好きなアルバムを自分勝手にダラダラ語る、そんなユルいコンセプトのブログです。

#Funk

邦題は『ブラックロック革命』(笑) - Earth, Wind & Fire 『Head to the Sky』

folder 1973年にリリースされた、4枚目のオリジナル・アルバム。前作『Last Day and Time』邦題『地球最後の日』がビルボード最高89位止まりだったのが、今回はいきなりビルボード最高27位をマークしたうえプラチナまで獲得、彼らにとって出世作となった。
 それまではブラック・チャートでどうにかトップ40に食い込む程度、一般的には地味なポジションに甘んじていた彼らだったけど、突然何の前触れも下準備もなくブレイクしたわけではない。そこに至るまでには、客観的な自己分析と冷静なシーン分析とがあったわけで。
 『地球最後の日』から彼ら、所属レーベルをワーナーからコロンビアに鞍替えし、これが大きな転機となったのは間違いない。移籍に伴ってバンド・コンセプトの抜本的な練り直しを行ない、その成果が実ったのが『Head to the Sky』だった、というわけで。

 デビュー当時は、アフロ〜ジャズ・ファンクをベースとしたブラス・ロック的な特性が強かったEarth。土着性の強いアフロ・ジャズ・サウンドは、もっぱらリーダーMaurice Whiteが持ち込んだものだった。緻密に組み立てられたインプロビゼーション主体のサウンドは崇高なものだったけど、商業的に成功する類のものではなかったし、しかも評論家筋にもピックアップされることはなかった。黒歴史だよな、要するに。
 この時代のソウル/ファンク系アーティストにありがちだけど、Whiteもまた、「意識の高い音楽が既存の社会や政治に一石を投ずることができる」ことを盲信していた。なので、サウンドはシリアスで遊びのないもの、メッセージ性やコンセプトに比重が置かれている。当然、全体のクオリティは高く筋も通っているのだけれど、正直何回も聴き直したくなる音楽ではない。サウンドよりメッセージ、フィジカルよりロジカルを優先した構造である。
 要するに、つまんないのだ。

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 ある意味、プログレ的な構造を持つ初期のEarthが好きな人もいるのかもしれないけど、多分ごく少数と思われる。賛否両論はあるけれど、70年代ソウル/ディスコ・シーンにおいては確実に足跡を残したアーティストなので、一応すべてのオリジナル・アルバムが再発されてはいるけど、一般的なEarthファンが手を伸ばすには、ちょっと危険な内容である。ジャズ寄りのレアグルーヴが好きなクラブ・ミュージック・ユーザーか、よほどのコア・ユーザーでもない限り、購入する人は少ないだろう。
 実際、俺も持ってないし。

 で、コロンビアに居を移したEarth、心機一転もつかの間、まずは結果を出さなければならなかった。リリース契約もそうだけど、売上次第ではバンド運営が危ぶまれるため、策を講じなければならなかった。今も昔も変わらず、ホーン・セクションを自前で抱えた大所帯バンドは、右から左へ一歩進んだだけでも経費がかかるのだ。
 ワーナー時代の中途半端なサウンド・アプローチの反省を踏まえ、まずWhiteが行なったのがヴォーカル・パートの補強である。
 古参メンバーであるSherry Scottだけを責めるわけじゃないけど、彼女がWhiteに比肩するほどのキャラクターを確立できなかったことは、歴史が証明している。正統なソウル・バラードを持ち味とする彼女のスタイルに、演奏陣が十分に対応しきれなかったのも、互いに悲劇だったけど。まぁやっぱりWhiteだよな。「I Think About Lovin' You」なんて珠玉のバラードなんだけど、これって別にEarthじゃなくてもいいしね。
 低音パートを主としたWhiteとの相乗効果を生み出すには、力強い高音が必要だった。そんなわけで引っ張ってきたのが、ご存知Philip Bailey。単なるシャウト中心のタイプではなく、曲によって硬軟使い分けられる彼の声質は、アフロ・ベースのリズム・セクションとも相性が良かった。タイプの違う男性ヴォーカルの双頭体制は、サウンドの土台となるボトムにメリハリをつける結果となった。

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 ただ変なところでバランス感覚を気にしてしまうWhite、フロント2人が男性だとむさ苦しく思ったのか、アクセント的に使う目的で、女性シンガーJessica Cleavesを加入させている。なんか不安になっちゃったのかな。
 女性シンガーを置く利点として大きいのが、ライブでの場持ちの強さである。見栄え的にも華が一輪あった方が野郎臭さを抑えられるし、演奏陣だって力の入れようが違ってくる。音楽的な利点としても、コーラスやハーモニーに厚みを持たせることができ、数曲メイン・ヴォーカルを受け持つことで、ショー全体の流れにメリハリをつけることができる。JBだって必ずショーには一人、デュエット・シンガーの女性をフィーチャーしていたよな。まぁ色んな意味を含めてだけど。
 ただ、レコーディングとなると話は別で、高音パートのBaileyとカブってしまうため、コンビネーションがうまくいかなかった。レコードではフィーチャーされることが少なかったため、結局Jessicaは2年弱でバンドを去ることになった。
 Earthとは肌が合わなかったけど、彼女自身のスペックが低いわけではなかったため、脱退してすぐGeorge Clinton に見出され、P-Funk 中心の活動にシフトしていったことは、互いにとって良い落としどころだったと言える。

 ヴォーカルの補強はどうにかなったので、さらにWhite、次はもっと大掛かりなサウンド・コンセプトの路線変更に手をつける。
 カリンバを始めとしたアフリカン楽器によるエスニック・テイストは、Whiteが描いた揺るがぬ初期構想だったため、そこには手をつけたくなかった。その部分はアクセント的に残し、より同時代的なサウンドへのシフト・チェンジを図った。時に冗長となりがちなジャズ~インプロヴィゼーションの要素をバッサリ切り捨て、ソウル・シーンを凌駕しつつあったダンス/ファンクのサウンドを導入することにした。ここで登場するのが、ギターのAl McKay。
 世紀を超えて今も続く、繊細かつ大味なEarthのダンス・ビートの土台作りに大きく寄与したのが、このMcKayであることは、誰もが認める事実。もちろん、彼独りの力でいきなり形作られたわけじゃなく、各メンバーの尽力があってこそだけど、McKayの持ち込んだカッティング技術が触媒となって、バンドの潜在能力をポテンシャル以上に引き出した。
 そんなメンツが『地球最後の日』で勢揃いした。その後は手探りしながら独自のサウンドを固めてゆき、遂に大きく花開いたのが、この『ブラックロック革命』といった次第。ちなみに、タイトルに「ロック」というワードが含まれてはいるけど、実際にはロックっぽさはほとんどないので、その辺は誤解のないように。

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 一般的にEarthといえば、70年代後半のディスコ路線が全盛期とされ、実際、代表曲も多い。それは確かだけれど、プレ=ディスコ期に当たる70年代前~中盤の作品もまた、根強い人気がある。特にレアグルーブの流れを経由してEarthを再発見した90年代以降の新規ユーザーは、前述のワーナー時代や80年代の低迷期と比べて、コア・ユーザーの中でも大きな割合を占めている。
 全盛期から多用されたシンセ系のキラキラしたアレンジは少ないけど、ファンクとアフロとのハイブリッドなリズム・コンビネーションや、ツイン・ヴォーカルの使い分けによるサウンドのバリエーションの豊富さなどは、スペイシーなハッタリや大仕掛けに頼らない分だけ、クオリティは高い。
 そりゃ「Fantasy」やら「September」やら「Boogie Wonderland」などの定番キラー・チューンと比べればインパクトは弱いけど、そういった代表曲が生まれる土台となっているのが、この時期の試行錯誤や音楽的な実験による賜物なのだ。
 なので、このプレ=ディスコ期のメロウ・グルーヴ全開のナンバーたちが埋もれてしまうのは、ちょっともったいない。

Head to the Sky
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1. Evil
 シングルカットもされたオープニングは、ジャジーなエレピがスムース・ジャズ的な効果を生み出しており、そこからさりげなくソフトなラテンのリズムをからませることによって、後世にも評価されるメロウグルーヴ的な味わいを演出している。今もそうだけど、当時もカリンバの音色をポピュラー・ミュージックに使用することは珍しく、それが逆に新鮮な感触。でも当時の邦題「悪魔の血」はちょっと…、という気がする。



2. Keep Your Head to the Sky
 アルバム・タイトルを含んだ2曲目、これもシングルカットされている。さらにテンポを落とし、ジャジーなメロウグルーヴが展開されている。ここでの主役は巧みなファルセット使いのBailey。シルキー・ヴォイスに合わせたコーラスも絶妙。メロディーを喚起させるベース・ラインとやたら前に出るシタールの調べ。そっと寄り添うエレピのオカズ。なんだ、もう完成されてるじゃん。でもやっぱり、邦題「宇宙を見よ!」はないと思う。コーダのアカペラ、Jessicaとのファルセット対決は聴きどころ。



3. Build Your Nest
 で、ここからが彼らの新境地となる。あくまでジャズ~アフロとちょっぴりラテンの順列組合せだったところに、McKayが持ち込んだファンク要素を大幅に増やしたことによって、グルーヴ感てんこ盛りのダンス・チューンがここに誕生した。どこかお上品に構えていた演奏陣にMetersばりのセカンド・ラインが注入され、ブラコン・ファンクの祖となった。

4. The World's a Masquerade
 フィリー・ソウルにスロウ・ファンクのリズムをねじ込んだような、比較的オーソドックスな仕上がりのソウル・バラード。レコードA面最後を飾るには、いい感じにドラマティック。ここは完全にWhiteの独壇場。

5. Clover
 B面トップは荘厳なピアノ・ソロ、そこから妖しげなラテン・フレーヴァーのメロウなグルーヴィー・チューン。サウンドの主体となるフルートとコンガがまた、Earthの別の側面を際立たせている。凡庸なラテンで終わらせていないのは、絶妙なコーラス・ワークと、案外転調の多い複雑な構成。3分過ぎから突然現れる、哀愁漂うギター・ソロがSantanaを連想させる。この辺が「ブラックロック」なのかな。

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6. Zanzibar
 ラストはなんと13分に及ぶ大作。ブラジルのアーティストEdu Loboのカバーということを、今回レビューを書くにあたって調べてみて、初めて知った。YouTubeにあった原曲を聴いてみたのだけど、結構リズムにアクセントがあって、何にも知らない俺のようなビギナーでも入りやすい楽曲である。ラテンでしかもファンキー、レアグルーヴ好きな人なら抵抗なくスルッと入ってゆけるはず。
 原曲は3分程度なので、ここでのヴァージョンはジャム・セッション風に各メンバーのソロ・パートが長くフィーチャーされている。主要テーマをもとにアドリブを膨らませるのは、もっぱらジャズのメソッドであり、なのでダンス/ファンクの要素はバッサリ切り捨てられている。ホーンの活躍がちょっぴり多めかな。
 こういったアプローチはこれが最後、次作『Open Our Eyes』からは、コンパクトにまとめられた楽曲が主流となる。



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副社長、お戯れが過ぎますよ。 - Prince『Love Symbol』

folder 1992年リリース14枚目のオリジナル・アルバム。US5位UK1位というチャート・アクションは一応アベレージ越えではあったけれど、『Purple Rain』以来の「一見さんでもわかりやすい」サウンドで大ヒットした『Diamonds & Pearls』と比べ、総体的な売り上げ枚数はUSで半減、UKは3分の1と大きく目減りしている。前作同様、今回もライト・ユーザーへも配慮の行き届いたサウンドではあるけれど、それ以上に詰め込まれたアーティスト・エゴ、『Lovesexy』を彷彿とさせる濃縮世界観は、大きな広がりを見せなかった。
 さらに前々作の『Graffiti Bridge』から続く、長時間収録の大作主義はピークを迎え、今回は当時のリミットぎりぎり、75分に渡って延々濃い〜エキスが、「これでもかっ」としつこく詰め込まれている。重量級のサーロイン・ステーキをすっぽんエキスのストレートで流し込むようなもので、それを想像して書いてるだけで、なんか胸焼けしそうになるほどである。そのくらいの心構えを持って挑まないと、このアルバムとは付き合えないのだ。
 でも、このくらいならまだ序の口。この後には5枚組の『Crystal Ball』や3枚組の『Emancipation』が控えている。ブートともなると、全セット34枚組の『The Work』なんてアイテムもあるくらいだし。

 2枚組に相当するボリュームが当たり前となっていた90年代と比べ、特にここ10年はYouTube やダウンロードでのリスニング・スタイルが中心となったため、先祖返り的に50分程度のサイズのアルバムが増えてきている。平均的な人間の集中力を考えると、その辺が限界なのだろう。学校の授業だって、大抵50分前後だし。
 CDライティング技術の進歩とシンクロして、90年代に入ってからCDの収録時間は増大の一途を辿っていた。Princeのような多作型のアーティストからすれば、時間的な制約に縛られぬクリエイティヴィティの自由は喜ばしいことではある。あるのだけれどでも、すべてのアーティストが彼のように、湯水の如くあふれ出る才能を有しているわけではない。特にシングルを中心にしたリリース展開のアーティストなど、いざアルバムを作ろうにもオリジナル曲が足らず、やむを得ず格落ちの楽曲で埋めざるを得ないケースの方がずっと多いのだ。
 ひと昔前のプログレのように、大げさなストリングスで構成されたオーバーチュアから始まり、尺を稼ぐために同じ曲の別ヴァージョンやリプライズを入れたり、ちょっと無理やり感の多い大作がはびこっていたのが、90年代アルバムの特徴である。正直、もうちょっとコンパクトにまとめた方が聴きやすいよね、と思ってしまうアルバムも多かったのが事実。まぁほとんどはレコード会社からの要請、もしくは印税稼ぎなんだろうけど。

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 21世紀に入ったあたりから、スタジオにこもる時間も減ったのと、ブートや違法ダウンロード対策に本気で乗り出したため、Princeの新規の流出音源は減少傾向にある。なので生前、様々なブートレグ・メーカーやサイトを介して乱発された流出音源をひとつにまとめ、偏執狂的な詳細データによって体系化した『The Work』は、「未発表テイク集のほぼ決定版」として、世界中のPrinceマニアから絶賛された。だってメチャメチャ多いんだもの、彼のブートは。昔は様々なブートレグ・サイトを巡回して、Princeに限らずいろいろ集めた時代もあったけど、あれって1回聴くともう聴き返さないよね。なので、今はサイトをのぞくことさえやめてしまった俺。
 そうは言っても、去年報道された「ペイズリー・パークの金庫から発掘された未発表曲音源」には、ちょっとワクワクしている俺がいる。アルバムに換算しておおよそ100枚、発表できるほどのクオリティの割合はまだ不明だし、多少はフカシも入っているかもしれないけれど、それを差し引いても相当の物量であることは想像に難くない。ていうか、金庫以外を調べてみると、もっとあるでしょきっと。デアゴスティーニとタイアップして、週刊ペースでリリースしても追いつかないボリュームは、PrinceかFrank Zappaくらいのものである。

 ただレコード会社もアーティストの意向通り、「はいそうですか」と何でもリリースするわけにはいかない。もちろん文化事業的な側面もあるにはあるけど、基本は営利目的第一であって、彼らの作品をすべてリリースしていたら、いくらワーナーでも経営が傾きかねない。製作工程は突貫工事だし、プロモーション体制だって追いつくはずがない。購入する方だって追いつかないので、必然的に一作品ごとの売り上げは少なくなる。正直、レコード会社にとって多作アーティストという存在は、迷惑以外の何物でもないのだ。
 それならいっそ、スタジオを出てメイクラブしてもらうか、プロモーション目的じゃなくてもいいからツアーに出て欲しい、と願っていたはず。

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 で、そのワーナーが取った対策というのが、経営陣への取り込みである。『Love Symbol』 リリースと前後して、Princeは契約更改、当時としては史上最高の1億ドルで締結している。オプションとして獲得したのが、ワーナー副社長の就任。遂に経営側に立っちゃったわけである。
 副社長とは言っても、ある意味名誉職的なものであって、経営面・実務面で彼が手腕をふるうのを期待されていたわけではない。表向きは「長年に渡る売り上げ貢献へ報いる」ための重役拝命であって、実際の活動状況はこれまでと何ら変わりはなかった。いつものレコーディング、いつものメイクラブ。
 ただワーナーとしては、いくら形式上のポストとはいえ、経営側に取り込んだことによって、今後の活動に制限をかけたり横やりを入れる口実ができた。

 経営戦略のパワポを作ったり財務諸表に隅から隅まで目を通したりすることはなかったけど、活動状況や制作楽曲への細かなオーダーなどは強くなり、次第にPrinceはワーナーに対しての不信感を高めて行く。
 彼としては就任当時、「せっかく副社長になったんだから、これまでよりもっと自由なペースで、作ったモノをいっぱいリリースできるんだ!」と楽観的に考えていたのだろう。前述の週刊Prince的なリリース形態も、物理的には可能だったはずだし。
 ただ残念なことに、副社長というポストはあくまでお飾りであって、実際の経営や決済において、彼の主張を聞き入れる者は誰もいなかった。経営のキャスティング・ボードを握っていたのは、プライベートでは決して彼の音楽を聴くことはない、ネクタイをきっちり上で締めたビジネスマン達だった。彼らにとってアーティストは収益を生む機械に過ぎず、音楽とは単なる商品だった。PrinceよりStingやDire Straitsを好んで聴く、典型的なホワイト・カラーたちである。
 まともにレコーディング・スタジオに入ったこともない、主に著作権や訴訟ビジネスを専門とした彼ら経営陣とPrinceとが相容れるはずもなく、日に日に亀裂は深まるばかりだった。

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 前作『Diamonds & Pearls』は、全米で思いっきり大コケした映画 & サントラ『Graffiti Bridge』の意趣返しとして、ライト・ユーザーに優しいコンテンポラリー作品に仕上がった。「大衆向けに寝返った」という厳しい評価もあるけど、冷静に考えて、売れ線狙いの作品を作ってきちんとヒットさせてしまうのだから、それには相応のポテンシャルがないとなし得ない芸当である。ただ、並みのアーティストならともかく、Princeの場合、中途半端な顧客目線はあまり歓迎されないのだ。
 売れることは単純に喜ばしいことだけど、そのマスへの擦り寄り具合が過ぎたため、トップ40仕様のファンク風味AORサウンドになってしまったことが、長年のファンからすればちょっと不満だったのだ。
 -これじゃPrinceじゃなくてもいいんじゃネ?
 やっぱ音楽上のステイタスだけじゃなく、社会的な地位まで手に入れちゃうと、最大公約数的な作品に仕上げちゃうのかね、とも思ったり。

 それを経ての「My Name is Prince」と来たので、世界中のファンは半ば苦笑気味にぶっ飛んだ。何しろ「俺はプリンス」だもの。「伊代はまだ16だから」以上のインパクトである。彼に先立つこと7年前、おニャン子クラブの立見里歌がニャンギラス名義で「私は里歌ちゃん」を歌っているけど、その里歌ちゃんが自虐的なシャレだったのに対し、Princeはマジ顔の叫び声で「俺はプリンス」。ニュー・アルバムのリリースごとに手放しで絶賛していたロキノンのディスク・レビューでも、さすがにこれについては冷笑気味な持ち上げ方だった記憶がある。
 ワーナー幹部に就任したことで、販促費その他もろもろのバジェットがデカくなった反面、音楽制作上においての制約も大きくなったことで、Princeは何かとジレンマを抱えていた。金も名誉も地位も手に入れてしまったけど、彼がほんとに欲していたのは自由な製作環境であって、またその作品をスムーズに録って出しできるデアゴスティーニ的システムだった。さすが、浮世離れした紫の王子である。皮肉じゃないよ。
 そんな彼が後年、インターネットの世界に足を踏み入れるのは、ある意味必然だった。

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 デビュー作こそ習作っぽいR&Bだったけど、その後は一貫して「Prince」 というオンリーワンのジャンルを確立してきた人である。イントロのスネアの音ひとつで特定できてしまうほど、彼の創り出すサウンドは独特で記名性の強いものだった。すでに知名度は知れ渡っていたにもかかわらず、ここに来て「俺はプリンス、俺はファンキーだぜ」と力説してしまうのは、単純な承認要求から来るものではない。

 かつてJohn Lennon がBeatles周辺の過熱騒動に不安を覚えて「Help!」と叫んだように、Princeもまた、身の回りの変わりように対して、悲痛な叫びを上げざるを得なかったのだ。
 その声は、自信に満ちあふれてはいない。むしろ伝わってくるのは絶望の入り混じった虚無感、アーティスティックとは相反するビジネスライクへの強烈な拒否だ。これまで築き上げてきたPrinceというブランドが、芸術性など考慮しないビジネスマンらの思惑によって、互換可能な消費財として扱われてしまうことへの拒否、例えはちょっと悪いけど、当時は思いっきりコンテンポラリーAOR路線だったPhil Collinsなんかと同列で扱われてしまうことに対する強烈なnon。
 -他人によって消費され使い捨てられるのなら、いっそ自らの手で封印してしまった方が、ずっとマシだ。
 そう思い立った彼はNew Power Generationの活動を加速させ、遂には自らの手でPrinceの名を葬り去る暴挙に出る。もはや誰も解読不能の、単なる象徴としての存在になることを、彼は選択することになる。


The Love Symbol : Prince & The New Power Generation
PRINCE & THE NEW POWER GE
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1. My Name Is Prince
 US36位UK7位を記録した、シングルカット第2弾。アラビアンなイントロ~多重コーラスから始まり、おもちゃ箱をひっくり返したようなゴチャ混ぜファンクは、ヒップホップ、ラップという次世代ジャンルをも飲み込む。Tony M.のラップがうまいのかどうか、そっち方面は明るくない俺は判断できないけど、汎用型のラップとしては良くできてると思う。「Funky」を「フォンキー」と叫ぶところにストリート系の影響が窺えるけど、まぁエッセンス程度の使い方である。
 これほどのグルーヴィー・チューンで音が多いのは、Princeとしては珍しいこと。以前ならこれだけ音を入れても、完パケ時にはもっと削ぎ落としていたはずなのに、ここではオーヴァーダブを重ねている。



2. Sexy MF
 で、その好対照として、必要最小限の音だけで構成されたのがこれ。これだけディープなファンクなのに、ベースの音がほとんど聴こえないのは、いつものPrince。往年のJBスタイルのバッキングでありながら、重心をグッと落としたBPMとラップ・パートのバランスが絶妙。
 大きな声でお勧めしづらいタイトルなので、USでは最高66位だったけど、同じ英語圏であるはずのUKでは最高4位、他EU圏でも軒並みトップ10圏内にチャートインしている。いかにアメリカという国が、清教徒的世界観に支配されていることを証明する事実である。

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3. Love 2 the 9's
 あまりに濃すぎる冒頭2曲からシフトチェンジ、初期ライトR&B期を彷彿とさせるさわやかファンク。ラップ・パート以外はほぼファルセットで通しており、ほんと小技ではあるけれど、スクラッチ音をエフェクト的に使用している。当時Prince夫人のMayteとTonyの他愛ない寸劇を挟んで、サウンドは徐々に混迷してドラマティックな展開を迎える。ミュージカルっぽいよね。

4. The Morning Papers
  コンテンポラリー色の強い、大味なロック・バラード。単にギター・ソロを弾きたかったのかね。オープニングが濃すぎた分だけ、構成のバランス的に入れてみただけなのか、それともワーナーからのオファーにちょっとだけ耳を傾けたのか。
 5枚目のシングル・カットとしては案外健闘しており、US44位UK52位。

5. The Max
 シーケンス・ドラムの音は当時としても古かった記憶があるのだけど、ヒップホップ風味を足してダンスフロア仕様にすることによって、古くはあるけれど古臭さをうまく回避している。鍵盤の音が好き。

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6. Segue
 
7. Blue Light
 ここにきてレゲエ。考えてみれば彼のレゲエ・チューンって初めてかもしれない。コンガも使ったりしてレゲエっぽさを演出してはいるけれど、全然それっぽく聴こえないのは、やはりリズムの濃さからか。曲調はほのぼのしてるけど、合わねぇよなぁ、やっぱ。まぁご愛嬌ってことで。

8. I Wanna Melt with U
 シーケンスで遊んでるうちにベーシック・トラックができ上がり、せっかくだからラップっぽくヴォーカルを乗せたらそれなりに形になっちゃった、という感じの曲。いつも思うのだけど、Princeの場合、このような打ち込みビートよりはシンプルなリズム・ボックスの方が本領を発揮していることが多い。単純なメトロノームで充分ファンキーなのに、あれこれエフェクトを付け足しちゃうとサウンドが薄くなってしまうのだ。

9. Sweet Baby
 70年代フィリー・ソウルの影響も窺えるソフト&メロウ。60年代に活躍していた無名ソウル・グループの発掘曲のカバーと言われれば信じてしまうくらい、直球勝負のバラード。レアグルーヴとしては最高だけど、でもPrinceだし。この辺のニーズはあまり求められていない。

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10. The Continental
 『Sign “o” the Times』に入っててもおかしくない、ファンキーでありながらポップ・センスも光るグルーヴィー・チューン。ヒップホップ・ナンバーと比べて先鋭性は少なく、プログレッシヴではないけれど、このタイプのニーズは高い。プロトタイプとしてのPrinceの良い面が出ている。

11. Damn U
 9.よりさらにベタなフィリー・ソウル。ていうかディナー歌手だろ、これじゃ。大仰なストリングスまでしっかり入れちゃってるし。Dramaticsあたりへの提供曲のセルフカバーと言われたら信じてしまいそう。ここまでメロウに振り切れてしまうと、逆に好感が持ててしまうのは不思議なところ。ナルシストPrinceとしては外せなかった。

12. Arrogance
 1分程度のコール&レスポンス。幕間的な楽曲。以上。

13. The Flow
 バックトラックはカッコいい。でもラップが一本調子なのが気になる。サウンド自体がかっちり作り過ぎたのか、余裕が少ない印象。だから、もっと音削りなって。

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14. 7
 ここで一気に空気が変わる。中盤のダレ気味の演出はこの曲のためにあったのでは、と勘繰ってしまう。オリエンタル・ムード満載のメロディとエフェクトは、別せかいへと誘う。フォーク・ロック的なスケール感はUS7位と好評だった。対してUKでは27位止まり。2.を受け入れるお国柄では、こういった屈託のなさは受け入れられなかった。

15. And God Created Woman
 R&B的メロウ・バラード。Prince臭さは少ないのだけど、俺的には結構好きな世界ではある。多分意図したものではないだろうけど、ワーナー幹部的には中庸で間口の広い楽曲で正しい。でもPrinceだもの、あまり受け入れられなかったんだろうな。先入観なしで聴いてほしい。

16. 3 Chains o' Gold
 ワーナー幹部へのプレゼンを意識したのか、もろ「Bohemian Rhapsody」。6分に凝縮した一大ポップ・シンフォニーはしっかり作りこまれた構成で、ドラマティックかつ隙のない作り。でも聴き進めてゆくうちに思うのは「これじゃない」感。こういった方面へのニーズはあまりないのだけど。

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17. Segue
 
18. The Sacrifice of Victor
 単調なリズム・ボックスを基調として、当時のトレンドだったニュージャック・スウィングを添加した、ソリッドなファンク・チューン。この手の曲がもう少し多ければ、アルバムの印象も変わったのだけれど、まぁいろいろやってみたかったんだろうな。何しろ副社長だし。


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邦題『愛のペガサス』。…まぁその通りだけど。 - Prince 『Prince』

folder 1979年にリリースされた2枚目のアルバム。デビュー作からはほぼ1年半のブランクを置いての作品である。
 すべての楽曲の作詞・作曲・プロデュース・演奏をほぼ独りで行なったデビュー作『For You』は、レコード会社お得意の「早熟の天才!」という定番フレーズがほんのちょっと話題になったくらいで、実際のセールスにはほとんど結びつかなかった。US最高138位UK最高156位というチャート・アクションは、これといってセールス・ポイントもないポッと出の新人なら及第点、今後の成長株としてはまずまずの成績だったけど、その後の快進撃を知っている今となっては、「あれ、こんな程度だったの?」と思ってしまっても不思議ではない。

 大メジャーレーベルのワーナーから、破格の契約金と3枚のアルバム制作契約を勝ち取ったのは、主に当時のマネージャーだったOwen Husneyの手腕によるものが大きい。何の実績もないド新人をいかにして売り込んだのか、はたまたそれほど首脳陣を即決させてしまうほどの才能の萌芽が生えまくっていたのか。まぁ多分どっちもだとは思う。
 冷静に考えれば、それまで故郷のミネアポリスを中心に活動していたため、全米をくまなくツアーで回っていたはずもないので、当然知名度はない。デビュー間もないため方向性が定まっていなかったのか、ジャケットの横顔もどこか自信なさげ、華があるとは決して言えない。アーティストと言えば自己顕示欲が強いはずなのに、作品の上では自信家だけど、元来の人見知りが祟って、まともなインタビューさえできやしない。
 新人なら新人らしく、もっと自己アピールしろよ、と口出ししたくなってしまうけど、考えてみれば彼はPrinceだった。昔から変わんなかったんだな、こいつ。

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 とは言ってもやっぱりデビュー作、周囲に大見得切ってしまったおかげもあって、初レコーディングにはかなり気合が入っている。27種類もの楽器を独りで操り、納得行くまで繰り返されるリテイクやオーバーダヴは半年に及び、レコーディング予算は最終的に2万ドル以上オーバーした。
 彼に限らないけど、デビュー・アルバムは誰でも肩の力が入るものなのだ。実際、ここでのPrinceはそれまで培った19年分の蓄積をすべて吐き出している。ほぼここでしか聴くことのできないカノン風の多重コーラスを筆頭に、ロック風、バラード、ハード・ロック、ライト・ファンクなど、ありとあらゆるジャンルの音楽が詰め込まれている。確かにすごい。何の実績もない19歳の男が、ここまで作り込んだ完全パッケージの作品を提示してきたのだから。そりゃすごい。

 でも、ただそれだけ。
 「よくできてるねぇ」以上の賛辞はほとんどなく、むしろマーケットからはほぼ無視の状態のまま、その後を思えば信じられぬくらい地味なデビューとなった。
 思えば時代はディスコ全盛期の真っただ中で、当時、ブラック系アーティストに求められている音楽は、ほぼディスコの一択しかなかった。Isleyに端を発する、ブラコン系のムーディなバラードが辛うじて息をつないでいたけど、Princeはそのどちらにも属していなかった。
 もともと生まれ育った環境が黒人オンリーというわけではなく、あらゆる人種が混在していたため、インプットがファンクやゴスペルだけではなかったことが、その後のPrinceの音楽性を決定づけている。それらと同様、ロックやフォークもまた、彼の中では同列だったのだ。
 そういった影響もあってこのデビュー作、どちらかと言えば白人テイストの強い楽曲が多い。黒人が器用にロックのマネをしているところは何ていうか、「ようできてまんなぁ」という皮肉交じりの賞賛しか出てこない。最初だからとテンパっちゃったのか、『あれも出ますこれもできます』的に幕の内弁当になってしまったことが、逆に主要ターゲットであるはずの黒人層からソッポを向かれてしまった、というのが初動ミス。

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 ワーナーからすれば、まぁ若気の至りということもわかっていたはずだし、取りあえずセールスは別として、意気込みは感じられる成長株的な見方はしてたんじゃないかと思われる。いまと違って当時のレコード会社は、まだ売り上げには貢献できていないけど、有望な新人をじっくり育てる気概と環境とを整えていた。Led ZeppelinやPaul Simonなどの大物を擁していたワーナーにとって、新人アーティストの面倒を見ることは先行投資的に余裕だったので、「まぁそんあ焦らなくても、じっくりオリジナリティー育ててけばいいんじゃね?」くらいにしか思っていなかった。懐の深い企業だったんだな、ワーナーも昔は。

 ただ、そんな生暖かい庇護を良しとせず、逆にプライドを傷つけられたとでも言いたげに、面白く思わないのがこの男、Princeである。そりゃ最初だからして、プロ仕様のレコーディング機材やスタジオ環境に慣れていなかったせいもある。ワーナーからのアドバイスも適当に聞き流してセルフ・プロデュースを押し通してしまったが挙句、セールス・ポイントがぼやけた仕上がりのアルバムを作ってしまったことは、後のインタビューでも反省点として明らかになっている。
 ただ、当時から選ばれし者と勝手に思っていたPrinceであるからして、精魂込めた作品に大きな自信を持っていたことは否定できない。これまで培ってきた自分の美学に基づいて作ってみたはいいものの、世間の理解を得るには至らず、そこがちょっと不満に思っていたのは殿下らしいところ。多分、ずいぶん前から自分が主人公のサクセス・ストーリーなんかを夢想していたんだろうな。なのに結果は成功とも失敗とも言えない中途半端なセールス。そりゃプライドも打ち砕かれる。
 「何でみんな、この良さをわからないんだっ」と声高に叫ばず、ブツブツ小声で呟くチュッパチャップス片手の彼の姿が思い浮かぶ。

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 散漫な仕上がりだった『For You』の反省を踏まえ、ソウル系のラジオでオンエアされやすいディスコ/ファンク系のリズムを強調していったのが、この『Prince』である。セルフ・プロデュースで作り込んでゆくサウンドのスタイルは変わらないけど、ビジュアル面においてもPrinceというアーティスト・イメージを細部まで作り込んでいる。そのディテールまでこだわったキャラクター設定の結果が「エロ」だったのは、結果的に的を得ていたのだけれど、まぁそこまでやるか、といった印象。キモカワという言葉がまだなかった時代、「キモい」という定冠詞は正しくPrinceのためにあるようなものだった。

 セクシャリティとは無縁の、ある種の猥雑さを内包したエロティシズムをコンセプトとして掲げ、次第に言行一致のキャラクターを作り上げた黒人アーティストの先駆けがPrinceである。
 ファンクの純化と並行してマッチョイズムを強めていった60年代のJBは、ステージ上ではむしろストイック、純音楽主義的なパフォーマンスを展開していた。『Stand!』以降、一時的な引退状態にあったSly Stoneは、『暴動』以降はアブストラクトなファンクの探求に明け暮れ、そのサウンドや出で立ちからは、暴発寸前の狂気が内包されていた。猥雑さという点においては、P-FunkがPrinceに近い路線を先行していたけど、その「エロ」は社会風刺や誇大妄想にかき消されており、総帥George Clintonの山師的カンに左右されることが多かった。
 なので、男性特有のイカ臭くパーソナルなエロを放つアーティストとして、Princeのスタンスは隙間にすっぽり収まる。無理やりこじつければRick Jamesが同じベクトルで重なり合うのだけれど、彼の場合、ほぼパターン化された下品なディスコが中心であり、Princeほどの幅の広さがなかった。肝心のサウンドがビジュアルに追いつかず、ディスコの終焉と共に存在自体がフェードアウトしていったのが悔やまれる。

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 のちにChaka Khanカバーによって注目を浴びることになる「I Feel for You」を始めとして、『For You』よりヒット要素の強い楽曲が多く収録されており、結果、「エロでありながらキャッチー」「キャッチーでありながらエロい」という評が高まり、セールス的にも一躍US22位という結果を残すことになる。当時のUKチャートではランクインしていないのだけれど、最終的にシルバー・ディスクを獲得しているので、息の長い売れ方をしていたことがわかる。
 前述のRick Jamesサウンドのフォーマットを借りて作られたサウンドもあるけど、単調な2流のディスコに終わっておらず、彼自身のパーソナリティをふんだんに盛り込んだ楽曲は密度が高い。次々流れ作業で量産されてゆく他のディスコ・ミュージックと違って、かなりの計算打算を盛り込んで練り上げられた作品のため、単純で刹那的なダンス・ミュージックとは一線を引いている。一時の流行ものとして消費されてしまう類のサウンドではないのだ。

 すでにこの時点でオリジナリティあふれるサウンドを提示することによって、Princeは短期間で消費されてしまうダンス・ミュージックの呪縛から逃れることができた。それは単純なファンク・ビートだけじゃなく、一度は引っ込めたけど『Purple Rain』で開花するロック・テイストの素養も持ち合わせていたからに他ならない。
 その独自性・他アーティストとの差別化として明快だったのが「エロ」路線であり、ビジュアル面においてもその点を貫いていたのは、ビジネス戦略だったのか、はたまた単なる天然だったのか。


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1. I Wanna Be Your Love
 ベストに入ってることも多い、初期Princeの代表曲。同時代のディスコ・サウンドに倣いながら、最もサウンドとフィットしたファルセットで全編通すことによってファンクネスが生まれているサウンドの構成的にはほぼロック的にシンプルなセッティングなのだけど、ここが良い意味での手癖なんだと思う。カッティング主体のギターはちょっと大人しめ。この塩梅の良さがR&Bチャート1位という好評を得たのだろう。
 アルバム・ヴァージョンはアウトロが2分と長く、マルチ・プレイヤー振りのアピール全開。



2. Why You Wanna Treat Me So Bad?
 で、ここではそのギターを弾き倒している。ユニゾンするチープ・シンセの音色も来たるべき80’sサウンドの萌芽が見られる。こちらもアメリカR&Bチャート最高13位。『Purple Rain』に入ってても違和感ないロック・テイストは、どっちつかずだった『For You』より強い音圧によってアップグレードされている。
 売れ線狙いのキャッチーな曲ではあるけれど、きちんとヒットさせちゃってるんだから、そこはさすが殿下ならでは。

3. Sexy Dancer
 ヒット狙いのアルバムのセオリーに則って、A面3曲までアップテンポ系、ノリのよい曲が続く。ここでディスコ寄りのファンキー・チューンをぶち込んでくるのは、単なるソウル/ファンク・アーティストに収まるつもりではないことが、しっかり証明されている。ふつうなら、これがリード・トラックだもんね。
 主にシンプルなギター・カッティングと四つ打ちビートで構成されているけど、時々ピアノ・ソロを挿入してきたりなど、独自の美意識が窺える。

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4. When We're Dancing Close and Slow
 ここでシフト・チェンジ、彼のもう一つの特性であるロマンティックな一面、あまり特筆されることはないけれど、稀代のメロディ・メーカー振りをここで発揮している。軽くサスティンを効かせたアルペジオがメロウさを強めている。後の「Sometimes It Snows in April」にも通ずるバラードは、意図不明のシンセ・エフェクトと共にフェードアウト。

5. With You
 B面トップは4.に続くようにシットリしたバラード。よく言われてるけど、ここでのPrinceはかなり女性的。ていうか女性ヴォーカルを想定して作られたかのようなサウンド、メロディである。Natalie Coleあたりに提供していたら、もっと売れたかもしれない。

6. Bambi
 こちらも初期Princeの代表曲とされる、ロック要素の強いアッパー・チューン。ここでもヴォーカルはファルセットで通しているので、ファンクの要素もちょっぴり添加。
 80年代以降のNWOBHMにも通ずるハードなギター・プレイは、単純に聴いてて気持ちがよく、コンパクトに4分程度にまとめているのもファンからの人気の高さの要因でもある。
 好きになってしまったレズビアンの女性をどうにか振り向かせたい男の心情を描いた歌詞もまた、当時としては画期的だったはず。

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7. Still Waiting
 いきなりカントリー・タッチのイントロで始まる、こちらはちょっとほのぼのしてしまうミディアム・バラード。彼のカントリー・ホンク的な楽曲はキャリアの中でも数えるほどなので、ある意味貴重。これも女性ヴォーカルを想定して作られたっぽい楽曲なので、これも誰かカバーしてくれたらイイ味出してくれるんじゃないかと思われる。
 後年、そういった曲が溜まったせいもあるのか、楽曲提供だけじゃもう追いつかず、ついにはイコライザーで変調させまくった疑似女性ヴォーカル・アルバム『Camille』を制作するに至るのだけど。

8. I Feel for You
 で、これはそんな需要側と供給側の思惑が一致した楽曲。正直、ここでのヴァージョンはPriceとしては佳曲程度の印象しかないけど、思いっきりグレードアップしたChaka Khanヴァージョンは壮観。
 プロデューサーArif Mardinはこのシンプルな楽曲を思いっきり80年代テイスト満載のシンセで埋め尽くしたのだけど、やはり強烈なインパクトだったのは冒頭のサンプリング・ヴォイス。Grandmaster Flashを引っ張り出してきて、畳み掛けるような「チャカカーン」攻撃。この力技だけでChakaに関心がなかった層をも強引に振り向かせ、US3位UK1位をもぎ取った。
 あぁもう、Chakaの顔しか思い浮かばない。言葉通りの本歌取りとなった楽曲。



9. It's Gonna Be Lonely
 で、最後はクールダウン的にあっさりした味付けのバラード。ウェットになり過ぎず、変に余韻を残さないスロー・チューン。普通なら流し聴きしてしまいそうなものだけど、案外リズムにメリハリがあり、最後まで飽きずに聴くことができる。



 ジャケット表での、上半身裸でこちらをキッと見据えるPrince。その表情に迷いはない。
 そしてジャケット裏。ペガサスに見立てるため、無理やり翼をくっつけられて不快感丸出しの白馬。そして彼の上に跨るのは全裸のPrince。
 馬にとっちゃ、迷惑な話だっただろう。

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北海道の中途半端な田舎に住む、そろそろアラフィフ男。ほぼ週1のペースで音楽ブログ更新中。節操ない聴き方と思われてるけど、自分の中では一貫してるつもり。 最近は蔵書の整理がてら、古い本を再読中。ジョン・アーヴィングから始まって、フィッツジェラルドやゾラ、モームなど、いわゆる古典の復習中。いつになったら終わることやら。新刊読めねぇや。
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