置かれるポジションをキープしていた。
 対して、先祖返りのモード・ジャズの再発掘とされる新伝承派もまた、保守派ジャズ・ファンの間では安定した人気を誇っていた。Wyntonに並ぶスター・プレイヤーの不在によって、フュージョン一派ほどポピュラーな存在ではなかったけど、成長株として評価はされていたし、特に日本での人気は高かった。

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 で、そんな状況下でMilesに求められていたこと。コロンビアとしては、どっしり構えたレジェンドとして、悠然たるモード・ジャズをやってもらいたかった、というのが正直なところ。若手の総元締めとして、新伝承派のルーツを演じてもらいたかったのだ。
 完全にドラッグから足を洗ったわけではなく、体だってボロボロだったから、今さら新しい音楽なんてできるわけないし。言ってしまえば、金のために復帰したんだし、それならそれで、過去の遺産でお茶を濁したって、誰も責めやしない。それだけのことをやってきた人だし、二流のミュージシャンの新作よりは、ずっと出来だっていいはず。
 でも、そうじゃなかった。
 帝王は常に「その次」を見続けていた。

 モード・ジャズもフュージョンも、すべてはMilesが最初に始めたものであり、主義として過去を振り返らない彼が、今さら手をつけるものではなかった。帝王にとって最高傑作とは、常に次回作だ。
 -なんで俺が、二番煎じの片棒担がなきゃなんねぇんだ?
 きっとそう思っていたことだろう。
 混沌を未整理の状態で表現した最高峰が『アガ・パン』だとして、果たしてそれが多くの聴き手に理解できたかといえば、正直難しいところ。『On the Corner』は好きな俺も、『アガ・パン』は最後まで通して聴けたことがない。
 その混沌としたジャズ・ファンクの素材を整理・加工し、コンテンポラリーな商品としてマーケットに流通させることが、80年代Milesのコンセプトだったと言える。

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 セッション中、テープを回しっぱなしにして、不協和音スレスレのハーモニーや変速リズムが録音された素材を編集、どうにか商品の形にまとめていたのが、プロデューサーTeo Maceroだった。特に電化以降のMilesがコンスタントにアルバムをリリースできたのは、彼の巧みなテープ編集技に依るものが大きい。
 ただ復帰後のMilesは、よりコンテンポラリーな方向性を求め、職人肌のTeoとは次第に距離を置くようになる。自らの仕切りによる漫然としたセッションに見切りをつけ、バックトラックの外注化を推し進めたのが80年代である。70年代のジャズ・ファンク路線を踏襲しながら、まとめきれなくなった音の洪水を整理し純化する作業を、まだ20代のMarcus Millerに委ねることとなる。

 もともとフュージョンのGRPを入り口としてこの世界に入ったMarcus が、すでに過去の偉人扱いだったMilesのバック・カタログをどれだけ聴き込んでいたかは疑問だけど、MIDI機材を駆使したアップ・トゥ・デイトなサウンドを具現化できる彼のスキルは、得がたいものだった。
 Miles思うところのモダンなサウンドを作らせ、最後に朗々としたミュート・ソロを入れたらできあがり。『Star People』も『You're Under Arrest』も『Decoy』も、Miles自身はサウンド・メイキングに何ら関与していない。多少は口出ししたかもしれないけど、ほぼ「Marcus 思うところのMiles的サウンド」で構成されている。「Time After Time」も「Human Nature」も「Perfect Way」も、Milesが「これやりてぇ」とつぶやいたら、「かしこまりっ」てな具合で、きっちりパッケージングしてくれる。
 何かと使い勝手の良い男である。

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 でもしかし。
 Milesのそんな先進性は、コロンビア的には歓迎すべきものではなかった。
 何も新しいものなんか期待していない。ただ普通に、「Round About Midnight」や「Birth of Cool」だけやってもらえれば、営業戦略的にはよかったのだ。
 伝統芸能としての古典ジャズがあり、その頂点に位置するMiles。大御所たるもの、安易に目先の流行に惑わされものではない。静かなる水面のごとく、数年に一度、悠然かつ堂々とした正攻法の4ビートを奏でてくれればよい。営業サイドも、内心そう思っていたはずで。
 なのに、何だあの野郎、毎年毎年アルバム作りやがって、そんなんじゃレア感出ないじゃないの。時代に合わせたサウンドなんて、もっと若手に任せときゃいいものを、帝王がそんなチャラい音楽やってどうすんの?
 コロンビアとしては、そこまでフットワークの軽い活動は望んでなかったはずだ。だって、バック・カタログのリイッシューやボックス・セットで十分ペイできるんだし。

 当時のMilesへのインタビューを読めばわかるけど、ベルリン・フィルとの共演企画に始まる、とにかく権威づけして神棚に祀っておきたいコロンビアの思惑が、帝王との方向性のズレを示唆している。
 復帰以降では、最も突出してプログレッシブな内容の『Aura』のリリースに難色を示したコロンビアに憤慨したMilesは、ワーナーに移籍してMiles的オリジナルの探求、そして存命中には叶わなかったポップ・スターとしてのポジションを追い求めることになる。
 コロンビアの立場に立って考えると、まぁ別に気張らなくたって安定したセールスは見込めるんだし、何もそんなシャカリキにならなくてもいいんじゃね?と思っていても不思議はない。時々アニバーサリー的な作品を出して、あとはベストかアーカイブで凌いでくれた方が、レコーディング経費もかからないわけだし。
 なまじ覚醒しちゃったベテランの手綱を操るのは、容易ではない。ジャズから離れようとしながら、同時にジャズ界のイノベーターでもあろうとするMilesの、そこがめんどくさいところで。

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 で、再度Marcus を呼びつけて、「俺の言ってることわかるよな?」的に恫喝、バックトラックを全部丸投げして一気に作らせたのが、この『Tutu』。方法論としては、『Star People』 以降と大きな変化はない。
 コンセプトメイカーとしてのMilesの感性は、時代の変遷で風化するものではないけど、サウンドメイカーとして見るのなら、ちょっと評価は違ってくる。その辺はやっぱ年の功もあって、時代に即したサウンドを単独で作るには、ちょっとムリがある。
 Cyndi LauperやScritti Polittiなど、ポピュラー・ヒットへの着眼点は眼を見張るものがあるけど、それに比したサウンドを作るとなると、話はまた別になる。だからこそ、Marcus のような存在が必要なわけで。
 ソロイストとしてのスキルを極めるより、集団演奏によるトータル・サウンドの空間演出に力を注いできたのが、コロンビア以降のMilesである。スペシャリストによるアンサンブルも、フェアライトで緻密に組み立てられたシンセ・サウンドも、要はMilesのミュートを引き立たせるための大掛かりな演出なのだ。
 最後の一筆を入れるがごとく、完成されたバックトラックの隙間を縫うように、ペットの音色を吹き込むMiles。トラックの隙間を埋めるのは、単なるペットの音色ではなく、長い余白と余韻の如く、サウンドを切り取るブレスだ。
 綿密に構築された喧騒の中、そっと射し込まれる沈黙。
 行間に「意味」を吹き込むMiles的ジャズ・ファンクの最終形である。


Tutu
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1. Tutu
 まさかジャズの、しかもMilesのアルバムでオーケストラ・ヒットを聴くとは思いもしなかった。でもそこ以外はスロウな大人のジャジーなファンク。

2. Tomaas
 この曲のみ、MilesとMarcusの共作名義となっているけど、本当の主役はOmar Hakim。世代が近いだけあって、Marcusとのコンビネーションも絶妙。どちらも複雑かつバラバラなリズム・アレンジなのに、さらにその上を行ってMilesが俺様状態で引っ掻き回すものだから、結局のところはうまく着地点を見つけているという、何とも変な曲。

3. Portia
 ちょっぴり切なく感傷的な音色を奏でるMilesだけど、やたらリズムのエッジが立っているため、メロウさはあまり感じられない。逆か、ほとんどリズムだけのサウンドにMilesが泣きのフレーズをぶち込んでいるのか。ドラム・マシンの音がデモ段階っぽく粗めに聴こえるけど、その辺はミスマッチ感を誘っているのか。

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4. Splatch
 ややコミカルさもある、打倒Harbie的、リズムライクなファンク・チューン。3.同様、いま聴くとドラムの音がショボいのだけど、変則リズムを際立たせるには、音色は逆にシンプルな方がいいのだろうな、と今になって思う。

5. Backyard Ritual
 この曲のみ、George Dukeのプロダクションによるもの。かなりジャズ臭さが抜けて、フュージョン寄りのバックトラックは、Milesの今後の方向性を示唆することになる。もちろん、正面切ってのフュージョンじゃないけどね。ここでの聴きどころはGeorgeではなく、Marcusのバス・クラリネット。軽いリズム・アレンジの中で地表スレスレを這うかのように重い響きは、わかっていてもちょっとドキッとする。

6. Perfect Way 
 流行りモノの中でもちょっとはマシだと思ってフィーチャーしたのかと思ってたら、なんとこの後、彼らのアルバムにゲスト参加するくらいだから、よほどGreenのプロダクションが気に入っていたのだろう。一応、何年かに一度の再評価はあるけれど、寡作ゆえ80年代と共にフェードアウトしていったScritti Polittiを、色眼鏡抜きで相応の評価をしていたのは、音楽「だけ」を視るMlesらしいエピソードではある。しかし、これをレパートリーに入れちゃうんだから、新しモノ好きでもあったんだろうな。



7. Don't Lose Your Mind
 シモンズの高速フィル・インを交えた、レゲエをベースとしたナンバー。この曲など特にそうだけど、Marcusのサウンド・メイキングの秀逸な点は緩急のつけ方。御大がソロを入れそうな「音の隙間」をきちんと作っている。スッと滑り込ませるようにフィーチャーされるMilesのソロ。でも、それも計算のうちなのだ。

8. Full Nelson
 アパルトヘイトへの批判を訴えたプロジェクト「Sun City」への参加を経て、インスパイアを受けたNelson Mandelaをテーマとしたナンバー。オープニングはギター・カッティングをメインとしたどファンクで、当時、レコーディング参加が噂されていたPrinceからのインスパイアも感じられる。12インチ・シングルとしてリリースされているくらいなので、ごく一部ではダンス・チューンとしての需要もあったと思われる。
 Milesとしては、ダンス・フロアでのリスニング・スタイルを求めていたんだろうな。





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北海道の中途半端な田舎に住む、そろそろアラフィフ男。ほぼ週1のペースで音楽ブログ更新中。節操ない聴き方と思われてるけど、自分の中では一貫してるつもり。 最近は蔵書の整理がてら、古い本を再読中。ジョン・アーヴィングから始まって、フィッツジェラルドやゾラ、モームなど、いわゆる古典の復習中。いつになったら終わることやら。新刊読めねぇや。
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