好きなアルバムを自分勝手にダラダラ語る、そんなユルいコンセプトのブログです。

#Jazz Funk

ホントは今でもゴリゴリのジャズ・ファンク - Bamboos 『Step It Up』

folder 2006年リリース、オーストラリアではバツグンの知名度を誇るジャズ・ファンク・バンドBamboosの記念すべきデビュー・アルバム。結成が2001年ということで、アルバム・デビューは遅かったけれど、基本シングル中心の活動というのは、現代ジャズ・ファンク・バンドにとってはよくある話。
 彼らが一気に話題になったのは、2003年2枚目のシングル”Tighten Up”から。日本ではYMOが『増殖』でカバーしてから話題になり、近年もビールのCMで起用されるなど、忘れられる前に誰かが取り上げることによって、息の長いヒットになっている。そんなヴィンテージなファンク・インストを、ほんと何の衒いもない直球ストレートなアレンジで彼らがカバーすることによって、一躍クラブ・シーンに躍り出たBamboos、そんな前評判もあっての、満を持してのデビュー・アルバムとなったのが、本作。

 順調かつ地道にキャリアを積んできたことによって、本国オーストラリアではポピュラー・シーンにおいて、それなりのポジションでは収まっているらしい。いわゆる一般的な大ヒットまではいかないけど、現時点での最新アルバム『Fever in the Road』が、国内アルバム・チャートでトップ20に入る程度の固定ファンは掴んでいる。
 20位がやっとなのか、という見方もあるかもしれないけど、ライブ中心で活動している彼らのようなジャンルでありながら、ここまでのチャート・アクションというのは、世界的に見ても立派なものである。それほど枚数が捌けるジャンルではないのだ。ここまで国内メジャーのポジションを獲得したバンドは、俺が知る限りでは日本のスカパラくらいのものである。

0003266546_10

 ちなみにここ数枚の彼らのサウンドの傾向だけど、あくまでアルバム単位に絞って言うと、得意のジャズ・ファンク・テイストはあまり前面に出さず、もっと一般リスナーに開かれたコンテンポラリーなサウンドを展開している。デビュー当時からずっとオーストラリア国内のレーベルTru Thoughtsに所属していたのだけど、最新作からは配給元が変わり、同じくオーストラリアのInertiaというレーベルに移籍している。
 オーストラリアのエンタメ・シーンがどうなってるのか、正直俺の認識では、AC/DCとINXSとOlivia Newton-Johnで止まっちゃってるので、詳しいところはわからないのだけど、オフィシャル・サイトを見る限りでは、オルタナ・ロックからダンス・ポップまで扱う総合レーベルのようである。多分、販売力もしっかりしてそうなので、半インディー的なスタンスであるTru Thoughtsでは賄いきれなくなった部分もあるのだろう。

 そういった事情もあって、近年は多彩なゲストを入れたポップ寄りのサウンドに変化してきたわけで、今やアルバムだけで考えると、まったく別のバンドになっちゃってるのが現状。セールス的には上向きになっているので、バンド運営的には正しい戦略だったと言わざるを得ない。得ないのだけど。
 ただし、完全にメジャーに魂を売ってしまったわけではないようで、近年のライブ映像では、相変わらずのジャズ・ファンク振り、オールド・スタイルのソウル・ショウを展開している。プレイヤー・サイドから見れば、パッケージとライブとでコンセプトを変えることによって、うまい具合にガス抜きしてるんじゃないかと思う。ほんとのBamboosを見たければ、ライブに来なよ、とでも言ってるかのように。
 でも、あんまり日本に来てくれないじゃん。
 
bamboos

 その『Fever in the Road』から急激に売れ線に走ったというわけではなく、緩やかな変化はもう少し前、5枚目の『Medicine Man』あたりからヴォーカル・ナンバーが増えている。しかも、それまではほぼ出ずっぱりでヴォーカルを取っていたAlice RusselやKylie Auldistが次第にソロ活動を重視してきて、参加するのが少なくなってきたことに合わせて、次第に複数のゲスト・ヴォーカルを迎えることが多くなってきている。
 そのような戦略によるため、アルバムだけで見ると、だんだん普通のバンド化しているのが現状である。グローバル戦略としては正しいのだろうけど、古くからのファンからすれば、その変節に複雑な思いを抱くことも多いのかもしれない。俺はその『Medicine Man』から彼らの存在を知って、そこから遡って聴いてきたクチなので、そこまで強く初期サウンドに固執しているわけではない。しかし、ジャズ・ファンク・バンドを漁ってきた身からすれば、次第に洗練されつつある近年の作品は、以前ほど聴く機会が少なくなっているのが事実。

 どのジャズ・ファンク・バンドもそうだけど、サウンドの性質上、どうしても大所帯になってしまい、バンドの維持にはどこも苦労している。他アーティストのサポートやホーン・セクションの外部委託に頼らず、バンド単体で自立してゆくためには、こういったスタイルで生き残ってゆくのもひとつの生き方ではある。

 初期のBamboosは、そういったポピュラリティーをあまり考慮しないところで音作りしているので、現代ジャズ・ファンクが好きな人なら、まずハズレはない。JBやMetersなど、シンプルに自分たちの趣味、自分たちが影響を受けてきたモノにこだわり、出したい音をそのままストレートに出しているスタイルなので、何も考えずにノルことができる。


Step It Up
Step It Up
posted with amazlet at 16.02.14
Bamboos
Ubiquity (2006-03-07)
売り上げランキング: 214,255




1. Step It Up
 どストレートなファンク・ナンバー。歌うは歌姫Alice Russel。彼女の声はソウルフルではあるけれどそれほど泥臭くなく、同じく洗練されたバンド・サウンドにはうまく馴染んでいる。この後のAliceはソロ活動も盛んとなって、近年ではQuanticとコラボすることが多くなって、ちょっとソウル方面とはご無沙汰になってしまうのだけど、ここではパワー全開のソウル・チューンを難なく歌いこなしている。ライブを見てもらえればわかるように、ほんとずっと聴いてたくなるようなナンバー。たった3分で終わってしまうのは惜しい。



2. Tighten Up/Album Version
 オリジナルは言わずと知れたArchie Bell & The Drellsによる1968年のヒット・ナンバー。基本オリジナルに忠実なカバーなのだけど、リズムはこちらの方が立っている。オリジナルはスッカスカのリズムと間の抜けたホーンとのアンサンブルが絶妙だったのだけど、ここでは敢えてコントラストを強調している。ギターのカッティングもソリッドになっている。



3. In The Bamboo Grove
 タイトルはもちろんJBの”In the Jungle Groove”からインスパイアされたもの。立ち上がりはネチッこいスロウ・ファンクだけど、終盤に向かうにつれテンポ・アップして、ラストはうまくまとめている。

4. Golden Rough
 ほんとJB'sが好きなんだな、と感心してしまうナンバー。リズムのボトムが思いっきり腰より下で響き、ホーン・セクションとのコンビネーションも絶妙。この辺はリーダーLance Ferguson(G)のセンスによるものだと思う。

5. Black Foot
前2曲からテンポ・アップし、今度はBen Graysonによるハモンドが主役のナンバー。シンプルなミニマル・リズムに的確にフレーズを叩きこむBenのプレイは、地味だけど数多の黒人ファンク・バンドを凌駕するテクニックを発揮している。こちらも恐ろしくコンパクトに、3分ちょっとにまとめている。フェード・アウトしてしまうのが惜しい。

6. Transcend Me
 人力ブロークン・ビーツに乗せて、再びAlice登場。この辺は古き良きジャズ・ファンクだけでなく、Bamboos独自のモダン・ファンク・サウンドを感じさせる。ただ往年のサウンドの再現だけじゃダメなのだ。こういった曲も、バンドを前進させてゆくためには必要である。俺はシンプルなジャズ・ファンクが好きだけどね。

The_Bamboos-Step_It_Up_back_b

7. Tobago Strut
ホーン・セクションが出ずっぱりで活躍するナンバー。ちなみにこの時点でのホーン担当はAnton Delecca(Tenor S), Ross Irwin(Tr)のたった2名。フルートなどブラス系全般をまかなっていたわけだけど、とても2人でやっているとは思えないほどの音の厚みを実感してほしい。

8. Another Day In The Life Of Mr. Jones
 ちょっとセカンド・ラインも入ったオールド・タイプのファンク・チューン。Lanceという人はリーダーでありながら、あまり前に出ない人だけど、ここでもひたすらバッキングに徹し、クレバーなリフや細かなオブリガードを刻んでいる。

9. Crooked Cop
 再びスロウ・ファンク。ファンクと言えば高速カッティングと16ビートの切迫したリズムが持ち味だと先入観を持ってる人にこそ、ぜひ一度聴いてほしいナンバー。これだけリズムのタメがありながら、ファンキーさを出せるバンドは、なかなかいないはず。



10. Eel Oil
 直訳すれば「ウナギ油」。もちろんインストのため、どの辺がウナギなのかは不明。脂っこさはそこそこあるけど、うまくソフィスティケートされているため、クドさは感じない。
 スネア中心の音作り、そして珍しくソロを聴かせるLanceもまた、ここが見せ場と張り切っている。とにかくスネアの音が乾いて軽くて気持ちよく、シングルとしてリリースされたのも頷ける。

11. Voodoo Doll/Album Version
 これまでとはちょっと毛色の違った、どこかセッション的な雰囲気を感じさせるナンバー。比較的カッチリした構成の演奏を見せるBamboosだけど、ここではリラックスして、やや緩めのアンサンブルを見せている。ギターのセカンド・ライン・テイスト、ハイハットの響きがとても印象的。




Tru Thoughts Funk [日本語解説付き国内盤] (BRUFD011)
オムニバス The Quantic Soul Orchestra The Bamboos The Broken Keys Payback Saravah Soul Nostalgia 77 Lizzy Parks Kylie Auldist Spanky Wilson Natural Self Hot 8 Brass Band The Limp Twins TM Juke & The Jack Baker Trio Beta Hector
TRU THOUGHTS / BEAT RECORDS (2010-05-15)
売り上げランキング: 15,183
TRU THOUGHTS 10TH ANNIVERSARYy(3CD Special Edition BOX SET)
The Quantic Soul Orchestra The Nostalgia 77 Kylie Auldist Hot 8 Brass Band Alice Russell TM Juke Bonobo Natural Self Hint Milez Benjiman Me&You Stonephace The Bamboos Azaxx Domu Barakas
TRU THOUGHTS (2009-10-10)
売り上げランキング: 626,068

フレンチ・シャレオツ系ジャズ・ファンク情熱系 - Electro Deluxe 『Play』

folder 地元フランスを中心に活動しているため、いまだ日本ではそれほど話題に上らない、なのに俺的には盛り上がってる現役ジャズ・ファンク+ちょっぴりエレクトロ風味とラップも少しのバンド、Electro Deluxe。今回紹介するのは2010年リリース、3枚目のオリジナル・アルバム。

 どのバンドもそうだけど、デビューから一貫したコンセプトを持って活動していたとしても、ターニング・ポイントが訪れることがある。短命のバンドならともかくとして、それなりにライブの数もこなし、アルバム・リリースも定期的に行なっていたら、メンバーの出入りによって新しい血が導入されたり、また不動のメンバーでも外部活動や嗜好の変化によって、主旨が変わることも多い。
 Electro Deluxeもその例に漏れず、当初はGael Cadoux(key)とThomas Faure(sax)を中心とした、スタンダード・ジャズ+エレクトロorラップというサウンド・コンセプトでスタートした。まだホーン・セクションが正規メンバーじゃなかったため、今ほどファンク臭は少なく、曲によってはまんまアシッド・ジャズっぽくなってしまうという、今とは似つかないスタイルでの活動だったのだ。
 当時はリード楽器がキーボードとサックス1本だったため、サウンドの幅を広げるにも限界があったのと、まだそれほどライブ活動に積極的でなかったため、バラエティを持たせる苦肉の策で、スタジオ・ワークの比重が大きかった。
 
 ただ、それでも地道にコンスタントに活動を継続してゆくと、フランス国内でもそこそこ好評を期すようになり、口コミによってライブ動員も増えてオファーが増えてくる。それに伴って同好の士が集うようになったのか、いつの間にかホーン・セクションが正規メンバーになり、ゲスト・ヴォーカルも増えてきた。あれよあれよと言う暇もなく、いつの間にか大所帯となって、ついには『Electro Deluxe Big Band』と称して、総勢18名でのライブ&アルバム・リリースにまで至った次第。
 無理に背伸びすることなく、地道にバンドの地力をつけてきた結果なのだろう。

36f44d0c

 で、いろいろ乗り越えてきた末にリリースされたこの『Play』では、それまでのアシッド・ジャズ的クラブ・サウンドはすっかり後退し、メインとなるのは重厚なリズム・セクション、それに絡むホーン・セクションの音の壁、そして多彩なゲスト・ヴォーカル陣による、フィジカルなグルーヴである。これまで人員的・予算的に苦肉の策だったエレクトロ風味で間に合わせる必要がなくなり、ほぼ自前の生音で賄えるようになったのだから。

 このころはまだ正式メンバーではなく、あくまでゲスト・ヴォーカルの一人という扱いだったJames Copleyが数曲でプレイしているのだけれど、やはりこの人が一番インパクトが強い、ていうかアクが強い。Ben L'Oncle Soul、Gael Fayeなど、個性的なラッパーを相手取って、また地力の強いバンド・セクションにも一歩も引けを取らず、あの暑苦しい顔・アクションで一際存在感を放っている。
 思えば、このCopleyとの出会いというのが、多分バンドとしてのターニング・ポイントだったのだろう。
 
 アシッド・ジャズのサウンド・フォーマットはもともと、クレヴァーな黒人女性ヴォーカルとの相性が最も良く、Electro Deluxeもデビュー当初はインストor女性ヴォーカル・ナンバーの二本立てをメインとしてやってきたのだけれど、アシッド・ジャズに徹するには、バンドの個性が強すぎたのだろう。女性ヴォーカルを引き立たせるため、演奏陣が必要以上にかしこまってしまったあまり、無難なプレイでお茶を濁してる場面も見受けられる。
 彼らの持ち味はビッグ・バンドでこそ発揮されるものだし、その音の壁に負けないヴォーカルは、シャウト型の女性ではなく、多少テクニック的には難がありながら、熱血バカ的なタイプの方が合うのだろう。狭いスタジオの中でリズム・パターンの打ち込みに精を出したり、ヴォーカルのニュアンスに合わせたトラックの修正など、彼らの性ではない。

b666f5f9

 で、このアルバム、ヴォーカル・ナンバーありラップ・ナンバーありインストありという、2ndまでの流れを引き継いだ構成になっているのだけれど、やはりどうしても注目してしまうのが、Coplayのプレイ&パフォーマンス。
 写真を見てもらえれば一目瞭然だけど、一般的な二枚目ではない。味のある表情といった方がいいかもしれない。で、なんとなく想像できるように、うまく立ち回れるような人ではない。どちらかと言えば胡散臭い感じが漂う、はっきり言って不器用な人である。
 テクニックがないとは言わないけど、そういったテクニカルな面で注目されようとは思っていないはずである。むしろ常にハイパーMAXなテンションで突っ走り、汗だくになり、唾を飛ばし、大ぶりなアクションによって、その膨大なカロリー消費量が観客を魅了してしまう、そういった人である。なぜか知らねど満ち溢れてくる「根拠のない自信」のようなものが、どうにも最初はアクが強くて受け入れづらいのだけれど、いつの間にかクセになってしまって、終いには応援せざるを得なくなってしまう。

 近年のフランスのアーティストとして俺が知ってるのは、せいぜいDaft Punkくらいだけど、多分ほとんどの人は俺と同レベル程度の知識だと思う。フランス出身であるという以外、彼らとの共通点は見いだせないのだけれど、そのフランス繋がりによるものなのか、サウンドからジャケットからフォト・セッションからPVから漂うシャレオツ感はハンパないものがある。やはりフランス人、頑固で排他的な性格だけれど、センスだけは相変わらずキレッキレである。


プレイ
プレイ
posted with amazlet at 16.02.07
エレクトロ・デラックス Ben l’Oncle Soul 20Syl from. Hocus Pocus ベン・ロンクル・ソウル ヴァンシール from. ホーカスポーカス
Pヴァイン・レコード (2010-10-06)
売り上げランキング: 175,116




01.Play 

02.Please Don't Give Up 
 ジャジーでニュー・ソウルの匂いさえ感じさせるメイン・ヴォーカルは、フランスのモータウンからデビューしたBen L'Oncle Soulによるもの。当時はまだデビュー前だったけど、すでに充分な存在感を放っている。
 やはり演奏が最高。ヴォーカルに合わせたジャジー・ヒップホップの流れなのだけれど、シンプルなバンド・セットながら、グルーヴ感が凄い。



03.Black And Bitter 
 ここで我らがCopley登場。ちょっとアイドリング気味なしっとり大人しめのナンバー。この時期のサウンドは、まだジャズ8:エレクトロ2くらいの配分で構成されているため、エフェクトの部分がヴォーカルのダイナミズムをちょっと減じている。いやカッコイイのだけれど、彼にはもっとメチャクチャに歌い上げてほしい。

04.California 

05. Between The Lines 
 このアルバムのハイライト的楽曲。こちらもBen L'Oncle Soul参加だけど、同じくフランスを代表するヒップホップ・バンドHocus Pocus の20syl(ヴァンシールと読むらしい)によるラップが前面に押し出されている。こちらもElectro Deluxe同様、生音でのライブが評判を呼んでおり、互いの共通点は多い。
 ネチッこいBenのヴォーカルは、正統なニュー・ソウルの流れを汲んだスタイルに徹しており、攻撃的なラップとジャズとファンクを絶妙にブレンドしたサウンドとのギャップが心地よい。ライブだとCopleyが歌っているのだけれど、会場が一体となるのがわかる、ほんと盛り上がる曲。



06.Let's Go To Work 
 ラップ・パートはフランスのヒップホップ・バンドMilk Coffee and SugarのGael Fayeという若手。Copleyによるヴォーカル・パートは英語なのだけれど、ラップはフランス語なので、もうさっぱりわからん。でもこの何ともミスマッチ感は、これはこれでいい感じ。
 導入部から中盤まではごく普通の良質なジャズ・ファンクなのだけれど、終盤になるにつれて、どうにもプログレ的な混沌とした展開になるのが、いつもながらスリリング。



07.Mousse 

08.Where Is The Love 
 ちょっとくぐもったスモーキーなヴォーカルを聴かせるBenに合わせて、気だるい感じのネチッこいスロー・ファンクをプレイするバンドがいい仕事。
 しかしこのBen、ほんとこのアルバムでは大活躍しており、曲調に合わせて様々な表情を使い分けている。ソロ作品を動画で見てみたのだけれど、レコード会社のせいなのか、どうにもポップ・ソウル的な売り方なので、ちょっともったいない。こっちの路線の方がずっとクールなのにな。ま、でも売れないけどね。

09.Old Stuff 

4eca131f

10.Fine 
 後にレコーディングの常連となるNyr Raymondをフィーチャーした、ジャズ寄りのナンバー。どことなく秋のフランスの散歩道を連想させる。とても映画的な情景を喚起させる、地味だけれどイマジネーションの広がりやすい曲である。

11.Talking About Good Love... 
 もはやライブでは定番のアッパー・チューン。疾走感に溢れながらタメがあり、グルーヴ感タップリというのは、ジャズ・ファンク系のナンバーでは貴重。こちらも前曲同様、Nyrをフィーチャー。日本ではほとんど知られてないし、俺も詳しくはほとんど知らないけど、味のあるシンガーである。



12....Talking About Good Love 
 ややSlyっぽさも感じさせる、シンプルなバッキング、凝ったリズムの小品。音がスカスカながらもファンクっぽさを感じさせるのは、どことなくZappを連想させる。タイトルは同じながら、まったく対照的な印象を感じさせる2曲。

13.Chasseur de tetes 

14.Sorry 
 12.の空間を活かしたファンクと、10.のメロウ・ジャズとのいいとこ取りで作られたラスト・ナンバー。ファンクにしてはお行儀よく聴こえてしまうのは、フランス訛りの英語だからと言えるし、ジャズにしてはエモーショナルさがちょっと、と言えるのは、こちらもやはり上品さが漂うため。




 なので、次回作で大きくCopleyをフィーチャーしているのは、そういった理由もあるのだろう。あそこまで豪快でわかりやすいダイナミズムがないと、ライブ映えがしない。
 演奏のニュアンスを聴かせるのではなく、もっと奥底から湧き出る熱い想いをたぎらせて、無様にヨレヨレになりながら歌い踊りプレイする、そんな姿が人の心を動かし、そして笑い涙するのだ。

 オフィシャル・サイトでツアー予定を見ると、4月にチョロっとスイスを廻り、またずぅっとフランスをくまなく廻り、でちょっとドイツに顔を出した後、またフランスのドサ廻り、という相変わらずのマイペース。何しろ19人の大所帯だけあって、そんな遠くへも行けないのだろう。取りあえずバンドは維持できているようなので、存続してるうちは、まだ日本に来てくれる望みもあるものだ。
 いやほんと、そろそろ来ねぇかな。


Home (Deluxe Version)
Home (Deluxe Version)
posted with amazlet at 16.02.19
Stardown (2014-09-15)
売り上げランキング: 58,490
プレイ
プレイ
posted with amazlet at 16.02.19
エレクトロ・デラックス Ben l’Oncle Soul 20Syl from. Hocus Pocus ベン・ロンクル・ソウル ヴァンシール from. ホーカスポーカス
Pヴァイン・レコード (2010-10-06)
売り上げランキング: 250,944

フランス人なのに暑苦しい男、James Copley - Electro Deluxe 『Home』

folder ここ一年くらい、俺的には結構盛り上がっているにもかかわらず、日本では知名度も人気的にも悲劇的なくらいイマイチなフランス産ジャズ・ファンク・バンド、またまたElectro Deluxeのご紹介。
 
 フランス国内ではそこそこ盛り上がっているらしく、twitterやfacebookをチェックしていると、月2~3度くらいだけど、ライブの予定が半年先くらいまで開示されており、切れ目なくオファーが続いているのがわかる。
 あだ、その人気がユーロ圏内から飛び越えることが難しいらしく、現状ではライブもほぼフランス国内に限定されており、海外公演は至難の業だという状況が続いている。それでも草の根的に世界中に広がりつつあるファンたちに向けて、また更なる拡大を目指して、彼らもいろいろ策を講じている。

 海外のバンドがライブ・シューティングを行ない、Youtubeで発信してファンの拡大を狙うことは、近年どのバンドも力を入れていることである。彼らもまた例外でなく、特に今年に入ってからは更新の頻度が多くなっており、現在もほぼ月一くらいのペースで動画をアップしている。
 当初は臨場感あふれるスタジオ・セッション中心で、シンプルかつ低予算のハンドメイド、手作り感満載の作りだった。ただ、このアルバムがリリースされた前後になると、どうも予算が増えたのか、本格的なスタジオ・セットを組んで観客を入れてライブを行なったり、郊外の一軒家へロケに出たりと、曲ごとに趣向を凝らした作りになっている。最近ではスタジオ・セットを組んで寸劇仕立て、3人のバック・ダンサーに翻弄されておどけるヴォーカルのJames Copleyが、ちょっぴりカワイイ(とはいっても、愛想の良いMorrissey似のオヤジが蝶ネクタイにタキシード姿で溌剌と動く様をカワイイと思えるかどうかは、あなた次第)。

0fc7a439

 俺はどうしてこんなにこのバンドが好きなのだろう?
 何が魅力的なのか、なぜそれほど俺の心を魅了するのか-、整理するため、ちょっと箇条書きにしてみた。
① ジャズやファンク成分の強い無国籍サウンド
② ロックの影が薄い
③ ファンク要素の強いリズムと、ジャズ・テイストのホーン・セクションとの絶妙な組み合わせ
④ ルックスはそれほど…、というかビジュアル面で勝負してない、一般的なイケメンは数少ない
 以上、いくつか羅列してみると…、なんだ、ただのJoe Jacksonじゃねぇか。
 
 人の趣味嗜好はそれぞれだけど、俺という人間は、この手のサウンドにはほぼ無条件で反応してしまうらしい。これまであまり意識したことはなかったけど、それくらいJoe Jacksonと共通点が多かった。
 これらの条件に当てはまるアーティストとして、他にSteely Danがいる。彼らも基本、個々のキャラクターを前面に押し出したタイプじゃないよな、そういえば。Donald Fagenがソロ・デビュー間もない頃、あの『Nightfly』のジャケットでシブい大人のフェロモンを放出していた時期もあったけど、それももう昔の話、今じゃただの偏屈なオヤジである。片割れのWalter Beckerは相変わらず宮崎駿そっくりだし。
 ④の条件に絞ると、他に大滝詠一やBeautiful Southも該当するのだけど、掘り下げるとキリがないのでやめておこう。

hqdefault

 バンド名の由来通り、デビューと2枚目くらいまではエレクトロ成分を若干まぶしたビートと、ジャズ・テイストな生音との融合、それにごくわずかのヒップホップ風味も入って、とっ散らかってごちゃ混ぜなサウンドになっており、その未整理加減こそが一部のジャズ・ファンク好きには早くから注目を浴びていたのだけど、あくまで狭いジャズ・ファンク村での内輪の話題であり、それが外部に大きく広がるほどではなかった。
 バンドとしての方針というか、サウンドのコンセプトがイマイチ曖昧だったのだ。多くの大衆に届けるには、もっとわかりやすい言語が必要だ。
 しかし、バンド結成から間もなかったため、何をやり始めるにもすべてが手探りだ。確固としたコンセプトの立案にはまだ時間が必要だったし、もしあったとしても予算も時間も、そしてメンバーそれぞれのスキルも充分でなかったのだろう。
 
 地道な活動を続けるうち、それなりにではあるけど知名度も広がり、それなりにライブのオファーも増え、今までならシンセ機材で出していた音も生音、特にホーン・セクションをレコーディングに使えるようになった、さらに予算が増えるとパートタイムではあるけど、ライブ・メンバーとして常駐できるようになった、最初は予算の関係上、苦肉の策だったループ・ドラムやプリセット音も、わざわざ使う必要がなくなってきた。理想的なバンドとしての成長である。
 ていうか、もともとこんな感じのサウンドを志向していたのか、それとも行き着いた結果なのかはわからないけど、バンドとしてはいい感じで行ってるんじゃないかと思う。


Home
Home
posted with amazlet at 16.02.07
Electro Deluxe
Imports (2014-03-18)
売り上げランキング: 532,639



1 Devil
 パーティ・バンドっぽいオープニング。ホーン・セクションもベースも躍る感じでプレイしており楽しそう。ビデオは郊外の誰かの一軒家の別荘?っぽい設定。いつものステージ・スタイルではなく、格好も非常にラフ。でもどんな時でもCopleyだけはただ一人、シャツのボタンをキッチリ上まで留めている。

 
 
2 Showdown
 Frank Sinatraっぽいジャズ・テイストの強い曲。歌だけ聴いてるとまったりっぽいが、やはりこのバンドのリズムが跳ねる跳ねる。
 
3 Free Yourself
 
4 Twist Her
 1.と同じ日に収録されたテイクもあるが、小芝居仕立てで作られたビデオ・クリップの方が面白い。フランスの大衆演劇場を模したセットの中で、先ほど挙げたCopleyを始めとするバンド・メンバーの熱演ぶりが微笑ましい。バック・ダンサーの中国雑技団張りの演技も見もの。

 
 
5 The Ring
 ややStax系のリズム&ブルースを思い起こさせる、彼らにしては珍しいタイプの曲。ベタっぽいバラードだが、情感たっぷりに、しかもドライに歌い上げるCopleyがカッコよく見える。あまりべたつかない歌い方はこの人の強みだろう。
 
6 G-Force
 
7 Smoke
 ビデオでは若手ラッパーBeat Beat Assailantとコラボ。アルバム・バージョンではCopleyのソロだが、断然ビデオの方が必見。こちらは大きめのスタジオでのセッションとなっており、よってホーン・セクションもフルで入っており、Electro Deluxe Big Band名義。大人数で盛り上がるCopleyと対照的に終始クールな態度のAssailantとの対比が面白い。
 こういった時、オヤジって盛り上がるんだよな。

 
 
8 Ground
 
9 Turkey
10 Blacktop River
 ちょっとレゲエ調の、これも今までなかったタイプの曲。やはりホーンが常駐するようになるといろいろアイデアが浮かんでくるのか、まぁアルバムにバリエーションを持たせるためには、こういった曲も必要なのだろう。

DSC_1668 (1)

11 Rise Up
 ライブでは情感たっぷりに歌い上げるバラードから一転、フル・バンドで盛り上がるパターンだけど、アルバム・ヴァージョンは最初っから飛ばしまくるブラス・ファンク。そんな音の壁にも負けない、暑苦しいまでのCopleyの個性あふれるヴォーカル。
 わかった、日本では彼のようなキャラクターは濃すぎるんだよな、きっと。イギリスじゃ国民的大歌手のTom Jonesだって、日本じゃさっぱりだもの。もう少し薄めればちょうどいいのかもしれないけど、そうなるとバンドの持ち味がかなり失われてしまうことになる。難しいところだ。
 
12 Comin' Home
 Otis Reddingに聴こえる瞬間もあるくらい、珍しく素直なソウル・バラード。
 あまり語られることがないのだけど、ドラム担当のArnaud Renavilleという人、この手のバンドにしてはドラムがズシッと重く響く。ファンク系バンドの多くはノリとリズム感を売りにしているため、ハイハットももっと軽く響く場合が多いのだが、彼の場合、このようなしっとりしたスロー・ナンバーでも重厚感がある。
 ビデオではCopleyが時々変顔で唸ったりもしているが、基本シリアスに真面目に歌っているのが、どことなく滑稽。

 




 何しろ米米クラブにも引けを取らないくらいの大所帯バンドのため、なかなか小回りが利かず、海外公演もそんなにできない現状が続いている。
 どうにか世界的な企業CMなんかで取り上げてくれればいいのだけれど、何しろ他国を平気で見下すフランス人だけあって、それもまた難しいだろう。変な方向で売れてしまってポップになり過ぎるのも、ファンとしては複雑なところ。
 やっぱりこのままマイペースで、時々ビデオ・レターみたいな形で元気な姿を見せてくれるのが一番無難なのでは、という結論に落ち着いてしまう。
 まぁ、元気でやっててくれりゃいいか。



Home
Home
posted with amazlet at 16.02.07
Electro Deluxe
Imports (2015-09-11)
売り上げランキング: 322,574
Live in Paris
Live in Paris
posted with amazlet at 16.02.19
Electro Deluxe
Imports (2014-03-18)
売り上げランキング: 292,211
サイト内検索はこちら。

カテゴリ
アクセス
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

北海道の中途半端な田舎に住むアラフィフ男。不定期で音楽ブログ『俺の好きなアルバムたち』更新中。今年は久しぶりに古本屋めぐりにハマってるところ。
最新コメント