好きなアルバムを自分勝手にダラダラ語る、そんなユルいコンセプトのブログです。

#世界のジャズ・ファンク・バンド巡り

世界のジャズ・ファンク・バンド巡り:UK編 - Baker Brothers 『Avid Sounds』

folder 恒例となった『世界のジャズ・ファンク・バンド巡り』シリーズのUK編、狭くてニッチでセールス的にも恵まれないジャズ・ファンク界において、New MastersoundsやSpeedometerと並んで知名度もそれなりに高く、セールスも堅調なBaker Brothersのご紹介。
 
 で、このバンド、ジャズ・ファンクというカテゴリーの性質上、ソウル/ジャズっぽいテイストもあるのだけれど、前者2組と比べるとファンク/ダンス臭が強く、現在進行形のクラブ・シーンでも取り上げられる機会が多い。ヴォーカル・ナンバーも多いので、ロック系の耳のユーザーにも充分アピールできるサウンドになっている。ロキノン系など、イキのいいギター・ロックを聴いてきた人なら抵抗なく聴けるので、ここ日本でもファンは多い。
 ちなみにこれはキャリア初のカバー・アルバム、正直マニアックなセレクトのため、俺自身も知らなかった曲の方が多く、今回これを書くため調べてみたところ、初めてカバー集だと知ったくらい。多分、俺以外にもよく知らないで聴いてた人は多いんじゃないかと思う。いや多分そうだ、そういう事にしとこう。

 ごく普通のレビューっぽく書いていくと、まずDanとRichardのBaker兄弟に加え、友人であるChris Pedley (B、Vo)の3人でスタート、2003年にメジャー・デビューを果たすと、コンスタントなライヴ& アルバム・リリースを重ねるにつれ、メンバー間に徐々に音楽性の違いが生じてくる。そんなこんなの入れ替えやら脱退やらが相次いで起こり、2015年現在は前述のchrisをリーダーとして、Geoff Lai (G)、Paul Young (Sax、Vo)、Ted Carrasco (D)、Scott Baylis (Tr、Key)といった布陣になっている。いるのだけれど、ご覧いただいてお分かりのように、バンド名の由来となっているBaker兄弟が2人ともいないくなっており、何とも気持ち悪い状態になっている。
 一応、バンド内で金だ女だの下世話な軋轢があったわけではなく、あくまで音楽性の相違による発展的解消によるものらしいけど、第三者から見れば、なんか奥歯に物が挟まったような経緯のため、なんかいろいろ勘ぐってしまう。甲斐よしひろのいない甲斐バンド、または滝沢秀明のいないタッキー& 翼…、いやなんか違うな例えが。

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 主力メンバーが抜けたバンドのその後として、まったく音楽性が変わってしまうタイプと、まるで何事もなかったかのように、これまでの路線を引き継いで活動するタイプの2種類に分かれる。俺が知る限り、前者の代表格がPink Floyd やJoy Division で、後者がBeach Boysだと思う。
 どのバンドにも共通して言えるのは、メンバーの自殺や精神的なストレスの末、やむを得ない事情によって、というのが多い。Joy Divisionなんてバンド名さえ変わっちゃったし。
 第3のケースとして、全オリジナル・メンバーが脱退してしまったにもかかわらず、事務所やレコード会社の都合上、まだまだ収益が見込めるという判断の上、メンバー総取っ替えして看板だけそのまま使うというパターンもある。Temptationsや日本のWANDSがその例なのだけれど、だんだん本題から遠ざかって行きそうなので、この話題はこれで終わり。

 で、話がずれたけどBaker Brothers、そんな紆余曲折はあれどコンスタントな活動を続けている。性格の悪い英国人の割には非常に親日的で、日本限定のライブ・アルバムもリリースされているくらいである。なので、日本のクラブ・シーンにおいてもそこそこ名前も知られているポジションにあるのだけれど、何しろジャンル自体が非常にニッチなマーケットのため、『ジャズ・ファンク界の大物』といった、どうにも中途半端なポジションで待機中の状況が続いている。
 このジャンルのバンドの常として、数多のポピュラー系バンドとは違って、積極的な拡販策を取ろうとしないのが一般的である。もっと名の売れたヴォーカリストをフィーチャーしたり、世界的な企業とのタイアップなど能動的なアクションを起こせば、もう少し世間の認知も広がるのだろうけど、まぁみんなやろうとしない。大方は地道なライブ活動か、そのライブをyoutubeにアップするくらいが精いっぱいで、独創的なポリシーを持つ者はほとんどいないのが現状である。セールスだけを目的にするのなら、わざわざこのジャンルに留まる意味もないしね。
 
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 ほぼすべてのジャズ・ファンク・バンドとしては、セールスを第一義とするのではなく、大事なのはプレイする音楽そのもの、このまま音楽性を曲げることなくコンスタントな活動を続けていられれば、多くを望んでいないのがほとんどである。しかも、本来ならそんな彼らのケツを叩くはずのレコード会社も小規模ハウス・メーカー的なレーベルがほとんどのため、当然のことながらプロモーション能力はごく僅かなもの。わざわざこの時代にニッチなジャンルを好きで手掛けるているくらいだから、スタッフらも趣味性の強い連中が多いため、バンドを発奮させるなんて芸当はできるはずもない。逆にまかり間違ってJustin Bieber並みに売れてしまったら膨大な周辺業務が発生するため、めんどくさがりそうである。

 ライトユーザーへ向けての入門編「はじめてのじゃず・ふぁんく」として、この『Avid Sounds』をオススメしたいと思ってここまで書いてみたのだけど、考えてみればなかなか難しい部分もある。
 これまでロック/ポップスを聴いてた人がライト・ユーザー向けのこのアルバムを聴いて興味を持ち、そこから派生的に他の作品を聴いたとしても、それ以上深く掘り下げてゆくのは実のところハードルが結構高い。もともとインストが大半を占めるバンドでありジャンルであるので、ジャム・バンドやフュージョン系を通過していない人なら、たちまち退屈してしまう恐れが強い。俺自身、このジャンルの魅力に目覚めるまでは時間がかかったのだけど、やっぱヴォーカルの有る無しは大きい。
 ただ、世界に幅広く点在するジャズ・ファンク・バンド、ジャズ寄り・ファンク寄り・クラブ寄りなどなど個性も特徴も様々なので、その中で自分にしっくり来るサウンドを見つけてもらえれば、紹介してる俺もちょっと嬉しい。


アヴィッド・サウンズ
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1. Family Tree 
 レア・グルーヴ~ディスコ系ではかなり知られたナンバーらしいけど、俺が知ったのはこのアルバムから。Youtubeでオリジナルが聴けたのだけど、ほぼまんまのストレートなカバーだった。音圧の違いを除けば構成もまるっきり同じなので、要は現在形にビルド・アップしたものと思ってもらえればよい。いやほんと、そのまんまだから。
 ヴォーカルを取るVanessa Freemanは、ジャズ・ファンク界周辺では盛んにフィーチャリングされている、シャウター・タイプの女性ヴォーカリスト。使い勝手の良さがバンド側には好都合なのだろうけど、便利屋的な扱いは彼女にとってはちょっと不幸。



2. Shack Up
 1976年リリース、B級ディスコ・バンドBlackbusterの、こちらもストレートなカバー。1.同様、基本サウンドはそのまま、発掘音源のマルチ・テープを磨き上げたような仕上がりになっている。なので、多分世界中に数人はいるかと思われるオリジナル・ヴァージョン大大リスペクトなユーザーでも抵抗なく聴けるし、また踊れる。

3. Couldn’t Get It Right
 同じく1976年リリース、Climax Blues Bandのカバー。やはりサウンドの構造はほぼ同じなのだけど、オリジナルはギターの存在感がちょっと強いのがしつこ過ぎるため、俺的には威勢の良いホーンも入ったBakerヴァージョンの方が好み。ブルース・バンドのナンバーにしてはポップな路線なので、これはこれで新しい発見。

4. Space Funk
 1977年リリース、こちらもディスコ・バンドManzelによる幻のナンバー。ということらしいけど、何やかやで耳にしたことがある人は多いはず。オリジナル盤はレアモノだけど、サンプリングによるフレーズ借用で使われることが多い。スペイシーに響くシンセのフレーズは耳に残る。



5. If You Want Me To Stay
 これはさすがに有名、俺でも知ってたSly & The Family Stone『Fresh 』収録曲。濃厚なファンク・ミュージックをさらに煮詰めて濃縮したエッセンスを抽出して密封して熟成させた、とにかくドロッドロのナンバーなのだけど、実は俺、Slyはちょっと苦手。ディープなファンクが嫌いなわけじゃないのだけど、なぜか俺の嗜好とは微妙に合わずにいる。ちゃんと聴いてみようと思ってはいるのだけど、いつもアルバム途中で断念してしまうアーティストの一人である。ただSlyが歌ってなければ全然受け入れられるので、このようにちょっぴりベクトルを変えたカバーなら、普通にヘビロテできる。
 ちなみにいつも断念してしまう他のアーティストが、Isley BrothersとCurtis Mayfield。どちらも充分レジェンド級のファンク・マスターである。あるのだけれど、多分俺は生理的にファルセットが苦手なのだろう。

6. Street Player
 1979年リリース、この頃はまだブラス・ロックで有名だったChicagoのナンバー。ディスコやAOR隆盛の波に押されてセールスも不振、世の流れにつられてソフト&メロウな路線に傾きかけていたけど、これはまだ初期Chicagoとしての良心が窺える名曲。

7. Rock Creek Park
 レジェンド級ジャズ・ミュージシャンDonald Byrdが、自ら教授を務めていたワシントンDCハワード大学の学生数人を集めて結成、ファンク&ディスコ・バンドBlackbyrdsによる1975年のナンバー。この頃のByrdは同じく大学の教え子だったMizel兄弟と組んで、ディスコ/ファンクに大きく接近したジャズ・ファンクを量産していた時期だった。理論派Byrdのオーガナイズによるため、各プレイヤーの基本能力は折り紙付き、オリジナル自体も古びた印象はほとんどない。Bakerヴァージョンはもちろんノリも良くて最高なのだけど、是非オリジナルも聴いてほしいところ。



8. Lady Day And John Coltrane
 ジャズ吟遊詩人として謳われたGil Scott-Heron1971年のナンバー。ちなみにLady Dayとは、伝説のジャズ・シンガーBillie Holiday。「Lady Dayに救いを求め、Coltraneにすべてをぶちまけるんだ」というテーマに強く感情移入して、ファンキーなプレイを繰り広げている。

9. Fly Like An Eagle 
 アメリカのブルース・バンドSteve Miller Band1976年の大ヒット曲ということらしいけど、70年代アメリカン・ロックはほとんど興味がなかった俺にとって、これは未知の楽曲なのだった。もともとブルースも馴染んだことがなく、多分これからも積極的に興味を持つことはないだろうけど、でもこの曲は全然ブルースっぽくないのが良く、オリジナルも浮遊感満載でなかなかクールな仕上がり。

10. Cola Bottle Baby
 Roy Ayersのバンドで長らくキーボードを務めていたEdwin Birdsong1981年のファンク・ナンバーということだけど、むしろ有名なのはDaft Punk 2009年のヒット、”Harder, Better, Faster, Stronger”、邦題『仕事は終わらない』、ていうか松本零士のあのPVで有名な曲の元ネタとしての知名度が一番デカい。オリジナルはファンクながら少しマイルドに、Daft Punkヴァージョンはやっぱりエレクトロ/ダンス・テイストバリバリ、Bakerヴァージョンが一番ゴリゴリのファンク・スタイルでプレイしている。

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11. The Mexican 
 ラストはイギリスのプログレッシヴ・ポップ・バンド(なのに名前がなぜか)Babe Ruth1972年のナンバー。現役当時はバンド自体がマイナーで、プログレ村界隈でしか話題にならなかったのに、80年代に入ってから、この曲のカバー・ヴァージョンがなぜかダンス・シーンで取り上げられるようになり、今ではレア・グルーヴ系のクラシックとして生き延びているらしい、とはwikiで読んだほぼそのまんま。
 マリアッチというのか、俺的にはフラメンコっぽくも聴こえるけど、どちらにせよ肉体の躍動に直接訴えかけるサウンドであり、オリジナルをまんま踏襲しているのも、安易なカバーでは超えることができないことがわかっているからと思われ。
 ところでヴォーカルでフィーチャーされているKatie Holmesって、あの女優の?そこがよくわからん。まさか、ねぇ。




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世界のジャズ・ファンク・バンド巡り:番外編、アメリカのディープ・ファンクのご紹介 - Sharon Jones & The Dap-Kings 『Dap Dippin'』

folder で、前回のMighty Mocambosとキャラはかぶるのだけど、こちらもどストレートの人力ファンク、「60~70年代にサイケの狭間でひっそりリリースされたまま埋もれてしまったレア・グルーヴの裏名盤」と紹介されたらつい信じちゃいそうな人たち、Sharon Jones & The Dap-Kingsのご紹介。

 この手のジャンル、決して今の時代のメインストリートを歩くサウンドでもないし、実際大きなセールスは見込めないのだけど、細く長く続けてゆくのなら手堅い部分もある。これは日本の演歌と被る点が多いのだけど、いわゆる本来の意味のプログレッシヴを求められる音楽ではない。音楽シーンを揺るがす革新的なサウンドには目もくれず、ワンパターンでありながらひたすら自分たちの音楽フォーマットを崩さずに邁進する、ということが求められる。ボカロやオートチューンなんてもっての外だ。

 ディープ・ファンク/ジャズ・ファンクという、ポピュラー・シーンにおいては比較的ニッチだと思われるこれらのジャンル、CDやレコードなど物理メディア販売においては難しい面もあるけど、あくまで半径100km圏内という生活圏において、ライブハウス中心の活動なら、案外継続は難しいことではない。世界中、どの地域においてもそれなりの需要はあるジャンルなので、高望みさえしなければ、それなりのオファーはある。
 ただ、オファーが切れないのと収益性とでは、また別の問題である。「ファンク・バンドあるある」ばかりになってしまうけど、大抵は大所帯のバンドが多いため、わずかなギャラを均等割りすると、経費だけで足が出てしまう場合が多い。とてもバンド一本だけで食っていけるジャンルではないのだ。
 だからこそ、彼らは大抵の場合、喰っていける本業と掛け持ちか別バンドとの掛け持ちが、他ジャンルと比べてとても多い。大抵の売れないバンドはみなそうなのだけど、特にファンク・バンドはその傾向が強い。あくまで趣味性の強いバンド・コンセプトが多いため、どうしてもサウンドはマニアックになりがちである。だって、別に売れなくたっていいんだもん。
  
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 彼らの所属レーベルDaptone、NYを拠点とした小ぢんまりとしたレコード会社なのだけど、所属アーティストがほぼ年季の入ったジャズ・ファンク・ソウルのどれかの順列組合せみたいなアーティストばかり、昔ながらの伝統芸能的サウンドを供給し続けている。EDM?何それ?といった感じの人たちばかりである。
 多分経営的には楽ではないはずだけど、それでもレーベル・コンセプトが徹底していることから、その手のファンにとっての信頼は厚く、継続的なリリースを維持できるだけの収益は確保している。ニッチなマーケットではあるけれど、全世界を対象としているだけあって、細かな売り上げをかき集めると、案外バカにならないのだろう。

 で、Dap-Kings。
 「ファンク・バンドあるある」として、ライブ活動中心ゆえ音源リリースは少ないことが常なのだけど、彼らの場合、比較的恵まれているのか潜在的支持が高いのか、アルバム→ツアー→アルバムのループがスムーズに回っている。決して派手なサウンドでもないし、Daptoneというインディペンデントなレコード会社ゆえ、特別プロモーションが上手いわけでもない。どうひいき目に見たって、爆発的に売れる要素はない。
 彼らの名前を最も広く知らしめたのが、あのAmy Winehouseとのコラボ。セカンド・アルバム『Back To Black』では、ほぼ半数の曲でバックを務め、しかもその中には、あの大ヒット曲"Rehab" と"You Know I'm No Good"が含まれている。アルバムに伴うツアーにも同行し、おかげでバンドの財政状況は大きく好転した。まさにAmy様々である。

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 そういった経緯もあって、他のバンドと比べて運営は非常にスムーズである。バンドの継続において経済的な問題は欠かせないのだ。
 おかげでサウンドは過剰に売れ線を意識することもなく、ひたすらオールド・スタイルのレディー・ファンクを貫いている。変に大衆に媚びた感じもなく、またDaptoneというレーベルのブランド・イメージの保持にもなっているため、それがまたうるさ型のリスナーを呼び込むという、いい感じの循環構造が出来上がっている。

 一昨年、胆管がんの宣告を受け、結構シャレにならない体調不良に追い込まれたSharon。ニュー・アルバムのリリースはおろか、一時は命まで危ぶまれたが、どうやら持ち直してライブ・シーンに復帰した。何しろ御年58歳、ソウル・シンガーとしてはまだまだ現役だけど、お体は大事にね。


Dap Dippin
Dap Dippin
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Sharon Jones & The Dap-Kings
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1. Introduction
 Dap-Kingsによるオープニング・インスト。臨場感あふれるソウル・レビューを模したアナウンスがまた、JBっぽさをいい感じでリスペクトしている。

2. Got A Thing On My Mind
 Daptoneレーベルにおいても記念すべき第一弾45回転シングルでもある、この曲が実質アルバムのオープニング。初っ端のドラム・ロールが迫力あって、レーベル・カラーを象徴している。ディープ・ファンクのコンピレーションではもはや定番曲となっており、このまま行けば普通にファンク・クラシックスとして歴史に残るだろう。そんな永遠の名曲。
 


3. What Have You Done For Me Lately?
 こちらもシングル・リリースされたナンバー。ミドル・テンポのドッシリ腰の据わったヴォーカルを聴かせる。一聴すると音がダンゴ状にひとかたまりになって分離が悪いのだけど、これこそがDaptone、モノラルで聴くことを前提にミックスしているので、どうしてもこういった音になる。すべての音が混然一体となった迫力のサウンドを堪能してほしい。

4. The Dap Dip
 ベースがファンキー過ぎる、こちらもミドル・テンポのドロドロ・ファンク。ここまで時代錯誤だと、ほんともうひと回りして新しくさえ感じてしまう。ていうか、時代を超越した音である。30年前もクラブではこういったサウンドに乗って腰を振っていただろうし、多分これから30年後も同じような状況は続くだろう。ほんとDNAにすでに刷り込まれてるんじゃないかとまで思えてしまう、神経に直接反応するファンク・ミュージック。

5. Give Me A Chance
 今度はギターの音がドロッドロ。なんだこれ。ほんとワン・アイディア、ワン・コードで延々続く、シンプルな構造のサウンドなのだけど、考えてみればファンクではこれが結構当たり前である。体に直接作用する音楽なのだから、余計な音はいらない。非常に合理的なサウンドである。しっかし時代読めねぇよな、これ。

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6. Cut That Line
 日本人なら結構な割合で誰でも聴いたことのある、あの”Tighten Up”のオマージュによるオープニング。ていうか、こちらも最初から最後まで、ほぼこのフレーズが続き、そこにSharonがメロディを乗せる、というスタイル。間奏のオルガンがもファンキーそのもの。

7. Got To Be The Way It Is
 こちらもシングル・ナンバー。やっぱりワン・コード・ファンク。これもよくコンピレーションやミックス・テープに収録されているので、雑食系の人なら聴いたことがあるかもしれない。
 


8. Make It Good To Me
 しっとりとした南部系のソウル・バラード。こういった曲調をソウル・シンガーが歌うと、ほとんどすべてがAretha Franklinのフォロワーっぽくなってしまい、非常に分が悪いのだけど、一歩も彼女に引けを取らないSharonがここにいる。

9. Ain't It Hard
 ソリッドなファンク・ナンバー。少しトーンを落としてるところがMarva Whitneyっぽく聴こえる。オーソドックスながら変則的なリズムに、正統ファンク・バンドとしてのこだわりが感じられる。

10. Pick It Up, Lay It In The Cut
 こちらもシングル・カット。アフロ/ラテン・ビートの入ったリズムに乗って、ベースもドラムもギターも、そしてブラスさえも混然一体となったファンク・サウンドの大洪水。しかし主役はやはりSharon、このサウンドに負けないパワーが、バンド全体を圧倒させている。
 


11. Casella Walk
 ラストはDap-Kingsによるインスト・ファンク。ゴリゴリのファンク・ギターなのに、不思議なくらいブルース色を感じさせないのは、ジャズ・テイストも入ったバンドの特色なのだろうけど、そこがアメリカだけに留まらないファン層の拡大に寄与しているのだろう。




 全11曲でトータル・タイム38分。ほんと前時代的にコンパクトにまとめられたアルバム。インプロビゼーションを主体としたバンドならもっと長尺になるのだろうけど、基本はソウル・レビューを前提としたヴォーカル・メインなので、このくらいのサイズが適しているのだろう。


Daptone Gold (Dig)
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世界のジャズ・ファンク・バンド巡り:ドイツ編 - Gizelle Smith & The Mighty Mocambos ‎– 『This Is Gizelle Smith & The Mighty Mocambos』

folder 今回はドイツはハンブルグを中心に活動する、Mighty Mocambosのご紹介。隣接する国が多いEU圏内という地の利を活かして、近隣国への出張ツアーも度々行なっている。ミュージシャンとして活動する彼らのもう一つの顔として、プライベート・レーベルMocamboを主宰しており、他のアーティストのプロデュース・ワークや客演はもちろんのこと、レーベル運営の些末な事務作業も行なわなければならず、なかなか自分たちの作品にまで手が回らないようである。
 そのせいもあって、2006年よりレーベル・スタートにもかかわらず、今のところバンドとしての純粋なオリジナル・アルバムは1枚のみ。ヨーロッパ系のジャズ・ファンク/ディープ・ソウル・ファンにとっては、非常にヤキモキさせる存在である。

 で、今回のアルバム、ほぼ全編ゲスト・ヴォーカルGizelle Smithをフィーチャーしているため、厳密に言えばオリジナルではないのだけれど、バックのサウンドはほぼメンバー9人でまかなっているので、細かいことは言いっこなしで。むしろ、インスト中心のアルバムよりも、歌入りのこちらの方が喰いつきが良いと思う。実際、リリース当時にはタワレコでリコメン指定されていたそうだけど、あいにく俺はその頃、そっち方面のサウンドには興味がなかったので、ほぼスルーだった。
 当初はシングルのみのコラボの予定だったのだけど、それが世界中のDJやらクリエイターに絶賛されたことがきっかけとなって、アルバム制作に発展したという経緯である。Kenny DopeやKeb Dargeという、特にUKダンス・シーンでは絶大な信頼を誇るプロデューサーらによってリコメンドされることによって、前評判が高まった。

MightyMocambos

 ジャズ・ファンク/ディープ・ファンクというジャンル自体、もともとポピュラーなジャンルではないので、大きなセールスには結びつきづらいことは永年の課題である。多分、これから先もこの状況は続くだろうけど、大きくメジャー展開していない分だけ急速に衰退してゆくことも考えづらく、見方を変えると、細く長く続けてゆくためには手堅い分野でもある。
 リリース形態がシングル中心というのも、他のジャンルにはあまり見られない特徴である。アルバム制作ともなれば、まとまった資金と時間が必要となるが、レーベル側もそこまで資本投下できるほど余裕があるはずもない。好きこのんでこういったジャンルに手を出しているくらいだから、経営自体もカツカツである。まぁ好きでやっているのだから仕方がないのだけど、もう少し売れ線狙いでやってもいいんじゃないかと、余計な心配までしてしまうくらいである。
 何しろ、世のジャズ・ファンク・バンドのほとんどはインスト中心、アルバムともなればヴォーカル・ナンバーもあるが、それもせいぜい2~3曲程度、ほんと何度も言うが、もうちょっと損益考えてもいいんじゃないの、と心配してしまうようなリリースを平気で行なっている。

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 で、シスター・ファンクの歌姫として、ソロにコラボに忙しく働くGizelle Smith、UKマンチェスターを飛び出してからは、まだ若いはずなのにすっかりディーヴァの風格を醸し出し、熟練ミュージシャンらを相手取って、ファンキーにダイナミックに、そしてセクシャルなヴォーカルを聴かせている。
 サウンドとしては典型的なパーティ・チューン。これ以上でもこれ以下でもなく、妙に腰の据わったディーヴァがひたすら歌いまくりシャウトしまくり、踊る踊る踊る。
 Mighty Mocambosも百戦錬磨のミュージシャン揃いのはずなのだけど、ここでは完全にGizelleが主役である。熟練ゆえの余裕なのか、好き放題パフォーマンスさせておいて、掌で踊らせてやってる風情が思い浮かび、どことなく微笑ましくさえある。

 とんでもなく革新的な作品でもなければ、時代を象徴する名盤でもない。多分、「60~70年代にかけてのディスコ・ブーム前夜にひっそりリリースされたシスター・ファンクのレア物」と言っても通用してしまうくらい、シンプルかつストレートな正統ファンクである。
 決して時代を動かすようなサウンドではないし、知らない人は知らないままで、ほんとこのまま埋もれてしまうんじゃないかと思えてしまうアルバムなのだけど、まぁこういうのもいいんじゃない?と、つい微笑んでしまうようなアルバムである。
 Mighty Mocambos自身も、大それた野望などは持ち合わせていないはず。彼らにとって重要なのは、CDやyoutubeの向こうにいるリスナーではなく、あくまで目の前のオーディエンスたちである。活動ベースであるライブハウスで、彼らを躍らせ興奮させ、そして演奏する自分たちもハイになることが重要なのだ。


This Is Gizelle Smith & the Mighty Mocambos
Smith & Mighty
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01. Working Woman
 まんまJB系のどストレート・ファンク。Lynn CollinsやVicky Anderson直系のノリノリ・ナンバー。このシングルが発売された途端、世界中のDJらが狂喜乱舞して取り上げまくったのも無理はない。これだけパワフルなヴォーカルなのに、音割れも歪みもせず、きれいに響かせているのは、よほどのテクニックがないと難しいはず。

02. The Time Is Right For Love
 基本、アッパー系はどれも同じような曲調なのだけど、飽きさせずに聴かせるのは、ヴォーカル・演奏ともテクニックがモノを言う。多分それほど予算も時間もかけられなかっただろうし、スタジオ機材だってそれほど最新鋭なモノではない。ジャズ・ファンク系のバンドの常として、サウンドはあまりいじらないだろうし、余計なエフェクトをかけるわけでもない。クリアでしかもガッツのあるバッキングだけど、Gizelのヴォーカルもまたクリアに響いている。
 歌がうまいのは当たり前だけど、その歌をどう聴かせるか、どのようなテクニックで響かせるかがきちんとわかっているヴォーカリストである。

03. Gonna Get You
 一時期ミックス・テープでよく使われてた、疾走感あふれるナンバー。力強いブラス・セクションに絡まり纏わりつくリズム・ギターが絶品。中盤のブレイクでのGizelleとコーラスがまた脱力しててちょっぴりエロい。

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04. Out of Fashion
 ちょっとだけマイナー系のサウンド、ややトーンを落として、ビッチっぽく吐き捨てるような歌い方によって、曲の表情を浮かび上がらせている。珍しく、終盤でちょっとスペイシーなエフェクトが聴ける。

05. Coffee High
 こちらは正統なバラード・ファンク。しっかし古臭いコーラス・アレンジだな、ほんと。曲調やバンドのカラーには合っているのだが、まぁ売れないよな、そりゃ。もしかしたら10年くらい後にレア・グルーヴ・リバイバルのブームが来たら、Marva Whitneyあたりのフォロワーとして再発見されるかもしれない。
 


06. Hold Fast
 ソリッドなインスト・ファンク。時々尺八っぽく響くフルートとギター・カッティングとのユニゾンがカッコイイ。こちらも時代性を感じさせない。

07. Snake Charmer
 60年代スパイ映画のサントラ調。怪しげなオルガンに合わせて囁くGizelle。メロディを追うのではなくモノローグを多用しており、なお一層ミステリアスなファンク・ミュージックが闇の底を蠢いている。

08. Love Alarm
 メロディー、ヴォーカルとも色気が合って、アレンジの方向性が違っていれば、もう少し別の可能性もあったんじゃないかと示唆させる曲。少しテンポを落としてブラスを引っ込め、リズムを強調してヴォーカルにエコーをかけてやればあら不思議、アシッド・ジャズになっちゃった。そうすればクラブ・シーンだけでなく、もう少し広い範囲でもかけられるんじゃないかと思ってしまうのだけど、狙ってるのはそこじゃないだろうし、多分彼らとしてどうでもいいことなのだろう。

09. Everything Holds Blame
 03.に続くバラード・ナンバー。何ていうか、曲調が完全に男性仕様である。Otis Redding用に作られたベーシック・トラックに、無理やりGizelleが割り込んで歌い飛ばした感が強い。しかし、これもベースと言いドラムと言い、リズムがねちっこくていいな。
 


10. Free Vibes –Instrumental-
 ブリッジ的なインスト・ナンバー。箸休めとして、こういった曲も必要である。ブラスを強めにした、ジャズ・ファンク系のバンドとして、コンパクトにまとめている。

11. Magic Time Machine
 こちらも一時期、FMでよく流れていた記憶がある。スロー・テンポなラテン・ファンクなのだけれど、妙なグルーヴ感があるのは、やはりGizelleもそうだが、百戦錬磨の盤石のサウンドを誇るMocambosならでは。やや歌謡曲っぽいメロディーが、俺を含む日本人にはシンパシーを感じるのだろう。

12. Nothing For Nothing
 これもよく聴いた。ビッチ風の投げやりでパワフルなヴォーカルがマッチしている。またこれにビッチなコーラスが被ると、怪しげな場末のクラブの雰囲気がムンムン匂ってくる。一本調子になってしまいがちだが、何しろ短いナンバーなので、飽きずに聴かせてしまう。
 
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 あっという間の37分。CDならちょうど半分の収録時間だけれど、どの曲もテンションが高いので、物足りなさは感じない。どの曲も2~3分くらいのため、テンポもいいし、飽きる前に終わってしまうので、パーティBGMとしてもぴったり、踊るにもちょうどいい塩梅である。これがライブとなると、もっと演奏部分を膨らませて、とんでもないグルーヴの嵐になるのだろうけど、レコード(CDではない)でお試し感覚となれば、ちょうどいいくらいだと思う。
 こういったアルバムは無数にリリースされているのだけど、日本ではなかなか情報も入ってこないので、自分からアクティヴに動くしかないのが現状。
 あとはP-VINE、あんたらにかかってる。


The Future Is Here
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ショウダウン
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北海道の中途半端な田舎に住む、そろそろアラフィフ男。ほぼ週1のペースで音楽ブログ更新中。節操ない聴き方と思われてるけど、自分の中では一貫してるつもり。 最近は蔵書の整理がてら、古い本を再読中。ジョン・アーヴィングから始まって、フィッツジェラルドやゾラ、モームなど、いわゆる古典の復習中。いつになったら終わることやら。新刊読めねぇや。
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