好きなアルバムを自分勝手にダラダラ語る、そんなユルいコンセプトのブログです。

#世界のジャズ・ファンク・バンド巡り

世界のジャズ・ファンク・バンド巡り - ワールドワイド編

aaa 気がつくと、ここしばらくジャズ・ファンク系のレビューを書いていないのだった。調べてみると、約1年半。まったく聴いていなかったわけではない。最近はロックに回帰、しかもブートレグ・サイトで昔のライブ音源を漁ることが多くなっているけど、不定期に各バンドのフェイスブックやツイッターをチェックしていた。新譜が出れば購入したり試聴したり、おおよその動向はつかんではいたのだ。
 言ってしまえば、ネタ切れ感が強い。いや単なる新譜紹介ならできるのだけど、このブログの通常サイズでレビューするには、あまりに情報が少なすぎる。
 だいたいジャズ・ファンク系のバンドというのは、「ミュージシャン」が多くて「アーティスト」というのは極めて少ない。強いカリスマ性を持つリーダーや、アクの強いキャラクターというのはほとんどいない。そのほとんどは、真摯でまじめでちょっぴりダラけた、演奏するのが好きで好きで仕方ない連中なのだ。強いエゴを押し通すより、ライブでプレイするだけで満足、という向上心のかけらもない、愛すべき連中でもある。
 そんな人たちなので、華やかなニュースというのはあんまりない。新譜リリースや大物コラボでもない限り、特筆すべきことなんてない。ないない尽くしなので、つい書かずじまいだったのだ。
 とはいえ、紹介したいアルバムはいくらでもある。特にここ1年半で、以前レビューしたバンドのニュー・リリースが続いたし、このサイズなら書けそうなので、まとめてここで書いてみる。

Electro Deluxe 『Circle Live』

electro deluxe 今年3月にリリースされた、2枚目のライブ・アルバム。アメリカ、日本を含め、全世界200公演に及ぶ『Circle』ツアーから厳選されたトラックが収録されている。EUを中心に大きなセールスを上げた『Circle』、またはその前の『Home』を中心とした選曲となっており、エレクトロ色が残っていた1、2枚目の曲は少ない。初期のライブ定番曲だった「Stayin' Alive」のカバーも、ボーナス・トラック的な扱いでラストに収録されているくらい。
 バンドが大きく飛躍する起爆剤となった、ヴォーカルJames Copleyがメインとなってからの曲で構成されているため、正直、初期とはまったく別のバンドである。生のホーン・セクションが使えないがゆえのエレクトロニカであって、それ自体が目的だったわけではない。「これがいまの俺たちなんだ」と自信を持って言える、そんな姿勢が選曲にもサウンドにもあらわれている。



 中心メンバーは5人だけど、ホーン・セクションやコーラスも含めると、20人前後の大所帯、ここにスタッフやローディが加わるので、とんでもない数の民族大移動となる。つい数年前までは、副業も抱えた各メンバーのスケジュール調整や、人数×移動経費の問題もあって、フル仕様「Electro Deluxe Big Band」でのステージは、ほぼフランス国内のみ、月に1、2回程度のペースだった。おととしの来日公演も、中心メンバーのみの構成で、あの迫力あるホーン隊までは叶わなかった。まぁ日本ではほぼ無名だったので、その辺は仕方ない。日本のことを想っててくれただけで充分だ、と割り切るしかない。
 それに引き替え、フランスだけにとどまらず、EU圏内ではライブのオファーが引きも切らず、現時点で11月いっぱいまで予定が埋まっている。ライブ動員の好調もあって、会場もホール・クラスからアリーナにグレードアップ、そのスケールに合わせてサウンドもゴージャス化、ホーン・セクションも常駐できるようになった。
 映像を見ると、国を問わずどの会場でも大盛況で迎えられている。派手な舞台装置もなければ、ビジュアル映えするメンバーもいない。あるのはただ、熱狂を呼び起こす音楽だけ。奇をてらった演出もエロさもないのに、アリーナいっぱいの観衆は彼らの音楽に狂喜し、そして涙を流す。なんだこのパワーは。
 ポップスでもなければジャズでもない、ロック的な要素はまるでなし。ダンス・チューンといえば言えるけど、いま現在のトレンドとはまるでかけ離れている。じゃあ何で?
 「それが俺たち、エレクトリック・デラックスさ」。
 James Copleyなら、きっとそう言うことだろう。




Speedometer 『Downtown Funk '74』

speedometer 昨年、何のインフォメーションもなく、サプライズ的にリリースされたインスト作。しかもダウンロードのみ。オリジナルとして制作されたのではなく、ライブラリー・ミュージック制作会社の大手、KPM Musicからの依頼によるもの。要するに、企業向けの音源請負。ある一定の料金を払えば、CMソングや店内BGMに使える素材を作ったらしい。こんなこともやってるんだな。
 妙にコンセプチュアルなタイトルやアートワークの雰囲気からして、映画のサウンドトラック、例えばブラックスプロイテーションの現代版、といったイメージでオファーしたんじゃないかと思われる。でも、かなりニッチなにーずだよな。
 数年前、彼らが手掛けたことによって、小さなジャズ・ファンク界の中ではちょっとだけ話題になった、三井住友VISAカードのCMソング。すごくざっくりと例えて言うなら、全編あんな感じ。ていうか1曲目の「Tomahawk」、あんまりちゃんと覚えてないけど、ほとんどそのまんま。竹ノ内豊の渋いスーツ姿を連想してしまう。
 上品でありながら、はみ出さない程度にワイルドネス、メンバーそれぞれまんべんなくソロ・パートが割り振られ、見せ場も公平にある。決して誰かが割り込んだり食っちゃったりすることはない。そこはさすが英国紳士の集まり、様式美を壊すようなことは恥、という教育が為されているのだ。



 破綻はないけど、その分、失望もない。トータル・バランスが取れているので、安心して聴くことができる。こうやって書いちゃうと、「進歩とか前身する気ねぇのかよ」と思ってしまいがちだけど、ジャズ・ファンクにそれを求めるのはお門違いである。深化することはあっても、進化はない。すでに大方完成されたフォーマットなので、前向きな姿勢を求めるのなら、他のジャンルを聴いた方がいい。中途半端に他のジャンルに色目を使ったりすると、「何か違う」感が強くなり、軌道修正が難しくなってしまうのも、このジャンルの特徴である。誰とは言わないけど。
 で、Speedometer。オフィシャル・サイトを見てみると、前回コラボしたJames Juniorとのコラボが復活、新曲のPVが流れてくる。ライブも行なってるようなので、やっぱり『Downtown Funk '74』自体がサイド・プロジェクト的な扱いで、いまの本流はこっち側らしい。





Bamboos 『Night Time People』

The_Bamboos_Night_Time_People_digital_album_cover これを書いている時点ではまだ未発売だけど、シングルがめちゃめちゃカッコいいので、フライングで紹介。実はBamboos、俺的には終わったバンドだと思っていたのだけど、いやいや全然だいじょうぶ、ゴメンちょっと舐めてたわ。
 ベスト・アルバムのリリース後、オーストラリアでは人気のロック・バンドのヴォーカルTim Rogersとコラボしたり、Robbie Williamsのオーストラリア・ツアーでジョイントしたりなど、コンテンポラリー色が強くなっていたBamboos。もともとメンバーそれぞれがサイド・プロジェクトでアク抜きをして、本体ではポップ・テイストが強くなりつつあった彼らだけど、いやいやそれもジャズ・ファンクっていうベースがあっての話でしょ。ここ最近の活動なんて、ほとんどバック・バンド扱いだし。
 前述のSpeedometerもそうだけど、メジャーで生き残ってゆくためには、あんまりカラーに合わない請負仕事もやんなくちゃならないんだろうな、と思っていたのだけど、ここに来てジャズ・ファンク・バンドとしての彼らが復活、ポップさもありながら、ソウル・テイストの濃いシングル「Lit Up」がリリースされた。



 ヴォーカルはもちろん、歌姫Kylie Auldist。近年は課外活動が多くなっていたけど、お互い収まりのいい場所は、やっぱりここだった。いいんだよ、これで。
 レーベル移籍のゴタゴタや多人数バンドの運営方針もあって、あんまり「らしくない」仕事も敢えて受け、ここ数年は基盤の確立に邁進していた彼らだったけど、ここにきて準備が整ったのだろう。やればできる人たちなのだ。様々な事情やしがらみが絡み合って、敢えてやらなかっただけであって。
 数えてみれば5年振りとなる、満を持してのオリジナル・アルバム『Night Time People』。まだ聴いてないけど、俺的に期待値は相当高い。来月だぞ、心して待て。
 と思っていたら、新たな音源がリリース、いわゆるシングル・カット第2弾がオフィシャル・サイトでもアップされていた。新曲「Broken」は、なんとBamboos初のラッパーとのコラボ。地元オーストラリアのUrthboyがフィーチャリングで参加している。Kylieが歌うパートは文句なしだけど、まぁ久しぶりだしこういったのもアリか。




Kylie Auldist 『Family Tree』

Kylie Auldist 前回のCookin' On 3 Burnersでもレビューした通り、DJ Kungsリミックスによる「This Girl」の世界的大ヒットにより、ソウル・ディーヴァのポジションを確立したKylieの2016年作。言っちゃ悪いけど、ほとんど棚ボタみたいなシンデレラ・ストーリーだったよな。
 とはいえ、まったくの偶然で転がり込んできたヒットではなく、オリジナルのトラックが良くできていたからこその結果である。リミックスする方だって、センスを問われるわけだから、下手な曲は選べないし。
 そんな流れがあったからなのかどうかは不明だけど、長年在籍していたTru ToughtsからFreestyleへ移籍、環境の変化と共にサウンドも一変した。これまでバッキングを務めていたBamboosとは一線を画し、80年代ユーロビートを思わせる、世界的なトレンドのエレクトロ・ファンク~ブギ路線に大きく方向転換している。これまではむしろオーガニックな生音主体のサウンドだったけど、ここにきて打ち込みサウンドの大幅導入と来た。



 多くのダンス・チューンの実例にあるように、「ソウルフルな女性シンガー」と「高速BPMビート」との相性は良いため、あながちミスマッチな組み合わせではない。むしろKylie自身もKungsのトラックを聴いて、今まで気づかなかった方向性に活路を見出したんじゃないかと思われる。チープ過ぎると目も当てられないけど、もともとファンク方面には強いFreestyle、ちゃんとしたプロの仕事で組み立てられたトラックに隙はない。不特定多数のユーザーを想定して作られた、手間ヒマと金のかかったサウンドに仕上がっている。
 ジャズ・ファンク原理主義の人には多分敬遠されるだろうけど、先入観を一旦よけて、素直にダンス・チューンとして聴けば、安易なユーロビートじゃないことは瞭然だ。「こ難しいこと言ってるけど、ほんとはこういうのが好きなんだろ?」と突きつけられているようなサウンドである。どれを聴いても貧祖に感じられないのだ。
 シングル・ヒットで有頂天になることもなく、いまも地道に国内ツアーを回り、またBamboosの活動も怠りなく続けるKylie。身の丈に合った活動はさすが苦労人だけれど、せっかくだから本体でもう一度、ひと花咲かせて欲しいよな。




Hubert Lenoir 『Darlene』

folder 最後はちょっと番外編。ジャズ・ファンクではないけど、最近見つけたのでここで紹介。
 家でSpotifyでElectro Deluxeを聴いてて、フランス語圏のおすすめアーティストを辿ってるうち、彼がヒットした。取り敢えず、一番人気の「Fille de personne II」を聴いてみた。あらいいじゃん、じゃあ次も…、って具合で、結局全曲聴いてしまった。
 ググってみても、日本語の記事がない。フランス語ばっかり。英語圏でもどうやら無名に近いらしい。どうにか翻訳してみると、カナダ出身の23歳。これがデビュー・アルバムらしい。アートワークや声から女性だと思ってたけど、実は男だった。こんな基本情報も知らないで聴いていたのだ。



 記事を読むと、DonovanとElton JohnとPink Floydに大きな影響を受けた、とのこと。うん、何となくわかる。それに加えて、QueenとELOとT. Rexだな、この感じ。どちらにしろ70年代までの音に強くインスパイアされているっぽい。ジジくさい趣味だけど、若い世代が聴いたら、こんな風に素直に表現できちゃうんだよな。
 小さなバジェットで作ったらしく、レコーディングも少人数で行なっているのだけど、音はすごく良い。この辺はやっぱり金のかけ方が違うというかセンスが違うというか、はたまた空気が乾燥している風土なのか電圧が違うからなのか、比べればキリがない。
 どの曲にも深いこだわりが反映され、メロディ主体の楽曲もまた、きちんと練り上げた末の成果が窺える。文科系のパワー・ポップといったイメージなので、日本人のメンタリティにも共感しやすいサウンドである。まだデビューしたてなので、行く末は未知数だけど、案外アニメ系なんかと親和性が高そうなので、そっち方面で誰かオファーしてくれないものか。




世界のジャズ・ファンク・バンド巡り:UK編 - New Mastersounds 『Made for Pleasure』

folder 2015年リリース、今の時点で8枚目のレイテスト・オリジナル・アルバム。2001年デビューよりコンスタントな活動ぶりで、日本ではBaker Brothersと双璧を誇る人気のジャズ・ファンク・バンドという位置付け。前回のBakerのレビューでも書いたけど、そもそもセールス規模が小さいので、いちおう大物扱いではあるけれど、実売数的には大したことはない。その辺がイマイチ知られていない要因である。
 ほぼ定期的に何かしらのアクションがある安定した活動のため、日本でもそれなりに人気が高く、独自編集盤もリリースされているくらいである。この手のバンドにしてはアルバム中心のリリースとなっているのも、シングルの入手が難しい日本においては好条件である。

 近年のアーティストの世界的な収支傾向として、従来の音源販売にとって代わり、ライブ動員・グッズでの収益が主流になっている。積極的なメディア露出よりもむしろ、地道な草の根的ロードでも食っていけるようになったことは、本来喜ばしい傾向なのだけど、生演奏主体のバンドにとっては痛しかゆしでもある。
 テクノ/レイブ系のEDMスタイルならば、トラックメイカーともう1人、賑やかし担当がいればそれで済むけど、一般的なオーソドックス・スタイルのバンドでは、それなりの頭数が必要になる。ましてやジャズ・ファンクのバンドだと、サウンドの性格上、ホーン・セクションを常設するケースも多く、そうなると10人前後の大所帯になってしまう。当然、ギャラを各自等分してゆくと、微々たる分け前になってしまう。
 ジャンルの性格上、ロック系と比べると大規模な動員は期待できないので、一般的なロック・バンドと比べるとギャラは少なくなる。だからと言って、メンバーをリストラしてサウンドを弱体化させてしまうのも、本末転倒である。
 結局は収益の分母を増やすしか方法がないので、単純にライブの本数を増やすのが一番なのだけど、そうそうスケジュールが埋まるわけでもない。各メンバーもまた、趣味と実益を兼ねた他バンドへのヘルプもあって、なかなか全員顔をそろえることができない。収入を補填するための副業が忙しすぎて、メインの本業に支障をきたすのは、実はよくあること。
 どうにか都合をつけて短期ツアーくらいは行なうことができても、何かと手間と経費のかかるレコーディングにまで時間を割くのは、もっと難しい。現代ジャズ・ファンクのリリース・スケジュールがシングル中心になっているのは、こういった理由もある。

DSC_5936

 その点、New Mastersoundsはホーン・セクションなしの4人編成、ほぼベーシックなバンド編成のみでできるオーソドックスなサウンドが特徴である。少数精鋭なので多国間の移動も最小限で済み、それだけ取り分も多くなる。バンドのネーム・バリューも安定しているので、オファーもそこそこ途切れずにいる。定期的なライブ開催によってブランクが空かない分だけ、アンサンブルも安定している。
 コンパクトで小回りが利く。なんか軽自動車のCMみたいだな。

 Eddie Roberts (G)
 Simon Allen (D)
 Pete Shand (B)
 Joe Tatton (Key)
 の4名が基本メンバーで、レコーディング時にはホーン・セクションを呼んだりヴォーカリストをフィーチャーしてるけど、大体はこのメンツで固定している。コンスタントな活動を継続してる分だけ、そんなに時間的な余裕もないはずなのに、リーダーのEddieは合い間を縫ってサイド・プロジェクトに勤しみ、こちらでも同じようなペースでライブだレコーディングだと活動している。それが本体の活動を圧迫することなく、しかもそれぞれで得た知識・経験やスキルを双方にフィードバックしているので、気持ち悪いくらいの好循環となっている。
 ここまで行っちゃうと、ワーカホリックじゃないんだよな。ただただ、好きでやってるだけなんだよ。

 このジャンルの中ではメジャー・クラスに位置するNew Mastersounds、いわゆるニッチなところを追求しているのではなく、極めてオーソドックス、ファンクというよりはジャズ、特にNu Jazzのテイストが強い。もう一方の雄であるBaker Brothersはロックやファンクのミクスチュアに加え、ヒップホップのイディオムも導入している分だけ、クラブ・シーンには滅法強い。その辺で彼らとはうまく棲み分けができているのだけど、逆に言えばクセの少ないマイルドな音楽性が仇となる場合もある。
 このジャンルのビギナーならともかくとして、少し聴く幅が広がってゆくと、ブルースやファンクなどの「濃い」味を知ってしまい、ちょっと食い足りなくなってしまうのも事実。限りなく4ビートに近づくとラウンジ・ジャズと見分けがつかなくなるし、ヴォーカル・トラックになると、まんまアシッド・ジャズである。
 そういったクセのなさが物足りなく感じる人もいるだろうけど、右も左もわからないビギナーにとっては、ある意味敷居の高い「ジャズ・ファンク」という音楽にスムーズに入って行けるサウンドがここにある。

7289322672_e8b584c29b_o_730_548_c1

 「Live Music Archive」という海外サイトがあり、そこではアメリカを中心としたプロ/アマ問わず、ほとんどフルセットのライブ音源がアップロードされている。無名アーティストの音源なら珍しくないけど、このサイトは日本でも名前の知られているメジャーどころも積極的に参加している点が強み。怪しげな会員制海外トレント・サイトが一時ブームとなり、無許可・流出音源の違法アップロードが盛んに行なわれていた時期があったけど、ここではすべてアーティスト公認となっている。なので、オーディエンス録音によるブートまがいの音質のモノは少なく、きちんとミックスされたサウンドボード音源が主体となっている。商品として販売できるレベルの音源が、堂々とダウンロードできる。サーバー維持のため、たまにDonateするのが良心だけどね。
 90年代のジャム・バンド隆盛によって自然発生的にできたサイトのため、多くは有名無名のジャム・バンドが多勢を占めている。ていうか、「アメリカにバンドって、こんなにいるのかよっ」と突っ込んでしまうくらい膨大な量なので、アーティスト名だけ眺めていても時間が過ぎてしまうくらいである。
 有名どころでは、ジャム・バンドといえばこの人たちがルーツのGrateful Dead。60年代からカセットテープのコピー音源が全世界を飛び交っていた伝説のバンドのアップ数、なんと10000超‼。絶対、一生かけても聴き通せないほどの物量である。しかも、これに各メンバーのソロ・プロジェクトも含めると…。まぁいいや、俺は多分聴かないし。考えるだけで胸焼けしそう。
 Disco BiscuitsやString Cheese Incidentなど、俺でも知ってるアーティストが1000を超えるライブ音源をアップしてくれているのだから、このジャンルが好きな人にとっては毎日がパラダイスである。ジャム・バンド以外にも、Smashing PumpkinsやJack Johnson、日本でもジェイク・シマブクロが音源アップしてるので、ぜひ一度覗いてみてほしい。
 で、New Mastersoundsもここに参戦しており、2016年4月現在の登録数は291。 Deadはもう別格なのでレジェンドとして、300弱というのは中堅どころといった具合。しかも現役バリバリのライブ・バンドのため、その数はこれからも増えてゆくこと必至。ほとんどがフルセットのため、全部聴くとなるととんでもない分量になる。しかも、そのアーカイヴは現在もままだ増え続けている。

ダウンロード

 物理メディアを収益の柱とするのではなく、ライブ音源の拡散によって評判を集め、さらにライブの集客を増やしてゆくというビジネスモデルは、前述したDeadによって確立されたものである。小まめなロードに出ると、優に3年はかかると言われている国土の広さが、彼らのような活動スタイルを成立させていると言ってよい。
 こうした音源<ライブ重視の流れは全世界的なものになっている。ここまでは音源のみの話題だったけど、海外のライブではでスマホの持ち込み・撮影が当たり前になっており、HDクラスの映像がほぼリアルタイムで観ることができる時代になってきている。昔、画質の粗いブートVHSに高い金を出して買った覚えもあるけど、今ではそんな話も聴かなくなった。
 今のところ「Live Music Archive」、アメリカ発ということもあって、どうしてもジャム・バンドの音源に偏りがちだけど、この流れがEUにも広がってくれれば、もっと多様なジャンルを楽しむことも可能になる。そりゃもちろん、いろいろ条件が整備されないと難しいのだろうけど、そんな諸々がクリアになったら、ジャズ・ファンクという些末なジャンルの認知も、もうちょっと深まるんじゃないかと思われる。
 日本じゃ無理だろうな、JASRAC強すぎるし、レコード会社のしがらみキツそうだし。


Made for Pleasure
Made for Pleasure
posted with amazlet at 16.04.22
New Mastersounds
Royal Potato (2015-10-02)
売り上げランキング: 86,675




1. Made For Pleasure
 オープニングを飾る、オーソドックスなジャジー・インスト。ジャズ・ファンクのオープニングと言えば、この手のインストが定番となっている。ヴォーカル・ナンバーで始まることはまずない。ここがバンドのアイデンティティを発揮する重要なポジションになっている。
 終盤の変拍子、こういうのってそんなにリハーサルもせず、空気感一発なんだろうな。そういったことが手軽にできるほどのテクニックの持ち主揃いだということ。

2. High & Wide
 サンフランシスコを拠点に活動するWest Coast Horns参加による、ブラスを中心に据えたインスト・ナンバー。といってもメンバー2人のサックス&トランペットのコンビなのだけど、掛け合いも息の合わせ方もピッタリ。ライブで鍛えられた人たちなので、音の厚みも充分表現されている。たった2人なのにね。

3. Enough Is Enough
 今回の歌姫 Charly Lowry はネイティヴ・アメリカンのシンガー・ソングライターで、自らギター片手に歌うショットもちらほらネットに転がっている。ディーヴァというにはシュッとしたシャープな顔立ちの女性だけど、そのヴォーカライズはなかなかパワフル。
 彼女に引っ張られたのか、バンドもホーン・セクションも、いつもはないスタックス系のオールド・ソウル・スタイルのプレイを披露。バンドに特定のクセがなくテクニックも折り紙付きということは、ほんとレンジの広いジャンルを網羅できるということを教えてくれるナンバー。公式サイトに載ってるEddieの解説によると、MetersをバックにしたLee Dorseyを狙った、とのこと。Lee Dorseyはちゃんと聴いたことないけど、Metersは納得。



4. Fancy
 2014年にリリースされた、オーストラリア出身の女性ラッパーIggy Azaleaによる、全米7週連続1位を獲得した大ヒット・ナンバーのカバー。日本で言えば、Indigo jam Unitが「恋するフォーチュン・クッキー」をカバーするようなもの。なんだ、そりゃ。でも、ジャズ・ファンクでは時々、敢えてこういったベタなナンバーを捻った形でカバーすることがある。Speedometerも「Happy」カバーしてたしね。
アッパーな原曲とは一線を画すために、ここではEddieのギターをメインとしたオーセンティック・スタイル、しかもダブになってる。MCのSpellbinderはデンバー在住のラスタ・マン。どっから見つけてくるんだ、こんな男。

5. Cigar Time
 Eddieいわく、Grant Greenをモチーフとしたソウル・ジャズを狙った、ということで、意図はしっかり表現されている。中盤のハモンドもイイ感じのラウンジ・ジャズに仕上がっている。タイトルといい、大人の聴く音楽。若いうちはムリして聴いてたけど、こういうのがスンナリ受け入れられちゃうこと、人はそれを「大人になった」というのだろう。

6. Joy
 ストレートなオールド・スタイルのソウル・ナンバー。Ann Peeblesっぽく仕上げたということだけど、こちらも見事ハマっている。
 多くのジャズ・ファンク・バンドの特徴として、そのジャンルの性質上、スネアの音がやたら強調されることによって、逆にヴォーカル・ナンバーだと互いの良さが損なわれてしまうケースが多々あるのだけれど、彼ら、ていうかSimonは俺が俺がと前に出るタイプではないので、歌姫の良さをうまく引き出している。バランスって大事だよな。



7. Sitting On My Knees
 5.同様、ギター・メインのインストだけど、時々アクセントでエフェクトを利かせた音を鳴らしているので、ちょっぴりハード目。テンポも速くて気合が入りまくっている。あらゆる技とテクニックを入れまくっているので、ギター・インストでも聴いてて飽きないのは、俺的にZappaと肩を並べてほど。

8. Let’s Do Another
 Eddie抜き、ほぼリズム隊によるインスト・ナンバー。ライブ・セットで言えば幕間的なポジションの箸休めサウンド。オーディエンスも一旦休憩といったところか。

9. Pho Baby
 Eddie再び登場。こういったスタイルのナンバーを聴いていると、この人はやっぱり根っこがブルースなんだなぁ、ということがありありとわかる。
 このバンド、一応イギリスのバンドだけど、Eddieだけがアメリカ人という構成になっている。そんな彼のヤンキー体質が、マイルドに振れ過ぎる傾向にあるUK勢のストッパーになってるんじゃないかと思われる。

maxresdefault

10. Just Gotta Run
 なので、こういったストレートなソウル・ナンバーも無理やり感が少なく、しっかりグルーヴ感を出すことができる。インスパイアされたのがBettye LaVetteという大御所ソウル・シンガー。俺も知らなかった人だけど、実際、Youtubeで観てみたところ、パワフルなオバちゃん。まだ若いCharlyがその域に達するまでは先のことだけど、そのソウルは充分継承されている。

11. Tranquilo
 ラストはマッタリとしたジャジー・インスト。エピローグ的なスロー・チューンは、夢中になって観た映画のタイトルバックの如く、至福の余韻を味わわせてくれる。
 
 もう帰って寝る時間だ。
 でも、ちょっとどこかで一杯、
 昂りを鎮めてからにしようか。




Re: Mixed
Re: Mixed
posted with amazlet at 16.04.22
New Mastersounds
Record Kicks (2008-03-25)
売り上げランキング: 597,054
Masterology
Masterology
posted with amazlet at 16.04.22
New Mastersounds
Sundazed Music Inc. (2010-12-07)
売り上げランキング: 408,998

世界のジャズ・ファンク・バンド巡り:オランダ編 - Soul Snatchers 『Where Y'At』

folder オランダという国は、EU諸国の中でも日本人にとって馴染みの薄い国のひとつであり、関心がない人も多いと思うけど、かく言う俺もその1人。これまでの人生でオランダにまつわる出来事があったかといえば、正直思い出せない。今後も多分、それほど深く関わることはないと思う。悪気はないので、オランダ関係の人、もし読んでたらごめんなさい。
 まずは真っさらの状態で、「オランダ」と聞いて思いつくワードを片っぱしから並べてみると、「チューリップ」「風車」「干拓地」といったところ。ほぼ中学の教科書に載ってるのと同じレベルである。ちなみに首都はアムステルダムとなっており、このワードが出てくると、もうちょっと話に広がりが出てくる。
 アムステルダムと聞いて連想するモノはと言えば、LSDやら怪しげなドラッグやらが完全合法な上、国家が管理してきちんと整備された売春スポットがあるなど、なんだか家族連れで行きづらそうなイメージが強い。もちろんオランダ全体がそういった淫靡さに包まれているわけではなく、アムステルダムだけ特別扱いなだけである。アムステルダム以外に住む多くのオランダ人は、至ってマジメな国民性である。
 ほんとオランダの人、ごめんなさい。

 干拓地という土地の特殊性もあって、EU他国と比べて早くから港湾関係が発展していたオランダ。昔から海外貿易が盛んだった土地柄ゆえ、他国の文化を取り入れることにも積極的で、特に音楽ビジネスに関しては、EU諸国の中心的役割を担っている。一般向けのライブ・イベントやフェスティバルだけじゃなく、業界人向けのメーカーの見本市やセミナーも盛んに行なわれている。世界中の音楽関係者がオランダを拠点として、新鮮な情報を発信しているのだ。
 とは言っても、あまりに英米音楽偏重の日本では、ほとんど伝えられていないのが現状である。ネット時代になって、わざわざ足を運ばなくても世界中の情報が手軽に入るようになったけど、まだまだ日本でも紹介されていない情報はいっぱいある。
 その筋の人にとっては結構有名らしいけど、オランダは世界有数のレイヴ大国という側面も持ち、国境を飛び越えてボーダーレスに活動するDJを続々輩出していることでも知られている。オランダという国家は、前述の売春の例もあるように、とにかく金になるものならすぐ管理下に置きたがるところがある。ただし一方的に搾取するだけでなく、きちんとその事業に適切な投資をして育成を試み、結果的に双方に大きな利潤をもたらすよう取り計らってるのが、どこかの国と違うところ。事実、日本ではほんとひと握りの特権でしかない、DJ専業で生計を立てているクリエイターも珍しくない。1億円プレイヤーもボコボコ誕生しているくらいで、ここら辺でも日本とはかなりの格差を感じてしまう。

The-Soul-Snatchers-2015-Banner

 じゃあダンス・ミュージック以外、普通のオランダ人は一体何を聴いているのか。ということで調べてみたのが、オランダの最新アルバム・チャート。当然、地元のアーティストで俺が知ってる名前はまったくない。馴染みがあるのはやはり英米のアーティスト、Justin bieber やAdeleなど、その地元アーティストに挟まれるようにチャートインしている。
 そんな中、俺がつい声を上げてしまったのが、9位にランクインのCharles Bradley 。以前何度か紹介したSharon Jones同様、ニューヨークのレトロ・ソウル専門レーベル「Daptone」に所属、派手な売れ方はしないけど、手堅く地道にキャリアを積み上げてきた人である。何十年かの下積み修行を経てデビューした、50代の新人演歌歌手と例えるのが一番近いんじゃないかと思われる。日英米どの国でも、彼がこんな上で健闘しているのは考えづらい事態である。そういったアーティストがトップ10に入っちゃっているのだから、なかなか侮れない国民性である。
 他に俺が気になったところでは、16位にアメリカのブルース・ロッカーJoe Bonamassa、Bowie亡き後、オルタナのゴッドファーザーになりつつあるIggy Pop が40位にランクインしている。これも本筋とはまったく関係ないけど、ベビメタが71位だって。
 Bob MarleyのベストとBuena Vista Social Clubのサントラがロング・セラーとしてチャートインしていることから、音楽の裾野が広いお国柄であることが窺える。

 ついでにもうひとつ、オランダ出身で著名なアーティストって誰だろう?と思って調べて見ると、真っ先に出てきたのがEdward Van Halen。まぁ…、まぁそうなんだろうけど、これは生まれがオランダというだけで、彼の音楽性がお国柄に反映されているとは言いがたい。なので、もう少し遡って調べてみると、あのダンス・クラシック「Venus」のオリジナル・ヴァージョンを歌っていたShocking Blueがオランダ出身だった。これもそんなにオランダっぽくない。次にごく一部で有名なハード・プログレのFocus、80年代ヘヴィメタ・シーンを席巻したAdrian Vandenbergがいる。どちらもオランダという国を象徴しているわけではないけど、EU諸国でのハード・ロック/ヘヴィメタの浸透具合は有名である。
 もうちょっと有名どころはいないものかと、ジャズ方面まで手を広げてみると、いたよ、Candy Dulfer。女性サックス・プレイヤーの第一人者として、彼女あたりが最も有名なオランダ出身ミュージシャンかもしれない。
 異論があれば、どうぞどうぞ。

Soul_Snatchers_2012-17-438x300

 EDM系をバリバリ使用した、ビート重視のダンス・ミュージックがメインストリームになっているのは、ほんと日本を除いた世界的な傾向。売り上げ規模は全然違うけど、現代ジャズ・ファンクの世界もまた、ボーダーレスな展開という点においては同じと言える。ほんと、どの国のバンドもほとんど同じ傾向のサウンドであり、特にインスト中心になると、誰が誰だか見分けがつかない。ジャズ寄りだファンク寄りだヴィンテージ・ソウル寄りだと、一応多種多様ではあるのだけれど、何しろほぼすべてのバンドのバックボーンにあるのが60〜70年代のJBサウンドなのだから、根っこはどれも同じである。多かれ少なかれ、直接・間接はあれど、みんなが皆、有機的な16ビートに対してリスペクトを表明しているので、大きな差別化が図れないのだ。
 いわゆるショーマン・シップ、前面に出て俺が俺がという、超絶ソロをやりたがる人も極めて少ない。どちらかと言えばリズム重視、延々と16を刻んでいられりゃそれで幸せ、という人が多い。基本、バッキングなどの裏方志向を持つ人の方がこのジャンルには向いているため、、分不相応な野心とは程遠い人が多い。

 Ton van der Kolk - Bass/Guitar/Keys/Percussion
 Phil Martin - Drums/Guitar/Keys/Percussion
 Ron Smith - Guitar
 Bas Uijdewillegen - Hammond Organ
 Thomas Streutgers - Tenor Sax
 Tjeerd Brouwer - Trombone
 Ruud Kleiss - Trumpet
 Curtis T. - Vocals
 Jimi Bellmartin – Vocals
 というメンバー構成のオランダのジャズ・ファンク・バンド、Soul Snatchers。
 オランダのニュー・ジャズ・シーンのけん引役として、レーベルSocial Beatsを主宰しているのが、ドラムのMartin。ドイツのMocamboもそうだけど、アーティスト自らレーベルを立ち上げて後進や仲間のバンドを呼び寄せ、シーンの相互活性化を図るケースが、このジャンルでは世界的な傾向になっている。単独での集客がキツイ新進バンドのために合同でのショーケース・ライブを企画したり、シングル・リリースのみのバンドが多勢を占めるこのジャンルを紹介してゆくため、サンプラー的なコンピレーション・アルバムでひとまとめにしてしまったりなど、何かと相互扶助の精神が強い。
 今どきメジャーのレーベルが世話を焼いてくれる時代じゃないし、しかも制約が多すぎるなど、デメリットの方が多い。ある程度好き勝手、自己責任で動ける方がお互いのためにも良い。売れすぎちゃっても、管理が面倒だしね。

 これまで2枚のフル・アルバムをリリースしてきた彼ら。他バンドへの客演やらヘルプやら各自サイド・プロジェクトが忙しくて全員顔をそろえる機会が少なく、ほぼ事前インフォメーションもなく突然リリースされた『Where Y'At』、これでやっと3枚目。これまではインスト主体でやってきたところを、今回は何かしら世間の手ごたえを感じたのか、ほぼ半数がヴォーカル入りのナンバーとなっている。この辺に、バンドとして「攻め」の姿勢が窺える。
 俺個人としてはジャズ・ファンク・バンドの場合、パワフルな女性ヴォーカルの方が好きなのだけど、ビート感の強い彼らのサウンドには、豪快な男性ヴォーカルの方がフィットしている。細かなニュアンスもへったくれもない、敢えて一本調子のブルース・タッチが似合っている。
 しつこいようだけど、さすがCharles Bradleyが上位にランクインするお国柄だけはある。


Where Y'at
Where Y'at
posted with amazlet at 16.04.18
Soul Snatchers
Social Beats (2016-03-03)




1. Humpin' & Bumpin'
 まずオープニングを飾るのは、今回のアルバムを象徴するインスト・ブラス・ファンク。ジャズ・ファンク・バンドはまずテーマ曲が大事である。オルガンをリード楽器に据えた軽快なダンス・ファンク。

2. Foolishness
 専属シンガーJimi BellmartinによるAOR的ソウル。70年代のミディアム・ソウル・バラードは現代なのに、すでにダンス・クラシック的な雰囲気を醸し出している。声から想像できるように、アメリカの大御所ソウル・シンガーのような風貌のJimi、この人も結構なバンドでの客演が多く、あちこちのバンドで名前を聴くことができる。

3. Little Love
 続くこちらも男性ヴォーカル・ナンバー。歌うはCurtis T.。ちょっとPharrell Williamsっぽい軽見のあるヴォーカルが特徴で、バンド・サウンド的にも硬軟取り混ぜたヴァリエーションが演出できる。このタイプの曲ならうまく展開すればシングル・ヒットも狙えそうな気もするのだけど、難しいものなのか。Bamboosのようにレコーディングとライブとのスタイルをはっきり分けてしまえば、結構いいところまで行きそうなのだけど、まぁやりたがんねぇだろうな。



4. How Ya Do It
 再びJimiによる熱いソウル・ナンバー。ちょっぴりジャジーなバッキングに乗せてシャウトするスタイルは、どっぷりサイケに浸かる以前のTemptationsっぽく聴こえるのだけど、そういった過去のシンガーへのリスペクトが熱いナンバー。

5. Use It up
 再びCurtisによる軽みのあるシカゴ・ソウル調チューン。ポップ・ソウル・タッチの親しみやすいナンバーは、この手の硬派ジャズ・ファンクにしては珍しいこと。やっぱBambbosみたいな方向性を目指してるんだろうか。

6. So Natural
 Jimiによる熱い熱いソウル・バラード。レトロとモダンの狭間を自在に行き来するスタイルは、自然とサウンドにバラエティが生まれるけど、逆に言えばフォーカスが定まりづらいのも確か。俺的にはCurtisのチャラい路線の方が好きなのだけど、オランダではこういったのがウケるんだろうな。何しろDaptoneが幅を利かせちゃう土地柄だし。

7. What Ya Gonna Do
 CDではちょうど折り返し、幕間と表現できるインスト・ナンバー。ライブだと、この時間はヴォーカル・パートは休憩中。呼吸を整え水分を取り、時に衣装を着替える時間。

maxresdefault (1)

8. Keep Workin'
 女性コーラスを従えた、「Workin’」でのコール&レスポンスが印象的なスタックス調ソウル。ヴォーカルはともかくとして、サウンド自体ファンキー成分は少なめ。Jimiにしては明るく軽快なポップ・チューンで、案外芸の幅の広い人なんだという特徴が窺える。そりゃそうだよな、年期入ってそうだもの。

9. Just Like Sly
 ここから一気にファンク臭くなる。ミディアム・テンポで通していたところを、ここではギアが一気にトップに入る。やっぱりホーン・セクションが前面に出ると音圧がまるで違ってくる。ファンキーでありながらジャズの要素も貪欲に取り込み、ヴォーカル・サウンドともいい感じで拮抗している。俺的にはベスト・チューンのひとつ。

10. Hold on
 Jimiによるソウル・バラード。ファンキーというよりはソウルフル。オランダではこういったのが全般にウケているのか、それとも国民の平均年齢が高いのか。まぁすそ野が広いのは何かと過ごしやすい。かなり濃いヴォーカルを利かせているのだけど、3分程度で終わるのでしつこくなり過ぎない。血管キレそうだもんね。



11. Stop Fightin'
 セカンド・ラインの入ったJimiの軽快なソウル・ナンバー。なんだ、こんなのもできるんだ。女性ヴォーカリストYolanda Kalbとのデュエットなので、ソフトな声質の彼女に合わせて軽快なポップ・ファンク。シングルでもアリじゃないかと思う。

12. Is It Your Love
 ラストはCurtisと謎の女性シンガーYoYoとのデュエット・ナンバー。多分、友人知人のシンガーに適当な名前を付けたんじゃないかと思われる。何しろインディーズなので、その辺のクレジットは結構適当である。まぁほとんどワンフレーズだし、主役は演奏陣なので。
 ソウル・レビューもこれで終了、「蛍の光」的な悠然としたスロー・ファンク。




Scratch My Itch
Scratch My Itch
posted with amazlet at 16.04.18
Unique Records/Social Beats (2012-02-10)
THE DUTCH NU-JAZZ MOVEMENT
THE DUTCH NU-JAZZ MOVEMENT
posted with amazlet at 16.04.18
VA - SOCIAL BEATS PRESENTS
UNIQUE RECORDS/SOCIAL BEATS/OCTAVE-LAB (2010-03-24)
売り上げランキング: 1,090,690
サイト内検索はこちら。

カテゴリ
アクセス
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

北海道の中途半端な田舎に住むアラフィフ男。不定期で音楽ブログ『俺の好きなアルバムたち』更新中。今年は久しぶりに古本屋めぐりにハマってるところ。
最新コメント