好きなアルバムを自分勝手にダラダラ語る、そんなユルいコンセプトのブログです。

#Jazz Funk

世界のジャズ・ファンク・バンド巡り:UK編 - New Mastersounds 『Made for Pleasure』

folder 2015年リリース、今の時点で8枚目のレイテスト・オリジナル・アルバム。2001年デビューよりコンスタントな活動ぶりで、日本ではBaker Brothersと双璧を誇る人気のジャズ・ファンク・バンドという位置付け。前回のBakerのレビューでも書いたけど、そもそもセールス規模が小さいので、いちおう大物扱いではあるけれど、実売数的には大したことはない。その辺がイマイチ知られていない要因である。
 ほぼ定期的に何かしらのアクションがある安定した活動のため、日本でもそれなりに人気が高く、独自編集盤もリリースされているくらいである。この手のバンドにしてはアルバム中心のリリースとなっているのも、シングルの入手が難しい日本においては好条件である。

 近年のアーティストの世界的な収支傾向として、従来の音源販売にとって代わり、ライブ動員・グッズでの収益が主流になっている。積極的なメディア露出よりもむしろ、地道な草の根的ロードでも食っていけるようになったことは、本来喜ばしい傾向なのだけど、生演奏主体のバンドにとっては痛しかゆしでもある。
 テクノ/レイブ系のEDMスタイルならば、トラックメイカーともう1人、賑やかし担当がいればそれで済むけど、一般的なオーソドックス・スタイルのバンドでは、それなりの頭数が必要になる。ましてやジャズ・ファンクのバンドだと、サウンドの性格上、ホーン・セクションを常設するケースも多く、そうなると10人前後の大所帯になってしまう。当然、ギャラを各自等分してゆくと、微々たる分け前になってしまう。
 ジャンルの性格上、ロック系と比べると大規模な動員は期待できないので、一般的なロック・バンドと比べるとギャラは少なくなる。だからと言って、メンバーをリストラしてサウンドを弱体化させてしまうのも、本末転倒である。
 結局は収益の分母を増やすしか方法がないので、単純にライブの本数を増やすのが一番なのだけど、そうそうスケジュールが埋まるわけでもない。各メンバーもまた、趣味と実益を兼ねた他バンドへのヘルプもあって、なかなか全員顔をそろえることができない。収入を補填するための副業が忙しすぎて、メインの本業に支障をきたすのは、実はよくあること。
 どうにか都合をつけて短期ツアーくらいは行なうことができても、何かと手間と経費のかかるレコーディングにまで時間を割くのは、もっと難しい。現代ジャズ・ファンクのリリース・スケジュールがシングル中心になっているのは、こういった理由もある。

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 その点、New Mastersoundsはホーン・セクションなしの4人編成、ほぼベーシックなバンド編成のみでできるオーソドックスなサウンドが特徴である。少数精鋭なので多国間の移動も最小限で済み、それだけ取り分も多くなる。バンドのネーム・バリューも安定しているので、オファーもそこそこ途切れずにいる。定期的なライブ開催によってブランクが空かない分だけ、アンサンブルも安定している。
 コンパクトで小回りが利く。なんか軽自動車のCMみたいだな。

 Eddie Roberts (G)
 Simon Allen (D)
 Pete Shand (B)
 Joe Tatton (Key)
 の4名が基本メンバーで、レコーディング時にはホーン・セクションを呼んだりヴォーカリストをフィーチャーしてるけど、大体はこのメンツで固定している。コンスタントな活動を継続してる分だけ、そんなに時間的な余裕もないはずなのに、リーダーのEddieは合い間を縫ってサイド・プロジェクトに勤しみ、こちらでも同じようなペースでライブだレコーディングだと活動している。それが本体の活動を圧迫することなく、しかもそれぞれで得た知識・経験やスキルを双方にフィードバックしているので、気持ち悪いくらいの好循環となっている。
 ここまで行っちゃうと、ワーカホリックじゃないんだよな。ただただ、好きでやってるだけなんだよ。

 このジャンルの中ではメジャー・クラスに位置するNew Mastersounds、いわゆるニッチなところを追求しているのではなく、極めてオーソドックス、ファンクというよりはジャズ、特にNu Jazzのテイストが強い。もう一方の雄であるBaker Brothersはロックやファンクのミクスチュアに加え、ヒップホップのイディオムも導入している分だけ、クラブ・シーンには滅法強い。その辺で彼らとはうまく棲み分けができているのだけど、逆に言えばクセの少ないマイルドな音楽性が仇となる場合もある。
 このジャンルのビギナーならともかくとして、少し聴く幅が広がってゆくと、ブルースやファンクなどの「濃い」味を知ってしまい、ちょっと食い足りなくなってしまうのも事実。限りなく4ビートに近づくとラウンジ・ジャズと見分けがつかなくなるし、ヴォーカル・トラックになると、まんまアシッド・ジャズである。
 そういったクセのなさが物足りなく感じる人もいるだろうけど、右も左もわからないビギナーにとっては、ある意味敷居の高い「ジャズ・ファンク」という音楽にスムーズに入って行けるサウンドがここにある。

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 「Live Music Archive」という海外サイトがあり、そこではアメリカを中心としたプロ/アマ問わず、ほとんどフルセットのライブ音源がアップロードされている。無名アーティストの音源なら珍しくないけど、このサイトは日本でも名前の知られているメジャーどころも積極的に参加している点が強み。怪しげな会員制海外トレント・サイトが一時ブームとなり、無許可・流出音源の違法アップロードが盛んに行なわれていた時期があったけど、ここではすべてアーティスト公認となっている。なので、オーディエンス録音によるブートまがいの音質のモノは少なく、きちんとミックスされたサウンドボード音源が主体となっている。商品として販売できるレベルの音源が、堂々とダウンロードできる。サーバー維持のため、たまにDonateするのが良心だけどね。
 90年代のジャム・バンド隆盛によって自然発生的にできたサイトのため、多くは有名無名のジャム・バンドが多勢を占めている。ていうか、「アメリカにバンドって、こんなにいるのかよっ」と突っ込んでしまうくらい膨大な量なので、アーティスト名だけ眺めていても時間が過ぎてしまうくらいである。
 有名どころでは、ジャム・バンドといえばこの人たちがルーツのGrateful Dead。60年代からカセットテープのコピー音源が全世界を飛び交っていた伝説のバンドのアップ数、なんと10000超‼。絶対、一生かけても聴き通せないほどの物量である。しかも、これに各メンバーのソロ・プロジェクトも含めると…。まぁいいや、俺は多分聴かないし。考えるだけで胸焼けしそう。
 Disco BiscuitsやString Cheese Incidentなど、俺でも知ってるアーティストが1000を超えるライブ音源をアップしてくれているのだから、このジャンルが好きな人にとっては毎日がパラダイスである。ジャム・バンド以外にも、Smashing PumpkinsやJack Johnson、日本でもジェイク・シマブクロが音源アップしてるので、ぜひ一度覗いてみてほしい。
 で、New Mastersoundsもここに参戦しており、2016年4月現在の登録数は291。 Deadはもう別格なのでレジェンドとして、300弱というのは中堅どころといった具合。しかも現役バリバリのライブ・バンドのため、その数はこれからも増えてゆくこと必至。ほとんどがフルセットのため、全部聴くとなるととんでもない分量になる。しかも、そのアーカイヴは現在もままだ増え続けている。

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 物理メディアを収益の柱とするのではなく、ライブ音源の拡散によって評判を集め、さらにライブの集客を増やしてゆくというビジネスモデルは、前述したDeadによって確立されたものである。小まめなロードに出ると、優に3年はかかると言われている国土の広さが、彼らのような活動スタイルを成立させていると言ってよい。
 こうした音源<ライブ重視の流れは全世界的なものになっている。ここまでは音源のみの話題だったけど、海外のライブではでスマホの持ち込み・撮影が当たり前になっており、HDクラスの映像がほぼリアルタイムで観ることができる時代になってきている。昔、画質の粗いブートVHSに高い金を出して買った覚えもあるけど、今ではそんな話も聴かなくなった。
 今のところ「Live Music Archive」、アメリカ発ということもあって、どうしてもジャム・バンドの音源に偏りがちだけど、この流れがEUにも広がってくれれば、もっと多様なジャンルを楽しむことも可能になる。そりゃもちろん、いろいろ条件が整備されないと難しいのだろうけど、そんな諸々がクリアになったら、ジャズ・ファンクという些末なジャンルの認知も、もうちょっと深まるんじゃないかと思われる。
 日本じゃ無理だろうな、JASRAC強すぎるし、レコード会社のしがらみキツそうだし。


Made for Pleasure
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1. Made For Pleasure
 オープニングを飾る、オーソドックスなジャジー・インスト。ジャズ・ファンクのオープニングと言えば、この手のインストが定番となっている。ヴォーカル・ナンバーで始まることはまずない。ここがバンドのアイデンティティを発揮する重要なポジションになっている。
 終盤の変拍子、こういうのってそんなにリハーサルもせず、空気感一発なんだろうな。そういったことが手軽にできるほどのテクニックの持ち主揃いだということ。

2. High & Wide
 サンフランシスコを拠点に活動するWest Coast Horns参加による、ブラスを中心に据えたインスト・ナンバー。といってもメンバー2人のサックス&トランペットのコンビなのだけど、掛け合いも息の合わせ方もピッタリ。ライブで鍛えられた人たちなので、音の厚みも充分表現されている。たった2人なのにね。

3. Enough Is Enough
 今回の歌姫 Charly Lowry はネイティヴ・アメリカンのシンガー・ソングライターで、自らギター片手に歌うショットもちらほらネットに転がっている。ディーヴァというにはシュッとしたシャープな顔立ちの女性だけど、そのヴォーカライズはなかなかパワフル。
 彼女に引っ張られたのか、バンドもホーン・セクションも、いつもはないスタックス系のオールド・ソウル・スタイルのプレイを披露。バンドに特定のクセがなくテクニックも折り紙付きということは、ほんとレンジの広いジャンルを網羅できるということを教えてくれるナンバー。公式サイトに載ってるEddieの解説によると、MetersをバックにしたLee Dorseyを狙った、とのこと。Lee Dorseyはちゃんと聴いたことないけど、Metersは納得。



4. Fancy
 2014年にリリースされた、オーストラリア出身の女性ラッパーIggy Azaleaによる、全米7週連続1位を獲得した大ヒット・ナンバーのカバー。日本で言えば、Indigo jam Unitが「恋するフォーチュン・クッキー」をカバーするようなもの。なんだ、そりゃ。でも、ジャズ・ファンクでは時々、敢えてこういったベタなナンバーを捻った形でカバーすることがある。Speedometerも「Happy」カバーしてたしね。
アッパーな原曲とは一線を画すために、ここではEddieのギターをメインとしたオーセンティック・スタイル、しかもダブになってる。MCのSpellbinderはデンバー在住のラスタ・マン。どっから見つけてくるんだ、こんな男。

5. Cigar Time
 Eddieいわく、Grant Greenをモチーフとしたソウル・ジャズを狙った、ということで、意図はしっかり表現されている。中盤のハモンドもイイ感じのラウンジ・ジャズに仕上がっている。タイトルといい、大人の聴く音楽。若いうちはムリして聴いてたけど、こういうのがスンナリ受け入れられちゃうこと、人はそれを「大人になった」というのだろう。

6. Joy
 ストレートなオールド・スタイルのソウル・ナンバー。Ann Peeblesっぽく仕上げたということだけど、こちらも見事ハマっている。
 多くのジャズ・ファンク・バンドの特徴として、そのジャンルの性質上、スネアの音がやたら強調されることによって、逆にヴォーカル・ナンバーだと互いの良さが損なわれてしまうケースが多々あるのだけれど、彼ら、ていうかSimonは俺が俺がと前に出るタイプではないので、歌姫の良さをうまく引き出している。バランスって大事だよな。



7. Sitting On My Knees
 5.同様、ギター・メインのインストだけど、時々アクセントでエフェクトを利かせた音を鳴らしているので、ちょっぴりハード目。テンポも速くて気合が入りまくっている。あらゆる技とテクニックを入れまくっているので、ギター・インストでも聴いてて飽きないのは、俺的にZappaと肩を並べてほど。

8. Let’s Do Another
 Eddie抜き、ほぼリズム隊によるインスト・ナンバー。ライブ・セットで言えば幕間的なポジションの箸休めサウンド。オーディエンスも一旦休憩といったところか。

9. Pho Baby
 Eddie再び登場。こういったスタイルのナンバーを聴いていると、この人はやっぱり根っこがブルースなんだなぁ、ということがありありとわかる。
 このバンド、一応イギリスのバンドだけど、Eddieだけがアメリカ人という構成になっている。そんな彼のヤンキー体質が、マイルドに振れ過ぎる傾向にあるUK勢のストッパーになってるんじゃないかと思われる。

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10. Just Gotta Run
 なので、こういったストレートなソウル・ナンバーも無理やり感が少なく、しっかりグルーヴ感を出すことができる。インスパイアされたのがBettye LaVetteという大御所ソウル・シンガー。俺も知らなかった人だけど、実際、Youtubeで観てみたところ、パワフルなオバちゃん。まだ若いCharlyがその域に達するまでは先のことだけど、そのソウルは充分継承されている。

11. Tranquilo
 ラストはマッタリとしたジャジー・インスト。エピローグ的なスロー・チューンは、夢中になって観た映画のタイトルバックの如く、至福の余韻を味わわせてくれる。
 
 もう帰って寝る時間だ。
 でも、ちょっとどこかで一杯、
 昂りを鎮めてからにしようか。




Re: Mixed
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やっとアルバム2枚目のMocambo達 - Mighty Mocambos 『Showdawn』

folder 今年に入ってからリリースされた、Mocamboレーベル主宰のバンドMighty Mocambos、単独名義では2枚目のアルバム。これまでは地元EUを拠点としたライブやらサポートやら、日本からは動向が掴みづらい活動が多かったのけど、昨年あたりからLee FieldsやAfrica Bambaataaらレジェンドとのコラボ・シングルが続々リリースされた。それがアルバム1枚分くらい溜まったので、今回こういった形でまとめられた次第。
 特にBambaataaとの共演が話題になったけど、その関心はむしろ「まだ生きてたの?」という反応が多かったのが正直なところ。wikiで調べてみると、決して引退してたわけではなく、断続的ながらもコンスタントな活動ペースなのだけど、ヒップホップ系には今でもそんなに興味がない俺の認識不足。日本ではあまり情報が入って来ないのと、どうしてもヒップホップ創世期に活躍してたイメージが強いので、それ以降の活動状況が見えづらいのだ。
 とはいえ業界内においては最古参の部類に入るレジェンド扱い、サイクルの早いこのジャンルにおいては別格扱いなのだけど、まだまだ日和ったりせず現役感が漂っているのは、やはりフロンティアならではの証。

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 で、Mighty Mocambos、主要メンバーは
 Sascha Weise(ds)
 Victor Kohn(b)
 Sebastian Nagel(g)
 Bjorn Wagner(g)
 Bernhard Hummer(bs、as)
 Sebastian Drescher(tp、flh)
 Philip Puschel(tp、flh)
 Ben Greenslade-Stanton(tb)
 Pascal Dreckmann(per)
 Hank Dettweiler(key)
 という10名による布陣。 この手のバンドによくあるように、メイン以外のバンドを掛け持ちでやってる者も多く、特にギターのSebastian とチューバのBen は複数のバンドにもよく顔を出しているようだけど、それを全部追ってゆくのはとても不可能。その他にもMocambo レーベル所属アーティストのレコーディングにもたびたび参加しているおり、その辺はさすが生真面目なドイツ民族、精力的な活動ぶりである。
 そりゃ自分たちのレコーディングも落ち着いてできないわけで。

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 ドイツのアーティストで俺が連想するのがKraftwerkとTangerine Dreamくらい。いずれも60年代から活躍しているクラウト・ロックの流れのアーティストである。Bonny Mもドイツだったのは今回初めて知った。まぁ聴いたことないけど。あと80年代でみると”ロックバルーンは99”でビルボードで唯一ドイツ語でチャート・トップに立ったNENAがいる。
 そんなわけで、ほんと近年のドイツのポピュラー音楽についてはさっぱりわからないというのは、多分俺だけじゃないはず。大抵の洋楽ファンも、ほとんど似たような知識しかないんじゃないかと思う。
 あとはせいぜいScorpions。これも70年代だ。

 なので、いま現在のドイツのヒット・チャートがどうなってるのか、主にYoutubeを回って調べてみた。ほんとつい最近のチャートなので、Adeleが1位というのは鉄板として、続く国内アーティストはどれもダンス系ばかり。EDMやオートチューンが中心のビート・メインのサウンドが人気を博しているのは、何もドイツが特別なわけじゃなく、今世紀に入ってからの世界的な流れの主流。で、海外組といえば、他国と変わらずEnya やColdplay が上位に入っており、ざっくり見ると国内/海外が半々といった印象。こうした割合というのも世界的にほぼ変わらず、海外の新しい音楽が輸入されることによって国内アーティストのモチベーションも高まり、相乗効果によって活性化が計られる。
 そう考えると、すっかりガラパゴス化してしまった日本の異常さが際立っている。別に過度な情報統制がされてるわけでもないのに、欲しい音楽は自ら能動的に動かないと見つけることができない。

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 そういった音楽市場のため、どう好意的に見ても彼らのような音楽がバカ売れする状況ではないのだけれど、ドイツを含むEU 圏というのは人の行き来がしやすい分、日本と比べてニッチなニーズのバンドが活動しやすい利点がある。さすがにアメリカのマーケットには及ばないけど、何しろ国の数が多いので、各国単体の市場を集めると、どうにか食って行けるくらいの稼ぎにはなる。
 特にライブ・シーンにおいて彼らのような生演奏主体のバンドは、ビジュアル的には地味だけど、大所帯でのグルーヴィーなセッションは観客のウケも良くフェス映えするので、常に一定の需要がある。各国の大小フェスを順繰りに回って、さらにそれに合わせて会場周辺のクラブを回っていると、それだけで夏のツアーは成立してしまう。
 なので、彼らの夏はあっという間に過ぎてゆく。

 そんな風に忙しいにもかかわらず、可能な限りあちこちに顔を出す世話焼きの彼ら、おかげで自分たちの活動にまでなかなか手が回らず、リーダー・アルバムとしてはこれがやっと2枚目。レーベル運営だって決して順風満帆ではないはずで、細々した事で忙しいのだろう。
 多忙のおかげでなかなかバンド活動に専念できないんだろうなと思っていたのだけど、なんと彼ら、バンド本体とは別名義でBacao Rhythm & Steel Bandというカリビアン風味のファンク・バンドも並行して行なっている。半分シャレでやっているようなものだけど、こちらはこちらでマジメにやってるらしく、コンスタントにシングルもリリースしている。本業だって手が足らないはずなのに、何やってんだと言いたくもなるけど、こういったのは好きでやってることなので、あまり真面目に怒っちゃいけない。ジャズ・ファンク・バンドがいろいろ仕事を掛け持ちしてるのは、至極普通のことである。

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 残業や休日出勤とはまったく無縁であるはずのゲルマン民族がこれだけ精力的なのは、仕事だと思っていないからなのだろう。どれほど少ない観客の前でも全力で演奏したり、連日レコーディングだセッションだと駆けずり回っていられるのは、好きでやってることだからであって、ビジネスは的には二の次と考えているフシがある。
 もちろんレーベルだって慈善事業じゃないから、採算合わせに事務方がいろいろ頭を巡らせているのだろうけど、まぁスケベ心が前面に出過ぎない程度にがんばってほしい。

 なので彼等、日本に行く暇などない。EU圏内での活動で手いっぱいである。


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01. Road To Earth (With Peter Thomas)
 良くありがちな名前のPeter Thomas、調べてみるとドイツ映画音楽界では伝説級のアレンジャー/コンポーザーで今年でなんと御年90歳。そんな大御所がチンピラ・ファンク・バンドとのコラボを快諾するとは、なかなか懐の深いお方。日本で言えば服部克久がゲスの極み乙女とコラボするようなもので、そのあり得なさがわかっていただけると思う。
 妖しい60年代のSFかスパイ映画のようなオーケストレーションをバックに、いつも通り通常営業のMocambo達。このミスマッチ感を狙ってくるとは、なかなかの余裕。

02. It's The Music (With Afrika Bambaataa, Charlie Funk, Hektek & Deejay Snoop)
 このアルバム最大の話題作がこれ。Bambaataa率いるZulu Nation一派が参加して、見事にMocambo達を自在に操っている。こういう人力ヒップホップって、近年のビッグビート一色になっちゃったラップ界よりも俺は馴染みやすくて好きなのだけど、あまりやってくれる人たちがいないのが現状。



03. In The Dark (With Nichola Richards)
 イギリスの新人シンガーらしいけど、詳しい情報があまりない。Vicki Andersonあたりが歌ってそうなシスター・ファンクなナンバーだけど、そこまでダイナマイト・ヴォーカルといった感じではなく、このアクの少なさが逆にバンドとの親和性を高めている。でも、ソロだとちょっと個性が薄いのかな。俺的にはそのサッパリ感も好きなのだけど。

04. The Spell Of Ra-Orkon
 今回はインストとヴォーカル・トラックを交互に挟んだ曲構成になっており、こちらはインスト・ファンク。アーシーなギターの響きとハモンドとの絡みが絶妙。ホーン・セクションにもきちんと見せ場を作っているのだけど、これをたった3分に凝縮している見事さ。これがライブだと、延々続けるんだろうな。

05. Political Power (With Afrika Bambaataa, Charlie Funk & Donald D)
 再びBambaataa一派登場。タイトルからもわかるように、結構メッセージ性の強いナンバーで、これはMocamboとZulu Nationとのガチのぶつかり合い。どちらも引かず音でのバトル振りは手に汗握ってしまう迫力。ちょっと大げさだけど、そのくらいスリリング。かつ勝手に腰が動いてしまうダンス・チューン。

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06. Drifting Stars
 激しい攻防の後はひと休み、スロー・ファンクでペース・ダウン。レコードではここでA面終了。

07. Not Get Caught (With DeRobert)
 アメリカはテネシー州を拠点として活動するディープ・ソウル・シンガーをフィーチャー。洗練さとは無縁なファンキー・ヴォーカルはMocamboとは高いシンクロ率。このまま40年前のStaxのレコーディング・スタジオに連れていったら、とんでもない傑作が仕上がったんじゃないかと思う。このアルバムの中では、Mocambo的に一番相性がいいんじゃないかと思う。



08. Locked & Loaded
 
09. Catfight
 インスト・ファンクが2曲続く。特にこの09ではあのマルチ・プレイヤーShawn Leeが参加しており、摩訶不思議なエフェクトが飛び交う泥臭いスペース・ファンクを披露。これまでとちょっと毛色の違うアーティストとのコラボは、バンドとしての度量の深さを感じさせる。

10. Hot Stuff (With Afrika Bambaataa, Charlie Funk & Deejay Snoop)
 3たび登場のBambaataa一派。今回はこのコラボにて、あのStonesをカバー。ヴォコーダーの使用によって妖しさ満載のスペース・ディスコに仕上がっている。ラップ・パートはほとんどなく、とにかく「Hot Stuff」と言いたいだけのヴォーカル陣。そして、それを盤石に支えるMocambo達。ごく一部でだけどヒットしたのが頷ける。



11. The Showdown
 タイトル・トラックはインスト。オープニングとループするようなシネマライクなサウンド。俺の想像したのはマカロニ・ウエスタン。




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ホントは今でもゴリゴリのジャズ・ファンク - Bamboos 『Step It Up』

folder 2006年リリース、オーストラリアではバツグンの知名度を誇るジャズ・ファンク・バンドBamboosの記念すべきデビュー・アルバム。結成が2001年ということで、アルバム・デビューは遅かったけれど、基本シングル中心の活動というのは、現代ジャズ・ファンク・バンドにとってはよくある話。
 彼らが一気に話題になったのは、2003年2枚目のシングル”Tighten Up”から。日本ではYMOが『増殖』でカバーしてから話題になり、近年もビールのCMで起用されるなど、忘れられる前に誰かが取り上げることによって、息の長いヒットになっている。そんなヴィンテージなファンク・インストを、ほんと何の衒いもない直球ストレートなアレンジで彼らがカバーすることによって、一躍クラブ・シーンに躍り出たBamboos、そんな前評判もあっての、満を持してのデビュー・アルバムとなったのが、本作。

 順調かつ地道にキャリアを積んできたことによって、本国オーストラリアではポピュラー・シーンにおいて、それなりのポジションでは収まっているらしい。いわゆる一般的な大ヒットまではいかないけど、現時点での最新アルバム『Fever in the Road』が、国内アルバム・チャートでトップ20に入る程度の固定ファンは掴んでいる。
 20位がやっとなのか、という見方もあるかもしれないけど、ライブ中心で活動している彼らのようなジャンルでありながら、ここまでのチャート・アクションというのは、世界的に見ても立派なものである。それほど枚数が捌けるジャンルではないのだ。ここまで国内メジャーのポジションを獲得したバンドは、俺が知る限りでは日本のスカパラくらいのものである。

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 ちなみにここ数枚の彼らのサウンドの傾向だけど、あくまでアルバム単位に絞って言うと、得意のジャズ・ファンク・テイストはあまり前面に出さず、もっと一般リスナーに開かれたコンテンポラリーなサウンドを展開している。デビュー当時からずっとオーストラリア国内のレーベルTru Thoughtsに所属していたのだけど、最新作からは配給元が変わり、同じくオーストラリアのInertiaというレーベルに移籍している。
 オーストラリアのエンタメ・シーンがどうなってるのか、正直俺の認識では、AC/DCとINXSとOlivia Newton-Johnで止まっちゃってるので、詳しいところはわからないのだけど、オフィシャル・サイトを見る限りでは、オルタナ・ロックからダンス・ポップまで扱う総合レーベルのようである。多分、販売力もしっかりしてそうなので、半インディー的なスタンスであるTru Thoughtsでは賄いきれなくなった部分もあるのだろう。

 そういった事情もあって、近年は多彩なゲストを入れたポップ寄りのサウンドに変化してきたわけで、今やアルバムだけで考えると、まったく別のバンドになっちゃってるのが現状。セールス的には上向きになっているので、バンド運営的には正しい戦略だったと言わざるを得ない。得ないのだけど。
 ただし、完全にメジャーに魂を売ってしまったわけではないようで、近年のライブ映像では、相変わらずのジャズ・ファンク振り、オールド・スタイルのソウル・ショウを展開している。プレイヤー・サイドから見れば、パッケージとライブとでコンセプトを変えることによって、うまい具合にガス抜きしてるんじゃないかと思う。ほんとのBamboosを見たければ、ライブに来なよ、とでも言ってるかのように。
 でも、あんまり日本に来てくれないじゃん。
 
bamboos

 その『Fever in the Road』から急激に売れ線に走ったというわけではなく、緩やかな変化はもう少し前、5枚目の『Medicine Man』あたりからヴォーカル・ナンバーが増えている。しかも、それまではほぼ出ずっぱりでヴォーカルを取っていたAlice RusselやKylie Auldistが次第にソロ活動を重視してきて、参加するのが少なくなってきたことに合わせて、次第に複数のゲスト・ヴォーカルを迎えることが多くなってきている。
 そのような戦略によるため、アルバムだけで見ると、だんだん普通のバンド化しているのが現状である。グローバル戦略としては正しいのだろうけど、古くからのファンからすれば、その変節に複雑な思いを抱くことも多いのかもしれない。俺はその『Medicine Man』から彼らの存在を知って、そこから遡って聴いてきたクチなので、そこまで強く初期サウンドに固執しているわけではない。しかし、ジャズ・ファンク・バンドを漁ってきた身からすれば、次第に洗練されつつある近年の作品は、以前ほど聴く機会が少なくなっているのが事実。

 どのジャズ・ファンク・バンドもそうだけど、サウンドの性質上、どうしても大所帯になってしまい、バンドの維持にはどこも苦労している。他アーティストのサポートやホーン・セクションの外部委託に頼らず、バンド単体で自立してゆくためには、こういったスタイルで生き残ってゆくのもひとつの生き方ではある。

 初期のBamboosは、そういったポピュラリティーをあまり考慮しないところで音作りしているので、現代ジャズ・ファンクが好きな人なら、まずハズレはない。JBやMetersなど、シンプルに自分たちの趣味、自分たちが影響を受けてきたモノにこだわり、出したい音をそのままストレートに出しているスタイルなので、何も考えずにノルことができる。


Step It Up
Step It Up
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Bamboos
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1. Step It Up
 どストレートなファンク・ナンバー。歌うは歌姫Alice Russel。彼女の声はソウルフルではあるけれどそれほど泥臭くなく、同じく洗練されたバンド・サウンドにはうまく馴染んでいる。この後のAliceはソロ活動も盛んとなって、近年ではQuanticとコラボすることが多くなって、ちょっとソウル方面とはご無沙汰になってしまうのだけど、ここではパワー全開のソウル・チューンを難なく歌いこなしている。ライブを見てもらえればわかるように、ほんとずっと聴いてたくなるようなナンバー。たった3分で終わってしまうのは惜しい。



2. Tighten Up/Album Version
 オリジナルは言わずと知れたArchie Bell & The Drellsによる1968年のヒット・ナンバー。基本オリジナルに忠実なカバーなのだけど、リズムはこちらの方が立っている。オリジナルはスッカスカのリズムと間の抜けたホーンとのアンサンブルが絶妙だったのだけど、ここでは敢えてコントラストを強調している。ギターのカッティングもソリッドになっている。



3. In The Bamboo Grove
 タイトルはもちろんJBの”In the Jungle Groove”からインスパイアされたもの。立ち上がりはネチッこいスロウ・ファンクだけど、終盤に向かうにつれテンポ・アップして、ラストはうまくまとめている。

4. Golden Rough
 ほんとJB'sが好きなんだな、と感心してしまうナンバー。リズムのボトムが思いっきり腰より下で響き、ホーン・セクションとのコンビネーションも絶妙。この辺はリーダーLance Ferguson(G)のセンスによるものだと思う。

5. Black Foot
前2曲からテンポ・アップし、今度はBen Graysonによるハモンドが主役のナンバー。シンプルなミニマル・リズムに的確にフレーズを叩きこむBenのプレイは、地味だけど数多の黒人ファンク・バンドを凌駕するテクニックを発揮している。こちらも恐ろしくコンパクトに、3分ちょっとにまとめている。フェード・アウトしてしまうのが惜しい。

6. Transcend Me
 人力ブロークン・ビーツに乗せて、再びAlice登場。この辺は古き良きジャズ・ファンクだけでなく、Bamboos独自のモダン・ファンク・サウンドを感じさせる。ただ往年のサウンドの再現だけじゃダメなのだ。こういった曲も、バンドを前進させてゆくためには必要である。俺はシンプルなジャズ・ファンクが好きだけどね。

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7. Tobago Strut
ホーン・セクションが出ずっぱりで活躍するナンバー。ちなみにこの時点でのホーン担当はAnton Delecca(Tenor S), Ross Irwin(Tr)のたった2名。フルートなどブラス系全般をまかなっていたわけだけど、とても2人でやっているとは思えないほどの音の厚みを実感してほしい。

8. Another Day In The Life Of Mr. Jones
 ちょっとセカンド・ラインも入ったオールド・タイプのファンク・チューン。Lanceという人はリーダーでありながら、あまり前に出ない人だけど、ここでもひたすらバッキングに徹し、クレバーなリフや細かなオブリガードを刻んでいる。

9. Crooked Cop
 再びスロウ・ファンク。ファンクと言えば高速カッティングと16ビートの切迫したリズムが持ち味だと先入観を持ってる人にこそ、ぜひ一度聴いてほしいナンバー。これだけリズムのタメがありながら、ファンキーさを出せるバンドは、なかなかいないはず。



10. Eel Oil
 直訳すれば「ウナギ油」。もちろんインストのため、どの辺がウナギなのかは不明。脂っこさはそこそこあるけど、うまくソフィスティケートされているため、クドさは感じない。
 スネア中心の音作り、そして珍しくソロを聴かせるLanceもまた、ここが見せ場と張り切っている。とにかくスネアの音が乾いて軽くて気持ちよく、シングルとしてリリースされたのも頷ける。

11. Voodoo Doll/Album Version
 これまでとはちょっと毛色の違った、どこかセッション的な雰囲気を感じさせるナンバー。比較的カッチリした構成の演奏を見せるBamboosだけど、ここではリラックスして、やや緩めのアンサンブルを見せている。ギターのセカンド・ライン・テイスト、ハイハットの響きがとても印象的。




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北海道の中途半端な田舎に住む、そろそろアラフィフ男。ほぼ週1のペースで音楽ブログ更新中。節操ない聴き方と思われてるけど、自分の中では一貫してるつもり。 最近は蔵書の整理がてら、古い本を再読中。ジョン・アーヴィングから始まって、フィッツジェラルドやゾラ、モームなど、いわゆる古典の復習中。いつになったら終わることやら。新刊読めねぇや。
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