好きなアルバムを自分勝手にダラダラ語る、そんなユルいコンセプトのブログです。

#世界のジャズ・ファンク・バンド巡り

世界のジャズ・ファンク・バンド巡り:オランダ編 - Soul Snatchers 『Where Y'At』

folder オランダという国は、EU諸国の中でも日本人にとって馴染みの薄い国のひとつであり、関心がない人も多いと思うけど、かく言う俺もその1人。これまでの人生でオランダにまつわる出来事があったかといえば、正直思い出せない。今後も多分、それほど深く関わることはないと思う。悪気はないので、オランダ関係の人、もし読んでたらごめんなさい。
 まずは真っさらの状態で、「オランダ」と聞いて思いつくワードを片っぱしから並べてみると、「チューリップ」「風車」「干拓地」といったところ。ほぼ中学の教科書に載ってるのと同じレベルである。ちなみに首都はアムステルダムとなっており、このワードが出てくると、もうちょっと話に広がりが出てくる。
 アムステルダムと聞いて連想するモノはと言えば、LSDやら怪しげなドラッグやらが完全合法な上、国家が管理してきちんと整備された売春スポットがあるなど、なんだか家族連れで行きづらそうなイメージが強い。もちろんオランダ全体がそういった淫靡さに包まれているわけではなく、アムステルダムだけ特別扱いなだけである。アムステルダム以外に住む多くのオランダ人は、至ってマジメな国民性である。
 ほんとオランダの人、ごめんなさい。

 干拓地という土地の特殊性もあって、EU他国と比べて早くから港湾関係が発展していたオランダ。昔から海外貿易が盛んだった土地柄ゆえ、他国の文化を取り入れることにも積極的で、特に音楽ビジネスに関しては、EU諸国の中心的役割を担っている。一般向けのライブ・イベントやフェスティバルだけじゃなく、業界人向けのメーカーの見本市やセミナーも盛んに行なわれている。世界中の音楽関係者がオランダを拠点として、新鮮な情報を発信しているのだ。
 とは言っても、あまりに英米音楽偏重の日本では、ほとんど伝えられていないのが現状である。ネット時代になって、わざわざ足を運ばなくても世界中の情報が手軽に入るようになったけど、まだまだ日本でも紹介されていない情報はいっぱいある。
 その筋の人にとっては結構有名らしいけど、オランダは世界有数のレイヴ大国という側面も持ち、国境を飛び越えてボーダーレスに活動するDJを続々輩出していることでも知られている。オランダという国家は、前述の売春の例もあるように、とにかく金になるものならすぐ管理下に置きたがるところがある。ただし一方的に搾取するだけでなく、きちんとその事業に適切な投資をして育成を試み、結果的に双方に大きな利潤をもたらすよう取り計らってるのが、どこかの国と違うところ。事実、日本ではほんとひと握りの特権でしかない、DJ専業で生計を立てているクリエイターも珍しくない。1億円プレイヤーもボコボコ誕生しているくらいで、ここら辺でも日本とはかなりの格差を感じてしまう。

The-Soul-Snatchers-2015-Banner

 じゃあダンス・ミュージック以外、普通のオランダ人は一体何を聴いているのか。ということで調べてみたのが、オランダの最新アルバム・チャート。当然、地元のアーティストで俺が知ってる名前はまったくない。馴染みがあるのはやはり英米のアーティスト、Justin bieber やAdeleなど、その地元アーティストに挟まれるようにチャートインしている。
 そんな中、俺がつい声を上げてしまったのが、9位にランクインのCharles Bradley 。以前何度か紹介したSharon Jones同様、ニューヨークのレトロ・ソウル専門レーベル「Daptone」に所属、派手な売れ方はしないけど、手堅く地道にキャリアを積み上げてきた人である。何十年かの下積み修行を経てデビューした、50代の新人演歌歌手と例えるのが一番近いんじゃないかと思われる。日英米どの国でも、彼がこんな上で健闘しているのは考えづらい事態である。そういったアーティストがトップ10に入っちゃっているのだから、なかなか侮れない国民性である。
 他に俺が気になったところでは、16位にアメリカのブルース・ロッカーJoe Bonamassa、Bowie亡き後、オルタナのゴッドファーザーになりつつあるIggy Pop が40位にランクインしている。これも本筋とはまったく関係ないけど、ベビメタが71位だって。
 Bob MarleyのベストとBuena Vista Social Clubのサントラがロング・セラーとしてチャートインしていることから、音楽の裾野が広いお国柄であることが窺える。

 ついでにもうひとつ、オランダ出身で著名なアーティストって誰だろう?と思って調べて見ると、真っ先に出てきたのがEdward Van Halen。まぁ…、まぁそうなんだろうけど、これは生まれがオランダというだけで、彼の音楽性がお国柄に反映されているとは言いがたい。なので、もう少し遡って調べてみると、あのダンス・クラシック「Venus」のオリジナル・ヴァージョンを歌っていたShocking Blueがオランダ出身だった。これもそんなにオランダっぽくない。次にごく一部で有名なハード・プログレのFocus、80年代ヘヴィメタ・シーンを席巻したAdrian Vandenbergがいる。どちらもオランダという国を象徴しているわけではないけど、EU諸国でのハード・ロック/ヘヴィメタの浸透具合は有名である。
 もうちょっと有名どころはいないものかと、ジャズ方面まで手を広げてみると、いたよ、Candy Dulfer。女性サックス・プレイヤーの第一人者として、彼女あたりが最も有名なオランダ出身ミュージシャンかもしれない。
 異論があれば、どうぞどうぞ。

Soul_Snatchers_2012-17-438x300

 EDM系をバリバリ使用した、ビート重視のダンス・ミュージックがメインストリームになっているのは、ほんと日本を除いた世界的な傾向。売り上げ規模は全然違うけど、現代ジャズ・ファンクの世界もまた、ボーダーレスな展開という点においては同じと言える。ほんと、どの国のバンドもほとんど同じ傾向のサウンドであり、特にインスト中心になると、誰が誰だか見分けがつかない。ジャズ寄りだファンク寄りだヴィンテージ・ソウル寄りだと、一応多種多様ではあるのだけれど、何しろほぼすべてのバンドのバックボーンにあるのが60〜70年代のJBサウンドなのだから、根っこはどれも同じである。多かれ少なかれ、直接・間接はあれど、みんなが皆、有機的な16ビートに対してリスペクトを表明しているので、大きな差別化が図れないのだ。
 いわゆるショーマン・シップ、前面に出て俺が俺がという、超絶ソロをやりたがる人も極めて少ない。どちらかと言えばリズム重視、延々と16を刻んでいられりゃそれで幸せ、という人が多い。基本、バッキングなどの裏方志向を持つ人の方がこのジャンルには向いているため、、分不相応な野心とは程遠い人が多い。

 Ton van der Kolk - Bass/Guitar/Keys/Percussion
 Phil Martin - Drums/Guitar/Keys/Percussion
 Ron Smith - Guitar
 Bas Uijdewillegen - Hammond Organ
 Thomas Streutgers - Tenor Sax
 Tjeerd Brouwer - Trombone
 Ruud Kleiss - Trumpet
 Curtis T. - Vocals
 Jimi Bellmartin – Vocals
 というメンバー構成のオランダのジャズ・ファンク・バンド、Soul Snatchers。
 オランダのニュー・ジャズ・シーンのけん引役として、レーベルSocial Beatsを主宰しているのが、ドラムのMartin。ドイツのMocamboもそうだけど、アーティスト自らレーベルを立ち上げて後進や仲間のバンドを呼び寄せ、シーンの相互活性化を図るケースが、このジャンルでは世界的な傾向になっている。単独での集客がキツイ新進バンドのために合同でのショーケース・ライブを企画したり、シングル・リリースのみのバンドが多勢を占めるこのジャンルを紹介してゆくため、サンプラー的なコンピレーション・アルバムでひとまとめにしてしまったりなど、何かと相互扶助の精神が強い。
 今どきメジャーのレーベルが世話を焼いてくれる時代じゃないし、しかも制約が多すぎるなど、デメリットの方が多い。ある程度好き勝手、自己責任で動ける方がお互いのためにも良い。売れすぎちゃっても、管理が面倒だしね。

 これまで2枚のフル・アルバムをリリースしてきた彼ら。他バンドへの客演やらヘルプやら各自サイド・プロジェクトが忙しくて全員顔をそろえる機会が少なく、ほぼ事前インフォメーションもなく突然リリースされた『Where Y'At』、これでやっと3枚目。これまではインスト主体でやってきたところを、今回は何かしら世間の手ごたえを感じたのか、ほぼ半数がヴォーカル入りのナンバーとなっている。この辺に、バンドとして「攻め」の姿勢が窺える。
 俺個人としてはジャズ・ファンク・バンドの場合、パワフルな女性ヴォーカルの方が好きなのだけど、ビート感の強い彼らのサウンドには、豪快な男性ヴォーカルの方がフィットしている。細かなニュアンスもへったくれもない、敢えて一本調子のブルース・タッチが似合っている。
 しつこいようだけど、さすがCharles Bradleyが上位にランクインするお国柄だけはある。


Where Y'at
Where Y'at
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Soul Snatchers
Social Beats (2016-03-03)




1. Humpin' & Bumpin'
 まずオープニングを飾るのは、今回のアルバムを象徴するインスト・ブラス・ファンク。ジャズ・ファンク・バンドはまずテーマ曲が大事である。オルガンをリード楽器に据えた軽快なダンス・ファンク。

2. Foolishness
 専属シンガーJimi BellmartinによるAOR的ソウル。70年代のミディアム・ソウル・バラードは現代なのに、すでにダンス・クラシック的な雰囲気を醸し出している。声から想像できるように、アメリカの大御所ソウル・シンガーのような風貌のJimi、この人も結構なバンドでの客演が多く、あちこちのバンドで名前を聴くことができる。

3. Little Love
 続くこちらも男性ヴォーカル・ナンバー。歌うはCurtis T.。ちょっとPharrell Williamsっぽい軽見のあるヴォーカルが特徴で、バンド・サウンド的にも硬軟取り混ぜたヴァリエーションが演出できる。このタイプの曲ならうまく展開すればシングル・ヒットも狙えそうな気もするのだけど、難しいものなのか。Bamboosのようにレコーディングとライブとのスタイルをはっきり分けてしまえば、結構いいところまで行きそうなのだけど、まぁやりたがんねぇだろうな。



4. How Ya Do It
 再びJimiによる熱いソウル・ナンバー。ちょっぴりジャジーなバッキングに乗せてシャウトするスタイルは、どっぷりサイケに浸かる以前のTemptationsっぽく聴こえるのだけど、そういった過去のシンガーへのリスペクトが熱いナンバー。

5. Use It up
 再びCurtisによる軽みのあるシカゴ・ソウル調チューン。ポップ・ソウル・タッチの親しみやすいナンバーは、この手の硬派ジャズ・ファンクにしては珍しいこと。やっぱBambbosみたいな方向性を目指してるんだろうか。

6. So Natural
 Jimiによる熱い熱いソウル・バラード。レトロとモダンの狭間を自在に行き来するスタイルは、自然とサウンドにバラエティが生まれるけど、逆に言えばフォーカスが定まりづらいのも確か。俺的にはCurtisのチャラい路線の方が好きなのだけど、オランダではこういったのがウケるんだろうな。何しろDaptoneが幅を利かせちゃう土地柄だし。

7. What Ya Gonna Do
 CDではちょうど折り返し、幕間と表現できるインスト・ナンバー。ライブだと、この時間はヴォーカル・パートは休憩中。呼吸を整え水分を取り、時に衣装を着替える時間。

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8. Keep Workin'
 女性コーラスを従えた、「Workin’」でのコール&レスポンスが印象的なスタックス調ソウル。ヴォーカルはともかくとして、サウンド自体ファンキー成分は少なめ。Jimiにしては明るく軽快なポップ・チューンで、案外芸の幅の広い人なんだという特徴が窺える。そりゃそうだよな、年期入ってそうだもの。

9. Just Like Sly
 ここから一気にファンク臭くなる。ミディアム・テンポで通していたところを、ここではギアが一気にトップに入る。やっぱりホーン・セクションが前面に出ると音圧がまるで違ってくる。ファンキーでありながらジャズの要素も貪欲に取り込み、ヴォーカル・サウンドともいい感じで拮抗している。俺的にはベスト・チューンのひとつ。

10. Hold on
 Jimiによるソウル・バラード。ファンキーというよりはソウルフル。オランダではこういったのが全般にウケているのか、それとも国民の平均年齢が高いのか。まぁすそ野が広いのは何かと過ごしやすい。かなり濃いヴォーカルを利かせているのだけど、3分程度で終わるのでしつこくなり過ぎない。血管キレそうだもんね。



11. Stop Fightin'
 セカンド・ラインの入ったJimiの軽快なソウル・ナンバー。なんだ、こんなのもできるんだ。女性ヴォーカリストYolanda Kalbとのデュエットなので、ソフトな声質の彼女に合わせて軽快なポップ・ファンク。シングルでもアリじゃないかと思う。

12. Is It Your Love
 ラストはCurtisと謎の女性シンガーYoYoとのデュエット・ナンバー。多分、友人知人のシンガーに適当な名前を付けたんじゃないかと思われる。何しろインディーズなので、その辺のクレジットは結構適当である。まぁほとんどワンフレーズだし、主役は演奏陣なので。
 ソウル・レビューもこれで終了、「蛍の光」的な悠然としたスロー・ファンク。




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世界のジャズ・ファンク・バンド巡り:UK編 - Impellers 『This Is Not A Drill』

lego_040_impellers_1200x1200_300dpi_cmyk 今回はイギリス編。UKファンクはなかなかの激戦区で、様々なバンドがしのぎを削っている。もともとはOmarやLuck of Afroなどの有名どころが所属するジャズ・ファンクの名門レーベルFreestyleからデビューしたのだけど、この2枚目のアルバムからはドイツのレーベルMochamboからのリリース。そう、以前紹介したGizelle SmithやMighty Mocambosらが所属している、世界中の濃いジャズ・ファンク/ソウル関連のアーティストが集結し、なんとも濃い芳香を放っている、あのMochamboである。
 EU圏は特にそうなのだけど、このジャンルのアーティストはほんと出身国にこだわらない、ボーダーレスな活動を行なっているバンドが多い。だからと言ってドイツ中心で活動しているわけでもなく、あくまで活動ベースは出身国であり、遠征がてらEU圏内を回っているのがほとんど。自分の国だけで回すには、バンド運営が難しいのだ。
 MocamboもFreestyleもそうなのだけど、レーベル側もそれほどアーティストに介入・拘束するわけでもない。どのレーベルも小規模なもので、基本、レーベル・カラーに沿った、お気に入りのアーティストなら片っぱしから契約している状況なのだけど、彼らの業務はほぼ配給のみ、ネット以外のプロモーションはほとんどタッチしないスタイルを貫いている。日本のそれと比べると、かなりドライな関係のようにも思えるけど、双方のリスクを最小限に抑えるには、これが最も効率的なビジネス・モデルなのだろう。

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 全世界的にダウンロード販売が主流を占めるようになった昨今、物理メディアであるCDのセールスは右肩下がりが止まらない傾向にある。そのCDの流通もネット通販が主流となってきており、固定店舗への営業はあまり効果的ではなくなってきている。中間卸や固定店舗を重視するよりはむしろ、在庫保有を極力抑えた無店舗形態の方が効率も良い。
 これがひと昔前なら、どのアーティストもデビュー時の洗礼として、レコード会社の仕切りで全国キャンペーンだプロモーションだと、不本意なドサ回りを強いられたものだけど、今じゃどのメーカー・ショップにも、そんな体力はない。あったとしても、恩恵を受けられるのはごく一部のトップ・アーティストだけ、ほとんどのアーティストはデビューしても放置され、販促費も回って来なければ、担当者さえまともに対応してくれない惨状になっている。

 逆に考えれば、レーベルからの余計な横ヤリがほぼ無いに等しいので、従来の発想に捉われないスタイルで行動するアーティストが増えてきている現状である。
 地道なライブ活動は変わらないのだけど、どの国のジャズ・ファンク・バンドもネット媒体を積極的に活用している。通常のオフィシャル・サイトやYouTubeは当たり前で、他にもFacebookやらTwitterやらInstagramまで、そりゃ本当にもう、あらゆるメディアを駆使してセルフ・プロモーションに勤しんでいる。もちろん、バンドによってはすべてをフォローすることはできず、一応開設はしたけど、ほとんど更新できずじまいのメディアもあるのは事実。昔なら手取り足取りマネジメントやレーベルが行なっていたことを自前で行なわなければならないのだから、そこはあまり厳しい目で見ないように。

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 以前紹介したFunkshoneとの比較だけど、彼ら同様、同じくファンク系なのだけど、こちらはもう少しソウル寄りで、ジャズっぽさはちょっと少なめ。ちょっと脂抜きしてサッパリしたJB’sをイメージしてもらえれば、何となく想像はつくはず。
Glenn Fallows - Guitar & Keys
Clair Witcher - Vocals
Ed Breaker - Bass
Barry Lalanne - Guitar
Tom Henderson - Drums
Mark Yexley - Trumpet
Chris Evans-Roberts - Alto Sax
Darren Smith - Tenor Sax
Emma Black - Baritone Sax
Joel Essex - Percussion
 という大所帯は、大抵のジャズ・ファンク・バンドに共通していることなのだけど、やはり個々のスケジュール調整が難しく、小まめな身動きが取りづらいのが現状。メインのバンド一本で食っていける状況では無いので、どうしても外仕事が多くなりがちになる。
 ほんとなら、メインのバンドに専念できる安定した収入とライブ環境が望ましいのだろうけど、反面、生活の糧を別に持つことによって、純粋に音楽に打ち込めるというメリットもある。

 下手にミュージシャンが収益や好感度を気にしてしまうと、目先の観客に受けることばかり考えてたり、はたまた逆に勘違いして過剰にアーティスティックを気取ってしまったりで、ロクなことがない。ましてや損益分岐点や収益性にまで手を付けてしまうと、グッズ販売ばかり力を入れたり目先のコスト・カットに目が行ってしまって、これまたロクでもないことになる。バンドの売りだったはずのホーン・セクションを外部委託にしてスリム化を計ったり、スタジオ経費を安く上げるためレコーディング時間を短縮したり、短期的にはバンド運営も安定するけど、内部の人間関係が崩壊へ向かうデメリットの方が多く、そういったつまらない要因で解散してしまうバンドの多いこと。

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 すべてをセルフで行なうことはキツイけど、隅々まで目が行き届くことによって、逆に状況把握がスムーズに行なうことができる。よって、純粋にクオリティのみを追求することができる。
 まぁそこまで理想的には行かないにしても、自分たちの手の届く範囲のことは自分たちでやる、そういったDIYの感覚が、この手のバンドには多い。基本、機材搬入だって自分たちで行なうし、会場のブッキングからギャラ交渉だって、結局頼りになるのはメンバーを含めた自分だけだ。
 そういった生臭い部分もすべて背負って、どのバンドもどうにかこうにかバンド維持に努めている。彼らに限らず全世界、または日本のバンドだって似たようなものだけどね。


THIS IS NOT A DRILL
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THE IMPELLERS
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1. Intro

2. Hear What I Say
 アッパー系のJB’sっぽいオープニング。ナチュラル・トーンのギターが全編でずっと鳴っており、このクールさが逆にファンキーさを演出している。Clairのヴォーカルはこのジャンルでは定番の激情型なのだけれど、ややハスキー気味な分もあって、少しクールさも漂っている。



3. The Knock Knock
 ちょっとジャズ・テイストのドラム・ソロから始まる、泥臭さの漂うナンバー。やはりギターの人がバンド・リーダーの場合、当然だけどギターのオブリガードが全編に漂っているため、どうしてもJB’sっぽくなる。いや、俺は好きだけどね。
 中盤のブレイク、ドラムのみをバックに歌うClairのヴォーカルは圧倒的。ライブならもっと映えるのだけれど。

4. Pon Lo Afuera
 タイトルが示すように、ちょっとラテンの入ったインスト・ナンバー。それぞれに見せ場を作った自己紹介的な一曲になっている。

5. Do What I Wanna Do
 ラテンの空気をそのまま持ってきて、さらにそこにカリプソも投入、ほんとノリの良いダンス・ナンバー。サビでの全員コーラス、ブレイクの後のClairのシャウトも最高。中盤の妖しげなDJによるアオリがまた、無国籍風を演出している。シングル・カットも頷ける。



6. Signs Of Hope & Happiness
 少ししっとりした、マイナー調のナンバー。この辺は日本の昭和40年代頃の歌謡曲との類似点が多く、俺世代以上の日本人なら、案外スンナリ受け入れてしまいそう。ちあきなおみや欧陽菲菲あたりが歌っても、そんなに違和感がない。
 こういったブルース調のソウル・ナンバーは、昭和の日本人の独壇場である。Superflyあたりがやってくんないかな。

7. Politiks Kills People
 かなりソウル寄りの、ライブ映えしそうな曲。もうちょっとアップ・テンポならもっと気持ちいいと思うのだけど、ライブならもっとハイパーなノリだと思われる。

8. Close To Me
 7.同様、こちらもソウルにかなり接近したナンバーなのだけど、こちらはアップ・テンポのため、かなりノリ良く仕上がっている。
 ジャズ・ファンク・バンドの魅力のひとつとしてドラムの生音が挙げられるのだけど、変に加工していない分だけ、ペシャッとしたタムの音なんて、それだけでもゾクゾクしてしまうくらい。

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9. Took Me For A Ride
 ホーン・セクション主導による、Tower of Towerを連想させるナンバー。ギターとホーンがメインのファンク・バンドと言えば、真っ先に思い浮かぶのがAverage White Bandなのだけど、あそこまで洗練されてなく、しかもヴォーカル・パートが多い分だけ、ソウルとの親和性が高い。この曲もそうだけど、やはり4人のホーンがいると、迫力が違う。

10. That's Not My Name
 ここはギターがメイン。ここにきて、めっちゃファンキーなナンバーを持ってきた。シングルにしてもいいくらいだったのに、あまり世に出てなかったのが惜しい。ちなみにギター、リフがCream “Sunshine of Your Love”を高速で弾いた感じ。なので、ちょっとブルース成分も入っている。



11. Belly Savalas
 再びブルース・ギター。ホーン・カルテットは、ここぞとばかりに吹きまくっており、時折”Summertime”っぽいフレーズも聴こえてくる。2分足らずの短いナンバーだけど、もっと聴いてたいね、こんなんだったら。

12. Last Orders (Outro)




Robot Legs
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世界のジャズ・ファンク・バンド巡り:UK編 - Funkshone 『2』

1328017110orig 2006年に結成されたUK発のジャズ・ファンク・バンド、これは2012年発売、文字通り2枚目のアルバム。この手のバンド特有で、メンバーは総勢9名という大所帯。基本、生音主体なので、どうしても大人数にならざるを得ない。そうなるとなかなか小回りが利かず、しかもそれぞれ細々と個人活動に勤しんでいるため、これまたなかなか集まることも困難なため、断続的なシングル・リリースくらいしか目立った活動がない。バンド運営というのは難しいものである。
 ちなみにメンバー構成は、
 Mike Bandoni - Drums
 Andy Sedman – Percussion
 Danny Huckridge - Bass
 Nino Auricchio – Keys
 Alexis Kraniou – Guitar
 Patrick Kenny - Trombone
 Alan Whetton - Tenor Sax
 Alex Bezzina - Trumpet
 Sasha Patterson – Vocals
という面々。ちょっとめんどくさかったので、Discogsからのコピペ。
 そのバンド・リーダーのMikeからして、単発のプロジェクトを掛け持ちしている状況が続いている。ヴォーカルのSasha Pattersonも最近ではEarth Wind For HireやThe Getupというバンドの活動がメインとなっており、Funkshone本体での活動は次第にフェード・アウトしつつある。ちょっと調べてみたら、Speedometerのレコーディングにも参加しており、ほんと引く手あまたの引っ張りダコ状態らしい。詳細はつかめなかったけど、どうやら他のメンバー達もいろいろヘルプなりメインなり、本業ミュージシャンとして活動している模様。

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 彼らのようなインストゥルメンタル/ヴォーカル・グループの供給が続いてるのは、これはもう80年代末からのアシッド・ジャズからの流れというのが一般的なのだけど、もうちょっと遡って、Style CouncilやWorking Week、Everything But the Girlなど、シャレオツ系のジャジー・ポップから派生してきた、と受け止めた方がより正確である。対してアメリカでは、ラップ/ヒップホップ隆盛に対するロック・シーンのブルース回帰、そこからGreatful Deadの終焉と入れ替わるように、自然発生的に出現したジャム・バンド・ブームを通過して、現在に至る。
 なので、全世界的にほぼ同時発生しているジャズ・ファンクのカテゴリに於いても、アメリカだけはちょっと特殊、他の国に比べてブルース色が強い傾向にある。他の国は大体、JBやMeters、P-FunkやIsleyの流れを汲んで、ファンク色が強い傾向にあるのに。

 ちなみに日本はといえば、90年代のスカパラの台頭を起点として、この手の音楽が盛り上がりそうな起因もあるにはあったけど、インストにおいては『踊る』系よりむしろ『癒し』系の方が好まれる国民性のため、ニューエイジ・ミュージックやジェット・ストリーム系ほどの盛り上がりは見せず、アシッド・ジャズもジャム・バンドも大きなムーヴメントには成長しなかった。
 なので、基本はアメリカの後追い、メインストリーム・ジャズからの派生という形、全世界的な流れとは別の、ガラパゴス的な発展を遂げている。QuasimodeやPe’zやSOIL&“PIMP”SESSIONSなんかも、もっとダンサブルなバンドでもいいはずなのに、基本、ジャズのカテゴリに入れられちゃっているため、なかなかメジャー展開で苦労している模様。

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 ジャズ・ファンクと一言で言い現わしながら、各国それぞれ微妙に違っているのは、もちろんそれぞれの国民性の違いが大前提としてあるのだけれど、結局のところはブルース性の有無に起因するものだと思う。
 国家の歴史も浅く、また多民族国家の特徴ゆえ平均年齢が若いアメリカにおいては、ロック/ポピュラー・シーンでの行き詰まりを感じていた若手バンドの中でもテクニカルな連中が、インストゥルメンタル主体のジャム・セッションへ移行しつつあった。60~70年代ロックをルーツとする彼らはとても生真面目だったため、さらなるルーツの追求を図る。そうなると結果的に、ブルースをベースとしたサウンドが中心になる。そこにヴォーカルを入れるとなると、ブルースとの親和性が高く、そして演奏に気迫負けしないパワーを持つキャラクターが必要になってくる。なので、ブルースやゴスペルをベーストしたヴォーカリストが自然とチョイスされるようになる。インプロビゼーションが延々と続くジャム・バンドもまた、ブルース・スケールを基本に演奏しているため、濃縮されたブルース成分はソウル・フードのように、クセの強い芳香を放つ。

 で、それ以外の国、特にEU圏となると、ブルースの影響はかなり弱まってゆく。クロスロードだガンボだなんてのも歌の中の話であって、ひとたび大西洋を越えればリアリティは失われてしまう。
 イギリスは大航海時代の名残から、世界中の文化に触れる機会が多かった。その中でも特にソウル/ファンク系の人気が高く、もともとブルース系はちょっと弱かった。60年代中盤から末にかけて、Eric Claptonを始めとするブルース・ロックが一時隆盛を誇ったけど、それも結局パンクの出現によって粉々に打ち砕かれてしまった。その後のイギリスではブルース系は細々と息を繋ぐだけである。

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 で、Funkshone。ブルース成分はほとんどなく、インスト・ファンクの傾向が強く、ちょっぴりジャズ成分が強い。リーダーのMikeがドラム担当のため、必然的にリズム・パートのミックスが大きく聴こえるのは気のせいだけではないはず。よって、サウンドのダイナミズムは他バンドと比べても強いかもしれない。
 ほとんどアシッド・ジャズみたいなメロウ・ナンバーもしっかり取り入れているのが、このバンドの戦略のひとつなのだけど、何しろ全員のスケジュールがなかなか合わず一緒にスタジオに入るまでが、まずはひと苦労。もう少し安定かつコンスタントな活動で、認知度を高めてほしいところ。
 一応、去年久々のシングルがリリースされたのだけど、これまたスケジュールが合わず、Sashaは不参加、インスト・ナンバーという形になった。純粋な演奏だけを好むのならアリなのだけど、やはり彼女のヴォーカルも聴いてみたい。


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1. Heaven Shine
 トロットロに熟成されたヴォーカルとリズム。生楽器主体のため、ただのアシッド・ジャズでは終わらせないぞ的な雰囲気のある、スロウなタイム感のオープニング。

2. Dirty Money
 フルートというのが逆にファンキーに聴こえる、ミディアム・スロウのブラス・ファンク・ナンバー。70年代ディスコっぽいホーンのリフ、バックに薄く流れるストリングスとの絶妙なマッチング。

3. Bushwhacker
 ホーン・セクションは完全にジャズ・テイストなのに、リズムはちゃんとしたファンク。ここでまたフルートが登場。フルートが登場するナンバーというのは、60~70年代スパイ映画のサントラっぽく聴こえてしまうのだけど、それって俺だけ?

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4. After The Storm
 スタンダード・ジャズの王道的なホーンと無機的なリズム・ループとの融合。アンビエントなウィスパー・ヴォイスと、Milesっぽいミュート・トランペットのソロが交互にあらわれ、幻想的な空間を醸し出す。

5. Chase The Dream
 攻撃的なホーン・セクションを主として、時々控えめなストリングスやフルートが絡む、ちょっと不思議なファンク・ナンバー。フロアで踊るというよりは、聴いてて徐々にテンションが上がるタイプの個室ファンク。
 
6. Something Becomes The Other
 ホーンのロング・トーンが連呼されるのがカッコイイ、基本はジャズ・セッション、そこに再び薄くストリングスやSEが被さるジャズ・ファンク。野外フェスで聴いてしまった日には、もう抜け出せない。

7. Do Want You Do
 ソウル・レビューのクライマックスにピッタリなダンス・ナンバー。サビの締めのブレイクがカッコイイ。曲間のDJのイタリア語っぽいアオリが絶品。このアルバムの中では、俺的にベスト・トラック。

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8. Stop Think Work It Out
 Crusadersの”Street Life”っぽいメロディが印象的な、サビ一発のナンバー。いかにもサビから発展させたような曲だけど、シンプルな構造なだけに、逆にバンドの地力がしっかりしていることが証明されている。

9. Gettin' It Together
 ヴォーカルは一旦休憩、幕間のジャム・セッションっぽいファンク・ナンバー。なので、すべてのパートに見せ場がある。シンプルなギター・カッティング、それぞれアドリブを魅せるホーン・セクション、そして屋台骨を支える、Mikeの変幻自在なドラミング。どれをとっても安心して聴いていられる。



10. Persuasion
 エキゾチックなペルシア民謡っぽいオープニングと共に始まる、人力ドラム・ループが心地よい、これまでとはちょっと毛色の違った曲。ちなみにPersuasionの意味は「説得」。う~ん、説得というよりは、字面からして、中近東の民謡っぽく聴こえてしまう。

11. Take Down
 ちょっとヤサグレた感じで始まるスロウ・ファンク。バックでずっとベースが頑張ってる。ホント、今どきのファンク・バンドにしてはストリングスの使い方がうまい。これ見よがしではなく、比較的ポイントでサラッとした入れ方なのだけど、これがまた効果的。



12. Darling Dear
 ご存じJackson 5が放った1970年のナンバー。ヴォーカルの質感からサウンドまで、ほとんど完コピなのだけど、多分ほんとにやりたかったのは、ベース・レジェンドJames Jamersonスタイルのベース・ラインだろう。こちらもほとんどクリソツ。
 



シャイニング
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リターン・オブ・ジャズ・ファンク・スペシャル:ジャズ・ファンク・ネヴァー・ダイズ
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カテゴリ
北海道の中途半端な田舎に住む、そろそろアラフィフ男。ほぼ週1のペースで音楽ブログ更新中。節操ない聴き方と思われてるけど、自分の中では一貫してるつもり。 最近は蔵書の整理がてら、古い本を再読中。ジョン・アーヴィングから始まって、フィッツジェラルドやゾラ、モームなど、いわゆる古典の復習中。いつになったら終わることやら。新刊読めねぇや。
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